(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上面基板部材、前記下面基板部材、及び前記側面部材からなる群から選ばれる1又は複数の部材に対し、前記加減圧手段が配置される、請求項2に記載の粒子分離検出装置。
前記凹凸部は、上部基板部材及び下部基板部材のいずれか一方又は両方に配置され、前記流路における流体の導入方向に対して平行方向に延在する、請求項5に記載の粒子操作装置。
粒子を含む流体の流路に粒子排出口を複数設け、かつ粒子を含む流体の導入方向に対し前記粒子排出口を垂直方向に設けた、請求項4から9のいずれか一項に記載の粒子操作装置。
前記凹凸部は、上部基板部材及び下部基板部材のいずれか一方又は両方に配置され、前記流路における流体の導入方向に対して交わる方向に延在する、請求項14に記載の粒子操作装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の課題は、流体中に含まれる粒子の操作を可能にする粒子操作装置、及び粒子操作方法の開発である。流体中に含まれる様々な性質を有する粒子の中から特定の性質の粒子の操作を可能にする粒子操作装置及び粒子操作方法が求められている。本発明の第二の課題は、粒子を含む流体から当該粒子を操作する装置であって、小型化が可能な装置であり、かつ前記粒子の操作により前記粒子の分級が可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記第一の課題を鑑み、様々な性質を有する粒子を含有する流体に対して、往復する流動を適用した場合に、粒子の大きさ、形状、質量、密度などに応じた粒子固有の移動度で移動することに着目し、流体中に含まれる粒子を、往復する流動により操作する装置及び方法の発明に至った。
【0013】
したがって、第一の観点において、本発明は以下のものに関する:
[1] 粒子を含む流体の流路、及び
往復する流動を発生させる1又は複数の加減圧手段
を含む粒子操作装置であって、流体中の粒子が、前記往復する流動の1の方向に、粒子固有の移動度で移動することにより、粒子の移動、分離、又は分級を可能にする、前記粒子操作装置。
[2] 往復する流動が、周期的な流動である、項目1に記載の粒子操作装置。
[3] 前記周期的な流動における流体の変位量を示す波形が、非線対称波形を有する、項目2に記載の粒子操作装置。
[4] 前記流路が、上面基板部材と、下面基板部材と、側面部材との間に形成される、項目1〜3のいずれか1項に記載の粒子操作装置。
[5] 前記上面基板部材、前記下面基板部材、及び前記側面部材からなる群から選ばれる1以上の部材に対し、前記加減圧手段が配置される、項目4に記載の粒子操作装置。
[6] 前記流路が、1又は複数の流体導入口と、1又は複数の流体排出口とを備える、項目1〜5に記載の粒子操作装置。
[7] 前記往復する流動の方向に対して交わる方向に、前記流体導入口から前記流体排出口への流れを形成維持できるように前記流体導入口及び前記流体排出口が配置される、項目6に記載の粒子操作装置。
[8] 粒子を含む流体に往復する流動を適用する工程;及び
当該粒子を、当該往復する流動の1の方向に、粒子固有の移動度で移動させる工程
を含む、粒子操作方法。
[9] 前記往復する流動が、周期的な流動である、項目8記載の粒子操作方法。
[10] 前記周期的な流動における流体の変位量を示す波形が、非線対称波形を有する、項目9に記載の粒子操作方法。
[11] 前記方法が、移動した粒子を取得する工程を含み、粒子の分級又は分離を可能にする、項目8〜10のいずれか一項に記載の粒子操作方法。
[12] 前記往復する流動の方向に対して平行に、前記流体導入口から前記流体排出口への流れを形成維持できるように前記流体導入口及び前記流体排出口が配置される、項目6に記載の粒子操作装置。
【0014】
さらに上記第二の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、第二の観点における以下の発明に到達した。
すなわち第二の観点の本発明の第一の態様は、
粒子を含む流体の流路と、往復する流動を発生させる1または複数の加減圧手段とを備えた、粒子操作装置であって、
前記加減圧手段が、前記流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向に往復する流動を発生させる手段であり、
前記往復する流動における流体の変位量を示す波形が非線対称波形を有し、
かつ前記流路に1又は複数の凹凸部を設けた、前記粒子操作装置である。
【0015】
また第二の観点の本発明の第二の態様は、前記流路が、上部基板部材と、下部基板部材と、側面部材との間に形成された、第一の態様に記載の粒子操作装置である。
【0016】
また第二の観点の本発明の第三の態様は、前記凹凸部は、上部基板部材及び下部基板部材のいずれか一方又は両方に配置され、前記流路における流体の導入方向に対して平行方向に延在する、前記第二の態様に記載の粒子操作装置である。
【0017】
また第二の観点の本発明の第四の態様は、流路に設ける凹凸部が直線状に延在する、前記三の態様に記載の粒子操作装置である。
【0018】
また第二の観点の本発明の第五の態様は、直線状に延在する凹凸部の断面が非線対称形状を有する、前記第四の態様に記載の粒子操作装置である。
【0019】
また第二の観点の本発明の第六の態様は、加減圧手段が、前記流路における前記流体の導入方向に対し垂直方向に往復する流動を発生させる手段である、前記第一から第五の態様のいずれかに記載の粒子操作装置である。
【0020】
また第二の観点の本発明の第七の態様は、粒子を含む流体の流路に粒子排出口を複数設け、かつ粒子を含む流体の導入方向に対し前記粒子排出口を垂直方向に設けた、前記第一から第六の態様のいずれかに記載の粒子操作装置である。
【0021】
また第二の観点の本発明の第八の態様は、各粒子排出口から径の異なる粒子が排出される、前記第七の態様に記載の粒子操作装置である。
【0022】
さらに第二の観点の本発明の第九の態様は、前記第一から第八の態様のいずれかに記載の粒子操作装置を用いた、流体中に含まれる粒子を分級する方法である。
【0023】
さらに第二の観点の本発明の第十の態様は、
粒子を含む流体の流路と、往復する流動を発生させる1または複数の加減圧手段とを備えた、粒子操作装置であって、
前記加減圧手段が、前記流路における前記流体の導入方向に対し平行方向に往復する流動を発生させる手段であり、
前記往復する流動における流体の変位量を示す波形が非線対称波形を有し、
かつ前記流路に1又は複数の凹凸部を設けた、前記粒子操作装置である。
【0024】
また第二の観点の本発明の第十一の態様は、前記流路が、上部基板部材と、下部基板部材と、側面部材との間に形成された、第十の態様に記載の粒子操作装置である。
【0025】
また第二の観点の本発明の第十二の態様は、前記凹凸部は、上部基板部材及び下部基板部材のいずれか一方又は両方に配置され、前記流路における流体の導入方向に対して交わる方向に延在する、前記第十一の態様に記載の粒子操作装置である。
【発明の効果】
【0026】
第一の観点の本発明により、流路に対して交わる方向又は平行に往復する流動を与えることで、流体中に含まれる粒子を、固有の移動度で移動をさせることができ、粒子を分級することが可能になる。
