特許第6754352号(P6754352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6754352バッテリ温調装置及びバッテリ温調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754352
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】バッテリ温調装置及びバッテリ温調システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6552 20140101AFI20200831BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6562 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20200831BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20200831BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20200831BHJP
   B60K 1/04 20190101ALN20200831BHJP
【FI】
   H01M10/6552
   H01M10/613
   H01M10/615
   H01M10/625
   H01M10/6563
   H01M10/6562
   H01M10/617
   H01M10/663
   H01M10/6571
   H01M10/6568
   H01M10/6556
   H01M10/647
   H01M10/6551
   H01M10/6554
   B60K11/02
   !B60K1/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-500725(P2017-500725)
(86)(22)【出願日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】JP2016054633
(87)【国際公開番号】WO2016133145
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-29932(P2015-29932)
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】平澤 壮史
(72)【発明者】
【氏名】池田 匡視
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−062023(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/026386(WO,A1)
【文献】 特開2007−255857(JP,A)
【文献】 特開2014−229480(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/064614(WO,A1)
【文献】 特許第4952867(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60−10/667
B60K 11/02
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルを有するバッテリと、該バッテリと一方の端部にて熱的に接続された熱伝導部材と、を備え、
該熱伝導部材の他方の端部にエバポレータが熱的に接続され、
前記エバポレータが、流体の流れる流路に配置され、該流路が、前記エバポレータの該流体の流れの下流側の位置において、複数の経路に分岐され、
前記エバポレータは、冷媒の流路を形成する波状に蛇行した仕切り板に、放熱フィンが複数配置され、前記仕切り板が前記放熱フィンと接することで、前記冷媒の流路と前記放熱フィンが熱的に接続され、
前記熱伝導部材の他方の端部は、前記冷媒の流路の曲げ部の形状に対応する形状となっているバッテリ温調装置。
【請求項2】
バッテリセルを有するバッテリと、該バッテリと一方の端部にて熱的に接続された熱伝導部材と、を備え、
該熱伝導部材の他方の端部にエバポレータが熱的に接続され、
前記エバポレータが、流体の流れる流路に配置され、該流路が、前記エバポレータの該流体の流れの下流側の位置において、複数の経路に分岐され、
