特許第6753430号(P6753430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753430
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】アクリルゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/22 20060101AFI20200831BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20200831BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20200831BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20200831BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20200831BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   C08F6/22
   C08L33/08
   C08K5/00
   C08K3/16
   C08K3/30
   C08F220/10
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-87819(P2018-87819)
(22)【出願日】2018年4月27日
(65)【公開番号】特開2019-189837(P2019-189837A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年11月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】古国府 文子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奨
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/079783(WO,A1)
【文献】 特開昭51−149360(JP,A)
【文献】 特開昭50−119087(JP,A)
【文献】 特開2004−155880(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/034660(WO,A1)
【文献】 特開平09−316279(JP,A)
【文献】 特開平04−093304(JP,A)
【文献】 特開2001−354824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00 − 6/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、
凝固を行う前の前記乳化重合液に滑剤を添加する滑剤添加工程と、
前記滑剤を添加した前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程と、
前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、
を備え
前記単量体が、架橋性単量体を含むアクリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記架橋性単量体が、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である請求項記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項3】
前記架橋性単量体が、カルボキシル基含有単量体である請求項記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項4】
前記乳化重合工程における前記単量体の乳化重合を、ノニオン性乳化剤および/またはアニオン性乳化剤の存在下で行う請求項1〜のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項5】
前記滑剤が、燐酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、及び高級脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種の滑剤である請求項1〜のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項6】
前記滑剤添加工程における、前記滑剤の添加量が、前記乳化重合液中に含まれるアクリルゴム成分100重量部に対して0.0001〜10重量部である請求項1〜のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項7】
前記滑剤添加工程において、さらに老化防止剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を、凝固を行う前の前記乳化重合液に添加するものである請求項1〜のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項8】
前記乳化重合液の凝固が、前記乳化重合液と凝固剤とを接触することで行うものである請求項1〜のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項9】
前記乳化重合液と前記凝固剤との接触が、前記乳化重合液に凝固剤を添加するか、前記乳化重合液を前記凝固剤の溶液または分散液に投入するかのいずれかである請求項記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項10】
前記凝固剤が、金属塩化物または金属硫酸塩である請求項8または9記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項11】
前記乳化重合液の凝固温度が、60℃以上である請求項1〜10のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項12】
前記含水クラムの洗浄が、複数回行われるものである請求項1〜11のいずれかに記載のアクリルゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムの製造方法に関し、さらに詳しくは、乾燥時の取り扱い性及びロール加工性に優れたアクリルゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性及び耐オゾン性に優れたゴムとして知られ、自動車関連の分野などで広く用いられている。
【0003】
このようなアクリルゴムは、通常、アクリルゴムを構成する単量体混合物を乳化重合し、得られた乳化重合液に、凝固剤を添加することで凝固させ、凝固により得られた含水クラムを乾燥することで製造される(たとえば、特許文献1参照)。含水クラムの乾燥には、通常、熱風乾燥機が用いられるが、生産性の観点より、連続工程での乾燥が可能なベルトコンベヤー式のバンドドライヤーなどの乾燥装置が用いられている。一方で、このようなアクリルゴムの乾燥において、乾燥時の温度によってアクリルゴムが軟化し、乾燥装置の壁面等に付着してしまい、これにより操業性が低下してしまうという課題がある。さらには、特許文献1に記載のアクリルゴムなどの従来のアクリルゴムは、ロールを用いて各種配合剤を配合した際におけるロールへの粘着が起こりやすく、ロールにて加工を行う際の加工性が十分でないという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−145291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、常態物性を良好に保ちながら、乾燥時の取り扱い性及びロール加工性に優れたアクリルゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムの製造方法において乳化重合後の乳化重合液に滑剤を添加し、次いで凝固してクラムを得ることにより乾燥時の取り扱い性とロール加工性に優れたアクリルゴムが得られることを見出した。
【0007】
