特許第6752057号(P6752057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752057
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】肌質改善剤用安定組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/68 20060101AFI20200831BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200831BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200831BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20200831BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   A61K8/68
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61K8/55
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-109494(P2016-109494)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-214323(P2017-214323A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】311012158
【氏名又は名称】キッコーマンバイオケミファ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 誠
(72)【発明者】
【氏名】松井 圭子
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−290951(JP,A)
【文献】 特開2002−020230(JP,A)
【文献】 特開2015−174841(JP,A)
【文献】 醗酵セラミド,BIO INDUSTRY,2004年,Vol.21, No.1,pp.64-67
【文献】 バイオセラミドの開発とその特性,FRAGRANCE JOURNAL,1999年 1月,pp.132-136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 47/00−47/69
A61K 9/00− 9/72
C12P 1/00−41/00
B01F 17/00−17/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100nm未満の平均粒径を有する微生物由来のスフィンゴ糖脂質を含む粒子と、
分子内に水酸基を3個有する多価アルコールと
分子内に水酸基を2個有する多価アルコールと、
リン脂質と
を含有し、リン脂質以外の油分及び界面活性剤を含有しない、乳化組成物であって、
前記スフィンゴ糖脂質を1〜10質量%、前記分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを5〜50質量%、前記分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを3〜25質量%含む、乳化組成物
【請求項2】
前記分子内に水酸基を3個有する多価アルコールは、グリセリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スフィンゴ糖脂質を2〜8質量%、前記分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを10〜45質量%、前記分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを5〜20質量%含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
肌の角質水分量を増大し、経皮水分蒸散量を抑制するための、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物
【請求項5】
(1)微生物由来のスフィンゴ糖脂質、リン脂質及び分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを水と混合し、
(2)得られた混合物を高圧処理して乳化し、
(3)得られた乳化混合物に、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールを添加、混合する、乳化組成物の製造方法であって、
前記スフィンゴ糖脂質を1〜10質量%、前記分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを5〜50質量%、前記分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを3〜25質量%含有させ、リン脂質以外の油分及び界面活性剤を含有させずに乳化組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌質改善剤用安定組成物に関し、より詳細には、スフィンゴ糖脂質を含む粒子をナノスケールで分散化した肌質改善剤用安定組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ糖脂質は、セラミドに糖がグリコシド結合した糖脂質の一種であり、水中で沈殿してしまうことから、乳化又はゲル化等して、化粧品、食品及び医薬等で利用されている。
スフィンゴ糖脂質の乳化又はゲル化組成物中の分散状態は、吸収特性や組成物の安定性などに大きく影響することから、スフィンゴ糖脂質の分散状態を改善する種々の試みがなされている。
【0003】
