特許第6754377号(P6754377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6754377
(24)【登録日】2020年8月25日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 35/04 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   H01R35/04 T
   H01R35/04 S
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-560429(P2017-560429)
(86)(22)【出願日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】JP2017000250
(87)【国際公開番号】WO2017119479
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2910(P2016-2910)
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 健二 ホドリーゴ
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 博文
(72)【発明者】
【氏名】牛山 政利
(72)【発明者】
【氏名】川村 知生
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−306457(JP,A)
【文献】 特開2012−209016(JP,A)
【文献】 特開2014−039438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/00 〜 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の回転側リング板および該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成する回転体と、環状の固定側リング板および該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成する固定体とが、時計回り方向と反時計回り方向との両回転方向に相対回転可能に嵌合された回転コネクタ装置であって、
前記回転体および前記固定体の少なくとも一方に自転回転可能に設けられるとともに、他方に当接して前記自転回転を規制する回転規制手段が備えられた自転部材と、
前記相対回転および前記自転回転を連動可能に伝達する回転伝達手段と
立位置において、前記回転規制手段による前記自転回転の規制が解除された解除状態から前記回転規制手段の当接によって前記自転回転が規制された規制状態に切り替える切替手段とが備えられた
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記切替手段は、
前記中立位置において、前記自転回転を規制する規制位置と前記自転回転の規制を解除する解除位置とに前記回転規制手段を移動させる移動手段と、
前記中立位置以外で前記解除位置から前記規制位置への移動を規制する移動規制手段とで構成された
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記移動手段が、
前記中立位置において前記回転規制手段が前記解除位置から前記規制位置に復帰する復帰手段で構成された
請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記移動手段が、
前記内周筒部への操舵装置の着脱によって、前記中立位置における前記回転規制手段を前記規制位置と前記解除位置とに移動可能な構成である
請求項2または請求項3に記載の回転コネクタ装置。
【請求項5】
前記移動規制手段が、
前記自転部材に設けた第1規制手段と、
前記他方に設けた第2規制手段とで構成され、
前記第2規制手段に、前記回転規制手段の前記解除位置から前記規制位置への移動規制を解除する移動規制解除部が備えられた
請求項2乃至請求項4のうちのいずれかに記載の回転コネクタ装置。
【請求項6】
前記第1規制手段と前記回転規制手段とが一体として構成された
請求項5に記載の回転コネクタ装置。
【請求項7】
前記中立位置から前記両回転方向のそれぞれにおける最大回転数を中立最大回転数とし、
前記回転伝達手段は、
前記自転回転の回転数に対する前記相対回転の回転数の比が前記中立最大回転数以上に減速して伝達する構成である
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項8】
前記回転伝達手段は、
前記相対回転の回転数が前記中立位置から前記両回転方向のそれぞれにおける最大回転数である中立最大回転数の範囲内において、
前記相対回転の整数回転数の回転を、前記自転部材に非整数回転数の回転として伝達する構成である
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の回転コネクタ装置。
【請求項9】
前記回転伝達手段が、
前記自転部材に設けた第1歯車と、
前記他方に設けるとともに、前記第1歯車と噛み合う第2歯車とで構成された
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項10】
前記回転規制手段は、径方向において前記他方の内面に対して当接する構成である
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両本体に装着される回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両本体であるステアリングシャフトに装着される回転コネクタ装置は、回転体と固定体とを相対回転自在に組み付けた構成をしており、前記回転体と前記固定体との間に形成した環状の収容空間には、渦巻き状に巻回したフレキシブルフラットケーブル(以下において、フラットケーブルという)を収容している。
【0003】
前記フラットケーブルの長さは、中立位置にある前記回転コネクタ装置にステアリングホイールなどを組み付けた場合に、前記ステアリングシャフトに対して前記ステアリングホイールを時計回り方向および反時計回り方向の両回転方向に最大回転数だけ略均等に回転できるように調整されている。
【0004】
すなわち、前記回転コネクタ装置は、前記ステアリングホイールの操舵に追従して前記回転体が両回転方向にそれぞれ前記最大回転数だけ回転できるように、前記フラットケーブルの長さを調整している。
【0005】
このため、前記中立位置から外れた位置で前記回転コネクタ装置が車両本体に組み付けられた場合、前記ステアリングホイールを両回転方向における一方向に最大回転分操舵してもフラットケーブルに余裕があるが、両回転方向における他方向に最大回転分操舵すると、前記回転コネクタ装置が回転可能な範囲を超えて回転することとなり前記フラットケーブルの損傷や破断のおそれがあった。
【0006】
このような問題に対して、例えば、中立位置において前記回転体に設けたコネクタを被覆するカバーと、前記固定体に設けた突部と嵌合する嵌合孔とを有する固定部材を備えた回転コネクタ装置が特許文献1に開示されている。
