特許第6753556号(P6753556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6753556-カラーフィルタ 図000035
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753556
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】カラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20200831BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20200831BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20200831BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   C09D201/00
   C09D7/41
【請求項の数】3
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2020-520085(P2020-520085)
(86)(22)【出願日】2019年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2019032699
(87)【国際公開番号】WO2020045198
(87)【国際公開日】20200305
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2018-163702(P2018-163702)
(32)【優先日】2018年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
(72)【発明者】
【氏名】重廣 龍矢
(72)【発明者】
【氏名】石井 融
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−201003(JP,A)
【文献】 特開2018−101073(JP,A)
【文献】 特開2018−163284(JP,A)
【文献】 特開2017−116767(JP,A)
【文献】 特開2016−114940(JP,A)
【文献】 特開2020−038368(JP,A)
【文献】 特開2019−210453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
G02B5/20−5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを含む赤色画素部と、
C.I.ピグメントグリーン59を含む緑色画素部と、を備えるカラーフィルタ。
【請求項2】
前記黄色色材が、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー185及びC.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記緑色画素部が、下記式(1)で表される化合物を更に含む、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ。
【化1】

[式(1)中、X〜X16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Y及びYは各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Zは炭素数1〜3のアルキレン基である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの色規格として、従来のsRGB規格に加えて、カラーフィルタの赤色画素部と緑色画素部についてsRGB規格よりも更に鮮やかな色度座標で設定され、より高い色再現性を実現できるDCI−P3規格(デジタルシネマイニシアティブ)が注目されている。このような規格を満たすためには、特許文献1に開示されているように、カラーフィルタにおいて特定の波長のみを透過させて鮮やかな色を得る必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−240708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のカラーフィルタは、上述したDCI−P3規格のような高色再現性を実現するために十分な特性を必ずしも有しておらず、カラーフィルタの色再現性を高めることへの要望は依然として存在する。
【0005】
そこで、本発明は、カラーフィルタの色再現性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの検討によれば、カラーフィルタの色再現性を高めるためには、赤色画素部の色度xを大きくすることが有効であるところ、驚くべきことに、単体では色度xが小さいC.I.ピグメントレッド269に、特定の黄色色材を組み合わせて用いることにより、赤色画素部の色度xを顕著に大きくでき、加えて、緑色画素部に特定の緑色顔料を用いることにより、カラーフィルタの色再現性向上を実現できることが判明した。
【0007】
すなわち、本発明の一側面は、C.I.ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを含む赤色画素部と、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及びハロゲン化アルミニウムフタロシアニン顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む緑色画素部と、を備えるカラーフィルタである。
【0008】
黄色色材は、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー185及びC.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0009】
緑色画素部は、C.I.ピグメントグリーン58及びC.I.ピグメントグリーン59からなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含んでよい。
【0010】
緑色画素部は、下記式(1)で表される化合物を更に含んでよい。
【化1】
式(1)中、X〜X16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Y及びYは各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Zは炭素数1〜3のアルキレン基である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カラーフィルタの色再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】表示装置の一実施形態である液晶表示装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態に係るカラーフィルタは、液晶表示装置等の表示装置に用いられる。本実施形態に係るカラーフィルタを説明するにあたり、まず、表示装置の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、表示装置の一実施形態である液晶表示装置を示す模式断面図である。図1に示すように、一実施形態に係る液晶表示装置1は、光源2と、第一の偏光層3と、第一の基板4と、第一の電極5と、液晶層6と、第二の電極7と、第二の偏光層8と、カラーフィルタ9と、第二の基板10とをこの順に備えている。
【0015】
光源2は、例えば、白色LED(発光ダイオード)光源、白色有機EL光源、白色無機EL光源、白色量子ドット光源等であってよい。光源2が白色LED光源である場合、当該白色LED光源は、例えば、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDとを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED光源、青色LEDと赤色LEDと緑色蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED光源、青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED光源、青色LEDとYAG系蛍光体との混色により白色光を得る白色LED光源、紫外線LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と青色発光蛍光体とを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED光源、赤色レーザーを組み合わせた白色LED光源、量子ドット技術を利用した白色LED光源等であってよい。
【0016】
蛍光体としては、この分野で用いられる蛍光体を適宜選択することができる。例えば、青色LED又は紫外線LEDで励起可能な蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(例えばCaO−Al−SiO:Eu)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)2SiO:Eu)、サイアロン系蛍光体、CASN系蛍光体(CaAlSiN:Eu)、SCASN系蛍光体((Sr,Ca)AlSiN:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(KSiF:Mn)、硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体等が挙げられる。