例えば、スフィンゴ糖脂質等の糖脂質を、少なくとも15倍を超える重量のグリセリンを含む水溶性多価アルコールと、30倍以上の重量の流動パラフィン等の油分と混合してゲル組成物を得ることで、界面活性剤を使用せずに、比較的小さな粒径(最も小さい粒径で1μm程度)の粒子が分散しているゲル化又は乳化組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、スフィンゴ糖脂質とグリセリンおよび/またはジグリセリンを高圧分散して得られるゲル組成物、スフィンゴ糖脂質とグリセリンおよび/またはジグリセリンに油溶性成分を高圧分散して得られるゲル組成物、或いはスフィンゴ糖脂質とグリセリンおよび/またはジグリセリンに油溶性成分を高圧分散した後、得られたゲルに水及び任意で水溶性高分子化合物を攪拌混合して乳化又はクリーム状組成物を得ることで、界面活性剤を使用せずに、0.25μm程度の平均粒径の粒子が長期間分離することなく分散し得る組成物が提案されている(特許文献2参照)。また、油溶性有効性成分と油分とグリセリンとスフィンゴ糖脂質とを高圧乳化処理し(グリセリンはスフィンゴ糖脂質の10倍の重量である)、得られたゲルに水および水溶性高分子を混合攪拌することで、製剤の安定性、及び有効性成分の皮膚浸透性を高めた皮膚外用剤が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特昭59−39338号公報
【特許文献2】特開2000−128760号公報
【特許文献3】特開2002−338499号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】たん白質 核酸 酵素 109-116,Vol3, No.2,(1992)
【非特許文献2】Laurent et al., Biochim Biophys Acta.1960 Aug 26;42:476−485.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スフィンゴ糖脂質を含む粒子がナノレベル(100nm未満の平均粒径)で分散し、透明性が高く、肌に適用した際の保湿性及びバリア能の高い肌質改善剤を提供でき、保存安定性が高い乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の解決手段を提供する。
[1]100nm未満の平均粒径を有するスフィンゴ糖脂質を含む粒子と、分子内に水酸基を3個有する多価アルコールとを含有する、乳化組成物。
[2]更に、分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを含有する、[1]に記載の組成物。
[3]前記分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールは、グリセリンである、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記スフィンゴ糖脂質は、リン脂質を含有する、[1]乃至[3]の何れか1つに記載の組成物。
[5]前記スフィンゴ糖脂質は、微生物由来である、[1]〜[4]の何れか1つに記載の組成物。
[6][1]〜[5]の何れか1つに記載の組成物を含む化粧料。
ここで、本願明細書で使用する際の「安定性」又は「安定」とは、組成物を25℃で4週間以上放置した際に実質的に沈殿物を生じない状態を意味し、好ましくはスフィンゴ糖脂質を含む粒子の粒径がナノスケールで4週間以上維持される(仮に沈殿物を生じた場合には、それを手動で攪拌した後に測定した粒径も含まれる)ことを意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の乳化組成物は、スフィンゴ糖脂質を含む粒子が100nm未満の平均粒径を有しており、組成物の透明性が高い。また、本発明の乳化組成物は、長期間安定であり、粒子のナノスケールの粒径が長期間維持される。また、本発明の方法では、スフィンゴ糖脂質を、分子内に水酸基を2個有する多価アルコールと共に水と混合し、高圧乳化した後に、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールを添加して乳化組成物を調製するため、乳化組成物を調製する際に泡の発生が殆ど無く、脱泡処理が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】被検者の前腕部の皮膚に、実施例3で得られた組成物を水で5倍希釈した乳化組成物を塗布した場合と、実施例3で得られた組成物と高圧乳化処理をしない点のみ異なる比較例7の組成物を水で5倍希釈して塗布した場合と、実施例3で得られた組成物とスフィンゴ糖脂質を含まない点のみ異なる比較例8の組成物を水で5倍希釈して塗布した場合について、塗布して2日後、及び4日後の皮膚の角質水分量の改善率を示すグラフである。
図2】被検者の前腕部の皮膚に、実施例3で得られた組成物を水で5倍希釈した乳化組成物を塗布した場合と、実施例3で得られた組成物と高圧乳化処理をしない点のみ異なる比較例7の組成物を水で5倍希釈して塗布した場合と、実施例3で得られた組成物とスフィンゴ糖脂質を含まない点のみ異なる比較例8の組成物を水で5倍希釈して塗布した場合について、塗布して2日後、及び4日後の皮膚の経皮水分蒸散量の改善率を示すグラフである。
図3】被検者の前腕部の皮膚に、実施例3で得られた組成物を水で5倍希釈した乳化組成物を塗布した場合と、実施例3で得られた組成物と高圧乳化処理をしない点のみ異なる比較例7の組成物を水で5倍希釈して塗布した場合と、実施例3で得られた組成物とスフィンゴ糖脂質を含まない点のみ異なる比較例8の組成物を水で5倍希釈して塗布した場合について、塗布して4日後の皮膚の状態を示す顕微鏡写真(30倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明は、その実施形態で、スフィンゴ糖脂質を含む粒子と、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールとを含有する、肌質改善剤用安定乳化組成物を提供し、好ましい実施形態では、更に分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを含有する肌質改善剤用安定乳化組成物を提供する。以下では、このような安定乳化組成物の各成分及び更に含有可能な成分について説明する。
【0012】
<スフィンゴ糖脂質>