本発明者等は、また、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体に架橋性単量体、特にカルボキシル基含有単量体を加えること、また、乳化剤としてノニオン性乳化剤および/またはアニオン性乳化剤を使用すること、また、滑剤として特定の燐酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、高級脂肪酸等の滑剤を用いること、さらに、滑剤とともに老化防止剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を添加することのいずれかの態様を採用することにより得られるアクリルゴムは、常態物性を良好に保ちながら、乾燥時の取り扱い性及びロール加工性がより高度にバランスされることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
かくして本発明によれば、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、凝固を行う前の前記乳化重合液に滑剤を添加する滑剤添加工程と、前記滑剤を添加した前記乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程と、前記含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と、洗浄した前記含水クラムを乾燥する乾燥工程と、を備えるアクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記単量体が、架橋性単量体を含むものである上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記架橋性単量体が、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体及びハロゲン基含有単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記架橋性単量体が、カルボキシル基含有単量体である上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、また、前記乳化重合工程における前記単量体の乳化重合を、ノニオン性乳化剤および/またはアニオン性乳化剤の存在下で行う上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記滑剤が、燐酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、及び高級脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種の滑剤である上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記滑剤添加工程における、前記滑剤の添加量が、前記乳化重合液中に含まれるアクリルゴム成分100重量部に対して0.0001〜10重量部の範囲である上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記滑剤添加工程において、さらに老化防止剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を、凝固を行う前の前記乳化重合液に添加するものである上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、また、前記乳化重合液の凝固が、前記乳化重合液と凝固剤とを接触することで行うものである上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記乳化重合液と前記凝固剤との接触が、前記乳化重合液に凝固剤を添加するか、前記乳化重合液を前記凝固剤の溶液または分散液に投入するかのいずれかである上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記凝固剤が、金属塩化物または金属硫酸塩である上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、また、前記乳化重合液の凝固温度が、60℃以上である上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
本発明によれば、さらに、前記含水クラムの洗浄が、複数回行われるものである上記アクリルゴムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常態物性を良好に保ちながら、乾燥時の取り扱い性及びロール加工性に優れたアクリルゴムを製造するための方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアクリルゴムの製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、凝固を行う前の乳化重合液に滑剤を添加する滑剤添加工程と、滑剤を添加した乳化重合液を凝固し含水クラムを得る凝固工程と、含水クラムに対して洗浄を行う洗浄工程と洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程とを備えてなる。
【0013】
<単量体>
本発明の乳化重合工程に使用される単量体は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とすることが特徴である。主成分である(メタ)アクリル酸エステルとしては、格別な限定はないが、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1〜12のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが用いられ、炭素数1〜8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、炭素数2〜6のアルカノールと(メタ)アクリル酸のエステルがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられ、これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、炭素数2〜12のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどが好ましく、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2−メトキシエチルがさらに好ましい。
【0016】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合に用いる単量体中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、通常50〜99.9重量%、好ましくは60〜99.7重量%、より好ましくは70〜99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が過度に少ないと、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、及び耐油性が低下するおそれがあり、一方、過度に多いと、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体30〜100重量%、及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体70〜0重量%からなるものを用いることが好ましい。
【0017】
本発明の乳化重合工程において重合に用いる単量体としては、上記(メタ)アクリル酸エステル以外に、架橋性単量体、共重合可能な他の単量体を含有させることができる。
【0018】
架橋性単量体としては、格別な限定はないが、例えば、カルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン原子含有単量体、ジエン単量体などが挙げられ、好ましくはカルボキシル基含有単量体、エポキシ基含有単量体、ハロゲン原子含有単量体であり、より好ましくはカルボキシル基含有単量体である。架橋性単量体の中でも、カルボキシル基含有単量体を用いた場合には、得られるカルボキシル基含有アクリルゴムを、耐油性、耐熱性を良好なものとしながら、耐圧縮永久歪み性を向上させ、且つ本発明の効果(乾燥時の取り扱い性やロール加工性)をより優れたものにすることができ好適である。
【0019】