【0017】
より具体的には、例えば、サイアロン系蛍光体は、α型サイアロン蛍光体であってよい。α型サイアロン蛍光体は、例えば、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ユーロピウム(Eu)を所定のモル比で混合し、1気圧(0.1MPa)の窒素中において1700℃の温度で1時間保持してホットプレス法により焼成して製造される、Euイオンを固溶したα型サイアロン蛍光体であってよい。このα型サイアロン蛍光体は、450〜500nmの青色光で励起されて550〜600nmの黄色の光を発する蛍光体である。サイアロン系蛍光体は、例えば、β−Si構造を有するβ型サイアロン蛍光体であってもよい。このβ型サイアロン蛍光体は、近紫外〜青色光で励起されることにより、500〜600nmの緑色〜橙色の光を発する蛍光体である。
【0018】
また、例えば、蛍光体は、JEM相からなる酸窒化物蛍光体であってもよい。この酸窒化物蛍光体は、近紫外〜青色光で励起されて、460〜510nmに発光波長ピークを有する光を発する。
【0019】
第一の偏光層3及び第二の偏光層8は、公知の偏光層(偏光板)であってよく、例えば、二色性有機色素偏光板、塗布型偏光層、ワイヤーグリッド型偏光板、コレステリック液晶型偏光板等であってよい。第一の基板4及び第二の基板10は、例えばガラスで形成されていてよく、プラスチック等の柔軟性を有する材料で形成されていてもよい。
【0020】
第一の電極5及び第二の電極7の一方は画素電極であり、他方は共通電極である。例えば、第一の電極5が画素電極であり、第二の電極7が共通電極であってよい。第一の電極5及び第二の電極7は、例えばITO等の透明な材料で形成されていてよい。液晶層6は、公知の液晶組成物から構成されていてよい。第一の電極5と液晶層6との間、及び、第二の電極7と液晶層6との間には、配向膜が更に設けられていてもよい。
【0021】
光源2からの光Lは、例えば、アクリル樹脂、ガラス等で形成された導光板(図示せず)を介して第一の偏光層3に入射する。光源2は、導光板の側面に配置されていてもよく(エッジバックライト構造)、導光板の主面に配置されていてもよい(直下バックライト構造)。光源2からの光Lは、第一の偏光層3に入射した後、第一の基板4、第一の電極5、液晶層6、第二の電極7、第二の偏光層8、カラーフィルタ9、及び第二の基板10をこの順に通過した後、液晶表示装置1の外部に出射される。このとき、光源2からの光Lの色が、カラーフィルタ9により変換される。
【0022】
続いて、カラーフィルタの実施形態について詳細に説明する。一実施形態に係るカラーフィルタ9は、赤色画素部(赤色カラーフィルタ)9aと、緑色画素部(緑色カラーフィルタ)9bと、青色画素部(青色カラーフィルタ)9cと、遮光部(ブラックマトリックス)9dとを有している。赤色画素部9aと、緑色画素部9bと、青色画素部9cとは、この順に繰り返し配置されており、各色画素部間は遮光部9dによって互いに隔てられている。
【0023】
赤色画素部9aは、C.I.ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを含む。C.I.ピグメントレッド269は、例えば、Clariant社製C.I.ピグメントレッド269として入手可能である。
【0024】
440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とは、黄色色材:樹脂の質量比が3:5である膜厚1μmの評価用着色膜を形成したときに、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下になる黄色色材である。黄色色材の透過率の平均値は、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、測定領域:380〜780nm、測定間隔:1nmの条件で測定された上記評価用着色膜の透過スペクトルから、440〜470nmにおける透過率の平均値として算出される。なお、評価用着色膜に含まれる樹脂には、バインダー樹脂及び黄色色材をバインダー樹脂中に好適に分散させるための分散剤が含まれる。また、当該樹脂としては、1μmの樹脂膜を形成したときに、440〜470nmにおける透過率の平均値が99%以上である樹脂を用いる。
【0025】
上記評価用着色膜は、例えば以下の手順で作製される。
黄色色材0.55gを、分散剤(ビックケミー社製BYK−LPN21116、固形分:40質量%)0.83g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.20gと共に、0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、シェーカー(東洋精機株式会社製ペイントシェーカー)で2時間分散して、分散液を得る。この分散液に、バインダー樹脂(DIC株式会社製ユニディックZL−295、固形分:40質量%)1.46g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.84gを加えて、シェーカーで混合することで、黄色組成物を得る。この黄色組成物をソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥することで、ガラス基板上に評価用着色膜が形成された測定用サンプルを作製する。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間加熱した後の評価用着色膜の厚さを1μmとする。
【0026】
黄色色材の440〜470nmにおける透過率の平均値は、赤色画素部9aの色度xを更に大きくできる観点から、小さいほど好ましく、具体的には、好ましくは、5%以下、4%以下、3%以下、2.5%以下、又は2%以下である。
【0027】
黄色色材は、上記の透過率を有する黄色色材であればよいが、好ましくは黄色顔料であり、より好ましくは、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー185及びC.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種である。C.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体は、公知のものを用いることができ、例えば特開2014−228682号公報の「実施例2」の「ジスアゾ系化合物C2」として記載されているものを使用できる。黄色色材は、赤色画素部9aの色度xを更に大きくでき、色再現性を更に高められる観点から、更に好ましくは、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、特に好ましくは、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー139及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0028】
黄色色材は、黄色染料であってもよい。黄色染料は、例えば、キノリン系染料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料、クマリン系染料、イソインドリン系染料等であってよく、具体的には、C.I.アシッドイエロー1、3、23、29、36、C.I.ソルベントイエロー2、4、7、33、56、93、98、C.I.ディスパースイエロー5、42、49、50、54、56、64、71、104、114、149、201等であってよい。
【0029】
赤色画素部9aにおけるC.I.ピグメントレッド269と上記黄色色材との配合比率は、黄色色材の種類及び所望の色度に応じて決定される。例えば、C.I.ピグメントレッド269/黄色色材の配合比率が7/3(質量比)で、C.I.ピグメントレッド269及び黄色色材の合計量/樹脂の配合比率が3/5(質量比)である膜厚3μmの塗膜としたときに、C光源で測定した色度xが0.68以上となる。
【0030】
カラーフィルタ9がDCI−P3規格及びsRGB規格を満たすカラーフィルタとして用いられる場合、高輝度でありながら膜厚が薄い赤色画素部9aが好適に得られる観点から、赤色画素部9aにおけるC.I.ピグメントレッド269の含有量は、C.I.ピグメントレッド269及び上記黄色色材の合計量100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、又は25質量部以上であり、好ましくは、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、又は30質量部以下である。
【0031】
赤色画素部9aは、上記以外のその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分は、例えば、上記以外の有機顔料、有機染料、有機顔料誘導体等であってよい。
【0032】
上記以外の有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、アゾメチン系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン系顔料等が挙げられる(ただし、C.I.ピグメントレッド269及び上記の黄色色材を除く)。当該有機顔料は、好ましくは、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、又はペリレン系顔料である(ただし、C.I.ピグメントレッド269及び上記の黄色色材を除く)。
