【実施例】
【0019】
以下本発明の一実施例による植物の根系採取方法について説明する。
図1から
図3は本実施例による植物の根系採取方法の処理工程を示すフロー図である。
まず、2枚の透明シート30を作成する(ステップ1)。
ステップ1による透明シート作成工程の後に、作業台40を設置する(ステップ2)。
ステップ2による作業台設置工程の後に、作業台40に針22を上方としてピンボード20を設置する(ステップ3)。
ステップ3によるピンボード設置工程の後に、ピンボード20の一方の面21にメッシュ枠50を敷設する(ステップ4)。なお、ピンボード20の一方の面21は、針22を突出させた面である。
ステップ4によるメッシュ枠敷設工程の後に、一方の透明シート30Aを針22の上部に載置する(ステップ5)。
ステップ5による第1透明シート載置工程の後に、シート押さえ込み板60によって一方の透明シート30Aを針22の根本まで押さえ込む(ステップ6)。第1透明シート装着工程によって、一方の透明シート30Aは、メッシュ枠50の上面に位置する。
ステップ6による第1透明シート装着工程の後に、ピンボード20を、メッシュ枠50及び一方の透明シート30Aとともに作業台40から取り外す(ステップ7)。
本実施例によれば、ステップ7によるピンボード取り外し工程までによって、透明シート30Aへの孔開け作業を事前に行う必要が無く、またピンボード20への一方の透明シート30Aの装着を容易に行うことができる。
【0020】
ステップ7によるピンボード取り外し工程の後に、植物体を栽培した根箱10を作業台40に設置する(ステップ8)。
ステップ8による根箱設置工程の後に、根箱10から蓋体11を取り外す(ステップ9)。なお、蓋体取り外し工程は、ステップ8による根箱設置工程の前に行ってもよい。
ステップ9による蓋体取り外し工程の後に、一方の透明シート30Aを装着したピンボード20の針22を根箱本体12中の土壌に差し込む(ステップ10)。
ステップ10によるピンボード押し込み工程の後に、根箱本体12とピンボード20とをサポート金具70で挟み込んで固定する(ステップ11)。
ステップ11による固定工程の後に、サポート金具70で固定した根箱本体12とピンボード20とを洗浄台80まで移動する(ステップ12)。
ステップ12による移動工程によって、サポート金具70で固定した根箱本体12とピンボード20とを洗浄台80に載置する(ステップ13)。
ステップ13による洗浄台載置工程の後に、ピンボード20上に植物体の根を土壌とともに載置した状態でサポート金具70と根箱本体12とを取り外す(ステップ14)
ステップ14による根箱本体除去工程の後に、ピンボード20上から土壌を除去する(ステップ15)。土壌の除去は洗浄によって行う。
本実施例によれば、ステップ8による根箱設置工程の後からステップ15による洗浄工程までによって、洗浄台80への移動と洗浄台80での洗浄を容易に行える。
【0021】
ステップ15による洗浄工程の後に、土壌を除去したピンボード20を作業台40に針22を上方として設置する(ステップ16)。
ステップ16によるピンボード設置工程の後に、他方の透明シート30Bを針22の上部に載置する(ステップ17)。
ステップ17による第2透明シート載置工程の後に、シート押さえ込み板60によって他方の透明シート30Bを針22の根本まで押さえ込む(ステップ18)。第2透明シート装着工程によって、透明シート30Bは植物体の根の上面に位置する。
ステップ18による第2透明シート装着工程の後に、ピンボード20を、メッシュ枠50及び2枚の透明シート30A、30Bとともに作業台40から取り外し平板100上に載置する(ステップ19)。平板100上には、根を2枚の透明シート30A、30Bの間に挟み込んだ状態で、ピンボード20が上方になるように載置する。
ステップ19による透明シート移動工程の後に、脱離用押し出し金具90をピンボード20の上部に配置する(ステップ20)。
ステップ20による透明シート押し出し準備工程の後に、脱離用押し出し金具90によってメッシュ枠50をピンボード20から押し出すことで、根を挟み込んだ2枚の透明シート30A、30Bをピンボード20から脱離させる(ステップ21)。
ステップ21による透明シート押し出し工程の後にメッシュ枠50を取り除き、根系採取が終了し、平板100上には根を挟み込んだ2枚の透明シート30A、30Bが残る(ステップ22)。
本実施例によれば、ステップ16によるピンボード設置工程の後からステップ22による根系採取終了までによって、透明シート30Bへの孔開け作業を事前に行う必要が無く、またピンボード20への他方の透明シート30Bの装着を容易に行え、更に2枚の透明シート30A、30Bのピンボード20からの脱離を容易に行うことができる。
【0022】
以下本発明の一実施例による植物の根系採取装置について説明する。
図4は本実施例における透明シート作成工程で用いる透明シート作成用型板を示す写真である。
透明シート作成用型板35は、上金板35Aと下金板35Bとからなり、上金板35Aの幅は、用いる透明シート30の幅と同じとし、下金板35Bの幅は上金板35Aの幅より広く形成している。
透明シート30には、市販の薄いポリ袋36を用いることができる。
