特許第6754267号(P6754267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754267電磁シールド管、電磁シールド管付電線、及び電磁シールド管付電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754267
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】電磁シールド管、電磁シールド管付電線、及び電磁シールド管付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20200831BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20200831BHJP
   H01B 13/24 20060101ALI20200831BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20200831BHJP
   F16L 9/147 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01B7/18 D
   H05K9/00 L
   H01B13/24 Z
   F16L57/00 A
   F16L9/147
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-204114(P2016-204114)
(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-67405(P2018-67405A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長尾 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】小島 学
(72)【発明者】
【氏名】小関 直人
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−175879(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190682(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 9/147
F16L 57/00
H01B 7/18
H01B 7/20
H01B 13/00−13/34
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電線が挿通される筒状の金属管と、
該金属管の外周に設けられる樹脂製の外層体とが備えられるとともに、前記金属管と前記外層体とが一体化され、
前記外層体の厚みが0.2mm以上、0.8mm以下であるとともに、
前記外層体を構成する樹脂が架橋ポリエチレンで構成され、
分子間結合によって一体化された前記金属管の外周面と前記外層体の内周面との結合強度が0.5MPa以上4.0MPa以下である
電磁シールド管。
【請求項2】
前記外層体の硬度がショアD40以上60以下である
請求項1に記載の電磁シールド管。
【請求項3】
前記外層体が有色である有色外層体で構成された
請求項1又は請求項2に記載の電磁シールド管。
【請求項4】
前記金属管の端部に、アース接点が設けられた
請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の電磁シールド管。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の電磁シールド管と、
前記電磁シールド管に挿通された前記電線とで構成された
電磁シールド管付電線。
【請求項6】
前記電磁シールド管が、
所定の方向に延びた少なくとも一つの直管部と、
該直管部に対して曲げられた少なくとも一つの曲管部とで構成された
請求項に記載の電磁シールド管付電線。
【請求項7】
筒状の金属管と前記金属管の外周に設けられる樹脂製の外層体とで構成する電磁シールド管における前記外層体を前記金属管と一体化させる一体化工程と、
前記金属管の内部に電線を挿通する挿通工程とをこの順で行い、
前記外層体の厚みを0.2mm以上0.8mm以下に形成し、
前記一体化工程では、
前記外層体を押しつけて所定の厚さとなるように、前記金属管とともに押し出す押出加工工程と、
前記金属管の端部において押出加工された前記外層体を所定の長さ剥ぐ剥離工程と、
所定の温度で加熱して前記外層体を架橋させて前記金属管と前記外層体とを一体化する加熱架橋工程とをこの順で行う
電磁シールド管付電線の製造方法。
【請求項8】
前記一体化工程及び前記挿通工程の後に、前記電磁シールド管付電線を前記電線の配索に合わせて曲げ加工する曲げ加工工程を行う
請求項に記載の電磁シールド管付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、内部に電線が挿通される電磁シールド管、電磁シールド管に電線を挿通させた電磁シールド管付電線、及び電磁シールド管付電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド車や電気自動車におけるインバータ装置やモータなどの機器間を接続する電線は、車体の形状に合わせて車体の床下等に配索されることがあり、飛び石等による損傷を防止する必要がある。また、電線から発生するノイズの放射や外部からのノイズの侵入を遮断することにより、搭載された電子機器類がノイズによって誤作動を起こすことを防止する必要もある。
【0003】
