特許第6754233号(P6754233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754233
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】電力ケーブル接続構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/10 20060101AFI20200831BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H02G9/10
   E02D29/12 E
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-134355(P2016-134355)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-93278(P2017-93278A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-219457(P2015-219457)
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】茂木 正也
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀郎
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−70437(JP,A)
【文献】 特開昭57−208817(JP,A)
【文献】 特開2013−2494(JP,A)
【文献】 実開昭57−139231(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/10
H02G 3/22
E02D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管路からマンホール内に延出した電力ケーブル同士を接続する電力ケーブル接続構造であって、
管路からマンホール内に延出し且つ絶縁コアの外周に金属保護管を有する第1延出部、及び前記第1延出部よりも端部側に設けられ且つ金属保護管を有さない第2延出部を備える電力ケーブルと、
前記第2延出部において絶縁コアの外周に設けられた金属可撓管と、
前記第2延出部の端部に取り付けられ、前記電力ケーブルを他の電力ケーブルと接続してなる中間接続部と、
前記第1及び第2延出部の間に設けられ、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを連結してなる連結部と、
を備え
前記連結部は、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを接続してなるフランジであり、
前記連結部は、前記金属可撓管の端部を径方向に押圧してなる第1押圧部と、前記金属保護管の端部を径方向に押圧してなる第2押圧部と、を有することを特徴とする電力ケーブル接続構造。
【請求項2】
前記第1押圧部は、前記金属可撓管の外周面を径方向に押圧してなる第1押圧面と、該第1押圧面上に配置され、前記金属可撓管の外周面と圧接してなる第1弾性部材とを有し、
前記第2押圧部は、前記金属保護管の外周面を径方向に押圧してなる第2押圧面と、該第2押圧面上に配置され且つ前記金属保護管の外周面と圧接してなる第2弾性部材とを有することを特徴とする請求項記載の電力ケーブル接続構造。
【請求項3】
複数の管路からマンホール内に延出した電力ケーブル同士を接続する電力ケーブル接続構造であって、
管路からマンホール内に延出し且つ絶縁コアの外周に金属保護管を有する第1延出部、及び前記第1延出部よりも端部側に設けられ且つ金属保護管を有さない第2延出部を備える電力ケーブルと、
前記第2延出部において絶縁コアの外周に設けられた金属可撓管と、
前記第2延出部の端部に取り付けられ、前記電力ケーブルを他の電力ケーブルと接続してなる中間接続部と、
前記第1及び第2延出部の間に設けられ、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを連結してなる連結部と、
を備え、
前記連結部は、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを接続してなるフランジであり、
前記フランジの一方の面に、前記金属保護管の端部に外装された金属筒材の一端が溶接されており、
前記フランジの他方の面に、前記金属可撓管の端部が溶接されており、
前記フランジの一方の面に溶接された前記金属筒材の他端と前記金属保護管との接続部に防水テープが配されることを特徴とする電力ケーブル接続構造。
【請求項4】
前記中間接続部は、
前記電力ケーブルと前記他の電力ケーブルの端部同士の接続部を覆う接続筐体と、