【0033】
有機染料としては、例えば、キサンテン系染料、アゾ系染料、ジスアゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、トリアリールメタン系染料、メチン系染料、フタロシアニン系染料、ローダミン系染料、シアニン系染料等が挙げられる。有機染料は、好ましくは、キサンテン系染料、アゾ系染料、ジスアゾ染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、ローダミン系染料、又はシアニン系染料である。
【0034】
有機顔料誘導体は、例えば、公知の有機顔料の一部が、スルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基、フタルイミドメチル基等で修飾(置換)された誘導体であってよい。具体的には、例えば、Solsperse(登録商標名)5000、同12000、同22000(ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。有機顔料誘導体の含有量は、顔料の合計量100質量部に対して、1質量部以上であってよく、40質量部以下であってよい。
【0035】
赤色画素部9aは、感光性樹脂等の樹脂、分散剤、ロジン、界面活性剤などを更に含有していてもよい。これらの成分は、顔料表面に処理(いわゆる表面処理)されていてもよいし、されていなくてもよい。顔料表面に処理する方法としては、ロジン処理、界面活性剤処理、溶剤処理、樹脂処理等の公知の方法であってよい。
【0036】
感光性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーなどが挙げられる。
【0037】
分散剤としては、例えば、ANTI−TERRA(登録商標名)U/U100、同204、DISPERBYK(登録商標名)106、同108、同109、同112、同130、同140、同142、同145、同161、同162、同163、同164、同167、同168、同180、同182、同183、同184、同185、同2000、同2001、同2008、同2009、同2013、同2022、同2025、同2026、同2050、同2055、同2150、同2155、同2163、同2164、同9076、同9077、BYK LPN−6919、同21116、同21324、同22102(ビックケミー株式会社製)、EFKA(登録商標名)46、同47、同4010、同4020、同4320、同4300、同4330、同4401、同4570、同5054、同7461、同7462、同7476、同7477(BASF株式会社製)、アジスパーPB(登録商標名)814、同821、同822、同881(味の素ファインテクノ株式会社製)、Solsperse(登録商標名)24000、同28000、同37500、同76500(ルーブリゾール株式会社製)などが挙げられる。分散剤の含有量は、顔料の合計量100質量部に対して、10質量部以上であってよく、120質量部以下であってよい。
【0038】
緑色画素部9bは、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料及びハロゲン化アルミニウムフタロシアニン顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種(以下「特定のハロゲン化フタロシアニン顔料」ともいう)を含む。
【0039】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、カラーフィルタの色再現性を更に高め、また、高輝度でありながら膜厚が薄い緑色画素部9bが好適に得られる観点から、好ましくは、C.I.ピグメントグリーン58及びC.I.ピグメントグリーン59からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくはC.I.ピグメントグリーン59である。ハロゲン化アルミニウムフタロシアニン顔料は、カラーフィルタの色再現性を更に高め、また、高輝度でありながら膜厚が薄い緑色画素部9bが好適に得られる観点から、好ましくはC.I.ピグメントグリーン63である。
【0040】
緑色画素部9bは、黄色色材を更に含んでもよい。特定のハロゲン化フタロシアニン顔料と黄色色材との配合比は、各顔料又は色材の種類及び所望の色度に応じて決定される。
【0041】
黄色色材は、一実施形態において、C.I.ピグメントイエロー138、同129、同139、同150、同185、同231等の黄色顔料であってよく、好ましくは、C.I.ピグメントイエロー138及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群より選ばれる少なくとも一種の黄色顔料である。
【0042】
黄色色材は、カラーフィルタの色再現性を更に高める観点から、好ましい他の一実施形態において、下記式(1)で表される化合物(キノフタロン化合物)から構成される黄色顔料(キノフタロン顔料)である。
【化2】
式(1)中、X〜X16は各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Y及びYは各々独立に水素原子又はハロゲン原子であり、Zは炭素数1〜3のアルキレン基である。
【0043】
上記キノフタロン化合物は、キノフタロン骨格の二量化により、選択的な吸収・透過を示す。また、上記キノフタロン化合物は、連結基Zをスペーサーとしてキノフタロン骨格を二量化しており、これにより共役が切断され、過剰な赤味化が抑制されている。更に、上記キノフタロン化合物では、イミド構造の導入により分散性が向上されている。これらのことから、上記キノフタロン化合物によれば、優れた輝度と着色力とを示す顔料が得られる。
【0044】
式(1)中のハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であってよく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0045】
式(1)中の炭素数1〜3のアルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基(1,1−エタンジイル基又は1,2−エタンジイル基)、プロピレン基(1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基又は1,3−プロパンジイル基)が好ましく、メチレン基、1,1−エタンジイル基、1,1−プロパンジイル基、2,2−プロパンジイル基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
【0046】
上記キノフタロン化合物では、X〜X16のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましい。X〜X16にハロゲン原子が導入されることで、上記キノフタロン化合物の分散性が一層向上し、上述の効果がより顕著に得られる傾向がある。
【0047】
〜Xのうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X及びXのうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X及びXがいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0048】
〜Xのうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X及びXのうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X及びXがいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0049】
〜X12のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X10及びX11のうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X10及びX11がいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0050】
13〜X16のうち、少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、2つ以上がハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であってもよい。X14及びX15のうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましく、X14及びX15がいずれもハロゲン原子であることがより好ましい。
【0051】
及びYは、互いに同一であっても異なっていても構わないが、上記キノフタロン化合物の合成が容易となる観点からは、互いに同一であることが好ましい。
【0052】
なお、式(1)の構造には、下記式(1−i)及び式(1−ii)等の構造の互変異性体が存在するが、上記キノフタロン化合物は、これらのいずれの構造であってもよい。
【化3】
式(1−i)及び式(1−ii)中、X〜X16、Y、Y及びZは上述のとおりである。
【0053】
上記キノフタロン化合物の具体例を以下に挙げるが、上記キノフタロン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化4】
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
【化8】
【0059】
