【実施例】
【0064】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の説明において、例1〜例6は、実施例であり、例7〜例12は、比較例である。
【0065】
(例1)
前述の
図1に示したような第1の孔形成装置を用いて、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さ(貫通/未貫通)を評価した。孔の深さは、次のように評価した。所望の孔の深さdを、ガラス基板の厚さに設定する。ガラス基板に形成された孔は、貫通していれば所望の深さdが得られたと判定し、未貫通であれば所望の深さdが得られなかったと判定した。
【0066】
第1の孔形成装置において、レーザ発振器には、連続波CO
2レーザ発振器(DIAMOND−GEM100L−9.6:コヒレント社製)を使用した。この連続波CO
2レーザ発振器を用いて、ビーム直径φ
1=3.5mmの連続波CO
2レーザビームを発振させた。
【0067】
この連続波CO
2レーザビームのビーム直径φ
1を、ビームエクスパンダーを用いて、3.5倍に拡大した(従って、ビーム直径φ
2=3.5mm×3.5=12.25mm)。また、波長板には、λ/4波長板を使用した。アパーチャには、該アパーチャを通過後に、レーザビームのビーム径φ
3が9mmとなるものを使用した。
【0068】
集光レンズには、焦点距離25mmの非球面レンズを使用した。なお、アパーチャと集光レンズの間において、レーザビームのピークパワー(=平均パワー)は、50Wであった。従って、この位置におけるレーザビームのパワー密度P
dは、約79W/cm
2である。
【0069】
ガラス基板には、50mm×50mmの無アルカリガラスを使用した。ガラス基板の厚さは、100μmとした。したがって、例1では所望の孔の深さdは100μmとなる。ガラス基板へのレーザビームの照射時間tは、120μsecとした。
【0070】
ここで、例1では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約113μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0071】
ガラス基板に形成する孔の数は、10,000個とした。
【0072】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0073】
また、孔は貫通していた。
【0074】
(例2)
例1と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0075】
ただし、この例2では、ガラス基板の厚さを300μmとした。したがって、所望の孔の深さdは300μmとした。また、照射時間tは、380μsecとした。
【0076】
ここで、例2では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約338μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0077】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0078】
また、孔は貫通していた。
【0079】
(例3)
例1と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0080】
ただし、この例3では、アパーチャと集光レンズの間において、レーザビームのピークパワー(=平均パワー)を、100Wとした。従って、この位置におけるレーザビームのパワー密度P
dは、約157W/cm
2である。
【0081】
また、照射時間tは、80μsecとした。
【0082】
ここで、例3では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約80μsecとなる。従って、最小照射時間t
min=照射時間tである。
【0083】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0084】
また、孔は貫通していた。
【0085】
(例4)
例3と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0086】
ただし、この例4では、ガラス基板の厚さを300μmとした。したがって、所望の孔の深さdは300μmとした。また、照射時間tは、260μsecとした。
【0087】
ここで、例4では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約239μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0088】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0089】
また、孔は貫通していた。
【0090】
(例5)
例1と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0091】
ただし、この例5では、レーザ発振器として、パルスCO
2レーザ発振器(コヒレント社製)を使用した。このパルスCO
2レーザ発振器を用いて、ビーム直径φ
1=3.5mmのパルスCO
2レーザビームを発振させた。
【0092】
また、アパーチャと集光レンズの間において、レーザビームの平均パワーを67Wとし、レーザビームのピークパワーを201Wとした。従って、アパーチャと集光レンズの間におけるレーザビームのパワー密度P
dは、約316W/cm
2である。
【0093】
また、照射時間tは、56μsecとした。
【0094】
ここで、例5では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約56μsecとなる。従って、最小照射時間t
min=照射時間tである。
【0095】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0096】
また、孔は貫通していた。
【0097】
(例6)
例5と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0098】
ただし、この例6では、ガラス基板の厚さを300μmとした。したがって、所望の孔の深さdは300μmとした。また、照射時間tは、170μsecとした。
【0099】
ここで、例6では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約169μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0100】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0101】
また、孔は貫通していた。
【0102】
(例7)
例5と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0103】
ただし、この例7では、アパーチャと集光レンズの間において、レーザビームの平均パワーを130Wとし、レーザビームのピークパワーを390Wとした。従って、アパーチャと集光レンズの間におけるレーザビームのパワー密度P
dは、約613W/cm
2である。
【0104】
また、ガラス基板への照射時間tは、41μsecとした。
【0105】
ここで、例7では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約40μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0106】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にクラックが生じていることが確認された。孔10,000個当たりのクラックの発生率は、2%であった。
【0107】
孔は貫通していた。
【0108】
(例8)
例7と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0109】
ただし、この例8では、ガラス基板の厚さを300μmとした。したがって、所望の孔の深さdは300μmとした。また、照射時間tは、122μsecとした。
【0110】
ここで、例8では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約121μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0111】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にクラックが生じていることが確認された。孔10,000個当たりのクラックの発生率は、5%であった。
【0112】
孔は貫通していた。
【0113】
(例9)
例5と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0114】
ただし、この例9では、アパーチャと集光レンズの間において、レーザビームの平均パワーを400Wとし、レーザビームのピークパワーを1200Wとした。従って、アパーチャと集光レンズの間におけるレーザビームのパワー密度P
dは、約1886W/cm
2である。
【0115】
また、照射時間tは、23μsecとした。
【0116】
ここで、例9では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約23μsecとなる。従って、最小照射時間t
min=照射時間tである。
【0117】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にクラックが生じていることが確認された。孔10,000個当たりのクラックの発生率は、50%であった。
【0118】
孔は貫通していた。
【0119】
(例10)
例9と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0120】
ただし、この例10では、ガラス基板の厚さを300μmとした。したがって、所望の孔の深さは300μmとした。また、照射時間tは、72μsecとした。
【0121】
ここで、例10では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約69μsecとなる。従って、最小照射時間t
min<照射時間tである。
【0122】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にクラックが生じていることが確認された。孔10,000個当たりのクラックの発生率は、80%であった。
【0123】
孔は貫通していた。
(例11)
例1と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0124】
照射時間tは、30μsecとした。
【0125】
ここで、例11では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約113μsecとなる。従って、最小照射時間t
min>照射時間tである。
【0126】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にはクラック等の異常は認められなかった。
【0127】
ただし、最小照射時間t
min>照射時間tであるため、所望の深さの孔が得られず、孔は未貫通であった。
【0128】
(例12)
例10と同様の方法により、ガラス基板に孔を形成し、孔含有ガラス基板を製造した。また、得られたガラス基板において、クラックの有無および孔の深さを評価した。
【0129】
照射時間tは、35μsecとした。
【0130】
ここで、例12では、前述の(4)式の右辺に相当する最小照射時間t
minは、約69μsecとなる。従って、最小照射時間t
min>照射時間tである。
【0131】
孔形成後のガラス基板を観察した結果、ガラス基板にクラックが生じていることが確認された。孔10,000個当たりのクラックの発生率は、40%であった。
【0132】
また、最小照射時間t
min>照射時間tであるため、所望の深さの孔が得られず、孔は未貫通であった。
【0133】
以下の表1には、各例における孔含有ガラス基板の製造方法、および評価結果をまとめて示した。
【0134】
【表1】
表1に示すように、例1〜例6に示したような孔含有ガラス基板の製造方法を採用することにより、クラックの発生が有意に抑制され、所望の深さの孔が形成できることが確認された。