(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶融物の所与の積層経路に沿う堆積により造形される三次元造形物の各層の断面についての楕円モデルを表わす特定のパラメータと,その特定パラメータを持つ楕円モデル形状を生じさせる造形条件との関係を表わす実測データベース,
所与の目標形状と,前記実測データベースを参照し楕円モデルを用いて予測される予測形状との差分を所与の許容値以下とする造形条件を導出する造形条件導出手段,および
前記造形条件導出手段による造形条件の導出を,前記所与の目標形状に定められる制御点ごとに繰返すよう制御する繰返し制御手段,
を備える三次元造形のためのコンピュータ支援製造装置。
前記造形条件導出手段は,目標形状と,前記実測データベースを参照し楕円モデルを用いて算出される予測形状との差分が所与の許容値以下になるまで造形条件を変更しながら予測形状を算出するシミュレート手段を含む,請求項1ないしは2に記載の三次元造形のためのコンピュータ支援製造装置。
前記造形条件導出手段によって導出された造形条件を反映する,造形装置の制御プログラムを出力する出力手段をさらに備える,請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元造形のためのコンピュータ支援製造装置。
楕円モデルを表わす前記特定のパラメータが,楕円モデルの水平方向の長径と,積層された溶融物ビードによって再溶融される下層の再溶融領域面積を含む,請求項1に記載の三次元造形のためのコンピュータ支援製造装置。
溶融物の所与の積層経路に沿う堆積により造形される三次元造形物の各層の断面についての楕円モデルを表わす特定のパラメータと,その特定パラメータを持つ楕円モデル形状を生じさせる造形条件との関係を表わす実測データベース,
所与の目標形状と,前記実測データベースを参照し楕円モデルを用いて予測される予測形状との差分を所与の許容値以下とする造形条件を,目標形状に定められる制御点ごとに,導出する造形条件導出手段,および
前記造形条件導出手段によって導出された造形条件を反映する,造形装置の制御プログラムを出力する出力手段,
を備える三次元造形のための制御プログラム生成装置。
請求項8に記載の三次元造形のための制御プログラム生成装置と,この制御プログラム生成装置から出力される制御プログラムにしたがって動作する造形装置とを備える三次元造形システム。
溶融物の所与の積層経路に沿う堆積により造形される三次元造形物の目標形状が与えられたときに,該目標形状と,前記三次元造形物の各層の断面についての楕円モデルを表わす特定のパラメータとその特定パラメータを持つ楕円モデル形状を生じさせる造形条件との関係を表わす実測データベースを参照し楕円モデルを用いて予測される予測形状と,の差分を所与の許容値以下とする造形条件を導出する造形条件導出プログラムルーチン,および
前記造形条件導出ルーチンによる造形条件の導出を,前記所与の目標形状に定められる制御点ごとに繰返すよう制御する繰返し制御プログラム部分,
を備える三次元造形のためのコンピュータ支援製造プログラム。
【実施例】
【0022】
三次元造形システムは,三次元造形装置(
図1)とコンピュータ支援製造(CAM:Computer aided manufacturing )装置(
図3)とを含む。
【0023】
まず三次元造形装置について
図1を参照して簡単に説明する。三次元造形装置は既に知られているものを使用することができる。この実施例では,肉盛溶接技術を利用して金属材料(溶接ワイヤ)を溶融し,その溶融物を堆積させて三次元積層造形を行う。したがって,三次元造形装置10は,移動機構(装置)20と溶接装置30とから構成される。
【0024】
移動機構(装置)20は代表的には数値制御装置であるが(以下,移動装置を数値制御装置という),ロボット装置(直交型ロボット,スカラロボットのいずれでもよい)なども利用できる。この実施例では,溶接装置30のトーチ31および回転体29上の基板Su の少なくともいずれか一方を相対的に,三次元直交3軸(X,Y,Z軸)方向への移動,X軸のまわりの回転(A方向回転)およびZ軸のまわりの回転(C方向回転)が可能である。C方向回転は連続的に 360度以上の回転が可能であるが,A方向回転は 180度の範囲で充分である。基板Su は回転体29上に固定される(固定具は図示略)。Z軸方向が鉛直方向にとられており,Z軸に垂直な平面がXY平面である。図示の状態では回転体29上の基板Su は水平である。