上記キノフタロン化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して併用してもよい。
【0060】
上記キノフタロン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用して製造することができる。以下、キノフタロン化合物の製造方法の一態様を記載するが、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0061】
上記キノフタロン化合物は、例えば以下の工程I、工程II、工程III及び工程IVを含む方法により得ることができる。
【0062】
<工程I>
まず、J.Heterocyclic,Chem,30,17(1993)に記載の方法などにより、ビスアニリン類を1当量に対し、クロトンアルデヒドを2〜3当量加え、酸化剤存在下、強酸中において反応させ、後記する式(A−1)の化合物を合成する。
【化9】
式(A−1)中、Y、Y及びZは上述のとおりである。
【0063】
強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。酸化剤としては、ヨウ化ナトリウム、p−クロラニル、ニトロベンゼンなどが挙げられる。
【0064】
工程Iに関し、反応温度は、80℃〜100℃、好ましくは90℃〜100℃であってよく、反応時間は、1時間〜6時間、好ましくは3時間〜6時間であってよい。
【0065】
<工程II>
さらに、得られた式(A−1)の化合物と硝酸又は発煙硝酸を濃硫酸存在下において反応させることで、式(A−2)の化合物を得ることができる。
【化10】
式(A−2)中、Y、Y及びZは上述のとおりである。
【0066】
工程IIに関し、反応温度は、−20℃〜70℃、好ましくは0℃〜50℃であってよく、反応時間は、1時間〜4時間、好ましくは1時間〜3時間であってよい。
【0067】
<工程III>
さらに、得られた式(A−2)の化合物を1当量に対し、還元鉄を6〜8当量加え、反応させることで、式(A−3)の化合物を得ることができる。
【化11】
式(A−3)中、Y、Y及びZは上述のとおりである。
【0068】
工程IIIに関し、反応温度は、60℃〜80℃、好ましくは70℃〜80℃であってよく、反応時間は、1時間〜3時間、好ましくは2時間〜3時間であってよい。
【0069】
<工程IV>
さらに、特開2013−61622号公報に記載の方法などにより、得られた式(A−3)の化合物1当量に対し、無水フタル酸及びハロゲン置換フタル酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種を4〜6当量を酸触媒存在下において反応させることで、式(1)の化合物を得ることができる。酸触媒としては、安息香酸、塩化亜鉛などが挙げられる。
【0070】
工程IVに関し、反応温度は、180℃〜250℃、好ましくは210℃〜250℃であってよく、反応時間は、1時間〜8時間、好ましくは3時間〜8時間であってよい。
【0071】
緑色画素部9bは、上記以外のその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分は、具体的には、赤色画素部9aにおいて説明したその他の成分と同様である。
【0072】
青色画素部9cは、例えば、青色顔料と染料とを含む。青色顔料は、青色画素部に用いられる公知の顔料であってよい。青色顔料は、C.I.ピグメントブルー15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6等であってよく、好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6である。
【0073】
染料は、青色画素部に用いられる公知の染料であってよい。染料は、例えば、キサンテン系染料、アゾ系染料、ジスアゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、トリアリールメタン系染料、メチン系染料、フタロシアニン系染料、ローダミン系染料、シアニン系染料等であってよい。青色画素部9cが青色顔料及び染料を含む場合、青色顔料及び染料の配合比は、これらの種類及び所望の色度に応じて決定される。
【0074】
青色画素部9cは、上記以外のその他の成分を更に含有していてもよい。その他の成分は、具体的には、赤色画素部9aにおいて説明したその他の成分と同様である。
【0075】
遮光部(ブラックマトリックス)は、公知の組成であってよく、例えば、感光性樹脂組成物の硬化物中に黒色顔料が分散されることにより形成されている。
【0076】
以上説明したカラーフィルタ9は、DCI−P3規格のような高い色再現性が求められる場合においても好適に使用される。具体的には、このカラーフィルタを用いることにより、xy色度図における赤色、緑色及び青色の各色度座標3点をそれぞれ互いに直線で結んで形成される三角形の面積が大きくなる。以下、その理由についてより詳細に説明する。
【0077】
まず、赤色画素部9aでは、色度xを大きくすることができる。具体的には、C.I.ピグメントレッド269単体では小さい色度xしか表示できないが、特定の透過率を有する黄色色材を組み合わせて用いることにより、赤色画素部9aとしての色度xが顕著に大きくなる。このような効果は、例えば一般的な赤色顔料であるC.I.ピグメントレッド254には見られないものであり(すなわち、C.I.ピグメントレッド254単体でも、C.I.ピグメントレッド254と特定の透過率を有する黄色色材との併用でも、赤色画素部の色度xは同程度であり)、C.I.ピグメントレッド269に特有の驚くべき効果である。C.I.ピグメントレッド254と黄色色材の組合せでは、480nm付近で吸収が重なってしまうが、C.I.ピグメントレッド269は、C.I.ピグメントレッド254よりも長波長側に急峻な吸収を有するため、黄色色材との吸収の重なりが小さく、より広い波長域に効率的に赤色画素部に必要な吸収を示すことがその理由であると考えられる。加えて、C.I.ピグメントレッド269と特定の黄色色材の組合せによれば、C.I.ピグメントレッド254と特定の黄色色材の組合せに比べて、赤色画素部9aの色度yを小さくすることもできる。
【0078】
また、緑色画素部9bにおいて、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料を用いることにより、例えば一般的な緑色顔料であるC.I.ピグメントグリーン36等のハロゲン化銅フタロシアニン顔料に比べて、緑色画素部9bとして、色度xが小さく、色度yが大きい領域まで表示できるようになる。このような効果は、緑色画素部9bにおいて、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料と、C.I.ピグメントイエロー138等の黄色色材とを併用した場合に顕著に得られる。そして、赤色画素部9aと緑色画素部9bとを組み合わせることにより、赤色画素部9aの色度と緑色画素部9bの色度とが、xy色度図において互いに正反対の方向に高色再現化しながら白色の色度座標から離れていくため、上記の三角形の面積を大きくすることができる。特に、緑色画素部9bにおいて、C.I.ピグメントグリーン59と上記のキノフタロン顔料とを併用することにより、C光源で測定した当該三角形の面積を、NTSC(National Television System Committee)で規定される三角形の面積(=0.1582)よりも大きくすることが可能となる。したがって、本実施形態のカラーフィルタ9によれば、色再現性を高めることができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[製造例1:ピグメントレッド269の評価用組成物]
Clariant社製C.I.ピグメントレッド269 0.55gを、ビックケミー社製BYK−LPN21116(固形分:40質量%)0.83g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.20gと共に、0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機株式会社製ペイントシェーカーで2時間分散して、分散液1を得た。この分散液1に、DIC株式会社製ユニディックZL−295(固形分:40質量%)1.46g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.84gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで評価用組成物を得た。
【0081】
[製造例2:ピグメントレッド254の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントレッド254を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0082】
(赤色顔料の透過率の測定)
製造例1〜2で得られた評価用組成物をソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥し、基板上に着色膜が形成された透過率測定用サンプルを作製した。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間加熱した後の着色膜の厚さが1μmとなるようにした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、測定領域:380〜780nm、測定間隔:1nmの条件で、透過率測定用サンプルの透過スペクトルを測定した。得られた透過スペクトルから、440〜470nmの透過率の平均値と、530〜590nmの透過率の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
