(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
畜肉や魚介等を用いたパン粉付加熱調理済み食品は通常、畜肉(例えば豚肉、牛肉、鶏肉)や魚介(例えばアジ、サケ)などの生の食品素材に対し、まず小麦粉をまぶし(打ち粉)、次いで液卵やバッター液に浸漬した後、パン粉を付着させて焼くあるいは油ちょうするなどの加熱調理を行うことによって製造するのが一般的である。しかし、斯かる一連の操作は非常に煩雑であるため、打ち粉や液卵などへの浸漬を必要とせず、パン粉を食品素材に直接付着させて加熱調理するだけの簡便な操作でパン粉付加熱調理済み食品の製造を行うことへの要望は高い。
【0003】
前記の要望に応え得る技術として、それ単体で食品素材に付着し得るパン粉又はパン粉を主体とするミックスが提案されている。例えば特許文献1では、パン粉と、糊料、α化澱粉、乾燥卵白及び乾燥全卵から選ばれた1種以上とが配合されたパン粉ミックスが開示されている。しかし、特許文献1記載のパン粉ミックスは、パン粉とその他の成分とを混合しただけであるため、保存中に各成分が分離してしまい、十分な量を食品素材に付着させられないなどの不都合があった。
【0004】
特許文献1に記載の如き、食品素材に対する付着機能を有するパン粉ミックスの改良技術として、特許文献2には、乾燥パン粉とα化澱粉及び/又は粉状蛋白と増粘多糖類とが配合されたパン粉ミックスが開示され、特許文献3には、生パン粉の表面に澱粉、蛋白、糖類等を付着させた加工パン粉が開示されている。特許文献2及び3記載のパン粉ミックスで使用されるパン粉は、いずれも小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂等の一般的なパン粉原料を用いて常法に従って製造されるものであり、パン粉自体に特徴は無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2及び3記載のパン粉ミックスは、食品素材に対する付着機能を有しながらも、その保存中に各成分の分離が起こり難いなどの特長を有しているが、近年のパン粉付加熱調理済み食品の品質に対する高い要求に追随していく上では改善の余地がある。衣(パン粉)が全体に均一に付着した良好な外観と、その衣に適度なサクミがある良好な食感とを有する、高品質なパン粉付加熱調理済み食品を簡便な操作で製造し得る技術は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、外観及び食感が良好な高品質のパン粉付加熱調理済み食品を容易に製造することができるパン粉及びパン粉ミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、パン粉の動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)が、パン粉の食品素材に対する付着性に大きな影響を及ぼすことを知見した。
【0009】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、質量にして5倍量の水を加えて混合物とした場合に、水を加えてから常温下で5分間静置した後に、周波数1Hzの条件で測定された動的粘弾性の損失正接が、0.165〜0.250であるパン粉である。
【0010】
また本発明は、前記の本発明のパン粉と、蛋白質素材及び増粘剤からなる群から選択される1種以上とを含むパン粉ミックスである。
また本発明は、食品素材の表面に前記の本発明のパン粉又はパン粉ミックスが付着したパン粉付食品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパン粉及びパン粉ミックスによれば、畜肉や魚介等の食品素材(具材)に直接まぶして油ちょうするだけの簡便な操作で、油ちょうの際の油量の多少を問わず、適度にサクミのあるクリスピーな食感の衣が十分な量で全体に均一に付着し且つ具材の風味が高度に保たれた高品質のパン粉付加熱調理済み食品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のパン粉は、質量にして5倍量の水を加えて混合物とした場合に、水を加えてから常温下(20〜25℃)で5分間静置した後に、周波数1Hzの条件で測定された動的粘弾性の損失正接が、0.165〜0.250の範囲、好ましくは0.167〜0.200の範囲にある点で特徴付けられる。パン粉の損失正接が0.165未満では、食品素材に対する付着性に劣り、損失正接が0.250を超えると、これを用いて得られるパン粉付加熱調理済み食品の外観、食感が劣るおそれがある。
【0013】