【0025】
数値制御装置20において,固定された基台21の上面の案内面21Aに沿ってX方向可動体22がX軸方向に移動自在に支持されている。X方向可動体22の前面の案内面22Aに沿って昇降体23が上下方向(Z方向)に移動自在に支持されている。昇降体23にはトーチ31を有する後述する溶接装置30の一部が固定されている。基台21に固定されたYテーブル24の案内面24Aに沿ってY方向に移動自在にY方向可動体25が支持されている。可動体25の両側部に支持体26が設けられ,この支持体26に回転体27がそれぞれA方向に回転自在に支持されている。両側の回転体27の間において,それらの回転中心の位置に支持体28が固定的に支持されている。支持体28は回転体27の回転に伴って 180度の範囲で回転自在である。支持体28には回転体29が回転自在に支持されている。上記のように回転体29上に基板Su が固定される。回転体29の表面が水平であれば,基板Su は水平面内で回転する。支持体28が90度回転して,回転体29の表面が垂直になると,回転体29の表面に固定された基板Su は垂直面内で回転する。可動体22,25,昇降体23の移動のための駆動装置(モータや回転/移動変換機構など)(図示略)が設けられ,これらの可動体22,25,昇降体23が移動駆動される。また回転体27,29の回転駆動装置(モータ,歯車など)(図示略)がそれぞれ支持体26,28に設けられ,これらの回転体が回転駆動される。数値制御装置10において,Y軸のまわりに回転させる機構を設けることもできる。なお,運動,移動の座標系として極座標系等を用いる機構でもよい。
【0026】
図2は溶接装置の一部を示すものである。溶接装置30は,溶接電源33,溶接ワイヤ32の供給装置(図示略),シールドガスボンベおよび供給ホース(図示略)等を備えている。
図2には基板Su 上に溶接金属が第1層L1,第2層L2および第3層L3の一部まで積層された状態が描かれている。トーチ31の先端に送給される溶接金属ワイヤ32と基板Su との間に電源33によって電圧が印加され,溶接ワイヤ32の先端と基板Su または造形物(積層物L3など)(ビード)との間にアーク放電Arcが発生する。これにより溶接ワイヤ32が溶融して滴下し(溶滴),溶融池Po が形成される。基板Su と溶接トーチ31(ワイヤ32)の位置を上述の数値制御装置20により相対的に移動させながら,溶融金属の滴下,堆積(固化)のプロセスを行うことにより,積層造形が進行していく。すなわち,トーチ31がXY平面(基板Su の面)上を移動することにより,層が形成され,この操作をトーチ31をZ軸に沿って上昇させながら繰返す。アーク放電の周囲はトーチ31内から噴出されるシールドガスGによって覆われ,金属材料の酸化が防止される。必要に応じて,冷却水により造形物表面を冷却することもできる。
【0027】
図3は,
図1の三次元造形装置とともに三次元造形システムを構成するコンピュータ支援製造(CAM)装置の電気的構成例を示している。このコンピュータ支援製造装置40の主構成要素は処理装置41であり,コンピュータシステム(たとえばパーソナルコンピュータ)によって実現される。処理装置41は,後述するように,造形条件導出手段,繰返し制御手段,シミュレーション手段,出力手段,入力手段等として機能する。処理装置41は目標形状,シミュレーション形状,数値制御装置の制御プログラム等を表示する表示装置42や,各種データや後述するデータベースを格納するメモリ装置43を備えている。造形すべき目標形状は,電子カメラ46や三次元スキャナー47から得られる対象物を表わすデータ(画像データ)に基づいて処理装置41において生成されるか,またはCAD(Computer Aided Design )システム48において生成され,CADデータとして処理装置41に入力される(これらは入力手段の一部を形成する)。処理装置41にはさらに入出力装置45が接続される。入出力装置45は通信装置や記録媒体(CDRやUSBメモリ)のリーダ/ライタで実現される。処理装置41において生成された後述する制御プログラムは入出力装置45を通して(すなわち,通信によって,または記録媒体を通して)数値制御装置20に与えられる。
【0028】
図4は造形条件の一例を示している。造形装置が溶接装置を含む場合には,造形条件は溶接装置の運転ないしは制御条件である。この実施例では,溶接装置の運転,制御条件として