また、第二の観点の本発明は、粒子を含む流体の流路と、往復する流動を発生させる1または複数の加減圧手段とを備えた、粒子操作装置において、前記加減圧手段が前記流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向又は平行に往復する流動を発生させる手段であり、前記往復する流動における流体の変位量を示す波形が非線対称波形を有し、かつ前記流路に1又は複数の凹凸部を設けたことを特徴としている。第二の観点の本発明の粒子操作装置により、流体中に含まれる粒子を連続的に分級することもできる。また第二の観点の本発明の粒子操作装置は装置構成が簡素なため、小型化も容易である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第一の観点の本発明は、粒子を含む流体の流路、及び往復する流動を発生させる1又は複数の加減圧手段を含む粒子操作装置に関する。第二の観点の本発明は、粒子を含む流体の流路と、前記流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向に往復する流動を発生させる加減圧手段とを備えた、粒子操作装置に関する。両観点において、本発明の粒子操作装置は、粒子固有の性質、例えば、以下のものに限定されるものではないがサイズ、密度、形状、及び質量などに応じて粒子を移動させる装置である。本発明の粒子操作装置は、往復する流動を発生させることにより流路に含まれる流体中の粒子が、往復する流動のうちの1の方向に、粒子固有の移動度で移動することに基づいており、それにより粒子の操作、すなわち移動、分離、又は分級が可能になる。粒子固有の移動度は、様々な条件によって変化することから、条件として例えば流体、流路長、粒子取得口の位置、流体の変位量を示す波形などを適宜選択することにより、所望の粒子群を取得することが可能になる。
【0029】
本発明において移動、分離、又は分級される粒子は、流体中に不溶性の物質であれば特に限定されず、例えばビーズ、粉砕用ボール、液晶用スペーサー、クロマトグラフィー用の分離剤、吸着剤などの工業材料をはじめ、細胞、DNA、ワクチン、ウイルス、コロイド、ミセルなどの研究用や医療用材料も挙げられる。本発明は、流体の往復する流動により分離を行なうことから、静電荷や誘電特性に依存しない分離が可能であり、壊れやすい粒子、例えば細胞、液滴、気泡、分離基材、触媒、医薬品顆粒、カプセルなどの分離により適している。
【0030】
移動、分離、又は分級される細胞としては、任意の細胞が挙げられるが、例えば血液中の細胞や、培養細胞が移動、分離、又は分級に供される。血液中の細胞は、血球として、赤血球、白血球及び血小板に大きく分けられるが、それ以外の細胞、例えば癌細胞などが存在することもある。赤血球の大きさは、直径7〜8μm、厚さ2μm程であり血球の大部分を占めている。白血球は、単球、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞など)、好中球、好酸球、好塩基球を含んでおり、その大きさも細胞種に応じて6〜30μm程である。血小板は、1〜4μm程である。その一方で、血液やリンパ液の流れに乗って循環し、離れた臓器に転移を引き起こす血中循環腫瘍細胞(CTC)の大きさは、20μm〜200μmと血球にくらべかなり大きいことが知られている。しかしながら、血液中に存在するCTCの割合は極めて低く、血液10ml当たり数個から数十個程度しか存在しておらずその検出及び分離は困難であった。本発明では、大きさに応じて、細胞を分離することも可能であり、血液中に存在する細胞群から、CTCを検出及び分離するのに有効である。また、培養細胞を分離する場合、例えば幹細胞から分化誘導を行った際に、分化した所望の細胞群を大きさに応じて分離して取得することもできる。
【0031】
上述のとおり、第一の観点において、本発明は以下の粒子操作装置を提供する:
[1] 粒子を含む流体の流路、及び
往復する流動を発生させる1又は複数の加減圧手段
を含む粒子操作装置であって、流体中の粒子が、前記往復する流動の1の方向に、粒子固有の移動度で移動することにより、粒子の移動、分離、又は分級を可能にする、前記粒子操作装置。
【0032】
第一の観点の本発明において流路には、流体導入口と流体排出口が備えられており、流体導入口から流体排出口に対して流体を流すことができる。その流体が流れる方向を主流方向と定義し、流れを主流と定義する。分級する間、流体排出口に栓をし、さらに好ましくは流体導入口にも栓をして、流体を流路に留めることができる。液体を流路に留めて本発明の粒子操作装置を作動させると、バッチ単位で粒子を操作することができる。バッチ単位の処理により分級された粒子を取得するため、複数の粒子取得口を設けてもよい。一方で、流体導入口から流体排出口に対して、流体を連続的に流している状態で本発明の粒子操作装置を作動させることができ、それにより連続的に粒子を分級することができる。流路の流体排出口を粒子取得口としてもよいし、流体排出口とは別に粒子取得口を形成することができる。粒子取得口の大きさは、液体排出口の大きさと同一又は異なってもよいが、主流の流れを乱さないようにする観点から、流体排出口の大きさの1/2、より好ましくは1/5であり、さらに好ましくは1/10である。面状の流路を形成する場合、主流の乱れを軽減する観点から複数の流体導入口及び複数の流体排出口を設けることもできる。連続的に粒子を分級する場合、往復する流動は、主流方向に対し交わる方向に適用される。主流方向に交わる方向とは、往復する流動の方向と、主流方向とが、平行にならないことをいう。したがって、往復する流動の方向は、主流方向と、任意の角度となる方向、より好ましくは、主流方向に対し直交する方向に適用される。連続的な分級を可能とする粒子操作装置は、バッチ式の粒子操作装置と比較して装置構成を小さくすることができる点でより好ましい。
バッチ単位で粒子を分級する場合は、往復する流動を、主流方向に対し平行に適用してもよい。流体導入口から一定の流速で送液し、静止した後、往復する流動を、主流方向に対し平行に加えることでクロマトグラフィーと同様な粒子の分級が可能となる。前記態様は、従来の方法では分級が困難な、数十μm以下の粒子においても分級及び測定が容易となる点で好ましい。
【0033】
流路の形状は、管状、面状など任意の形状であってよい。バッチ単位で粒子を操作する場合には、管状の流路が用いられてもよい。その一方で、分級された粒子を連続的に取得する観点では、面状に流路を形成し、主流を形成しつつかかる流路に対し複数の粒子取得口を備えることが好ましい。かかる面状に形成された流路は、例えば上面基板部材と、下面基板部材と、さらに側面部材との間に形成されてもよい。面状に形成された流路は、往復する流動による分離能を高めるため、往復する流動を分岐させる形状や、ある範囲の固有の移動度で移動した粒子を集めるような形状であってもよい。上面基板部材と下面基板部材は、剛性の平板であれば任意のものを使用することができるが、粒子を観察する観点から、透明な部材、好ましくはガラス板、ポリカーボネート板などが用いられる。上面基板部材と下面基板部材は、任意の形状であってよいが、同一形状が好ましく、例えば四角形である。側面部材は、剛性であってもよいし、柔軟性又は伸縮性の部材であってもよい。振動部材を適用して、往復する流動を発生させる観点から、柔軟性又は伸縮性の部材が好ましく、例えばシリコーンゴム、フッ素系ゴム、PDMS、エラストマー樹脂、高分子ゲル、ウレタン樹脂などが用いられる。側面部材は、上面基板部材と、下面基板部材により挟まれて、流路を形成する。したがって、流路からの流体の漏出を軽減する観点から、側面部材は、板状の部材の中央部を、適切な形にくり抜いて形成されることが好ましい。
【0034】
