特許第6752249号(P6752249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6752249半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752249
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20200831BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20200831BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20200831BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01L21/316 X
   H01L21/31 E
   C23C16/56
   C23C16/42
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-60038(P2018-60038)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-175920(P2019-175920A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】山本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】定田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】角田 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀井 貞義
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−103351(JP,A)
【文献】 特開2011−086908(JP,A)
【文献】 特開2013−225577(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/021220(WO,A1)
【文献】 特開2015−233137(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/205、21/31−21/32、
21/365、21/469−21/475、
21/70−21/764、21/78、21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有膜が表面に形成された基板に対して、水および過酸化水素を含み、過酸化水素の濃度は第1濃度である第1処理ガスを供給する第1工程と、
前記第1工程の後、前記基板に対して、水および前記第1濃度よりも高い第2濃度の過酸化水素を含む第2処理ガスを供給する第2工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では前記シリコン含有膜を酸化し、前記第2工程では、前記第1工程で酸化されたシリコン含有膜を更に酸化する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1工程及び第2工程では、前記シリコン含有膜に含まれる不純物が除去される、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン含有膜は、不純物を含むシリコン酸化膜である、
請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記不純物は、水素および窒素の少なくともいずれかである、請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記シリコン含有膜は、シラザン結合を含有する膜である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1工程および第2工程では、前記シリコン含有膜に含まれる窒素が除去される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第1工程における前記基板の温度は80〜250℃である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1工程では、前記第1処理ガスを第1時間の間連続的に供給し、
前記第2工程では、前記第2処理ガスを第2時間の間連続的に供給する、請求項1〜のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1工程では、少なくとも、前記シリコン含有膜の厚さ方向全域にわたって該膜中に水を浸透させるまで前記第1処理ガスの供給を維持する、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記第1工程と第2工程の間に、水および過酸化水素を含むガスを、当該ガス中に含まれる過酸化水素の濃度が高くなるように連続的に変化させながら前記基板に対して供給する第3工程をさらに有する、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ、水および過酸化水素を含み、過酸化水素の濃度は第1濃度である第1処理ガスと、水および前記第1濃度よりも高い第2濃度の過酸化水素を含む第2処理ガスとを供給するガス供給系と、
シリコン含有膜が表面に形成された前記基板に対して前記第1処理ガスを供給する第1処理と、前記第1処理の後、前記基板に対して前記第2処理ガスを供給する第2処理と、を実行させるように、前記ガス供給系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項13】
基板処理装置の処理室内において、
シリコン含有膜が表面に形成された基板に対して、水および過酸化水素を含み、過酸化水素の濃度は第1濃度である第1処理ガスを供給する第1手順と、