カルボキシル基含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸を好適に用いることができる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸を用いることにより、得られるアクリルゴムをゴム架橋物とした場合の耐圧縮永久歪み性をより高めることができ好ましい。
【0020】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などを挙げることができる。炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルとしては、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
【0021】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルがより好ましく、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが特に好ましい。好ましい具体的としては、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどが挙げられ、フマル酸モノn−ブチルが特に好ましい。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0022】
エポキシ基含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有スチレン;アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ブテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセンおよびアリルフェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有エーテル;などが挙げられる。
【0023】
ハロゲン原子含有単量体としては、格別な限定はないが、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、ハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0024】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルとしては、例えば、クロロ酢酸ビニル、2−クロロプロピオン酸ビニル、クロロ酢酸アリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2−ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3−クロロプロピル、(メタ)アクリル酸2,3−ジクロロプロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和エーテルとしては、例えば、クロロメチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、2−クロロエチルアリルエーテル、3−クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和ケトンとしては、例えば、2−クロロエチルビニルケトン、3−クロロプロピルビニルケトン、2−クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物としては、例えば、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−クロロメチルスチレン、p−クロロメチル−α−メチルスチレンなどが挙げられる。ハロゲン含有不飽和アミドとしては、例えば、N−クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。ハロアセチル基含有不飽和単量体としては、例えば、3−(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p−ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
ジエン単量体としては、例えば、共役ジエン、非共役ジエンなどが挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレンなどを挙げることができる。非共役ジエンとしては、例えば、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸2−ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
【0026】
これらの架橋性単量体は、それぞれ単独であるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体中の架橋性単量体の含有量は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。架橋性単量体の含有量を上記範囲とすることにより、得られるアクリルゴムを架橋物としたときの機械的特性、及び耐圧縮永久歪み性を高度にバランスさせることができ好適である。
【0027】
共重合可能な他の単量体としては、共重合可能であれば格別な限定はないが、例えば、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリルアミド系単量体、その他のオレフィン系単量体などが挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。その他のオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。これら共重合可能な他の単量体の中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンがより好ましい。
【0028】
これら共重合可能な他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体中のこれら共重合可能な他の単量体の含有量は、通常49.99重量%以下、好ましくは39.9重量%以下、より好ましくは29.5重量%以下である。
【0029】
<乳化重合工程>
本発明の乳化重合工程は、上記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を乳化重合し乳化重合液を得ることを特徴とする。
【0030】
乳化重合方法としては、常法に従えば良く、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を、乳化剤および水と予め混合し、重合開始剤を添加して乳化重合を行う方法などが挙げられる。
【0031】
乳化剤としては、格別な限定はないが、例えば、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤などを挙げることができる。
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル;ポリオキシエチレン/ポリプロピレンオキシド共重合体などのオキシアルキレンの共重合体;などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルなどが好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが好ましい。ノニオン性乳化剤の重量平均分子量は、格別な限定はないが、通常300〜50,000、好ましくは500〜30,000、より好ましくは1,000〜15,000の範囲である。これらのノニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
アニオン性乳化剤としては、格別な限定はなく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステルナトリウムなどの高級燐酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤の中でも、高級燐酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩が好ましい。これらのアニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
【0034】