流路の長さは、求められる粒子の分離能や、分離しようとする粒子の性質及び/又は流路を流れる流体の性質及び流速に応じて適宜選択することができる。例えば、粒径200μm程度の粒子を連続分級する場合、高い分離能を達成する観点から長さは、5cm以上のものが用いられるし、10cm以上の長さが用いられてもよい。さらに工業スケールで分級を行う場合、30cm以上であってよい。一方、剛性の上面基板部材および下面基板部材を用いる観点から、10cm以下が好ましく、より好ましくは5cm以下である。その一方で、分級装置を小型化する観点や、分離時間を低減する観点から、1cm以下のものが用いられてもよいが、これらの数値に限定されることを意図するものではない。また、バッチ単位で分級又は測定を行なう場合は分離時間の長さと分離能力とが比例することから、流路の長さは送液及び往復する流動を生成可能な範囲で適宜選択することが好ましい。
【0035】
流体導入口については、流体を導入することができれば特に限定がないが、1つ又は複数の流体導入口が形成されてもよい。流体導入口は、送液チューブを介して、送液ポンプに繋がれていてもよい。面状に形成された流路を用いる場合、主流の乱れを低減する観点から、複数の流体導入口を設けることが好ましい。複数の流体導入口を設ける場合、その全てから分離すべき粒子が導入されてもよいが、流体導入口からの流路に対して交わる方向への移動度により粒子を分級する観点から、粒子が導入される流体導入口は一部であることが好ましく、さらに好ましくは1カ所であり、その他の流体導入口からは粒子を含まない流体のみが導入されることが好ましい。面状の流路が形成される場合、流体導入口は、上面基板部材、下面基板部材、及び/又は側面部材のいずれか1以上に形成されてもよく、例えば上面基板部材上に導入口を設けることもできる。
【0036】
流体排出口については、流体を排出することができれば特に限定がないが、1つ又は複数の排出口が形成されてもよい。流体排出口は、排液チューブを介して、排液タンク又は吸引ポンプに繋がれていてもよいし、分離された粒子の通過を検出可能な検出装置または粒子径サイズの検出装置が繋がれてもよい、また、粒子取得口として機能してもよく、その場合粒子取得チューブを介して又は直接粒子を含む液体が分取される。面状に形成された流路を用いる場合、主流の乱れを低減する観点から、複数の流体導入口を設け、同数又は異なる数の流体排出口を設けることできる。上面基板部材、下面基板部材、及び側面部材との間に面状の流路が形成される場合、流体排出口は、上面基板部材、下面基板部材、及び側面部材のいずれか1以上に形成されてもよく下面基板部材又は側面部材、特に下面基板部材に設けることもできる。
【0037】
第一の観点の本発明の粒子操作装置は、主流方向に対し交わる方向又は平行に往復する流動を発生させる加減圧手段を含む。かかる加減圧手段は、例えばアクチュエーターや圧電素子などの振動手段を用いてもよいし、ポンプなどの液流又は気流発生手段を用いてもよいし、粒子を分離する流路とは別に往復する流動の発生装置を設置してもよい。流路と一体化された振動手段を用いる場合、振動手段により流路を変形させることにより、往復する流動が形成する。流路が、上面基板部材、下面基板部材、及び/又は側面部材により構成される場合には、上面基板部材、下面基板部材、及び/又は側面部材のいずれか1以上に振動手段が設けられる。上面基板部材、下面基板部材、及び/又は側面部材にかかる手段が設けられた場合、それぞれの部材のたわみなどの変形により、往復する流動が形成されてもよい。さらに好ましい態様では、側面部材に伸縮性部材を用い、さらに上面基板部材又は下面基板部材に振動手段を設けることにより、いずれかの基板部材の側面端を上下に振動させることで、往復する液流が発生する。好ましい態様では、上面基板部材の1の側面端を上下に振動させることで、又は2以上の側面端を2以上の振動手段により上下に交互に振動させることで、往復する液流を発生させることができる。2以上の振動手段が用いられる場合、振動数は同一であっても、異なってもよい。ポンプなどの液流又は気流発生手段を用いる場合、例えば片側の側面部材に、複数のポンプ接続孔を配置し、当該接続孔がポンプに接続されて、正圧と負圧を交互に与えてもよい。別の態様では両側の側面部材に、それぞれ複数のポンプ接続孔を配置し、当該接続孔がポンプに接続されて正圧を交互に付与してもよい。一方の側面部材に配置された複数のポンプ接続孔は、1のポンプに接続されていてもよいし、複数のポンプに接続されていてもよい。
【0038】
加減圧手段により発生される往復する流動は、周期的な流動であることが好ましい。このような周期的な流動における流体の変位量を示す波形が、非線対称波形を有することが好ましい。1の態様では、これらの往復する流動は、振動手段の駆動信号として、往復する波形を有する駆動信号を用いることにより発生することができる。したがって、流体の変位量を示す波形は、そのまま振動手段の駆動信号の波形に相当してもよい。往復する波形を有する駆動信号とは、電圧又は電流のどちらであってもよい。このような信号は、短時間に急峻な変化をするパルスであってもよいし、連続した変化をする連続波であってもよい。分離能の再現性を担保する観点から、このような波形は、周期的であることが好ましい。駆動信号の波形に応じて、往復する流動が生じるため、駆動信号を周期的とすると、往復する流動も周期的になる。このような周期的な波形としては、任意の波形を挙げることができ、点対称の波形、非点対称の波形、線対称の波形、又は非線対称の波形であってもよい。点対称とは、信号強度が0となる点からみて波形が対称となっていることをいう。また、線対称とは、最短繰り返し周期の半周期毎に信号が極性反転して繰り返すことをいい、線対称の場合には、時間軸に対して正の信号値と負の信号値が対称となっている。点対称でありかつ線対称である波形も存在する一方で、点対称のみの波形、又は線対称のみの波形も存在する。点対称であり、かつ線対称である波形として、例えば正弦波、矩形波、三角波が挙げられる。点対称であるが、非線対称である波形として、例えばノコギリ波が挙げられる。しかしながら、これらの例示に限定されることはなく、定義に含まれる任意の合成波を包含するものとする。粒子を移動させる観点から、往復する流動が、非線対称波形であることが好ましい。
【0039】
第一の観点の本発明において流路を流れる流体としては、液体又は気体が挙げられるが、より高い分離能を達成する観点では液体が好ましい。液体を用いる場合、分離する粒子に応じて任意の液体を選択することができる。分離する粒子が、工業材料である場合には、製造の際に用いられた溶媒をそのまま用いてもよいし、水などの安価かつ無害な溶媒によって置換して粒子操作装置に供してもよい。分離する粒子が、細胞やウイルス、抗体などの生物材料の場合、元々これらの粒子が分散していた液体を使用することが好ましく、特に細胞を用いる場合には、細胞の生存を担保する観点から、培養培地、血液、血漿、生理食塩水(PBS、TBSなど)を用いることができる。これらの液体に対しては、任意の賦形剤、例えばpH調製剤、安定剤、増粘剤、保存剤、抗生物質などを用いることができる。分離能を高める観点から、粒子のサイズ、密度、形状に応じて、適切な粘性の液体を選択することができる。流体として気体を用いる場合には、往復する流動を発生させる手段として、振動手段を用いる他に、圧力発生手段を用いることが好ましいこともある。
【0040】
以下に、第一の観点の本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。第一の観点の本発明における粒子操作装置は、例えば下記の流路構造体2、及び往復液流発生装置1、及び送液ポンプ3により実現される(
図1)。さらに粒子の分離が適切に行われていることを確認するために、粒子観測装置7,8を設置してもよい。第一の観点の本発明の粒子操作装置で用いられる周期的に往復する液流26、27の形成する方法についても以下に詳細に説明する。