前記損失正接(tanδ)は、パン粉の動的粘弾性測定によって求められる。即ち、測定対象たるパン粉(より具体的にはパン粉と水との混合物)に振動による周期的なひずみ(ひずみ振幅)を印加し、応答としてのせん断応力の波形とそれらの位相差から、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”などの粘弾性率を測定する。損失正接は、「損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’」で算出され、G”は測定対象の弾性項、G’は測定対象の粘性項をそれぞれ示す。損失正接の値がゼロに近いほど、当該測定対象は弾性体に近い性質を有し、損失正接の値が大きいほど、当該測定対象は粘性体に近い性質を有すると判断できる。損失正接は具体的には下記方法により測定される。
【0014】
<損失正接(tanδ)の測定方法>
測定対象たるパン粉0.5gを20mL容遠沈管に入れ、該遠沈管に水2.5gを加えて混合物を得る。このとき、パン粉が崩れないように注意しながらパン粉全体に水を行き渡らせる。水を加えてから常温下(20〜25℃)で5分間静置した後に、混合物の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及び損失正接を、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、MCR302)を用いて測定する。動的粘弾性測定装置による測定においては、測定対象たる混合物の治具として、PP25パラレルプレート(直径24.978mm)を使用して、測定対象の測定を開始し、周波数1Hzでそれぞれ固定し、歪み量を当初の0.01%から最終的に1%まで増加させて、G’、G”を測定する。この測定は1種類の測定対象につき複数回(好ましくは3回以上)行い、それらの平均値を当該測定対象のG’、G”とする。G”をG’で除することにより、当該測定対象の損失正接を算出する。
【0015】
本発明のパン粉は、基本的には、直捏生地法や中種生地法などの公知の乾燥パン粉の製造方法に準じて製造することができる。典型的な乾燥パン粉の製造方法は、パンの原料の混合物に加水し混捏して調製した生地に対し、一次発酵、(分割)、(丸め)、二次発酵、成形、(型詰め)、(最終発酵)、焼成の各工程を行ってパンを得、該パンを冷却、粉砕して得た生パン粉を乾燥する工程を有する(前記のカッコ書きの工程は省略される場合もある)。斯かる製造方法において、一次発酵、二次発酵などの発酵工程は省略することも可能であり、生地の状態又は焼成の段階において膨張剤を用いて膨化させる工程に置き換えることもできる。また、生地の焼成方法には焙焼式、電極式などがあるが、本発明においてはいずれの方式のパン粉も使用可能であり、各方式で得られたパン粉を任意の割合で混合した混合パン粉でもよい。また、本発明において前記パンの原料即ちパン粉の原料としては、基本的には、この種のパン粉で使用可能なものを特に制限なく用いることができる。典型的なパン粉の原料は、薄力小麦粉、中力小麦粉、準強力小麦粉、強力小麦粉、デュラム小麦粉などの小麦粉を主体とし、さらにイースト、イーストフード、糖、澱粉、食塩、乳化剤、ショートニング、色素、pH調節剤などを含む。
【0016】
前記測定方法における動的粘弾性の損失正接を0.165〜0.250の範囲にする方法としては、例えば、前記の乾燥パン粉の製造方法において下記1)〜5)のうちの1つ以上を実施する方法が挙げられる。
1)パンの原料の全質量に占める強力小麦粉の割合を多くする。
2)生地の蛋白質含量を多くする。具体的には例えば、パンの原料としてグルテンを用いる。
3)生地を調製する際の混捏の条件を比較的緩やかにする。具体的には例えば、混捏時に生地に与える外圧を弱める、あるいは外圧を与える回数を減らす。
4)生地を調製する際の加水量(パンの原料の混合物に加える水の量)を少なめにする。
5)生パン粉の乾燥の条件を比較的強くする。具体的には例えば、乾燥温度を高くする、あるいは乾燥時間を長くする。
【0017】
本発明のパン粉の大きさは特に限定されないが、食品素材に対する付着性、パン粉を用いて得られるパン粉付加熱調理済み食品の食感などの観点から、平均粒径が好ましくは100μm〜7mm、さらに好ましくは200μm〜5mmである。ここでいう平均粒径とは、段階的に篩にかけて分画し、算出した体積平均径をいう。
【0018】
本発明のパン粉は、食品素材に対する付着性と該パン粉を用いて得られるパン粉付加熱調理済み食品の食感とのバランスの観点から、水分値が6〜14%、特に7〜13%であることが好ましい。パン粉の水分値が低すぎると、パン粉付加熱調理済み食品の食感が硬くなるおそれがあり、パン粉の水分値が高すぎると、パン粉の食品素材に対する付着性が低下するおそれがある。パン粉の水分値は、例えば、前記の乾燥パン粉の製造方法において生パン粉の乾燥条件を適宜調整することによって調整できる。
【0019】
本発明において「水分値」は、規定の条件の下に、試料(パン粉又はパン粉ミックス)を加熱乾燥したときに生じる、該試料の質量減少率を意味する。例えば、試料3gを105℃で3時間加熱乾燥したときに、その減量分の重量の、乾燥前の試料重量(3g)に対する百分率として測定できる。
