【実施例】
【0079】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[製造例1:ピグメントレッド269の評価用組成物]
Clariant社製C.I.ピグメントレッド269 0.55gを、ビックケミー社製BYK−LPN21116(固形分:40質量%)0.83g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.20gと共に、0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機株式会社製ペイントシェーカーで2時間分散して、分散液1を得た。この分散液1に、DIC株式会社製ユニディックZL−295(固形分:40質量%)1.46g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.84gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで評価用組成物を得た。
【0081】
[製造例2:ピグメントレッド254の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントレッド254を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0082】
(赤色顔料の透過率の測定)
製造例1〜2で得られた評価用組成物をソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥し、基板上に着色膜が形成された透過率測定用サンプルを作製した。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間加熱した後の着色膜の厚さが1μmとなるようにした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、測定領域:380〜780nm、測定間隔:1nmの条件で、透過率測定用サンプルの透過スペクトルを測定した。得られた透過スペクトルから、440〜470nmの透過率の平均値と、530〜590nmの透過率の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
[製造例3:ピグメントイエロー139の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー139を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0085】
[製造例4:ピグメントイエロー138の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、大日精化工業株式会社製C.I.ピグメントイエロー138を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0086】
[製造例5:ピグメントイエロー185の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー185を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0087】
[製造例6:ピグメントイエロー129の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー129を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0088】
[製造例7:ピグメントイエロー150の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、LANXESS社製C.I.ピグメントイエロー150を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0089】
[製造例8:ピグメントイエロー151の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントイエロー151を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0090】
[製造例9:ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体の評価用組成物]
特開2014−228682号公報の「実施例2」に従って、「ジスアゾ系化合物C2」と同様にして、C.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体(以下「ピグメントイエロー12誘導体」ともいう)を得た。C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られたC.I.ピグメントイエロー12のスルホン化誘導体を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0091】
[製造例10:ピグメントイエロー109の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、BASF社製C.I.ピグメントイエロー109を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0092】
[製造例11:ピグメントイエロー110の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントイエロー110を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0093】
(黄色顔料の透過率の測定)
製造例1〜2で得られた赤色顔料の評価用組成物に代えて、製造例3〜11で得られた黄色色材の評価用組成物を用いた以外は、赤色顔料の透過率の測定と同様にして、各黄色色材の透過率を測定し、440〜470nmの透過率の平均値と、530〜590nmの透過率の平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
[評価例1〜7]
製造例1の評価用組成物3.5gと、製造例3〜9のいずれかの評価用組成物1.5gをペイントシェーカーで混合することで、着色組成物を得た。得られた各着色組成物をソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥し、基板上に着色膜が形成された評価用サンプルを作製した。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間乾燥した後の着色膜の厚さが3μmとなるようにした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、C光源を用いたときの評価用サンプルの色度を測定した。