【0041】
流路構造体
一の態様では、流路構造体2は、上面基板部材18と、下面基板部材20と、側面部材19により形成される(
図2A)。上面基板部材18又は下面基板部材20のいずれかに導入口22と、排出口23を設け、導入口22から排出口23への方向を流路方向又は主流方向と呼ぶ(
図2)。上面基板部材18又は下面基板部材20の任意の場所に粒子取得口25を配置することができる(
図2)。上面基板部材18の非流路面に、振動部材接着点21を配置する(
図2B)。振動部材接着点21は、複数設けられてもよく、好ましくは2つである。好ましくは2つの振動部材接着点21を結ぶ直線は、主流方向に対し交わっていればよく、好ましくは垂直になるように2つの振動部材接着点21が配置される。さらに好ましくは、2つの振動部材接着点21は、上面基板部材18の重心を挟んで均等な位置に配置される。側面部材19としては、流路を形成できれば任意の部材であってよいが、好ましくは伸縮性のある部材を用いることができる。側面部材19は、流路24となる部分をくりぬいたゴムシートであってもよいし、下面基板部材の面上に設けたゴムパッキンであってもよい。下面基板部材20上に側面部材19を載せ、さらに上面基板部材18を載せることにより、これらの部材に挟まれた領域に、第一の観点の本発明の流路24が形成される。
【0042】
振動流形成装置
往復液流発生装置1は、前記流路構造体2を保持する機構を備えた基板ホルダー11、及び振動部材9L、9Rを具備してよい(
図1)。振動部材9L、9Rは、振動部材駆動信号出力13L,13Rを介して、振動部材9L、9Rを駆動する振動部材駆動電源12L、12Rに接続され得る。かかる振動部材駆動電源12L、12Rは、波形出力16L、16Rを介してさらに波形発生装置15に接続されてよい。振動部材は1つであってもよいが、複数の振動部材を配置することもできる。例えば2の振動部材を用いる場合、その振動の波形は、同期していてもよいし、同期していなくてもよい。時間軸に対して線対称の波形を用いることもできる(
図3)。
また、往復液流発生装置1のうち振動部材9L、9Rは、当該振動部材で振動されるダイヤフラム流路30が粒子分離流路31の導入口、排出口に接続され、粒子分離流路31
内で往復液流を生成できれば、粒子分離流路31と別に配置してもよい(
図12)。さらに振動部材を粒子分離流路31とは別に配置する場合、一つの振動部材9Lのみを配置してもよい(
図13)。なお
図12および13に示す往復液流発生装置1において、ダイヤフラム流路30に設置された導入/排出口47、および粒子分離流路31に接続された導入/排出口48には、往復液流の形成を阻害しないように流れの方向を制限するチェックバルブ、または振動部材9Lに同期した電動バルブを設置することが好ましい。
【0043】
粒子観測装置
前記流路構造体中央部を観測可能なズームレンズ8、カメラ7から構成される粒子観測装置を振動流形成装置に設置することができる(
図1)。これにより、粒子の動きをモニターすることができ、適切な振動数、流速などを設定することができる。
【0044】
往復する液流の形成方法
往復する液流26、27は、振動部材9L、9Rが、上面基板部材を押し上げと押し下げを行うことにより生じる(
図3A)。
なお、粒子分離流路31内に振動流が形成されるように接続されていれば、
図12及び13に示すように、振動部材9L、9R及び上面基板部分を押し上げと押し下げを行うダイヤフラム流路30が粒子分離流路31から分離されている状態でもよい。
【0045】
振動部材の駆動方法
往復する液流の形成法としては、振動部材9L、9Rとして圧電素子を用い、振動部材駆動電源12L、12Rとしてピエゾドライバーを用いることができる。振動部材9Lに振動部材駆動電源12Lの出力駆動部材駆動信号出力13L、振動部材9Rに振動部材駆動電源13Rの出力駆動部材駆動信号出力8Rを接続する。また振動部材駆動電源12L、12Rの入力振動部材駆動元信号入力14L、14Rには波形信号生成器15の波形出力16L,16Rを接続する(
図1)。
往復する液流の形成においては波形信号生成器15の波形出力16L,16Rの波形は180度位相をずらすか、あるいは信号を反転することによりピエゾ素子の伸張、収縮を交互に駆動することができ、それにより往復する液流を形成してよい(
図3)。
この波形信号生成器15の波形出力16Lは振動部材駆動電源12Lの振動部材駆動元信号入力14Lへ、波形信号生成器15の波形出力16Rは振動部材駆動電源12Rの振動部材駆動元信号入力14Rへ接続する。波形信号生成器15の出力波形は任意に生成でき、例えば、点対称若しくは非点対称及び/又は線対称若しくは非線対称の波形であってもよい。代表的には正弦波、三角波、方形波、台形波、ノコギリ波である。波形信号生成器の出力波形が、流路内の往復する液流の波形となる。より高い分離能を得る観点から、非線対称波形であるノコギリ波が好ましい。
【0046】
粒子の導入・排出方法
流路構造体2の内、上面基板部材18又は下面基板部材20に直径1mm貫通穴を形成することで、導入口22及び/又は排出口23を設置する(
図2B)。この貫通穴に外形1mmハトメを接着剤で固定化し、このハトメと送液ポンプ3を送液チューブ5で連結し、粒子28の導入・排出を行う(
図1)。主流方向に交わる方向に移動した粒子28の採取を行う場合は、排出口に加えて、さらに粒子取得口25である貫通穴を、下面基板部材20又は上面基板部材18に追加するのが望ましい(
図2B、
図5)。
【0047】
粒子の観察方法
振動流による粒子の移動状況の観察及び測定は
図1のカメラ5及びズームレンズ6により実施してよい。カメラ5は粒子の振動まで観察する場合は高速カメラ(朋栄製 VFC−1000)、低速にて観測する場合はソニー製CCDカメラ(XCD−V50)を状況により切り換えて使用するのが望ましい。粒子を観測するためには、上面基板部材18は透明な部材、例えばガラスやポリカーボネートでできていることが好ましい。
【0048】
粒子の移動速度の算出法
カメラ5の高速カメラでの観察ビデオの1フレームの画像それぞれに対し2値化処理を施し、封入した粒子を検出する。検出した粒子の重心に対し位置を計測(
図6)するソフトウェアをLabVIEW(商品名)にて作製した。これらの情報を時間的な変化としてデータ化することで粒子の移動軌跡を計測する。
【0049】
上述のとおり、第二の観点において、本発明は以下の粒子操作装置を提供する:
粒子を含む流体の流路と、往復する流動を発生させる1または複数の加減圧手段とを備えた、粒子操作装置であって、
前記加減圧手段が、前記流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向又は平行に往復する流動を発生させる手段であり、
前記往復する流動における流体の変位量を示す波形が非線対称波形を有し、
かつ前記流路に1又は複数の凹凸部を設けた、前記粒子操作装置。
【0050】
第二の観点の本発明の粒子操作装置を用いた、流体中に含まれる粒子の分級操作の一態様として、粒子を含む流体の流路の排出口側を閉じ、さらに好ましくは導入口側も閉じて、粒子を含む流体を流路に留めた後、前記流路に対して交わる方向又は平行に往復する流動を発生させることで、バッチ単位で粒子を移動/分級させる操作がある。粒子を含む流体の流路が複数の排出口を設けている場合、前述したバッチ単位の操作後、排出口を開けることで、各排出口から径の異なる(分級された)粒子を回収することができる。本発明の粒子操作装置を用いた、流体中に含まれる粒子の分級操作の別の態様として、粒子を含む流体を流路の導入口側から連続的に導入し、前記流路に対して交わる方向又は平行に往復する流動を連続的に発生させることで、流体中に含まれる粒子を連続的に分級することができる。連続的な分級を可能とすることで、バッチ単位で操作する場合と比較し、粒子操作装置の装置構成を小さくすることができる。