[製造例3:ピグメントイエロー139の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー139を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0085】
[製造例4:ピグメントイエロー138の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、大日精化工業株式会社製C.I.ピグメントイエロー138を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0086】
[製造例5:ピグメントイエロー185の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー185を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0087】
[製造例6:ピグメントイエロー129の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー129を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0088】
[製造例7:ピグメントイエロー150の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、LANXESS社製C.I.ピグメントイエロー150を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0089】
[製造例8:ピグメントイエロー151の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントイエロー151を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0090】
[製造例9:ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体の評価用組成物]
特開2014−228682号公報の「実施例2」に従って、「ジスアゾ系化合物C2」と同様にして、C.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体(以下「ピグメントイエロー12誘導体」ともいう)を得た。C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られたC.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0091】
[製造例10:ピグメントイエロー109の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー109を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0092】
[製造例11:ピグメントイエロー110の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントイエロー110を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0093】
(黄色顔料の透過率の測定)
製造例1〜2で得られた赤色顔料の評価用組成物に代えて、製造例3〜11で得られた黄色色材の評価用組成物を用いた以外は、赤色顔料の透過率の測定と同様にして、各黄色色材の透過率を測定し、440〜470nmの透過率の平均値と、530〜590nmの透過率の平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
[評価例1〜7]
製造例1の評価用組成物3.5gと、製造例3〜9のいずれかの評価用組成物1.5gをペイントシェーカーで混合することで、着色組成物を得た。得られた各着色組成物をソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥し、基板上に着色膜が形成された評価用サンプルを作製した。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間乾燥した後の着色膜の厚さが3μmとなるようにした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、C光源を用いたときの評価用サンプルの色度を測定した。
【0096】
[比較評価例1]
製造例1の評価用組成物と製造例3〜9のいずれかの評価用組成物との混合物に代えて、製造例1の評価用組成物のみを用いた以外は、評価例1と同様にして評価用サンプルの作製及び色度の測定を行った。
【0097】
[比較評価例2〜3]
製造例3〜9のいずれかの評価用組成物に代えて、製造例10又は11の評価用組成物を用いた以外は、評価例1と同様にして評価用サンプルの作製及び色度の測定を行った。
【0098】
各評価例及び比較評価例における赤色顔料と黄色色材との組合せ、及び色度の測定結果を表3に示す。
【表3】
【0099】
[比較評価例4〜13]
製造例1の評価用組成物に代えて、製造例2の評価用組成物を用いた以外は、評価例1〜7及び比較評価例1〜3とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行った。各比較評価例における赤色顔料と黄色色材との組合せ、及び色度の測定結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
以上のとおり、C.I.ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを併用することによって、色度xを大きくすることができる。
【0102】
[製造例12:ピグメントグリーン58の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントグリーン58(ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料)を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0103】
[製造例13:ピグメントグリーン59の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントグリーン59(ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料)を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0104】
[製造例14:ピグメントグリーン36の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントグリーン36(ハロゲン化銅フタロシアニン顔料)を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0105】
[製造例15:キノフタロン顔料Aの評価用組成物]
(キノフタロン化合物の合成)
まず、以下の手順に従って、キノフタロン化合物を合成した。
フラスコ中に4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)5.0g(56.1mmol)、p−クロラニル27.6g(112mmol)、水150ml、濃塩酸150ml、n−ブタノール100mlを添加して95℃で30分間攪拌した。この混合物に、n−ブタノール12mlに溶解したクロトンアルデヒド11.8g(168mmol)を滴下して、さらに1時間攪拌した。温度を80℃に下げ、塩化亜鉛15.3g(112mmol)を少量ずつ加えた後、THF200mlを添加して80℃を保ったまま1時間攪拌した。室温まで放冷した後、減圧ろ過にて黄土色粉末を回収した。得られた黄土色粉末をTHF200mlで洗浄し、再び減圧ろ過にて黄土色粉末を回収した。さらに、得られた黄土色粉末をフラスコに移し、水200mlと28%アンモニア水40mlを加え、室温で2時間攪拌した。減圧ろ過にて粉末を回収し、20.3gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解し不溶物をろ過により除いた後に再結晶して中間体(4)12.6gを得た(収率:61%)。
【化12】
H−NMR(CDCl)δppm:2.81(s,6H),4.24(s,2H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),7.49(s,2H),7.67(s,2H),7.99(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl)δppm:25.8,41.1,123.2,126.2,127.8,130.9,133.1,136.3,137.6,143.1,160.0
FT−IR cm−1:3435,3054,3030,2915,1603,1487,1206
FD−MS:366M+
【0106】
続いて、フラスコ中に中間体(4)4.15g(11.3mmol)と濃硫酸7.55mLを加え、45℃で20分間攪拌した。その後、発煙硝酸1.62mLを滴下し、温度を保持し1時間攪拌を続けた。放冷後、氷水250mLを系中にゆっくりと注いだ。さらに、10wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを8〜9に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、蒸留水200mL、エタノール100mLで洗浄することで、中間体(5)4.86g(10.6mmol)を得た(収率:94%)。