図4に示すものがある。溶接ワイヤに関しては,ワイヤ材料,ワイヤ径dw (mm),ワイヤ送給速度Fw(mm/min)がある。溶接電流I(A)と溶接電圧(V)は電源33から供給されるものである。トーチ送り速度F(mm/min)はトーチ31(ワイヤ32)と基板Suまたは造形物との相対移動速度である。積層数は所望の形状にするための層数である。積層金属の冷却速度の制御や駆動体や支持体の保護のために冷却装置を備えており,冷却方法は一般には水冷である。シールドガスはガスの種類,混合比等を指し,その流量がシールドガス流量(L/min)である。特に重要なものは,ワイヤ送給速度Fw ,トーチ送り速度F,溶接電流I,溶接電圧V等である。
【0029】
図5は後述する楕円モデルを用いて造形形状を予測し,この予測形状と所与の目標形状との差分が小さくなる(許容値以下となる)ように,造形条件を変更し,最終的に,所望の目標形状に近い形状の造形物を造形する造形条件(造形装置の制御プログラム)を導出する処理装置41による処理の流れ(フローチャート)を示すものである。
図6は,
図5のステップS16のビード形状のシミュレーションの処理の詳細を示すフローチャートである。これらのフローチャートに沿って,他の図面も参照しながら処理装置41による処理について以下に説明する。
【0030】
まず目標形状を取得する(S11)。目標形状は,たとえばCADシステム48からCADデータとして処理装置41に与えてもよいし,電子カメラ46または三次元スキャナー47で取得した画像データに基づいて目標形状を表わすデータを処理装置41において生成することもできる。次に積層ピッチPを取得する(S12)。積層ピッチPは積層造形する各層の厚さ(高さ)であり,造形精度を表わす。積層ピッチはデフォルト値でもよいし,ユーザが入力してもよいし,目標形状の大きさに応じて演算式(経験式)によって算出してもよい。そして,目標形状に応じた積層経路(積層パス)を演算し,各制御点Cp を決定する(S13)。積層経路,制御点等も目標形状を表わす(関連する)要素である。
【0031】
図7A,B,Cは,目標形状,そこに設定された制御点Cp および造形形状(ここではシミュレーションされた形状)の一例を示すものである。目標形状の例として円筒(底なし)が示されている。XY座標系の原点が目標形状の円筒内の中心の最も低い位置にとられている。制御点Cp は
図9に示す積層経路(積層パス)に沿って所定間隔(溶融物の制御精度に依存して定められる)ごとに定められる。この実施例では積層経路は目標形状の外周面に沿って設定されるので,制御点Cp は目標形状の外周面上に存在するように描かれている。肉盛溶接により最終的に形成された造形物,すなわち
図7Cの造形形状に描かれている形状の造形物を,数値制御(NC)工作機械等を用いて切削加工することにより,
図7Aに示される目標形状を持つ最終製品(最終造形物)が得られる。
【0032】
図8は,
図7A,B,Cの図形を重ねて表現した図形を示している。目標形状,制御点の位置および造形形状の相互の関係が理解できよう。
【0033】
図9は三次元造形において溶融物を堆積していく積層経路の一例を示している。第1層目の経路は点SP1から始まり,円筒形の一層をほぼ一廻りして点SP1の手前の点EP1で終る。次に第2層目は,点SP1,EP1等とは円周方向に離れた位置において,第1層の経路から1ピッチP分,上昇した点SP2から始まり,円形状にほぼ一周して点SP2の直前の点EP2で終る。第3層目の経路は,さらに点SP2からは円周方向に離れた点SP3(第1層目から2ピッチ分,高さが高い)から始まる。各層の開始(出発点)(終了(終着)点)を平面上の同じ位置にしない方が良いことが経験上分っているので,積層経路を描画(演算)するプログラムには,適当な角度ずつ(等角度またはランダムに)変えるべき指令が入れられている。上述した制御点はこれらの積層経路上に定められる。
【0034】
積層される各層を,肉盛技術の分野ではビードという。ビード形状は溶融池の形状により決定される。溶融池の形状は,材料の重力,表面張力,アーク圧力などの影響を受ける。複数層にわたって積層したビードの積層方向(XY平面における溶接トーチの移動方向に直交する方向)の断面形状の一例のマイクロスコープ写真が