前記エバポレータには、相互に隣接する冷媒の流路の間に前記熱伝導部材を熱的に接続させるために、複数の放熱フィンのうち、前記冷媒の流路の間に配置された前記放熱フィンが、他の前記放熱フィンよりも短尺化されて空間部が形成されており、
前記熱伝導部材の他方の端部が前記空間部に挿入されているバッテリ温調装置。
【請求項3】
前記空間部の形状に対応した外形状と前記熱伝導部材の他方の端部の外形状に対応した内部空間の形状を有するブロックをさらに備え、前記熱伝導部材の他方の端部が嵌合された前記ブロックが前記空間部に嵌挿されている請求項に記載のバッテリ温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導部材を用いて、バッテリから発せられる熱をコンデンサのフィン及び/またはエバポレータへ輸送するバッテリ温調装置及びバッテリ温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリ温調システムとしては、車両に設置され走行に用いられるバッテリと、車室内空調用と別に設けられ、バッテリへの送風を発生させるブロワファンと、車室内空調用と別に設けられ、内部を流れる冷媒とバッテリへ送る、送風との熱交換により送風を冷却する熱交換器を備え、熱交換器であるエバポレータは、冷媒を車室内空調と共用するようにしたシステムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1では、冷媒にて冷却した空気をバッテリに供給することでバッテリの冷却を行っているが、空気を介しているため熱伝達効率が十分ではないという問題があった。さらに、特許文献1では、空気の流れを均一にすることが困難であることから、空気の経路の違い(例えば、空気の流れの上流側と下流側の違い)によって、バッテリを構成する個々のバッテリセルに供給される空気の温度が変わってしまうので、バッテリの冷却に時間を要し、かつバッテリセルの温度にばらつきが生じてしまうという問題もあった。
【0004】
また、他のバッテリ温調システムとして、バッテリモジュールにヒートパイプを接触させ、他端をヒートシンクに接続し、バッテリで発生した熱をヒートシンクへ輸送するよう構成するとともに、ヒートシンク内部にはパラフィンなどの蓄熱材を包含しているとともに、蓄熱材内部を貫通する冷却水通路と、冷却水通路と接続した冷却水配管と電動ポンプとラジエータとを備える構成とするシステムが提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献2では、冷却水配管にヒートパイプを介してバッテリモジュールを冷却しているが、水冷式のシステムでは、質量が重いので、車両の走行距離が短くなってしまうという問題があった。また、水流を生成するために必須となる電動ポンプは消費電力が大きいので、この点からも、車両の走行距離が短くなってしまうという問題があった。
【0006】
また、車両用の冷却装置として、同一の冷却系コア部を経由する少なくとも2つ以上の冷媒流路パイプを貫通するようになっている1つ以上のヒートパイプが装着された車両用冷却装置が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、特許文献3の、同一の冷却系コア部を設置して冷却するシステムでは、車両の質量や冷媒を冷却するための消費電力が増してしまうので、やはり、車両の走行距離が短くなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2008/026386号公報
【特許文献2】特開平11−204151号公報
【特許文献3】特開2012−112373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、熱伝達効率と温調性能の均一性に優れ、質量と消費電力の増大化を防止できるバッテリ温調装置及びバッテリ温調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、バッテリセルを有するバッテリと、該バッテリと一方の端部にて熱的に接続された熱伝導部材と、を備え、該熱伝導部材の他方の端部にコンデンサのフィンまたはエバポレータが熱的に接続されたバッテリ温調装置である。
【0011】
上記態様では、熱伝導部材を介して、バッテリとコンデンサのフィンまたはエバポレータが熱的に接続されている。バッテリとエバポレータが熱的に接続されることでバッテリを冷却する場合には、バッテリから発せられた熱が、バッテリから熱伝導部材の一方の端部へ熱輸送され、熱伝導部材の一方の端部へ輸送された熱は、熱伝導部材の一方の端部から他方の端部へ輸送される。熱伝導部材の他方の端部へ輸送された熱は、熱伝導部材の他方の端部から熱伝導部材の他方の端部と熱的に接続されたエバポレータへ輸送される。エバポレータへ輸送された熱は、エバポレータから外部へ放出される。