前記接続筐体と前記金属可撓管とを接続してなる他のフランジと、
を有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の電力ケーブル接続構造。
【請求項5】
前記電力ケーブルがCVケーブルであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の電力ケーブル接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に布設される電力ケーブル接続構造に関し、特にマンホール内に配設されて他の電力ケーブル構造と中間接続部を介して接続される電力ケーブル接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧用や低電圧用送電線として、CVケーブル(cross-linked polyethylene insulated PVC sheathed cable)が広く用いられている。CVケーブルは、一般に、導体を絶縁してなる絶縁コアと、該絶縁コアに外装されたシースと呼ばれる保護管とで構成され、更に、仕様(高電圧用など)や布設環境(地中など)に応じて、絶縁コアと保護管との間にクッション層や遮蔽層などの他層が設けられている。
【0003】
このうち、地中に布設されるCVケーブルは、上記絶縁コアを防水するために、絶縁コアを鉛・アルミニウム等からなる金属被覆層で覆った構造を有している。
【0004】
ここで近年、老朽化したOFケーブル(oil-filled cable)を上記のようなCVケーブルに引替える作業が行われており、その際、OFケーブルが布設されている既設線路をなるべく使用したいとの要望がある。しかし、OFケーブルは通常狭隘マンホール内に布設されている場合が多く、ケーブルの損傷や性能劣化を防止するために曲げ半径を考慮した場合、CVケーブルを既存の狭隘マンホールに布設することができず、CVケーブル用のマンホールを築造する必要がしばしば生じる。
【0005】
例えば、アルミニウム製金属被覆層(以下、Al被覆層という)を有さない電力ケーブルの布設時最小半径は、電力ケーブル外径の15倍であるのに対し、Al被覆層付き電力ケーブルの布設時最小曲げ半径は、Al被覆層の平均外径の約22.5倍である(「電気共同研究」、一般社団法人電気共同研究会、第61巻参照)。すなわち、電力ケーブルの構造によって許容曲げ半径が異なっており、Al被覆層付き電力ケーブルを布設する際、Al被覆層を有さない電力ケーブルの場合よりも大きいマンホールを築造する必要があり、設置スペース確保や作業負担の観点から、電力ケーブルの布設が困難となっている。
【0006】
また、電力ケーブルは通電すると熱収縮が生じるため、マンホール内では、管路口と電力ケーブル同士の中間接続部との間で各電力ケーブルをオフセットさせて布設する。すなわち、管路口と中間接続部との間に布設された電力ケーブルにおいて、管路口直近の電力ケーブル中心位置と中間接続部直近のケーブル中心位置とをずらして略S字状に布設する。しかし、狭隘マンホール内に電力ケーブルを布設する場合には、管路口から中間接続部の間の距離が短いため、布設時に許容曲げ半径以上の曲げ半径を確保することができず、また、熱収縮時にケーブル曲げ半径が電力ケーブルの許容曲げ半径を下回る可能性がある。特に、Al被覆層付き電力ケーブルでは、上述のように許容曲げ半径が大きいことから、布設時或いは熱収縮時に許容曲げ半径以上の曲げ半径を確保し難く、電力ケーブルの損傷や性能劣化が懸念される。
【0007】
このような問題を解消するべく、従来の電力ケーブルの布設方法では、例えば、狭隘マンホールを対象として、該狭隘マンホール内に電力ケーブル同士を接続する複数の接続箱を配置することで熱伸縮を吸収しうるケーブル長さを確保する技術が提案されている(特許文献1)。また、狭隘路を対象として、該狭隘路内に球状回転体型牽引機を設置し、一対のタイヤ(ホイール)で電力ケーブルを挟持しつつ、各タイヤの回転数を異ならせて送り出すことで、狭隘路内での電力ケーブルの引き入れ作業や立ち上げ作業を容易に行う技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−262663号公報
【特許文献2】特開2014−180163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術では、複数の接続箱や、接続箱同士を接続する電力ケーブルが必要となることから、接続構造が複雑となり、狭隘マンホール内の布設作業が煩雑である。また、特許文献2は、単に狭隘路内での電力ケーブルの引き入れや立ち上げを容易にする方法を開示するものの、許容曲げ半径を考慮して電力ケーブルを接続或いは布設することについての開示はない。
【0010】
