(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年では、エッチング速度の制御が重要視されている。例えば、SiC基板を加熱することでステップバンチングが発生することがあるが、このステップバンチングを除去できるか否かはエッチング速度に依存することが知られている。ここでSi蒸気圧エッチングをSiC製造プロセスに適用するにあたり、エピタキシャル成長に供するSiC基板の加工工程及びイオン注入されたエピタキシャル成長層を有するSiC基板の活性化アニール工程におけるSiC基板のエッチング速度に関する技術的課題について説明する。
【0008】
まず、エピタキシャル成長に供するSiC基板の加工工程について説明する。SiC基板はインゴットを所定の厚みに切り出すことで得られる。インゴットよりSiC基板を切り出した状態では表面粗さが大きいので、機械研磨(MP)及び化学機械研磨(CMP)等の加工工程を行って表面を平坦にする必要がある。しかし、機械研磨及び化学機械研磨等を行うことにより、SiC基板の表面に残存する研磨傷は略除去されるが、一部の深い研磨傷や機械研磨時及び化学機械研磨時等にSiC基板の表面に圧力が掛かることにより形成する結晶性が乱れた変質層(以下、潜傷)が残存しうる。この研磨傷や潜傷は、場合によっては数十μmの深さに及ぶ可能性もあり、その様な傷を効率良く除去するためにはエッチング速度を速くすることが望まれる。
【0009】
また、イオン注入されたエピタキシャル成長層を有するSiC基板の活性化アニール工程においては、イオンとして注入された不純物(以下、ドーパント)がSiC結晶格子位置に置換(活性化)される十分な高温を与えるとともに、SiC基板の表面から所定の深さまで存在するドーパント濃度が不足しているドーパント不足部分(約数十から数百nmオーダー)をエッチングによって精密に除去する必要がある。しかし、SiC基板を過剰にエッチングするとドーパント濃度が十分である部分も除去されてしまう。従って、イオン注入されたエピタキシャル成長層を有するSiC基板に対しては、ステップバンチングの発生しないエッチング速度においてエッチング深さを正確に制御する必要があるため、エッチング速度を適切に遅くすることが好ましい。
【0010】
なお、エッチング速度に関連するパラメータとしては、加熱温度、Siの圧力、及び不活性ガスの圧力等が知られている。しかし、これらのパラメータを制御することで、エッチング速度以外に影響が及ぶことも考えられるため、様々な方法でエッチング速度を制御できることが好ましい。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、収容容器の組成に基づいてSiC基板のエッチング速度を制御するエッチング方法を提供することにある。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明
の観点によれば、以下のSiC基板のエッチング方法が提供される。即ち、このエッチング方法は、収容容器にSiC基板を収容した状態で当該SiC基板をSiの蒸気圧下で加熱することで当該SiC基板をエッチングする。前記収容容器は、タンタル金属を含んで構成されるとともに、当該タンタル金属よりも内部空間側にタンタルカーバイド層が設けられ、当該タンタルカーバイド層よりも更に内部空間側にタンタルシリサイド層が設けられている。そして、前記タンタルシリサイド層の組成の違いに基づいて前記SiC基板のエッチング速度が制御される。
前記タンタルシリサイド層の組成が互いに異なる少なくとも2つの前記収容容器を用い、実施する処理に応じて前記収容容器を使い分ける。
【0014】
これにより、加熱温度及びSiの圧力等を変更することなくSiC基板のエッチング速度を制御することができる。
また、収容容器を変更するだけで、温度条件等を変更することなく、要求エッチング速度が異なる処理を実施することができる。
【0015】
前記のSiC基板のエッチング方法においては、前記タンタルシリサイド層は、TaSi
2、Ta
5Si
3、Ta
2Si、Ta
3Si、Ta
5Si
3C
0.5の何れかを含むことが好ましい。
【0016】
これにより、TaとSiから構成される一般的な化合物を用いて、エッチング速度を制御することができる。