【化13】
H−NMR(CDCl)δppm:2.86(s,6H),4.27(s,2H),7.56(d,J=8.8Hz,2H),7.62(s,2H),8.08(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl)δppm:25.7,32.4,119.9,125.6,127.5,130.1,131.1,137.3,143.1,145.9,162.2
FT−IR cm−1:3465,1604,1530,1487,1362
【0107】
続いて、フラスコ中に中間体(5)5.00g(10.9mmol)とエタノール23.3mLを加え、室温で10分間攪拌した。その後、還元鉄4.88g(87.4mmol)を系中に加え、室温でさらに10分間攪拌した。続いて、濃塩酸6.33mLを滴下し、温度を80℃に昇温し、6時間攪拌を続けた。放冷後、蒸留水150mLに注ぎ、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを9に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収した。さらに、回収した粉末を酢酸エチル700mL中で十分攪拌させ、減圧ろ過を行った。そこで得られたろ液の溶媒を減圧留去することで、黄土色粉末である中間体(6)3.64g(9.16mmol)を得た(収率:84%)。
【化14】
H−NMR(CDCl)δppm:2.65(s,6H),3.97(s,2H),5.92(s,4H),7.32(s,2H),7.38(d,J=8.8Hz,2H),8.59(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl)δppm:25.4,31.9,116.8,117.7,117.9,121.0,131.8,132.2,142.0,143.1,158.9
FT−IR cm−1:3476,3373,1627,1605,1409,1359,1250
【0108】
続いて、窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸14.1g(116mmol)を量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、中間体(6)1.44g(3.62mmol)とテトラクロロフタル酸無水物5.53g(19.3mmol)を加え、220℃にて4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にアセトン300mLを加え、1時間攪拌した後、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(7)を4.52g(3.08mmol)得た(収率:85%)。
【化15】
FT−IR cm−1:3449,1727,1622,1536,1410,1363,1308,1192,1112,737
FD−MS:1467M+
【0109】
(キノフタロン化合物の顔料化)
得られたキノフタロン二量体(7)5質量部、粉砕した塩化ナトリウム50質量部、ジエチレングリコール8質量部を双腕型ニーダーに仕込み、80℃で8時間混練した。混練後、混合物を80℃の水6000質量部に取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、黄色顔料であるキノフタロン顔料Aを得た。日本電子社製透過電子顕微鏡JEM−2010で得られたキノフタロン顔料Aを撮影した。二次画像上の凝集体を構成する一次粒子40個につき長い方の径(長径)と短い方の径(短径)の平均値から平均アスペクト比を算出し、長径の平均値を平均一次粒子径とした。平均アスペクト比は3.00未満であった。平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0110】
(評価用組成物の調製)
C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られたキノフタロン顔料Aを用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0111】
[製造例16:キノフタロン顔料Bの評価用組成物]
(キノフタロン化合物の合成)
まず、以下の手順に従って、キノフタロン化合物を合成した。
フラスコ中に濃硫酸55gを仕込み、氷冷下に攪拌しながら文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6’−メチレンジキナルジン7.0g(23.5mmol)を添加した。10℃以下を保ちながら60%硝酸6.1gを滴下し、10℃から20℃で1時間攪拌を続けた。反応液を氷水150mlに注ぎ、20wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、水で中性まで洗浄した。得られた固体を70℃で送風乾燥した後、粗生成物を熱酢酸エチル100ml、次いで熱トルエン60mlで洗浄ろ過し、中間体(8)6.52g(16.8mmol)を得た(収率:72%)。
【化16】
H−NMR(DMSO−d6)δppm:2.70(s,6H),4.42(s,2H),7.58(d,J=8.8Hz,2H),7.63(d,J=8.8Hz,2H),8.09(d,J=8.8Hz,2H),8.13(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(DMSO−d6)δppm:24.5,32.0,117.7,124.8,127.5,129.8,130.5,131.9,145.8,146.2,160.7
FT−IR(KBr disk)cm−1:3048,1602,1520,1494,1363
【0112】
続いて、フラスコ中に還元鉄5.30g、酢酸135mlを仕込み攪拌しながら50℃に加熱した。次いで中間体(8)4.50g(11.6mmol)を70℃以下に保つように添加した。添加終了後60℃で1hr攪拌を続けた後、反応液を35℃以下に冷却し、氷水500mlに注ぎ、20%NaOH水でpH9に調製した。生成した沈殿物をセライト上で減圧ろ過した。固形物を回収し、70℃で送風乾燥後、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlの混合溶媒に加え、90℃で1hr攪拌した。混合物をセライト上で減圧ろ過し、得られたろ液を水1Lに攪拌しながら加えた。生成した沈殿物を減圧濾過で回収し、水洗して中間体(9)3.80g(11.6mmol)を得た(収率:>99%)。
【化17】
H−NMR(DMSO−d6)δppm:2.57(s,6H),3.45(s,2H),5.66(s,4H),7.06(d,J=8.2Hz,2H),7.16(d,J=8.2Hz,2H),7.23(d,J=8.2Hz,2H),8.49(d,J=8.2Hz,2H)
13C−NMR(DMSO−d6)δppm:24.6,32.1,115.8,116.2,119.5,130.9,131.8,141.5,147.4,157.0
FT−IR(KBr disk)cm−1:3464,3363,3315,3192,1640,1591,1573,1415,1365,801
【0113】
続いて、窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸135gを量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、中間体(9)3.80g(11.6mmol)とテトラクロロフタル酸無水物17.99g(62.9mmol)、無水塩化亜鉛0.49g(3.6mmol)を加え、220℃にて6時間攪拌した。反応混合物を120℃に冷却後、クロロベンゼン300mLを加えて1時間攪拌し、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(10)を10.5g(7.5mmol)得た(収率:65%)。
【化18】
FT−IR cm−1:1788,1729,1688,1638,1607,1537,1420,1310,732
FD−MS:1400M+
【0114】
(キノフタロン化合物の顔料化)
キノフタロン二量体(7)に代えて、キノフタロン二量体(10)を用いた以外は、製造例14と同様の方法で顔料化を行い、キノフタロン顔料Bを得た。得られたキノフタロン顔料Bの平均アスペクト比は3.00未満であり、平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0115】
(評価用組成物の調製)
C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られたキノフタロン顔料Bを用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0116】
[製造例17:ピグメントブルー15:6の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントブルー15:6を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0117】
[製造例18:染料Aの評価用組成物]
特開2010−254964号公報の「合成例6:染料A6の合成」に従って、キサンテン系染料である染料Aを合成した。C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られた染料Aを用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0118】