本発明の目的は、良好な水密性を確保すると共に、ケーブルの損傷や性能劣化を防止し、加えて簡単な構成で、狭隘マンホール内にも容易に布設することができる電力ケーブル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電力ケーブル接続構造は、複数の管路からマンホール内に延出した電力ケーブル同士を接続する電力ケーブル接続構造であって、管路からマンホール内に延出し且つ絶縁コアの外周に金属保護管を有する第1延出部、及び前記第1延出部よりも端部側に設けられ且つ金属保護管を有さない第2延出部を備える電力ケーブルと、前記第2延出部において絶縁コアの外周に設けられた金属可撓管と、前記第2延出部の端部に取り付けられ、前記電力ケーブルを他の電力ケーブルと接続してなる中間接続部と、前記第1及び第2延出部の間に設けられ、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを連結してなる連結部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記連結部は、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを接続してなるフランジであるのが好ましい。
【0013】
また、前記連結部は、前記金属可撓管の端部を径方向に押圧してなる第1押圧部と、前記金属保護管の端部を径方向に押圧してなる第2押圧部とを有する。
【0014】
また、前記第1押圧部は、前記金属可撓管の外周面を径方向に押圧してなる第1押圧面と、該第1押圧面上に配置され、前記金属可撓管の外周面と圧接してなる第1弾性部材とを有し、前記第2押圧部は、前記金属保護管の外周面を径方向に押圧してなる第2押圧面と、該第2押圧面上に配置され且つ前記金属保護管の外周面と圧接してなる第2弾性部材とを有する。
【0015】
また、前記連結部は、前記金属保護管の端部と前記金属可撓管の端部とを溶接してなる溶接部であってもよい。
【0016】
前記フランジの一方の面に、前記金属保護管の端部に外装された金属筒材の一端が溶接されており、前記フランジの他方の面に、前記金属可撓管の端部が溶接されており、前記フランジの一方の面に溶接された前記金属筒材の他端と前記金属保護管との接続部に防水テープが配されてもよい。
【0017】
前記中間接続部は、前記電力ケーブルと前記他の電力ケーブルの端部同士の接続部を覆う接続筐体と、前記接続筐体と前記金属可撓管とを接続してなる他のフランジとを有する。
【0018】
また、前記電力ケーブルがCVケーブルであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、管路からマンホール内に延出した電力ケーブルが中間接続部に接続されており、該電力ケーブルの第1延出部において、絶縁コアの外周に金属保護管が設けられると共に、第1延出部よりも端部側に設けられた第2延出部においては、絶縁導コアの外周に金属保護管が設けられず、金属可撓管が設けられる。そして、金属保護管の端部と金属可撓管の端部とが連結部によって連結されている。よって、金属保護管と金属可撓管の端部が連結されることによって良好な水密性を確保することができ、また、金属保護管が配された第1延出部と比べて、金属可撓管が配された第2延出部の許容曲げ半径を小さくすることができる。よって、布設時或いは熱収縮時に許容曲げ半径以上の曲げ半径を確保することができ、電力ケーブルの損傷や性能劣化を防止することができる。また、1経路の電力ケーブル接続で1つの接続筐体を設置すればよく、複数の接続箱や、接続箱同士を接続する電力ケーブルが不要であるため、簡単な接続構造且つ省スペースを実現することができ、また、狭隘マンホール内にも電力ケーブルを容易に布設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電力ケーブル接続構造の構成を概略的に示す図である。
図2図1における連結部の構成の一例を示す正面図である。
図3図1における連結部の構成の一例を示す側面図である。
図4図1における連結部の構成の一例を示す分解図である。
図5】(a)は、図1の電力ケーブルにおける第1延出部の構成を示す図であり、(b)は、図1の電力ケーブルにおける第2延出部の構成を示す図である。
図6】(a)は図1における中間接続部の構成を示す縦断面図であり、(b)は線A−Aに沿う断面図である。
図7図1の電力ケーブル接続構造における連結部の変形例を示す図である。
図8図1の電力ケーブル接続構造における連結部の他の変形例を示す図である。
図9】(a)は、図8の連結部の詳細構成を示す長手方向断面図、(b)は、線B−Bに沿う径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る電力ケーブル接続構造の構成を概略的に示す図である。なお、図中の電力ケーブル接続構造は、その一例を示すものであり、本発明に係る電力ケーブル接続構造の構成、各構成の形状、寸法等は、図1のものに限られないものとする。