【0096】
[比較評価例1]
製造例1の評価用組成物と製造例3〜9のいずれかの評価用組成物との混合物に代えて、製造例1の評価用組成物のみを用いた以外は、評価例1と同様にして評価用サンプルの作製及び色度の測定を行った。
【0097】
[比較評価例2〜3]
製造例3〜9のいずれかの評価用組成物に代えて、製造例10又は11の評価用組成物を用いた以外は、評価例1と同様にして評価用サンプルの作製及び色度の測定を行った。
【0098】
各評価例及び比較評価例における赤色顔料と黄色色材との組合せ、及び色度の測定結果を表3に示す。
【表3】
【0099】
[比較評価例4〜13]
製造例1の評価用組成物に代えて、製造例2の評価用組成物を用いた以外は、評価例1〜7及び比較評価例1〜3とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行った。各比較評価例における赤色顔料と黄色色材との組合せ、及び色度の測定結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
以上のとおり、C.I.ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを併用することによって、色度xを大きくすることができる。
【0102】
[製造例12:ピグメントグリーン58の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントグリーン58(ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料)を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0103】
[製造例13:ピグメントグリーン59の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントグリーン59(ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料)を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0104】
[製造例14:ピグメントグリーン36の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントグリーン36(ハロゲン化銅フタロシアニン顔料)を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0105】
[製造例15:キノフタロン顔料Aの評価用組成物]
(キノフタロン化合物の合成)
まず、以下の手順に従って、キノフタロン化合物を合成した。
フラスコ中に4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)5.0g(56.1mmol)、p−クロラニル27.6g(112mmol)、水150ml、濃塩酸150ml、n−ブタノール100mlを添加して95℃で30分間攪拌した。この混合物に、n−ブタノール12mlに溶解したクロトンアルデヒド11.8g(168mmol)を滴下して、さらに1時間攪拌した。温度を80℃に下げ、塩化亜鉛15.3g(112mmol)を少量ずつ加えた後、THF200mlを添加して80℃を保ったまま1時間攪拌した。室温まで放冷した後、減圧ろ過にて黄土色粉末を回収した。得られた黄土色粉末をTHF200mlで洗浄し、再び減圧ろ過にて黄土色粉末を回収した。さらに、得られた黄土色粉末をフラスコに移し、水200mlと28%アンモニア水40mlを加え、室温で2時間攪拌した。減圧ろ過にて粉末を回収し、20.3gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解し不溶物をろ過により除いた後に再結晶して中間体(4)12.6gを得た(収率:61%)。
【化12】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:2.81(s,6H),4.24(s,2H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),7.49(s,2H),7.67(s,2H),7.99(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3)δppm:25.8,41.1,123.2,126.2,127.8,130.9,133.1,136.3,137.6,143.1,160.0
FT−IR cm
−1:3435,3054,3030,2915,1603,1487,1206
FD−MS:366M+
【0106】
続いて、フラスコ中に中間体(4)4.15g(11.3mmol)と濃硫酸7.55mLを加え、45℃で20分間攪拌した。その後、発煙硝酸1.62mLを滴下し、温度を保持し1時間攪拌を続けた。放冷後、氷水250mLを系中にゆっくりと注いだ。さらに、10wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを8〜9に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、蒸留水200mL、エタノール100mLで洗浄することで、中間体(5)4.86g(10.6mmol)を得た(収率:94%)。
【化13】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:2.86(s,6H),4.27(s,2H),7.56(d,J=8.8Hz,2H),7.62(s,2H),8.08(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3)δppm:25.7,32.4,119.9,125.6,127.5,130.1,131.1,137.3,143.1,145.9,162.2
FT−IR cm
−1:3465,1604,1530,1487,1362
【0107】
続いて、フラスコ中に中間体(5)5.00g(10.9mmol)とエタノール23.3mLを加え、室温で10分間攪拌した。その後、還元鉄4.88g(87.4mmol)を系中に加え、室温でさらに10分間攪拌した。続いて、濃塩酸6.33mLを滴下し、温度を80℃に昇温し、6時間攪拌を続けた。放冷後、蒸留水150mLに注ぎ、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pHを9に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収した。さらに、回収した粉末を酢酸エチル700mL中で十分攪拌させ、減圧ろ過を行った。そこで得られたろ液の溶媒を減圧留去することで、黄土色粉末である中間体(6)3.64g(9.16mmol)を得た(収率:84%)。
