(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
湿式抄紙法により湿紙を得る抄紙工程、および、接触型乾燥機を用いて前記湿紙を乾燥させる乾燥工程を含み、前記乾燥工程が、65〜75質量%の水分率を有する湿紙に対して厚み方向に圧力をかけることを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のアルカリ電池用セパレータの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0010】
本発明のアルカリ電池用セパレータは、少なくとも1種の耐アルカリ性繊維とバインダーとを含む、2つの面を有するシート状のセパレータである。本発明のアルカリ電池用セパレータにおいて、前記2つの面の一方の面と他方の面とは互いに異なる表面形状(表面粗さ)を有する。セパレータの2つの表面形状を制御することにより、電池に組み込む際に金属棒などの心棒にセパレータを巻回したときに隣接するセパレータの一方の面と他方の面との間に生じる摩擦力およびセパレータと心棒との間に生じる摩擦力を制御しやすくなり、電池製造時に巻きズレの生じ難いセパレータが得られる。
【0011】
本発明のセパレータにおいて、2つの面の表面粗さを比較してより平滑な面をA(以下、「面A」ともいう)、より粗い面をB(以下、「面B」ともいう)としたとき、面Aの算術平均表面粗さRa(A)を面Bの算術平均表面粗さRa(B)で除した値〔Ra(A)/Ra(B)〕は0.700以上0.980以下である。Ra(A)/Ra(B)の値が0.700未満であると、セパレータの巻回時に隣接するセパレータの面Aの表面粗さと面Bの表面粗さとの差が大きくなりすぎ、前記2つの面間における摩擦力が小さくなる傾向にあるため巻きズレを生じやすくなる。また、Ra(A)/Ra(B)の値が0.980を超える場合、セパレータの巻回時に隣接するセパレータの面Aの表面粗さと面Bの表面粗さとの差は小さくなり、面Aと面Bとが同程度に平滑な面である、または、面Aと面Bとが同程度に粗い面であることが考えられる。前者の場合には面Aと面Bとの間に生じる摩擦力が小さくなる傾向にあるため巻きズレが生じやすくなる。後者の場合には巻きズレは抑制し得ても、セパレータを構成する耐アルカリ性繊維同士がバインダーにより十分に結着せず、機械的強度に劣るセパレータとなりやすく、または、セパレータの緻密性が低下して遮蔽性に劣るセパレータとなりやすい。面Aと面Bの各表面粗さの差を示すRa(A)/Ra(B)の値が、上記範囲であると、アルカリ電池用セパレータとして要求される遮蔽性や製造工程張力に耐え得るのに十分な引張強力などの高い機械的特性を確保しながら、電池に組み込む際の巻きズレ抑制効果に優れるセパレータを得ることができる。本発明において、Ra(A)/Ra(B)の値は、好ましくは0.720以上であり、より好ましくは0.750以上であり、また、好ましくは0.970以下であり、より好ましくは0.950以下である。
【0012】
本発明のセパレータにおいて、面Bの算術平均表面粗さRa(B)は3.0μm以上10μm以下である。セパレータの2つの面のうちより粗い面である面BのRa(B)が3.0μm未満であるとセパレータの2つの面がともに平滑な面となり、巻回時に面Aと面Bとの間に生じる摩擦力が小さくなることで巻きズレが生じやすくなり、また、面Aまたは面Bと心棒との間に生じる摩擦力が大きくなり、電池に組み込む際の巻きズレを生じやすくなる。また、Ra(B)が10μmを超えるとセパレータの緻密性が低下して遮蔽性に劣る傾向にある。本発明において、Ra(B)の値は対象とするセパレータの面Aの算術平均表面粗さRa(A)との関係に応じて適宜決定し得るが、Ra(B)は、好ましくは3.5μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは6.0μm以上、特に好ましくは7.0μm以上、より特に好ましくは7.8μm以上であり、また、好ましくは9.5μm以下、より好ましくは9.0μm以下である。
【0013】
本発明のセパレータにおいて、面Aの算術平均表面粗さRa(A)は対象とするセパレータの面Bの算術平均表面粗さRa(B)との関係に応じて適宜決定し得るが、好ましくは2.5μm以上9.1μm以下である。面AのRa(A)が上記範囲内であると、セパレータを巻回した際に面Aと面B間に適度な摩擦力が働き、セパレータを電池に組み込む際の巻きズレの発生を効果的に抑制することができる。本発明において、Ra(A)は、より好ましくは3.6μm以上、さらに好ましくは5.6μm以上であり、また、より好ましくは9.8μm以下、さらに好ましくは8.6μm以下である。
【0014】
セパレータ表面の算術平均表面粗さは、表面粗さ計を用いて、JIS B0601に準拠して測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
セパレータの2つの面の表面粗さは、セパレータに用いる耐アルカリ性繊維やバインダーの種類、それらの組み合わせおよびそれらの含有量、セパレータの製造工程における抄紙時の乾燥条件等を調整することにより制御することができる。
【0016】
本発明のセパレータは、少なくとも1種の耐アルカリ性繊維を含む。本発明において、耐アルカリ性繊維はアルカリに対する化学的な耐久性を呈する繊維を意味する。一般的に、耐アルカリ性繊維としては、例えば、耐アルカリ性合成繊維、耐アルカリ性セルロース繊維等の耐アルカリ性有機繊維および耐アルカリ性ガラス繊維などの耐アルカリ性無機繊維等を挙げることができる。耐アルカリ性合成繊維は、ガラス繊維等の他の繊維と比較してアルカリ性電解液に対する溶出量が少ないため、アルカリ耐性が非常に高い。このため、本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する耐アルカリ性繊維としては、耐アルカリ性合成繊維が含まれることが好ましい。