前記第1手順の後、前記基板に対して、水および前記第1濃度よりも高い第2濃度の過酸化水素を含む第2処理ガスを供給する第2手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板に対して過酸化水素を含む処理ガスを供給することで、基板の表面に形成された膜を処理する基板処理工程が行われることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/069826号
【特許文献2】国際公開第2013/070343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、過酸化水素を用いて行う基板処理の品質を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、シリコン含有膜が表面に形成された基板に対して、水および第1濃度の過酸化水素を含む第1処理ガスを供給する第1工程と、前記第1工程の後、前記基板に対して、水および前記第1濃度よりも高い第2濃度の過酸化水素を含む第2処理ガスを供給する第2工程と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、過酸化水素を用いて行う基板処理の品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図3】本発明の一実施形態における事前処理工程を示すフロー図である。
図4】本発明の一実施形態において事前処理工程の後に実施される基板処理工程を示すフロー図である。
図5】本発明の一実施形態において実施される基板処理工程における処理ガスの濃度を示すグラフである。
図6】一変形例において実施される基板処理工程における処理ガスの濃度を示すグラフである。
図7】他の変形例において実施される基板処理工程における処理ガスの濃度を示すグラフである。
図8】他の変形例において実施される基板処理工程における処理ガスの濃度を示すグラフである。
図9】本発明の他の実施形態における事前処理工程を示すフロー図である。
図10】本発明の実施例及び比較例に係るサンプルのWERの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図1及び2を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は反応管203を備えている。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端にガス供給ポート203pを有し、下端に炉口(開口)を有する円筒部材として構成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成される。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0010】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な蓋部としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えば石英等の非金属材料により構成されている。シールキャップ219の下方には、回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、ボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。
【0011】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成され、上下に天板217a、底板217bを備えている。ボート217の下部に水平姿勢で多段に支持された断熱体218は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成されている。
【0012】
反応管203の外側には、加熱部としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は、ウエハ収容領域に収容されたウエハ200を所定の温度に加熱する他、処理室201内へ供給されたガスに熱エネルギーを付与してその液化を抑制する液化抑制機構として機能したり、このガスを熱で活性化させる励起機構として機能したりする。処理室201内には、反応管203の内壁に沿って、温度検出部としての温度センサ263が設けられている。
【0013】
反応管203の上端に設けられたガス供給ポート203pには、ガス供給管232aが接続されている。ガス供給管232aには、気化器としてのガス発生器250a、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、開閉弁であるバルブ243a、ガス濃度計300aが設けられている。
【0014】
ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側であって、ガス濃度計300よりも上流側には、キャリアガス(希釈用ガス)を供給するガス供給管232bが接続されている。ガス供給管232bには、MFC241bおよびバルブ243bが設けられている。キャリアガスとしては、酸素(O)ガス等の酸素(O)含有ガスや、窒素(N)ガスや希ガス等の不活性ガス、或いは、これらの混合ガスを用いることができる。
【0015】
ガス発生器250aには、第1の溶液である液体原料を供給する第1の供給管としての液体供給管232cが接続されている。第1の溶液である液体原料としては、過酸化水素(H)の含有濃度が第1の液体原料濃度の過酸化水素水を用いる。ここでは、第1の液体原料濃度の典型例として、本実施形態における液体原料の濃度は31%とする。ここで、過酸化水素水とは、常温で液体であるHを、溶媒としての水(HO)中に溶解させることで得られる水溶液のことである。液体供給管232cには、液体原料を貯留する貯留タンク(リザーバタンク)としての原料タンク250t、液体MFC(LMFC)241c、バルブ243cが設けられている。
【0016】
