特許第6752092号(P6752092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752092
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】真円度測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20200831BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G01B5/00 L
   G01B5/20 R
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-178459(P2016-178459)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-44813(P2018-44813A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 義幸
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−313247(JP,A)
【文献】 特開2011−163796(JP,A)
【文献】 特開2018−151965(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0253871(US,A1)
【文献】 特開平11−326147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
G01B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースに対して回転可能なテーブルと、前記テーブルに載置されたワークの表面を検出するプローブと、前記テーブルを回転駆動するモータと、前記モータの回転を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
前記モータの起動電流を検出可能な起動電流検出部と、
前記モータの起動電流に応じて前記モータの加速時間および減速時間の少なくともいずれかを設定する加減速時間設定部と、を有することを特徴とする真円度測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の真円度測定機において、
前記加減速時間設定部は、前記加速時間および前記減速時間の少なくともいずれかについて、測定可能な前記ワークのうち最大重量または最大径の前記ワークの慣性モーメントに基づく初期値を予め設定しておき、検出された前記起動電流が小さいほど、短くなるように再設定することを特徴とする真円度測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外周形状を測定する真円度測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの外周形状を測定するために、真円度測定機が用いられている。
真円度測定機では、ワークを回転式のテーブルに載置し、テーブルでワークを回転させつつ、ワークの周面にプローブを接触させることで、ワークの外周形状を測定している(特許文献1参照)。
真円度測定機において、精度よく測定を行うために、ワークの周面にプローブを接触させて測定を行う際には、ワークおよびテーブルの回転速度が所定の範囲内となるように動作制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−065751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような真円度測定機において、ワークの周面を測定する際には、測定に適した所定速度でワークを回転させる必要がある。このために、テーブルに駆動力を与え、ワークを停止状態から所期の回転速度まで加速する。
ここで、ワークは、それぞれ固有の慣性モーメントを有する。このため、テーブルの駆動力が同じでも、ワークの回転速度が所期の範囲に到達するまでの時間(加速時間)が個々に相違する。すなわち、慣性モーメントが大きなワークでは、加速時間が長くなり、慣性モーメントが小さなワークでは、加速時間が短くなる。
このような加速時間は、なるべく短いほうが、直ちに測定動作に入ることができ、作業効率の観点から望ましい。しかし、加速時間が短過ぎると、ワークの加速が不十分になり、所期の回転速度での適切な測定が行えなくなる可能性がある。
【0005】
なお、テーブルの駆動力を強化することで、慣性モーメントが大きなワークでも、短時間に十分な加速が可能である。しかし、強力な駆動機構は、定速回転する測定状態において不必要な過剰設備となること、測定機全体として機構的に過剰な負担を生じかねず、高精度化にそぐわない。このようなことから、テーブルの駆動機構を必要以上に強化することは行われない。
【0006】
また、テーブルの加速度を制御する構成においても、できるだけ加速時間が短い方が望ましいが、テーブルに載置されたワークの慣性モーメントに適する加速時間は自動で判別されない。仮に、ワークの慣性モーメントに適した加速時間よりも短い加速時間が設定されると、大きな慣性モーメントが加わっているテーブルが急激に加速制御されるため、テーブルを駆動するモータの動作に支障が生じる。
【0007】