そのため、例えば、特許文献1では、電線を挿通できる金属管で構成された電磁シールド管が提案されており、金属管を接地(アース)することで、内部に挿通された電線から外部へのノイズの放射及び外部から内部へのノイズの侵入を防止できるとされている。また、強度のある金属管で構成された電磁シールド管は、金属管の内部を挿通する電線が飛び石等により損傷することも防止できるとされている。
【0004】
しかしながら、この電磁シールド管は、上述したように、飛び石等が電線に直接当接することを防止できるものの、飛び石の接触によって金属管が窪んだ場合、金属管の内部に挿通された電線が金属管の窪みにより圧迫されて損傷するおそれがあった。また、飛び石等の接触や金属管の腐食等によって、金属管が損傷して割れ等が発生し、ノイズを遮断するシールド性能が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述した問題を鑑み、シールド性能を確保できるとともに、内部に挿通された電線をより確実に保護することができる電磁シールド管、及び、電磁シールド管付電線、電磁シールド管付電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、内部に電線が挿通される筒状の金属管と、該金属管の外周に設けられる樹脂製の外層体とが備えられるとともに、前記金属管と前記外層体とが一体化され、前記外層体の厚みが0.2mm以上、0.8mm以下であるとともに、前記外層体を構成する樹脂が架橋ポリエチレンで構成され、分子間結合によって一体化された前記金属管の外周面と前記外層体の内周面との結合強度が0.5MPa以上4.0MPa以下である電磁シールド管であることを特徴とする。
【0008】
前記金属管は、例えばアルミ管や銅管などの金属製の管や、金属メッシュ板で形成された金属管、これらを組み合わせた金属管を含むものとする。さらには、端部同士を突き合わせて管状を構成した金属管、端部同士を重ね合わせて管状を構成した金属管、あるいはシームレスな金属管を含むものとする。
【0009】
前記樹脂製とは、所望の耐久性や耐候性、あるいは緩衝性や弾力性など前記金属管を保護する前記外層体として求められる所要性能を有する樹脂で形成されたことをさし、具体的にはポリエチレンなどの合成樹脂製であることをさす。
【0010】
この発明により、シールド性能を確保できるとともに、内部に挿通される電線をより確実に保護することができる。
詳述すると、前記外層体の厚みが0.2mm未満である場合、耐久性や耐候性、あるいは緩衝性や弾力性など前記金属管を保護する前記外層体として求められる所要性能を発揮するために必要な厚みを、例えば、飛び石によるチッピングや曲げによる厚みの変化、さらには、熱による痩せなどによって確保できず、前記外層体が損傷して前記金属管が露出し、前記金属管を保護することができなくなるおそれがある。
【0011】
逆に、前記外層体の厚みが0.8mm以上である場合、前記電磁シールド管における曲げ部では、前記外層体における外表面と内表面とで曲率が大きく変わることになり、外層体の内部に大きな応力が発生することになる。そのため、外層体にシワ等が発生し、外力による曲げ座屈の発生要因となる可能性がある。もしくはシワ等を起因とした疲労破壊要因となる。
【0012】
これらに対し、前記電線を挿通させる前記金属管の外周に、0.2mm以上0.8mm以下の厚みを有する前記外層体を一体化することで、前記金属管を保護する前記外層体として求められる所要性能を発揮できるため、前記金属管が飛び石等の接触によって窪んだり損傷したりすること、さらには、金属管の腐食を防止することができる。よって、シールド性能を確保できるとともに、内部に挿通された電線をより確実に保護することができる。
【0013】
また、一体化された前記金属管の外周面と前記外層体の内周面との結合強度が0.5MPa以上4.0MPa以下であるため、前記電磁シールド管を曲げた場合において、前記外層体にシワ等の不具合が発生することなく前記外層体を前記金属管の曲げに対して追従させることができるとともに、前記外層体を前記金属管から適宜剥がすことができる。
【0014】
具体的には、前記結合強度が0.5MPa未満である場合において、前記電磁シールド管の曲げ部内側において、前記金属管に対してズレが生じた前記外層体にシワ等の不具合が発生することとなる。
なお、このように前記外層体に生じたシワ等の不具合は、前記電磁シールド管を押し曲げる型と前記金属管との間で挟み込まれ、前記外層体の表面に凹凸形状が形成されることとなる。
【0015】
これに対し、前記結合強度を0.5MPa以上とすることで、前記電磁シールド管の曲げに対して前記外層体を追従させることができ、前記外層体の曲げ部内側にシワ等の不具合が発生することを防止でき、前記外層体の外面に凹凸形状が形成されることを防止できる。
【0016】
また、前記結合強度を4.0MPa以下とすることで、前記金属管から前記外層体を意図的に剥がすことができ、前記外層体の一部を残留させることなく前記金属管を露出させることができる。したがって、所望の長さで前記金属管の端部を意図的に露出させることができる。
【0017】
この発明の態様として、前記外層体の硬度がショアD40以上60以下であってもよい。
この発明により、前記電磁シールド管を曲げ加工できるとともに、より確実に外層体の損傷を防止することができる。
【0018】
詳述すると、前記外層体の硬度をショアD40以上とすることで、飛び石等による前記外層体にチッピングが生じることを防止でき、また、前記外層体の硬度をショアD60以下とすることで、容易に曲げ加工を施すことができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記外層体は、有色である有色外層体で構成してもよい。