【0007】
特許文献1に記載の回転コネクタ装置は、中立位置において、前記固定部材に備えた前記カバーを前記コネクタに被せて被覆するとともに、前記嵌合孔を前記突部と嵌合することで、中立位置で前記固定体と前記回転体とを固定できるとされている。
【0008】
しかしながら、上述のように構成する前記回転コネクタ装置は、点検・修理・取替などを行うために前記ステアリングシャフトから前記ステアリングホイールを一旦取り外した場合、前記固定体に対して前記回転体が相対回転可能となる。
【0009】
前記ステアリングホイールを一旦取り外したことにより相対回転した前記回転コネクタ装置は、中立位置が分からなくなるといった問題が生じるため、前記ステアリングホイールなどの操舵装置と前記回転コネクタ装置とを再び組み付ける場合、前記回転コネクタ装置と前記操舵装置との中立位置がずれた状態で組み付けられるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−249468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上述した問題を鑑み、操舵装置を離脱させた場合であっても、回転体と固定体との相対回転を中立位置で容易かつ確実に固定できる回転コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、環状の回転側リング板および該回転側リング板の内周縁に形成された円筒状の内周筒部で構成する回転体と、環状の固定側リング板および該固定側リング板の外周縁に形成された円筒状の外周筒部で構成する固定体とが、時計回り方向と反時計回り方向との両回転方向に相対回転可能に嵌合された回転コネクタ装置であって、前記回転体および前記固定体の少なくとも一方に自転回転可能に設けるとともに、他方に当接して前記自転回転を規制する回転規制手段が備えられた自転部材と、前記相対回転および前記自転回転を連動させて伝達する回転伝達手段と、中立位置において、前記回転規制手段による前記自転回転の規制が解除された解除状態から前記回転規制手段の当接によって前記自転回転が規制された規制状態に切り替える切替手段とが備えられたことを特徴とする。
【0013】
前記回転体は、例えばスリーブなどの別部材と一体に組み付けて構成された回転体を含む。
前記自転回転は、前記相対回転の回転軸と平行な軸を自転軸とした自転回転や、前記相対回転の回転軸と直交する直交方向または交差する交差方向を自転軸とした自転回転を含む。
【0014】
前記回転伝達手段は、前記自転回転の回転力と前記相対回転の回転力とを相互に伝達することで、自転部材の自転回転と前記相対回転とを互いに連動させて回転させる回転伝達手段であり、例えば、前記自転部材と前記他方とに設けた歯車や、所定の間隔を隔てて配置した歯を配置した歯車、あるいはベルトなどの別部材などにより連動させて回転させる構成を含む。
【0015】
前記中立位置は、前記回転体が前記固定体に対して前記両回転方向に略均等に回転できる位置をさす。すなわち、前記中立位置は、前記両回転方向に略均等に回転できる場合における前記回転体と前記固定体との位置をさす。
【0016】
前記切替手段は、前記中立位置において、少なくとも前記回転規制手段が前記他方と当接する位置に移動可能とすることで前記解除状態から前記規制状態に切り替える構成をさす。
なお、前記切替手段は、前記回転体または前記固定体と一体である構成や、別部材を用いた構成などを含む。
【0017】
この発明により、操舵装置を回転コネクタ装置から離脱させた場合、具体的にはステアリングホイールを前記回転コネクタ装置から取り外した場合などであっても、前記回転体と前記固定体との前記相対回転を前記中立位置で容易かつ確実に規制できる。
【0018】
詳述すると、前記固定体に対して前記相対回転させた前記回転体が前記中立位置に位置すると、前記切替手段によって前記解除状態から前記規制状態に切り替えることができる。これにより、前記自転部材の前記自転回転を規制でき、前記回転伝達手段によって前記自転回転と連動する前記相対回転を規制することができる。
【0019】
すなわち、前記固定体に対して前記回転体を前記相対回転させるだけで、前記中立位置において前記回転コネクタ装置を前記規制状態に切り替えることができ、前記自転部材と連動する前記相対回転を間接的に規制できる。
【0020】
このように、前記回転コネクタ装置は、前記操舵装置を離脱させた場合であっても、前記回転体と前記固定体とが前記中立位置でのみ相対回転しないように容易かつ確実に固定できる。具体的には、前記ステアリングホイールを前記回転コネクタ装置から取り外した場合であっても、相対回転可能な状態の前記回転コネクタ装置を前記中立位置でのみ相対回転を規制できる。したがって、前記回転コネクタ装置の中立位置を維持したまま中立位置にある前記ステアリングホイールを容易かつ確実に装着することができる。
【0021】
この発明の態様として、前記切替手段は、前記中立位置において、前記自転回転を規制する規制位置と前記自転回転の規制を解除する解除位置とに前記回転規制手段を移動可能とする移動手段と、前記中立位置以外で前記解除位置から前記規制位置への移動を規制する移動規制手段とで構成することができる。
【0022】
前記規制位置は、前記回転規規制手段と前記他方とが当接する位置をさす。
前記解除位置とは、前記回転規制手段と前記他方とが当接しない位置をさし、例えば前記他方に前記回転規制手段との当接を防止するための溝や窪みなどが設けられた位置などを含む。
【0023】
前記移動手段は、前記規制位置および前記解除位置の間を前記回転規制手段が移動可能となるバネやゴムなどの付勢部材で構成した移動手段や、前記規制位置および前記解除位置の間を手動や他の部材との接触により移動する構成とした移動手段などを含む。
【0024】
前記移動規制手段は、前記自転部材が中立位置以外で前記規制位置および前記解除位置の間を移動することを規制できればよく、例えば、前記中立位置以外に設けたリブや溝の一面と、前記自転部材に設けたリブとが当接して前記自転部材の移動を規制する移動規制手段や、別部材を用いて前記自転部材の移動を規制する移動規制手段などを含む。
【0025】
この発明により、前記中立位置以外で前記解除位置から前記規制位置に前記回転規制手段が移動することを確実に規制できるため、前記中立位置以外で前記相対回転が規制されることを確実に防止できる。すなわち、前記中立位置でのみ前記相対回転を規制することができる。
【0026】
したがって、前記ステアリングホイールを前記回転コネクタ装置から取り外した場合であっても、前記中立位置での回転規制を確実に行うことができるため、前記中立位置にある前記回転コネクタ装置に前記ステアリングホイールなどの操舵装置を確実に組み付けることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記移動手段を、前記中立位置において前記回転規制手段が前記解除位置から前記規制位置に復帰する復帰手段で構成することができる。
前記復帰手段とは、前記回転規制手段が前記中立位置に配置されることにより、前記他方と当接する位置に移動させる構成をさす。具体的には、バネやゴムなどの弾性体の付勢力を利用して前記規制位置に復帰する構成や、重力を利用して前記規制位置に復帰する構成などを含む。