前述した加速時間の問題に対して、従来の真円度測定機では、最大のワーク(測定可能なワークのうち最大重量または最大径のもの)の慣性モーメントに合わせて、加速時間を十分に長く設定することで対応していた。
すなわち、従来の真円度測定器では、加速時間を長く設定することで、慣性モーメントが大きなワークであっても、モータの動作に支障なく、測定に必要な所期の回転速度まで到達できる十分な加速時間を確保していた。つまり、作業効率よりも、確実な測定が行えることを優先していた。
【0008】
一方、ワークが回転している状態でテーブルを制動し、ワークを停止状態まで減速する時間(減速時間)についても、同様の問題が生じることがある。
すなわち、慣性モーメントの大きなワークを短時間で制動すると、機構部分に負担が増大するという問題がある。また、テーブルの角度位置決めを行う場合、慣性モーメントの大きなワークを短時間で制動すると、正確な位置決めが行われない。そこで、減速時間についても十分に長く設定していた。
このように、従来の真円度測定機においては、テーブルの加減速時間(加速時間および減速時間)を十分に長く設定し、慣性モーメントが大きなワークでも無理なく高精度に加速および減速できるようにしていた。
【0009】
しかしながら、前述のように加減速時間を十分に長く設定していると、様々なワークを測定するほとんどの場合において、加減速時間は、本来必要となる時間よりも長い時間に設定される。このため、ワークを測定するためにかかる全体の時間が長くなり、真円度測定機による単位時間当たりの処理効率が低下する問題がある。
【0010】
本発明の目的は、測定の精度を確保しつつ測定効率を向上できる真円度測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の真円度測定機は、ベースと、前記ベースに対して回転可能なテーブルと、前記テーブルに載置されたワークの表面を検出するプローブと、前記テーブルを回転駆動するモータと、前記モータの回転を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記モータの起動電流を検出可能な起動電流検出部と、前記モータの起動電流に応じて前記モータの加速時間および減速時間の少なくともいずれかを設定する加減速時間設定部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明では、起動電流検出部により、モータの起動電流が検出される。
テーブルの起動初期に、モータには定常運転時の電流よりも大きな起動電流が流れる。起動電流は、モータの負荷トルクに比例し、モータの負荷トルクは、テーブルに載置されたワークの慣性モーメントに比例する。すなわち、起動電流検出部で検出される起動電流の大きさは、テーブルに載置されたワークの慣性モーメントに応じた値になる。
【0013】
本発明では、加減速時間設定部により、モータの起動電流に応じて、モータの加速時間および減速時間の少なくともいずれかが設定される。
すなわち、加減速時間設定部は、起動電流検出部によって検出された起動電流が大きければ、加速時間または減速時間を長く設定する。一方、起動電流が小さければ、加速時間または減速時間を短く設定する。起動電流に対する加速時間および減速時間の設定は、演算式により算出してもよいし、データテーブルを参照する等してもよく、連続的な比例関係であってもよく、区間毎の段階的な設定などであってもよい。
これにより、ワークの慣性モーメントが大きいほど、加速時間または減速時間が長く設定される。あるいは、ワークの慣性モーメントが小さいほど、加速時間または減速時間が短く設定される。
【0014】
よって、本発明の真円度測定機では、加速時間または減速時間を、テーブルに載置されたワークの慣性モーメントに応じた適切な長さに設定することができる。つまり、加速時間または減速時間を、慣性モーメントが大きなワークに対応する長い時間に固定する必要がない。このため、プローブによるワークの検出動作の前後に要するモータの加減速のための時間を短縮することができる。なお、モータが一定速度で回転する時間を変える必要はないため、精度よく測定するための測定時間は確保される。
従って、本発明によれば、測定の精度を確保しつつ測定効率を向上できる真円度測定機を提供することができる。
【0015】
また、本発明の真円度測定機において、前記加減速時間設定部は、前記加速時間および前記減速時間の少なくともいずれかについて、測定可能な前記ワークのうち最大重量または最大径の前記ワークの慣性モーメントに基づく初期値を予め設定しておき、検出された前記起動電流が小さいほど、短くなるように再設定してもよい。
これにより、モータの加速時間の初期値は慣性モーメントが大きなワークに合わせて余裕をもって設定されるため、モータの起動動作を安定させることができる。同様に、モータの減速時間が余裕をもって設定されるため、モータの減速動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に基づく真円度測定機の一実施形態を示す斜視図。
図2】本実施形態の真円度測定機を示すブロック図。
図3】本実施形態のモータの起動電流を示す模式的なグラフ。
図4】本実施形態の加減速時間設定部による加減速時間の設定例を示すグラフ。
図5】本実施形態の加減速時間設定部による加減速時間の設定例を示すテーブル。
図6】本実施形態のモータの回転速度と時間との関係を示す模式的なグラフ。
図7】本実施形態のテーブルおよび大きなワークを示す斜視図。