【0017】
本発明のアルカリ電池用セパレータを構成し得る耐アルカリ性合成繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール系繊維、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン−ポリエチレン複合繊維、ポリアミド−変性ポリアミド複合繊維等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、電解液との親和性(濡れ性)に優れることから、本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する少なくとも一部の耐アルカリ性繊維がポリビニルアルコール系繊維であることが好ましい。
【0018】
特に、本発明においては、耐アルカリ性繊維として水中溶解温度が90℃以上(例えば、90〜200℃程度)、特に100℃以上(例えば100〜150℃程度)のポリビニルアルコール系繊維を用いることが好ましい。より具体的には、平均重合度1000〜5000、ケン化度95モル%以上のビニルアルコール系ポリマーからなる繊維が好適に用いられる。前記ビニルアルコール系ポリマーは他の共重合成分により共重合されていてもよいが、この場合、耐水性等の点から共重合量は20モル%以下、特に10モル%以下であることが好ましい。また、必要に応じてアセタール化等の処理が施されていてもよい。
【0019】
本発明においてポリビニルアルコール系繊維を用いる場合、ポリビニルアルコール系繊維はビニルアルコール系ポリマーのみから構成されている必要はなく、他のポリマーを含んでいてもよい。他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)等であってもよい。電解液吸液性および機械的性能等の観点からは、ポリビニルアルコール系繊維の総質量に基づいて、ビニルアルコール系ポリマーを好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含むポリビニルアルコール系繊維を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の好適な一実施態様において、本発明のアルカリ電池用セパレータは耐アルカリ性繊維の少なくとも一部として、ポリビニルアルコール系繊維を含む。ポリビニルアルコール系繊維は、アルカリ性電解液に対して高い耐性を有しており、また電解液吸液性にも優れているため、これを耐アルカリ性繊維として含むことにより、セパレータの耐アルカリ性および電解液吸液性を向上させることができる。さらに、ポリビニルアルコール系繊維を用いることで、剛性が向上するため、電池内に配置されたセパレータの変形を抑えることができる。
【0021】
本発明において、耐アルカリ性繊維の繊度は、好ましくは0.1dtex以上、より好ましくは0.2dtex以上であり、好ましくは1.0dtex以下、より好ましくは0.8dtex以下、さらに好ましくは0.6dtex以下である。耐アルカリ性繊維の繊度が前記範囲内である場合、セパレータは遮蔽性に優れ、また、セパレータの製造において、抄紙後、設定の厚さに調整する前の段階で適度な厚さを確保することができる。耐アルカリ性繊維の平均繊維長は、1〜6mm程度であることが好ましい。本発明においては、繊度および/または繊維長の異なる複数の繊維を組み合わせて用いてもよく、これにより抄紙により得られる紙の厚さを所望する厚さに制御することができ、セパレータとして必要とされる厚さを確保することができる。
なお、繊度及び平均繊維長は、JISのL1015に従い、測定、算出することができる。
【0022】
本発明において、アルカリ電池用セパレータを構成する少なくとも一部の耐アルカリ性繊維がセルロース系繊維であることが好ましい。特に叩解されたセルロース系繊維を含むことにより、耐アルカリ性繊維とバインダーにより形成される支持体に、叩解により細分化された極細の叩解セルロース繊維が絡合して、遮蔽性に優れるセパレータを得ることができる。
【0023】
本発明のアルカリ電池用セパレータに含まれ得るセルロース系繊維としては、有機溶剤系セルロース繊維のフィブリル化物、マーセル化パルプ(天然木材繊維、コットンリンターパルプ、麻パルプなど)、再生セルロース繊維等が挙げられる。これらの耐アルカリ性セルロース系繊維は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明において「有機溶剤系セルロース繊維」とは、後述する再生セルロース繊維とは異なり、セルロースを化学的に変化させることなく有機溶剤に溶解して得られる溶液から直接セルロースを析出させた繊維のことをいう。より具体的には、例えば、セルロースをアミンオキサイドに溶解させた紡糸原液を、水中に乾湿式紡糸してセルロースを析出させて得られた繊維をさらに延伸する方法で製造した有機溶剤紡糸セルロース繊維が挙げられる。このような繊維の代表例としてはリヨセルが挙げられ、これはオーストリアのレンチング社より「テンセル」(登録商標)の商品名で販売されている。
【0025】
本発明のアルカリ電池用セパレータが、セルロース系繊維として有機溶剤系セルロース繊維のフィブリル化物を含む場合、有機溶剤系セルロース繊維のフィブリル化物の濾水度は、CSF(カナダ標準濾水度:Canadian Standard Freeness)値で好ましくは5ml以上、より好ましくは10ml以上、さらに好ましくは200ml以上であり、また、好ましくは600ml以下、より好ましくは550ml以下、さらに好ましくは500ml以下である。有機溶剤系セルロース繊維のフィブリル化物の濾水度が上記範囲内であると、遮蔽性に優れるセパレータを得ることができる。