液体供給管232cのバルブ243cよりも下流側であって、ガス発生器250aよりも上流側には、第2の溶液である希釈用液体原料を供給する第2の供給管としての液体供給管232dが接続されている。第2の溶液である希釈用液体原料としては、Hの含有濃度が第1の液体原料濃度より小さい第2の液体原料濃度の過酸化水素水を用いる。第2の液体原料濃度は、例えば2%以下である。ここで、第2の液体原料濃度の典型例として、本実施形態における希釈用液体原料の濃度は0%とする(即ち純水を用いる。)。なお、本明細書では、Hの含有濃度が0%の純水も、Hの含有濃度が第2の液体原料濃度の水溶液に含む。液体供給管232dには、LMFC241d、バルブ243dが設けられている。
【0017】
すなわち、ガス発生器250aの上流側において液体供給管232dが液体供給管232cに接続されることにより、ガス発生器250aには、液体原料と希釈用液体原料の混合溶液、又は液体原料のみ、又は希釈用液体原料のみのいずれかが供給されうる構成となっている。混合溶液としては、Hの含有濃度が31%の過酸化水素水と純水とが混合された溶液である、例えばHの含有濃度が5%程度に希釈された過酸化水素水をガス発生器250aに供給しうる。
【0018】
ここで、純水で希釈される液体原料として用いる過酸化水素水の第1の液体原料濃度とは、特に、工業的に用いられる過酸化水素水の濃度として一般的な約31%が想定され、一般的に溶液中のHが化学的に安定状態を維持できる上限濃度である35%以下が望ましい。
【0019】
原料タンク250tには、原料タンク250t内へ圧送ガスを供給する圧送ガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232fには、MFC241f、バルブ243fが設けられている。圧送ガスは、原料タンク250t内の液体原料を液体供給管232cへ押し出すために用いられるもので、例えばキャリアガスと同様のガスを用いることができる。また、原料タンク250tには、その内部から液体原料を排出するドレイン管232gが設けられている。ドレイン管232gにはバルブ243gが設けられている。
【0020】
ガス発生器250aには、その内部へ気化用キャリアガスを供給するガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、MFC241e、バルブ243eが設けられている。気化用キャリアガスは、液体供給管232c,232dからガス発生器250aに供給された溶液を霧化して気化させ易くするために用いられるもので、例えばキャリアガスと同様のガスを用いることができる。
【0021】
ガス発生器250aは、液体原料と希釈用液体原料の混合溶液、液体原料、又は希釈用液体原料(以下、「混合溶液等」と総称する)を、例えば略大気圧下で120〜200℃の範囲内の所定の温度(気化温度)に加熱する等し、これを気化或いはミスト化させることによって気化ガスを発生させるように構成されている。本実施形態では、混合溶液等を気化或いはミスト化する際に、気化用キャリアガスを混合溶液等と共にガス発生器250aに供給することで、混合溶液等を霧化している。
なお、本明細書における「120〜200℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「120〜200℃」とは「120℃以上200℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0022】
混合溶液、又は液体原料の気化ガスは、水(HO)およびHを含むガスである。以下、このガスを、H含有ガスとも称する。また、特に希釈用液体原料が純水である場合には、気化ガスはHを含まないHOを含むガス、すなわち水蒸気である。
【0023】
以下、ガス発生器250aからガス供給管232aに供給される気化ガス含むガスを、一般に「処理ガス」と称する。また、後述する第1改質工程で用いる処理ガスを第1処理ガスとも称し、後述する第2改質工程で用いる処理ガスを第2処理ガスとも称する。また、気化用キャリアガスやキャリアガス(希釈用ガス)を用いる場合、気化用キャリアガスやキャリアガス(希釈用ガス)を、それぞれ、上述の「処理ガス」、「H含有ガス」、「第1処理ガス」、「第2処理ガス」に含めて考えてもよい。
【0024】
処理ガス中に含まれるHは、活性酸素の一種であり、不安定であって酸素(O)を放出しやすく、非常に強い酸化力を持つヒドロキシラジカル(OHラジカル)を生成させる。そのため、H含有ガスは、後述する基板処理工程において、強力な酸化剤として作用する。
【0025】
ガス濃度計300aは、ガス供給管232aを流れる処理ガス中に含まれるHやHOの含有濃度を測定(検出)する。ガス濃度計300aは、セル内を流れる処理ガス中を通過した赤外線の分光スペクトルを解析することによって、処理ガス中のHやHOの含有濃度を測定するように構成されている。
【0026】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243a、ガス濃度計300aにより、気化ガス供給系(第1供給系)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、キャリアガス供給系(第2供給系)が構成される。主に、原料タンク250t、液体供給管232c、LMFC241c、バルブ243cにより、第1の液体供給系(第3供給系)が構成される。主に、液体供給管232d、LMFC241d、バルブ243dにより、第2の液体供給系(第4供給系)が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、気化用キャリアガス供給系(第5供給系)が構成される。主に、ガス供給管232f、MFC241f、バルブ243fにより、圧送ガス供給系(第6供給系)が構成される。
【0027】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ245および圧力調整器としてのAPCバルブ244を介して、排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