【0019】
前記のSiC基板のエッチング方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、高速エッチングと低速エッチングとを実施可能である。高速エッチングを行う場合は、前記タンタルシリサイド層を構成する化合物の1分子に占めるタンタルの割合が高い方の前記収容容器を用いる。低速エッチングを行う場合は、前記タンタルシリサイド層を構成する化合物の1分子に占めるタンタルの割合が低い方の前記収容容器を用いる。
【0020】
これにより、タンタルの割合が高い場合は雰囲気中の炭素原子が吸収され易いためエッチング速度が速くなる。従って、上記のように収容容器を使い分けることで、適切な速度でエッチングを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、本実施形態の加熱処理で用いる高温真空炉10について説明する。
【0025】
図1に示すように、高温真空炉10は、本加熱室21と、予備加熱室22と、を備えている。本加熱室21は、少なくとも表面が単結晶SiCで構成されるSiC基板40(単結晶SiC基板)を1000℃以上2300℃以下の温度に加熱することができる。予備加熱室22は、SiC基板40を本加熱室21で加熱する前に予備加熱を行うための空間である。
【0026】
本加熱室21には、真空形成用バルブ23と、不活性ガス注入用バルブ24と、真空計25と、が接続されている。真空形成用バルブ23は、本加熱室21の真空度を調整することができる。不活性ガス注入用バルブ24は、本加熱室21内の不活性ガス(例えばArガス)の圧力を調整することができる。真空計25は、本加熱室21内の真空度を測定することができる。
【0027】
本加熱室21の内部には、ヒータ26が備えられている。また、本加熱室21の側壁や天井には図略の熱反射金属板が固定されており、この熱反射金属板は、ヒータ26の熱を本加熱室21の中央部に向けて反射させるように構成されている。これにより、SiC基板40を強力かつ均等に加熱し、1000℃以上2300℃以下の温度まで昇温させることができる。なお、ヒータ26としては、例えば、抵抗加熱式のヒータや高周波誘導加熱式のヒータを用いることができる。
【0028】
また、SiC基板40は、坩堝(収容容器)30に収容された状態で加熱される。坩堝30は、適宜の支持台等に載せられており、この支持台が動くことで、少なくとも予備加熱室から本加熱室まで移動可能に構成されている。坩堝30は、互いに嵌合可能な上容器31と下容器32とを備えている。なお、坩堝30の詳細な構成については後述する。
【0029】
SiC基板40を加熱処理する際には、初めに、
図1の鎖線で示すように坩堝30を高温真空炉10の予備加熱室22に配置して、適宜の温度(例えば約800℃)で予備加熱する。次に、予め設定温度(例えば、約1800℃)まで昇温させておいた本加熱室21へ坩堝30を移動させる。その後、圧力等を調整しつつSiC基板40を加熱する。なお、予備加熱を省略しても良い。
【0030】
次に、坩堝30の壁面の組成及びタンタルシリサイド層の形成方法について
図2及び
図3を参照して説明する。
【0031】
坩堝30は、SiC基板40が収容される内部空間の壁面(上面、側面、底面)を構成する部分において、
図2に示す構成となっている。具体的には坩堝30は、外部側から内部空間側の順に、タンタル層(Ta)、タンタルカーバイド層(TaC及びTa
2C)、及びタンタルシリサイド層(TaSi
2又はTa
5Si
3等)から構成されている。
【0032】
このタンタルシリサイド層は、内部空間にSiを供給する。また、坩堝30にはタンタル層及びタンタルカーバイド層が含まれるため、周囲のC蒸気を取り込むことができる。これにより、内部空間内を高純度のSi雰囲気とすることができる。
【0033】
タンタル層及びタンタルカーバイド層からなる坩堝は従来から知られている。本実施形態では、この坩堝にタンタルシリサイド層を形成する。具体的には、予め高温下で気化させたSiを坩堝の内部空間に配置し、例えば10Pa以下の減圧下で1800℃で15分加熱することで、
図2(a)に示すように、TaSi
2を組成とするタンタルシリサイド層が形成される。