本発明の組成物では、上述の通りスフィンゴ糖脂質を含有する。スフィンゴ糖脂質は、セラミドに糖がグリコシド結合した糖脂質の一種であり、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ガラクトシルフィトセラミド、グルコシルフィトセラミド、スフィンゴミエリンなどが含まれる。スフィンゴ糖脂質は、動物、微生物、藻類、又は植物から得ることができ、或いは合成することもできる。微生物由来のスフィンゴ糖脂質としては、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属又はスフィンゴバクテリウム(Sphingobacterium)属の細菌によって生産されるスフィンゴ糖脂質が挙げられる。
何れに由来するかにより、スフィンゴ糖脂質を構成する糖の種類が変わる(非特許文献1)。また、動物及び微生物由来のスフィンゴ糖脂質を用いる場合、通常、リン脂質も組成物中に含有される。また、動物由来か、微生物由来かによってリン脂質の含有量が異なり、後者の含有量がより高い。また、微生物由来のスフィンゴ糖脂質の中では、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌によって生産されるスフィンゴ糖脂質がより好ましい。
本発明の組成物では、種々の由来のスフィンゴ糖脂質の1種又は2種以上を含み得るが、特に微生物由来のスフィンゴ糖脂質を含有することが好ましい。共存するリン脂質が、組成物の安定性に寄与し、より安定な組成物が得られるからである。したがって、本明細書における「スフィンゴ糖脂質」の語により表される物質には、単一の化合物としてのスフィンゴ糖脂質のほかに、スフィンゴ糖脂質以外の物質(例えばリン脂質)も併せて含有する生物由来の組成物も包含される。リン脂質も併せて含有する生物由来のスフィンゴ糖脂質のうち、含有されているリン脂質の割合がスフィンゴ糖脂質全体の30質量%〜60質量%である本発明のスフィンゴ糖脂質は、特に好ましい。
微生物由来のスフィンゴ糖脂質は、典型的には以下の構造式により表わされる。
【0013】
【化1】
【0014】
式(1)におけるRは、ウロン酸、グルコサミン、ガラクトース、マンノースからなる群より選択される4個のヘキソースまたは1個のウロン酸で構成される糖部分である。
4個のヘキソースについては、ウロン酸、グルコサミン、ガラクトースおよびマンノースの中から1〜4個を組み合わせたものであれば、各ヘキソースの数や結合順序、結合形式、光学異性はとくに限定されない。Rの組み合わせの例として、ウロン酸を唯一のヘキソースとするもの、ウロン酸、グルコサミン、ガラクトースおよびマンノースで構成される4個のヘキソースからなるものを挙げることができる。
の具体例として以下の構造A、Bを例示することができる。
【0015】
【化2】
【0016】
式(1)におけるRは、シクロアルキル基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数はとくに限定されないが、15〜25の範囲内であるのが好ましい。Rのアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は直鎖であっても分枝鎖であってもよく、また、水酸基などで置換されていてもいなくてもよい。
とくに、アルキル基の鎖中にシクロプロピル基などのシクロアルキル基が存在していてもよい。アルケニル基の二重結合の位置や、アルキニル基の三重結合の位置はとくに限定されない。
【0017】
の具体例として以下の構造a〜cを例示することができる。
【0018】
【化3】
【0019】
式(1)におけるRはアルキル基である。Rがとりうるアルキル基は直鎖であっても分枝鎖であってもよく、水酸基などで置換されていてもいなくてもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜50の範囲内であり、15〜25の範囲内であるのが好ましい。R3の具体例として、炭素数12の直鎖アルキル基を例示することができる。
【0020】
本発明の組成物に使用するのが好ましいスフィンゴ糖脂質群として、式(1)のRが構造A、Bで表される糖部分であって、Rが炭素数12の直鎖アルキル基であるスフィンゴ糖脂質群を挙げることができる。また、別の好ましいスフィンゴ糖脂質群として、式(1)のRが構造a、bまたはcで表され、Rが炭素数12の直鎖アルキル基であるスフィンゴ糖脂質群を挙げることができる。特に好ましいスフィンゴ糖脂質群として、式(1)のRが構造A、Bで表される糖部分であって、Rが構造a、bまたはcで表され、Rが炭素数12の直鎖アルキル基であるスフィンゴ糖脂質群を挙げることができる。
【0021】
スフィンゴ糖脂質は、通常、高濃度で含有させると沈殿するので、これまでは、含有量を1重量%未満としていたが、本発明の組成物では、高濃度でスフィンゴ糖脂質を含有させても、ナノスケールの粒子として分散させる事ができる。この点で、本発明の組成物では、スフィンゴ糖脂質を好ましくは1〜10質量%含有し、より好ましくは、2〜8質量%含有し、更に好ましくは、3〜7質量%含有する。
また、スフィンゴ糖脂質を含有する粒子は、本発明の組成物では、ナノスケールで分散している。具体的には、100nm未満の平均粒径を有し、通常30nm以上100nm未満の平均粒径を有し、好ましくは60〜90nmの平均粒径を有する。本発明の組成物は、このように、スフィンゴ糖脂質を含有する粒子がナノスケールで分散しているために、透明性が高く、これを含む肌質改善剤は、皮膚への浸透性が高く、保湿性及びバリア能に優れる。
なお、本発明の組成物が含有する粒子の平均粒子径は、例えば、ナノ粒子径測定分布装置SALD−7500nano(島津製作所製)によって測定することができる。
【0022】
<分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコール>