なお、前記濾水度は、JIS P8121「パルプの濾水度試験方法」に規定される測定方法で測定した値である。
【0026】
本発明において用い得るマーセル化パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、ユーカリパルプ、エスパルトパルプ、コットンリンターパルプ、パイナップルパルプ、マニラ麻パルプおよびサイザル麻パルプ等をマーセル化処理したものが挙げられる。中でも、より優れた膨潤抑制効果を得ることができ、かつ、比較的安価に入手し得る材料であるため、マーセル化パルプとしてはマーセル化天然木材繊維が好ましい。
【0027】
本発明のアルカリ電池用セパレータが、セルロース系繊維としてマーセル化パルプを含む場合、その濾水度は、CSF値で好ましくは150ml以上、より好ましくは200ml以上、さらに好ましくは220ml以上であり、また、好ましくは500ml未満であり、より好ましくは450ml未満であり、さらに好ましくは400ml未満である。マーセル化パルプの叩解セルロース繊維の濾水度が上記範囲内であると、高い膨潤抑制効果を有し、かつ、抄紙性にも優れるセパレータが得られる。
なお、前記濾水度は、JIS P8121「パルプの濾水度試験方法」に規定される測定方法で測定した値である。
【0028】
未叩解の有機溶剤系セルロース繊維やマーセル化パルプを水に分散させ、ビーター、ディスクリファイナーまたは高速叩解機などの製紙用叩解機で所望の濾水度まで叩解することにより叩解セルロース繊維を得ることができる。中でも、リファイナーによる叩解処理は、ビーターまたは高速離解機等を用いて叩解する場合と比較して機械構造上叩解処理を施す繊維をうまく捕えることができ、目標とする濾水度(叩解度)まで短時間で効率よく叩解することができる。また、繊維が微細になり過ぎたり、逆に太い繊維が残ったりし難いので、繊維全体を均一に微細化することが可能である点でも有利である。
【0029】
本発明において「再生セルロース繊維」とは、セルロースを化学的にセルロース誘導体に変換した後、再度セルロースに戻すことにより得られる繊維(以下、「再生セルロース繊維」と称する)を意味する。再生セルロース繊維としては、例えば、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、強力レーヨン、銅アンモニアレーヨン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。耐アルカリ性繊維として再生セルロース繊維を含む場合には、抄紙後の紙の厚みを出しやすくなり、セパレータの製造工程において、最終的に得られるセパレータの有すべき厚みとして設定された厚さへの制御が容易になる。
【0030】
本発明のアルカリ電池用セパレータにおける耐アルカリ性繊維の含有量は、セパレータの総質量に基づき、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。耐アルカリ性繊維の含有量が上記範囲内であると、セパレータの十分な耐衝撃性が得られやすく、電池の搬送や携帯時の振動または落下による衝撃によってセパレータ自体が座屈して内部短絡を生じる可能性が低減されやすい。
【0031】
本発明のアルカリ電池用セパレータを構成する各繊維は、所望する物性等に応じて上記に例示したような繊維から適宜選択し、組み合わせることができるが、耐アルカリ性繊維として、耐アルカリ性合成繊維とセルロース系繊維とを含むことが好ましい。セパレータを構成する主体繊維が耐アルカリ性合成繊維、より好ましくはポリビニルアルコール系繊維と、セルロース系繊維、より好ましくは叩解されたセルロース繊維とを含んでなることにより、遮蔽性に優れるセパレータが得られる。本発明のアルカリ電池用セパレータが耐アルカリ性合成繊維とセルロース系繊維とを含んでなる場合、耐アルカリ性合成繊維とセルロース系繊維の質量比(耐アルカリ性合成繊維:セルロース系繊維)は、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは30:70〜70:30、さらに好ましくは40:60〜60:40である。耐アルカリ性合成繊維とセルロース系繊維の質量比が上記範囲内であると、遮蔽性や電解液の保液性等のセパレータとしての性能に優れ、膨潤抑制効果が高く、かつ抄紙性にも優れるセパレータが得られやすい。
【0032】
本発明のアルカリ電池用セパレータは、バインダーを含む。本発明に用いるバインダーとしては、セパレータを構成する主体繊維となる耐アルカリ性繊維を接着し得るものである限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール系バインダー、エチレン−ビニルアルコール系バインダー等が挙げられる。中でも、耐電解液性、吸液性等の観点からポリビニルアルコール系バインダーが好ましい。バインダーの形態としては、繊維状、粉末状、溶液状のものがあり、いずれを用いることもできるが、湿式抄造によってセパレータを抄造する場合は、繊維状バインダーが好ましい。バインダーが粉末状、溶液状である場合、セパレータのシート強力を発現させるためには、これらが溶解する必要がある。この際にポリビニルアルコールが被膜を形成し、セパレータの繊維間の空隙を塞ぐことにより、電解液吸液性の低下や電池内部抵抗の上昇を招く可能性がある。これに対して、繊維状バインダーを用いた場合は、乾燥前の持ち込み水分を下げる等の手段により、バインダーを完全に溶解させず、繊維形態を残したままバインダー繊維と、セパレータを構成する耐アルカリ性繊維同士の交点のみを点接着させることが可能である。これにより、電解液吸液性の低下や電池内部抵抗の上昇をまねくことなくセパレータの強度を高めることができるので特に好ましい。