【0028】
この発明により、前記中立位置において前記回転規制手段は前記解除位置から前記規制位置に自動的に移動することができ、前記自転部材の前記自転回転を容易に規制することができる。したがって、中立位置で前記相対回転をより容易かつ確実に規制することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記移動手段が、前記内周筒部への操舵装置の着脱によって、前記中立位置における前記回転規制手段を前記規制位置と前記解除位置とに移動可能な構成とすることができる。
【0030】
前記操舵装置とは、例えば車両本体を操作するステアリングホイールや、ステアリングホイールの操舵を車輪に伝達するためのステアリングシャフトをさし、上述の操舵装置を装着することは、前記ステアリングホイールまたは前記テアリングシャフトの少なくとも一方を前記回転コネクタ装置に対して装着することをさす。
【0031】
この発明により、前記回転コネクタ装置と前記操舵装置とを組み付ける一連の動作で前記中立位置における規制状態を解除できる。したがって、より容易かつ確実に前記中立位置で前記回転コネクタ装置と前記操舵装置とを組み付けることができる。
【0032】
さらに、前記切替手段を前記内周筒部に備えた場合には、前記回転コネクタ装置の前記内周筒部以外に備えた場合と比べて他の物品などと干渉するおそれを低減することができるため、例えば前記回転コネクタ装置を搬送する場合などで、規制状態が解除されることを防止できる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記移動規制手段が、前記自転部材に設けた第1規制手段と、前記他方に設けた第2規制手段とで構成され、前記第2規制手段に、前記回転規制手段の前記解除位置から前記規制位置への移動規制を解除する移動規制解除部を備えることができる。
【0034】
この発明により、前記回転規制手段の移動規制を前記自転部材側と前記他方側とに分散することができ、移動規制手段にかかる負担を軽減することができるとともに、前記中立位置において前記回転規制手段の前記解除位置から前記規制位置への移動規制を確実に解除することができるため、確実に前記回転規制手段を前記規制位置に移動させて前記相対回転を規制することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記第1規制手段と前記回転規制手段とを一体として構成することができる。
この発明により、前記回転規制手段と前記移動規制手段とを前記自転部材に設けることができるため、部品点数を削減するとともに、前記回転コネクタ装置の構成を簡素化できる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記中立位置から前記両回転方向のそれぞれにおける最大回転数を中立最大回転数とし、前記回転伝達手段を、前記自転回転の回転数に対する前記相対回転の回転数の比が前記中立最大回転数以上に減速して伝達する構成とすることができる。
【0037】
前記中立最大回転数とは、前記中立位置において、前記固定体に対して前記回転体が時計回り方向または反時計回り方向のそれぞれに回転できる最大の回転数をさし、例えば、前記両回転方向に2.5回転ずつできる場合の前記中立最大回転数は2.5となる。なお、前記中立最大回転数は、車両本体の設計などによって異なる値である。
【0038】
この発明により、前記中立位置以外における前記回転規制手段が前記他方に当接することを確実に防止できる。
詳述すると、前記回転伝達手段を、前記自転回転の回転数に対する前記相対回転の回転数の比が前記中立最大回転数以上に減速して伝達する構成としたことで、前記中立最大回転数だけ前記相対回転したとしても、前記相対回転に伴う前記自転部材の前記自転回転の回転数を1回転未満とすることができる。
【0039】
すなわち、前記相対回転する間に、前記中立位置以外で前記他方に前記回転規制手段が当接することを回避できる。したがって、前記中立位置以外で前記相対回転が規制されることを確実に防止できる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記回転伝達手段は、前記相対回転の回転数が前記中立位置から前記両回転方向のそれぞれにおける最大回転数である中立最大回転数の範囲内において、前記相対回転の整数回転数の回転を、前記自転部材に非整数回転数の回転として伝達する構成とすることができる。
【0041】
前記非整数回転数は、1よりも大きい数であってもよいし、1よりも小さい数であってもよい。すなわち、前記相対回転が1回転した場合における前記自転回転が、1回転よりも大きい場合や、1回転よりも小さい場合を含む。
【0042】
この発明により、前記中立位置以外における前記回転規制手段が前記他方に当接することを確実に防止できる。
詳述すると、前記中立位置から前記両回転方向に整数回転(例えば、1回転)した前記相対回転に対して、前記自転回転が整数回転(例えば、1回転)した場合、前記他方に前記回転規制手段が当接するが、前記中立位置から前記両回転方向に整数回転する前記相対回転に対して、前記自転回転は前記中立位置から非整数回転するため、前記中立位置以外における前記回転規制手段と前記他方とが当接することを回避できる。
【0043】
なお、前記非整数回転数を1よりも大きい数とした場合には、前記自転部材の小型化を図ることができる。
詳述すると、例えば前記回転伝達手段の構成を歯車とした場合、前記相対回転が1回転する間の前記自転回転を1回転未満とするためには、前記自転部材に設ける歯車の歯数を増加させ、前記相対回転に対する前記自転回転の回転速度を減速させる必要がある。このように歯車の歯数を増加させるためには、前記歯車を配置する前記自転部材のサイズを大きくしなければならない。
【0044】
これに対して、前記非整数回転数を1よりも大きい数とした場合、すなわち前記相対回転が1回転する間に前記自転部材が複数回転する構成とした場合には、前記自転部材に設けた前記歯数を増加させる必要がない。このように歯車の歯数を増加させる必要がない前記自転部材は、前記相対回転が1回転する間の前記自転回転を一回転未満とする場合の自転部材よりも小型化することができる。したがって、前記自転部材を収容するスペースを削減でき、前記回転コネクタ装置をも小型化できる。
【0045】
またこの発明の態様として、前記回転伝達手段を、前記自転部材に設けた第1歯車と、前記他方に設けるとともに、前記第1歯車と噛み合う第2歯車とで構成することができる。
【0046】
上述の噛み合うとは、前記第1歯車と前記第2歯車とが直接的に噛み合うことや、間接的に噛み合うことを含む。例えば、前記第1歯車と前記第2歯車とが直接的に噛み合う場合や、前記第1歯車と前記第2歯車との間に他の歯車を設置して間接的に前記第1歯車と前記第2歯車とを噛み合わせる場合を含む。
【0047】
この発明により、簡易な構成で前記相対回転の回転力を前記自転回転に確実に伝達することができるため、前記自転部材を確実に自転回転させることができる。したがって、前記中立位置以外で前記回転規制手段が前記他方に当接することを確実に防止できる。
【0048】