水酸基を3個以上もつ多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、及びジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリンを挙げることができ、これらを1種以上含むことができる。但し、ポリグリセリンは、デカグリセリン以下の炭素数のものが好ましく、単独で用いてもよいが、グリセリン又はジグリセリンと併用することが好ましい。水酸基を3個以上もつ多価アルコールとしては、特にグリセリンが好ましい。なお、単糖類は含まないことが好ましい。
従来のスフィンゴ糖脂質を含有する組成物では、多量のグリセリンを配合してゲル化し、必要に応じて水を添加して乳化組成物としていたが、本発明の組成物では、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールの含有量を比較的少なくすることができる。このため、本発明の組成物では、分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールの含有量によって変動するが、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールの含有量は、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜45重量%であり、更に好ましくは25〜40重量%である。
【0023】
<分子内に水酸基を2個もつ多価アルコール>
本発明の好ましい実施形態では、分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールを更に含有する。分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールを分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールと共存させると、後者のみの場合に発生する泡を大幅に軽減でき、消泡処理が不要となる。また、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールによる分散効果を維持させながらも、当該多価アルコールの添加による粘性の増加を抑制する効果を有する。得られる組成物の粘度が低く抑えられ、さっぱりとした感触の化粧料を提供することができる。
【0024】
分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量1000以下)、プロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。中でも、1,3−ブチレングリコール、又はプロピレングリコールが好ましく、1,3−ブチレングリコールが特に好ましい。なお、単糖類は含まないことが好ましい。
【0025】
分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールは、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールによる泡の発生を軽減でき、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールによる分散効果に悪影響を及ぼさない範囲の量を含有すれば良く、この点で、本発明の組成物における分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールの含有量は、好ましくは3〜25重量%であり、より好ましくは5〜20重量%であり、更に好ましくは7〜15重量%である。
【0026】
<界面活性剤、リン脂質>
本発明の組成物では、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤を含有してもよい。但し、本発明の組成物では、界面活性剤を含有しなくとも、スフィンゴ糖脂質を含有する粒子をナノスケールで安定的に分散させることができる。従って、基本的に界面活性剤を含まない組成とすることが好ましい。また、上述の通り、微生物由来のスフィンゴ糖脂質を使用して組成物を調製する場合には、動物由来のスフィンゴ糖脂質を使用して組成物を調製する場合に比較してリン脂質(リン酸と脂肪酸のエステルであり、典型的には細胞膜リン脂質)の含有が多くなり、この成分が、組成物の分散安定性を高めるため好ましい。この結果、微生物由来、特に細菌由来のスフィンゴ糖脂質を使用して組成物を調製する場合には、当該組成物の調製に伴って含有されることとなるリン脂質以外の界面活性剤を、実質的に含まない組成、すなわちリン脂質以外の界面活性剤を含まない組成、とすることが好ましい。なお、本発明の組成物において、当該組成物の調製に伴って含有されることとなる界面活性を有する物質は、リン脂質以外の物質であっても含有されてよい。
リン脂質は細菌等の微生物以外の生物に由来するものを含有しても良いが、何れにしても、組成物中のリン脂質の含有量は、0.005〜1.25質量%が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましい。
【0027】
なお、リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンを挙げることができる。また、非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタンエステル(例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、グリセロールエーテル(例えばグリセロールモノイソステアレート、グリセロールモノミリステート)、ポリオキシエチレングリセロールエーテル(例えばポリオキシエチレングリセロールモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセロールモノミリステート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばジグリセリルモノステアレート、デカグリセリルデカイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えばグリセリルモノカプレート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノリノレエート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノジリノレエート、グリセリルモノジカプレート)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレングリセリルモノミリステート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレエート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート)、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルドデシルアルコール、ポリオキシエチレン−2−デシルテトラデシルアルコール)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンジヒドロコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油イソステアレート)、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル)を挙げることができる。また、陰イオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸(例えばオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸)の塩(例えばジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩)、エーテルカルボン酸アルカリ塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルサルコン塩、高級アルキルスルホン酸塩を例示することができる。さらに、陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤としては、例えばアルキル4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン塩を挙げることができる。
【0028】
<油分>
本発明の組成物では、油脂成分を含んでよいが、スフィンゴ糖脂質を含有する粒子の微粒子化の観点からは、含まない方が好ましい。
油脂成分として、例えば、脂肪酸(例えばオレイン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、コルンビン酸、エイコサ−(n−6,9,13)−トリエン酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、チムノドン酸、ヘキサエン酸)、エステル油(例えばペンタエリスリトール−テトラ−2−エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、オクチルドデシルミリステート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート)、ロウ(例えばミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ワセリン)、動物油および植物油(例えばミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、カカオ脂、パーム油、タラ肝油、牛脂、バター脂、月見草油、コメヌカ油、スクワラン)、鉱物油(例えば炭化水素系オイル、流動パラフィン)、シリコーンオイル(例えばメチルフェニルシリコン、ジメチルシリコン)、高級アルコール(例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール)およびこれらの誘導体を挙げることができる。
【0029】
<多糖類>
本発明の組成物では、任意成分として、多糖類を含有してもよい。従来のスフィンゴ糖脂質を含有する組成物では、多価アルコールと共に単糖を含有するものがあるが、本発明の組成物では、フィンゴ糖脂質をナノレベルで安定的に分散させる点で、単糖類より、多糖類を含有させることが好ましい。本発明の組成物に配合させる多糖類としては、例えば、ペクチン、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、ヒアルロン酸誘導体、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸の塩(例えば、ナトリウム塩)、アルギン酸、アルギン酸の塩(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられ、中でもヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、ヒアルロン酸誘導体が好ましい。
【0030】
<各成分の重量比>
本発明の組成物では、グリセリンに対するスフィンゴ糖脂質の重量比を比較的大きくすることができ、スフィンゴ糖脂質の含有量の多い組成とすることができる。また、本発明の組成物では、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールによる分散効果と分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコールの消泡効果を上手くバランスさせることが好ましい。従って、本発明の好ましい実施形態における組成物では、分子内に水酸基を2個有する多価アルコールと、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールとの重量比(DA:MA)は、好ましくは、1:1〜1:4であり、より好ましくは、1:2〜1:3である。また、この両者をこのような重量比で組合せる組成の場合には、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールの含有量は組成物全体の30〜50重量%とすることが好ましい。同様に、分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコールを含有する組成物の場合には、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールと、スフィンゴ糖脂質との重量比(MA:S)は、好ましくは、2:1〜9:1であり、より好ましくは、5:1〜8:1である。