図10に示されている。各ビードの断面形状(二次元形状)を単純な幾何形状である楕円としてモデル化する(楕円D1,D2等)。そして
図11に示すように楕円形状をその一部を重複させて積み重ねることにより,造形物の積層形状を描画する。断面形状は,少なくとも積層経路に沿う制御点間では,堆積進行方向に(積層経路方向)にほぼ同形である。
【0035】
図10において,積層された金属の組織の違いにより,最上層のビード(楕円D1の符号S
1で示す範囲)を積層したときに,その下層のビードの上部(楕円D2の符号S
2で示す範囲)が最上層のビードの熱の影響で再溶融していることが分る。ここで上層(最上層)のビードにおける符号S
1 を,上層のビードを形成するときにあらたに投入された金属材料の断面積(ビード単位長当りの体積)と定義する。また,符号S
2 を,下層(最上層から2番目の層)のビードにおいて上層のビート積層時に上層の熱により再溶融された領域の断面積(ビード単位長当りの体積)と定義する。
【0036】
図11に示す楕円モデルにおいては,符号S
1 は上層(最上層)の楕円の,下層の楕円とは重なっていない部分の面積であり(一重のハッチングで示す),符号S
2 は上下層2つの楕円の重なり合った部分の上部の面積(二重のハッチングで示す)である。楕円のパラメータとして,さらに,水平方向の径(長径)aと,垂直方向の径(短径)bを採用する。さらに,造形途上のパラメータとして,最上層(上層)の楕円の中心点の高さ(基板Su からの高さ)をzと定義する。
【0037】
これらの楕円のパラメータS
1,S
2,a,bおよびzは,造形条件(
図4)によって変化する。
【0038】
このうち,長径aと断面積S
2 は断面写真に基づいて実測可能である。したがって,各種造形条件を変えながら,実測し,そのデータベースをあらかじめ作成しておく(詳しくは後述する)。
【0039】
断面積S
1 (単位長当りの体積)は,ビード形成のためにあらたに投入された金属材料の断面積(単位長当りの体積)に等しい。また,S
1 は他のパラメータb,zに依存するので,b,zを用いた関係式(関数)をf(b,z)とすると,次式が成立つ。
【0040】
【数1】
【0041】
ここでdw は材料となるワイヤの直径(mm),Fw はワイヤの送給速度(送り速度)(mm/min),Fはトーチ送り速度(mm/min)であり,実測(実験)の条件から既知の値である。また,S
2 は未知のパラメータb,zに依存するので,b,zを用いた関係式(関数)をg(b,z)とすると,
S
2=g(b,z) ‥‥式(2)
と表わすことができる。S
2 は上述のように実測する。式(1)と式(2)を連立すると,未知のパラメータb,zを既知のソフトウェアによって求めることができる。
【0042】
さらにビード形成時のビードの置かれた周辺環境に応じて上述した楕円パラメータは変わる。この環境の代表例として次の3種類を挙げておく。
【0043】
環境条件(ケース)(a)は
図12,
図13に示されている。環境条件(a)は平面上にビードを最初に,単独で形成する場合である。
図12A,B(Aは斜視図,Bは拡大断面図,以下同じ)は基板Su 上に最初のビードを形成する場合を示し,
図13A,Bは複数のビードが並列に形成された層(平面とみなせる)の上に最初のビードを形成する場合である。
【0044】
環境条件(ケース)(b)は
図14に示され,1ビード(1パス)ずつ積上げられていく場合であり,特に壁構造やシェル構造を造形する場合の条件である。この場合でも,最下層のビードは環境条件(a)に当ることになる。
【0045】
環境条件(ケース)(c)は,
図15に示され,既に形成されたビードがあり,既に形成されたビードに隣接してビードを造形する場合である。この場合でも,並列して形成された最下層のビードの最初のビードについては環境条件(a)に当り,第2層目であっても最初のビードについては環境条件(a)に当る。
【0046】
実測データの一例を
図16,
図17を参照して説明する。
図16は,環境条件(b)において,造形条件のうちトーチ送り速度Fを変えて楕円モデルのパラメータa(直径)を実測した例をグラフで示すものである。
図17は,環境条件(b)においてトーチ送り速度Fを変えて楕円モデルのパラメータS
2 を実測した例をグラフで示すものである。トーチ送り速度75mm/minから250mm/minの範囲では,a,S
