(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753071
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】表面処理剤及び表面処理金属酸化物微粒子
(51)【国際特許分類】
C09C 3/10 20060101AFI20200831BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20200831BHJP
C09C 1/30 20060101ALI20200831BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20200831BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20200831BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20200831BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
C09C3/10
C09C1/00
C09C1/30
C08F8/42
C08K9/04
C08L57/02
C09D17/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-31567(P2016-31567)
(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公開番号】特開2017-149808(P2017-149808A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃幸
【審査官】
仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−073716(JP,A)
【文献】
特表2013−539814(JP,A)
【文献】
特開昭62−265301(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0144573(US,A1)
【文献】
国際公開第1996/023845(WO,A1)
【文献】
特開2002−284879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/10
C09C 1/00
C09C 1/30
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂及びジシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の石油樹脂で、3−トリエトキシシリルプロピル基及び/又は3−トリメトキシシリルプロピル基であるアルコキシシラン基を含む置換基を有し、軟化点75〜130℃、珪素含量0.2〜2wt%のシリル化石油樹脂を含有する表面処理剤にて修飾してなる平均粒径200nm以下の金属酸化物微粒子であることを特徴とする表面処理金属酸化物微粒子。
【請求項2】
金属酸化物微粒子が酸化ケイ素微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理金属酸化物微粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面処理金属酸化物微粒子が分散してなることを特徴とする分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を良好に分散させることのできる表面処理剤に関するものであり、特に金属酸化物微粒子を良好に分散させることのできるシリル化石油樹脂を含有する表面処理剤、それよりなる表面処理金属酸化物微粒子及び分散安定性に優れる分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線などの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜の硬度や耐候性、耐熱性等の向上のため、シリカ微粒子などの金属酸化物微粒子が工業的に広く使用されている。シリカ微粒子の表面にはシラノール基があり、親水性である。その為、有機成分である活性エネルギー線硬化性のモノマーやオリゴマー等とシリカ微粒子は相溶性が悪い。また、シリカ微粒子は有機成分と比較して比重が大きい。さらに、シリカ微粒子は通常、一次粒子間に働く分子間力や静電気力などにより強く凝集している。このことから活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中にシリカ微粒子を長期間にわたり安定して分散させることは一般に困難である。
【0003】
そこで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中にシリカ微粒子を安定して分散させる方法として、例えば、シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理することでシリカ微粒子の表面を疎水性化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−348196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に提案された方法により得られるシリカ微粒子でも活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中での分散安定性は満足できるものではない。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粒子、特に金属酸化物微粒子の分散化、分散安定性に優れた特性を付与する表面処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、変性石油樹脂を用いてなる新規な表面処理剤を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン基を含む置換基を有するシリル化石油樹脂を含有する表面処理剤に関するものである。
(R1−O)
3Si−R2− (1)
(ここで、R1及びR2は炭素数1〜5の炭化水素基を示す。)