前記有色外層体とは、例えば前記外層体を構成する樹脂の材料に顔料などの着色剤を加えて製造した樹脂や、着色剤と前記樹脂とを練り込んで着色された有色外層体、前記金属管の外周に配置された前記外層体に対して着色加工された有色外層体を含む。
【0020】
この発明により、外観が所望の色である前記電磁シールド管を構成することができる。
例えば、前記電線が高圧電線である場合において、前記外層体をオレンジ色などのコーション色の有色外層体とすることで、例えば、修理などで作業者が前記電磁シールド管を誤って切断したりしないように注意を促すことができる。
【0021】
また、例えば、電線の種類や接続先等に応じて前記有色外層体の色を変えることで、前記有色外層体の色を目視確認して前記電線の種類や接続先接続を間違えることを防止し、作業の効率性を向上させることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記金属管の端部に、アース接点を設けてもよい。
この発明により、前記金属管の内部に挿通された前記電線から外部へノイズが放射されること及び前記金属管の外部から内部へノイズが侵入することを確実に防止でき、電子機器類の誤作動をより確実に防止することができる。
【0023】
またこの発明は、上述の電磁シールド管と、前記電磁シールド管に挿通された前記電線とで構成された電磁シールド管付電線であることを特徴とする。
さらにまたこの発明は、筒状の金属管と前記金属管の外周に設けられる樹脂製の外層体とで構成する電磁シールド管における前記外層体を前記金属管と一体化させる一体化工程と、前記金属管の内部に電線を挿通する挿通工程とをこの順で行うとともに、前記外層体の厚みが0.2mm以上、0.8mm以下であり、前記一体化工程では、前記外層体を押しつけて所定の厚さとなるように、前記金属管とともに押し出す押出加工工程と、前記金属管の端部において押出加工された前記外層体を所定の長さ剥ぐ剥離工程と、所定の温度で加熱して前記外層体を架橋させて前記金属管と前記外層体とを一体化する加熱架橋工程とをこの順で行う電磁シールド管付電線の製造方法であることを特徴とする。
【0024】
なお、上記電線は、1本以上の電線単体であってもよいし、複数本の電線がまとめられたワイヤーハーネスであってもよい。
この発明により、シールド性能を確保できるとともに、内部に挿通された電線をより確実に保護することができる。
【0025】
また、前記一体化工程では、前記外層体を押しつけて所定の厚さとなるように、前記金属管とともに押し出す押出加工工程と、前記金属管の端部において押出加工された前記外層体を所定の長さ剥ぐ剥離工程と、所定の温度で加熱して前記外層体を架橋させて前記金属管と前記外層体とを一体化する加熱架橋工程とをこの順で行うため、前記金属管の外表面と前記外層体の内表面とを分子間結合によって一体化することができる。
したがって、接着剤等の別素材を用いることなく、前記金属管と前記外層体とを所望の結合強度で一体化することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記電磁シールド管が、所定の方向に延びた少なくとも一つの直管部と、該直管部に対して曲げられた少なくとも一つの曲管部とで構成された電磁シールド管付電線としてもよいし、前記一体化工程及び前記挿通工程の後に、前記電磁シールド管付電線を前記電線の配索に合わせて曲げ加工する曲げ加工工程を行ってもよい。
この発明により、配索経路に応じた所望の形状の前記電磁シールド管付電線を構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明により、シールド性能を確保できるとともに、内部に挿通された電線をより確実に保護することができる電磁シールド管、電磁シールド管付電線、及び、電磁シールド管付電線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電磁シールド管の一方の端部の拡大斜視図。
図2】電磁シールド管の概略断面図。
図3】シールド管付ハーネスの概略斜視図。
図4】シールド管付ハーネスの製造方法の概略フロー図。
図5】シールド管付ハーネスの曲げ加工の説明図。
図6】別の実施形態のシールド管付ハーネスの一方の端部の拡大斜視図。
図7】別の実施形態のシールド管付ハーネスの概略断面図。
図8】別の実施形態のシールド管付ハーネスの概略斜視図。
図9】別の実施形態のシールド管付ハーネスの製造方法の概略フロー図。
図10】さらに別の実施形態の電磁シールド管の一方の端部の拡大斜視図。
図11】さらに別の実施形態の電磁シールド管の概略断面図。
図12】さらに別の実施形態のシールド管付ハーネスの概略斜視図。
図13】さらに別の実施形態のシールド管付ハーネスの製造方法の概略フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は電磁シールド管10の一方の端部の拡大斜視図を示し、図2は電磁シールド管10の概略断面図を示し、図3は電磁シールド管付ワイヤーハーネス1(以下において、シールド管付ハーネス1という)の概略斜視図を示し、図4はシールド管付ハーネス1の製造方法の概略フロー図を示し、図5はシールド管付ハーネス1の曲げ加工の説明図を示している。
【0030】
詳述すると、図1は、電磁シールド管10の一方の端部の拡大斜視図であり、層構成を明確にするため、外層体12と金属管11の周方向の手前側の一部を透過状態で図示している。なお、図1及び図2では、金属管11の内部に挿通してシールド管付ハーネス1を構成するワイヤーハーネス20を破線で図示している。
【0031】