【0012】
一方、バッテリとコンデンサが熱的に接続されることで、バッテリを冷却する場合には、コンデンサから発せられた熱が、コンデンサから熱伝導部材の他方の端部へ熱輸送されるのを防止するために、コンデンサのフィンに熱伝導部材の他方の端部を熱的に接続することとなる。これにより、上記したバッテリとエバポレータが熱的に接続されることによるバッテリの冷却作用と同様の作用にてバッテリを冷却することができる。
【0013】
上記態様のうち、バッテリをエバポレータのみで冷却する場合の構成は、熱伝導部材がコンデンサのフィンとは熱的に接続されずにエバポレータと熱的に接続される。バッテリをコンデンサのフィンのみで冷却する場合の構成は、熱伝導部材がエバポレータとは熱的に接続されずにコンデンサのフィンと熱的に接続される。上記各種態様は、バッテリ温調システムの使用状況に応じて適宜選択できる。
【0014】
本発明の態様は、バッテリセルを有するバッテリと、該バッテリと一方の端部にて熱的に接続された、第1の熱伝導部材及び第2の熱伝導部材と、を備え、前記第1の熱伝導部材の他方の端部がコンデンサのフィンに熱的に接続され、前記第2の熱伝導部材の他方の端部がエバポレータに熱的に接続されたバッテリ温調装置である。
【0015】
バッテリとエバポレータ及びコンデンサのフィンとが熱伝導部材を介して熱的に接続されている構成としては、複数の熱伝導部材を用意し、少なくとも1つの熱伝導部材がコンデンサのフィンとは熱的に接続されずにエバポレータと熱的に接続され、かつ他の熱伝導部材がエバポレータとは熱的に接続されずにコンデンサのフィンと熱的に接続される態様が挙げられる。
【0016】
本発明の態様は、前記熱伝導部材が、ヒートパイプであるバッテリ温調装置である。
【0017】
本発明の態様は、前記熱伝導部材の他方の端部が、前記コンデンサのフィン及び/またはエバポレータと着脱可能であるバッテリ温調装置である。
【0018】
本発明の態様は、前記エバポレータ及び/またはコンデンサが、ヒートポンプ機構を形成しているバッテリ温調装置である。
【0019】
本発明の態様は、前記エバポレータ及び/またはコンデンサが、流体の流れる流路に配置され、該流路が、該エバポレータ及び/またはコンデンサの、該流体の流れの下流側の位置において、複数の経路に分岐されているバッテリ温調装置である。
【0020】
本発明の態様は、前記経路の少なくとも1つが、前記エバポレータ及び/またはコンデンサの、前記流体の流れの上流側の位置において前記流路と接続されることにより、外部環境に対して閉鎖された循環経路が形成されているバッテリ温調システムである。上記態様では、エバポレータ及び/またはコンデンサの下流側へ達した流体は、該下流側から循環経路を介してエバポレータ及び/またはコンデンサの上流側へ返送される。
【0021】
本発明の態様は、前記循環経路が、前記経路の選択手段として弁機構を備えるバッテリ温調装置である。
【0022】
本発明の態様は、前記経路の少なくとも1つが、前記エバポレータ及び/またはコンデンサの、前記流体の流れの上流側の位置において前記流路と接続されることにより、外部環境に対して閉鎖された循環経路が形成されているバッテリ温調装置であって、自動車に搭載され、前記流体の流れが気流であるバッテリ温調装置である。
【0023】
上記態様では、自動車のキャビンを空調する部品であるエバポレータ及び/または自動車のキャビンを空調する部品であるコンデンサのフィンに、熱伝導部材の他方の端部が熱的に接続されている。
【0024】
本発明の態様は、前記循環経路が、前記自動車のエンジンルーム内及びキャビン内を経由しないバッテリ温調装置である。
【0025】
本発明の態様は、前記気流を生成するためのファンが、設けられているバッテリ温調装置である。
【0026】
本発明の態様は、前記気流が、自動車の走行風に由来するバッテリ温調装置である。この態様では、気流の生成手段である上記ファンに代えて、気流を得るために走行風が利用されている。
【0027】
本発明の態様は、バッテリセルを有するバッテリと、該バッテリと一方の端部にて熱的に接続された熱伝導部材と、該熱伝導部材の他方の端部にて熱的に接続されたコンデンサのフィン及び/またはエバポレータと、を備えたバッテリ温調システムであって、前記バッテリを冷却する場合、前記バッテリの熱を前記熱伝導部材で前記コンデンサのフィン及び/またはエバポレータへ輸送するバッテリ温調システムである。
【0028】