【0051】
粒子の排出口は流体の排出口と共通の排出口としてもよいし、異なる排出口としてもよい。粒子の排出口を流体の排出口と異なる排出口として設ける場合、流体中に含まれる粒子の流路の流れを乱さないようにする観点から、流体排出口の径に対し1/2以下の径とするとよく、1/5以下の径とするとより好ましく、1/10以下の径とするとさらに好ましい。粒子を含む流体の流路が面状の場合、当該流路の流れの乱れを軽減する観点から、複数の流体導入口と複数の流体排出口を設けるとよい。
【0052】
第二の観点の本発明の粒子操作装置に備える、粒子を含む流体の流路の形状に制限はなく、管状であってもよいし、面状であってもよい。ただし第二の観点の本発明の粒子操作装置が、流体中に含まれる粒子を連続的に分級する装置の場合、面状の流路とし、粒子の排出口を複数設けると好ましい。面状の流路の一例として、上部基板部材と下部基板部材と側面部材との間に形成された流路があげられる。面状に形成された流路は、往復する流動による分離能を高めるため、往復する流動を分岐させる形状や、ある範囲の固有の移動度で移動した(分級された)粒子を集めるような形状としてもよい。上部基板部材および下部基板部材は、剛性の平板であれば任意のものを使用することができるが、粒子を観察する観点から、ガラス板、ポリカーボネート板等の透明な材料で作製すると好ましい。上部基板部材と下部基板部材は、任意の形状であってよいが、同一形状(例えば、互いに同じ四角形)とすると好ましい。側面部材は、剛性の部材であってもよいし、柔軟性または伸縮性の部材であってもよいが、柔軟性または伸縮性の部材を側面部材として用いると、上部基板部材および下部基板部材を上下方向に振動させることで往復する流動を発生できる点で好ましい。柔軟性または伸縮性の部材の一例として、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、PDMS、エラストマー樹脂、高分子ゲル、ウレタン樹脂が例示できる。側面部材は、上部基板部材と下部基板部材により挟まれることで、流路を形成する。したがって側面部材は、流路からの流体の漏出を軽減する観点から、板状の部材の中央部を、適切な形にくり抜くことで作製すると好ましい。
【0053】
第二の観点の本発明の粒子操作装置に備える、粒子を含む流体の流路の長さは、必要とされる粒子の分離能や、分離しようとする粒子の性質および/または流路を流れる流体の性質ならびに流速に応じて、適宜選択すればよい。例えば、粒径200μm程度の粒子を高分離能で分級する場合、長さは5cm以上とするとよく、10cm以上としてもよい。工業スケールで分級を行なう場合は、30cm以上の長さとしてもよい。上部基板部材および下部基板部材の剛性を維持する観点からは、長さを10cm以下とするとよく、5cm以下とするとより好ましい。粒子操作装置の小型化や、分離時間の短縮を目的とする場合は、長さ1cm以下としてもよい。
【0054】
第二の観点の本発明の粒子操作装置に備える、粒子を含む流体の流路の導入口は、前記流体を導入できれば特に限定はなく、導入口の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。また流路の導入口は、送液チューブを介して送液ポンプに繋がれていてもよい。粒子を含む流体の流路が面状に形成されている場合、前記流路の流れの乱れを低減する観点から、導入口を複数設けると好ましい。導入口を複数設ける場合、全ての導入口から分離すべき粒子を含む流体を導入してもよいが、前記流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向に往復する流動により前記粒子を移動/分級する観点から、粒子を含む流体を導入する導入口は複数あるうちの一部とすると好ましく、さらに1箇所に限定すると好ましい。なお粒子を含む流体を導入する導入口以外の導入口には、溶媒のみを導入すればよい。粒子を含む流体の流路を面状に形成する場合、導入口は、上部基板部材、下部基板部材、側面部材のいずれか1部材以上に形成すればよく、例えば、上部基板部材に導入口を設ける態様が例示できる。
【0055】
第二の観点の本発明の粒子操作装置に備える、粒子を含む流体の排出口は、前記流体を排出することができれば特に限定はなく、排出口の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。また流体の排出口は、排液チューブを介して、排液タンクまたは吸引ポンプに繋がれていてもよいし、粒子の排出口と併用する場合は、粒子取得チューブを介して、または直接排出口から、粒子を含む流体を回収してもよい。粒子を含む流体の流路が面状に形成されている場合、前記流路の流れの乱れを低減する観点から、排出口も導入口と同様、複数設けると好ましい。排出口の設置数は導入口と同数としてもよいし、異なる数としてもよい。粒子を含む流体の流路を面状に形成する場合、排出口は、上部基板部材、下部基板部材、側面部材のいずれか1部材以上に形成すればよく、例えば、下部基板部材に排出口を設ける態様が例示できる(
図26)。
【0056】
第二の観点の本発明の粒子操作装置に備える、粒子を含む流体の流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向又は平行に往復する流動を発生させることで、前記粒子を移動させる加減圧手段の一例として、アクチュエーターや圧電素子等の振動手段や、ポンプ等の液流発生手段を用いて往復する流動を発生させて、前記粒子を移動させる手段があげられる。粒子を含む流体の流路が上部基板部材、下部基板部材および側面部材で構成され、かつ振動手段を用いて往復する流動を発生させる場合、前述した部材のいずれか1以上の部材に振動手段を設け、当該振動手段で各部材を変形させることで往復する流動を発生させればよい。特に側面部材が柔軟性または伸縮性の部材である場合は、上部基板部材または下部基板部材に振動手段を設け、当該振動手段を設けた部材の側面端を上下に振動させることで、往復する流動を発生させればよい。好ましい態様では、上部基板部材の1の側面端を上下に振動させることで、または2以上の側面端を2以上の振動手段で上下に交互に振動させることで、往復する流動を発生させることができる。複数の振動手段を設ける場合、振動数は同一であっても、異なってもよい。ポンプ等の液流または気流発生手段を用いて往復する流動を発生させる場合、例えば、一方の側面部材に複数のポンプ接続孔を配置し、当該接続孔がポンプに接続された状態で正圧と負圧を交互に与えることで流動を発生させばよい。また両側の側面部材に、それぞれ複数のポンプ接続孔を配置し、当該接続孔がポンプに接続された状態で正圧を交互に与えることで流動を発生させてもよい。一方の側面部材に配置された複数のポンプ接続孔は、1つのポンプに接続されていてもよいし、複数のポンプに接続されていてもよい。なお前記加減圧手段により発生させる往復する流動の方向は、粒子を含む流体の流路における前記流体の導入方向に対し交わる方向としても平行方向としてもよいが、前記流体の導入方向に対し交わる方向とする場合は垂直とすると好ましい。
【0057】