また、図5(a)はシールド管付ハーネス1の曲管部3を構成するために、ベンダー装置100に直線状のシールド管付ハーネス1を配置した状態の概略図を示し、図5(b)はベンダー装置100によりシールド管付ハーネス1を曲げ始めた状態の概略図を示し、図5(c)はベンダー装置100により所定角度で曲げて曲管部3を形成した状態の概略図を示している。
【0032】
電磁シールド管10は、内部にワイヤーハーネス20が挿通される筒状の金属管11と、金属管11の外周に設けられる樹脂製の外層体12とが一体化されて構成されている。
金属管11は、内部にワイヤーハーネス20を挿通できる内部空間11aを有するとともに、内部に挿通したワイヤーハーネス20から発生するノイズの放射、及び内部空間11aへのノイズの侵入を防止する円筒状の金属管であり、本実施形態においては、約0.5mm厚のアルミで外径φ24.5mmの円筒形に形成している。
【0033】
また、金属管11は、約0.5mm厚及び所定の幅のアルミ条の端部同士を突合せ溶接して上述の円筒形を構成しているが、端部同士を重ね合わせて上述の円筒形を構成してもよいし、アルミ製のシームレス管を用いてもよい。
【0034】
金属管11の外周に設けられる外層体12は、所望の耐久性や耐候性、あるいは緩衝性や弾力性など金属管11を保護するために求められる所要性能を有するとともに、厚みが0.2mm以上、0.8mm以下の樹脂製であり、コーション色であるオレンジ色に形成されている。
【0035】
本実施形態において、外径φ24.5mmの円筒形で構成された金属管11の外周に設けられる外層体12は、約0.45mm厚の架橋ポリエチレン(架橋PE)で構成されている。なお、外層体12は、一般的なポリエチレン(PE)で構成されてもよい。
【0036】
また、架橋ポリエチレンとは、熱可塑性プラスチックとしての鎖状構造ポリエチレン分子同士が分散的に結合した立体の網目構造である超高分子量のポリエチレンであり、軽量、柔軟性、耐食性、耐衝撃性、低温特性、及び電気特性が優れるというポリエチレン自体の性能に加え、耐環境応力破壊性能、クリープ性能、耐薬品性及び耐熱老化性が向上するという特徴がある。
【0037】
このように構成された金属管11と外層体12とは、金属管11の外表面と外層体12の内表面との分子間結合によって一体化されている。
詳述すると、アルミ製の金属管11の外表面には酸化アルミ(Al)が形成されており、酸化アルミ(Al)は極性を有しているため、大気中の水分による水和反応によって、末端が水酸基(OH基)となった部分が存在している。この酸化アルミ(Al)における水酸基(OH基)と、加水分解後の外層体12における架橋剤内の水酸基(OH基)とが縮合反応して結合する水素結合(分子間結合)によって金属管11の外表面と外層体12の内表面とが結合し、金属管11と外層体12とが一体化している。
【0038】
なお、この水素結合(分子間結合)は、イオン結合などの化学結合より接着力は低いものの、原子同士に引き合う力がよる吸着によって結合しているため、金属管11と外層体12とを0.5MPa以上4.0MPa以下の結合強度で一体化している。
【0039】
このようにして、金属管11の外表面と外層体12の内表面との分子間結合によって金属管11と外層体12とが一体化されて電磁シールド管10を構成している。そして、電磁シールド管10の端部のうち少なくとも一方には、所定長さ分の外層体12が存在せず、金属管11が露出するアース接点部16が形成されている。
【0040】
また、このようにして構成された電磁シールド管10における金属管11の内部空間11aにワイヤーハーネス20を挿入することでシールド管付ハーネス1を構成することができる。
なお、内部空間11aに挿通するワイヤーハーネス20は、銅合金製の導体を絶縁被覆で被覆した複数本の被覆電線21で構成している。詳述すると、本実施形態のワイヤーハーネス20は2本の太径電線21aと、2本の細径電線21bとをまとめて構成している。
【0041】
また、電磁シールド管10の内部空間11aにワイヤーハーネス20を挿通して構成したシールド管付ハーネス1は、図3に示すように、直管部2と曲管部3とで立体形状で形成されている。
図3に示す本実施形態のシールド管付ハーネス1は、図3における手前側から、アース接点部16が形成された第1直管部2a、第1曲管部3a、第2直管部2b、第2曲管部3b、第3直管部2c、第3曲管部3c、第4直管部2d、第4曲管部3d、及び第5直管部2eがこの順で配置された立体形状に構成され、両端部から、ワイヤーハーネス20の両端部が突出するように構成されている。
【0042】
次に、このように構成されたシールド管付ハーネス1の製造方法について図4とともに説明する。
まずは、アルミ条から金属管11を形成する金属管形成工程を行う(ステップs1)。具体的には、所定厚み及び所定幅のアルミ条に曲げ加工を施すとともに、端部同士を突合せ溶接して管状を構成する金属管フォーミングを行い、そのうえで縮径ダイスを通過させて所望の径に縮径して金属管11を形成する。
【0043】
所望の径に縮径された金属管11の外周側に対して所定の厚みの樹脂層を押出成形して外層体12を形成し(外層押出工程:ステップs2)、金属管11の端部において外周に形成された外層体12を所定長さ分剥離し、所定長さ分の金属管11を露出させてアース接点部16を形成する端部外層剥離工程(ステップs3)を行う。
【0044】
この状態では、金属管11と外周側に形成された外層体12とは一体化していないため、外層体12を架橋させ、上述したように、金属管11の外表面と外層体12の内表面とを分子間結合によって結合させて金属管11と外層体12とを一体化させる加熱架橋工程(ステップs4)を施して電磁シールド管10を製造する。