本発明の態様は、他の熱伝導部材を更に備え、前記他の熱伝導部材の一方の端部は、前記バッテリと熱的に接続され、前記他の熱伝導部材の他方の端部は、発熱部と熱的に接続され、前記バッテリを加熱する場合、前記発熱部の熱を前記他の熱伝導部材で前記バッテリへ輸送するバッテリ温調システムである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の態様によれば、熱伝導部材を介して、バッテリが既存のコンデンサのフィン及び/またはエバポレータと熱的に接続されているので、水冷式システムや冷媒を使用する必要がなく、質量と消費電力の増大化を防止できる。また、熱伝導部材を介してバッテリを温調するので、冷媒にて冷却した空気を使用する必要がなく、結果、優れた熱伝達効率と温調性能の均一性を得ることができる。また、熱伝導部材を介して、バッテリが既存のコンデンサのフィン及び/またはエバポレータと熱的に接続されていることにより、エバポレータやコンデンサが稼働していない(エアコンシステムが稼働していない)場合であっても、バッテリから発せられた熱が、バッテリよりも相対的に低温であるコンデンサのフィン及び/またはエバポレータへ輸送される。よって、バッテリの冷却のための消費電力を低減できる。
【0030】
また、本発明の態様によれば、熱伝導部材により各バッテリセルの熱を輸送するため、温調用の流体を流すためのバッテリセル間の隙間やダクトが不要となり、バッテリ容器の大きさを大幅に小さくすることができ、省スペース化に有利である。さらには、バッテリ容器の大きさを大幅に小さくすることができるので、同じスペースであれば、バッテリセル数を大幅に増加することができ、結果、充電容量の増大を実現することもできる。
【0031】
本発明の態様によれば、熱伝導部材がヒートパイプであることにより、熱伝導部材の熱輸送効率が向上するので、バッテリの温調効率がさらに向上する。また、ヒートパイプの内部は中空なので、バッテリ温調システムをより軽量化できる。
【0032】
本発明の態様によれば、熱伝導部材の他方の端部が、コンデンサのフィン及び/またはエバポレータと着脱可能であることにより、バッテリ温調システムの搬送性と取り付け性が向上する。
【0033】
本発明の態様によれば、エバポレータ及び/またはコンデンサの下流側において、流路が、複数の経路に分岐されていることにより、バッテリから発せられた熱がエバポレータ及び/またはコンデンサから所望の場所へ確実に輸送できる。
【0034】
本発明の態様によれば、自動車に搭載され、外部環境に対して閉鎖された循環経路を有するバッテリ温調システムであることにより、バッテリから発せられた熱が自動車のキャビンやエンジンルーム等の不所望な場所へ輸送されるのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態例に係るバッテリ温調システムの斜視図である。
図2】第1実施形態例に係るバッテリ温調システムのエバポレータの説明図である。
図3図2のエバポレータの部分拡大図である。
図4】第2実施形態例に係るバッテリ温調システムの斜視図である。
図5】第3実施形態例に係るバッテリ温調システムの斜視図である。
図6】第3実施形態例に係るバッテリ温調システムのエバポレータの説明図である。
図7】第4実施形態例に係るバッテリ温調システムの斜視図である。
図8】第5実施形態例に係るバッテリ温調システムの斜視図である。
図9】第5実施形態例に係るバッテリ温調システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の第1実施形態例に係るバッテリ温調システムについて、図面を用いながら説明する。図1に示すように、第1実施形態例に係るバッテリ温調システム1は、複数のバッテリセル12を備えたバッテリ11と、バッテリ11と一方の端部14にて熱的に接続されたヒートパイプ13と、ヒートパイプ13の他方の端部15と直接接することでヒートパイプ13と熱的に接続されたエバポレータ(ヒートポンプの蒸発器)16とを備えている。つまり、エバポレータ16は、ヒートパイプ13の他方の端部15と直接接している。
【0037】
バッテリ11には、各バッテリセル12の側面部と接した受熱プレート10が備えられている。受熱プレート10の表面部がバッテリセル12の側面部と接することで、受熱プレート10とバッテリセル12が熱的に接続されている。また、ヒートパイプ13の一方の端部14が、受熱プレート10の裏面部と直接接することで、受熱プレート10と、ヒートパイプ13の一方の端部14が熱的に接続されている。従って、受熱プレート10を介して、バッテリ11とヒートパイプ13が熱的に接続されている。
【0038】
