【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による駆動スリーブは、クラッチインターフェースを第1の端部に有する中空本体と、本体の外面に延びるねじ山とを有する。クラッチインターフェースは、好ましくは、第1の外径を有するクラウン歯のリングを含む。ねじ山は大径(major diameter)と小径(minor diameter)とを有する。駆動スリーブ上へのフルナットの挿入を容易にするために、クラウン歯のリングは、本体の外面で第1の端部からねじ山へ延びる少なくとも2つのキャビティ(切欠き)を有する。キャビティは、ねじ山の大径よりも小さい第2の外径を画成する。言い換えると、キャビティにより、クラッチインターフェースに干渉することなくねじ山に係合するように、フルナットまたはさらにはスリーブを取り付けることができる。キャビティまたは切欠きを設けることにより、駆動スリーブ本体の比較的小さいセクションのみにおいてクラッチインターフェースの外径を小さくし、クラッチインターフェースの残りの部分は比較的大きい外径を引き続き有することができる。クラッチインターフェースのこの大きい外径は、トルクを伝達するための最も効果的な領域である。さらに、クラッチインターフェースの表面積を最大化することにより、クラッチ表面の摩耗率も低下させる。
【0012】
本発明による駆動スリーブは、好ましくは、薬剤のいくつかのユーザ可変用量を選択し投薬するための薬物送達デバイス内で力および/またはトルクを伝達するのに適した細長中空チューブである。駆動スリーブを、任意の適切なプラスチック材料から、たとえば射出成形により作ってもよい。駆動スリーブは、一般的に、少なくとも薬剤投薬中に回転方向および/または軸方向に可動であるため、ピストンロッドおよび/またはカートリッジの栓などのさらなる構成部材を駆動する。駆動スリーブは、1つまたはそれ以上の他の構成部材を、たとえばクラッチインターフェースを介して駆動してもよい。
【0013】
好ましくは、キャビティにより画成された第2の外径は、ねじ山の小径以下である。たとえば、キャビティは、本体の外面で本体の軸方向に延びるスロットである。これにより、純粋な軸方向運動によってナットを駆動スリーブ上に、かつクラッチインターフェースを覆って挿入することができるため、組立てプロセスが容易になる。
【0014】
好ましい実施形態において、駆動スリーブは4つのキャビティまたは切欠きを有する。キャビティまたは切欠きは、好ましくは、駆動スリーブ本体の外面の周りにおいて等間隔ではない。したがって、ナットなどを、1つまたは2つの所定の相対回転位置のみで駆動スリーブ上に挿入することができる。加えてまたは代わりに、キャビティまたは切欠きが異なる幅を有してもよい。
【0015】
クラウン歯は、軸方向に向けられ、第1の端部で本体の内面から本体の外面へ半径方向に延びてもよい。言い換えると、クラウン歯は、駆動スリーブ本体の一端、好ましくは近位端を形成する。これにより、駆動スリーブ本体の端面の使用可能な直径をクラッチインターフェースのために使用することができ、したがってトルクを伝達するために使用可能な表面を最大化する。クラウン歯の軸方向の向きは、これらの歯が第2の部材の対応するクラウン歯に軸方向に噛み合うように構成され、または特に方向付けられるものと理解することができる。場合により、これを本体の内面から本体の外面に放射状に広がる外形によって達成してもよい。
【0016】
クラッチインターフェースは、トルクを一方向に伝達し、トルクに反対方向に打ち勝つ、すなわちスリップするのに適したものであってよい。これは、ばね駆動デバイスにおいて、ばねトルクに反作用するため、かつ/または回転方向に応じて異なるトルク抵抗をもたらすために望ましい。そのようなクラッチインターフェースは、クラウン歯を含んでよく、各歯は、第1の回転方向を向いた第1のランプ角と、第2の反対側回転方向を向いた第2のより急なランプ角とを有する。
【0017】
好ましくは、キャビティまたは切欠きの少なくとも1つはねじ山の開始部で終端する。たとえば、ねじ山は、キャビティの1つがねじ山の各開始部で終端する二重開始部ねじ山(double−start thread)である。これにより、純粋な軸方向運動によってナットを駆動スリーブ上に、かつクラッチインターフェースを覆って挿入することができ、ナットと駆動スリーブとが相対回転するときナットが直ちにねじ山に係合するようになっている。したがって、ナットを駆動スリーブ上に軸方向に置くことを除いて、さらなる組立工程は必要ない。
【0018】
過少量の投与(underdosage)または誤動作を防ぐために、薬物送達デバイスは、カートリッジ内に残った液体の量を超える用量の設定を防ぐための最終用量保護機構をさらに含んでもよい。好ましい実施形態において、この最終用量保護機構は、カートリッジが最大用量(たとえば120IU)未満の用量を含むときのみ、カートリッジ内に残っている薬剤を検出する。たとえば、最終用量保護機構は、駆動スリーブと、用量設定中に駆動スリーブに対して回転し、用量投薬中に駆動スリーブに対して回転しない部材との間に置かれたナット部材を含む。そのような最終用量機構について、駆動スリーブは、クラウン歯のリングと反対側のねじ山の端部に位置する少なくとも1つの回転ハードストップをさらに含んでよい。この回転ハードストップは、好ましくは、ナットと相互作用して、用量設定中に部材、たとえば数字スリーブと駆動スリーブとの相対回転を防ぐ。
【0019】