【化14】
1H−NMR(CDCl
3)δppm:2.65(s,6H),3.97(s,2H),5.92(s,4H),7.32(s,2H),7.38(d,J=8.8Hz,2H),8.59(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3)δppm:25.4,31.9,116.8,117.7,117.9,121.0,131.8,132.2,142.0,143.1,158.9
FT−IR cm
−1:3476,3373,1627,1605,1409,1359,1250
【0108】
続いて、窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸14.1g(116mmol)を量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、中間体(6)1.44g(3.62mmol)とテトラクロロフタル酸無水物5.53g(19.3mmol)を加え、220℃にて4時間攪拌した。放冷後、反応溶液にアセトン300mLを加え、1時間攪拌した後、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(7)を4.52g(3.08mmol)得た(収率:85%)。
【化15】
FT−IR cm
−1:3449,1727,1622,1536,1410,1363,1308,1192,1112,737
FD−MS:1467M+
【0109】
(キノフタロン化合物の顔料化)
得られたキノフタロン二量体(7)5質量部、粉砕した塩化ナトリウム50質量部、ジエチレングリコール8質量部を双腕型ニーダーに仕込み、80℃で8時間混練した。混練後、混合物を80℃の水6000質量部に取り出し、1時間攪拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することにより、黄色顔料であるキノフタロン顔料Aを得た。日本電子社製透過電子顕微鏡JEM−2010で得られたキノフタロン顔料Aを撮影した。二次画像上の凝集体を構成する一次粒子40個につき長い方の径(長径)と短い方の径(短径)の平均値から平均アスペクト比を算出し、長径の平均値を平均一次粒子径とした。平均アスペクト比は3.00未満であった。平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0110】
(評価用組成物の調製)
C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られたキノフタロン顔料Aを用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0111】
[製造例16:キノフタロン顔料Bの評価用組成物]
(キノフタロン化合物の合成)
まず、以下の手順に従って、キノフタロン化合物を合成した。
フラスコ中に濃硫酸55gを仕込み、氷冷下に攪拌しながら文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6’−メチレンジキナルジン7.0g(23.5mmol)を添加した。10℃以下を保ちながら60%硝酸6.1gを滴下し、10℃から20℃で1時間攪拌を続けた。反応液を氷水150mlに注ぎ、20wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、水で中性まで洗浄した。得られた固体を70℃で送風乾燥した後、粗生成物を熱酢酸エチル100ml、次いで熱トルエン60mlで洗浄ろ過し、中間体(8)6.52g(16.8mmol)を得た(収率:72%)。
【化16】
1H−NMR(DMSO−d6)δppm:2.70(s,6H),4.42(s,2H),7.58(d,J=8.8Hz,2H),7.63(d,J=8.8Hz,2H),8.09(d,J=8.8Hz,2H),8.13(d,J=8.8Hz,2H)
13C−NMR(DMSO−d6)δppm:24.5,32.0,117.7,124.8,127.5,129.8,130.5,131.9,145.8,146.2,160.7
FT−IR(KBr disk)cm
−1:3048,1602,1520,1494,1363
【0112】
続いて、フラスコ中に還元鉄5.30g、酢酸135mlを仕込み攪拌しながら50℃に加熱した。次いで中間体(8)4.50g(11.6mmol)を70℃以下に保つように添加した。添加終了後60℃で1hr攪拌を続けた後、反応液を35℃以下に冷却し、氷水500mlに注ぎ、20%NaOH水でpH9に調製した。生成した沈殿物をセライト上で減圧ろ過した。固形物を回収し、70℃で送風乾燥後、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlの混合溶媒に加え、90℃で1hr攪拌した。混合物をセライト上で減圧ろ過し、得られたろ液を水1Lに攪拌しながら加えた。生成した沈殿物を減圧濾過で回収し、水洗して中間体(9)3.80g(11.6mmol)を得た(収率:>99%)。
【化17】
1H−NMR(DMSO−d6)δppm:2.57(s,6H),3.45(s,2H),5.66(s,4H),7.06(d,J=8.2Hz,2H),7.16(d,J=8.2Hz,2H),7.23(d,J=8.2Hz,2H),8.49(d,J=8.2Hz,2H)
13C−NMR(DMSO−d6)δppm:24.6,32.1,115.8,116.2,119.5,130.9,131.8,141.5,147.4,157.0
FT−IR(KBr disk)cm
−1:3464,3363,3315,3192,1640,1591,1573,1415,1365,801
【0113】
続いて、窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸135gを量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、中間体(9)3.80g(11.6mmol)とテトラクロロフタル酸無水物17.99g(62.9mmol)、無水塩化亜鉛0.49g(3.6mmol)を加え、220℃にて6時間攪拌した。反応混合物を120℃に冷却後、クロロベンゼン300mLを加えて1時間攪拌し、減圧ろ過にて黄色粉末である目的物(10)を10.5g(7.5mmol)得た(収率:65%)。
【化18】
FT−IR cm
−1:1788,1729,1688,1638,1607,1537,1420,1310,732
FD−MS:1400M+
【0114】
(キノフタロン化合物の顔料化)