【0031】
なお、各成分の含有量については、市販の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)などにより測定することができる。
【0032】
<組成物の粘度>
本発明の組成物は、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールと共に分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを配合、好ましくは上述した比率で配合するため、組成物の粘度が低く抑えられ、さっぱりとした感触の化粧料を提供することができる。
【0033】
<適用>
本発明による組成物は、典型的には、肌質改善剤としての(肌質改善用の)、化粧料、医薬などの原料として使用することができ、好適には、肌質改善用の化粧料を調製する際に利用することができる。従って、最終製品に応じて、アミノ酸、核酸、コラーゲン、アセチルグルコサミン等の他、デキストリン、セルロース、ラクトース等の賦形剤、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類、鉄、カルシウム等のミネラル、その他、潤沢剤、香料、アルギン酸またはその塩、キサンタンガム等の増粘剤、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、炭酸水素ナトリウムやクエン酸等のpH調整剤を含有させて各種製品を製造することができる。
【0034】
また、本発明の組成物が利用される化粧料は、肌の保湿性を向上させたり、バリア性を高める目的の製品を典型例として挙げることができる。化粧料の種類としては、例えば、化粧石鹸、シャンプー、洗顔料、リンス、アイクリーム、アイシャドウ、クリーム・乳液、化粧水、美容液、香水、おしろい、化粧油、頭髪用化粧料、染毛料、練香水、パウダー、パック、ひげそり用クリーム、ひげそり用ローション、日焼けオイル、日焼け止めオイル、日焼けローション、日焼け止めローション、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、ファンデーション、粉末香水、ほお紅、マスカラ、眉墨、爪クリーム、美爪エナメル、美爪エナメル除去液、洗毛料、浴用化粧料、口紅、リップクリーム、アイライナー、歯磨き、デオドラント剤、オーデコロン、養毛剤および育毛剤などを挙げることができる。また、軟膏剤や湿布剤などとして使用することもできる。
なお、本実施形態に係る化粧料は、保湿性に優れるだけでなく、透明性にも優れることから、前記の化粧料の中でも、高い透明性が要求される製品や、無着色を長所とした製品、例えば、化粧水、美容液などに好適に適用することができる。
【0035】
化粧料には、使用目的に応じて様々な成分が添加され、添加成分としては、例えば、油脂成分、UV吸収剤、IR吸収剤、乳化剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、抗酸化剤、美白剤、多糖類、蛍光材料、顔料、色素、香料、金属イオン封鎖剤、バインダー、増量剤、抗生物質、血行促進剤、消炎剤、細胞賦活剤などが挙げられる。
【0036】
<製造例>
次に、本発明の乳化組成物の製造方法を説明する。
本発明においては、例えば、スフィンゴ糖脂質及び分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを水と混合し、得られた混合物を高圧処理して乳化し、得られた乳化混合物に、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールを添加、混合して、乳化組成物を製造する。このようなプロセスにより、ナノスケールの微細な粒子を安定的に分散しながらも、製造過程でほとんど発泡せず、泡を軽減する処理が不要となっている。
【0037】
スフィンゴ糖脂質及び分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを水と混合する工程では、添加順は何れでもよく、例えば、スフィンゴ糖脂質を水と混合した後で、分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを添加してもよい。
高圧処理工程は、高圧ホモジナイザー等の高圧乳化装置を用いて、90MPaの条件で分散処理をすることが好ましい。この高圧処理工程の条件により、粒子の平均粒径が異なる事となるので、特に微細な粒子としたい場合には、より圧力が高い条件等で高圧処理をすることが好ましい。また、高圧乳化装置は上記のような均質バルブ型高圧ホモジナイザーの他、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスク社製)やナノマイザー(吉田機械工業製)のようなチャンバー型高圧ホモジナイザーを用いてもよい。分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールを添加した後の混合は、泡の発生を抑制するために、穏やかに攪拌して混合することが好ましく、スターラーやボルテックスを用いた通常の攪拌処理を行えばよい。
【実施例】
【0038】
以下で、本発明の実施例及び比較例を例示して、本発明をより具体的に説明する。言うまでもないが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0039】
<実施例1〜5及び比較例6>
キッコーマンバイオケミファ株式会社製の商品名:バイオスフィンゴのスフィンゴ糖脂質(スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)より抽出して得られたスフィンゴ糖脂質が主な主成分でありリン脂質も含有している)を水に分散させた後、1,3-ブチレングリコールを添加し、高圧ホモジナイザー(APV社製、商品名:APV-1000)を用いて90MPa以上の条件で高圧乳化処理を行い、その後、グリセリンを添加して攪拌、混合した。