これら乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤が好ましく、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることがより好ましい。ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることにより、乳化重合時における重合装置(たとえば、重合槽)へのポリマーなどの付着による汚れの発生を有効に抑制しつつ、後述する凝固工程において用いる凝固剤の使用量を低減することが可能となり、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中における凝固剤量を低減することができ、これにより得られるゴム架橋物の耐水性を向上させることができる。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることにより、乳化作用を高めることができるため、乳化剤自体の使用量をも低減することができ、結果として、最終的に得られるアクリルゴム中に含まれる乳化剤の残留量を低減することができ、これにより、得られるアクリルゴムの耐水性をより高めることができる。
【0035】
乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対する、用いる乳化剤の総量で、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部の範囲である。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いる場合の使用割合は、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、通常1/99〜99/1、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは25/75〜75/25、さらに好ましくは50/50〜75/25、最も好ましくは65/35〜75/25の範囲であるときに本願の目的を高度に高められ好適である。
【0036】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;などを用いることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.001〜1.0重量部である。
【0037】
重合開始剤として有機過酸化物及び/または無機過酸化物を用いるときは、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することが好ましい。組み合わせる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオン含有化合物;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸(塩);エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸(塩);糖類;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸(塩);ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸(塩);ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどが挙げられる。
【0038】
これらの還元剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができるが、第一還元剤として還元状態にある金属イオン含有化合物と第二還元剤として還元状態にある金属イオン含有化合物以外の還元剤とを組わせること、特に硫酸第一鉄とアスコルビン酸(塩)とを組み合わせることで本願の目的をより高度に達成することができ好適である。還元剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.0003〜0.5重量部の範囲である。
【0039】
水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜300重量部である。
【0040】
乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0041】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法で行ってもよいが、半回分式が好ましい。具体的には、重合開始剤および還元剤を含む反応系中に、重合に用いる単量体を、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うなど、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤のうち少なくとも1種については、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うことが好ましく、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤の全てについて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行うことがより好ましい。これらを連続的に滴下しながら重合反応を行うことにより、乳化重合を安定的に行うことができ、これにより、重合反応率を向上させることができる。なお、重合は通常0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行なわれる。
【0042】
また、重合に用いる単量体を連続的に滴下しながら重合反応を行う場合には、重合に用いる単量体を、乳化剤および水と混合し、単量体乳化液を得て(乳化液調製工程)、単量体乳化液の状態で連続的に滴下することが好ましい。単量体乳化液の調製方法としては特に限定されず、重合に用いる単量体の全量と、乳化剤の全量と、水とをホモミキサーやディスクタービンなどの攪拌機などを用いて攪拌する方法などが挙げられる。単量体乳化液中の水の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは10〜70重量部、より好ましくは20〜50重量部である。
【0043】
また、重合に用いる単量体、重合開始剤、および還元剤の全てについて、重合反応開始から任意の時間まで、重合反応系に連続的に滴下しながら重合反応を行う場合には、これらは別々の滴下装置を用いて重合系に滴下してもよいし、あるいは、少なくとも重合開始剤と還元剤とについては、予め混合し、必要に応じて水溶液の状態として同じ滴下装置から重合系に滴下してもよい。滴下終了後は、さらに重合反応率向上のため、任意の時間反応を継続してもよい。
【0044】
乳化重合の終了は、必要に応じて重合停止剤を添加して行うことができる。重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノンなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0045】
<滑剤添加工程>
本発明の滑剤添加工程は、凝固を行う前の乳化重合液に滑剤を添加することを特徴とする。
【0046】
本発明に使用される滑剤としては、ゴム用配合剤として用いられるものを格別な限定なく用いることができ、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸アルキルエステルなどの脂肪酸エステル系滑剤;テアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系滑剤;ポリオキエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸などのポリオキエチレン高級アルコールリン酸などの燐酸エステル系滑剤;炭素数10〜30、好ましくは炭素数12〜20の脂肪酸などの高級脂肪酸系滑剤;などが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、好ましくは脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、燐酸エステル系滑剤、及び高級脂肪酸系のうち少なくとも1種、より好ましくは燐酸エステル系滑剤及び高級脂肪酸系滑剤のうち少なくとも1種、さらに好ましくはポリオキエチレンステアリルエーテルリン酸を用いた時に、製造されるアクリルゴムの乾燥時の取り扱い性とロール加工性がより高度に改善され好適である。具体的には、本発明で製造されるアクリルゴムによれば、乾燥時の温度によってアクリルゴムが軟化し、乾燥装置の壁面等に付着してしまうという不具合を効果的に抑制することができ、これによりアクリルゴムの乾燥装置の壁面等への付着に起因する操業性の低下を効果的に抑制できるという効果、さらには、ロールを用いて各種配合剤を配合した際におけるロールへの粘着を効果的に抑制することができ、これにより、ロールにて加工を行う際の加工性を向上させることができるという効果を奏するものである。特に、カルボキシル基含有単量体を含む単量体を重合してカルボキシル基含有アクリルゴムを製造した場合には、カルボキシル基を導入することにより、耐圧縮永久歪み性を適切に高めることができる一方で、カルボキシキル基の作用により、粘着性が高くなってしまい、乾燥時における乾燥装置の壁面等への付着の問題や、ロールを用いて各種配合剤を配合した際におけるロールへの粘着の問題が、より顕著なものとなってしまうところ、本発明によれば、カルボキシル基含有アクリルゴムを用いた場合においても、これらの問題を有効に解決できるものである。