【0033】
これに適したポリビニルアルコール系バインダー繊維の水中溶解温度としては、60〜90℃が好ましく、さらに好ましくは70〜90℃である。また、平均重合度は500〜3000程度、ケン化度97〜99モル%のポリビニルアルコール系ポリマーから構成された繊維が好適に使用される。他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)等であっても構わない。電解液吸液性、機械的性能等の点からはビニルアルコール系ポリマーを30質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を含むポリビニルアルコール系繊維を用いることが好ましい。繊度は、水分散性、他成分との接着性、ポアサイズ等の点から0.01〜3dtex程度であるのが好ましく、繊維長は1〜5mm程度であるのが好ましい。
【0034】
本発明のアルカリ電池用セパレータにおけるバインダーの含有量は、セパレータの総質量に対して5〜20質量%である。バインダーの含有量が、セパレータの総質量に対して5質量%未満であると、セパレータを構成する主体繊維となる耐アルカリ性繊維同士を十分に結着させることが難しく、機械的強度に劣るセパレータとなりやすい。一方、バインダーの含有量がセパレータの総質量に対して20質量%を超える場合、得られるセパレータの面Aの表面粗さと面Bの表面粗さとの差が大きくなりやすく、電池へ組み込む際の巻きズレが生じやすくなる。バインダーの含有量が上記範囲内であると、セパレータの面Aと面Bの表面粗さの差であるRa(A)/Ra(B)を本発明における特定の範囲に調整しやすく、電池への組み込み時に巻きズレの発生を効果的に抑制し得るとともに、機械的強度に優れ、工程通過性の良好なセパレータを得ることができる。
【0035】
本発明のアルカリ電池用セパレータは、好ましくは50cc/cm
2/sec以下の通気度を有する。通気度は、セパレータの緻密性を表し、遮蔽性の指標となる。通気度は、耐アルカリ性繊維の種類や太さ、各繊維の組み合わせおよびそれらの配合比率、用いる場合、叩解セルロース繊維の濾水度等を調整することにより制御することができる。通気度の値が低いと得られるセパレータは遮蔽性に優れ、電池に組み込まれた際に効果的に内部短絡を防止することができる。本発明のアルカリ電池用セパレータの通気度は、より好ましくは30cc/cm
2/sec以下であり、特に好ましくは20cc/cm
2/sec以下である。通気度の下限値は特に限定されないが、通常、例えば1cc/cm
2/sec以上である。
なお、通気度は、JIS L 1096 6.27「一般織物試験方法 通気性」に規定される測定方法に従って測定される。
【0036】
本発明のアルカリ電池用セパレータにおいて、縦方向の引張強力は好ましくは2kg/15mm以上、より好ましくは2.5kg/15mm以上である。引張強力が上記下限以上であると、電池に組み込む際の工程張力に耐え得る機械的特性を備え、工程通過性が良好になるとともに、落下などの衝撃に対する十分な耐衝撃性を確保することができる。引張強力の上限は特に制限されるものではないが、通常、例えば7kg/15mm程度である。引張強力は、耐アルカリ性繊維の種類、各繊維の組み合わせおよびそれらの配合比率、バインダーの種類や配合量、抄紙後の湿紙の乾燥条件等を調整することにより制御することができる。
なお、「縦方向」とは、紙を製造する時の流れ方向であり、またセパレータの製造時における長手方向(セパレータが搬送される方向に平行する方向)をも意味し、引張強力は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0037】
本発明のアルカリ電池用セパレータの目付や厚さは、組み込む電池の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば目付(設定値)は、好ましくは20〜50g/m
2であり、より好ましくは23〜45g/m
2である。また、厚さは、好ましくは70〜150μmであり、より好ましくは80〜130μmである。
【0038】
本発明のアルカリ電池用セパレータは、例えば、湿式抄紙法により湿紙を得る抄紙工程、および、接触型乾燥機を用いて前記湿紙を乾燥させる乾燥工程を含み、前記乾燥工程が、65〜75質量%の水分率を有する湿紙に対して厚み方向に圧力をかけることを含む方法により製造することができる。
【0039】
本発明のセパレータの製造方法における抄紙工程としては、従来公知の抄紙法を利用することができる。具体的には、例えば、主体繊維となる耐アルカリ性繊維を必要に応じて叩解した後バインダーと混合し、一般的な湿式抄紙機を用いて抄紙を行うことにより湿紙を得ることができる。抄紙機で用いられる抄き網としては、円網、短網、長網等が挙げられ、これらの抄き網を単独で用いて単層としても、また抄き網の組み合わせによる複数層の抄き合せとしても良い。地合斑のない均質で電気特性に優れた紙を得る点からは複数層の抄き合せとすることが好ましく、中でも短網−円網抄紙機にて2層抄き合せ紙とするのが好ましい。また、電界液吸液性を向上させる観点から、界面活性剤処理等の親水化処理を行ってもよい。
【0040】
本発明においては、セパレータの生産性を向上させる観点から、抄紙後の厚さ(厚みを調整する前の厚さ)は最終的に所望するセパレータの厚さより5μm程度厚くしておくことが好ましい。また、抄紙後に親水加工する場合、抄紙後の厚さは最終的に設定しようとする厚さより少し厚めにしておくことが好ましい。例えば、最終的なセパレータの厚さが80μmである場合には、抄紙後の厚さが85μm以上であることが好ましい。抄紙後の厚さが最終的に所望するセパレータの厚さと前記関係にあると、その後の厚さ調整において厚さの制御が容易になり、セパレータとして要求される厚さを確保しやすくなる。