[実施例1−1]
(赤色着色膜の作製)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを、ピグメントレッド269/ピグメントイエロー139の配合比率(質量比)が7/3となるように、ペイントシェーカーで混合することで、着色組成物を得た。得られた着色組成物を用いて、ソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥し、基板上に赤色着色膜が形成された評価用サンプルを作製した。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間乾燥した後の着色膜の厚さが3μmとなるようにした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、C光源を用いたときの評価用サンプルの色度を測定した。
【0119】
(緑色着色膜の作製)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例12のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを、ピグメントグリーン59/ピグメントイエロー138の配合比率(質量比)が6/4となるように混合した以外は、赤色着色膜の評価用サンプルと同様にして、基板上に緑色着色膜が形成された評価用サンプルを作製し、評価用サンプルの色度を測定した。
【0120】
(青色着色膜の作製)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例17のピグメントブルー15:6の評価用組成物と製造例18の染料Aの評価用組成物とを、ピグメントブルー15:6/染料Aの配合比率が4/6となるように混合した以外は、赤色着色膜の評価用サンプルと同様にして、基板上に青色着色膜が形成された評価用サンプルを作製し、評価用サンプルの色度を測定した。
【0121】
(色再現性の評価)
得られた赤色着色膜、緑色着色膜及び青色着色膜のxy色度図上での色度座標3点をそれぞれ互いに直線で結び、当該直線により形成される三角形の面積を計算した。算出された三角形の面積を表5に示す。また、表5には、NTSCで規定される三角形の面積(=0.1582)に対する得られた三角形の面積の比(NTSC比)も併せて示す。三角形の面積及びNTSC比が大きいほど、色再現性が高いことを意味する。
【0122】
[実施例1−2〜1−7及び比較例1−1〜1−2]
赤色着色膜の作製において、製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物に代えて、製造例4〜11の各黄色色材の評価用組成物を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0123】
[比較例1−3]
赤色着色膜の作製において、製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物に代えて、製造例2のピグメントレッド254の評価用組成物を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
[実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例12のピグメントグリーン58の評価用組成物と製造例15のキノフタロン顔料Aの評価用組成物とを、ピグメントグリーン58/キノフタロン顔料Aの配合比率(質量比)が8/2となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
[実施例3−1〜3−7及び比較例3−1〜3−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例15のキノフタロン顔料Aの評価用組成物とを、ピグメントグリーン58/キノフタロン顔料Aの配合比率(質量比)が7/3となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表7に示す。
【0128】
【表7】
【0129】
[実施例4−1〜4−7及び比較例4−1〜4−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例12のピグメントグリーン58の評価用組成物と製造例16のキノフタロン顔料Bの評価用組成物とを、ピグメントグリーン58/キノフタロン顔料Bの配合比率(質量比)が8/2となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表8に示す。
【0130】
【表8】
【0131】
[実施例5−1〜5−7及び比較例5−1〜5−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例16のキノフタロン顔料Bの評価用組成物とを、ピグメントグリーン59/キノフタロン顔料Bの配合比率(質量比)が7/3となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表9に示す。
【0132】
【表9】
【0133】
[比較例6−1〜6−10]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例14のピグメントグリーン36の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを、ピグメントグリーン36/ピグメントイエロー138の配合比率(質量比)が8/2となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−3とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表10に示す。
【0134】
【表10】
【0135】
以上のとおり、赤色画素部において、ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを併用し、かつ、緑色画素部において、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料を用いることによって、xy色度図における三角形の面積を大きくすることができる(すなわち、高い色再現性が得られる)。このような効果は、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料としてピグメントグリーン59を用いた場合に、特に顕著に得られる。
【0136】
[実施例7−1]
<カラーフィルタの作製>
(硬化性樹脂組成物の調製)
重合槽中に、メタクリル酸メチル(MMA)を63質量部、アクリル酸(AA)を12質量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7質量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、100℃で更に1時間反応させた。得られた溶液に、メタクリル酸グリシジル(GMA)を7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部、及びハイドロキノンを0.2質量部更に添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分:50質量%)を得た。
次に、下記の材料を室温で攪拌、混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
・上記共重合樹脂溶液(固形分:50質量%):16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399):24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70):4質量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン:4質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:52質量部
【0137】
(遮光部の形成)
まず、下記組成で各成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調製した。
・黒色顔料(三菱ケミカル社製#2600):20質量部
・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン株式会社製Disperbyk 111):16質量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル):64質量部
次に、下記組成で各成分を十分混合して、遮光部用着色組成物を得た。
・上記黒色顔料分散液:50質量部
・上記硬化性樹脂組成物:20質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:30質量部
基板上に上記遮光部用着色組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ層を形成した。この層を、超高圧水銀ランプでフォトマスク用いて遮光パターンに露光した後、0.05wt%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を230℃の雰囲気下に30分間放置することにより加熱処理を施して、遮光部(ブラックマトリックス)を形成した。
【0138】