【0048】
滑剤添加工程における滑剤の添加量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、乳化重合液に含まれるアクリルゴム成分100重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0049】
乳化重合液に、滑剤を添加する方法としては、特に限定されず、凝固を行う前の乳化重合液が、滑剤を含有している状態とすることができるような方法であれば何でもよいが、乾燥時の取り扱い性及びロール加工性をより高度にバランスさせることができるという点より、乳化重合を行う前の単量体乳化液に予め添加するよりも、乳化重合後の乳化重合液に添加することが好ましい。滑剤の添加形態としては、特に限定されないが、滑剤が常温で固体の場合には、固体状態のまま添加してもよいし、あるいは、融解させた状態で添加してもよい。
【0050】
本発明の製造方法によれば、滑剤を、凝固を行う前の乳化重合液に予め含有させておくことにより、滑剤を、凝固を行う前の乳化重合液中に良好に分散させることができるため、これにより、凝固後のアクリルゴム中に、滑剤を良好に分散させた状態にて含有させることができる。そして、その結果として、得られるアクリルゴム中に、滑剤を適切に含ませることができ(好適には、均一に分散させた状態で含ませることができ)、これにより、得られるアクリルゴムを、乾燥時の取り扱い性、およびロール加工性に優れたものとすることができる。なお、滑剤を、凝固を行う前の乳化重合液に含有させた場合でも、後の凝固や洗浄、乾燥などにおいて、添加した特定滑剤は、実質的に除去されることはないため、その添加効果を充分発揮できるものである。一方で、凝固後に、滑剤を添加した場合には、アクリルゴム中に、滑剤を分散させることが困難となり、そのため、アクリルゴム中に滑剤を含ませることができず(特に、均一に分散させた状態で含ませることができず)、結果として、滑剤を配合することによる効果、すなわち、乾燥時の取り扱い性、およびロール加工性の向上効果を得ることができなくなる。
【0051】
また、本発明の製造方法においては、滑剤に加えて、アクリルゴムに配合する配合剤のうち一部の配合剤、具体的には、老化防止剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体についても、凝固を行う前の乳化重合液に予め含有させておくことが好ましい。
【0052】
例えば、老化防止剤を、凝固を行う前の乳化重合液に予め含有させておくことにより、後述する乾燥工程における乾燥時の熱によるアクリルゴムの劣化を有効に抑制することができるものである。具体的には、乾燥時の加熱による劣化に起因するムーニー粘度の低下を効果的に抑制することができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、常態の引張強度や破断伸びなどを効果的に高めることができるものである。加えて、凝固を行う前の乳化重合液の状態において、老化防止剤を配合することにより、老化防止剤を適切に分散させることができるため、老化防止剤の配合量を低減させた場合でも、その添加効果を充分に発揮させることができるものである。具体的には、老化防止剤の配合量を、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.2〜1.2重量部と比較的少ない配合量としても、その添加効果を充分に発揮させることができるものである。なお、老化防止剤を、凝固を行う前の乳化重合液中に含有させた場合でも、後の凝固や洗浄、乾燥などにおいて、添加した老化防止剤は、実質的に除去されることはないため、その添加効果を充分発揮できるものである。また、老化防止剤を乳化重合液に含有させる方法としては、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法や、乳化重合を行う前の溶液に添加する方法が挙げられるが、乳化重合を行う前の溶液に添加した場合には、乳化重合時に凝集物が発生し、これにより、重合装置の汚れなどが発生するおそれがあるため、乳化重合後であって、かつ、凝固を行う前の乳化重合液に添加する方法の方が好ましい。
【0053】
老化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、モノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノールなどのスチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチルベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−6−メチルフェノール、2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどのチオフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
また、アルキレンオキシド系重合体を、凝固前の乳化重合液中に予め含有させておくことにより、乳化重合液の凝固性を向上させることができ、これにより、凝固工程における凝固剤量を低減させることができることから、最終的に得られるアクリルゴム中の残留量を低減でき、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性および耐水性を高めることができる。アルキレンオキシド系重合体としては、アルキレンオキシドの重合体であれば格別な限定はないが、通常は低級アルキレンオキシドの重合体が用いられる。具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体などが挙げられ、この中でもポリエチレンオキシドが好適である。アルキレンオキシド系重合体の重量平均分子量は、使用目的に応じて選択されるが、通常10,000〜6,000,000、好ましくは30,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜500,000、最も好ましくは80,000〜300,000の範囲である。アルキレンオキシド系重合体の重量平均分子量がこの範囲にあるときに、本発明の目的を高度に達成でき好適である。
【0055】
これらのアルキレンオキシド系重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.6重量部、さらに好ましくは0.02〜0.5重量部である。
【0056】
なお、凝固を行う前の乳化重合液に、滑剤に加えて、老化防止剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を添加する場合における、これらの添加順序は特に限定されず、適宜、選択すればよい。
【0057】
<凝固工程>
本発明の凝固工程は、上記滑剤、必要に応じて老化防止剤及び/またはアルキレンオキシド系重合体を添加した乳化重合液を凝固し含水クラムを得ることを特徴とする。
【0058】
乳化重合液の凝固は、常法に従えばく、例えば、乳化重合液と凝固剤とを接触させることで行うことができる。
【0059】