【0023】
本実施形態に係る電力ケーブル接続構造1は、複数の管路口110,120からマンホール130内に延出した電力ケーブル10,20同士を中間接続部30にて接続する構造をなしている。具体的には、電力ケーブル接続構造1は、管路口110からマンホール130内に延出し且つ絶縁コア11の外周に金属保護管12を有する第1延出部10a、及び該第1延出部よりも端部側に設けられ且つ金属保護管を有さない第2延出部10bを備える電力ケーブル10と、第2延出部10bにおいて絶縁コア11の外周に設けられた金属可撓管13と、第2延出部10bの端部10b−1に取り付けられ、電力ケーブル10を電力ケーブル20と接続してなる中間接続部30と、第1延出部10a及び第2延出部10bの間に設けられ、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを連結してなる連結部40とを備えている。電力ケーブル接続構造1’の構成は、電力ケーブル10の代わりに電力ケーブル20を有すること以外は、電力ケーブル接続構造1の構成と基本的に同じであるため、その説明を省略する。
【0024】
図2図4は、連結部40の構成を示す図であり、図2は正面図、図3は側面図、図4は分解図である。
【0025】
連結部40は、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを接続してなる第1フランジ部(フランジ)である。この連結部40は、電力ケーブル10の径方向に分割可能に設けられた一対の本体41a,41bと、該一対の本体同士を締結する締結部材42,42とを備えている。一対の本体41a,41bは、例えばSUS、鉄或いは樹脂からなる。また、本体41aには締結部材42が挿入されるタップが、本体41bには締結部材42が挿入される貫通孔がそれぞれ設けられており、タップ及び貫通孔が電力ケーブル10の径方向に沿って同軸となるように形成されている。締結部材42は、例えばボルト42aとナット42bで構成され、これらが協働して一対の本体41a,41bを固定することが可能となっている。
【0026】
この連結部40は、金属可撓管13の端部13−1を径方向に押圧してなる第1押圧部を有している。具体的には、第1押圧部は、一対の本体41a,41bの対向面43a,43bにそれぞれ設けられた正面視略半弧状の溝44a,44bと(図4)、2つの溝44b,44bが一体化されてなる円形孔の形状に沿って設けられた環状の弾性部材45とを有する。弾性部材45は、一対の本体41a,41bに合わせて電力ケーブル10の径方向に分割可能であるか、又は一体で設けられている。溝44aの周面44a−1及び溝44bの周面44b−1は、金属可撓管13の外周面13aを径方向に押圧してなる第1押圧面を構成し、弾性部材45は、該第1押圧面上に配置され且つ金属可撓管13の外周面13aと圧接してなる第1弾性部材を構成している。
【0027】
また、連結部40は、該弾性部材45の径方向内方に設けられ、弾性部材45と略同軸に配置された環状の弾性部材46とを有している。弾性部材46は、弾性部材45と同様、一対の本体41a,41bに合わせて電力ケーブル10の径方向に分割可能であるか、又は一体で設けられている。弾性部材45,46間には、金属可撓管13の端部13−1を電力ケーブル10の軸方向に沿って挿入可能な挿入部47が設けられており(図4)、弾性部材45,46が協働して金属可撓管13の端部13−1を挟持する。弾性部材45,46は、ゴム弾性を有する材料からなり、例えばゴム樹脂からなる。
【0028】
更に、連結部40は、弾性部材46の内周面に当接して設けられ且つ電力ケーブル10の径方向に分割可能に設けられた一対のコア部材48a,48bと、該一対のコア部材同士を締結する締結部材49を備えている。一対のコア部材48a,48bは、例えばSUS、鉄或いは樹脂からなる。また、コア部材48aには締結部材49が挿入されるタップが、コア部材48bには締結部材42が挿入される貫通孔がそれぞれ設けられており、タップ及び貫通孔がそれぞれ電力ケーブル10の径方向に沿って同軸となるように形成されている。締結部材49は、例えばボルト49aとナット49bで構成され、これらが協働して一対の本体41a,41bを固定することが可能となっている。
【0029】
コア部材48bは、電力ケーブル10の軸方向に沿って設けられた取付け穴50を有している。取付け穴50は正面視略矩形であり、図3に示すように、電力ケーブル10の軸方向に沿って形成された、最奥面50aを有する非貫通穴である。そして、取付け穴50の側面50b(電力ケーブル10側の側面)に締結部材49が取り付けられる。
【0030】