【0041】
次いで、抄紙工程により得られた湿紙を、接触型乾燥機を用いて乾燥させる乾燥工程を経て、本発明のアルカリ電池用セパレータを得ることができる。前記乾燥工程は、65〜75質量%の水分率を有する湿紙に対して厚み方向に圧力をかけることを含む。本発明のアルカリ電池用セパレータは、乾燥工程において少なくとも部分的に溶解または融解したバインダーが融着により主体繊維となる耐アルカリ性繊維同士を結合することにより得られる。乾燥工程において湿紙の水分率が上記下限以上であると、バインダーが湿紙中で溶解または融解した状態で存在しやすくなるため、接触型乾燥機に対して該湿紙を圧接することによりバインダーの融着により耐アルカリ性繊維同士が強く結着し、機械的強度に優れたセパレータを得ることができる。また、湿紙の水分率が上記上限以下であると、水分を乾燥させるために湿紙に対して必要以上に圧力をかける必要がなく、得られるセパレータの面Aの表面粗さと面Bの表面粗さの差を制御しやすいため、電池に組み込む際に巻きズレを生じ難いセパレータを得ることができる。本発明において、乾燥工程における湿紙の水分率は、好ましくは67質量%以上であり、また、好ましくは73質量%以下である。
【0042】
本発明において、上記湿紙の水分率は湿紙に対して圧力を加える直前の湿紙の水分率を意味する。特定の水分率を有する湿紙に対して湿紙の厚み方向に圧力を加えて接触型乾燥機の乾燥ロール等の表面へ湿紙を圧接することにより、湿紙に含まれるバインダーが溶解/融解して、耐アルカリ性繊維同士を結着させる。この際、湿紙中のバインダーは接触型乾燥機の乾燥ロールの表面側に移動しやすく、乾燥ロールに接する面側が平滑な面(面A)となりやすく、反対側の面は比較的粗い面(面B)となりやすい。湿紙への圧力負荷は、乾燥工程のいずれの段階で行ってもよく、乾燥工程中に一度のみ行っても、複数回行ってもよい。湿紙の水分率を制御しやすく、特別な装置や複雑な制御過程を必要としない観点からは、接触型乾燥機に湿紙が接触する始点で湿紙の厚み方向に圧力をかけることが好ましく、乾燥工程中に一度だけ圧力をかけることがより好ましい。なお、乾燥工程中複数回湿紙に対して圧力を加える場合、上記水分率は、1回目の圧力を加える直前の水分率を意味する。また、水分率は、例えば、圧を加える直前の湿紙を採取して、後述する実施例に記載する方法に従い測定できる。
【0043】
乾燥工程における湿紙の上記水分率の制御は、例えば、抄紙工程により得られた湿紙を乾燥機へ搬送する工程中に真空吸引装置を設けて所望の水分率になるまで湿紙中の水分を吸収させる、プレスロールなどにより所望の水分率になるまで湿紙中の水分を絞り出す、湿紙を搬送するフェルトの水分量を制御することにより湿紙の水分率を制御する、抄紙工程における抄き網において吸引するなどの方法により行うことができる。
【0044】
湿紙に対して加える圧力は、用いる接触型乾燥機の種類や構造、乾燥温度や時間、湿紙を搬送する速度、湿紙の厚み、湿紙を構成する耐アルカリ性繊維および/またはバインダーの種類やその含有量、湿紙の水分率等に応じて適宜決定すればよい。例えば、後述するヤンキー型乾燥機などの回転シリンダ式乾燥機を用いる場合、搬送中の湿紙をタッチロールにより回転する乾燥ロールに接触させる際のタッチ圧は、好ましくは0.5kg/cm〜15kg/cm、より好ましくは1kg/cm〜10kg/cm、さらに好ましくは2kg/cm〜6kg/cmである。湿紙に対して加える圧力を上記範囲で制御することにより、面Aと面Bの表面粗さの差が前記特定の範囲にあり、電池に組み込む際の高い巻きズレ抑制効果が得やすくなるとともに、セパレータを構成するバインダーが適度に溶解/融解して主体繊維である耐アルカリ性繊維同士を結着させることにより、機械的強度に優れ、かつ、高い遮蔽性を有するセパレータが得られやすい。
【0045】
また、湿紙に圧力を加える時間は、用いる接触型乾燥機の種類や構造、湿紙に対してかける圧力、湿紙を構成するバインダーの種類やその含有量等に応じて適宜決定すればよい。例えば、搬送されてくる湿紙に対してタッチロールなどで(例えば、1秒以下など)瞬間的に圧を加えて、湿紙に含まれる水分を一気に乾燥させることにより2つの面の表面粗さに適度な差を設けることができるとともに、バインダーが適度な膜状に溶解/融解して、得られるセパレータに十分な強度を付与することができる。
【0046】
乾燥工程における乾燥温度や乾燥時間は、用いる接触型乾燥機の種類や構造、湿紙に対する負荷圧、湿紙を搬送する速度、湿紙を構成するバインダーの種類やその含有量、湿紙の水分率等に応じて適宜決定すればよい。例えば、湿紙を構成するバインダーとしてポリビニルアルコール系バインダーを用いる場合、乾燥温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。また、乾燥時間は、例えば10〜120秒であってよく、好ましくは30〜60秒である。なお、前記乾燥時間は、接触型乾燥機に湿紙が接している時間を意味する。
【0047】
接触型乾燥機は、湿紙を接触させることにより湿紙を乾燥することができ、該乾燥中に湿紙の厚み方向に圧力をかけることのできるものであれば特に限定されるものではなく、当該分野において従来公知の乾燥機を用いることができる。例えば、ヤンキー型乾燥機、多筒式乾燥機等が挙げられる。中でも、単筒の乾燥機であるためセパレータにおける2つの面の表面粗さを所望の範囲に調整しやすい、乾燥機に湿紙が接触する始点で湿紙の厚み方向に一度だけ圧力をかけやすいといった観点から、ヤンキー型乾燥機が好ましい。
【0048】
以下、本発明のアルカリ電池用セパレータの製造方法の代表的な一実施態様を説明する