さらに、前記第1歯車と前記第2歯車とが隙間なく確実に噛み合わせることができ、前記相対回転に伴って前記自転回転が空回りすることを防止できるため、滑らかに回転を伝達することができるとともに、前記中立位置において前記回転規制手段を前記他方により確実に当接させて、前記自転回転を確実に規制することができる。したがって、前記中立位置における前記相対回転の規制の精度を向上させることができる。また、前記第1歯車と前記第2歯車とを確実に噛み合う構成とすることができるため、前記相対回転する際に異音が生じることを防止できる。
【0049】
またこの発明の態様として、前記回転規制手段は、径方向において前記他方の内面に対して当接する構成とすることができる。
この発明により、前記自転部材と一体に構成する前記回転規制手段を、簡易な構成とするとともに、確実に前記他方の内面と当接する構成とすることができる。したがって、前記自転回転の規制に伴って前記相対回転を規制することができる。
【発明の効果】
【0050】
この発明により、前記操舵装置を離脱させた場合であっても、前記回転体と前記固定体との相対回転を前記中立位置で容易かつ確実に固定できる回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】回転コネクタ装置の概略斜視図。
図2】回転コネクタ装置の概略分解斜視図。
図3】回転コネクタ装置の概略断面図。
図4】スリーブの説明図。
図5】ステータ側内周筒部の説明図。
図6】自転ピンの説明図。
図7】規制状態の説明図。
図8】解除状態の説明図。
図9】他の実施形態における回転コネクタ装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、上方からみた回転コネクタ装置1の概略斜視図を示し、図2は、下方からみた回転コネクタ装置1の概略分解斜視図を示している。
【0053】
図3は、回転コネクタ装置1の概略断面図を示しており、具体的には、図3(a)は、図1中のA−A線概略断面図を示し、図3(b)は、図3(a)中のα1部の拡大端面図を示し、図3(c)は、図3(a)中のα2部の拡大端面図を示している。
【0054】
図4は、スリーブ30の説明図を示しており、具体的には、図4(a)は、上方からみたスリーブ30の概略斜視図を示し、図4(b)は、図4(a)中のB−B線概略断面図を示し、図4(c)は、図4(b)中のβ1部の拡大端面図を示し、図4(d)は、図4(b)中のβ2部の拡大端面図を示している。
【0055】
図5は、固定側切替機構40を説明するためにステータ20から切り出したステータ側内周筒部23のみを示しており、具体的には、図5(a)は、ステータ側内周筒部23のみをあらわす概略平面図を示し、図5(b)は、図5(a)中のC−C線概略断面斜視図を示し、図5(c)は、図5(b)中のγ1部の拡大図を示し、図5(d)は、図5(b)中のγ2部の拡大図を示している。
【0056】
図6は、自転ピン50の説明図を示しており、具体的には、図6(a)は、上方からみた自転ピン50の概略斜視図を示し、図6(b)は、図6(a)中のD−D線概略断面図を示している。なお、図6においては、第2バネ部材53を図示省略している。
【0057】
図7は、規制状態の説明図を示しており、具体的には、図7(a)は、自転ピン50が規制位置に配置された状態の図3(a)中のα1部を示し、図7(b)は、上方からみたステータ側内周筒部23に対する自転ピン50の規制状態を示している。
【0058】
図8は、解除状態の説明図を示しており、具体的には、図8(a)は、自転ピン50が解除位置に配置された状態の図3(a)中のα1部を示し、図8(b)は、上方からみたステータ側内周筒部23に対する自転ピン50の解除状態を示している。
【0059】
なお、本実施形態において、ステータ20を基準として、ロテータ10側を上方とし、スリーブ30側を下方とする。また、ロテータ10を上方から視た(平面視)した場合において、右回り方向を時計回り方向、左回り方向を反時計回り方向とする。
【0060】
回転コネクタ装置1は、図1から図3に示すように、上方に位置するロテータ10と、下方に位置するステータ20と、ロテータ10と一体となって固定されるスリーブ30とを組み付けて構成しており、組み付け状態におけるロテータ10とステータ20とでフラットケーブル(図示省略)を収容する環状の収容空間Sを形成する。
【0061】
ロテータ10は、図1および図2に示すように、平面視中央部分に略円形の貫通孔を有する略環状のロテータ側リング板11と、ロテータ側リング板11の内縁から下方に向けて形成されるロテータ側内周筒部12とが一体に構成されている。
【0062】
ロテータ側リング板11は、コネクタとして機能するロテータ側コネクタ13がロテータ側リング板11の上面から上方へ突出している。なお、ロテータ側リング板11の外縁をロテータ側外周縁部111とする。
【0063】
ロテータ側コネクタ13は、収容空間Sに収容されたフラットケーブルと接続されるとともに、図示しないステアリングホイールに配置されるホーンスイッチ、エアバッグユニットなどの電気回路から引き出されたステアリング側ケーブル(図示省略)と接続される。
【0064】
ロテータ側内周筒部12は、ロテータ側リング板11の内縁から下方に向かって延びる円筒体であり、内径がロテータ側リング板11の内径と同径である。ロテータ側内周筒部12の下端には、内径側に向けて張り出すとともに、ロテータ側内周筒部12の下端側内縁に沿って周方向に連続する鍔状のロテータ側鍔部121が形成されている。
【0065】
また、このロテータ側内周筒部12には、スリーブ30との固定に用いる固定部14が内周面の対向する位置に2つ配置されている。なお、固定部14は、後述する板状固定枠33と係止してロテータ10とスリーブ30とを固定できれば、固定部14の個数は2つに限らず、設計により適宜変更してもよい。
このように構成するロテータ側内周筒部12の内径は、上記ステアリングホイールを上方から挿入できるように、図示しないステアリングボスの直径よりも一回り大きく形成されている。
【0066】
ステータ20は、図1および図2に示すように、平面視中央部分に略円形の貫通孔を有する略環状のステータ側リング板21と、該ステータ側リング板21の外縁から上方に向かって延びる略円筒状のステータ側外周筒部22と、該ステータ側リング板21のステータ側内周縁部211近傍から下方に向かって延びる略円筒状のステータ側内周筒部23とで構成している。
【0067】
ステータ側リング板21の下面には、図示しないコンビネーションスイッチブラケットに固定する固定爪24を設けており、ステータ側リング板21よりも外径側には、コネクタとして機能するステータ側コネクタ25が下方に突出している。
【0068】
ステータ側リング板21のステータ側内周縁部211は、図3(a)から図3(c)に示すように、上方からみた状態において、ロテータ側鍔部121よりわずかに幅が狭く、ロテータ10とステータ20との組み付け状態において、ロテータ側鍔部121の下方に配される。
【0069】
ステータ側外周筒部22は、ロテータ側リング板11の外径よりわずかに小径で上下方向に延びる円筒状に形成されている。すなわち、ロテータ10とステータ20との組み付け状態において、ロテータ側外周縁部111の下方に配される。
【0070】
ステータ側内周筒部23の内径は、ステータ側リング板21よりも一回り大きく形成されている。つまり、ステータ側内周筒部23の内径側に向けてステータ側内周縁部211が突出する態様となっている。