【0020】
本発明には、前述した本発明のパン粉(以下、「特定パン粉」ともいう)を含むパン粉ミックスが包含される。この本発明のパン粉ミックスは、特定パン粉に加えてさらに、蛋白質素材及び増粘剤からなる群から選択される1種以上を含むものである。特定パン粉は、それ単独でも食品素材に対して高い付着性を有し、打ち粉あるいは食品素材の液卵、バッター液への浸漬などの予備操作を行わずとも、食品素材に直接まぶすだけの簡便な操作だけで、油ちょうなどの加熱調理の前後において食品素材から剥がれにくく、外観及び食感が良好な高品質のパン粉付加熱調理済み食品を容易に製造することができるものであるが、本発明のパン粉ミックスは、食品素材に対する付着性が特定パン粉よりも一層向上している。以下、本発明のパン粉ミックスについて説明する。
【0021】
本発明のパン粉ミックスにおける特定パン粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは70〜99質量%、さらに好ましくは75〜95質量%である。パン粉ミックスにおいて特定パン粉の含有量が少なすぎると、特定パン粉を使用する意義に乏しく、特定パン粉の含有量が多すぎると、相対的に蛋白質素材や増粘剤などの他の成分の含有量が低下するため、特定パン粉の単独使用と実質的に変わらないこととなるおそれがある。
【0022】
本発明のパン粉ミックスで用いる蛋白質素材としては、例えば、グルテン、グリアジン、グルテニン等の小麦蛋白;全卵、卵白、卵黄等の卵蛋白;脱脂粉乳、ホエー蛋白等の乳蛋白;大豆蛋白、ゼラチン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの蛋白質素材の中でも、特に小麦蛋白及び卵蛋白が好ましく、とりわけグルテン及び乾燥卵白が好ましい。
【0023】
本発明のパン粉ミックスで用いる増粘剤としては、例えば、α化澱粉、加工澱粉、グルコマンナン、寒天、カードラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、ゼラチン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの増粘剤の中でも、特にα化澱粉及びグルコマンナンが好ましい。
【0024】
本発明のパン粉ミックスにおける蛋白質素材及び増粘剤の含有量は、それぞれ、該ミックスの全質量に対して、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。パン粉ミックスにおいて蛋白質素材、増粘剤の含有量が少なすぎると、これらを使用する意義に乏しく、該含有量が多すぎると、パン粉ミックスを用いて得られるパン粉付加熱調理済み食品の食感が硬くなるおそれがある。蛋白質素材及び増粘剤の双方を併用する場合、両者の含有質量比は、蛋白質素材:増粘剤として、好ましくは90:1〜1:3、さらに好ましくは20:1〜1:2である。
【0025】
本発明のパン粉ミックスは、これを用いて得られるパン粉付加熱調理済み食品の外観や食感を害さない範囲で、前記成分(特定パン粉、蛋白質素材、増粘剤)以外の他の成分を含有していてもよく、例えば、調味料、乳化剤、油脂、甘味料、食塩、香辛料、色素、酵素、香料等が挙げられ、製造目的物たるパン粉付加熱調理済み食品の種類などに応じてこれらの1種以上を適宜選択すればよい。これらの他の成分の含有量は、パン粉ミックスの全質量に対して20質量%以下が好ましい。本発明のパン粉ミックスは、特定パン粉などの各種原料を混合することで製造でき、常温常圧下で粉末状である。
【0026】
本発明のパン粉ミックスは、水分値が6〜14%、特に7〜13%であることが好ましい。パン粉ミックスの水分値は、基本的にはこれに含まれるパン粉の水分値と略同じであるので、パン粉ミックスの水分値6〜14%を達成するためには通常、水分値が6〜14%のパン粉を使用すればよい。
【0027】
本発明のパン粉及びパン粉ミックスはいずれも、生の食品素材に対して打ち粉、液卵、バッター液などを用いた公知の予備操作を行った後に、該食品素材に付着させて加熱調理する調理法に使用することもできるが、このような予備操作無しで生の食品素材に直接付着させて加熱調理する、より簡便な調理法に使用することもできる。また、これらの調理法において加熱調理する際の油量の多少は問わず、本発明のパン粉及びパン粉ミックスはいずれも、比較的少量の油を使用する焼き調理及び比較的大量の油を使用する揚げ調理の双方に使用することができさらに、オーブン等を使用したノンフライ調理に使用することもできる。
【0028】