図3に示すように、制御部であるコントローラ121は、CPU121a、RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介してCPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、タッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cはフラッシュメモリやHDD等により構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a,241b,241e,241f、LMFC241c,241d、バルブ243a〜243g、ガス発生器250a、ガス濃度計300a、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、ガス発生器250aによるガス生成動作、ガス濃度計300aに基づくMFC241a,241b,241e,241f、LMFC241c,241dによる流量調整動作、バルブ243a〜243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)事前処理工程
ここで、ウエハ200に対して基板処理工程を実施する前に行われる事前処理工程について、図3を用いて説明する。
【0034】
本工程では、ウエハ200に対して、流動性CVD(Flowable CVD(FCVD))法を用いて、シリコン酸化膜(SiO膜)を形成する。特に本工程では、流動性CVD法を用いることで、ウエハ200の表面に形成されたアスペクト比の大きい(例えば30倍以上である)トレンチ等のギャップ構造をSiO膜で埋め込むことができる。
【0035】
図3に示すように、本工程では、原料ガス供給工程と、酸化・改質工程を順に実施する。原料ガス供給工程では、ウエハ200に対して、シリコン含有原料ガスとしてトリシリルアミン(TSA)ガスを供給することにより、ウエハ200の表面上にシリコン含有膜を形成する。流動性CVD法では、TSAガスを供給する際にウエハ200を冷却することにより、ウエハ200の表面に到達したTSAガスに液体に似た流動性を与えて、表面のギャップ構造内を埋め込むようにシリコン含有膜を形成する。続いて酸化・改質工程では、ウエハ200上に形成されたシリコン含有膜に対してオゾン(O)ガスを供給することによりこれを酸化し、シリコン含有膜をSiO膜に改質する。また、Oガスの供給に替えて、酸化雰囲気下で紫外線(UV)を照射しながら300℃程度の温度でアニール処理を施すことにより、シリコン含有膜をSiO膜に改質することもできる。
【0036】
このように形成されたSiO膜には、TSAガス等のシリコン原料ガスに含まれる窒素(N)や水素(H)等が不純物として残存している。これらの膜中の不純物はSiO膜の膜特性を低下させる要因となる。例えばこれらの不純物がSiO膜中に含まれていることにより、SiO膜の指標の一つである、フッ酸等の溶液に対するウェットエッチレート(WER)が大きくなることがある。後述する基板処理工程では、ウエハ200上に形成されたSiO膜に対し、所定の温度条件下で処理ガスを供給することで、この膜を改質(酸化)する。
【0037】
(3)基板処理工程
続いて、上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程の一例について、図4図5を用いて説明する。図4は本実施形態における基板処理工程において実施される工程を示すフローチャートである。図5は、本実施形態において、ウエハ200に供給される処理ガスに含まれるHの濃度の処理時間に対する変化を示すグラフである。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0038】
図4図5に示す成膜シーケンスでは、SiO膜等のシリコン含有膜が表面に形成されたウエハ200に対して、HOを含みHを含まないガス、もしくはHOおよび第1濃度のHを含むガスのいずれかである第1処理ガスを供給する第1改質工程(第1工程)と、前記第1改質工程の後、ウエハ200に対して、HOおよび前記第1濃度よりも高い第2濃度のHを含む(すなわち、第1処理ガスよりもH濃度が高い)第2処理ガスを供給する第2改質工程(第2工程)と、を実施する。
【0039】
(基板搬入工程)
流動性CVD法によりSiO膜が表面に形成された複数枚のウエハ200が、ボート217に装填される。その後、図1に示すように複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入される。この状態で、シールキャップ219は反応管203の下端をシールした状態となる。
【0040】
(圧力・温度調整工程)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所定の圧力(改質圧力)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、ウエハ200の温度が所定の温度(第1温度)となるように、ヒータ207によって加熱される。本実施形態では400℃としている。この際、ウエハ200が所定の温度となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づいてヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207のフィードバック制御は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
(第1気化ガス生成工程)
また、続く第1改質工程の開始に先立って、第1改質工程においてHを第1の濃度で含む第1処理ガスをウエハ200に供給するため、ガス発生器250aにおける気化ガスの生成を開始する。本工程では、希釈用液体原料である純水を気化させることにより、気化ガスとして、Hを含まないHOを含むガス(水蒸気)を生成する。すなわち、過酸化水素を第1の液体原料濃度(0%)で含む希釈用液体原料(純水)を気化させることにより第1処理ガスを生成する。
【0042】