【0045】
このようにして製造された電磁シールド管10は直線状であり、直線状の電磁シールド管10の内部空間11aに所定長さのワイヤーハーネス20を挿通してシールド管付ハーネス1を構成する(電線挿通工程:ステップs5)。また、シールド管付ハーネス1が、直管部2と曲管部3とを有する形状である場合、直線状のシールド管付ハーネス1に対して曲げ加工を施す(曲げ加工工程:ステップs6)。なお、直線状のシールド管付ハーネス1であれば、曲げ加工工程(ステップs6)は不要となる。
【0046】
この曲げ加工工程(ステップs6)では、図5に示すようなベンダー装置100を用いて直線状のシールド管付ハーネス1に対して曲管部3を形成する。
なお、シールド管付ハーネス1に対して曲管部3を形成するベンダー装置100は、主要な構成として、シールド管付ハーネス1を曲げるためのクランプダイ101とベントダイ102、及び反力を構成するプレッシャーダイ103がある。
【0047】
詳しくは、曲げる側のシールド管付ハーネス1(図5における左側のシールド管付ハーネス1)を把持するクランプダイ101とベントダイ102、そして曲げられる側のシールド管付ハーネス1(図5における右側のシールド管付ハーネス1)の反力を構成するとともに、曲げられる側のシールド管付ハーネス1に管進行方向と逆方向に引っ張り力(図5において矢印aで示す方向)を付与するプレッシャーダイ103とを備えている。
【0048】
ベントダイ102は回転中心102aを中心として回転可能であり、直線部102bと円弧部102cとで構成している。
クランプダイ101は、ベントダイ102の直線部102bに対して接近することで曲げる側のシールド管付ハーネス1を直線部102bと挟み込んで把持するクランプ材である。
【0049】
プレッシャーダイ103は、曲げられる側のシールド管付ハーネス1における曲げ方向の径外側に配置され、シールド管付ハーネス1に対してベントダイ102側へ押し付けるとともに、管進行方向と逆方向(図5において矢印aで示す方向)に引っ張り力を付与するように構成されている。
【0050】
なお、クランプダイ101、ベントダイ102及びプレッシャーダイ103におけるシールド管付ハーネス1と対向する部分には、電磁シールド管10が嵌合する断面円弧状の溝(図示省略)が形成されている。特に、ベントダイ102の円弧部102cに形成された溝はシールド管付ハーネス1を曲げる曲率に応じた曲率の溝で形成されている。
【0051】
このように構成されたベンダー装置100を用いて直線状のシールド管付ハーネス1に対して曲管部3を形成するためには、まず図5(a)に図示するように、直線状のシールド管付ハーネス1をベンダー装置100にセットする。このとき、曲げられる側のシールド管付ハーネス1の曲げ方向径外側(図5において図面の上部側)にプレッシャーダイ103が配置され、曲げる側のシールド管付ハーネス1をベントダイ102の直線部102bとクランプダイ101とで挟み込んで固定する。
【0052】
そして、図5(b)に示すように、挟み込んで固定されたシールド管付ハーネス1とともに、クランプダイ101及びベントダイ102を、回転中心102aを中心に回転させ、シールド管付ハーネス1を曲げていく。このとき、プレッシャーダイ103は、曲げられる側のシールド管付ハーネス1をベントダイ102側に押し付けるとともに、図5(b)に図示する矢印a方向(管進行方向に対する逆方向)の引っ張り力をシールド管付ハーネス1に付与する。
【0053】
このようにして、プレッシャーダイ103により曲げられる側のシールド管付ハーネス1をベントダイ102側に押し付けるとともに、図5(b)に図示する矢印a方向(管進行方向に対する逆方向)の引っ張り力が付与されたシールド管付ハーネス1は、クランプダイ101によって回転するベントダイ102に固定されているため、ベントダイ102の回転に伴って、ベントダイ102の円弧部102cの曲率に応じて円弧部102cに巻き付くようにして曲げが形成され、図5(c)に図示するように、所望の曲げ形状の曲管部3をシールド管付ハーネス1に形成し、図4に示すような所望の形状のシールド管付ハーネス1を構成することができる。
【0054】
このように、内部空間11aにワイヤーハーネス20が挿通される筒状の金属管11と、金属管11の外周に設けられる樹脂製の外層体12とを備えるとともに、金属管11と外層体12とが一体化され、外層体12の厚みを0.2mm以上0.8mm以下とした電磁シールド管10及び電磁シールド管10にワイヤーハーネス20を挿通したシールド管付ハーネス1はシールド性能を確保できるとともに、内部空間11aに挿通されるワイヤーハーネス20をより確実に保護することができる。
【0055】
詳述すると、外層体12の厚みが0.2mm未満である場合、耐久性や耐候性、あるいは緩衝性や弾力性など金属管11を保護する外層体として求められる所要性能を発揮するために必要な厚みを、例えば、飛び石等によるチッピングや曲げによる厚みの変化、さらには、熱による痩せなどによって確保できなくなり、外層体12が損傷して金属管11が露出し、金属管11を保護することができなくなるおそれがある。
【0056】
逆に、外層体12の厚みが0.8mm以上である場合、電磁シールド管10における曲げ部では、外層体12における外表面と内表面とで曲率が大きく変わることになり、外層体12の内部に大きな応力が発生することになる。そのため、外層体12にシワ等が発生し、外力による曲げ座屈の発生要因となる可能性がある。もしくはシワ等を起因とした疲労破壊要因となる。
【0057】