図2(b)は、上記のようにして作成したタンタルシリサイド層のX線回折パターンを示す。
図2(b)において丸印が付されたピークはタンタルカーバイドを示しており、その他のピークはTaSi
2を示している。このように、上記の方法でタンタルシリサイド層を形成することにより、TaSi
2が十分に形成されることが分かる。
【0034】
タンタルシリサイド層としては、TaSi
2以外にもTa
5Si
3を形成することができる(
図3(a)を参照)。この場合、上記と同様に気化させたSiを坩堝の内部空間に導入し、例えば10Pa以下の減圧下で2000℃で15分加熱する。
図3(b)は、上記のようにして作成したタンタルシリサイド層のX線回折パターンを示す。
図3(b)において丸印が付されたピークはタンタルカーバイドを示しており、その他のピークはTa
5Si
3を示している。このように、上記の方法でタンタルシリサイド層を形成することにより、Ta
5Si
3が十分に形成されることが分かる。
【0035】
図4には、Si、SiC、TaSi
2、及びTa
5Si
3のSi蒸気圧の分圧を示すグラフが示されている。
図4からは、TaSi
2及びTa
5Si
3から供給されるSi蒸気圧が非常に高い圧力を示していることが分かる。従って、タンタルシリサイド層は、坩堝30の内部空間へのSiの供給源となることは明らかである。また、タンタルシリサイド層は、内部空間を構成する壁面の全体にわたって形成される。これにより、内部空間のSiの圧力分布を均一にすることができる。従って、SiC基板40を均一にエッチングすることができる。
【0036】
次に、本実施形態で行われるSi蒸気圧エッチング(以下、単にエッチングと称する)について説明するとともに、組成が異なる坩堝30を用いた場合のエッチング速度の違いについて
図5及び
図6を参照して説明する。
【0037】
本実施形態では、SiC基板40を坩堝30に収容し、高純度のSi蒸気圧下で1500℃以上2200℃以下、望ましくは1600℃以上2000℃以下の温度範囲で高温真空炉10を用いて加熱することでSiC基板40の表面がエッチングされる。このエッチングの際には、以下に示す反応が行われる。簡単に説明すると、SiC基板40がSi蒸気圧下で加熱されることで、熱分解によってSiCからSi蒸気が脱離する。また、タンタルシリサイド層からSi蒸気が供給される。熱分解によってSi蒸気が脱離することで残存したCは、Si蒸気と反応することで、Si
2C又はSiC
2等になって昇華する。
(1) SiC(s) → Si(v)I + C(s)
(2) Ta
xSi
y →Si(v)II +Ta
x’Si
y’
(3) 2C(s) + Si(v)I+II → SiC
2(v)
(4) C(s) + 2Si(v)I+II → Si
2C(v)
【0038】
上記の反応が継続すると、式(3)及び式(4)で発生するSiC
2及びSi
2Cが過剰となる結果、式(1)から(4)の反応速度が低下してしまう。しかし、本実施形態では、
図2に示す坩堝30が用いられている場合は、SiC
2とTaSi
2が反応することでTaCとSiが発生する。また、
図3に示す坩堝30が用いられている場合は、SiC
2とTa
5Si
3が反応することでTa
2CとTaSi
2が発生する。このように、SiC
2に含まれるCが坩堝30のタンタルに取り込まれる(
図5を参照)。また、Siが発生した場合、このSiは、再びSiC基板40に残存したC原子を除去する反応に用いられる。以上により、反応速度を低下させることなくエッチングを継続することができる。
【0039】
以上を考慮すると、エッチング速度は、SiC
2及びSi
2CがC原子を取り込む速度と密接に関係すると考えられる。従って、タンタルシリサイド層を構成する化合物に含まれるタンタルの物質量の割合が高いほど、エッチング速度が速くなると考えられる。また、SiC
2とTaSi
2の反応の圧平衡定数は、SiC
2とTa
5Si
3の反応の圧平衡定数よりも小さい。以上により、タンタルシリサイド層がTaSi
2の坩堝30を用いた場合のエッチング速度は、タンタルシリサイド層がTa
5Si
3の坩堝30を用いた場合のエッチング速度よりも遅いと考えられる。
【0040】
図6は、タンタルシリサイド層がTaSi
2の坩堝30と、タンタルシリサイド層がTa