具体的には、まず、バルブ243d,243eを開き、LMFC241d、MFC241eにより流量制御しながら、ガス発生器250aへ純水と気化用キャリアガスの供給を開始し、ガス発生器250aにより水蒸気を発生させる。このとき、コントローラ121によりLMFC241dが制御されることにより、ガス発生器250aで生成される気化ガスの流量や濃度が調整される。気化ガスの発生量や濃度等が安定したら、続く第1改質工程を開始する。なお、図4では、本工程を圧力・温度調整工程の後に開始することが開示されているが、本工程は圧力・温度調整工程の間、又はその前から開始するようにしてもよい。
【0043】
(第1改質工程)
続いて、バルブ243aを開き、MFC241a、ガス供給管232a、ガス供給ポート203pを介して、処理室201内へ、Hを第1の濃度で含む第1処理ガスを供給し始める。本実施形態において、第1処理ガスはHを含まない水蒸気を含むガスである。つまり、Hに関する第1の濃度は0%としている。すなわち、本明細書においては一般に、HOおよび第1の濃度のHを含む第1処理ガスとして、第1の濃度が0%である、Hを含まない水蒸気を含むガスが含まれる。なお、第1の濃度が0%を超える(すなわちHを少しでも含んでいる)第1処理ガスは、「HOおよびHを含み、Hの濃度は第1の濃度である第1処理ガス」等と称することができる。
【0044】
処理室201内へ供給された第1処理ガスは、処理室201内の下方に向かって流れ、排気管231を介して処理室201の外部へ排出される。このとき、ウエハ200に対して第1処理ガスが供給される。このとき、バルブ243bを開き、MFC241bにより流量調整しながら、ガス供給管232a、ガス供給ポート203pを介した処理室201内へのキャリアガス(Oガス)の供給を行うようにしてもよい。この場合、第1処理ガスは、ガス供給管232a内にてOガスによって希釈され、その状態で処理室201内へ供給される。Oガスの供給によって第1処理ガスのH濃度(処理室201内におけるHの分圧)を調整することで、処理室201内へ供給された第1処理ガスの液化を抑制したり、シリコン含有膜の改質レートを調整したりすることが可能となる。第1処理ガスのHO濃度は、ガス発生器250aに供給する気化用キャリアガスの流量や希釈用液体原料の流量を変えることで調整してもよい。
【0045】
第1改質工程の処理条件としては、以下が例示される。
希釈用液体原料(純水)の流量:1.0〜10sccm、好ましくは1.6〜8sccm
液体原料の気化条件:略大気圧下で120〜200℃に加熱
改質圧力:700〜1000hPa(大気圧、微減圧および微加圧のうちいずれか)
ウエハ200の温度(第1温度):250℃以上600℃未満、好ましくは400℃以上600℃未満
ガス(気化用キャリアガス及びキャリアガス(希釈用ガス))の全流量:0〜20SLM、好ましくは5〜10SLM
【0046】
上述の条件下でウエハ200に対して第1処理ガスを供給し、この状態を所定の第1時間(例えば20〜720分の範囲内の時間)維持することにより、ウエハ200上に形成されていたシリコン含有膜であるSiO膜を改質(酸化)することが可能となる。すなわち、第1処理ガスに含まれるO成分をシリコン含有膜中に添加することができ、また、シリコン含有膜に含まれるN成分、H成分等の不純物(第1不純物)をこの膜から脱離(除去)させることが可能となる。
【0047】
ここで、続く第2改質工程において用いられる第2処理ガスとしてのH含有ガスに含まれるHは、上述したように非常に強い酸化力を有する。そのため、本工程において第1処理ガスの代わりに高濃度のH含有ガスをウエハ200に供給すると、シリコン含有膜の表面から急速に改質が進み、改質に伴って表面付近の層において局所的に緻密化(硬化)が生じると推測される。そこで、本実施形態では、第2処理ガスよりもH濃度が低い第1の濃度(本実施形態では0%)のガスを第1処理ガスとして用いることで、第2改質工程に比べて相対的に弱い酸化力でシリコン含有膜の改質(酸化)を行う。相対的に弱い酸化力を有する処理ガスを用いて改質を行うことにより、シリコン含有膜の表面付近の層における局所的な緻密化を抑制しながら、第1処理ガスに含まれるHO成分(第1処理ガス中にHが含まれている場合にはH成分も)を、シリコン含有膜の表面だけでなく、その膜中に(厚さ方向に向けて)効率的に浸透させることが可能となる。結果として、上述した改質の効果を、この膜の表面だけでなく、深部においても得ることが可能となる。
【0048】
なお、シリコン含有膜の厚さ方向全域にわたって改質効果を得るには、第1改質工程を、少なくとも、シリコン含有膜の厚さ方向全域にわたって、すなわち、HO成分等が膜の深部に到達するまで実施し続けるのが好ましい。第1改質工程の実施期間(第1時間)は、シリコン含有膜の膜厚の増加に伴って増加させることが好ましい。
【0049】
なお、本工程のように第1処理ガスとしてHを含まない水蒸気を含むガスを用いて改質処理を行う場合、ウエハ200の温度が250℃未満となると、シリコン含有膜に対する改質効果が得られない。また、ウエハ200の温度が400℃未満となると、シリコン含有膜に対する改質効果が低下するため、処理温度は400℃以上であることが望ましい。ただし、第1処理ガスとしてHを含むガスを用いる場合、より低温領域までシリコン含有膜に対する改質効果が期待されるため、処理温度を250℃より低く、例えば80〜250℃とすることも可能である。処理温度が80℃より低いと、後述するように処理ガスが液化してパーティクル等が発生する原因となるため、80℃以上であることが望ましい。
【0050】
また、ウエハ200の温度が600℃以上となると、ウエハ200上に形成されたパターンに対する熱履歴(サーマルバジェット)の影響が一般的な許容範囲を超えるため、処理温度は600℃未満であることが望ましい。
【0051】
(パージ工程)
所定時間が経過し、第1処理ガスを用いたシリコン含有膜の改質処理が終了したら、バルブ243aを閉じ、ウエハ200に対する第1処理ガスの供給を停止する。そして、真空ポンプ246によって、処理室201内に残留した第1処理ガスや副生成物等を処理室201外に排出(パージ)する。第1改質工程でガス供給管232bからOガスを供給していた場合、次の第2改質工程を開始するまでバルブ243bを開いたままとし、Oガスの供給を継続してもよい。また、第1処理ガスの供給停止と同時或いは所定時間経過後にバルブ243bを閉じ、処理室201内へのOガスの供給を停止してもよい。なお、本工程が不要な場合、これを省略することもできる。