図8】本実施形態のテーブルおよび小さなワークを示す斜視図。
図9】本実施形態のモータの回転速度と時間との関係を示す模式的なグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔真円度測定機〕
図1において、真円度測定機1は、ベース10と、ベース10に対して回転可能なテーブル20と、テーブル20に載置されたワークWの表面を検出するプローブ30と、プローブ30を移動するプローブ移動機構40と、プローブ移動機構40の動作制御、プローブ30の検出出力の処理を行うための制御装置50と、を備えている。
ベース10には、テーブル20を回転駆動するモータ23が設置されている。モータ23は、制御装置50により動作制御される。
【0018】
テーブル20は、鉛直方向に配置される回転軸線Lを中心としてベース10に対して回転可能に設置されている。テーブル20の上面には、ワークWが載置される。ワークWの中心軸線Cはテーブル20の回転軸線Lの延長上に配置される。
【0019】
モータ23は、減速器などを介してテーブル20を回転駆動する。モータ23が所定回転速度N1で回転する間、テーブル20は一定の速度で回転する。テーブル20には、テーブル20の回転角度を読み取る角度センサ27が設けられている。
【0020】
プローブ30は、ワークWに接するスタイラス31と、スタイラス31の変位を信号として出力する本体部32とを有する。
プローブ移動機構40は、上下方向、および、ワークWに接近または離間する方向にプローブ30を移動させる。これにより、スタイラス31は、テーブル20に設置されたワークWの周面の任意高さ位置に接触する。
【0021】
制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータで構成されており、ワークWの真円度測定を含む各部の動作制御を行う。制御装置50は、入力端末51およびディスプレイ52を有し、これらを介して作業者Pは、真円度測定機1の操作および情報読み取りが可能である。
なお、本実施形態では、制御装置50が装置本体であるベース10と別体とされているが、制御装置50は装置本体に組み込まれていてもよい。
【0022】
図2において、制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを備えており、内部に格納されたプログラムを実行することによって、測定制御部53として機能する。
具体的には、測定制御部53は、モータ制御部54と、移動制御部55と、変位検出部56と、角度検出部57とを含んでいる。メモリは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などであり、記憶部58として機能する。
【0023】
測定制御部53は、真円度測定機1の各部を制御し、輪郭形状ないし真円度に関する所期の測定動作を実行させる。
具体的には、モータ制御部54によりモータ23の回転を制御してテーブル20を所定回転速度N1で回転させるとともに、移動制御部55によりプローブ移動機構40を制御してプローブ30をワークWの周面に接触させる。そして、テーブル20が所定回転速度N1で回転している間、角度検出部57で角度センサ27の信号に基づいてテーブル20の角度を検出するとともに、変位検出部56でプローブ30の信号に基づいてスタイラス31の変位を検出する。その結果、ワークWの全周つまり角度θ=0〜360度の変位が測定され、そのデータ処理によりワークWの周面の輪郭形状ないし真円度が求められる。
【0024】
モータ制御部54がモータ23の回転を制御するために、モータ制御部54とモータ23との間には、速度制御部61と、駆動部62と、電流センサ63と、回転速度検出部64が設置されている。
これらの速度制御部61ないし回転速度検出部64は、例えば電気回路で構成され、それぞれベース10に設けられてもよいし、制御装置50に設けられてもよい。
【0025】
速度制御部61には、モータ制御部54から各種指令値が入力されるとともに、回転速度検出部64からモータ23の回転速度が入力される。速度制御部61は、モータ23の回転速度が、モータ制御部54に指令された回転速度となるように制御信号を生成し、駆動部62に出力する。
【0026】
駆動部62は、速度制御部61から入力された制御信号に基づいてモータ23に電力を供給し、モータ23を駆動する。駆動部62は、例えば複数のスイッチング素子を有するモータドライバから構成される。
電流センサ63は、モータ23に流れる電流値を検出し、モータ制御部54に出力する。
回転速度検出部64は、例えば角度センサ27の信号等に基づいて、モータ23の回転速度を検出し、速度制御部61に出力する。
【0027】
モータ制御部54は、起動電流検出部541および加減速時間設定部542を含んで構成されている。
起動電流検出部541は、電流センサ63から入力されたモータ23の電流値に基づいて、モータ23の起動電流Imを検出する。
加減速時間設定部542は、起動電流検出部541が検出したモータ23の起動電流Imの大きさに応じて、モータ23の加速動作または減速動作を制御するための加速時間Tsおよび減速時間Tbを設定する。
【0028】
〔モータ23の制御動作〕
次に、モータ23を制御する動作について、図2から図6を参照して説明する。