図1に従い、本発明の製造方法を説明する。
抄紙工程において、セパレータを構成する耐アルカリ性繊維およびバインダーを調製タンク11中で水と混合してスラリーを得た後、抄き網12を備える抄紙機1を用いて抄紙することにより湿紙3が得られる。得られた湿紙3は、抄き網12からウェットフェルト13によりトップフェルト14へ搬送された後、トップフェルト14により接触型乾燥機2へ搬送される。ウェットフェルト13には、湿紙3に含まれる余分な水分を吸引するための真空吸引装置15が備えられていてもよい。ウェットフェルト13やトップフェルト14の水分は、シャワー(図示せず)等による水分付与やサクション(図示せず)等による脱水などで制御し得る。また、湿紙3がウェットフェルト13からトップフェルト14へ搬送される際に、プレスロール16により湿紙3の水分率を調整できる。
図1において、接触型乾燥機2は、熱源ヒーター等と接続されて所定の温度に設定された回転式の乾燥ロール18を備えており、トップフェルト14により搬送された湿紙3は、タッチロール17により乾燥ロール18の表面に圧接されることにより、湿紙3に含まれるバインダーが溶解/融解して、耐アルカリ性繊維同士を結着させる。この際、湿紙中のバインダーは乾燥ロール18側に移動しやすく、乾燥ロール18に接する面側が平滑な面(面A)となりやすく、反対側の面は比較的粗い面(面B)となりやすい。上述した通り、タッチロール17によるタッチ圧およびタッチロール17により湿紙3に圧力を加える時間、乾燥ロール18の温度、乾燥ロール18に湿紙3が接している時間などを制御することにより、得られるセパレータの2つの面の表面粗さを所望の範囲に調整できる。湿紙3を接触型乾燥機2で乾燥することにより湿紙の乾燥物、すなわち本発明のアルカリ電池用セパレータ4が得られる。得られたアルカリ電池用セパレータ4は、巻取りロール19により巻き取られる。
【0049】
本発明のアルカリ電池用セパレータは、アルカリ電池に好適に用いることができる。
本発明のアルカリ電池は、上述した本発明のアルカリ電池用セパレータを備えている限り、当業者に既知の一般的な方法で製造することができる。本発明のセパレータは高い巻きズレ抑制効果を有するため、アルカリ電池内にスパイラル形状で組み込まれる態様(螺旋捲き構造セパレータ)に好適である。電池内に本発明のセパレータを組み込む際の巻きズレ抑制効果をより向上させ得ることから、本発明のセパレータを電池内に組み込む際には、比較的粗い表面粗さを有する面Bがセパレータを電池内に挿入するための心棒に対して内側になるよう巻回することが好ましい。
本発明のアルカリ電池用セパレータは、セパレータに要求される種々の性能を満たしながら、電池に組み込む際の巻きズレを効果的に抑制できるため、巻きズレによる廃棄物の量を削減することができ、電池特性に優れたアルカリ電池の効率的で生産性に優れる製造に寄与する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
【0051】
表1に示す組成に従ってセパレータを調製し、各物性および特性の分析を下記方法に従い行った。
【0052】
〔濾水度(CSF)(ml)〕
JIS P 8121「パルプの濾水度試験方法」に準じてカナダ標準濾水度を測定した。
【0053】
〔湿紙の水分率〕
乾燥機に接触させる直前の湿紙を採取し、以下の方法に従い水分率を測定した。
試料約10gを質量既知のはかり瓶に入れて蓋をし、乾燥前試料の重量(a)を測定する。試料をはかり瓶に入れたまま105±2℃に調整された乾燥機に入れ、はかり瓶のふたを取り、3時間乾燥する。乾燥後、乾燥器中でふたをしてデシケータに入れて45分間放冷する。放冷後にはかり瓶ごと重量を測定し、はかり瓶との差で乾燥後試料の重量(b)を求め次式により湿紙水分率を求めた。
湿紙水分率(%)=(a−b)÷a×100
【0054】
〔目付(g/m
2)〕
JIS P 8124「紙のメートル坪量測定方法」に準じて測定した。
【0055】
〔厚さ(mm)、密度(g/cm
3)〕
JIS P 8118「紙及び板紙の厚さと密度の試験方法」に準じて測定した。
【0056】
〔引張強力(kg/15mm)〕
JIS P 8113「紙及び板紙の引張強さ試験方法」に準じて測定した。
【0057】
〔通気度(cc/cm
2/sec)〕
JIS L 1096 6.27「一般織物試験方法 通気性」に準じ、フラジール形試験機にて測定した。
【0058】
〔算術平均表面粗さRa〕
固定版(約15cm×約20cm 厚さ約3mmの塩化ビニル板)に、表面粗さ測定用のセパレータ試料(50mm×50mm)を水平に固定した。表面粗さ測定器(Mitutoyo製「SJ−410」)の駆動部および検出器をセットして上下位置を決めた後、縦方向(繊維の並んでいる方向)に4mm測定を行った。セパレータ試料の2つの面について、それぞれn=10で測定を行い、算術平均表面粗さ(Ra)を次式より算出した。
算術平均表面粗さ(Ra):平均線から評価曲線までの偏差Yiの絶対値を合計し、平均した値
セパレータ試料の2つの面について得られた算術平均表面粗さを比較して、Raの値が小さい面を面A(平滑面:算術平均表面粗さRa(A))とし、Raの値が大きい面を面B(粗面:算術平均表面粗さRa(B))とした。セパレータの2つの面の表面粗さの差(表裏差)を、下記式に従い算出した。
表裏差=Ra(A)/Ra(B)
【0059】
〔バインダーの溶解状態〕
0.1Nヨウ素水溶液中に、測定用の各セパレータ試料(10mm×10mm)を1分間浸漬した後、スライドガラス上に置き、マイクロスコープ(キーエンス社製)で撮影した。セパレータを形成する前のバインダー繊維の繊維状態時よりも倍以上に広がっている場合、バインダー繊維がセパレータ中で膜状に溶解/融解していると判断した。
【0060】