【0052】
また、第1改質工程後、ヒータ207を制御して、続く第2改質工程におけるウエハ200の温度が所定の温度(第2温度)となるように温度調整を行う。本実施形態では第2温度を第1温度と同じ400℃に維持する。ただし、第2温度を第1温度と異ならせてもよく、本工程においてウエハ200を第2温度まで昇温又は降温させてもよい。
【0053】
(第2気化ガス生成工程(濃度調整工程))
続く第2改質工程において、第1処理ガスよりもH濃度が高いガスを第2処理ガスとしてウエハ200に供給するため、第1改質工程後、第2改質工程の開始に先立って、ガス発生器250aにおいて、第1気化ガス生成工程よりもH濃度が高い気化ガスの生成を開始する。本工程では、液体原料である、Hの含有濃度が約31%の過酸化水素水を気化させることにより、気化ガスとして、H及びHOを含むガスを生成する。すなわち、過酸化水素を第1の液体原料濃度(0%)よりも高い第2の液体原料濃度(31%)で含む液体原料を気化させることにより第2処理ガスを生成する。本工程では、希釈用液体原料である純水による液体原料の希釈は行わない。
【0054】
具体的には、まず、バルブ243eを開いたままバルブ243dを閉じ、バルブ243cを開き、LMFC241c、MFC241eにより流量制御しながら、ガス発生器250aへ液体原料と気化用キャリアガスの供給を開始し、ガス発生器250aによりH及びHOを含むガスを発生させる。このとき、コントローラ121によりLMFC241cが制御されることにより、ガス発生器250aで生成される気化ガスの流量や濃度が調整される。気化ガスの発生量や濃度等が安定したら、続く第2改質工程を開始する。
【0055】
なお、本実施形態では、ガス発生器250aで生成する気化ガスの濃度変更のために本工程を設けているが、第1処理ガスと第2処理ガスを生成するガス発生器を個別に備えている装置形態である場合など、本工程が不要である場合もある。その場合には、本工程は省略することができる。また、本工程はパージ工程と並行して行うことが望ましい。
【0056】
(第2改質工程)
続いて、第1改質工程と同様の処理手順により、ウエハ200に対する、Hを第2の濃度で含む第2処理ガスの供給を開始する。本工程においても、第1改質工程と同様に、処理室201内へのOガスの供給を行うようにしてもよい。Oガスの供給によって第2処理ガスのH濃度(処理室201内におけるHの分圧)を調整することで、処理室201内へ供給された第2処理ガスの液化、すなわち、第2処理ガスに含まれるH成分の液化を抑制したり、シリコン含有膜の改質レートを調整したりすることも可能となる。第2処理ガスのH濃度は、ガス発生器250aに供給する気化用キャリアガスの流量や液体原料の流量を変えることで調整してもよい。
【0057】
第2改質工程の処理条件としては、以下が例示される。
液体原料のH濃度:20〜50%、好ましくは25〜35%
液体原料の流量:1.0〜10sccm、好ましくは1.6〜8sccm
液体原料の気化条件:略大気圧下で120〜200℃に加熱
改質圧力:700〜1000hPa(大気圧、微減圧および微加圧のうちいずれか)
ウエハ200の温度(第2温度):80〜450℃、好ましくは250〜400℃
ガス(気化用キャリアガス及びキャリアガス(希釈用ガス))の全流量:0〜20SLM、好ましくは5〜10SLM
【0058】
なお、本工程のように第2処理ガスとしてH含有ガスを用いて改質処理を行う場合、ウエハ200の温度が450℃を超えると、第2処理ガス中のHの分解が急速に進み、本工程において必要となる期間、処理室201内にHの成分を維持することができなくなる。また、ウエハ200の温度が400℃を超えると、Hの分解が発生することにより処理室201内においてHの濃度分布が不均一になる可能性がある。また、ウエハ200の温度が80℃未満となると、大気圧、微減圧又は微加圧の圧力条件下においては、第2処理ガスの液化発生を抑制することが困難となる。また、また、ウエハ200の温度が250℃未満となると、同圧力条件下において、第2処理ガスの液化が発生してミスト状のパーティクルが生じる可能性が高くなる。このようなパーティクルはウエハ200上に形成されるデバイスの品質低下につながる。
【0059】
本実施形態では、第2改質工程の温度を400℃とし、第1改質工程と第2改質工程におけるウエハ200の温度を一定に維持することで、両工程間における昇温又は降温に必要な期間を省略している。ただし、両工程間におけるウエハ200の温度を異ならせるようにしてもよい。
【0060】
上述の条件下でウエハ200に対して第2処理ガスを供給し、この状態を所定の第2時間(例えば5〜180分の範囲内の時間)維持することにより、第1改質工程にて改質を施したシリコン含有膜であるSiO膜をさらに改質(酸化)する。これにより、第1改質工程にて改質を施した膜中にO成分をさらに添加することができ、また、第1改質工程を行うことでは除去することが困難であったシリコン含有膜に残存していたN成分、H成分等の不純物(第2不純物)をこの膜から脱離(除去)させることが可能となる。
【0061】
本実施形態では、第2改質工程を、第1処理ガスよりもH濃度が高い第2処理ガスを用いて行うことにより、この工程で得られる酸化の作用を、第1改質工程で得られるそれに比べて強力なものとすることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、第2改質工程に先立って、第2処理ガスよりもH濃度が低い第1処理ガスを用いて第1改質工程を行うことにより、シリコン含有膜の表面の緻密化を抑制しながらHO(第1処理ガス中にHが含まれている場合にはHも)を膜中に効率的に浸透させている。発明者による検証によれば、第1改質工程において浸透したHO等の成分は、第2改質工程においてもH等の成分が膜中に浸透するのを促進する作用を有するものと推測される。そのため、第1処理ガスよりもH濃度が高い第1処理ガスを用いて行われる第2改質工程においても、H等の成分が膜中に浸透しやすくなり、膜の厚さ方向全域にわたり(膜の深部まで)H等の成分による改質効果を得ることが可能となる。