2のいずれもトーチ送り速度Fと線形の関係にある。後述するデータベースには個々の実測値に代えてこの線形関係を表わす式を記憶させておいてもよい(またはプログラムに式を組込んでおいてもよい)。
【0047】
図18は,メモリ装置43に設けられている実測データベースの一例を示すものである。楕円パラメータのうち,長径aの実測値と再溶融面積S
2 の実測値が,上述した環境条件(a),(b),(c)のそれぞれについて,造形条件のいくつかの値を変えてあらかじめ実測した結果として記憶されている。特に長径aについては造形条件のうち,ワイヤ送給速度Fw ,溶接電流I,溶接電圧Vおよびトーチ送り速度Fに依存するので,これらの造形条件を適当な間隔で変えて長径aの値を実測しておくとよい。面積S
2 については,特に溶接電流I,溶接電圧Vおよびトーチ送り速度Fに依存するので,これらの条件を変えながら面積S
2 をマイクロスコープ写真に基づいて実測しておくとよい。もちろん,ワイヤ送給速度Fw を変えてもよい。他の造形条件については固定でも,いくつかの代表値を採用するというように,変化させてもよい。
【0048】
さて,
図5に戻って,与えられた目標形状について積層経路と制御点が定まると,各制御点(XYZ座標系の座標値で規定される)ごとに,造形条件を導出する処理(S14〜S21)に進む(造形条件導出手段,繰返し制御手段)。
【0049】
制御点ごとに環境条件が異なることがあるので,その制御点の環境条件が上述した(a),(b),(c)のいずれかであるかが判断される(S14)。この判断により,実測データベース中の採用すべきデータ群の範囲が定まる。造形条件の初期値はデフォルト値でもよいし,前回の処理ルーチンで決定した一つ前の制御点の造形条件を採用してもよい(S15)。
【0050】
そして,上のようにして与えられた造形条件の下で造形されるであろうその制御点についてのビード形状(断面形状,二次元形状)のシミュレーションが行なわれる(S16)(シミュレート手段)。シミュレーション処理の詳細を示す
図6を参照して,楕円のパラメータのうちの短径bの初期値および楕円の中心の高さzの初期値を取得する(S31,S32)。これらの初期値はデフォルト値でもよい(特に,各層の最初の楕円の高さzの場合),または前回求めた制御点の対応する値でもよい。
【0051】
図5,S14で定められた環境条件の中で,
図5,S15で取得,または後述するS18で変更された造形条件(所与の造形条件)における楕円パラメータa(長径)およびS
2 (再溶融面積)をデータベースから読み出す(S33)。また式(1) にしたがう演算を行い,新たに投入される材料による面積S
1 を所与の造形条件から算出する(S34)。
【0052】
初期値として与えられたパラメータbとzが所与の造形条件から導き出された他のパラメータa,S
2,S
1を満たすように修正される。すなわち,与えられたパラメータa,b,zによって描かれる制御点における楕円について,S
1,S
2が演算され(たとえば画素数のカウント),演算されたS
2とS33で読出したS
2との差分が所定の許容値以下となるようにパラメータzの値が変更され(S37,S38),演算されたS
1 とS34で計算されたS
1 との差分が所定の許容値以下となるようにパラメータbの値が変更される(S39,S40)。このようにして,所与の造形条件に適合するパラメータb,zが求まると,S33で読出したパラメータaを用いて,その制御点における楕円形状が描画される(S41)。この楕円形状は必要に応じて表示装置に表示される。
【0053】
このようにして,着目している特定の制御点に関して楕円形状(予測形状)が描画されると,その制御点における目標形状と合致するか(誤差が許容範囲内か)がチェックされる(S17)。
【0054】
このチェックは,たとえば,描画された楕円(2層目以降は積層された楕円)(予測形状)の頂部の高さ位置と目標形状の該当する頂部の高さ位置(積層経路におけるピッチにより算出可能)とを比較することにより行なわれる。
【0055】
図19Aは第1層目の比較を,
図12Aは第2層目の比較の様子を示している。
図5,S16のシミュレーションで求められた楕円のパラメータによって描画される制御点の楕円(予測形状)の頂部(頂点)の高さは,
z+b/2 ‥‥式(3)
で与えられる。
【0056】
また,目標形状の楕円の頂部(頂点)の高さは,ピッチPの加算値(
図19では第1層目のピッチ分,
図20では第1層目と第2層目のピッチの和)で表わされる。