モータ23の起動前、モータ制御部54には、加速時間Tsおよび減速時間Tbの初期値が設定されている。加速時間Tsおよび減速時間Tbの各初期値としては、例えば、測定可能なワークWのうち最大重量または最大径のワークWの慣性モーメントに基づく許容最短時間が用いられる。ここで、許容最短時間とは、ワークWの慣性モーメントが加わった状態で、モータ23の動作に支障なく、静止状態から所定回転速度N1に加速可能な最短時間または所定回転速度N1から静止状態に減速可能な最短時間である。
【0029】
作業者Pからの指示を受けて、モータ制御部54は、加速時間Tsの初期値に基づいて、モータ23を起動する各種指令値を速度制御部61に出力する。速度制御部61は、入力された各種指令値に基づいて制御信号を生成し、駆動部62に出力する。駆動部62は、入力された制御信号に基づいてモータ23を起動する。
【0030】
モータ23の起動時、モータ23には定常運転時の電流よりも大きな起動電流Imが流れる。起動電流Imは、モータ23の負荷トルクに比例し、モータ23の負荷トルクは、テーブル20に載置されたワークWの慣性モーメントに比例する。すなわち、起動電流Imの大きさは、テーブル20に載置されたワークWの慣性モーメントの大きさに応じる(図3参照)。
【0031】
モータ23の起動直後、起動電流検出部541は、電流センサ63から入力された電流値に基づいて、そのピーク電流を起動電流Imとして検出する。すると、加減速時間設定部542は、起動電流検出部541によって検出された起動電流Imに応じて、加速時間Tsおよび減速時間Tb(加減速時間Ts,Tb)を設定する。
【0032】
ここで、加減速時間設定部542は、起動電流Imが小さいほど、加減速時間Ts,Tbを短く設定する。起動電流Imに対する加減速時間Ts,Tbの設定は、演算式により算出してもよいし、データテーブルを参照する等してもよい。また、加減速時間Ts,Tbは、起動電流Imに対して連続的な比例関係を有するように設定されてもよいし、起動電流Imを複数の区間に分けて、各区分に応じて加減速時間Ts,Tbが段階的に設定されてもよい。
【0033】
例えば、図4では、起動電流Imと演算式を用いて設定される加減速時間Ts,Tbとの関係を示している。加減速時間Ts,Tbは、起動電流Imに対して、連続的な比例関係を有する。ただし、起動電流Imが所定の低電流値ImL以下である場合、急激な挙動によりテーブル20の駆動系が破損することを防ぐために、必要最短時間TsL,TbLが一律に設定される。
【0034】
また、図5では、起動電流Imの区間毎に対応付けられた加減速時間Ts,Tbのデータテーブルを示している。加減速時間Ts,Tbは、起動電流Imの各区間に応じて段階的に設定される。
なお、図5に示すテーブルにおいて、起動電流Imは、所定の低電流値ImL以上から所定の高電流値ImH未満までの範囲をn個の区間に分けられている。この範囲では、加速時間TsはTs(1)からTs(n)まで段階的に増加し、また、減速時間TbはTb(1)からTb(n)まで段階的に増加している。
また、所定の低電流値ImLより小さい区間には、急激な挙動によりテーブル20の駆動系が破損することを防ぐための必要最短時間TsL,TbLが対応付けられている。
また、図5に示すテーブルにおいて、所定の高電流値ImH以上の区間には、測定可能なワークWのうち最大重量または最大径のワークWの慣性モーメントに基づく許容最短時間TsH,TbHが対応付けられている。ここで、許容最短時間TsHは、ワークWの慣性モーメントが加わった状態で、モータ23の起動初期から所定回転速度N1に加速可能な最短時間である。許容最短時間TbHは、ワークWの慣性モーメントが加わった状態で、所定回転速度N1から静止状態に減速可能な最短時間である。
【0035】
その後、モータ制御部54は、再設定された加速時間Tsをかけて所定回転速度N1に到達できる加速度を演算し、この加速度を実現するための回転速度を含む指令値を速度制御部61に出力する。
なお、加減速時間設定部542によって設定された減速時間Tbについては、例えば記憶部58に一時記憶されてもよい。
【0036】
速度制御部61は、速度制御部61からの指令値を受けると、回転速度検出部64から入力された回転速度と、指令された回転速度との差異に基づいた制御信号を生成する。駆動部62は、この制御信号に基づいてモータ23を駆動する。
これにより、モータ23は、加減速時間設定部542に設定された加速時間Tsをかけて静止状態から所定回転速度N1にまで加速する。
【0037】
その後、モータ23は、予め設定された測定時間Trが経過するまで、所定回転速度N1で回転するように制御される。
なお、測定時間Trとしては、モータ23が所定回転速度N1に達した時点を測定可能時点とし、測定可能時点から少なくともテーブル20が1回転するための時間が確保されている。測定時間Trの間、プローブ30がテーブル20に載置されたワークWの表面を検出する。
【0038】
測定時間Trが経過したとき、モータ制御部54は、記憶部58に記憶された減速時間Tbを参照し、この減速時間Tbをかけて静止状態に到達できる減速度を演算し、この減速度を実現するための回転速度を含む指令値を速度制御部61に出力する。
【0039】
速度制御部61は、速度制御部61からの指令値を受けると、回転速度検出部64から入力された回転速度と指令された回転速度との差異に基づいた制御信号を生成する。駆動部62は、この制御信号に基づいてモータ23を駆動する。
これにより、モータ23は、加減速時間設定部542に設定された減速時間Tbをかけて所定回転速度N1から静止状態に減速する。