【0063】
また、発明者による検証によれば、第1改質工程において浸透したHO等の成分は、第2改質工程において、膜の深部に残存した不純物(第2不純物)を膜の表面から脱離しやすくする作用を有するものと推測される。
【0064】
これらの結果、第1改質工程にて改質を施した膜を、膜の厚さ方向全体にわたって不純物濃度の極めて低い良質なシリコン酸化膜(SiO膜)へと変化させることが可能となる。
【0065】
(乾燥工程)
所定時間が経過し、第2処理ガスを用いたシリコン含有膜の改質処理が終了したら、ウエハ200に対する第2処理ガスの供給を停止する。そして、ウエハ200に対してH非含有のOガスを供給することにより、ウエハ200を乾燥させる。この工程は、ウエハ200の温度を第2改質工程から維持した状態、または第2改質工程より高い温度とした状態で実行するのが好ましい。これにより、ウエハ200の乾燥を促進させることが可能となる。すなわち、第2改質工程を行うことで改質された膜の表面や膜中から、H成分やHO成分を効率的に脱離させることが可能となる。また、乾燥工程を第2改質工程から温度を維持した状態で実行することで、第2改質工程と乾燥工程との間の昇温を省略し、第2改質工程終了から乾燥工程開始までの時間を短縮することができるとともに、膜中に残存したHやHO等の成分による改質効果を、乾燥工程においても得ることが可能となる。
【0066】
(降温・大気圧復帰工程)
乾燥工程が終了した後、処理室201内を真空排気する。その後、処理室201内へNガスを供給してその内部を大気圧に復帰させ、処理室201内の熱容量を増加させる。これにより、ウエハ200や処理室201内の部材を均一に加熱することができ、真空排気で除去できなかったパーティクル、不純物、アウトガス等を処理室201内から除去することが可能となる。所定時間経過した後、処理室201内を所定の搬出可能温度に降温させる。
【0067】
(基板搬出工程)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される。
【0068】
(4)変形例
本実施形態は、以下の変形例のように変更することができる。また、これらの変形例は、任意に組み合わせることもできる。
【0069】
(変形例1)
図6は、変形例1において、ウエハ200に供給される処理ガスに含まれるHの濃度の処理時間に対する変化を示すグラフである。変形例1では、第1改質工程と第2改質工程との間に、HO及びHを含むガスを、当該ガス中に含まれるHの濃度が徐々に高くなるように連続的に変化させながらウエハ200に対して供給する第3改質工程(第3工程)を行う。すなわち、処理ガス中に含まれるHの濃度を、第1の濃度から第2の濃度まで連続的に変化させる。
【0070】
第3工程では、バルブ243dを開いたままバルブ243cを開き、LMFC241c,241d、MFC241eにより流量制御しながら、ガス発生器250aへ、液体原料及び希釈用液体原料の混合溶液と気化用キャリアガスの供給を開始する。このとき、コントローラ121によりLMFC241cとLMFC241dが制御されることにより、ガス発生器250aで生成される気化ガス中のHの濃度が時間と共に高くなるように、ガス発生器250aに供給される液体原料と希釈用液体原料の流量比が調整される。すなわち、変形例1では、液体原料と希釈用液体原料の流量比を、100:0から0:100へと時間的に変化させることにより、処理ガス中のHの濃度を第1の濃度から第2の濃度へと変化させていく。
【0071】
なお、ガス発生器250aに供給される液体原料と希釈用液体原料の流量比を調整する際、ガス濃度計300aにより検出された処理ガス中のHの濃度が所望の値となるようにLMFC241cとLMFC241dをフィードバック制御してもよい。処理ガス中のHの濃度を制御する他の実施例についても同様である。
【0072】
変形例1によれば、前述の第2気化ガス生成工程(濃度調整工程)を省略することができるため、基板処理のスループットを向上させることができる。また、上述の実施形態と比べて、同じ基板処理時間でも膜質を向上させることができる可能性がある。なお、変形例1では、前述のパージ工程は省略される。
【0073】
(変形例2)
図7は、変形例2において、ウエハ200に供給される処理ガスに含まれるHの濃度の処理時間に対する変化を示すグラフである。変形例2では、第1改質工程において、処理ガス中のHの濃度である第1の濃度を0ppmよりも高く、第2の濃度よりも小さい濃度とする。すなわち、第1処理ガスをHO及びHを含むガスとする。
【0074】
変形例2では、前述の第1気化ガス生成工程において、液体原料及び希釈用液体原料の混合溶液である希釈された過酸化水素水を気化させることにより、気化ガスとして、H含有ガスを生成する。
具体的には、まず、バルブ243c,243d,243eを開き、LMFC241c,241d、MFC241eにより流量制御しながら、ガス発生器250aへ混合溶液と気化用キャリアガスの供給を開始し、ガス発生器250aによりH含有ガスを発生させる。このとき、コントローラ121によりLMFC241cとLMFC241dが制御されることにより、ガス発生器250aで生成される気化ガス中のHの濃度が所定の値となるように、ガス発生器250aに供給される液体原料と希釈用液体原料の流量比が調整される。例えば、混合溶液中のH濃度が1〜5%の所定の値となるように流量比が調整される。
【0075】
変形例2によれば、第1改質工程の段階から、酸化力の強いHを含む処理ガスを用いてシリコン含有膜の改質を行うので、基板処理に要する時間を短縮し、基板処理のスループットを向上させることができる。また、上述の実施形態と比べて、同じ基板処理時間でも膜質を向上させることができる可能性がある。
【0076】
(変形例3)