これらに対し、ワイヤーハーネス20を挿通させる金属管11の外周に設けられ、0.2mm以上0.8mm以下の厚みを有する外層体12を一体化することで、金属管11を保護する外層体として求められる所要性能を発揮できるため、金属管11が飛び石等の接触によって窪んだり損傷したりすること、さらには、金属管11の腐食を防止することができる。よって、シールド性能を確保できるとともに、内部空間11aに挿通されたワイヤーハーネス20をより確実に保護することができる。
【0058】
また、外層体12の硬度がショアD40以上60以下であるため、電磁シールド管10を曲げ加工できるとともに、より確実に外層体12の損傷を防止することができる。
詳述すると、外層体12の硬度をショアD40以上とすることで、飛び石等による外層体12にチッピングが生じることを防止でき、また、外層体12の硬度をショアD60以下とすることで、容易に曲げ加工を施すことができる。
【0059】
また、一体化された金属管11の外周面と外層体12の内周面との結合強度が0.5MPa以上4.0MPa以下としているため、電磁シールド管10を曲げた場合において、外層体12にシワ等の不具合が発生することなく外層体12を金属管11の曲げに対して追従させることができるとともに、外層体12を金属管11から適宜剥がすことができる。
【0060】
具体的には、結合強度が0.5MPa未満である場合において、電磁シールド管10の曲げ部内側において、金属管11に対してズレが生じた外層体12にシワ等の不具合が発生することとなる。
なお、このように外層体12に生じたシワ等の不具合は、電磁シールド管10(シールド管付ハーネス1)に曲げ加工を施すベンダー装置100のベントダイ102における円弧部102cと金属管11との間で挟み込まれ、外力による曲げ座屈の発生要因となる可能性がある。もしくはシワ等を起因とした疲労破壊要因となる。
【0061】
これに対し、結合強度を0.5MPa以上とすることで、電磁シールド管10の曲げに対して外層体12を追従させることができ、外層体12の曲げ部内側にシワ等の不具合が発生することを防止でき、外層体12の外面に凹凸形状が形成されることを防止できる。
【0062】
また、結合強度を4.0MPa以下とすることで、金属管11から外層体12を意図的に剥がすことができ、外層体12の一部を残留させることなく金属管11を露出させることができる。したがって、所望の長さで金属管11の端部を意図的に露出させることができる。
【0063】
また、外層体12が有色であるオレンジ色であるため、外観が所望の色であるオレンジ色の電磁シールド管10を構成することができる。
例えば、電磁シールド管10に高圧用のワイヤーハーネス20を挿通してシールド管付ハーネス1を構成した場合、コーション色であるオレンジ色の外層体12を目視で確認することで、例えば、修理などで作業者が電磁シールド管10を誤って切断したりしないように注意を促すことができる。
【0064】
また、例えば、外層体12をオレンジ色だけでなく、挿通するワイヤーハーネス20の種類や接続先等に応じて外層体12の色を変えることで、外層体12の色を目視確認してワイヤーハーネス20の種類や接続先接続を間違えることを防止し、作業の効率性を向上させることができる。
【0065】
また、金属管11の端部に設けたアース接点部16を介して金属管11を接地(アース)することで、金属管11の内部空間11aに挿通されたワイヤーハーネス20から外部へノイズが放射されること及び金属管11の外部から内部空間11aへノイズが侵入することを確実に防止でき、電子機器類の誤作動をより確実に防止することができる。
【0066】
また、電磁シールド管10と、電磁シールド管10に挿通されたワイヤーハーネス20とで構成され、外層体12の厚みが0.2mm以上、0.8mm以下であるシールド管付ハーネス1の製造方法として、電磁シールド管10における外層体12を金属管11と一体化させる外層押出工程(ステップs2)乃至加熱架橋工程(ステップs4)と、金属管11の内部空間11aにワイヤーハーネス20を挿通する電線挿通工程(ステップs5)とをこの順で行うことにより、シールド性能を確保できるとともに、内部空間11aに挿通されたワイヤーハーネス20をより確実に保護することができる。
【0067】
またシールド管付ハーネス1の製造方法として、外層体12を押しつけて所定の厚さとなるように、金属管11とともに押し出す外層押出工程(ステップs2)と、金属管11の端部において押出加工された外層体12を所定の長さ剥ぐ端部外層剥離工程(ステップs3)と、所定の温度で加熱して外層体12を架橋させて金属管11と外層体12とを一体化する加熱架橋工程(ステップs4)とをこの順で行うため、金属管11の外表面と外層体12の内表面とを分子間結合によって一体化することができる。
したがって、接着剤等の別素材を用いることなく、金属管11と外層体12とを所望の結合強度で一体化することができる。
【0068】
また、電線挿通工程(ステップs5)の後に、シールド管付ハーネス1をワイヤーハーネス20の配索に合わせて曲げ加工する曲げ加工工程(ステップs6)を行うことで、所定の方向に延びた少なくとも一つの直管部2と、直管部2と連結するとともに、直管部2に対して曲げられた少なくとも一つの曲管部3とを有し、配索経路に応じた所望の形状のシールド管付ハーネス1を構成することができる。
【0069】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本実施形態の内部は内部空間11aに対応し、
以下同様に、
電線はワイヤーハーネス20に対応し、
金属管は金属管11に対応し、
外層体は外層体12に対応し、
電磁シールド管は電磁シールド管10に対応し、
有色外層は外層体12に対応し、
アース接点はアース接点部16に対応し、
電磁シールド管付電線はシールド管付ハーネス1に対応し、