少量の油での焼き調理は、例えば、本発明のパン粉又はパン粉ミックスを生の食品素材に直接付着させた後、これを少量の油、具体的には食品素材100gに対して好ましくは50ml以下、さらに好ましくは30ml以下の油と共に、鍋、フライパン、鉄板、オーブン等の調理器具を用いて常法に従って加熱調理することで実施できる。具体的には例えば、調理器具に少量の油を薄く引き延ばし、その油の上で、本発明のパン粉又はパン粉ミックスが付着した食品素材を加熱調理する。また、大量の油での揚げ調理は、例えば、本発明のパン粉又はパン粉ミックスを生の食品素材に直接付着させた後、これを大量の油、具体的には食品素材100gに対して好ましくは深さ2cm以上、さらに好ましくは深さ2〜6cmの油が入った油槽(揚げ鍋など)に投入し、常法に従って加熱調理することで実施できる。
【0029】
本発明のパン粉及びパン粉ミックスが適用可能な食品素材は特に限定されず、例えば、鶏、豚、牛、羊、ヤギなどの畜肉類、イカ、エビ、アジなどの魚介類、野菜類などの種々のものを使用することができる。また、油ちょうで使用する油は、一般的な食用油であれば特に制限はなく、例えば、菜種油、大豆白鮫油、米油、ゴマ油等の植物性油脂;ラード等の動物性油脂が挙げられる。
【0030】
本発明には、食品素材の表面に前述した本発明のパン粉又はパン粉ミックスが付着した、パン粉付食品が包含されるところ、この本発明のパン粉付食品は、冷蔵又は冷凍されていてもよい。本発明のパン粉付食品を焼くあるいは油ちょうするなどして加熱調理することにより、パン粉付加熱調理済み食品が得られる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
〔パン粉の製造〕
主原料として、強力小麦粉、イースト、イーストフード及び澱粉を用い、これらを所定の比率で混合し、その混合物に所定量の水を加え混捏して生地を得、該生地を用いて常法に従って一次発酵、二次発酵、成形、焼成により製パンした。得られたパンを粉砕し乾燥させて、パン粉A〜Gを得た。また、市販のパン粉(日清フーズ製「ソフトパン粉」)をそのままパン粉Hとした。パン粉A〜Hの水分値はいずれも10%に調整した。
【0033】
〔実施例1〜16及び比較例1〜3〕
前記パン粉A〜Hを用い、これに他の原料を適宜混合して、パン粉又はパン粉ミックスからなる衣材を製造した。使用した他の原料は下記の通りである。
・小麦グルテン(グリコ栄養食品製「A−グルG」)
・乾燥卵白(キユーピー製「乾燥卵白」)
・α化澱粉(松谷化学工業製「マツノリン」)
・グルコマンナン(株式会社荻野商店製「スーパーマンナン」)
【0034】
(試験例)
試験対象の衣材をトレイに広げ、その衣材の上に生の食品素材としての豚ロース(厚さ約1.2cm、約100g×1枚)を載せ、豚ロースを複数回上下反転させてその全面に衣材を直接付着させた。こうして衣材が付着した豚ロースを170℃に熱した油槽に投入して3分間油ちょう調理してとんかつ(パン粉付加熱調理済み食品)を製造した。10名のパネラーに、製造直後のとんかつの外観を下記評価基準で評価してもらうと共に、該とんかつを食してもらいその際の食感を下記評価基準で評価してもらった。その結果を10名のパネラーの評価点(5点満点)の平均点として下記表1〜2に示す。
【0035】
(外観の評価基準)
5点:衣(パン粉)が全体に均一に付着し、剣立ちもよく、極めて良好である。
4点:衣(パン粉)が全体に付着し、良好である。
3点:衣(パン粉)が部分的に薄い箇所があるが、やや良好である。
2点:衣(パン粉)が部分的に薄い箇所があり、不良である。
1点:衣(パン粉)が部分的に薄いか剥がれた箇所があり、極めて不良である。
(食感の評価基準)
5点:衣のサクミが十分にあり、極めて良好である。
4点:衣のサクミがあり、良好である。
3点:衣のサクミがやや弱いが、食感としてはやや良好である。
2点:衣のサクミが弱いか硬く、不良である。
1点:衣のサクミに欠けるか硬すぎ、極めて不良である。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す通り、実施例の衣材(パン粉)は、前記測定方法における動的粘弾性の損失正接(tanδ)が0.165〜0.250の範囲にあるパン粉B〜Fのいずれかを含有することで、他のパン粉A、G及びHのいずれかを含有する比較例の衣材に比して、パン粉付加熱調理済み食品たるとんかつの外観及び食感に優れていた。このことから、前記損失正接が前記特定範囲にあるパン粉の有用性は明白である。また、前記損失正接の好ましい範囲は、実施例2〜4の範囲内である0.170〜0.200程度であることがわかる。
【0038】
【表2】
【0039】
表2における各実施例のパン粉ミックスは、同種のパン粉(パン粉B)のみからなる実施例1に比してとんかつの外観及び食感に優れていた。このことから、特定パン粉に加えてさらに蛋白質素材及び/又は増粘剤を配合することが、パン粉付加熱調理済み食品の外観及び食感を向上させる上で有効であることが明白である。
また、衣材たるパン粉ミックスにおける蛋白質素材の含有量は、実施例7〜9の範囲内である25〜30質量%程度が特に好ましいことがわかる。パン粉ミックスにおける増粘剤の含有量についても同様であると推察される。また、実施例14〜16が最も高評価であったことから、蛋白質素材及び増粘剤の併用が特に有効であることがわかる。