また、連結部40は、金属保護管12の端部12−1を径方向に押圧してなる第2押圧部を有している。具体的には、第2押圧部は、一対のコア部材48a,48bの対向面51a,51bにそれぞれ設けられた正面視略矩形の溝52a,52bと(図4)、2つの溝52b,52bが一体化されてなる矩形孔の形状に沿って設けられた正面視略矩形の弾性部材53とを有する。弾性部材53は、一対のコア部材48a,48bに合わせて電力ケーブル10の径方向に分割可能であるか、又は一体で設けられている。また、弾性部材53の側面視中央部には、絶縁コア11及び金属保護管12が挿入される貫通孔54が設けられている。溝52aの側面52a−1及び溝52bの側面52b−1は、金属保護管12の外周面12aを径方向に押圧してなる第2押圧面を構成し、弾性部材53は、該第2押圧面上に配置され且つ金属保護管12の外周面12aと圧接してなる第2弾性部材を構成している。
【0031】
図5(a)は、図1の電力ケーブル10における第1延出部10aの構成を示す図であり、図5(b)は、電力ケーブル10における第2延出部10bの構成を示す図である。本実施形態の電力ケーブル10は、例えば電圧66V〜275kVのCVケーブルである。
【0032】
第1延出部10aは、図5(a)に示すように、導体61及び該導体を絶縁被覆する絶縁層62を有する絶縁コア11と、該絶縁コア11に外装された金属保護管12とを有しており、必要に応じて、絶縁コア11と金属保護管12との間にクッション層(不図示)が設けられ、また、金属保護管12に防食層63が外装される。
【0033】
絶縁コア11は、線心とも呼ばれ、導体61上に所定厚さの絶縁層62で被覆してなる。導体61は、例えば銅あるいは銅合金、又はアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなり、導体断面積は80mm〜2500mmである。導体61は一の素線、又は複数の線材からなる線材束あるいはそれらを撚り合わせた撚線からなる。撚線の場合には、圧縮円形撚線あるいは分割圧縮円形撚線であってもよい。
【0034】
絶縁層62は、絶縁体である樹脂、特に架橋ポリエチレンを主成分とする材料からなり、その厚さは9mm〜23mmである。架橋ポリエチレンは、高温で殆ど変形せず、耐熱性が高いことから、通常のポリエチレンなどと比較して同じ厚さで許容電流を増大させることができ、また、許容電流を等しくした場合には厚さを薄くして絶縁層の外径を小さくできる点で望ましい。また、架橋ポリエチレンは、耐油性、耐薬品性にも優れる。
【0035】
金属保護管12は、凹凸の繰り返し形状を有する管体であり、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。金属保護管12は、通常、凹凸ピッチが大きく且つ金属厚が厚く、また、上記凹凸が軸方向にらせん形状をなしているため、撓み難い構造となっている。金属保護管12の外径は、例えばφ70mm〜φ141mmであり、例えば金属保護管12の外径がφ100mmである場合、許容曲げ半径は22.5D(D:電力ケーブル外径)である。
【0036】
第2延出部10bは、図5(b)に示すように、導体61及び該導体を絶縁被覆する絶縁層62(被覆層)を有する絶縁コア11(被覆ケーブル)と、該絶縁コア11に外装された平編銅線64と、絶縁コア11及び平編銅線64の外周に設けられた金属可撓管13とを有しており、必要に応じて、絶縁コア11と金属保護管12との間にクッション層(不図示)が設けられる。すなわち、第2延出部10bは、第1延出部10aと比較して、金属保護管12の代わりに平編銅線64及び金属可撓管13を設けた点で異なる。他の構成は、第1延出部10bと基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0037】
第2延出部10bの金属可撓管13は、円弧の繰り返し形状(オメガ形状)を有する管体であり、例えばSUS304などのステンレス鋼からなる。金属可撓管13は、1つ山形状を有するアニュラー型であるのが好ましい。金属可撓管13は、金属保護管12と比較して凹凸ピッチが小さく且つ金属厚が薄いため、撓み易い構造となっている。金属可撓管13の外径は、例えばφ72mm〜φ155mmである。例えば金属可撓管13の外径がφ100mmである場合、許容曲げ半径(最小曲げ半径)は3D(D:電力ケーブル外径)である。このように、金属可撓管13の許容曲げ半径は、金属保護管12の約1/7の大きさとすることができ、第2延出部10b全体の許容曲げ半径は、Al被覆層を有さない電力ケーブルの許容曲げ半径15D(すなわち、電力ケーブル10単体の許容曲げ半径15D)と同じか、あるいは同等とすることができる。
【0038】
図6(a)は、図1における中間接続部30の構成を示す縦断面図であり、(b)は線A−Aに沿う断面図である。中間接続部30は、電力ケーブル10,20の端部同士の接続部71を覆う接続筐体72と、該接続筐体と金属可撓管13とを接続してなる第2フランジ部73(他のフランジ)とを有する。