ヒートパイプ13は、バッテリ11及びエバポレータ16との熱的接続性を向上させるために、バッテリ11の受熱プレート10との接触部及びエバポレータ16との接触部、すなわち、一方の端部14と他方の端部15が、扁平状に加工されている。
【0039】
図1に示すように、エバポレータ16は、本体部17と、液化した冷媒を本体部17へ供給する供給用ヘッダー部18と、本体部17にて気化した冷媒を排出する排出用ヘッダー部19とを備えている。冷媒は本体部17にて気化することで本体部17から熱を奪い、エバポレータ16を冷却する。
【0040】
図2、3に示すように、本体部17は、冷媒(図中の矢印で示す。)の流路20が複数(図2では11個)設けられ、それぞれの流路20の間にはコルゲート状の放熱フィン21が配置されている。図2では10個のコルゲート状の放熱フィン21のそれぞれが、仕切り板24によって仕切られることで、11個の流路20が形成されている。
【0041】
供給用ヘッダー部18には冷媒供給口22が設けられており、冷媒供給口22は、供給用ヘッダー部18の内部空間を介して、本体部17のそれぞれの流路20の一方の開口部と連通している。また、排出用ヘッダー部19には冷媒排出口23が設けられており、冷媒排出口23は、排出用ヘッダー部19の内部空間を介して、本体部17のそれぞれの流路20の他方の開口部と連通している。従って、供給用ヘッダー部18の冷媒供給口22から供給された液体状の冷媒は、供給用ヘッダー部18の内部空間を介して、本体部17のそれぞれの流路20(図2では11個の流路20)へ流入し、それぞれの流路20の一方の開口部から他方の開口部へ流れる間に気化していく。流路20にて冷媒が気化していくにあたり、流路20の間に配置された放熱フィン21(図2では10個の放熱フィン21)を介して、冷媒が本体部17から熱を奪うことで、エバポレータ16が冷却される。気化した冷媒はそれぞれの流路20の他方の開口部から排出用ヘッダー部19の内部空間を介して、冷媒排出口23へ流され、冷媒排出口23からエバポレータ16外部へ放出される。
【0042】
図1に示すように、第1実施形態例に係るバッテリ温調システム1では、エバポレータ16の供給用ヘッダー部18の外面に、ヒートパイプ13の他方の端部15が接触することで、ヒートパイプ13とエバポレータ16が熱的に接続されている。バッテリ温調システム1では、エバポレータ16の供給用ヘッダー部18と、ヒートパイプ13の他方の端部15との接触面積を増大させるために、ヒートパイプ13は、ヒートパイプ13の他方の端部15近傍で曲げ加工され、L字状となっている。
【0043】
上記の通り、冷媒によってエバポレータ16が冷却されているので、バッテリ11から発せられた熱はヒートパイプ13によってエバポレータ16へ輸送され、結果、バッテリが冷却される。また、エバポレータ16が稼働していない場合でも、昇温したバッテリ11から発せられた熱は、バッテリ11よりも相対的に低温であるエバポレータ16へ、ヒートパイプ13によって輸送される。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態例に係るバッテリ温調システムについて、図面を用いながら説明する。なお、バッテリ温調システム1と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0045】
図4に示すように、第2実施形態例に係るバッテリ温調システム2では、バッテリ温調システム1のエバポレータ16が2つ使用されている。すなわち、バッテリ温調システム2では、ヒートパイプ13は、2つのエバポレータ16、16’と熱的に接続されている。
【0046】
バッテリ温調システム2では、ヒートパイプ13の他方の端部15は、第1のエバポレータ16の供給用ヘッダー部18と熱的に接続されているだけでなく、第2のエバポレータ16’の排出用ヘッダー部19とも熱的に接続されている。具体的には、第1のエバポレータ16の供給用ヘッダー部18の外面に、ヒートパイプ13の他方の端部15の表面側が直接接することで、ヒートパイプ13と第1のエバポレータ16が熱的に接続され、第2のエバポレータ16’の排出用ヘッダー部19の外面に、ヒートパイプ13の他方の端部15の裏面側が直接接することで、ヒートパイプ13と第2のエバポレータ16’が熱的に接続されている。
【0047】
バッテリ温調システム2では、ヒートパイプ13の他方の端部15が第1のエバポレータ16と第2のエバポレータ16’に挟持されることで、バッテリ11に対する冷却性能がさらに向上する。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態例に係るバッテリ温調システムについて、図面を用いながら説明する。なお、バッテリ温調システム1、2と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0049】