【0071】
このステータ側内周筒部23の内周面には、上下方向の略中央部分より下方に周方向に沿って固定側歯車231が形成されており、後述する自転ピン50の自転回転を規制する規制状態と、規制を解除する解除状態とを切り替える固定側切替機構40を設けている(図5(b)参照)。なお、固定側歯車231は、110個の歯で構成されている。
【0072】
ステータ側コネクタ25は、収容空間Sに収容された上記フラットケーブルと接続されるとともに、図示しないステアリングコラムカバー内において車両本体(図示省略)側の電気回路から引き出されたコラム側ケーブル(図示省略)に接続される。
【0073】
スリーブ30は、図2および図3に示すように、ステータ20の下方から取り付けてロテータ10と固定する固定部材であり、平面視中央部分に上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。
このスリーブ30は、図4(a)および図4(b)に示すように、略筒状の上端筒部31と、上端筒部31の下端から下方に延設する下端筒部32と、上端筒部31の上端から上方へ立ち上がる2つの板状固定枠33とが一体として構成され、上記ステアリングボスの装着によって下方に押し込まれる略円筒状のスリーブ側円筒体34と、スリーブ側円筒体34を上方へ付勢する第1バネ部材35と、自転回転可能な自転ピン50とを設けている。
【0074】
上端筒部31は、ロテータ側内周筒部12より小径の筒体であり、上端には周方向に連続して外径側に突出する鍔状のスリーブ側鍔部311が設けられている。なお、スリーブ側鍔部311の外径側の縁部をスリーブ側外周縁部312とする。
【0075】
スリーブ側鍔部311の内径は、ステータ側内周縁部211の内径よりも小さく、外径は、ステータ側内周縁部211の内径よりも一回り大きい。そして、スリーブ側鍔部311の周方向における一部分の下方に、自転ピン50を収容する略箱型のピン収容部36を備えている。
【0076】
下端筒部32は、上端筒部31の下端側から下方に延びる円筒体であり、その外径は上端筒部31の外径と略同径であるとともに、内径は上端筒部31の内径よりも小径である。
下端筒部32の上面である下端筒部上面321には、後述するスリーブ側円筒体34の係止部344を挿通して係止する孔状の被係止部322が対向する2箇所に設けられている。
下端筒部32の外周面には、径方向に切り欠いたスリーブ側切り欠き部323が上下方向に沿って形成され、対向する位置に2つ設けられている。このスリーブ側切り欠き部323は、傾けることでウィンカーなどを指示する図示しないコンビネーションスイッチを元の位置に戻して指示を解除する指示解除機能を有する。
【0077】
また、スリーブ側切り欠き部323を設けていない部分における下端筒部32は、外見上、上端筒部31よりも肉厚にみえるが、下端から上端近傍まで内部中空状に形成されており、板厚は他の部分と同等である。
【0078】
板状固定枠33は、スリーブ側鍔部311の外縁側から上方へ延設し、径方向中央部分に貫通孔を有する板状の枠体であり、ロテータ10とスリーブ30との組み付け状態において、固定部14と係止可能な位置に2つ配置されている。
なお、板状固定枠33は、必ずしも周方向に2つである必要はなく、設計により適宜変更してもよいし、また固定部14と固定できる位置に配置されていれば、配置位置も適宜変更してもよい。
【0079】
スリーブ側円筒体34は、図4(a)から図4(d)に示すように、平面視中央部分に略円形の貫通孔を有する略環状の円筒体側リング板341と、円筒体側リング板341の内縁から下方に向けて形成される円筒体側内周筒部342と、円筒体側リング板341の周方向の一部分から外径側に突出する略矩形状の突出部343とが一体に構成されている。
【0080】
円筒体側内周筒部342の下端部分には、対向する2箇所に下方に突出する係止部344が設けられている。
第1バネ部材35は、円筒体側内周筒部342の外周面に巻き付くようにスリーブ側円筒体34に取り付けられた巻きバネであり、スリーブ30に組み付けた状態において、下端筒部上面321に配置される。
【0081】
以上のように構成するスリーブ側円筒体34は、下端筒部上面321および上端筒部31とともに第1バネ部材35を保持した状態において、係止部344が被係止部322に係止し、第1バネ部材35によって下方から支持されている。
【0082】
ピン収容部36は、上述のように、スリーブ側鍔部311の周方向の一部分に設けられており、図4(a)から図4(d)に示すように、上方の面および外径側の面が開口する略箱型に形成されている。
詳述すると、ピン収容部36は、下方の面を構成する下面部361と、周方向に所定の間隔を隔てた2つの側面部362とで構成され、上端筒部31を内径側の面とした略箱型に形成されている。
【0083】
下面部361には、自転ピン50を保持するピン保持部363を備えており、ピン保持部363は、下面部361から上方に突出し、上面が開口した筒状に形成されている。
なお、略箱型のピン収容部36の開口する上面は、スリーブ側円筒体34との組み付け状態において、突出部343によって閉塞されている。
【0084】
固定側切替機構40は、図5(a)から図5(d)に示すように、ステータ側内周筒部23の内周面の上下方向における略中央部分に周方向に沿って形成された溝部41とリブ42とで構成されている。
溝部41は、ステータ側内周筒部23の外径側に窪んだ溝状に形成されており、周方向に連続している。
【0085】
リブ42は、ステータ側内周筒部23の内径側に突出する凸状に形成されており、ピン収容部36の外径側に対応する部分以外に設けられている。つまり、リブ42は、ピン収容部36の外径側に対応する部分を切り欠いたリブ側切り欠き部421を設けている。
これら溝部41の上面とリブ42の下面とは、上下方向に一致している。
【0086】
自転ピン50は、図6(a)および図6(b)に示すように、下面のみ開口する円筒状のピン本体51と、ピン本体51の上端側外縁から外径側に突出するピン凸部52とで構成しており、図4(b)から図4(d)に示すように、ピン本体51の内部には第2バネ部材53が備えられている。
【0087】
ピン本体51の内径は、図4(b)から図4(d)に示すように、ピン保持部363の外径と同等に形成されており、ピン保持部363に対して自転回転自在に挿着されている。このピン本体51の外周面には、図6(a)および図6(b)に示すように、周方向に沿って自転側歯車511が形成されている。なお、自転側歯車511は、15個の歯で構成されている。
【0088】
ピン凸部52は、図6(a)および図6(b)に示すように、周方向における一部分を除いて、ピン本体51の上端側外縁から略板厚分、外径側に突出しており、ピン本体51から突出する平面視略円形から、周方向における一部分を切り欠いたピン側切り欠き部521を設けている。
【0089】
ピン側切り欠き部521は、ピン凸部52の周方向における一部分に偏った態様で設けられている。
第2バネ部材53は、第1バネ部材35と同様の巻きバネで構成されている。
【0090】
以上のように構成する自転ピン50は、図4(a)から図4(c)に示すように、ピン保持部363に保持された状態において、ピン本体51の内部に配置した第2バネ部材53によって下方から支持されるとともに、スリーブ30に組み付けたスリーブ側円筒体34の突出部343によって上方への移動を規制される。