【0039】
接続部71は、電力ケーブル10,20の端部における導体61,61’同士を接続するための導体接続部74と、該導体接続部74、導体61,61’、及び絶縁層62,62’の一部を一体で覆うように成形された絶縁補強部75と、ポリエチレン(PE)製遮水チューブ(不図示)を介して絶縁補強部75を被覆する防食カバー部76とを有している。
【0040】
接続筐体72は、接続部71の外装部として取り付けられており、長手方向略中央部が最も拡径した形状である。接続筐体72の長手方向両端には第2フランジ部73,73’が設けられており、第2フランジ部73が電力ケーブル10と接続され、第2フランジ部73’が電力ケーブル20とそれぞれ接続されている。
【0041】
第2フランジ部73は、一方の平面73aに、金属可撓管13が溶接してなる溶接部77を有している。溶接部77は、金属可撓管13の外周全体に亘って形成される(図6(b)。これにより、金属可撓管13と第2フランジ部73との間の水密性が確保される。
【0042】
次に、本実施形態に係る電力ケーブル接続構造1の設置方法を説明する。なお、本実施形態の設置方法は、その一例を示すものであり、本発明の設置方法は、以下に説明するものに限られない。
【0043】
先ず、マンホール130内において、管路口110から電力ケーブル10を約700mm延出させ、管路口110付近にて当該電力ケーブルの金属保護管12を切断し、切断後の金属保護管を除去して絶縁コア11を露出させる。次に、除去した金属保護管の代わりに、平編銅線64を絶縁コア11に取り付け、該平編銅線の端部64−1を金属保護管12の端部12−1に被せる(遮へい処理)(図3参照)。これにより、平編銅線64が遮へい層の役割を果たし、該平編銅線64を介して地絡電流を流すことが可能となる。また、金属可撓管13を平編導線64に外装し、金属可撓管13の端部13−1を、金属保護管12の端部12−1近傍に配置させる。加えて、必要に応じて金属保護管12の端部12−1から管路口110側の絶縁コア11に遮水チューブ(不図示)を挿入する。
【0044】
次いで、電力ケーブル10の端部同士を所定の手順で接続して接続部71を形成すると共に該接続部71に接続筐体72を外装して、中間接続部30を形成する。このとき、金属可撓管13の中間接続部側端部と第2フランジ部73とを溶接する(図6参照)。これにより、金属可撓管13と中間接続部30との水密性が確保される。
【0045】
その後、金属保護管12の端部12−1に、弾性部材53及び一対のコア部材48a、48bをこの順に外装し、締結部材49にて一対のコア部材48a,48bを固定する(図2参照)。このとき、締結部材49の締結力及び弾性部材53の弾性力により、弾性部材53が金属保護管12の外周面12aと圧接し、金属保護管12と連結部40との水密性が確保される。
【0046】
次いで、一対のコア部材48a,48bに弾性部材46を外装し、該弾性部材に金属可撓管13の端部13−1を外装し、更に、端部13−1に弾性部材45を外装する。このとき、弾性部材45,46を、金属可撓管13の径方向に関して重畳するように取り付ける(図3参照)。そして、弾性部材45に一対の本体41a,41bを外装し、締結部材42にて一対の本体41a,41bを固定する(図2図3参照)。このとき、締結部材42の締結力及び弾性部材45,46の弾性力により、弾性部材45が金属可撓管13の外周面13aと圧接すると共に、弾性部材46が金属可撓管13の内周面13bと圧接し、これにより金属可撓管13と連結部40との水密性が確保される。
【0047】
上述したように、本実施形態によれば、管路口110からマンホール130内に延出した電力ケーブル10が中間接続部30に接続されており、該電力ケーブルの第1延出部10aにおいて、絶縁コア11の外周に金属保護管12が設けられると共に、第1延出部10aよりも端部側に設けられた第2延出部10bにおいては、絶縁コア11の外周に金属保護管12が設けられず、金属可撓管13が設けられる。そして、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とが連結部40によって連結されている。よって、金属保護管12と金属可撓管13の端部が連結されることによって良好な水密性を確保することができ、また、金属保護管12が配された第1延出部10aと比べて、金属可撓管13が配された第2延出部30bの許容曲げ半径を小さくすることができる。よって、布設時或いは熱収縮時に許容曲げ半径以上の曲げ半径を確保することができ、電力ケーブル10,20の損傷や性能劣化を防止することができる。また、1経路のケーブル接続で1つの接続筐体72を設置すればよく、複数の接続箱や接続箱同士を接続する電力ケーブルが不要であるため、簡単な接続構造且つ省スペースを実現することができる。更に、マンホール130が狭隘マンホールである場合にも、新たなマンホールを築造する必要が無く、電力ケーブル10,20の性能劣化を防止しつつ、狭隘マンホール内に電力ケーブルを容易に布設することができる。