直管部は直管部2に対応し、
曲管部は曲管部3に対応し、
一体化工程は外層押出工程(ステップs2)乃至加熱架橋工程(ステップs4)に対応し、
挿通工程は電線挿通工程(ステップs5)に対応し、
押出加工工程は外層押出工程(ステップs2)に対応し、
剥離工程は端部外層剥離工程(ステップs3)に対応し、
加熱架橋工程は加熱架橋工程(ステップs4)に対応し、
曲げ加工工程は曲げ加工工程(ステップs6)に対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0070】
例えば、上述の説明では、金属管11としてアルミ管を用いたが銅管であってもよいし、金属メッシュ板で形成された金属管を用いてもよい。
また、架橋ポリエチレン(架橋PE)製の外層体12を用いたが他の樹脂で構成してもよい。また、金属管11や外層体12の形状や厚みなどは上述の実施形態に限定されず、適宜のサイズや形状を用いればよい。
【0071】
また、複数本の被覆電線21をまとめたワイヤーハーネス20を電磁シールド管10に挿通してシールド管付ハーネスを構成したが、被覆電線21の本数や径はこれに限定されず、適宜の本数や径の被覆電線21をまとめてワイヤーハーネス20を構成してもよいし、ワイヤーハーネス20ではなく、複数本や1本の被覆電線21を挿通してシールド管付ハーネスを構成してもよい。
【0072】
また、上述のシールド管付ハーネスでは、電磁シールド管10の一方の端部にアース接点部16を設けたが、もちろん反対側の端部にアース接点部16を設けてもよいし、両端部にアース接点部16を設けてもよい。なお、別の手段で金属管11が接地(アース)できれば、アース接点部16を設けなくてもよい。
【0073】
さらにまた、上述の電磁シールド管10では、金属管11と外層体12とを、金属管11の外表面と外層体12の内表面との分子間結合によって一体化したが、接着によって金属管11と外層体12とを一体化してもよいし、あるいは、金属管11の外表面と外層体12の内表面との摩擦によって一体化してもよい。
【0074】
さらに、上述のシールド管付ハーネス1についての説明では、電磁シールド管10の内部空間11aにワイヤーハーネス20を挿入してシールド管付ハーネス1を構成したが、図6乃至図9に示すように、内部空間11aに挿入されたワイヤーハーネス20と、電磁シールド管10の内面、つまり金属管11の内面との間を充填材30で充填したシールド管付ハーネス1aであってもよい。
【0075】
シールド管付ハーネス1aは、図6乃至図9に示すように、内部空間11aに挿入されたワイヤーハーネス20と、電磁シールド管10の内面、つまり金属管11の内面との間を充填材30で充填して構成している。
【0076】
なお、図6はシールド管付ハーネス1aの一方の端部の拡大斜視図を示し、図7はシールド管付ハーネス1aの概略断面図を示し、図8はシールド管付ハーネス1aの概略斜視図を示し、図9はシールド管付ハーネス1aの製造方法の概略フロー図を示している。
【0077】
詳述すると、図6はシールド管付ハーネス1aの一方の端部の拡大斜視図であり、層構成を明確にするため、電磁シールド管10の周方向の手前側の一部を透過状態で図示している。
なお、シールド管付ハーネス1aを構成する電磁シールド管10及びワイヤーハーネス20は、上述のシールド管付ハーネス1の電磁シールド管10及びワイヤーハーネス20と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0078】
電磁シールド管10及びワイヤーハーネス20とともにシールド管付ハーネス1aを構成する充填材30は、充填後に適宜の変形性を有する状態で硬化する樹脂材である。
【0079】
このようなシールド管付ハーネス1aは、上述のシールド管付ハーネス1の製造方法における曲げ加工工程(ステップs6)の後に、内部空間11aに充填材30を充填して(充填工程:ステップs7)、構成することができる。
【0080】
このようにして構成されたシールド管付ハーネス1aは、上述したようなシールド管付ハーネス1による効果に加え、内部空間11aにおけるワイヤーハーネス20の配置を保持できるとともに、金属管11の内面とワイヤーハーネス20が直接接触することを防止し、耐久性のより高いシールド管付ハーネス1aを構成することができる。
【0081】
さらにまた、流動体状の充填材30を形成せずとも、内部空間11aにおける金属管11の内面とワイヤーハーネス20との隙間にスポンジ材などを配置してもよい。この場合は、電線挿入工程(ステップs5)において、例えば、スポンジ材をワイヤーハーネス20の周りに巻き付ける、あるいはスポンジ材にワイヤーハーネス20が挿通可能な挿通孔を設け、スポンジ材の挿通孔にワイヤーハーネス20を挿通してから、スポンジ材ごとワイヤーハーネス20を内部空間11aに挿入して、構成することができる。
【0082】
また、図10乃至図13に示すように、金属管11の内面に内層体14を備えた電磁シールド管10bを構成し、電磁シールド管10bを用いてシールド管付ハーネス1bを構成してもよい。
シールド管付ハーネス1bを構成する電磁シールド管10bは、図10乃至図13に示すように、外周に外層体12が配置された金属管11の内面に対して、接着層13によって一体化された内層体14が備えられている。
【0083】
なお、図10は電磁シールド管10bの一方の端部の拡大斜視図を示し、図11は電磁シールド管10bの概略断面図を示し、図12はシールド管付ハーネス1bの概略斜視図を示し、図13はシールド管付ハーネス1bの製造方法の概略フロー図を示している。
【0084】