そして、自転ピン50は、ピン側切り欠き部521が外径側に向くとともに、リブ側切り欠き部421に位置する場合において、上下方向に移動する。
【0091】
自転ピン50が第2バネ部材53によって下方から支持され上方に位置する場合は、外径側に向いたピン側切り欠き部521がステータ側内周筒部23の内周面に当接して自転回転を規制した規制状態となる(図7(a)および図7(b)参照)。なお、以下の説明において、規制状態における自転ピン50の位置を規制位置とする。
【0092】
上述のように構成したステータ20をロテータ10とスリーブ30とで挟み込むように組み付けられた回転コネクタ装置1は、ステータ20に対してロテータ10およびスリーブ30とが相対回転自在に構成される。
以下に、ロテータ10、ステータ20およびスリーブ30を組み付けられた回転コネクタ装置1について説明する。
【0093】
回転コネクタ装置1は、図2に示すように、ロテータ側リング板11を上方に向けて配置したロテータ10と、ステータ側リング板21を下方に向けて配置したステータ20と、板状固定枠33を上方に向けて配置したスリーブ30とを上方からこの順に配置する。
【0094】
ロテータ10とスリーブ30をそれぞれステータ20側に移動させて、ロテータ側鍔部121とスリーブ側鍔部311とでステータ側内周縁部211を上下方向から挟み込むとともに、固定部15と板状固定枠33とを係止させて、ロテータ10とスリーブ30とを一体に固定する。これにより、ロテータ10およびスリーブ30は、ステータ20に対して相対回転可能な構成となる。
【0095】
回転コネクタ装置1は、図3(a)に示すように、ロテータ側リング板11およびロテータ側内周筒部12と、ステータ側リング板21およびステータ側外周筒部22とで、上記フラットケーブルを収容する環状の収容空間Sが形成されている。
さらに、回転コネクタ装置1は、ステータ20側から上記ステアリングシャフトに装着可能であるとともに、上記ステアリングボスをロテータ10側からに挿入可能な差込孔Hを形成している。
【0096】
また、回転コネクタ装置1は、ステータ20の固定側歯車231と、スリーブ30に設けた自転ピン50の自転側歯車511とが噛合して、時計回り方向および反時計回り方向の両回転方向へのステータ20に対するロテータ10およびスリーブ30の相対回転と、自転ピン50の自転回転とが互いに連動する。
【0097】
なお、本実施形態における回転コネクタ装置1は、初期位置として、ロテータ10およびスリーブ30が、ステータ20に対して時計回り方向および反時計回り方向の両回転方向に2.5回転ずつ相対回転可能な中立位置に配置されるとともに、自転ピン50が規制位置に配置されている。以下の説明において、ロテータ10およびスリーブ30が中立位置に配置された状態を中立状態とし、中立位置以外に配置された状態を非中立状態とする。
【0098】
中立状態における回転コネクタ装置1は、図7(a)に示すように、ピン側切り欠き部521が外径側に向いて、ステータ側内周筒部23の内周面に当接しているため、自転ピン50は自転回転が規制される。この状態を規制状態とする。
【0099】
自転ピン50の規制された自転回転は、固定側歯車231および自転側歯車511を介して相対回転に連動しているため、自転回転が規制されることにより相対回転も規制される。このとき、自転ピン50は、第2バネ部材53によって上方の規制位置に支持されている。
【0100】
以上のような回転コネクタ装置1の中立状態の解除方法について説明する。
中立状態の回転コネクタ装置1は、差込孔Hに上記ステアリングシャフトを下方から挿通されるとともに、上記ステアリングボスを上方から挿通されることで上記車両本体に装着される。
【0101】
差込孔Hに挿通した上記ステアリングボスがスリーブ側円筒体34を押圧することにより、スリーブ側円筒体34とともに突出部343が下方に押し込まれ、第2バネ部材53によって上方に支持された自転ピン50も突出部343に追従して下方に押し込まれる。
【0102】
これにより、自転ピン50は、第2バネ部材53の付勢力に抗して規制位置から下方に位置し、固定側切替機構40の溝部41をピン凸部52が通過可能であるため、自転回転の規制状態を解除した解除状態となり(図8(a)および図8(b)参照)、ロテータ10およびスリーブ30は、ステータ20に対して相対回転可能となる。なお、以下の説明において、解除状態における自転ピン50の位置を解除位置とする。
【0103】
解除状態の自転ピン50は、自転側歯車511および固定側歯車231が噛合しているため、ロテータ10およびスリーブ30がステータ20に対して相対回転すると、自転ピン50は自転回転するとともに、スリーブ30に追従してステータ20に対して相対回転する(図7(b)および図8(b)参照)。相対回転して非中立位置に移動した自転ピン50は、ピン凸部52が溝部41の上面やリブ42の下面に当接して、規制位置への移動を規制される。
【0104】
続いて、解除状態の回転コネクタ装置1の相対回転の規制方法について説明する。
中立状態の回転コネクタ装置1から上記ステアリングホイールを取り外した場合、上記ステアリングボスに押圧されていたスリーブ側円筒体34が第1バネ部材35によって上方に移動するとともに、自転ピン50が第2バネ部材53によって解除位置から上方の規制位置に移動する。これにより、ステータ側内周筒部23の内周面に当接するピン側切り欠き部521が自転ピン50の自転回転が規制するため、回転コネクタ装置1の相対回転が規制される。
【0105】
非中立状態の回転コネクタ装置1から上記ステアリングホイールを取り外した場合、上記ステアリングボスに押圧されていたスリーブ側円筒体34は第1バネ部材35によって上方に移動するが、ピン凸部52が溝部41の上面やリブ42の下面に当接する自転ピン50は解除位置から上方の規制位置に移動できず、回転コネクタ装置1は相対回転可能な状態のままである。
【0106】
この場合、回転コネクタ装置1は、両回転方向に適当に相対回転され中立状態になると、ピン側切り欠き部521が外径側に向くため、溝部41の下面やリブ42の上面とピン凸部52とが当接しない。これにより、自転ピン50は、第2バネ部材53によって解除位置から規制位置に移動され、回転コネクタ装置1の相対回転を規制する。
【0107】
また、整数回転以外の非中立位置における自転ピン50は、ピン側切り欠き部521が外径側に向いても、固定側切替機構40を構成するリブ42の下面にピン凸部52が当接するため、規制位置に移動することはない。
【0108】
さらに、自転ピン50と固定側歯車231とがそれぞれ15個と110個の歯で構成されているため、ロテータ10を中立位置から時計回り方向または反時計回り方向に1回転または2回転した状態において、ピン側切り欠き部521が外径側に向くことはない。
【0109】
したがって、中立位置においてのみ、自転ピン50を解除位置から規制位置に移動可能となるため、回転コネクタ装置1は、非中立位置において相対回転可能であるとともに、中立位置において相対回転を規制される。
【0110】