【0040】
以上の制御方法によれば、モータ23は、設定された加速時間Tsをかけて静止状態から所定回転速度N1に加速した後、測定時間Trが経過するまで所定回転速度N1で一定に回転するように制御される。測定時間Trの経過後、モータ23は、設定された減速時間Tbをかけて所定回転速度N1から静止状態に減速するように制御される(図6参照)。
なお、モータ23の起動時点から加速時間Tsが再設定される時点までの時間は、加速時間Tsに比べて極短い時間であるため、図6では記載を省略している。
【0041】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態では、起動電流検出部541がモータ23の起動電流Imを検出し、加減速時間設定部542が、検出された起動電流Imに応じてモータ23の加減速時間Ts,Tbを設定する。これにより、ワークWの慣性モーメントが大きいほど、加減速時間Ts,Tbを長く設定することができ、ワークWの慣性モーメントが小さいほど、加減速時間Ts,Tbを短く設定することができる。
【0042】
例えば、図7および図8にそれぞれ示すような大小2つのワークW1、W2を仮定する。ワークW1は、ワークW2よりも重量および径が大きく、その慣性モーメントが大きい。このため、ワークW1を測定するときの起動電流Im1よりも、ワークW2を測定するときの起動電流Im2の方が小さい(図3参照)。
すると、慣性モーメントが大きいワークW1では、加減速時間Ts1,Tb1が長く設定され、慣性モーメントが小さいワークW2では、加減速時間Ts2,Tb2が短く設定される(図9参照)。
【0043】
すなわち、本実施形態によれば、加減速時間Ts,Tbを、テーブル20に載置されたワークWの慣性モーメントに応じた適切な長さに設定することができる。これにより、加減速時間Ts,Tbを、慣性モーメントが大きなワークWに対応する長い時間に固定する必要がない。このため、プローブ30によるワークWの検出動作の前後に要するモータ23の加減速のための時間を短縮することができる。
なお、プローブ30が精度よく測定するための測定時間Tr(例えば図9のTr1およびTr2)は、ワークWの大きさに違いがあっても同様に確保される。
従って、本実施形態の真円度測定機1は、測定の精度を確保しつつ測定効率を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態では、加速時間Tsおよび減速時間Tbについて、測定可能なワークWのうち最大重量または最大径のワークWの慣性モーメントに基づく初期値を予め設定しておき、検出された起動電流Imが小さいほど、短くなるように再設定する。これにより、モータ23の加速時間Tsの初期値は慣性モーメントが大きなワークWに合わせて余裕をもって設定されるため、モータ23の起動動作を安定させることができる。同様に、モータ23の減速時間Tbが余裕をもって設定されるため、モータ23の減速動作を安定させることができる。
【0045】
〔変形例〕
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
前記実施形態では、加速時間Tsについて、測定可能なワークWのうち最大重量または最大径のワークの慣性モーメントに基づく初期値を用いることで、予め余裕をもって長い時間が設定されている。そして、検出された起動電流Imが小さいほど加速時間Tsを短く再設定している。
しかし、本発明はこれに限られず、加速時間Tsについて、例えば測定実施が最も予想されるワークWの慣性モーメントに基づく初期値を用い、検出された起動電流Imが大きければ加速時間Tsを長く設定し、検出された起動電流Imが小さければ加速時間Tsを短く設定してもよい。
【0046】
前記実施形態では、加減速時間設定部542は、加速時間Tsおよび減速時間Tbを起動電流Imに応じて設定しているが、加速時間Tsおよび減速時間Tbのいずれか一方を設定し、他方を固定値としてもよい。
前記実施形態では、制御装置50は、ベース10と別体としたが、ベース10に組み込まれたものとしてもよい。この場合、ベース10の表面に入力端末51およびディスプレイ52が設置されていてもよい。
【0047】
前記実施形態では、モータ23のフィードバック制御を行っているが、本発明はこれに限られない。すなわち、真円度測定機1が回転速度検出部64を有さず、速度制御部61は、モータ制御部54からの指令値のみに基づいて駆動部62を制御してもよい。
また、真円度測定機1がワークWの回転角度を位置決めする場合、ワークWの慣性モーメントに応じた長さの減速時間Tbを確保することが望ましい。この場合、位置決め用の減速時間Tbの設定方法について、前述した減速時間Tbの設定方法を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ワークの外周形状を測定する真円度測定機として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…真円度測定機、10…ベース、20…テーブル、23…モータ、30…プローブ、50…制御装置、54…モータ制御部、541…起動電流検出部、542…加減速時間設定部、Im…起動電流、N1…所定回転速度、Tb…減速時間、Tr…測定時間、Ts…加速時間、W…ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9