詳述すると、図10は、電磁シールド管10bの一方の端部の拡大斜視図であり、層構成を明確にするため、電磁シールド管10bの周方向の手前側の一部を透過状態で図示している。なお、図10及び図11では、内層体14の内部の内部空間14aに挿通してシールド管付ハーネス1bを構成するワイヤーハーネス20を破線で図示している。
【0085】
なお、シールド管付ハーネス1bを構成する電磁シールド管10bの金属管11及び外層体12並びにワイヤーハーネス20は、上述のシールド管付ハーネス1の電磁シールド管10の金属管11及び外層体12並びにワイヤーハーネス20と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0086】
電磁シールド管10bを構成する内層体14は、所望の耐摩耗性などワイヤーハーネス20を保護するために求められる所要性能を有する熱可塑性樹脂であり、金属管11の厚みに対して同等以上の厚みで形成して、内部にワイヤーハーネス20が挿通可能な内部空間14aを有する電磁シールド管10bを構成している。
【0087】
なお、本実施形態において、内層体14は、結晶性の熱可塑性樹脂であり、ポリエチレンであることが好ましい。ここでは、軟質ポリエチレンとも呼ばれる低密度ポリエチレン(LDPE)製であり、金属管11の厚み0.5mmより厚い1.2mm厚で構成している。
【0088】
このように構成した内層体14は、金属管11の内面に対して、内層体14と同系素材である接着剤で構成された接着層13を溶融するとともに、加圧することで、いわゆるアンカー効果を伴う接着によって固定され、一体化されている。
【0089】
なお、低密度ポリエチレン(LDPE)製の内層体14を用いた本実施形態における接着層13は、主たる成分が内層体14を構成する低密度ポリエチレン(LDPE)と同系の組成であるポリエチレンホットメルト接着剤で構成され、金属管11と内層体14とを接着する接着層13による単位面積当たりの接着強度が10MPa以上となるように構成している。
ここで、接着層13による単位面積当たりの接着強度は、3MPa以上が好ましく、7MPa以上がより好ましく、10MPaに限定されない。
【0090】
次に、上述のような金属管11の内面に対して接着層13によって接着固定された内層体14を有する電磁シールド管10bの内部空間14aにワイヤーハーネス20を挿通して構成するシールド管付ハーネス1bの製造方法について説明する。
【0091】
まずは、内層体14を構成する樹脂を押出し成形するとともに、定径化する(内層押出・定径化工程:ステップt1)。なお、本実施形態における内層押出・定径化工程(ステップt1)では、真空定径によって、上述の所定の厚み、かつ金属管11の内径に応じた外径に定径化する。
【0092】
続いて、定径化された内層体14の外周面に対して、接着層13を構成する接着剤を押出し成形する接着層押出工程(ステップt2)を行って、内層体14の外周面に接着層13を形成する。
【0093】
そして、外周面に接着層13が形成された内層体14に対して、所定厚み及び所定幅のアルミ条に曲げ加工を施すとともに、端部同士を突合せ溶接して管状を構成する金属管フォーミングを行い、そのうえで、接着層13の外周面に形成された金属管の外側からヒーターで加熱するとともに、縮径ダイスを通過させて所望の径に縮径して金属管11を形成する金属管形成工程を行う(ステップt3(ステップs1))。
【0094】
この金属管形成工程(ステップt3(ステップs1))において、加熱されるとともに、縮径ダイスを通過させる縮径により、縮径された金属管11の径外側から径内側に向かう圧力によって、加熱によって溶融された接着層13は加圧され、上述のアンカー効果を奏することができる。
【0095】
なお、以下の工程は、上述のシールド管付ハーネス1の製造方法と同じであるため、シールド管付ハーネス1の製造方法におけるステップs1をシールド管付ハーネス1bの製造方法におけるステップt3に読み替え、以下の工程もステップsをステップtに読み替えればよく、各工程の説明は省略する。
【0096】
このように構成されたシールド管付ハーネス1bは、上述したシールド管付ハーネス1の効果に加え、以下に説明するような効果を奏することができる。
上述したように、シールド管付ハーネス1bに曲管部3を形成する曲げ加工工程(ステップt8(ステップs6))では、ベンダー装置100を用いて直線状の電磁シールド管10bに対して曲げ加工を施して曲管部3を形成するが、プレッシャーダイ103で電磁シールド管10bに引っ張り力を付与しながら曲げ加工するものの、曲げ方向における径方向に電磁シールド管10bの断面が扁平状となる断面変形が生じるおそれがある。
【0097】
しかしながら、電磁シールド管10bを構成する金属管11の内面には、接着層13によって接着固定された内層体14が備えられており、電磁シールド管10bの断面強度が向上しているため、断面扁平状となる断面変形を抑制することができる。したがって、断面扁平状となる電磁シールド管10bの断面変形によって、内部空間14aに挿通されたワイヤーハーネス20が断面における所定方向に押圧されることを防止することができる。そのため、ワイヤーハーネス20が損傷することを防止でき、耐久性がより高いシールド管付ハーネス1bを構成することができる。
【符号の説明】
【0098】
1,1a,1b…シールド管付ハーネス
2…直管部
3…曲管部
10,10b…電磁シールド管
11…金属管
11a,14a…内部空間
12…外層体
16…アース接点部
20…ワイヤーハーネス
s2…外層押出工程
s3…端部外層剥離工程
s4…加熱架橋工程
s5…電線挿通工程
s6…曲げ加工工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13