前述した方法により形成された往復する流動は、周期的な流動であると好ましい。振動手段で流動を発生させる際は、往復する波形を有する駆動信号を振動手段の駆動信号として用いることで発生させることができる。したがって、流体の変位量を示す波形は、そのまま振動手段の駆動信号の波形に相当するといえる。往復する波形を有する駆動信号とは、電圧、電流のいずれかであってもよい。前記駆動信号は、短時間に急峻な変化をするパルスであってもよいし、連続した変化をする連続波であってもよい。分離能の再現性を担保する観点から、このような波形は、周期的であることが好ましい。駆動信号の波形に応じて、往復する流動が発生するため、駆動信号を周期的とすると、往復する流動も周期的になる。第二の観点の本発明の粒子操作装置では、往復する流動の波形をノコギリ型波等の非線対称の波形を有した波形としており、当該波形とすることで流動の進行方向の切替わり前後での速度が異なるため、流体中に含まれる粒子を効率的に移動させることができる。ここで線対称とは、最短繰り返し周期の半周期毎に信号が極性反転して繰り返すことをいい、線対称の場合は時間軸に対して正の信号値と負の信号値が対称となっている。なお本発明の粒子操作装置で用いる往復する流動の波形は、非線対称の波形を有していればよく、その他(正弦波、三角波、矩形波等)の波との合成波であってもよい。
【0058】
第二の観点の本発明の粒子操作装置で導入する流体としては、液体または気体があげられるが、より高い分離能を達成できる点では液体が好ましい。液体を用いる場合、分離する粒子に応じて適宜選択することができる。分離する粒子が工業材料の場合、製造時に用いた溶媒をそのまま導入液体として用いてもよいし、水等の安価かつ無害な溶媒で置換した液体を用いてもよい。分離する粒子が、細胞、ウイルス、抗体等の生物材料の場合、当該生物材料が分散していた溶媒を用いると好ましく、特に細胞を用いる場合には、細胞の生存を担保する観点から、培養培地、血液、血漿、生理食塩水(PBS(Phosphate Buffered Saline)、TBS(Tris Buffered Saline)等)を溶媒として用いるとよい。これらの液体に対しては、任意の賦形剤、例えばpH調製剤、安定剤、増粘剤、保存剤、抗生物質等をさらに含んでもよい。分離能を高める観点から、粒子のサイズ、密度、形状に応じて、適切な粘性の液体を選択してもよい。
【0059】
第二の観点の本発明の粒子操作装置は、粒子を含む流体の流路に1又は複数の凹凸部を設けていることを特徴としている。本発明において、凹凸部は、凸部のみで構成されていてもよいし、凹部のみで構成されていてもよく、また凹部と凸部の組合せにより構成されてもよい。凹凸部の形状に特に限定はなく、例えば、円錐形、円柱形、角錐形、角柱形があげられる。さらに凹凸部は、一の方向に直線状又は曲線状に延在していてもよい。凹凸部が延在する場合、その断面は、任意の形状であってよく、例えば点対称、非点対称、線対称、又は非線対称の形状であってもよい。中でも、粒子を含む流体の流路に設ける凹凸部としては、直線状に延在し、その断面が非線対称である凹凸部が好ましく、ノコギリ形状のような非線対称で直線状に延在する凹凸部を採用すると、流体中に含まれる粒子が効率的に一方向へ移動できる点でさらに好ましい。なお凹凸を設ける位置に特に限定はなく、流体の導入方向に対し、平行方向に設けてもよいし、交差する方向、例えば垂直方向に設けてもよいが、前記加減圧手段が前記流路における前記流体の導入方向に対し交差する方向に往復する流動を発生させる手段である場合は、前記流路における流体の導入方向に対して平行方向に設けると好ましく、前記加減圧手段が前記流路における前記流体の導入方向に対し平行方向に往復する流動を発生させる手段である場合は、前記流路における流体の導入方向に対して交差する方向に設けると好ましい。
【0060】
以下、図面を用いて第二の観点の本発明の粒子操作装置を詳細に説明する。
本発明の粒子操作装置の一例を
図16に示す。
図16に示す粒子操作装置2100は、粒子を含む液体を導入する流路構造体210と、振動流発生装置(加減圧手段)220と、流路構造体210に導入した粒子の移動を観察するための粒子観測装置230とを備えている。
流路構造体210は、下から下部基板部材211、側面部材213、上部基板部材212の順に重ね合わせることで形成した(
図16)。下部基板部材211は厚み0.9mm10cm角のPC(ポリカーボネート)基板であり、そのうち50mm×90mmの領域に、幅200μm、高さ5μmのノコギリ波状の断面を有する直線状に延在する凹凸部11aを複数設けた(
図17)。上部基板部材212は厚み1mm10cm角のガラス基板であり、当該基板上の中央線上かつ端面から1cmの部位に導入口、排出口としてφ1cmの貫通穴212aを2つ(導入口212aa・排出口212ab)形成させた(
図18)。なお貫通穴212aには、PTFEチューブとの接続のため、金属製の電気ハトメを接着剤で固定している。前記電気ハトメおよび前記PTFEチューブとシリンジポンプとを連結させることで粒子を含む液体の導入および排出を行なう。粒子の移動状況の観察時には排出口212abは1つで十分であるが、粒子を含む液体の導入方向から垂直方向に移動した粒子の採取を行なう場合は排出口212abを追加した方が好ましい(
図26)。側面部材13は、厚み1.5mm、10cm角のシリコンゴムシートであり、そのうち50mm×90mmの領域(直線状に延在する凹凸部211aを設けた領域と一致)をくり抜き、開口部213aを設けることで、面状の流路を形成させた(
図19)。なお直線状に延在する凹凸部211aは、粒子を含む液体の流路における前記液体の導入方向(すなわち、導入口212aaから排出口212abへの方向)に対して平行方向に形成されている。また前述した流路構造体210は数十μmから数百μmの粒子を分級するのに好ましい構造体である。
【0061】
振動流発生装置220は、流路構造体210を保持する基板ホルダー(不図示)と、流路構造体10の厚さ方向に変位可能な圧電素子221(翔栄システム製)と、圧電素子221を変異させて振動流(往復する流動)を発生させるためのピエゾドライバー222(翔栄システム製、SSL−140−1CH)および駆動信号発生器223(NF回路ブロック製WF1646B)とを設けている。圧電素子221は、流路構造体210に設けた直線状の凹凸部211aに対して上方かつ流路構造体210基板端より1cmの位置240に接触する形で2箇所設けており、流路構造体210の厚さ方向に100μm変位可能である。具体的には、圧電素子221aとピエゾドライバー222aの出力とを、圧電素子221bとピエゾドライバー222bの出力とを、それぞれ接続し、ピエゾドライバー222a・222bの入力と駆動信号発生器223の出力とを接続することで流路構造体210に収容した液体に対し振動流を形成させる。振動流の形成は、駆動信号発生器223のピエゾドライバー222aへの出力波形の位相とピエゾドライバー222bの出力波形の位相とを180度ずらして、または前記信号を反転させて、圧電素子221の伸張、収縮を交互に駆動させることで、粒子を含む液体の流路における前記液体の導入方向(すなわち、導入口212aaから排出口212abへの方向)に対して垂直方向に振動流を形成した(
図20)。駆動信号発生器223のピエゾドライバー222への出力波形は任意に生成でき、その一例として正弦波、三角波、方形波、ノコギリ波がある。
【0062】
粒子観測装置230は、流路構造体210のうち少なくとも直線状に延在する凹凸部211aを設けた領域を観察可能なズームレンズ231(モリテックス製)およびカメラ232(SONY製CCDカメラXCD−V50、または朋栄製高速カメラVFC−1000)を、流路構造体210の基板中央部に、微動機構(不図示)を付与して備えている。なおカメラ232は、状況に応じて、粒子の振動まで観察する場合は高速カメラに、低速で観測する場合はCCDカメラに、それぞれ切り換えて使用すると好ましい。なおカメラ232(高速カメラ)での観察ビデオの1フレームの画像それぞれに対し2値化処理を施すことで、流路構造体210へ導入した粒子を検出後、当該検出した粒子の重心における位置を計測し、当該位置情報を時間的な変化としてデータ化することで、粒子の移動軌跡を計測できる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