図5に示すように、第3実施形態例に係るバッテリ温調システム3では、エバポレータ36に設けられた冷媒の流路30にヒートパイプ13の他方の端部15が直接接している。バッテリ温調システム3では、1つの直線状のヒートパイプ13を介して、1つのバッテリ11と1つのエバポレータ36が熱的に接続されている。
【0050】
バッテリ温調システム3では、流路30は、半円状に曲げられている曲げ部31と直線部32とを有した、波状に蛇行した形状である。流路30が半円状に曲げられている曲げ部31に、ヒートパイプ13の他方の端部15が曲げ部31の内側から接している。流路30は、波状に蛇行した2枚の仕切り板34を対向させることにより、形成されている。バッテリ温調システム3では、流路30に、複数(図5では10個)の曲げ部31が形成され、それに伴い直線部32が複数(図5では11個)形成されている。
【0051】
図5、6に示すように、エバポレータ36では、流路30を形成する波状に蛇行した仕切り板34の曲げ部31以外の部位、すなわち、直線部32に、コルゲート状の放熱フィン21が複数(図5、6では10個)配置されている。エバポレータ36では、流路30を形成する仕切り板34の直線部32がコルゲート状の放熱フィン21と直接接することで、流路30とコルゲート状の放熱フィン21が熱的に接続されている。
【0052】
また、図5に示すように、ヒートパイプ13の他方の端部15は、流路30の曲げ部31の形状に対応する形状となっている。すなわち、他方の端部15の厚さ方向の形状が、半円形状であることで、ヒートパイプ13と流路30との熱的接続性が向上する構成となっている。
【0053】
図6に示すように、エバポレータ36では、波状に蛇行した流路30の一方の端部に冷媒を流路30に供給するための冷媒供給口35と波状に蛇行した流路30の他方の端部に冷媒を流路30から排出するための冷媒排出口37が形成されている。従って、冷媒供給口35から流路30内に供給された冷媒(図中の矢印で示す。)は、流路30に沿って、10個のコルゲート状の放熱フィン21の間を縫うように流れていき、冷媒排出口37からエバポレータ36の外部へ排出される。
【0054】
次に、本発明の第4実施形態例に係るバッテリ温調システムについて、図面を用いながら説明する。なお、バッテリ温調システム1、2、3と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0055】
図7に示すように、第4実施形態例に係るバッテリ温調システム4では、流路30が半円状に曲げられている複数(図7では10個)の曲げ部31のうち、複数(図7では2個)の曲げ部31に、それぞれ、1つの直線状のヒートパイプ13が直接接している。バッテリ温調システム4でも、バッテリ温調システム3と同様に、流路30が半円状に曲げられている曲げ部31に、ヒートパイプ13の他方の端部15が曲げ部31の内側から接している。また、バッテリ温調システム4でも、バッテリ温調システム3と同様に、それぞれのヒートパイプ13に、1つのバッテリ11が熱的に接続されている。
【0056】
つまり、バッテリ温調システム4では、1つのエバポレータ36に複数(図7では2つ)のバッテリ11が熱的に接続されている。上記から、バッテリ温調システム4では、1つのエバポレータ36にて、複数のバッテリ11を同時に冷却できる。
【0057】
次に、本発明の第5実施形態例に係るバッテリ温調システムについて、図面を用いながら説明する。なお、バッテリ温調システム1、2、3、4と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0058】
図8、9に示すように、第5実施形態例に係るバッテリ温調システム5では、第1実施形態例に係るバッテリ温調システム1にて使用したエバポレータ16について、他方の端部15近傍で曲げ加工され、L字状となっているヒートパイプ13が、相互に隣接する流路20−1と流路20−2との間に熱的に接続された態様となっている。
【0059】
バッテリ温調システム5のエバポレータ56では、相互に隣接する流路20−1と流路20−2との間にヒートパイプ13を熱的に接続させるために、複数(図8、9では10個)のコルゲート状の放熱フィン21のうち、流路20−1と流路20−2との間に配置されたコルゲート状の放熱フィン21−1が、他のコルゲート状の放熱フィン21よりも短尺化され、それによって生じた空間部50に、ヒートパイプ13の他方の端部15の端面から曲げ加工された部位までの間が、流路20に対して平行方向に挿入されている。