〔巻きズレ評価〕
5cm角のセパレータ試料を30枚作製し、セパレータの2つの面のうちより粗い面である面Bが下側になるよう30枚を重ね合わせて巻きズレ評価用のサンプルを得た。金属板上に、作製した前記評価用サンプル、15cm角のアクリル板および200gの分銅の順に重ね合わせて設置した。分銅(200g)にひもを結び付け、35cm/秒の速度でひもを金属板に水平な方向へ30cm引いたとき、評価用サンプルが崩れず重なったままである場合には○、評価用サンプルが互いにズレて崩れた場合には×と判定した。
【0061】
〔セパレータの調製〕
実施例1
1.7dtex×3mmの有機溶剤系セルロース繊維(レンチング社製「テンセル」)をリファイナーで処理しCSF250mlの濾水度に調整したもの50質量%、0.3dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VN30300)35質量%、および1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)15質量%を水に分散してスラリーを製造して、抄紙機により2層抄き合わせで抄紙を行い、湿紙を得た。真空吸引装置およびプレスロールにより得られた湿紙の水分率を71質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度132℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmを湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付24.7g/m
2、厚さ82μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0062】
比較例1
実施例1と同様の組成および方法で抄紙を行い、得られた湿紙の水分率を71質量%に調整した後、湿紙状態で捲取った。次いで、4シリンダータイプの多筒式乾燥機を用いて、湿紙に厚み方向の圧力をかけることなく、乾燥温度135℃で1分間乾燥させた。その後、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付25.1g/m
2、厚さ83μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0063】
実施例2
0.3dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VN30300)の含有量を40質量%に、1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)の含有量を10質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で抄紙を行い湿紙を得た。湿紙の水分率を69質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度131℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmの圧力を湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付25.2g/m
2、厚さ83μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0064】
実施例3
0.3dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VN30300)の含有量を30質量%に、1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)の含有量を20質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で抄紙を行い湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を70質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度132℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmの圧力を湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付24.9g/m
2、厚さ82μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0065】
比較例2
0.3dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VN30300)の含有量を25質量%に、1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)の含有量を25質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で抄紙を行い湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を72質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度132℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmの圧力を湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付24.4g/m
2、厚さ84μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0066】
比較例3