5Si
3の坩堝30と、を用いて、オフ角が4°の4H−SiCの(0001)面を、高真空下(10
-4Pa)で1650℃から2100℃でエッチングしたときの結果を示す図である。
図6のグラフからは、TaSi
2を含む坩堝30の方がTa
5Si
3を含む坩堝30よりもエッチング速度が大幅に遅いことが確かめられる。
【0041】
このように、本実施形態では、タンタルシリサイド層の組成が異なる坩堝30を使い分けることで、加熱温度等を変更することなくエッチング速度を容易に変化させることができる。以下、坩堝30を使い分ける具体的な状況について説明する。
【0042】
出願人らの実験によれば、エッチング速度を所定の閾値以上にすることでステップバンチングが除去され、エッチング速度が所定の閾値より小さい場合は、たとえ長時間エッチングを行った場合でもステップバンチングを除去できないことが確かめられている。
図7は、エッチングを行う際の不活性ガス(Arガス)の圧力(即ちエッチング速度)を変えてエッチングを行った場合におけるSiC基板40の表面の顕微鏡写真及び表面粗さを示す図である。
図7に示すように、本実験の条件下では、不活性ガスの圧力が1.3kPaの場合は、表面粗さが高く、顕微鏡写真からもステップバンチングが明らかに残存していることが分かる。不活性ガスの圧力が133Paの場合は、表面粗さが顕著に低下しており、顕微鏡写真からもステップバンチングの一部が除去されていることが分かる。不活性ガスの圧力が13Paと1.3Paの場合及び高真空の場合は、更に表面粗さが低下しており、顕微鏡写真からもステップバンチングが略全て除去できていることが分かる。このように、不活性ガスの圧力(即ちエッチング速度)に応じて、ステップバンチングが除去されるか否かを選択できる。ステップバンチングが発生していないSiC基板40は、電界の局所集中等が発生しないため、半導体素子としての性能が高い。しかし、ステップバンチングが発生しているSiC基板40は、例えば溶液成長法を行う際に、結晶欠陥(転位)の影響をより一層解消できることが知られている。従って、状況に応じてステップバンチングの発生の有無を切り替えることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、坩堝30を使い分けるだけでエッチング速度を切り替えることができるので、ステップバンチングが発生していないSiC基板40を製造する場合は、タンタルシリサイド層がTa
5Si
3の坩堝30を用いてエッチング(高速エッチング)を行えば良い。一方、ステップバンチングが発生しているSiC基板40を製造する場合は、タンタルシリサイド層がTaSi
2の坩堝30を用いてエッチング(低速エッチング)を行えば良い。
【0044】
次に、坩堝30を使い分ける別の状況を説明する。まず、エピタキシャル成長に供するSiC基板40の加工工程においては、4H−SiC単結晶又は6H−SiC単結晶から構成されるインゴットを所定の厚みに切り出す。その後、切出し時にSiC基板40の表面に形成された凹凸を除去するために、機械研磨及び化学機械研磨等の加工が行われる。この凹凸は高低差がかなり大きいため、高速でSiC基板40を研磨することが求められる。また、機械研磨時等にSiC基板40の表面に圧力が掛かることにより、結晶性が乱れた変質層(以下、潜傷)が場合によっては数十μmの深さに及ぶ可能性もあり、その潜傷を除去する場合も高速でSiC基板40を研磨することが求められる。従って、機械研磨及び化学機械研磨等の代わりや、潜傷を除去するために、タンタルシリサイド層がTa
5Si
3の坩堝30を用いることによって従来よりも簡便にエッチング(高速エッチング)を行うことができる。
【0045】
また、イオン注入されたエピタキシャル成長層を有するSiC基板40の活性化アニール工程においては、前記加工工程を経たSiC基板40に対してエピタキシャル層成長、イオン注入、及びイオンとして注入された不純物(以下、ドーパント)の活性化が行われる。そして、ドーパント不足部分の除去、及びイオン注入によって荒れた表面を平坦化するためにエッチングが行われる。具体的に説明すると、ドーパント不足部分は、イオン注入条件によって異なるが、例えばSiC基板40の表面から約数十nmから数百nmの領域に存在する。