【0064】
1.流路構造体の製造
上面基板部材として10cm×10cm、厚さ1.1mmの青板ガラスに粒子導入口/排出口22/23として直径1mmの貫通孔を2つ加工した。その位置は、
図4Bの側面部材の上面図において符号22/23で表した位置である。また、下面基板部材としては、貫通孔がない点を除き上面基板部材と同じものを使用した。10cm×10cm、厚さ1mmのシリコーンゴムシートを
図4Bに示すように、直径32mmの円形部と、幅5mm長さ42mmの流路を形成するように切り抜き、これを上面基板部材と下面基板部材との間に配置して側面部材とした。上面基板部材及び下面基板部材とシリコーンゴムシートは、シリコーンゴムシートの粘着力で接合して液漏れが最小限となるように構成した。上面基板部材上において、シリコーンゴムシートの円形くり抜き部の中心の位置を、振動部材9L及び9Rの配置位置とした。試料導入/排出ポートは液体を導入・排出できるように可撓性チューブを接続できるように上蓋基板部材の貫通孔にハトメを接着剤で固定しチューブを接続できるようにして、流路構造体を製造した。
【0065】
2.往復液流発生装置
前記流路構造体2を保持する機構を備えた基板ホルダー11及び前記流路構造体2の振動部材配置位置に対して、基板端より1cmの位置に基板厚み方向に100μm変位可能な圧電素子(翔栄システム製)を、振動部材9L,9Rとして配置した。2つの圧電素子に対し、振動流形成させるため振動部材駆動電源としてピエゾドライバーSSL−140−1CH(翔栄システム製)を2台設置した。また波形信号生成器15としてWF1646B(NF回路ブロック製)を接続した(
図1)。
【0066】
3.粒子観測装置
前記微小流路構造体中央部を観測可能なズームレンズ(モリテックス製)、CCDカメラ(SONY製 XCD−V50)または高速カメラ(朋栄製 VFC−1000)を基板中央部に微動機構を付与して設置した(
図1)。
【0067】
実施例1:エタノール中での粒径200μmの粒子の移動
上記の粒子観測装置を備えた往復液流発生装置に対し、流路構造体をセットし、流路構造体中に粒子を含む液体を導入した。導入した粒子は、粒径約200μmの東ソー製トヨパールゲルであり、99.5%エタノール(密度:0.7892g/cm
3)に置換・分散させて用いた。また、粒子を導入した後に試料導入/排出ポートはポートに接着剤で固定化したハトメを封止して試料を密閉してバッチ処理に供した。
【0068】
2つの圧電素子の駆動波形としては
図3Bのように9Lと9Rの伸縮が反転するように駆動波形を設定した。この時の円形部分の圧縮/伸長による流動の変化を考えやすいように
図3Cに示す。ここでは波形の一周期を360°と表現し、
図3C上で線対称な振動として三角波の頂点を0°と表現する。この状態から三角波の頂点を最大±180°変化させ粒子の移動を観測した。また、この時の駆動波形の周波数は5Hz、圧電素子の最大駆動電圧を2V(5Vmaxで100μm変動)圧電素子の伸長40μmに設定した。圧電素子の振動による粒子の移動軌跡は
図6に示すように画像解析による粒子位置の自動計測により測定した。
【0069】
このような状態にて
図3Cに示すように圧電素子を駆動させたところ、往復信号波形が時間軸に対し線対称、つまり三角波の頂点が0°(つまり
図3Cの0°の三角波)の場合は、200μm粒子は振動するが一方向への移動は観測できなかった。その一方で、時間軸に対し線対称(つまり三角波の頂点が0°)以外の場合、すなわち60°〜150°の非線対称波形の場合、往復する流体の変位量も、非線対称波形となる。このときの粒子の位置を測定したところ、
図7Aに示すように右方向に移動することを確認した。
【0070】
また、−60°〜−150°とすると
図7Bに示すように粒子の移動が左側に移動することを確認し、それぞれの三角波からの頂点のずれが大きい程、粒子の移動量が大きいことも確認した。また、三角波の頂点が±180°とすることで移動方向が逆転し、且つ移動量が飛躍的に向上することが確認された(
図8)。
【0071】
実施例2:フィコール中での粒径200μmの粒子の移動
粒子を分散する溶媒として、フィコール(密度1.077g/cm
3)を用いた点と駆動波形を変更した点を除き、実施例1と同様に実験を行なった。圧電素子の駆動波形として三角波の頂点から+150°、−150°変化させた波形を用いた。この時の駆動波形の周波数は5Hz、圧電素子の最大駆動電圧を2V(5Vmaxで100μm変動)圧電素子の伸長40μmに設定し、圧電素子の振動による粒子の移動軌跡は
図6に示すように画像解析による粒子位置の自動計測により測定した。
【0072】
その結果、
図8に示すように移動方向の正負は変化しないがエタノールでの移動速度に比べ大幅に減少した。また、溶液中に気泡(0.0012g/cm
3)を混入したところ200μm粒子とは真逆に移動することを確認した。
【0073】
実施例3:連続フロー系でのポリスチレンビーズ20μmの粒子の移動
上で使用した流路構造体において、幅10mmの直線状の流路部分に、1の粒子導入口と、その反対側に5の粒子取得口とを形成するように、シリコーンゴムシートを切り抜き、さらに上面基板に貫通孔を開けた(
図5)。貫通孔にハトメを接着剤で固定しチューブを接続できるようにした。あらかじめ、流路内を水で満たし、排出口の1,3,5に取り付けたシリコーンチューブの反対側の出口を採取容器に設置し、排出口2,4に取り付けたシリコーンチューブの先端は閉止した。粒子導入口から粒子を含む液を導入しながら、写真の2つの圧電素子の駆動波形としては2つの圧電素子の伸縮が反転するように駆動波形を設定した。圧電素子の駆動波形形状としては
図3C180°の場合のようにこぎり波状の波形を与えた。この時の駆動波形の周波数は5Hz、圧電素子の最大駆動電圧を2V(5Vmaxで100μm変動)圧電素子の伸長40μmに設定した。
【0074】
粒子試料としては粒径20μmのポリマー標準粒子(Duke Standards CatNo.4220A)、及び、粒径1.0μmの蛍光粒子(Fluoro−Max(TM) Cat No.G0100)の2種を純水に分散させ、2つの円形部分を連通させる流路に連通する導入ポートにシリンジポンプから100μL/minで導入した。
【0075】
このような状態を安定して動作させている最中に、排出口1,3,5から排出した液を一定時間分取した。分取したポート1,3,5からの液量はそれぞれ、0.65g、0.74g、0.60gであった。その後、採取した液を、均一に撹拌しながら50μL分取して顕微鏡で観察した。20μm粒子の含有数を数えたところ、ポート1,3,5からそれぞれ、9個、57個、43個となりポート3、5から多く分取することができた。また、1μmの粒子はどのポートからも多数検出された。このように、分離したい粒子を複数形成した排出ポートから効率的に分取することが可能であることを確認した。
【0076】
実施例4:癌細胞と血球の分離
使用した流路は
図10に示すように上面基板部材として10cm角、厚さ1.1mmの青板ガラスに試料導入/排出ポートとして直径1mm貫通孔を2つ加工した。また、下面基板部材としては貫通孔がないものを使用し、これら上面基板部材と下面基板部材の中間に厚さ1mmのシリコンゴムシートを