下金板35Bにポリ袋36を載せ、上金板35Aでポリ袋36挟み、上金板35Aの側片に沿って、ポリ袋36の長手方向を切り落とすことによって、折りたたまれた状態の2枚のポリエチレンシート(透明シート)30を得ることができる。
透明シート作成用型板35を用いることで一度に100組の透明シート30を作成できる。
【0023】
図5は本実施例における植物の根系採取方法の処理工程で用いる作業台を示す写真である。
作業台40には、根箱10の載置位置を規制する根箱固定用ガイド41と、ピンボード20の載置位置を規制するガイド棒42と、根箱10を設置した状態で根箱10が露出する第1切り込み部43と、ピンボード20を設置した状態でピンボード20が露出する第2切り込み部44とを形成している。
根箱固定用ガイド41は、根箱本体12の一方の幅にあわせたガイド41a、41bと、根箱本体12の他方の幅にあわせたガイド41c、41d、41e、41fとからなる。
ガイド棒42は、根箱10の載置面とならない位置に配置した4本のガイド棒42a、42b、42c、42dからなる。ガイド棒42には、根箱10の載置面から所定高さの高さ規制部42hを形成している。本実施例では、高さ規制部42hは大径部で形成している。ステップ3におけるピンボード設置工程では、ピンボード20は、高さ規制部42hの上面に設置される。
第1切り込み部43は、ガイド41cとガイド41dとの間に形成される第1切り込み部43aと、ガイド41eとガイド41fとの間に形成される第1切り込み部43bとからなる。
第2切り込み部44は、ガイド棒42aとガイド棒42bとの間に形成される第2切り込み部44aと、ガイド棒42cとガイド棒42dとの間に形成される第2切り込み部44bとからなる。
【0024】
図6は本実施例における植物の根系採取方法の処理工程で用いるピンボードの上面を示す写真、
図7は同ピンボードの下面を示す写真である。
ピンボード20の一方の面21fには多数の針22を有する。ピンボード20には、ガイド棒42に対応する位置に4つのピンボードガイド孔23を形成している。ピンボードガイド孔23は、ガイド棒42の外径よりも大きく、高さ規制部42hの外径よりも小さな孔径である。
ピンボード20の他方の面21bには、断面L字型のL字アングルで形成されたピンボード操作部24を有する。
ピンボード20の少なくとも一方の側部には、2つのピンボードガイド孔23の間にピンボード切り込み部25を形成している。
ピンボード20の針22を形成した位置には、針22の間に多数の開口部26を形成している。
【0025】
図8は本実施例における植物の根系採取方法の処理工程で用いるメッシュ枠を示す写真、
図9は同メッシュ枠をピンボードに敷設した状態を示す写真である。
メッシュ枠50は、多数の縦桟と横桟とを格子状に配置している。ピンボード20の針22形成領域より大きな外形が好ましい。
図9に示すように、メッシュ枠50は、ピンボード20に敷設した状態では、一方の面21fに当接する。
【0026】
図10は本実施例におけるピンボードへの透明シート装着工程で用いるシート押さえ込み板の下面を示す写真、
図11は同シート押さえ込み板の上面を示す写真である。
シート押さえ込み板60の一方の面60bには、透明シート30A、30Bを針22の根本まで押圧する押圧部61を形成している。押圧部61は、例えば発泡ウレタンで形成する。押圧部61は、針22を容易に刺すことができるが、針22の間は、変形することなく透明シート30A、30Bを押圧する。
押さえ込み板ガイド孔62は、ガイド棒42に対応する位置に4つ形成されている。押さえ込み板ガイド孔62は、ガイド棒42の外径よりも大きな径で形成されている。
シート押さえ込み板60の他方の面60aには、シート押さえ操作部63を有する。また、シート押さえ込み板60の他方の面60aには、押圧部61の形成領域を表示する押圧領域表示部64を形成している。
【0027】
図12は本実施例における根箱とピンボードとの固定工程で用いるサポート金具を示す写真である。
図12では、ピンボード20をメッシュ枠50とともに作業台40に設置した状態を示しているが、根箱10は省略している。
一対のサポート金具70は、ピンボード20に当接するピンボード側当接片71と、根箱本体12に当接する根箱側当接片72とを有し、メッシュ枠50及び透明シート30Aを装着した状態で、ピンボード20と根箱本体12とを固定する。
図示のように、一対のサポート金具70の幅を、第1切り込み部43の幅より狭く構成することで、作業台40での固定作業を容易に行える。
【0028】
図13は本実施例における洗浄工程で用いる洗浄台を示す写真である。
洗浄台80は、ピンボード20を載置する載置材81と、載置材81を支える脚部材82と、載置材81の角度を変更する角度変更部材83と、ピンボードガイド孔23に挿通可能な洗浄ガイド棒84とを有している。
角度変更部材83は、第1部材83aと第2部材83bとを有し、第1部材83aの一端及び第2部材83bの一端は、それぞれ異なる位置で脚部材82に回動自在に取り付けている。第1部材83aの他端側と第2部材83bの他端側は、ピン83cで連結され、ピン83cの第1部材83a又は第2部材83bでの位置を変更することで、第1部材83aの脚部材82に対する傾斜角を変更できる。なお、ピン83cを取り外すことで、第1部材83a及び第2部材83bを脚部材82と平行にして折りたたむことができる。