【0060】
また、バッテリ温調システム5では、流路20とヒートパイプ13との熱的接続性をより向上させるために、空間部50の形状に対応した外形状を有し、且つヒートパイプ13の他方の端部15の外形状に対応した内部空間の形状を有する金属ブロック51(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等のブロック)を使用している。すなわち、金属ブロック51の内部空間にヒートパイプ13の他方の端部15を嵌合することにより、金属ブロック51の内面とヒートパイプ13の他方の端部15の外面が接して、金属ブロック51とヒートパイプ13の他方の端部15が熱的に接続される。さらに、ヒートパイプ13の他方の端部15が嵌合された金属ブロック51を空間部50に嵌挿することにより、相互に隣接する流路20−1、流路20−2と金属ブロック51の外面とが接して、相互に隣接する流路20−1、流路20−2と金属ブロック51とが熱的に接続される。これにより、相互に隣接する流路20−1と流路20−2との間の部位に、金属ブロック51を介してヒートパイプ13の他方の端部15が熱的に接続された状態となる。
【0061】
バッテリ温調システム5では、金属ブロック51を空間部50に嵌挿することにより、ヒートパイプ13の他方の端部15がエバポレータ56と熱的に接続された状態となるので、ヒートパイプ13は、エバポレータ56に対する着脱が容易かつ確実となる。
【0062】
本発明のバッテリ温調システムで使用するヒートパイプ13のコンテナの材質は、特に限定されず、銅、銅合金、ステンレス鋼等の金属を挙げることができる。また、ヒートパイプ13の作動液としては、特に限定されず、例えば、水、アルコール、代替フロン等を挙げることができる。
【0063】
次に、本発明の他の実施形態例に係るバッテリ温調システムについて、説明する。上記各実施形態例では、ヒートパイプ13の他方の端部15は、エバポレータ16、36、56と熱的に接続されていたが、これに代えて、コンデンサ(ヒートポンプの凝縮器)と熱的に接続してもよい。
【0064】
また、上記各実施形態例では、ヒートパイプ13の他方の端部15は、エバポレータ16、36、56と熱的に接続されていたが、これに代えて、エバポレータ16、36、56だけでなく、コンデンサのフィンとも熱的に接続してもよい。この場合、複数のヒートパイプを用意し、上記各実施形態例のように、少なくとも1つのヒートパイプ(第2のヒートパイプ)13がコンデンサのフィンとは熱的に接続されずにエバポレータ16、36、56と熱的に接続され、さらに、他のヒートパイプ(第1のヒートパイプ)がエバポレータ16、36、56とは熱的に接続されずにコンデンサのフィンと熱的に接続された態様が挙げられる。
【0065】
また、上記コンデンサは、例えば、自動車の冷暖房装置のように、エバポレータ16、36、56とヒートポンプ機構を形成していてもよく、エバポレータ16、36、56とヒートポンプ機構を形成していなくてもよい。また、上記各実施形態例では、熱輸送手段である熱伝導部材としてヒートパイプ13を使用したが、熱伝導部材は、ヒートパイプ13や、それに類する、部材の内部空間に作動液を有する構造体に限定されず、棒状、板状、パイプ状等の、金属(例えば、銅等)部材やグラファイトでもよい。必要な輸送熱量、輸送距離、コストなどの条件により、上記熱伝導部材は、適宜選択可能であり、また、複数種の熱伝導部材を、適宜、組み合わせてもよい。
【0066】
また、上記各実施形態例では、ヒートパイプ13の他方の端部15は、エバポレータの、供給用ヘッダー部、排出用ヘッダー部または流路と直接接することで、エバポレータと熱的に接続されていたが、これに代えて、ヒートパイプ13の他方の端部15は、エバポレータ16、36、56の放熱フィン部21と接することで、エバポレータと熱的に接続されてもよい。
【0067】
また、上記各実施形態例では、バッテリ11とエバポレータ16、36、56は1本のヒートパイプ13を介して熱的に接続されていたが、これに代えて、ヒートパイプ13よりも短いヒートパイプを複数用意し、この複数の短いヒートパイプを熱輸送方向に熱的に接続する態様としてもよい。複数の短いヒートパイプを熱輸送方向に熱的に接続することにより、より多くの熱量を輸送でき、また凍結した作動液の解凍をより確実に実施できる。
【0068】