【0048】
また、連結部40は、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを接続する第1フランジ部であるので、第1フランジ部によって金属保護管12と金属可撓管13の端部を連結することにより、簡単な構成で良好な水密性を確実に確保することができる。特に、連結部40に弾性部材45,46,53が設けられるため、電力ケーブル10,20の振動を吸収することができ、電力ケーブル接続構造1の設置後に電力ケーブル10,20が熱収縮や天災地変等によって振動する場合にも、長期に亘って水密性を維持することが可能となる。
【0049】
図7は、図1の電力ケーブル接続構造1における連結部40の変形例を示す図である。上記実施形態では、連結部40は第1フランジ部であるが、これに限らず、図7に示すように、連結部40’が、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを溶接する溶接部であってもよい。このとき、第2延出部10bは、第1フランジ部の場合と同様、絶縁コア11に平編銅線64が外装されると共に、平編銅線64の端部64−1が金属保護管12の端部12−1を被覆するように配置される。また、平編銅線64は伸縮性があるため、熱等の影響に因ってずれ或いは脱落が生じないように、平編銅線64上に、当該平編銅線を金属保護管12に緊締する銅ワイヤー等の不図示の金属線が配置されてもよい。このように、溶接部によって金属保護管12と金属可撓管13の端部を連結することによって、より簡単な構成で良好な水密性を確保することができる。
【0050】
以上、上記実施形態に係る電力ケーブル接続構造について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、連結部40として、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを接続してなる第1フランジ部を挙げたが、第1フランジ部の形態はこれに限られない。すなわち、連結部は、金属保護管12の端部12−1を一方の主面側に、金属可撓管13の端部13−1を他方の主面側にそれぞれ接続してなるフランジであってもよい。上記フランジと金属保護管12との接続、或いは上記フランジと金属可撓管13との接続は、例えば溶接で行うことができる。またこのとき、上記フランジは、第1フランジ部と異なる構造、形状を有していてもよい。
【0052】
図8は、図1の電力ケーブル接続構造1における連結部40の他の変形例を示す図であり、図9(a)は、図8の連結部の詳細構成を示す長手方向断面図、図9(b)は、線B−Bに沿う径方向断面図である。
【0053】
本変形例における連結部90は、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを接続してなる一対のフランジ91A,91Bを有している。金属保護管12の端部13−1は、フランジ91Aに直接接続され、金属保護管12の端部12−1は、金属筒材92を介してフランジ91Bに接続されている。
【0054】
フランジ91Aのフランジ面91A−1(フランジの一方の面)には、金属保護管12の端部12−1に外装された金属筒材92の一端92−1が溶接されている。フランジ91Bのフランジ面91B−1(フランジの他方の面)には、金属可撓管13の端部13−1が溶接されている。すなわち、フランジ91Aと金属保護管12の端部12−1の間に不図示の溶接部が設けられ、フランジ91Bと金属可撓管13−1との間に他の不図示の溶接部が設けられている。
【0055】
金属可撓管13の端部13−1と溶接されたフランジ91Aは、金属筒材92が溶接された同形状のフランジ91Bとボルト等の締結部材により連結される。フランジ91Aのフランジ面91A−2とフランジ91Bのフランジ面91B−2との当接面には、Oリング等のシール部材93が配される構造を有するのが好ましい。
【0056】
フランジ91Bに溶接された金属筒材92の他端92−2は、金属保護管12の波形状に合わせて曲げられた曲げ形状を有しており、この他端92−2が金属保護管12の外周面に接続される。金属筒材92の材質は、例えば鉛が好ましい。
【0057】
金属筒材92の他端92−2と金属保護管12との接続部94には、例えば防水テープ等の防水部材95が配されており、防水部材95により接続部94が遮水処理される。また、平編銅線64の端部64−1は、金属保護管12の端部12−1を被覆するように配置される。このとき、平編銅線64のずれ或いは脱落が生じないように、図7と同様、平編銅線64上に、当該平編銅線を金属保護管12に緊締する金属線が配置されてもよい。