図2のように直径32mmφの圧電素子で圧迫されて液流を発生する2つの円形部分を作成した。この円形部分は前記上基板の貫通孔と連通するように切り抜いてある。また、2つの円形部分を連通させるように幅5mmの直線状の流路を形成した。このように作成した上面基板部材基板とシリコンゴムシート、下面基板部材には櫛模様のパターニングを施し、シリコンゴムシートの粘着力で接合して液漏れが最小限となる構造体とした。試料導入/排出ポートは液体を導入・排出できるように可撓性チューブを接続できるように上面基板部材基板の貫通孔にハトメを接着剤で固定しチューブを接続できるようにした。注射針で圧電素子圧迫部の円形部分と円形部分を連通する流路の中央に粒子導入口29を作成し、血球と癌細胞の希釈液を導入した。
【0077】
あらかじめマンニトール液を導入/排出口22/23から充填後、マンニトールで1%に希釈した全血に癌細胞(SKBR)を加えた溶液を粒子導入口29から導入し、全ての導入/排出口22/23を接着テープで密閉した。上記の構造体を
図1に示すように圧電素子2L、2Rの伸縮部分3の中心が
図10の圧電素子接触点(円形の中心付近)に合せた。
図1の2つの圧電素子の駆動波形としては
図3Bのように2Lと2Rの伸縮が反転するように駆動波形を設定した。この時の円形部分の圧縮/伸長による流動の変化を考えやすいように
図3Cに示す。ここでは波形の一周期を360度と表現し
図3C上で対称な振動として三角波頂点を0°と表現する。この状態から三角波頂点を+180°とし血球及びがん細胞の移動状況を観測した。また、この時の駆動波形の周波数は1Hz、圧電素子の最大駆動電圧を3V(5Vmaxで100μm変動)圧電素子の伸長60μmに設定した。粒子の移動については高速カメラでの観察が困難であったため、120秒駆動した後静止させそれぞれの粒子の移動状況を観測した。その結果、
図11に示すように直線状流路中央より左側に全体粒子は移動し、特に癌細胞(SKBR)が最も左側に移動することがわかった。
【0078】
実施例5:バッチ単位で粒子を操作する装置
バッチ単位で粒子の分級/測定が可能な本発明の粒子操作装置の一態様を
図14(原理図)及び15(構成の一態様)に示す。導入口32と排出口34を連通する粒子分離流路35において、サンプル導入口33から一定量の流体(サンプル)を導入した後に閉止すると同時に、振動流形成装置38により、導入口32から排出口34への流れ方向(主流方向)と平行に振動流36を形成することで、サンプル導入口33から導入したサンプルに含まれる粒子は、排出口34に向かって粒子径に基づき分離される。この際、排出口34側にUV検出器等の光学検出装置44を接続すると、分離ピーク45の検出が可能となり、クロマトグラフィーと同様な粒径分布の測定が可能となる。なお光学検出装置44として光散乱検出器を用いると、粒径測定も可能となる。
【0079】
実施例6
(1)以下に示す、本発明の粒子操作装置2100を作製した。
(1−1)下部基板部材211
厚み0.9mm10cm角のPC(ポリカーボネート)基板であり、そのうち50mm×90mmの領域に幅200μm、高さ20μmのノコギリ波状の断面を有し直線状に延在する凹凸部211aを設けた(
図17)。
(1−2)上部基板部材212
図16に示す本発明の粒子操作装置2100と同じである。
(1−3)側面部材213
厚み1.5mm、10cm角のシリコンゴムシートであり、そのうち70mm×90mmの六角形領域をくり抜き、開口部213aを設けることで、面状の流路を形成させた(
図21)。
(1−4)振動流発生装置220
駆動信号発生器223のピエゾドライバー222aへの出力信号とピエゾドライバー222bへの出力信号とを反転させ、圧電素子221の伸張/収縮を交互に駆動させることで、粒子を含む液体の流路における前記液体の導入方向(すなわち、導入口212aaから排出口212abへの方向)に対して垂直方向に振動流を発生させた他は、
図16に示す本発明の粒子操作装置2100と同じである。
(1−5)粒子観測装置230
図16に示す本発明の粒子操作装置2100と同じである。
(2)(1)で作製した本発明の粒子操作装置2100の導入口212aaから、φ200μmのトヨパール(東ソー製)粒子を含む99.5%エタノール溶液を、PTFEチューブを介して、シリンジを用いて開口部213aに溶液が満たされるまで導入した。
(3)駆動信号発生器223から、
図22のパターン(a)およびパターン(b)に示すノコギリ波を出力し、トヨパール粒子を移動させた。
結果、パターン(a)のノコギリ波を出力したときは粒子は左方向に、パターン(b)のノコギリ波を出力したときは粒子は右方向に、それぞれ移動した。
【0080】
実施例7
(1)下部基板部材211に設けるノコギリ波状の直線状に延在する凹凸部211aを幅200μm、高さ5μmとした他は、実施例6(1)で作製した粒子操作装置2100と同様の装置を作製した。
(2)粒子を含む溶液として、φ200μmおよびφ80μmのトヨパール(東ソー製)粒子を含む99.5%エタノール溶液を用いた他は、実施例6(2)から(3)の記載と同様な方法でトヨパール粒子を移動させた。
(3)粒子観測装置230(カメラ232は朋栄製高速カメラVFC−1000使用)で得られた観察ビデオの1フレームの画像それぞれに対し2値化処理を施すことで、流路構造体210へ導入した粒子を検出後、当該検出した粒子の重心における位置を計測し、当該位置情報を時間的な変化としてデータ化することでトヨパール粒子の移動軌跡を計測した。
結果を
図23に示す。相対的に、粒子径が大きいφ200μmのトヨパール粒子の移動速度が速く、粒子径が小さいφ80μmのトヨパール粒子の移動速度が遅いことがわかる。また粒子振動幅が、ノコギリ波状に延在する凹凸部211aの間隔(200μm)を超えると、粒子の移動速度が飛躍的に速くなることがわかる。
【0081】
実施例8
(1)下部基板部材211に設けるノコギリ波状の直線状に延在する凹凸部211aを幅50μm、高さ1μmとした他は、実施例7で作製した粒子操作装置2100と同様の装置を作製した。
(2)粒子を含む溶液として、φ200μm、φ80μmおよびφ40μmのトヨパール(東ソー製)粒子を含む99.5%エタノール溶液を用いた他は、実施例7(2)及び(3)に記載と同様な方法でトヨパール粒子を移動させた。
(3)実施例7(3)の記載と同様な方法でトヨパール粒子の移動軌跡を計測した。
結果を
図24に示す。相対的に、粒子径が大きい順(φ200μm>φ80μm>φ40μm)にトヨパール粒子の移動速度が速いことがわかる。また粒子振動幅が、ノコギリ波状の直線状に延在する211aの間隔(50μm)を超えると、粒子の移動速度が飛躍的に速くなることがわかる。
図23よび
図24に示す結果から、第二の観点の本発明の粒子操作装置では、粒子を含む液体の導入方向(すなわち、導入口212aaから排出口212abへの方向)に対して垂直方向に粒子排出口を設けることで粒子の大きさ(径)による分級が可能であることが示唆される。
【0082】
比較例1
(1)実施例6で作製した粒子操作装置2100を用いて、実施例7(2)と同様な方法で、粒子を含む溶液を開口部213aが当該溶液で満たされるまで導入した。
(2)駆動信号発生器223から、
図25のパターン(a)およびパターン(b)に示す正弦波を出力し、トヨパール粒子を移動させた。
結果、いずれのパターンの正弦波を出力したときも、トヨパール粒子は振動するのみで、物理的な移動は確認できなかった。また正弦波を、三角波または矩形波に変更しても同じ結果となった。この結果から、本発明の粒子操作装置において、振動流における液体の変位量を示す波形を点対称波形のみまたは線対称波形のみとすると、粒子が移動しないことがわかる。