次に、上記各実施形態例で使用されるエバポレータの配置について以下に説明する。エバポレータは、例えば、流体の流れる流路に配置される。エバポレータが、例えば、自動車の冷暖房装置のエバポレータである場合には、車載空調のブロワファンにより生じる気流または車両走行時の走行風に由来する気流の流れる流路にエバポレータは配置されている。該流路が、該エバポレータの、該気流の下流側の位置において、複数の経路に分岐されていることにより、バッテリから発せられた熱を受熱した気流が、複数の経路のうちの特定の1つの経路へ流入することができる。上記構成によって、バッテリから発せられた熱を、特定の1つの経路を使用して、エバポレータから所望の適切な場所へ確実に逃がすことができる。すなわち、バッテリから発せられた熱は、自動車にとって不所望な場所(例えば、キャビンやエンジンルーム等)へ熱輸送されることを確実に防止できる。
【0069】
また、上記した特定の1つの経路が、エバポレータの、前記気流の上流側の位置において、前記流路と接続された構成であることによって、外部環境に対して閉鎖された循環経路が形成されていると、バッテリから発せられた熱が、エバポレータを介して不所望な場所へ輸送されるのを確実に防止できる。さらに、上記循環経路が、そもそも、不所望な場所を経由しない構成とすることにより、バッテリから発せられた熱が不所望な場所へ輸送されるのをより確実に防止できる。上記複数の経路の選択手段としては、例えば、弁機構を挙げることができる。
【0070】
また、本発明のバッテリ温調システムのうち、複数のバッテリセルを有するバッテリと一方の端部において熱的に接続された熱伝導部材は、バッテリを冷却する作用だけでなく、バッテリを加熱する作用にも使用することができる。例えば、ヒートパイプ等の熱伝導部材の他方の端部を、コンデンサのフィン及び/またはエバポレータに代えて、発熱部と熱的に接続することにより、使用に適した温度よりも冷却された状態にあるバッテリを加熱して、使用に適した温度までバッテリを昇温させることができる。
【0071】
また、熱伝導部材を複数用意し、少なくとも1つの熱伝導部材の他方の端部がコンデンサのフィンまたはエバポレータと熱的に接続され、他の熱伝導部材の他方の端部が発熱部と熱的に接続される態様としてもよい。上記態様により、使用に適した温度範囲にバッテリの温度を調整することがより容易となる。
【0072】
上記発熱部としては、例えば、エンジンを有する自動車の場合には、エンジン冷却水の配管を挙げることができる。エンジン冷却水の配管については、例えば、別途、熱伝導部材の他方の端部と熱的に接続させるための分岐した配管を設け、該分岐部に、エンジン冷却水を流す配管を選択するためのバルブを設置する態様を挙げることができる。
【0073】
上記態様では、バッテリを昇温させる必要がある場合には、エンジンにより加熱されたエンジン冷却水が分岐した配管(発熱部)へ流れるようにバルブを操作することにより、分岐した配管を流れるエンジン冷却水から熱伝導部材の他方の端部へ熱が輸送される。熱伝導部材の他方の端部へ輸送された熱は、熱伝導部材の他方の端部から一方の端部へ輸送される。熱伝導部材の一方の端部へ輸送された熱は、熱伝導部材の一方の端部から熱伝導部材の一方の端部と熱的に接続されたバッテリへ輸送される。バッテリへ輸送された熱がバッテリを加熱し、使用に適した温度までバッテリを昇温させる。
【0074】
また、上記発熱部としては、例えば、電気自動車や燃料電池自動車の場合には、上記エンジンにより加熱されたエンジン冷却水の配管に代えて、ヒーターやコンデンサの配管を挙げることができる。
【0075】
また、上記実施態様の例では、エバポレータは、車載空調用ブロワファンにより生じる気流または走行風を導入したことによる気流の流れる流路に配置されていたが、これに代えて、他の流体の流れる流路、例えば、極低温冷却用の液体窒素や液体ヘリウム、熱伝導率に優れた希ガス類、冷却水、冷却用有機溶剤等の流れる流路に、エバポレータを配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のバッテリ温調装置及びバッテリ温調システムは、熱伝達効率と温調性能の均一性に優れ、質量と消費電力の増大化を防止し、バッテリの小型化もしくは大容量化を実現できるので、例えば、自動車に搭載されたバッテリセルを有するバッテリの温調の分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0077】
1、2、3、4、5 バッテリ温調システム
11 バッテリ
12 バッテリセル
13 ヒートパイプ
16、36、56 エバポレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9