(赤色画素部(RCF)の形成)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを、ピグメントレッド269/ピグメントイエロー139の配合比率(質量比)が21/79となるように混合した混合物10g、硬化性樹脂組成物3.19g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.83gを、ペイントシェーカーで混合することで、感光性着色組成物を得た。この感光性着色組成物をスピンコーティング法により塗布して、塗布膜を形成した。その後、上記塗布膜を90℃のオーブン中で3分間乾燥させた。次いで、塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置して、プロキシミティアライナにより、2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、遮光部の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05質量%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、塗布膜の未硬化部分のみを除去して、RCFを得た。
【0139】
なお、ピグメントレッド269/ピグメントイエロー139の配合比率及び画素部(塗布膜)の膜厚は、白色LED光源(日亜化学工業株式会社製、NSSW304F−HG、以下「光源A」ともいう)を用いたときに、画素部の色度(顕微分光光度計を用いて測定)がDCI−P3規格の(x,y)=(0.680,0.320)となり、かつ画素部の輝度Yが最大となるように決定した。画素部(塗布膜)の膜厚は、スピンコート時のスピン回転数を調整することにより調整した。
【0140】
(緑色画素部(GCF)の形成)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例15のキノフタロン顔料Aの評価用組成物とを、ピグメントグリーン59/キノフタロン顔料Aの配合比率(質量比)が56/44となるように混合した以外は、RCFと同様にしてGCFを得た。なお、RCFと同様に、ピグメントグリーン59/キノフタロン顔料Aの配合比率及び画素部(塗布膜)の膜厚は、光源Aを用いたときに、画素部の色度が(x,y)=(0.265,0.690)となり、かつ画素部の輝度Yが最大となるように決定した。
【0141】
(青色画素部(BCF)の形成)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例17のピグメントブルー15:6の評価用組成物と製造例18の染料Aの評価用組成物とを、ピグメントブルー15:6/染料Aの配合比率(質量比)が94/6となるように混合した以外は、RCFと同様にしてBCFを得た。なお、RCFと同様に、ピグメントブルー15:6/染料Aの配合比率及び画素部(塗布膜)の膜厚は、光源Aを用いたときに、画素部の色度がDCI−P3規格の(x,y)=(0.150,0.060)となり、かつ画素部の輝度Yが最大となるように決定した。
【0142】
以上のようにして、赤色、緑色及び青色の各色画素部を備えるカラーフィルタを得た。なお、光源Aを用い、各色画素部の加法混色により算出される色度がDCI−P3規格の(x,y)=(0.3140、0.3510)となるように、各色画素部の面積を微調整した。
【0143】
<画素部の膜厚の測定>
得られた各色画素部の厚さを株式会社日立ハイテクサイエンス製の白色干渉顕微鏡VS1330で測定した。結果を表11に示す。
【0144】
<表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出>
一対の基板のそれぞれに配向膜を形成し、当該一対の基板間に液晶組成物を滴下して貼り合わせ、基板間に液晶層を形成した。一方の基板側に上記で得られたカラーフィルタを更に貼り合わせて表示部を得た。また、駆動基板が設けられた筐体に複数の光源Aを取り付けてバックライト部を得た。上記表示部のカラーフィルタと反対側とバックライトの発光側とを対向させて配置することにより、評価用表示装置を得た。この評価用表示装置において、各色画素部の輝度Yの加法混色により白色の輝度Yを算出した。結果を表11に示す。
【0145】
[実施例7−2及び比較例7−1〜7−2]
RCFの形成において、製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と表11に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表11に示す配合比率(ピグメントレッド269/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表11に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と製造例5のピグメントイエロー185の評価用組成物とを、表11に示す配合比率(緑色色材/ピグメントイエロー185(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表11に示す。
【0146】
[実施例8−1及び比較例8−1〜8−3]
光源として白色LED光源(日亜化学工業株式会社製、NSSW157F、以下「光源B」ともいう)を用い、RCFの形成において、製造例1又は2のピグメントレッド269又はピグメントレッド254の評価用組成物と表12に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表12に示す配合比率(ピグメントレッド269又は254/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表12に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と製造例5のピグメントイエロー185の評価用組成物とを、表12に示す配合比率(緑色色材/ピグメントイエロー185(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表12に示す。なお、表12中、所望の色度に調色できなかった場合は、配合比率及び膜厚の欄に「調色不可」と記載している。
【0147】
[実施例9−1〜9−10及び比較例9−1]
各色画素部の色度及び白色の色度がsRGB規格となるように設計し、RCFの形成において、製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と表13に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表13に示す配合比率(ピグメントレッド269/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表13に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と表13に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表13に示す配合比率(緑色色材/黄色色材(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表13に示す。なお、sRGB規格による各色画素部の色度及び白色の色度は、以下のとおりである。
赤色 (x,y)=(0.640,0.330)
緑色 (x,y)=(0.300,0.600)
青色 (x,y)=(0.150,0.060)
白色 (x,y)=(0.3127,0.3290)
【0148】
[実施例10−1〜10−3及び比較例10−1〜10−3]
光源として光源Bを用い、各色画素部の色度及び白色の色度がsRGB規格となるように設計し、RCFの形成において、製造例1又は2のピグメントレッド269又はピグメントレッド254の評価用組成物と表14に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表14に示す配合比率(ピグメントレッド269又は254/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表14に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを、表14に示す配合比率(緑色色材/ピグメントイエロー138(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表14に示す。なお、表14中、所望の色度に調色できなかった場合は、配合比率及び膜厚の欄に「調色不可」と記載している。
【0149】
【表11】
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
【0152】
【表14】
【0153】
以上のとおり、赤色画素部において、ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを併用し、かつ、緑色画素部において、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料を用いることによって、DCI−P3規格及びsRGB規格において輝度が高くなるように設計した場合にも、赤色画素部及び緑色画素部の膜厚を薄くすることができる。このような効果は、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料としてピグメントグリーン59を用いた場合に、特に顕著に得られる。
【符号の説明】
【0154】
1…液晶表示装置(表示装置)、2…光源、3…第一の偏光層、4…第一の基板、5…第一の電極、6…液晶層、7…第二の電極、8…第二の偏光層、9…カラーフィルタ、10…第二の基板、L…光源からの光。
図1