図8は、変形例3において、ウエハ200に供給される処理ガスに含まれるHの濃度の処理時間に対する変化を示すグラフである。変形例3は変形例1及び2の組合せである。すなわち、変形例3では、変形例2と同様、第1改質工程において、処理ガス中のHの濃度(第1の濃度)を0ppmよりも高く、第2の濃度よりも小さいHO及びHを含むガスとする。更に、変形例1と同様、第1改質工程と第2改質工程との間に、処理ガス中に含まれるHの濃度が徐々に高くなるように連続的に変化させながらウエハ200に対して供給する第3改質工程(第3工程)を行う。変形例3によれば、変形例1及び2と同様の効果が期待される。
【0077】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0078】
上述の実施形態では、流動性CVD法により面上にSiO膜が形成された基板を処理する例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、処理対象の膜が流動性CVD法により形成されたSiO膜でなくとも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
例えば、以下の工程によりシリコン含有膜であるポリシラザン(PHPS)膜が形成された基板に対しても、上述の基板処理工程を適用して同様の効果を得ることができる。図9は、基板面上にPHPS膜を形成する工程を示すフローチャートである。
【0080】
基板面上にPHPS膜を形成する工程では、ポリシラザン(PHPS)塗布工程、プリベーク工程を順に実施する。PHPS塗布工程では、ウエハ200の表面上に、ポリシラザンを含む塗布液(ポリシラザン溶液)をスピンコーティング法等の手法を用いて塗布する。プリベーク工程では、塗膜が形成されたウエハ200を加熱処理することにより、この膜から溶剤を除去する。塗膜が形成されたウエハ200を、例えば70〜250℃の範囲内の処理温度(プリベーク温度)で加熱処理することにより、塗膜中から溶剤を揮発させることができる。
【0081】
ウエハ200の表面に形成された塗膜は、プリベーク工程を経ることで、シラザン結合(−Si−N−)を有する膜、すなわちポリシラザン膜となる。この膜には、シリコン(Si)の他、窒素(N)、水素(H)が含まれ、さらに、炭素(C)や他の不純物が混ざっている場合がある。他の実施形態では、このように形成されたポリシラザン膜に対して、上述の実施形態のようにHを含む処理ガスを用いて処理を施すことで、この膜からシラザン結合を構成するNを主に除去し、ポリシラザン膜をSiO膜へと改質(酸化)する。
【0082】
また、上述の実施形態では、基板処理装置の気化ガス供給系として、ガス発生器250aの上流側において、液体原料を供給する液体供給管232cと希釈用液体原料を供給する液体供給管232dとを合流させる構成としている。しかし、本発明における気化ガス供給系の構成はこれに限定されない。すなわち、液体原料を供給する液体供給管と希釈用液体原料を供給する液体供給管とがそれぞれ個別にガス発生器に接続される構成でもよい。また、希釈用液体原料を供給する液体供給管を設けずに、原料タンク250tに貯留する液体原料を入れ換えることによって、ガス発生器に供給する液体原料の濃度を切り換える構成でもよい。
【0083】
上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理手順、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件とすることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0085】
サンプル1〜3として、図1に示す基板処理装置を用い、流動性CVD法によりウエハ上に形成されたSiO膜を改質する処理をそれぞれ実施した。サンプル1の膜を作製する際は、上述の実施形態における第1改質工程のみを実施し、第2改質工程は不実施とした。サンプル2の膜を作製する際は、上述の実施形態における第2改質工程のみを実施し、第1改質工程は不実施とした。サンプル3の膜を作製する際は、上述の実施形態と同様の処理手順により、すなわち、第1改質工程と第2改質工程とをこの順に実施した。その他の処理工程及びその処理条件については、上述の実施形態と共通である。なお、サンプル1〜3の膜を作成する際には、乾燥工程の前に、共通して水蒸気によるアニール処理を実施した。また、乾燥工程における処理温度は600℃とした。
【0086】
サンプル1〜3の膜を作成する際の各工程の処理時間はそれぞれ1時間ずつである。ただし、サンプル1における第1改質工程と、サンプル2における第2改質工程は、サンプル3における第1改質工程と第2改質工程の合計処理時間(2時間)と同じとなるように、それぞれ2時間とした。また、第1改質工程および第2改質工程における処理温度は上述の実施形態と同様に400℃である。
【0087】
そして、サンプル1〜3の膜のWERの値を測定した。図10にその評価結果を示す。図10の横軸は膜の表面からの深さ(nm)を、縦軸は膜の表面からの深さ位置における膜のWER(Å/min)を、それぞれ示している。図10によれば、サンプル3の膜は、サンプル1,2の膜に比べて、WERの値が、膜の厚さ方向全域にわたって大幅に低減できていることが分かる。すなわち、第1改質工程、第2改質工程をこの順に行うことにより、ウエハ上に形成されたSiO膜を、膜の厚さ方向全体にわたってWERを増加させるNやHのような不純物の濃度が極めて低い、良質なSiO膜へと変化させることが可能となることが分かる。なお、サンプル1のように、第1改質工程のみを実施して第2改質工程を不実施とした場合や、サンプル2のように、第1改質工程を不実施として第2改質工程のみを実施とした場合には、サンプル3と同様の効果を得ることは困難であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、過酸化水素を用いて行う基板処理の品質を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
200 ウエハ(基板)
201 処理室

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10