凝固剤としては、特に限定されないが、例えば、1〜3価の金属塩が挙げられる。1〜3価の金属塩は、水に溶解させた場合に1〜3価の金属イオンとなる金属を含む塩であり、特に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸および硫酸等から選ばれる無機酸や酢酸等の有機酸と、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウムおよびスズ等から選ばれる金属との塩が挙げられる。また、これらの金属の水酸化物なども用いることもできる。
【0060】
1〜3価の金属塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズなどの金属硝酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどの金属硫酸塩;等が挙げられる。これらの中でも、金属塩化物、金属硫酸塩などが好ましく、1価または2価金属塩化物、1価または2価金属硫酸塩がより好ましく、1価または2価金属硫酸塩が特に好ましい。1価または2価金属塩としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムが好ましく、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0061】
これらの凝固剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組わせて用いることができる。凝固剤の使用量は、乳化重合液中のアクリルゴム成分100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部の範囲である。凝固剤がこの範囲にあるときに、アクリルゴムの凝固を充分なものとしながら、アクリルゴムを架橋した場合の耐圧縮永久歪み性や耐水性を高度に向上させることができるので好適である。
【0062】
乳化重合液と凝固剤とを接触させる方法は、常法に従えばよく、乳化重合液に凝固剤を添加するか、乳化重合液を凝固剤の溶液または分散液に投入するかなどで行うことができる。乳化重合液を投入する場合の凝固剤の溶液または分散液としては、通常水溶液が用いられ、水溶液中の凝固剤濃度は、適宜選択され、通常1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%の範囲である。
【0063】
乳化重合液と凝固剤との接触(凝固)温度は、格別限定されるものではないが、通常60℃以上、好ましくは70〜100℃、より好ましくは75〜90℃の範囲である。
【0064】
<洗浄工程>
本発明の洗浄工程は、上記した凝固工程において得られた含水クラムに対して洗浄を行うものである。
【0065】
洗浄方法としては、特に限定されないが、洗浄液として水を使用し、含水クラムとともに、添加した水を混合することにより水洗を行う方法が挙げられる。水洗時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜50℃であり、混合時間は1〜60分、より好ましくは2〜30分である。
【0066】
また、水洗時に、含水クラムに対して添加する水の量としては、特に限定されないが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を効果的に低減することができるという観点より、含水クラム中に含まれる固形分(主として、アクリルゴム成分)100重量部に対して、水洗1回当たりの水の量が、好ましくは50〜9,800重量部、より好ましくは300〜1,800重量部である。
【0067】
水洗回数としては、特に限定されず、1回でもよいが、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点より、複数回行うのがよく、好ましくは2〜10回、より好ましくは3〜8回である。なお、最終的に得られるアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点からは、水洗回数が多い方が望ましいが、上記範囲を超えて洗浄を行っても、凝固剤の除去効果が小さい一方で、工程数が増加してしまうことにより生産性の低下の影響が大きくなってしまうため、水洗回数は上記範囲とすることが好ましい。
【0068】
また、本発明においては、水洗を行った後、さらに洗浄液として酸を使用した酸洗浄を行ってもよい。酸洗浄を行うことにより、ゴム架橋物とした場合における耐圧縮永久歪み性をより高めることができるものであり、アクリルゴムがカルボキシル基を有するカルボキシル基含有アクリルゴムである場合に、この酸洗浄による耐圧縮永久歪み性の向上効果は特に大きいものとなる。
【0069】
酸洗浄に用いる酸としては、特に限定されず、硫酸、塩酸、燐酸などを制限なく用いることができる。また、酸洗浄において、含水クラムに酸を添加する際には、水溶液の状態で添加することが好ましく、好ましくはpH=6以下、より好ましくはpH=4以下、さらに好ましくはpH=3以下の水溶液の状態で添加すること好ましい。また、酸洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、含水クラムとともに、添加した酸の水溶液を混合する方法が挙げられる。
【0070】
また、酸洗浄時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜50℃であり、混合時間は1〜60分、より好ましくは2〜30分である。酸洗浄の洗浄水のpHは、特に限定されないが、好ましくはpH=6以下、より好ましくはpH=4以下、さらに好ましくはpH=3以下である。なお、酸洗浄の洗浄水のpHは、例えば、酸洗浄後の含水クラムに含まれる水のpHを測定することにより求めることができる。
【0071】
酸洗浄を行った後には、さらに水洗を行うことが好ましく、水洗の条件としては上述した条件と同様とすればよい。
【0072】
<乾燥工程>
本発明の乾燥工程は、上記洗浄工程において洗浄を行った含水クラムに対し乾燥を行うものである。
【0073】
乾燥工程における、乾燥方法としては、特に限定されないが、たとえば、スクリュー型押出機、ニーダー型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、熱風乾燥機、減圧乾燥機などの乾燥機を用いて、乾燥させることができる。また、これらを組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。さらに、乾燥工程により乾燥を行う前に、必要に応じて、含水クラムに対し、回転式スクリーン、振動スクリーンなどの篩;遠心脱水機;などを用いたろ別を行ってもよい。
【0074】
例えば、乾燥工程における乾燥温度は、特に限定されず、乾燥に用いる乾燥機に応じて異なるが、例えば、熱風乾燥機を用いる場合には、乾燥温度は80〜200℃とすることが好ましく、100〜170℃とすることがより好ましい。
【0075】
<アクリルゴム>
本発明によれば、上記製造方法により、アクリルゴムを得ることができる。かくして製造される本発明のアクリルゴムは、常態物性を良好に保ちながら、貯蔵安定性に優れるものである。
【0076】
かくして製造されるアクリルゴム中の単量体組成は、使用目的に応じて適宜選択されるが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が、通常50〜99.9重量%、好ましくは60〜99.7重量%、より好ましくは70〜99.5重量%である。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜100重量%、及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70〜0重量%から構成されることが好ましい。アクリルゴム中の架橋性単量体単位の含有量は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。アクリルゴム中の共重合可能な他の単量体の単位の含有量は、通常0〜49.99重量%、好ましくは0〜39.9重量%、より好ましくは0〜29.5重量%である。
【0077】
また、かくして製造されるアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、使用目的に応じて選択されるが、通常10〜120、好ましくは20〜80、より好ましくは25〜60の範囲である。
【0078】
また、かくして製造されるアクリルゴムのガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて選択され、通常15℃以下、好ましくは0℃以下である。
【0079】
<ゴム組成物>