キノフタロン二量体(7)に代えて、キノフタロン二量体(10)を用いた以外は、製造例14と同様の方法で顔料化を行い、キノフタロン顔料Bを得た。得られたキノフタロン顔料Bの平均アスペクト比は3.00未満であり、平均一次粒子径は100nm以下であった。
【0115】
(評価用組成物の調製)
C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られたキノフタロン顔料Bを用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0116】
[製造例17:ピグメントブルー15:6の評価用組成物]
C.I.ピグメントレッド269に代えて、DIC社製C.I.ピグメントブルー15:6を用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0117】
[製造例18:染料Aの評価用組成物]
特開2010−254964号公報の「合成例6:染料A6の合成」に従って、キサンテン系染料である染料Aを合成した。C.I.ピグメントレッド269に代えて、得られた染料Aを用いた以外は、製造例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0118】
[実施例1−1]
(赤色着色膜の作製)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを、ピグメントレッド269/ピグメントイエロー139の配合比率(質量比)が7/3となるように、ペイントシェーカーで混合することで、着色組成物を得た。得られた着色組成物を用いて、ソーダガラス基板上にスピンコートした後、90℃で3分間乾燥し、基板上に赤色着色膜が形成された評価用サンプルを作製した。なお、スピンコートする際のスピン回転数を調整することにより、90℃で3分間乾燥した後の着色膜の厚さが3μmとなるようにした。分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製U3900)を使用して、C光源を用いたときの評価用サンプルの色度を測定した。
【0119】
(緑色着色膜の作製)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例12のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを、ピグメントグリーン59/ピグメントイエロー138の配合比率(質量比)が6/4となるように混合した以外は、赤色着色膜の評価用サンプルと同様にして、基板上に緑色着色膜が形成された評価用サンプルを作製し、評価用サンプルの色度を測定した。
【0120】
(青色着色膜の作製)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例17のピグメントブルー15:6の評価用組成物と製造例18の染料Aの評価用組成物とを、ピグメントブルー15:6/染料Aの配合比率が4/6となるように混合した以外は、赤色着色膜の評価用サンプルと同様にして、基板上に青色着色膜が形成された評価用サンプルを作製し、評価用サンプルの色度を測定した。
【0121】
(色再現性の評価)
得られた赤色着色膜、緑色着色膜及び青色着色膜のxy色度図上での色度座標3点をそれぞれ互いに直線で結び、当該直線により形成される三角形の面積を計算した。算出された三角形の面積を表5に示す。また、表5には、NTSCで規定される三角形の面積(=0.1582)に対する得られた三角形の面積の比(NTSC比)も併せて示す。三角形の面積及びNTSC比が大きいほど、色再現性が高いことを意味する。
【0122】
[実施例1−2〜1−7及び比較例1−1〜1−2]
赤色着色膜の作製において、製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物に代えて、製造例4〜11の各黄色色材の評価用組成物を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0123】
[比較例1−3]
赤色着色膜の作製において、製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物に代えて、製造例2のピグメントレッド254の評価用組成物を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
[実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例12のピグメントグリーン58の評価用組成物と製造例15のキノフタロン顔料Aの評価用組成物とを、ピグメントグリーン58/キノフタロン顔料Aの配合比率(質量比)が8/2となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
[実施例3−1〜3−7及び比較例3−1〜3−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例15のキノフタロン顔料Aの評価用組成物とを、ピグメントグリーン58/キノフタロン顔料Aの配合比率(質量比)が7/3となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表7に示す。
【0128】
【表7】
【0129】
[実施例4−1〜4−7及び比較例4−1〜4−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例12のピグメントグリーン58の評価用組成物と製造例16のキノフタロン顔料Bの評価用組成物とを、ピグメントグリーン58/キノフタロン顔料Bの配合比率(質量比)が8/2となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表8に示す。
【0130】
【表8】
【0131】
[実施例5−1〜5−7及び比較例5−1〜5−2]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例16のキノフタロン顔料Bの評価用組成物とを、ピグメントグリーン59/キノフタロン顔料Bの配合比率(質量比)が7/3となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−2とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表9に示す。
【0132】
【表9】
【0133】
[比較例6−1〜6−10]
緑色着色膜の作製において、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例14のピグメントグリーン36の評価用組成物と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを、ピグメントグリーン36/ピグメントイエロー138の配合比率(質量比)が8/2となるように混合した以外は、実施例1−1〜1−7及び比較例1−1〜1−3とそれぞれ同様にして、評価用サンプルの作製及び色度の測定を行い、また、色再現性の評価を行った。結果を表10に示す。