【0040】
<実施例6〜8>
実施例1と同じスフィンゴ糖脂質を用い、これを水に分散させた後、グリセリンを添加し、実施例1と同様に、高圧ホモジナイザーで高圧乳化処理を行った。
<比較例1〜5>
実施例1と同じスフィンゴ糖脂質を用い、これを水に分散させた後、1,3-ブチレングリコールを添加し、実施例1と同様にして高圧ホモジナイザーを用いて高圧乳化処理を行った。
【0041】
各成分の配合量(単位は重量%である)は、以下の通りである。
【表1】
【0042】
<特性評価試験>
1.平均粒子径(nm)
SALD-7500nano (島津製作所社製)を用いて各実施例及び各比較例の組成物中の粒子の平均粒子を測定した。
【0043】
2.透過率(%T)
紫外可視分光光度計V-630(日本分光社製)用いて各実施例及び各比較例の組成物中の粒子の平均粒子を測定した。
【0044】
3.保存安定性
各実施例及び各比較例の組成物を、自然雰囲気(25℃)と、恒温器DO-300A(アズワン社製)で昇温して50℃で放置し、2週間後と、4週間後に、組成物の性状(沈殿物、析出物の有無など)を確認した。
(評価基準)
○:沈殿なし
△:少量の析出物あり
×:白濁、析出物あり
【0045】
4.泡立ちの状態
肉眼で評価した。
【0046】
5.保湿性、バリア性改善効果
実施例3の組成物と、それと同じ組成であるが高圧乳化処理をしなかった以外は同様に調製した組成物(比較例7)と、実施例3で得られた組成物とスフィンゴ糖脂質を含まない点以外は同様に調製した組成物(比較例8)とを、それぞれ精製水で5倍希釈して用い、以下の手順で保湿性試験とバリア性試験を実施した。なお、比較例7の組成物の透過率は、0.7であり、平均粒径は、5.2μmであった。
【0047】
(試験手順)
1)健常者のボランティアを被験者とし(n=9)、その前腕部を洗浄した。
2)温度20℃、湿度50%に環境を調整した部屋で20分以上待機してもらった。
3)各組成物を塗布する前に、塗布予定部位の角層水分量、経皮水分蒸散量を測定した。
4)塗布予定部位に、5%SDSを含浸した不織布を30分間貼り付け、水洗後、再度環境調整室で20分待機後、角層水分量及び経皮水分蒸散量を測定した。
5)測定後直ぐに各組成物をSDS処理した部位に塗布し、その後は、毎日、朝及び入浴後に各組成物を塗布した。各塗布量は20μlとした。
6)最初の塗布から2日及び4日後に角層水分量及び経皮水分蒸散量を測定し、4日後に皮膚の状態も観察した。
(測定機器)
角層水分量: Corneometer CM825(Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)
経皮水分蒸散量:Tewameter TM-300(Courage+Khazaka Electronic Gmbh社製)
(皮膚の状態の観察)
皮膚の一部を採取して、顕微鏡で(30倍)皮膚の状態を確認した。
【0048】
<特性評価結果>
1.透明性、平均粒径、発泡、及び安定性
実施例1〜5及び比較例1〜9の組成物の透明性、平均粒径、発泡、及び安定性の評価結果は以下の通りとなった。
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
スフィンゴ糖脂質を含むが分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを含まない組成物(比較例1〜4)でも、高圧乳化処理によりナノスケール粒径の粒子が得られ、高い透過率を示したが、経時的に沈殿が発生した。また、スフィンゴ糖脂質を含み、分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを含まず、分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを40重量%含有する組成物(比較例5)では、高圧乳化処理によってナノスケール粒径の粒子は得られず、不透明で沈殿が発生した。これに対して、スフィンゴ糖脂質と共に分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを含む組成物(実施例6〜8)では、高圧乳化処理によりナノスケール粒径の粒子が得られ、高い透過率を示し、25℃と50℃で4週間放置した場合でも、沈殿が発生せず、ナノスケールの粒径も維持された。また、更に分子内に水酸基を2個有する多価アルコールを含む組成物(実施例1〜5)では、スフィンゴ糖脂質と共に分子内に水酸基を3個有する多価アルコールを含む組成物(実施例6〜8)に比べ、組成物の粘度が非常に低く、製造過程で分子内に水酸基を3個有する多価アルコールによる泡の発生が殆どないため、泡を除去する必要がなかった。但し、水酸基を2個有する多価アルコールの含有量を分子内に水酸基を3個有する多価アルコールの含有量より多くした組成物では(比較例6)、経時的に沈殿が発生した。
【0051】
2.保湿性及びバリア性
得られた測定値を、5%SDS処理前の値を100%、5%SDS処理後の値を0%とした時の相対値を算出し、改善率として示した。図1に示す通り、実施例3の組成物では、角質水分量が塗布後4日後に処理前の水準に回復しており、スフィンゴ糖脂質を含まない比較例8の組成物や、高圧乳化処理をしなかった比較例7の組成物と比較して、優位に角層水分量が増加した。また、図2に示す通り、経皮水分蒸散量も実施例3の組成物において比較例7及び8の組成物と比較して、回復傾向が見られた。従って、本発明による乳化組成物が、保湿性及びバリア性の改善効果に優れることが実証された。
【0052】
3.皮膚状態の改善
顕微鏡で観察した被験者の皮膚状態についても、図2に示す通り、高圧乳化処理によりスフィンゴ糖脂質をナノスケールの粒子にした実施例3の組成物で、プラセボや高圧乳化処理しなかった比較例7の組成物と比較して、明らかな肌の改善が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、透明性が高く、肌に適用した際の保湿性及びバリア能の高い、化粧料等の肌質改善剤を提供するための保存安定性が高い乳化組成物が提供される。したがって、本発明は化粧料産業及びその関連産業の発展に寄与するところ大である。
図1
図2
図3