本発明によれば、上記製造方法により得られるアクリルゴムを含むゴム成分に、架橋剤を配合することで、上記製造方法により得られるアクリルゴムを含むゴム成分と、架橋剤とを含むゴム組成物を得ることができる。
【0080】
架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアミン化合物、ジチオカルバミン酸などの多価アミン化合物、及びその炭酸塩;硫黄化合物;硫黄共与体;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;有機過酸化物;多価カルボン酸;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;トリアジン化合物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの中でも、多価アミン化合物、トリアジン化合物が好ましく、トリアジン化合物が特に好ましい。
【0081】
また、ゴム組成物には、上記架橋剤に加えて、架橋促進剤、スコーチ防止剤、充填剤及びシランカップリング剤から選択される少なくも1種を配合してもよく、さらには、これらのうち少なくとも1種に加えて、高級脂肪酸及びその金属アミン塩剤などの分散剤、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバシン酸誘導体などの可塑剤、潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウムなどの軟化剤、老化防止剤、光安定剤、加工助剤、粘着剤、滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、架橋遅延剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などの樹脂などを配合してもよい。
【0082】
<ゴム架橋物>
本発明によれば、上記したゴム組成物を架橋することで、ゴム架橋物を得ることができる。
【0083】
ゴム架橋物は、上記したゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、およびロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常10〜200℃、好ましくは25〜150℃である。架橋温度は、通常100〜250℃、好ましくは130〜220℃、より好ましくは150〜200℃であり、架橋時間は、通常0.1分〜10時間、好ましくは1分〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、および熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0084】
また、ゴム架橋物は、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、更に加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0086】
[ムーニー粘度(ML1+4、100℃)]
アクリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した。
【0087】
[プローブタック試験]
アクリルゴム組成物について、タッキング試験機(TAC−1000:レスカ社製)を用いて、プローブタック試験を行った。具体的には、30mm×20mm×2mmに成形したアクリルゴム試料に対し、SUS製プローブ(10mmφ)を、押付け速度0.05mm/s、押付け荷重:20gf、押付け保持時間10秒の条件にて、押付け動作を行い、次いで、引き上げ速度15mm/sにて、SUS製プローブを引き上げた際における、タック強度(N)を測定した。タック強度が低いほど、ロールにて加工した際におけるロールへの粘着性が低く、ロール加工性に優れると判断できる。
【0088】
[常態物性(引張強度、伸び)]
アクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに170℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、シート状のゴム架橋物を得た。得られたゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。次にこの試験片を用いて、JIS K6251に従い引張強度および伸びを測定した。
【0089】
〔実施例1〕
ホモミキサーを備えた混合容器に、純水46.294部、アクリル酸エチル49.3部、アクリル酸n−ブチル49.3部、フマル酸モノn−ブチル1.4部、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(商品名「エマール 2FG」、花王社製)0.567部、及びノニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレンドデシルエーテル(商品名「エマルゲン 105」、重量平均分子量:約1500、花王社製)1.4部を攪拌することで、単量体乳化液を得た。
【0090】
次いで、温度計、攪拌装置を備えた重合反応槽に、純水170.853部、および、上記にて得られた単量体乳化液2.97部を投入し、窒素気流下で温度12℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、上記にて得られた単量体乳化液145.29部、還元剤としての硫酸第一鉄0.00033部、還元剤としてのアスコルビン酸ナトリウム0.264部、重合開始剤としての2.85重量%の過硫酸カリウム水溶液7.72部(過硫酸カリウムの量として0.22部)を3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応槽内の温度を23℃に保った状態にて、1時間反応を継続し、重合転化率が95%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止し、乳化重合液を得た。
【0091】
そして、重合により得られた乳化重合液100部に対し、老化防止剤としての3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(商品名「Irganox 1076」、BASF社製)0.3部(乳化重合液を製造する際に用いた仕込みの単量体の合計(すなわち、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、フマル酸モノn−ブチルの合計)100部に対して1部)、ポリエチレンオキシド(重量平均分子量(Mw)=10万)0.011部(乳化重合液を製造する際に用いた仕込みの単量体の合計100部に対して0.039部)、および滑剤としてのポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸(商品名「フォスファノール RL−210」、重量平均分子量:約500、東邦化学工業社製)0.075部(乳化重合液を製造する際に用いた仕込みの単量体の合計100部に対して0.25部)を混合することで混合液を得た。そして、得られた混合液を凝固槽に移し、この混合液100部に対して、工業用水60部を添加して、85℃に昇温した後、温度85℃にて、混合液を撹拌しながら、凝固剤としての硫酸ナトリウム3.3部(混合液に含まれる重合体100部に対して11部)を連続的に添加することにより、重合体を凝固させ、これによりアクリルゴム(A1)の含水クラムを得た。
【0092】
次いで、上記にて得られた含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの水洗を行った。なお、本製造例では、このような水洗を4回繰り返した。
【0093】
次いで、上記にて水洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部および濃硫酸0.13部を混合してなる硫酸水溶液(pH=3)を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの酸洗を行った。なお、酸洗後の含水クラムのpH(含水クラム中の水のpH)を測定したこところ、pH=3であった。次いで、酸洗を行った含水クラムの固形分100部に対し、純水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの純水洗浄を行い、純水洗浄を行った含水クラムを、熱風乾燥機(ベルトコンベヤー式バンドドライヤー)にて110℃で1時間乾燥させることにより、固形状のアクリルゴム(A1)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0094】