【0134】
【表10】
【0135】
以上のとおり、赤色画素部において、ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを併用し、かつ、緑色画素部において、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料を用いることによって、xy色度図における三角形の面積を大きくすることができる(すなわち、高い色再現性が得られる)。このような効果は、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料としてピグメントグリーン59を用いた場合に、特に顕著に得られる。
【0136】
[実施例7−1]
<カラーフィルタの作製>
(硬化性樹脂組成物の調製)
重合槽中に、メタクリル酸メチル(MMA)を63質量部、アクリル酸(AA)を12質量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7質量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、100℃で更に1時間反応させた。得られた溶液に、メタクリル酸グリシジル(GMA)を7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部、及びハイドロキノンを0.2質量部更に添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分:50質量%)を得た。
次に、下記の材料を室温で攪拌、混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
・上記共重合樹脂溶液(固形分:50質量%):16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399):24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70):4質量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン:4質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:52質量部
【0137】
(遮光部の形成)
まず、下記組成で各成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調製した。
・黒色顔料(三菱ケミカル社製#2600):20質量部
・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン株式会社製Disperbyk 111):16質量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル):64質量部
次に、下記組成で各成分を十分混合して、遮光部用着色組成物を得た。
・上記黒色顔料分散液:50質量部
・上記硬化性樹脂組成物:20質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:30質量部
基板上に上記遮光部用着色組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ層を形成した。この層を、超高圧水銀ランプでフォトマスク用いて遮光パターンに露光した後、0.05wt%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を230℃の雰囲気下に30分間放置することにより加熱処理を施して、遮光部(ブラックマトリックス)を形成した。
【0138】
(赤色画素部(RCF)の形成)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを、ピグメントレッド269/ピグメントイエロー139の配合比率(質量比)が21/79となるように混合した混合物10g、硬化性樹脂組成物3.19g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.83gを、ペイントシェーカーで混合することで、感光性着色組成物を得た。この感光性着色組成物をスピンコーティング法により塗布して、塗布膜を形成した。その後、上記塗布膜を90℃のオーブン中で3分間乾燥させた。次いで、塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置して、プロキシミティアライナにより、2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、遮光部の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05質量%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、塗布膜の未硬化部分のみを除去して、RCFを得た。
【0139】
なお、ピグメントレッド269/ピグメントイエロー139の配合比率及び画素部(塗布膜)の膜厚は、白色LED光源(日亜化学工業株式会社製、NSSW304F−HG、以下「光源A」ともいう)を用いたときに、画素部の色度(顕微分光光度計を用いて測定)がDCI−P3規格の(x,y)=(0.680,0.320)となり、かつ画素部の輝度Yが最大となるように決定した。画素部(塗布膜)の膜厚は、スピンコート時のスピン回転数を調整することにより調整した。
【0140】
(緑色画素部(GCF)の形成)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例13のピグメントグリーン59の評価用組成物と製造例15のキノフタロン顔料Aの評価用組成物とを、ピグメントグリーン59/キノフタロン顔料Aの配合比率(質量比)が56/44となるように混合した以外は、RCFと同様にしてGCFを得た。なお、RCFと同様に、ピグメントグリーン59/キノフタロン顔料Aの配合比率及び画素部(塗布膜)の膜厚は、光源Aを用いたときに、画素部の色度が(x,y)=(0.265,0.690)となり、かつ画素部の輝度Yが最大となるように決定した。
【0141】
(青色画素部(BCF)の形成)