載置材81は第1部材83aに取り付けられている。洗浄ガイド棒84は載置材81の上部に配置されている。
洗浄台80は、洗浄ガイド棒84を用いてピンボード20を載置できるため、安定した洗浄作業ができる。また、ピン83cを取り外して折りたたむことができるため、屋外への持ち運びや収納も容易である。また、洗浄台80のピン83cの位置を差し換えることで、任意の角度でピンボード20の洗浄作業が行える。
【0029】
図14は本実施例における透明シート押し出し工程で用いる脱離用押し出し金具を示す写真、
図15は同脱離用押し出し金具の使用状態を説明する写真である。
図14に示すように、脱離用押し出し金具90には、メッシュ枠50を押圧する複数の凸部91を形成している。
凸部91は、
図15に示すピンボード20の開口部26に挿入できる棒状体であり、それぞれの凸部91は、ピンボード20の開口部26の位置に対応している。
また、
図15に示すように、ピンボード20にメッシュ枠50を敷設した状態では、ピンボード20の開口部26には、メッシュ枠50の縦桟又は横桟が位置する。
従って、脱離用押し出し金具90は、凸部91によってメッシュ枠50をピンボード20から押し出すことで、根を挟み込んだ2枚の透明シート30A、30Bをピンボード20から脱離させることができる。
【0030】
図16は第1透明シート載置工程を示す写真、
図17は第1透明シート装着工程を示す写真である。
第1透明シート載置工程では、作業台40には、ピンボード20が設置され、ピンボード20にはメッシュ枠50が敷設されている。ピンボード20は、ピンボードガイド孔23にガイド棒42を挿入することで、作業台40に設置している。
図16では、ピンボード20の針22の上面に透明シート30Aを載置している。透明シート30Aには孔が形成されていない。
シート押さえ込み板60は、押さえ込み板ガイド孔62にガイド棒42を挿入することで、作業台40に対して位置決めされる。
図17では、押さえ込み板ガイド孔62にガイド棒42を挿入した後に、押圧領域表示部64で表示された押圧部61の形成領域を押圧する。
【0031】
図18及び
図19はピンボード押し込み工程を示す写真である。
作業台40に設置している根箱10は、蓋体11を取り外した状態にある。根箱本体12の4つの側面は、根箱固定用ガイド41に当接している。
ピンボード20は、針22を下面とし、ピンボードガイド孔23にガイド棒42を挿入することで位置決めされる。
【0032】
図20は根箱本体除去工程を示す写真、
図21は洗浄工程を示す写真である。
図20では、洗浄台80に設置しているピンボード20から根箱本体12を取り外している状態を示している。根箱本体12を下方にずらすことで、土壌と植物体の根をピンボード20上に残した状態で、根箱本体12を除去する。
図21は、土壌を洗浄している状態である。
【0033】
図22は透明シート押し出し工程を示す写真、
図23は透明シート押し出し工程後に平板上に残った2枚の透明シートとメッシュ枠を示す写真である。
【0034】
本実施例による植物の根系採取装置は、根箱10を設置する作業台40に、根箱固定用ガイド41とガイド棒42とを形成しているため、根箱10にピンボード20の針22を差し込む際に、正確なセッティングを容易に行え、サンプル間でのばらつきを無くすことができる。
また本実施例による植物の根系採取装置は、透明シート30をピンボード20に装着するシート押さえ込み板60を備えている。そして、シート押さえ込み板60には、透明シート30を針22の根本まで押圧する押圧部61と、ガイド棒42に対応する押さえ込み板ガイド孔62とを形成している。従って、ガイド棒42を用いてシート押さえ込み板60の位置決めができ、押圧部61によって均等に透明シート30を押圧できるので、透明シート30のピンボード20への装着を迅速で正確に行える。
また本実施例による植物の根系採取装置は、メッシュ枠50をあらかじめ敷設しておき、このメッシュ枠50を脱離用押し出し金具90で押圧するため、根系形状を崩すことなく、透明シート30をピンボード20から容易に脱離することができる。
また本実施例による植物の根系採取装置は、一方の透明シート30Aを装着したピンボード20と根箱本体12とを固定するサポート金具70を備え、作業台40には、根箱本体12を設置した状態で、根箱本体12が露出する切り込み部43、44を形成し、切り込み部43、44で、サポート金具70を根箱本体12に装着する。従って、作業台40に根箱本体12を設置した状態で、切り込み部43、44を利用してサポート金具70でピンボード20と根箱本体12とを固定できるため、根箱10とピンボード20とを容易に移動でき、例えば土壌を除去するための移動を容易に行える。
また本実施例による植物の根系採取装置は、孔を形成していない透明シート30を用い、ピンボード20への装着によって透明シート30に孔が形成される。従って、透明シート30への孔開け作業を不要にでき、また、ピンボード20への装着を容易に行える。