本発明の表面処理剤を構成するシリル化石油樹脂は、上記一般式(1)で示されるアルコキシシラン基を含む置換基を有することにより粒子表面の修飾、例えば金属表面水酸基と反応を示すものとなる。ここで、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素数1〜5の炭化水素基を示す。一般式(1)で表されるアルコキシシラン基としては、例えば3−トリメトキシシリルプロピル基、3−トリエトキシシリルプロピル基、2−トリエトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルメチル基、4−トリエトキシシリルブチル基、5−トリエトキシシリルオクチル基などが挙げられる。中でも特に水酸基と優れた反応性を示すシリル化石油樹脂となり、優れた表面処理剤となることから、3−トリエトキシシリルプロピル基、3−トリメトキシシリルプロピル基であることが好ましい。
【0009】
該シリル化石油樹脂の製造方法としては、該シリル化石油樹脂を製造することが可能である限りにおいて如何なる方法を用いてもよく、その中でも特に効率よくシリル化石油樹脂を製造することが可能となることから、例えば下記一般式(2)又は(3)で表されるシランカップリング剤により石油樹脂を変性する方法により製造することが好ましい。
【0010】
(R1−O)
3Si−R2−S
x−R2−Si−(O−R1)
3 (2)
(ここで、R1及びR2は炭素数1〜5の炭化水素基であり、上記(1)と同様である。また、Xは2〜6の整数を示す。)
ここで、該一般式(2)で表されるシランカップリング剤としては、特にビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(略称TESPD)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(略称TESPT)が好ましい。具体的には、商品名「カブラス2」、「カブラス4」(以上、ダイソー社製)、「Si75」、「Si69」(デグサ社製)、「A−1289」(GEシリコーン社製)、「KBE−846」(信越化学社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独または混合して使用することもできる。
【0011】
(R1−O)
3Si−R2−S−H (3)
(ここで、R1及びR2は炭素数1〜5の炭化水素基であり、上記(1)と同様である。)
ここで、該一般式(3)で表されるシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、3−メルカプトジメトキシエチルシラン、3−メルカプトジエトキシエチルシラン、3−3−メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、3−メルカプトプロピルエトキシジメチルシラン、メルカプトメチレンメチルジエトキシシラン、メルカプトメチレントリエトキシシラン、2−メルカプトエチルメトキシジメチルシラン、2−メルカプトエチルエトキシジメチルシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルジメトキシメチルシラン、11−メルカプトウンデシルメトキシジメチルシラン、11−メルカプトウンデシルトリエトキシシラン、11−メルカプトウンデシルジエトキシメチルシランなどが挙げられる。特に3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。具体的には、商品名「Z−6062」、「Z−6911」(以上、東レ・ダウコーニング社製)、「A−189」、「A−1891」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、「KBE−803」(信越化学社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独または混合して使用することもできる。
【0012】
該シリル化石油樹脂を製造する際には、効率よく製造することが可能となることから石油樹脂に対して、シランカップリング剤を0.1〜25重量%の割合で用いることが好ましく、特に0.1〜20重量%であることが好ましい。その際の反応は特に制限はないが、無触媒またはラジカル開始剤の存在下、20〜250 ℃の温度範囲で0.1〜50時間の範囲で行うことが好ましい。また、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの脂肪族または芳香族炭化水素系溶剤などの不活性な溶剤の存在下で実施しても構わない。未反応物として残存するシランカップリング剤は、加熱下で不活性ガスを吹き込み除去することが出来る。また、変性後にテトラヒドロフランなどに溶解させた後、アルコールに滴下して再沈精製することで未反応のシランカップリング剤をアルコールに溶解除去することもできる。さらに、溶媒を用いる場合は反応後に溶媒を除去するための蒸留設備を設置していてもよい。
【0013】
該シリル化石油樹脂を構成する石油樹脂としては、一般的に石油樹脂として知られている範疇に属するものであれば特に限定はなく、例えば脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂を挙げることができる。
【0014】
脂肪族共重合系石油樹脂とは、その原料として石油類の熱分解により得られる分解油のうち沸点範囲が15〜70 ℃の範囲にあるC5留分、例えばメチルブテン、ペンテン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどを、単独重合又は共重合して得られた樹脂である。
【0015】
芳香族系石油樹脂とは、その原料油として石油類の熱分解により得られる分解油のうち沸点範囲が140〜280 ℃の範囲にあるC9留分、例えばスチレン、そのアルキル誘導体であるα−メチルスチレンやβ−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン及びそのアルキル誘導体、ジシクロペンタジエン及びその誘導体などを、単独重合又は共重合して得られた樹脂である。
【0016】
脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂とは、その原料として前述のC5留分とC9留分とを共重合して得られた樹脂である。
【0017】
また、ジシクロペンタジエン系樹脂とは、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、これらの2〜5量体などを、単独重合、共重合して得られた樹脂である。
【0018】
該シリル化石油樹脂を構成する石油樹脂の軟化点、分子量は特に制限はなく、液状又は固体状であってもよく、その際にシリル化石油樹脂を構成する石油樹脂は液状又は固体状であってもよい。
【0019】
本発明の表面処理剤は、該シリル化石油樹脂を含有するものであり、該シリル化石油樹脂は粒子、特に金属酸化物微粒子を表面処理により分散化することが可能である。該シリル化石油樹脂のアルコキシシリル基を制御することにより、更なる高分散化および適度な色相が期待できる表面処理剤となる。具体的には、ケイ素含有量が0.2wt%以上、好ましくは0.2〜2wt%、より好ましくは0.4〜2wt%である。また、軟化点は、特に制限はされないが、表面処理剤として処理する際の加工性が良好なことから、例えば75〜130 ℃、更に好ましくは85〜120 ℃である。重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、例えば500〜20000であり、更に1000〜10000が好ましい。
【0020】
本発明の表面処理剤は、粒子、特に金属酸化物微粒子の表面処理を行う際の分散、効率に優れるものとなることから有機溶媒を含有するものであってもよく。その際の有機溶媒は、特に制限はなく、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン化合物;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)等のエーテル化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物等が挙げられる。これらの内、該シリル化石油樹脂を効率よく分散し、表面処理効果の高い表面処理剤となることから、MIBK、PGMが好ましい。また、これら有機溶媒は単独又は併用して使用可能である。
【0021】
本発明の表面処理剤は、シリル化石油樹脂を含有することから表面処理により粒子、特に金属酸化物微粒子を好適に分散させることができる。すなわち、本発明の表面処理剤により、分散体中の粒子、微粒子を平均粒径200nm以下に分散することができ、かつ、当分散体を数ヶ月保存しても微粒子の凝集等が見られない、保存安定性に優れた分散体を提供することができる。
【0022】
その際の粒子に制限はなく、微粒子、特に金属酸化物微粒子に対して効果的であり、金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3、FeO、Fe
3O
4)、酸化銅(CuO、Cu
2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化モリブデン(MoO
3)、酸化インジウム(In
2O
3、In
2O)、酸化スズ(SnO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化タングステン(WO
3、W
2O
5)、酸化鉛(PbO、PbO
2)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2、Ce
2O
3)、酸化アンチモン(Sb
2O
3、Sb
2O
5)、酸化ゲルマニウム(GeO
2、GeO)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化ルテニウム(RuO
2)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物微粒子は、単独でも複数を複合していてもよい。これらの金属酸化物微粒子の平均一次粒径は、特に制限はなく、中でも、分散体中における分散性、透明複合体を作製した場合の透明性が高いことから、5〜200nmのものを好ましく用いることができる。
【0023】
本発明の表面処理剤により粒子、微粒子の修飾・表面処理を行う際には、公知の方法を用いることができる。機械的手段として、特に制限はなく、例えば、ディスパー、タービン翼等攪拌翼を有する分散機;ペイントシェイカー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等が挙げられる。本発明の表面処理剤をコーティング剤等に用いる場合には、塗工性、塗料安定性及び硬化被膜の透明性が高いことから、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の分散メディアを使用するビーズミルに修飾・表面処理が好ましい。
【0024】
該ビーズミルに制限はなく、例えば、アシザワ・ファインテック(株)製の(商品名)スターミル(アシザワ・ファインテック(株)製);(商品名)MSC−MILL、SC−MILL、アトライター MA01SC(三井鉱山(株)製);(商品名)ナノグレンミル、ピコグレンミル、ピュアグレンミル、メガキャッパーグレンミル、セラパワーグレンミル、デュアルグレンミル、ADミル、ツインADミル、バスケットミル、ツインバスケットミル(浅田鉄工(株)製):(商品名)アスペックミル、ウルトラアスペックミル、スーパーアスペックミル(寿工業(株)製)等が挙げられる。
【0025】
本発明の表面処理剤により表面修飾を行った微粒子は、微粒子として単離してもよい。また、保存安定性・微粒子の分散安定性に優れる分散液として取り扱うことが可能である。分散液とする際の溶剤としては、例えば表面処理剤に含んでいてもよい上記した有機溶媒を挙げることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、金属酸化物微粒子の分散化、分散安定性に優れた新規な表面処理剤、表面処理酸化物微粒子及び分散液を提供するものであり、工業的にも非常に有用である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。
【0028】
1.原料
(1)石油樹脂
脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂A(東ソー株式会社製、(商品名)ペトロタック90)。
ジシクロペンタジエン樹脂B(日本ゼオン製、(商品名)クイントン1325)。
脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂C(東ソー株式会社製、(商品名)ペトロタック70)。
脂肪族石油樹脂D(エクソンモービル製、(商品名)エスコレッツ1102)。
【0029】
(2)シランカップリング剤
シランカップリング剤1:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(略称TESPT)(ダイソー株式会社製、(商品名)カブラス
TM−4)。
シランカップリング剤2:メルカプトプロピルトリエトキシシラン(略称MPTES)(東京化成工業株式会社製)。
【0030】
2.分析方法
(1)重量平均分子量:ポリスチレンを標準物質とし、JIS K−0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
(2)軟化点:JIS K−2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。
(3)珪素含有量:高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定。
【0031】
合成例1
脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂A(軟化点96℃、重量平均分子量(Mw)1720)1000gを攪拌機の付いたガラス製フラスコに入れて、200℃で加熱溶融させた後、シランカップリング剤1(ダイソー株式会社製、(商品名)カブラス
TM−4)を116g加えて、200℃、3時間反応させシリル化石油樹脂1を得た。
【0032】
このシリル化石油樹脂1の軟化点、珪素含有量、及び分子量を表1に示す。
【0033】
合成例2
ジシクロペンタジエン樹脂B(軟化点118℃、重量平均分子量(Mw)1090)、シランカップリング剤1の使用量を250gに変更した以外は、合成例1と同様にしてシリル化石油樹脂を調製し、シリル化石油樹脂2を得た。
【0034】
該シリル化石油樹脂2の軟化点、珪素含有量、分子量を表1に示す。
【0035】
合成例3
脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂C(軟化点70℃、重量平均分子量(Mw)1640)1000gを攪拌機の付いたガラス製フラスコに入れて、185℃で加熱溶融させた後、シランカップリング剤2(東京化成工業株式会社製)を104g加えて、130℃、8時間反応させシリル化石油樹脂3を得た。
【0036】
該シリル化石油樹脂3の軟化点、珪素含有量、及び分子量を表1に示す。
【0037】
合成例4
脂肪族石油樹脂D(軟化点96℃、重量平均分子量(Mw)2850)、シランカップリング剤2の使用量を26gに変更した以外は、合成例3と同様にしてシリル化石油樹脂を調製し、シリル化石油樹脂4を得た。
【0038】
該シリル化石油樹脂4の軟化点、珪素含有量、分子量を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1
ナノシリカ(EvonikDegussaGmbH社製、(商品名)AEROSIL50;一次粒径30nm)を5重量部、シリル化石油樹脂1を8重量部、PGMを40重量部、およびジルコニアビーズ(粒径0.1mm)70重量部を混合し、この混合物をペイントシェイカーにて2時間混合し、シリル化石油樹脂1によりナノシリカの表面処理を行った。そして、該液よりジルコニアビーズをろ別することにより、シリル化石油樹脂1により表面処理を行ったナノシリカの分散液を得た。
【0041】
該分散液中のナノシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径135nmであった。また、製造3か月経過後の分散液中のナノシリカの平均粒径は140nmであり、長期間保存性も良好な分散性を示した。
【0042】
実施例2〜4
シリル化石油樹脂1の代わりに、表2に示すシリル化石油樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により分散液を得た。その評価結果を表2に示す。
【0043】
実施例5
溶媒としてPGMの代わりにMIBKを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により分散液を得た。その評価結果を表2に示す。
【0044】
実施例6〜8
シリル化石油樹脂1の代わりに表2に示すシリル化石油樹脂を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法により分散液を得た。その評価結果を表2に示す。
【0045】
比較例1
シリル化石油樹脂1の代わりに樹脂5(脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂A)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により分散体の調製を試みた。その評価結果を表2に示す。
【0046】
得られた分散体中のシリカ粒径は200nm以上と大きく、分散性に劣るものであった。また、3か月後にはシリカ粒子同士の凝集が進み、粒径が大きくなり、保存安定性にも劣るものであった。
【0047】
比較例2
シリカ化石油樹脂1の代わりに樹脂5(脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂A)を用いたこと以外は、実施例5と同様の方法により分散体の調製を試みた。その評価結果を表2に示す。
【0048】
得られた分散体中のシリカ粒径は非常に大きく、分散性に劣るものであった。また、3か月後にはシリカ粒子同士の凝集が進み、粒径が大きくなり、保存安定性にも劣るものであった。
【0049】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の分散剤は、微粒子、特に金属酸化物微粒子の分散剤として利用が可能であり、分散安定性・保存安定性に優れる微粒子分散液の提供を可能とし、その産業的価値は極めて高いものである。