製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と製造例3のピグメントイエロー139の評価用組成物とを混合する代わりに、製造例17のピグメントブルー15:6の評価用組成物と製造例18の染料Aの評価用組成物とを、ピグメントブルー15:6/染料Aの配合比率(質量比)が94/6となるように混合した以外は、RCFと同様にしてBCFを得た。なお、RCFと同様に、ピグメントブルー15:6/染料Aの配合比率及び画素部(塗布膜)の膜厚は、光源Aを用いたときに、画素部の色度がDCI−P3規格の(x,y)=(0.150,0.060)となり、かつ画素部の輝度Yが最大となるように決定した。
【0142】
以上のようにして、赤色、緑色及び青色の各色画素部を備えるカラーフィルタを得た。なお、光源Aを用い、各色画素部の加法混色により算出される色度がDCI−P3規格の(x,y)=(0.3140、0.3510)となるように、各色画素部の面積を微調整した。
【0143】
<画素部の膜厚の測定>
得られた各色画素部の厚さを株式会社日立ハイテクサイエンス製の白色干渉顕微鏡VS1330で測定した。結果を表11に示す。
【0144】
<表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出>
一対の基板のそれぞれに配向膜を形成し、当該一対の基板間に液晶組成物を滴下して貼り合わせ、基板間に液晶層を形成した。一方の基板側に上記で得られたカラーフィルタを更に貼り合わせて表示部を得た。また、駆動基板が設けられた筐体に複数の光源Aを取り付けてバックライト部を得た。上記表示部のカラーフィルタと反対側とバックライトの発光側とを対向させて配置することにより、評価用表示装置を得た。この評価用表示装置において、各色画素部の輝度Yの加法混色により白色の輝度Yを算出した。結果を表11に示す。
【0145】
[実施例7−2及び比較例7−1〜7−2]
RCFの形成において、製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と表11に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表11に示す配合比率(ピグメントレッド269/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表11に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と製造例5のピグメントイエロー185の評価用組成物とを、表11に示す配合比率(緑色色材/ピグメントイエロー185(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表11に示す。
【0146】
[実施例8−1及び比較例8−1〜8−3]
光源として白色LED光源(日亜化学工業株式会社製、NSSW157F、以下「光源B」ともいう)を用い、RCFの形成において、製造例1又は2のピグメントレッド269又はピグメントレッド254の評価用組成物と表12に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表12に示す配合比率(ピグメントレッド269又は254/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表12に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と製造例5のピグメントイエロー185の評価用組成物とを、表12に示す配合比率(緑色色材/ピグメントイエロー185(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表12に示す。なお、表12中、所望の色度に調色できなかった場合は、配合比率及び膜厚の欄に「調色不可」と記載している。
【0147】
[実施例9−1〜9−10及び比較例9−1]
各色画素部の色度及び白色の色度がsRGB規格となるように設計し、RCFの形成において、製造例1のピグメントレッド269の評価用組成物と表13に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表13に示す配合比率(ピグメントレッド269/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表13に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と表13に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表13に示す配合比率(緑色色材/黄色色材(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表13に示す。なお、sRGB規格による各色画素部の色度及び白色の色度は、以下のとおりである。
赤色 (x,y)=(0.640,0.330)
緑色 (x,y)=(0.300,0.600)
青色 (x,y)=(0.150,0.060)
白色 (x,y)=(0.3127,0.3290)
【0148】
[実施例10−1〜10−3及び比較例10−1〜10−3]
光源として光源Bを用い、各色画素部の色度及び白色の色度がsRGB規格となるように設計し、RCFの形成において、製造例1又は2のピグメントレッド269又はピグメントレッド254の評価用組成物と表14に示す黄色色材(黄色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)とを、表14に示す配合比率(ピグメントレッド269又は254/黄色色材(質量比))となるように混合し、また、GCFの形成において、表14に示す緑色色材(緑色顔料)の評価用組成物(調製方法は上記製造例で説明したとおり)と製造例4のピグメントイエロー138の評価用組成物とを、表14に示す配合比率(緑色色材/ピグメントイエロー138(質量比))となるように混合した以外は、実施例7−1と同様にして、カラーフィルタの作製、画素部の膜厚の測定、表示装置の組立て及び白色の輝度Yの算出を行った。結果を表14に示す。なお、表14中、所望の色度に調色できなかった場合は、配合比率及び膜厚の欄に「調色不可」と記載している。
【0149】
【表11】
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
【0152】
【表14】
【0153】
以上のとおり、赤色画素部において、ピグメントレッド269と、440〜470nmにおける透過率の平均値が6%以下である黄色色材とを併用し、かつ、緑色画素部において、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料を用いることによって、DCI−P3規格及びsRGB規格において輝度が高くなるように設計した場合にも、赤色画素部及び緑色画素部の膜厚を薄くすることができる。このような効果は、特定のハロゲン化フタロシアニン顔料としてピグメントグリーン59を用いた場合に、特に顕著に得られる。