さらに、駆動スリーブの中空本体は、たとえば軸方向を向いたスプラインが本体の内面または外面に位置する、少なくとも1つのさらなるクラッチインターフェースを含んでよい。たとえば、駆動スリーブは、駆動スリーブをピストンロッドに回転方向に連結するための内側スプラインを含んでよい。さらに、スプライン連結インターフェースをクラウン歯と反対側の端部、すなわち好ましくは遠位端に設けて、たとえば用量設定中に駆動スリーブをハウジングに回転方向に連結してもよい。さらに、駆動スリーブと用量設定部材および/または数字スリーブとを回転方向に連結またはデカップリングするためのスプライン連結インターフェースが、駆動スリーブの外面にあってもよい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、前述の駆動スリーブは、薬剤のいくつかのユーザ可変用量を選択し投薬するための薬物送達デバイスの構成部材である。そのようなデバイスは、駆動スリーブに加えて、ハウジング、ハウジング内に位置する用量設定部材、駆動スリーブに係合するピストンロッド、駆動スリーブと用量設定部材および/または駆動スリーブのねじ山に係合するための少なくとも1つの螺旋内側リブを有するナットとを回転方向に連結またはデカップリングするさらなるクラウン歯のリングを有するクラッチを含んでよい。薬物送達デバイスは、薬剤を含むカートリッジをさらに含んでよい。
【0021】
好ましくは、螺旋内側リブの幅は、駆動スリーブのキャビティの1つの幅以下である。これにより、リブを有するナットを駆動スリーブのキャビティまたは切欠き上に挿入することができる。最終用量ナットの小さいねじ山セクションを使用することにより、駆動スリーブクラッチインターフェースの切欠きのサイズを最小化する。これらの切欠きは、トルクを伝達するための最も効果的な領域である、クラッチインターフェースの外径から延びる。したがって、切欠きのサイズを最小化することにより、クラッチインターフェースの強度が最大化される。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、(最終用量)ナットは一般にリング状で、好ましくは360°未満で延びるねじ山リブの形の内ねじ山と、たとえばリング形状から好ましくは遠位方向に突出する翼の形の軸方向に延びるスプラインとを含む。スプラインを、さらなる構成部材、たとえば軸方向に延びる内溝を有する数字スリーブ内でナットを軸方向に案内して、軸方向運動を可能にするが相対回転を防ぐように設計してもよい。翼に加えて、さらなるスプラインをナットの外面に設けてもよい。
【0023】
薬物送達デバイスを組み立てる方法は、好ましくは、ハウジング、ピストンロッド、駆動スリーブ、ナット、用量設定部材、およびクラッチを設ける工程と;ナットを駆動スリーブ上に軸方向運動で挿入することにより、少なくとも1つの螺旋内側リブが駆動スリーブのキャビティの1つに係合する工程と;少なくとも1つの螺旋内側リブが駆動スリーブのねじ山に係合するまで、駆動スリーブとナットとの相対回転運動を行う工程とを含む。これにより、ナットを駆動スリーブに取り付ける簡単な方法を提供する。相対回転を、他の組立工程と比べて後の時点で、たとえば使用中に行ってもよい。
【0024】
好ましくは、方法は、ピストンロッド、駆動スリーブ、ナット、用量設定部材、およびクラッチをハウジングに組み付けた後に試験投薬を行う工程を含み、駆動スリーブとナットとの相対回転運動が試験投薬中に行われる。
【0025】
方法は、ナットを用量設定部材に係合させて、ナットが軸方向に変位可能に案内され、用量設定部材に回転方向に拘束されるようにするさらなる工程を含んでもよい。
【0026】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0027】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0028】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0029】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0030】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0031】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0032】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0033】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0034】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0035】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0036】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0037】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0038】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0039】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0040】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0041】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0042】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0043】
以下で、添付図面を参照しながら、本発明の非限定的な例示的実施形態について説明する。