上述のように構成した回転コネクタ装置1に、スリーブ30に自転回転可能であるとともに、ステータ側内周筒部23の内周面に当接して自転回転を規制するピン側切り欠き部521を備えた自転ピン50と、相対回転および自転回転を連動させて伝達する固定側歯車231および自転側歯車511と、中立位置において、自転ピン50を解除状態から規制状態に切り替える固定側切替機構40およびピン凸部52とを備えたことで、上記ステアリングホイールを回転コネクタ装置1から取り外した場合であっても、相対回転を中立位置で容易かつ確実に規制できる。
【0111】
詳述すると、上記ステアリングホイールを回転コネクタ装置1から取り外した状態において、ステータ20に対してロテータ10を相対回転させた場合、中立位置においてのみ第2バネ部材53が自転ピン50を解除位置から規制位置へ移動させることができる。このとき、ピン側切り欠き部521はステータ側内周筒部23と当接しているため、自転ピン50の自転回転を規制することができ、自転ピン50と連動する相対回転を規制することができる。
【0112】
すなわち、ステータ20に対してロテータ10を相対回転させるだけで、中立位置において自転ピン50を規制状態に切り替えることができ、自転ピン50と連動する相対回転を間接的に規制できる。
【0113】
このように、回転コネクタ装置1は、上記ステアリングホイールを取り外した状態であっても、ロテータ10とステータ20との相対回転を中立位置でのみ規制でき、回転コネクタ装置1の中立状態を維持したまま中立位置にある上記ステアリングホイールと容易かつ確実に装着することができる。
【0114】
また、解除状態から規制状態への切替手段として、中立位置における自転ピン50を解除位置から規制位置へ移動可能とする第2バネ部材53と、中立位置以外で解除位置から規制位置への移動を規制する固定側切替機構40およびピン凸部52とを設けたことで、中立位置以外で解除位置から規制位置にピン側切り欠き部521が移動することを確実に規制できるため、中立位置以外で相対回転が規制されることを確実に防止できる。すなわち、中立位置でのみ相対回転を規制することができる。
【0115】
したがって、上記ステアリングホイールを回転コネクタ装置1から取り外した場合であっても、中立位置での回転規制を確実に行うことができるため、中立位置にある回転コネクタ装置1に上記ステアリングホイールを確実に組み付けることができる。
【0116】
さらに、中立位置において自転ピン50は解除位置から規制位置に自動的に移動することができ、自転ピン50の自転回転を容易に規制することができる。したがって、中立位置で相対回転をより容易かつ確実に規制することができる。
【0117】
また、第2バネ部材53が、ロテータ側内周筒部12へ上記ステアリングボスの挿通することによって、中立位置における自転ピン50を規制位置から解除位置に移動可能な構成とすることで、回転コネクタ装置1に上記ステアリングホイールを組み付ける一連の動作で中立位置における規制状態を解除できる。したがって、より容易かつ確実に中立位置で回転コネクタ装置1を上記車両本体に組み付けることができる。
【0118】
また、自転ピン50の上下方向への移動を規制する移動規制手段として、自転ピン50に設けたピン凸部52と、ステータ20に設けた固定側切替機構40とで構成され、固定側切替機構40に、自転ピン50の解除位置から規制位置への移動規制を解除するリブ側切り欠き部421を備えたことで、自転ピン50の移動規制を自転ピン50側とステータ20側とに分散することができ、移動規制手段にかかる負担を軽減することができるとともに、中立位置において自転ピン50の解除位置から規制位置への移動規制を確実に解除することができるため、確実に自転ピン50を規制位置に移動させて相対回転を規制することができる。
【0119】
また、ピン凸部52とピン側切り欠き部521とを自転ピン50と一体として構成したことで、部品点数を削減するとともに、回転コネクタ装置1の構成を簡素化できる。
【0120】
また、中立位置から両回転方向のそれぞれにおける最大回転数を中立最大回転数とし、固定側歯車231および自転側歯車511を、自転回転の回転数に対する相対回転の回転数の比が中立最大回転数以上に減速して伝達する構成としたことで、中立位置以外におけるピン側切り欠き部521がステータ側内周筒部23の内周面に当接することを確実に防止できる。
【0121】
詳述すると、固定側歯車231および自転側歯車511を、自転回転の回転数に対する相対回転の回転数の比が中立最大回転数以上に減速して伝達する構成としたことで、中立最大回転数だけ相対回転したとしても、相対回転に伴う自転ピン50の自転回転の回転数を1回転未満とすることができる。
【0122】
すなわち、相対回転する間に、中立位置以外でステータ側内周筒部23の内周面にピン側切り欠き部521が当接することを回避できる。したがって、中立位置以外で相対回転が規制されることを確実に防止できる。
【0123】
また、固定側歯車231および自転側歯車511は、相対回転の回転数が中立位置から両回転方向のそれぞれにおける最大回転数である中立最大回転数の範囲内において、相対回転の整数回転数の回転を、自転ピン50に非整数回転数の回転として伝達する構成としたことで、中立位置以外におけるピン側切り欠き部521がステータ側内周筒部23の内周面に当接することを確実に防止できる。
【0124】
詳述すると、中立位置から両回転方向に整数回転(例えば、1回転)した相対回転に対して、自転回転が整数回転(例えば、1回転)した場合、ステータ側内周筒部23の内周面にピン側切り欠き部521が当接するが、中立位置から両回転方向に整数回転する相対回転に対して、自転回転は中立位置から非整数回転するため、中立位置以外におけるピン側切り欠き部521とステータ側内周筒部23の内周面とが当接することを回避できる。したがって、中立位置以外では規制状態となることを確実に防止できる。
【0125】
また、非整数回転数を1よりも大きい数とした場合には、自転ピン50の小型化を図ることができる。
詳述すると、相対回転が1回転する間の自転回転を1回転未満とするためには、固定側歯車231と自転側歯車511との間に、自転ピンを構成する一部品として、例えば相対回転に対する自転回転の回転速度を減速可能なギア比に変換する減速歯車を介在させる必要があるため、減速歯車を含む自転ピンのサイズを大きくしなければならない。
【0126】
これに対して、非整数回転数を1よりも大きい数とした場合、すなわち相対回転が1回転する間の自転ピン50を複数回転させる構成とした場合には、自転ピンの一部品として別途減速歯車を備える必要はない。これにより、相対回転が1回転する間の自転回転を1回転未満とする場合の自転ピンよりサイズを小型化することができる。したがって、自転ピン50を収容するスペースを削減でき、回転コネクタ装置1をも小型化できる。
【0127】
また、相対回転と自転回転とを連動させて伝達させる回転伝達手段として、自転ピン50に設けた自転側歯車511と、ステータ20に設けるとともに、自転側歯車511と噛み合う固定側歯車231とで構成したことで、簡易な構成で相対回転の回転力を自転回転に確実に伝達することができるため、自転ピン50を確実に自転回転させることができる。したがって、中立位置以外でピン側切り欠き部521がステータ側内周筒部23にお内周面に当接することを確実に防止できる。
【0128】