得られたアクリルゴム(A1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A1)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
【0095】
バンバリーミキサーを用いて、得られたアクリルゴム(A1)100部に、FEFカーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製)60部、ステアリン酸2部、および4, 4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック CD」、大内新興化学工業社製)2部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(商品名「Diak#1」、デュポンダウエラストマー社製、脂肪族多価アミン化合物)0.6部、および1,3−ジ−o−トリルグアニジン(商品名「ノクセラーDT」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)2部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。このアクリルゴム組成物を用いて、プローブタック試験、引張強度及び伸び試験を行い、それらの結果を表1に示した。
【0096】
〔実施例2〕
滑剤として、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸0.075部に代えて、高級脂肪酸(商品名「Moldwiz Int21G」、巴工業社製)0.075部を使用した以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム(A2)の含水クラムを得た。
【0097】
次いで、得られたアクリルゴム(A2)の含水クラムについて、実施例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、純水洗浄および熱風乾燥機(ベルトコンベヤー式バンドドライヤー)による乾燥を行うことで、固形状のアクリルゴム(A2)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機による乾燥における、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0098】
得られたアクリルゴム(A2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A2)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
そして、得られたアクリルゴム(A2)を用いて実施例1と同様にアクリルゴム組成物を作製し、プローブタック試験、引張強度及び伸び試験を行った。それらの結果を表1に示した。
【0099】
〔実施例3〕
乳化重合液に凝固剤としての硫酸ナトリウムを添加して凝固させる代わりに、乳化重合液を80℃の5重量%硫酸ナトリウム水溶液に投入し凝固させる以外は実施例1と同様にしてアクリルゴム(A3)の含水クラムを得た。
【0100】
次いで、得られたアクリルゴム(A3)の含水クラムについて、実施例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、純水洗浄および熱風乾燥機(ベルトコンベヤー式バンドドライヤー)による乾燥を行うことで、固形状のアクリルゴム(A3)を得た。なお、この際に、熱風乾燥機による乾燥における、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着は観察されなかった。
【0101】
得られたアクリルゴム(A3)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A3)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
そして、得られたアクリルゴム(A3)を用いて実施例1と同様にアクリルゴム組成物を作製し、プローブタック試験、引張強度及び伸び試験を行った。それらの結果を表1に示した。
【0102】
〔比較例1〕
滑剤としてのポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム(A4)の含水クラムを得た。
【0103】
次いで、得られたアクリルゴム(A4)の含水クラムについて、実施例1と同様にして、4回の水洗、酸洗、純水洗浄および熱風乾燥機(ベルトコンベヤー式バンドドライヤー)による乾燥を行うことで、固形状のアクリルゴム(A4)を得た。なお、比較例1においては、熱風乾燥機による乾燥における、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着が観察され、操業性に劣るものであった。
【0104】
得られたアクリルゴム(A4)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は33であり、アクリルゴム(A4)の組成は、アクリル酸エチル単位49.3重量%、アクリル酸n−ブチル単位49.3重量%、フマル酸モノn−ブチル単位1.4重量%であった。
そして、得られたアクリルゴム(A4)を用いて実施例1と同様にアクリルゴム組成物を作製し、プローブタック試験、引張強度及び伸び試験を行った。それらの結果を表1に示した。
【0105】
〔比較例2〕
比較例1で得られたアクリルゴム(A4)を用い、アクリルゴム組成物を調製するに、滑剤としてのポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸(商品名「フォスファノール RL−210」、重量平均分子量:約500、東邦化学工業社製)0.3部をさらに配合した以外は、比較例1と同様にして、アクリルゴム組成物を作製し、プローブタック試験、引張強度及び伸び試験を行った。それらの結果を表1に示した。
【0106】
〔比較例3〕
比較例1で得られたアクリルゴム(A4)を用い、アクリルゴム組成物を調製するに、滑剤としての高級脂肪酸(商品名「Moldwiz Int21G」、巴工業社製)0.3部をさらに配合した以外は、比較例1と同様にして、アクリルゴム組成物を作製し、プローブタック試験、引張強度及び伸び試験を行った。それらの結果を表1に示した。
【0107】
【表1】
(*1)単量体乳化液作製のための配合剤の添加量は、仕込み単量体100部に対する配合量で示した。
(*2)凝固前の乳化重合液に添加した配合剤の添加量は、乳化重合液100部に対する配合量で示した。
(*3)凝固工程で使用した凝固剤の添加量は、乳化重合液に、老化防止剤、ポリエチレンオキシド、および/または滑剤を添加することにより得られた混合液100部に対する配合量で示した。
(*4)「凝固手法A」においては、乳化重合液を85℃に昇温し撹拌しながら、凝固剤としての硫酸ナトリウムを連続的に添加することにより凝固を行った。「凝固手法B」においては、80℃に昇温した5重量%硫酸ナトリウム水溶液に乳化重合液を連続的に添加することにより凝固を行った。
【0108】
表1から、本願発明の製造方法で得られるアクリルゴムは、引張強度や伸び等の常態物性を損なうことなく、乾燥工程における熱風乾燥機への付着がなく、しかもアクリルゴム組成物にしたときのプローブタック性を大幅に改善されていることが分かる。特に、通常アクリルゴムに滑剤を後添加したゴム組成物(比較例2及び3)に比べても、プローブタック性は6割程度に低減されており、ロール加工性が格段に改善されること、及びアクリルゴムの乾燥機への付着は作業者に多段の苦労を強いているが、これらについても改善しているという思いがけない効果も見出していることがわかる(実施例1〜3)。
【0109】
一方、比較例1により得られたアクリルゴムは、滑剤を含有しないものであり、乾燥工程において、熱風乾燥機へのアクリルゴムの付着が発生してしまい、乾燥時の操業性に劣るものであり、さらに、アクリルゴム組成物にした時のプローブタック試験におけるタック強度が高く、ロール加工性にも劣るものである(比較例1)。アクリルゴムに滑剤を後添加したゴム組成物は、プローブタック試験のプローブタック性は改善されているが、さらなる改善が望まれている(比較例1〜2)。