このように、一対のフランジ91A,91Bによって金属保護管12と金属可撓管13の端部を連結することにより、連結作業性を向上できると共に、良好な水密性を確保することができる。
【0058】
尚、図8の変形例では、連結部90が一対のフランジ91A,91Bを有しているが、これに限らず、金属保護管12の端部12−1と金属可撓管13の端部13−1とを接続してなる一のフランジを有していてもよい。この場合、一のフランジの一方のフランジ面に、金属保護管12の端部12−1に外装された金属筒材92の一端92−1が溶接され、他方のフランジ面に、金属可撓管13の端部13−1が溶接される。
【0059】
また、電力ケーブル10,20の構成において、用途や仕様に応じて防食層、絶縁層などの他の機能を有する1層又は複数層が更に設けられてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、単心形電力ケーブルを例に挙げて説明したが、これに限らず、電力ケーブルを複数本撚り合わせてなる単心複数本撚り合わせ形の電力ケーブルであってもよい。
【0061】
また、一対の本体41a,41bは、略直方体であるが、これに限らず、略円筒或いは略円盤状であってもよい。
【0062】
また、締結部材42は、ボルト42a及びナット42bであるが、一対の本体41a,41bを挟持しうる他の部材であってもよい。また、締結部材49は、ボルト49a及びナット49bであるが、一対のコア部材48a,48bを挟持しうる他の部材であってもよい。
【0063】
また、取付け穴50は、電力ケーブル10の軸方向に沿って形成された非貫通穴であるが、本形状に限られない。締結部材49の取り付け易さを考慮して、コア部材48bが、取付け穴50と連通し且つ電力ケーブルの径方向に沿ってコア部材48bの外周面まで設けられた貫通孔80,80を有していてもよい(図4)。この場合、締結部材49が装着された後、コア部材48bの外周面が弾性部材46によって押圧されるので、当該貫通孔が閉塞され、水密性を確保することができる。
【0064】
また、中間接続部30の形態は、図6のものに限られない。すなわち、中間接続部における接続部及び接続筐体は、それぞれ接続部71及び接続筐体72とは異なる構造、形状を有していてもよい。また、中間接続部における第2フランジ部73,73’は、接続筐体と金属可撓管13とを接続してなる他のフランジであってもよい。このとき、他のフランジは、第2フランジ部73,73’と異なる構造、形状を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の電力ケーブル接続構造は、地中に布設される直流あるいは交流用のCVD、CVT、CVQケーブルなどに有用である。また、老朽化したOFケーブルをCVケーブルに引替える際に容易な設置作業を実現することができ、有用である。また、本発明の電力ケーブル接続構造は、地震などの天災地変が発生した場合にも送電を確保することができる点で有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 電力ケーブル接続構造
1’ 電力ケーブル接続構造
10,20 電力ケーブル
10a 第1延出部
10b 第2延出部
10b−1 端部
11 絶縁コア
12 金属保護管
12a 外周面
12−1 端部
13 金属可撓管
13−1 端部
13a 外周面
13b 内周面
13−1 端部
30 中間接続部
40 連結部
40’ 連結部
41a,41b 一対の本体
42 締結部材
42a ボルト
42b ナット
43a,43b 対向面
44a,44b 溝
44a−1 周面
44b−1 周面
45 弾性部材
46 弾性部材
47 挿入部
48a,48b 一対のコア部材
49 締結部材
49a ボルト
49b ナット
50 取付け穴
50a 最奥面
50b 側面
51a,51b 対向面
52a,52b 溝
52a−1 側面
52b−1 側面
53 弾性部材
54 貫通孔
61 導体
61’ 導体
62 絶縁層
62’ 絶縁層
63 防食層
64 平編銅線
64−1 端部
71 接続部
72 接続筐体
73 第2フランジ部
73a 平面
73’ 第2フランジ部
74 導体接続部
75 絶縁補強部
76 防食カバー部
77 溶接部
80 貫通孔
90 連結部
91A フランジ
91A−1 フランジ面
91B−2 フランジ面
91B フランジ
91B−1 フランジ面
91B−2 フランジ面
92 金属筒材
92−1 金属筒材の一端
92−2 金属筒材の他端
93 シール部材
94 接続部
95 防水部材
110,120 管路口
130 マンホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9