さらに、自転側歯車511と固定側歯車231とが隙間なく確実に噛み合わせることができ、相対回転に伴って自転回転が空回りすることを防止できるため、滑らかに回転を伝達することができるとともに、中立位置においてピン側切り欠き部521をステータ側内周筒部23の内周面により確実に当接させて、自転回転を確実に規制することができる。
【0129】
したがって、中立位置における相対回転の規制の精度を向上させることができる。また、自転側歯車511と固定側歯車231とを確実に噛み合う構成とすることができるため、相対回転する際に異音が生じることを防止できる。
【0130】
また、ピン側切り欠き部521は、径方向においてステータ側内周筒部23の内周面に対して当接する構成としたことで、自転ピン50と一体に構成するピン側切り欠き部521を、簡易な構成とするとともに、確実にステータ側内周筒部23の内周面と当接する構成とすることができる。したがって、自転回転の規制に伴って相対回転を規制することができる。
【0131】
また、固定側切替機構40や自転ピン50を回転コネクタ装置1の内径側に備えたことで、例えば、回転コネクタ装置1の外径側に備えた場合と比べて他の物品などと干渉するおそれを低減することができるため、回転コネクタ装置1を搬送する場合などで、規制状態が解除されることを防止できる。
【0132】
なお、回転コネクタ装置1は、上述のように、固定側切替機構40を溝部41とリブ42とで構成するとともに、自転ピン50の自転回転を相対回転が整数回転した際に非整数回転させる構成としたが、固定側切替機構40を溝部41のみで構成し、自転ピン50の自転回転が中立位置から両回転方向への最大相対回転数2.5回転する間に1回転未満となる減速機構を備えてもよい。
【0133】
上記減速機構を、固定側歯車の歯の数を自転側歯車511の歯の数の0.4倍未満とする歯数調整減速機構としたり、固定側歯車231と自転側歯車511との間に別途歯車を用いて減速させる別歯車減速機構としたりしてもよい。
【0134】
まず、歯数調整減速機構を有する回転コネクタ装置1aについて、図9を用いて簡単に説明する。
ここで、図9は、他の実施形態における回転コネクタ装置1aの説明図を示しており、具体的には、図9(a)は、回転コネクタ装置1aにおける図3(a)中のα2部を示し、図9(b)は、上方からみたステータ側内周筒部23aと自転ピン50とを示している。
【0135】
ステータ20aは、5個の歯で構成された固定側歯車231をステータ側内周筒部23aに設けており、この固定側歯車231aを構成する歯のうち隣り合う2つの歯をリブ側切り欠き部421の両側に配置し、残り3つの歯を等間隔に配置している(図示省略)。
固定側切替機構40aは、図9(a)および図9(b)に示すように、溝部41のみで構成されている。
【0136】
以上のように構成した回転コネクタ装置1aは、自転側歯車511の歯の数の0.4倍未満となる5個の歯で固定側歯車231aを構成したことにより、中立位置から両回転方向へ相対回転しても、自転回転が1回転未満であるため、自転ピン50のピン側切り欠き部521が外径側に向くことを防止できる。
【0137】
したがって、溝部41のみで構成する固定側切替機構40aを備えた回転コネクタ装置1であっても、非中立状態で規制状態となることを防止し、中立位置においてのみ、規制状態とすることができる。
なお、固定側歯車231の歯は、互いに等間隔で配置してもよいし、等間隔ではなくてもよい。
【0138】
次に、別歯車減速機構を有する回転コネクタ装置について簡単に説明する。
別歯車は、固定側歯車231と噛合する固定側噛合部分と、自転側歯車511と噛合する自転側噛合部分とを、同軸上で一体回転自在に構成されている。
【0139】
この別歯車は、固定側噛合部分の歯の数よりも自転側噛合部分の歯の数が少なく設定されており、中立位置から両回転方向への最大相対回転数2.5回転する間に自転回転が1回転未満となるように減速させることができれば、1つだけ用いても、複数用いてもよい。
【0140】
上述のように、中立位置から両回転方向へ相対回転しても、自転回転が1回転未満となるように減速することで、自転ピン50のピン側切り欠き部521が外径側に向くことを防止できる。したがって、溝部41のみで構成する固定側切替機構40aを備えた回転コネクタ装置1であっても、非中立状態で規制状態となることを防止し、中立位置においてのみ、規制状態とすることができる。
【0141】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の回転体は、実施形態のロテータ10およびスリーブ30に対応し、
以下同様に、
回転側リング板は、ロテータ側リング板11に対応し、
内周筒部は、ロテータ側内周筒部12に対応し、
固定体は、ステータ20,20aに対応し、
固定側リング板は、ステータ側リング板21に対応し、
外周筒部は、ステータ側外周筒部22に対応し、
回転伝達手段および第2歯車は、固定側歯車231,231aに対応し、
切替手段、移動規制手段および第2規制手段は、固定側切替機構40,40aに対応し、
移動規制解除部は、リブ側切り欠き部421に対応し、
回転伝達手段および第1歯車は、自転側歯車511に対応し、
切替手段、移動規制手段および第1規制手段は、ピン凸部52に対応し、
回転規制手段は、ピン側切り欠き部521に対応し、
切替手段、移動手段および復帰手段は、第2バネ部材53に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0142】
例えば、上述の説明では、下面部361から上方に突出するピン保持部363に保持し、相対回転の回転軸に対して平行な回転軸回りに自転回転を行う自転ピン50を備えたが、相対回転の回転軸と直交する直交方向又は交差する交差方向に平行な自転軸回りに自転回転を行う自転ピン50であってもよい。
【0143】
また、上述の説明では、自転回転の回転力と相対回転の回転力とを相互に伝達する回転伝達手段として、自転ピン50の自転回転と相対回転とを互いに連動させて回転させる固定側歯車231および自転側歯車511を用いたが、例えば、自転回転と相対回転とを連動させて回転できればベルトなどの別部材などを用いてもよい。
【0144】
また、上述の説明では、両回転方向にそれぞれ2.5回転ずつ回転できる位置を中立位置としたが、2.5回転のみならず、両回転方向のそれぞれへ適宜設定した回転数ずつ回転できる位置を中立位置としてもよい。
【0145】
また、上述の説明では、自転ピン50が解除位置から規制位置へ移動可能となる第2バネ部材53を用いたが、巻きバネで構成した第2バネ部材53のみならず、例えば、板バネやゴムなどの付勢部材で構成した第2バネ部材や、手動や他の部材との接触により移動する構成とした第2バネ部材53などであってもよい。
【符号の説明】
【0146】
1,1a…回転コネクタ装置
10…ロテータ
11…ロテータ側リング板
12…ロテータ側内周筒部
20,20a…ステータ
21…ステータ側リング板
22…ステータ側外周筒部
23…ステータ側内周筒部
231,231a…固定側歯車
30…スリーブ
40,40a…固定側切替機構
421…リブ側切り欠き部
50…自転ピン
511…自転側歯車
52…ピン凸部
521…ピン側切り欠き部
53…第2バネ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9