【0057】
シミュレーションによる形状(頂部の高さ)と目標形状(ピッチの和)との差分の絶対値が許容値を超えている場合には,上記の差分が小さくなる方向に造形条件(S15の初期値,またはS18で変更された値)が修正される(S18)。
図19Aではシミュレーションによる形状が目標形状よりも小さいので,シミュレーション形状を大きくする方向に(
図19B参照),
図20Aではシミュレーションによる形状が目標形状よりも大きいので,シミュレーション形状を小さくする方向に(
図20B),造形条件の代表的な一つ,または複数がその優先順位等にしたがって変更される。必要に応じてS16〜S18の処理が,シミュレーション形状と目標形状との差が許容値以下となるまで繰返される(S17)。
【0058】
着目している制御点について造形条件が定まると,その造形条件を出力(メモリ装置43の所定のエリアに記憶)し,次の制御点に移動してS14〜S20の処理を繰返す。一層分の造形条件導出処理,すなわち,ある層の開始点(SP1,SP2など)から終了点(EP1,EP2など)までのすべての制御点について造形条件の導出が終了すると(S21でYES ),終了した一層分を加えて,それまでにシミュレーションされた造形物の形状をメモリ上で描画し,必要に応じて表示装置42に表示する(S22)。
【0059】
S14からS22までの処理を造形物(目標形状)の最上層に至るまで繰返し(S23),最上層に至ると,ポストプロセスに移る(S24)。
【0060】
ポストプロセス(出力手段)では,上述のようにして導出された制御点ごとの造形条件が造形装置の制御装置の制御プログラム(たとえば数値制御装置20のNC制御プログラム)として出力されるとともに,
図7Cに示すような造形形状を表わすデータが入出力装置45から出力され,必要に応じて数値制御装置20に与えられる。また,必要に応じて表示装置42に表示される。
【0061】
図21は作成された造形条件を含む造形制御プログラムの例である。簡単に説明すると次の通りである。
【0062】
G90は絶対座標系(
図7Aに示す座標系)を示し,G00X0.Y0.はXY座標原点までの早送り命令を表わし,G00Z0.はZ座標原点までの早送り命令を示す。N001は一層目であることを示し,次のG00から始まる行は,X座標0.0000,Y座標−20.0000 ,Z座標0.0000(すなわち開始点SP1)までの早送り命令を示す。M03は積層開始命令,G04P1.は一秒停止命令である。G01で始まる行は,トーチ送り速度F194.90,その他の造形条件(図示略)で,次の制御点(X座標3.1287,Y座標−19.7538 ,Z座標0.0000)まで積層造形すべきことを命令する。以下,同じように,各制御点まで与えられた造形条件で造形していくことになる。制御点は造形条件や造形(積層)方向を変更する位置を示す。制御点間は一般に直線的に移動して積層していくので,制御点間は短い方が分解能が高い。また,造形条件を変更できるので,複雑な形状にも対応しうる。
【0063】
M05は積層動作終了を示し,次のN002は第2層目を表わす。第2層目では開始点の位置と造形条件が第1層目とは異なっていることが分る。
【0064】
図22Aは円錐形状の目標形状を示し,
図22Bはそれに制御点を加えた図,
図22Cは造形形状を示す。
図23は
図22A〜Cを重ねた図である。このように,円錐形状の造形も可能である。
【0065】
円錐形状の造形の場合には,二次元楕円モデルを
図24に示すように,斜めに積層していくことになる。
図24Aは許容値を超える差分が生じている様子,
図24Bは差分が小さくなった様子を示している。必要に応じて,積層する斜めの傾きが大きい場合には,回転体29上の基板Su を傾けてもよい(回転体27によるA方向回転)。
【0066】
図25は円筒形上の上端縁に水平外方に延びるフランジを造形するモデルを示すものである。
図25に示す断面に則して述べれば楕円形状のモデルを垂直方向に積層して,最上層に達した後,基板Su を90度回転させ(回転体27による90度回転),フランジ部分を積層させていけばよい。もちろん,各層において,基板Su (回転体29)を回転させ,積層箇所(制御点)が円を描くように材料の堆積を進行させるのはいうまでもない。
【0067】
以上,肉盛溶接技術による積層造形について説明したが,他のタイプの指向性エネルギー堆積技術にもこの発明は適用可能である。