図8には、SiC基板40の表面からの深さに応じたドーパント濃度の一例が示されており、
図8では表面から数十nmまでの部分でドーパント濃度が低く、約500nmより深くなるに従ってドーパント濃度が低下している。従って、ドーパント不足部分を除去しつつ十分なドーパント濃度を有する部分を残すためには、エッチング量を精密に制御する必要があるため、エッチング速度を低速にすることが好ましい。しかし、上述のようにエッチング速度が所定の速度より低い場合、ステップバンチングを除去できない。従って、このエッチングは、ドーパントが十分に存在する部分が過剰に除去されることを防止するために、タンタルシリサイド層がTaSi
2の坩堝30を用い、かつステップバンチングが発生しない条件のもと精密なエッチング(低速エッチング)を行えば良い。
【0046】
これにより、潜傷の除去時とイオン注入後のエッチング時とで、タンタルシリサイド層が異なる坩堝30を使うことで、加熱温度等をあまり変化させずに適切なエッチング速度でエッチングを行うことができる。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態のエッチング方法は、坩堝30にSiC基板40を収容した状態でSiの蒸気圧下で加熱することでSiC基板40をエッチングする。坩堝30は、タンタル金属を含んで構成されるとともに、当該タンタル金属よりも内部空間側にタンタルカーバイド層が設けられ、当該タンタルカーバイド層よりも更に内部空間側にタンタルシリサイド層が設けられている。そして、タンタルシリサイド層の組成の違いに基づいてSiC基板40のエッチング速度が制御される。
【0048】
これにより、加熱温度及びSiの圧力等を変更することなくSiC基板40のエッチング速度を制御することができる。
【0049】
また、本実施形態のSiC基板40のエッチング方法においては、タンタルシリサイド層の組成が互いに異なる(具体的にはTaSi
2とTa
5Si
3)少なくとも2つの坩堝30を用い、実施する処理に応じて坩堝30を使い分ける。
【0050】
これにより、坩堝30を変更するだけで、温度条件等を変更することなく、要求エッチング速度が異なる処理を実施することができる。
【0051】
また、本実施形態のSiC基板40のエッチング方法においては、高速エッチングと低速エッチングとを実施可能である。高速エッチングを行う場合は、タンタルシリサイド層を構成する化合物の1分子に占めるタンタルの割合が高い方(具体的にはTa
5Si
3)の坩堝30を用いる。低速エッチングを行う場合は、タンタルシリサイド層を構成する化合物の1分子に占めるタンタルの割合が低い方(具体的にはTaSi
2)の坩堝30を用いる。
【0052】
これにより、タンタルの割合が高い場合は雰囲気中の炭素原子が吸収され易いためエッチング速度が速くなる。従って、上記のように坩堝30を使い分けることで、適切な速度でエッチングを行うことができる。
【0053】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0054】
上記の実施形態ではタンタルシリサイドとしてTaSi
2又はTa
5Si
3が形成される構成であるが、他の化学式で表されるタンタルシリサイドが形成されていても良い。例えば、
図9のフェーズダイヤグラムに示すように、Ta
2Si、Ta
3Si又はTa
5Si
3C
0.5が形成されていても良い。なお、本明細書では、Ta
5Si
3C
0.5のように他の原子を含んでいてもタンタルシリサイド層に該当するものとする。
【0055】
上記の実施形態では、1つの坩堝30の内壁面の全体にわたって同じ組成のタンタルシリサイドが形成されているが、1つの坩堝30の内壁面に複数の組成のタンタルシリサイドが形成されていても良い。この場合、SiC基板40の表面の一部のみのエッチング速度を速くする又は遅くすることができ、それを考慮して所望の形状のSiC基板40を生成することもできる。
【0056】
上記で説明した温度条件及び圧力条件等は一例であり、適宜変更することができる。また、上述した高温真空炉10以外の加熱装置を用いたり、坩堝30と異なる形状又は素材の容器を用いても良い。例えば、収容容器の外形は円柱状に限られず、立方体状又は直方体状であっても良い。