0.3dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VN30300)の含有量を48質量%に、1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)の含有量を2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で抄紙を行い、湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を70質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度131℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmの圧力を湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付25.5g/m
2、厚さ82μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0067】
比較例4
1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VPB103×3)40質量%、1.6dtex×3mmのレーヨン繊維(ダイワボウ社製、コロナ)45質量%、および1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)15質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で抄紙を行い、湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を68質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度130℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmの圧力を湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付26.1g/m
2、厚さ82μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0068】
比較例5
実施例2と同様の組成および方法で抄紙を行い、湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を58質量%に変更したこと以外は実施例2と同様の方法により、目付24.7g/m
2、厚さ84μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0069】
比較例6
実施例1と同様の組成および方法で抄紙を行い、湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を77質量%に変更し、タッチロールによるタッチ圧を1kg/cmに変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、目付25.2g/m
2、厚さ82μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0070】
比較例7
0.3dtex×3mmのポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製、ビニロン、VN30300)の含有量を15質量%に、1.1dtex×3mmのポリビニルアルコール系バインダー繊維(クラレ社製、ビニロンバインダー:VPB107−1×3)の含有量を35質量%に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で抄紙を行い湿紙を得た。得られた湿紙の水分率を72質量%に調整した後、ヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度132℃で40秒間乾燥させた。この際、湿紙をヤンキー型乾燥機に接触させる始点において、タッチロールによりタッチ圧3kg/cmの圧力を湿紙にかけた。さらに、捲出し装置を用いて、毛布からの水分の転写等により湿紙の水分率が60質量%になるように調整した後、初回に乾燥機に接した面とは反対の面がドライヤーに接するようにヤンキー型乾燥機を用いて、乾燥温度132℃で40秒乾燥させた。この際、タッチ圧1kg/cmの圧力を湿紙にかけた。次いで、弾性ロールと金属ロール間で厚さ調整し、目付24.3g/m
2、厚さ72μmのアルカリ電池用セパレータを得た。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、セパレータの総質量に対するバインダーの含有量が5〜20質量%であり、面Aと面Bの表面粗さの差を示すRa(A)/Ra(B)の値が0.700以上0.980以下であり、かつ、Ra(B)が3.0μm以上10μm以下である本発明のアルカリ電池用セパレータは、電池に組み込む際の巻きズレの発生が抑制され、かつ、セパレータに求められる遮蔽性や機械的強度に優れることが確認された(実施例1〜3)。
【課題】アルカリ電池用セパレータとして必要とされる種々の性能を満たしながら、電池に組み込む際にセパレータの巻きズレの発生を抑制し、生産性よくアルカリ電池を製造するのに適したアルカリ電池用セパレータを提供することを目的とする。
セパレータの2つの面のうちより平滑な面Aの算術平均表面粗さRa(A)をより粗い面Bの算術平均表面粗さRa(B)で除した値〔Ra(A)/Ra(B)〕が0.700以上0.980以下であり、かつ、面Bの算術平均表面粗さRa(B)が3.0μm以上10μm以下である、アルカリ電池用セパレータ。