(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
添付の図面を参考にして、実施例によって本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態に具現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似する構成要素に対しては同一の図面符号を付した。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/又はメタアクリルを意味する。
【0021】
本明細書において、「置換の」は、別途の定義がない限り、官能基の一つ以上の水素原子がハロゲン(例えば、F、Cl、Br又はI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、イミノ基(=NH、=NR、Rは、C1〜C10のアルキル基)、アミノ基(−NH
2、−NH(R’)、−N(R’’)(R’’’)、R’、R’’、R’’’は、それぞれ独立してC1〜C10のアルキル基)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、C1〜C20のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C30のヘテロアリール基、又はC2〜C30のヘテロシクロアルキル基に置換されることを意味する。
【0022】
本明細書において、「アリール基」は、環状の置換基の全ての元素がp−軌道を有しており、これらのp−軌道が共役を形成している官能基を意味する。アリール基は、単環式、非縮合型多環式又は縮合型多環式官能基を含む。このとき、縮合は、炭素原子が隣接したペアを共有する環状を意味する。アリール基は、2以上のアリール基がシグマ結合を通じて連結された形態であるビフェニル基、ターフェニル基、又はクオーターフェニル基なども含む。アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、又はクリセニル基などを意味し得る。
【0023】
本明細書において、「ヘテロアリール基」は、アリール基内にN、O、S、P及びSiからなる群から選ばれるヘテロ原子を1個〜3個含有し、アリール基の他の原子は炭素である官能基を意味する。ヘテロアリール基は、2以上のヘテロアリール基がシグマ結合を通じて直接連結されたものも含む。ヘテロアリール基は、2以上のヘテロアリール基が互いに縮合されたものも含む。ヘテロアリール基が縮合されたものである場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1個〜3個含んでもよい。前記ヘテロアリール基は、例えば、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、又はイソキノリニル基などを意味し得る。
【0024】
より具体的に、C6〜C30のアリール基及び/又はC3〜C30のヘテロアリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のp−ターフェニル基、置換もしくは非置換のm−ターフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のフェニレニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、置換もしくは非置換のフラニル基、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のピロリル基、置換もしくは非置換のピラゾリル基、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のトリアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサゾリル基、置換もしくは非置換のチアゾリル基、置換又は非置換のオキサジアゾリル基、置換もしくは非置換のチアジアゾリル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換又は非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル基、置換もしくは非置換のインドリル基、置換もしくは非置換のキノリニル基、置換又は非置換のイソキノリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のナフチリジニル基、置換もしくは非置換のベンズオキサジニル基、置換もしくは非置換のベンズチアジニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、置換もしくは非置換のフェノチアジニル基、置換もしくは非置換のフェノキサジニル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、又は置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基、あるいはこれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0025】
本明細書において、「非シリコン系」は、シリコン(Si)を含まないことを意味する。
【0026】
本明細書において、「光硬化性モノマー」は、光硬化性官能基としてビニル基、アリール基及び/又は(メタ)アクリレート基を有するモノマーを意味する。
【0027】
本明細書において、「有機発光素子封止用組成物」は、「封止用組成物」又は「組成物」と表記される場合がある。
【0028】
本明細書において、「プラズマによる有機障壁層のエッチング率」又は「プラズマエッチング率」は、有機発光素子封止用組成物を所定の厚さで蒸着及び光硬化させることによって形成された有機障壁層の初期高さT1(単位:μm)を測定し、前記有機障壁層にICP−CVDを用いてICP(inductively coupled plasma)電力:2500W、RF(radio frequency)電力:300W、DCバイアス:200V、Arの流量:50sccm、エッチング時間:1min、圧力:10mtorrでプラズマを処理した後の有機障壁層の高さT2(単位:μm)を測定し、下記数式2によって計算された値である。このとき、前記有機障壁層の初期高さT1(単位:μm)は約1μm〜約10μmであってもよい。下記数式2によって計算された値が低いほど、有機障壁層の耐プラズマ性に優れることを意味する。
【0029】
【数1】
【0030】
以下、本発明の一実施例に係る有機発光素子封止用組成物(以下、封止用組成物という)を説明する。
【0031】
本発明の一実施例に係る封止用組成物は、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー、(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー、(D)シリコン系光硬化性単官能モノマー、及び(E)開始剤を含み、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、下記化学式1で表される:
【0032】
【化2】
【0033】
前記化学式1において、R
1、R
2、R
3、R
4、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、及びnは、後の説明と同様である。
【0034】
本発明の一実施形態による封止用組成物は、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー、化学式1で表される(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー、(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー、及び(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーを含んでもよい。よって、本実施形態の封止用組成物は、光硬化率が著しく向上し得る。また、本実施形態の封止用組成物は、硬化後の光透過率に優れ、耐プラズマ性が著しく高い有機障壁層を具現することができる。これにより、本実施形態の封止用組成物は、有機発光素子の信頼性を高めることができる。さらに、本実施形態の封止用組成物は、低い硬化後モジュラスを有する有機障壁層を具現することができ、これによりフレキシブル表示装置に適用可能である。
【0035】
具体的に、本実施形態の封止用組成物は、光硬化率が約88%以上、例えば、約88%〜約99%であってもよい。また、本実施形態の封止用組成物は、約380nm〜約700nmの波長で硬化後の光透過率が約93%以上、例えば、約93%〜約100%であってもよい。また、本実施形態の封止用組成物は、硬化後の有機障壁層のプラズマエッチング率が約10%以下、例えば、約0.1%〜約10%、約0.1%〜約9%、約0.1%〜約8%であってもよい。さらに、本実施形態の封止用組成物は、有機障壁層の硬化後のヤング率(弾性率)が6.5GPa以下、具体的に、約0.1GPa〜約6GPaであってもよい。光硬化率、およびプラズマエッチング率がこの範囲であれば、封止用組成物は有機発光素子の信頼性を著しく高めることができ、有機発光表示装置に適用可能である。モジュラスがこの範囲であれば、封止用組成物はフレキシブル有機発光表示装置に適用可能である。
【0036】
ここで、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー、前記化学式1の(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー、(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー、(D)シリコン系光硬化性単官能モノマー、及び(E)開始剤は、異なる化合物である。これらの化合物は、単独でも又は混合物として使用されてもよい。
【0037】
一実施形態において、封止用組成物は、前記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーは約10重量%〜約50重量%で含まれ、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは約20重量%〜約70重量%で含まれ、(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマーは約5重量%〜約50重量%で含まれ、(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは約1重量%〜約50重量%で含まれ、(E)開始剤は約1重量%〜約10重量%で含まれてもよい。
【0038】
(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー
(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーは、光硬化性官能基を2個以上、具体的に2〜6個有する光硬化性モノマーであってもよい。特に、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーは、非シリコン系ジ(メタ)アクリレートであってもよい。非シリコン系ジ(メタ)アクリレートは、25℃での粘度が低いので封止用組成物の粘度を低下させ、その結果、インクジェット印刷などの方法によって有機障壁層を容易に形成することができる。
【0039】
(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーは、芳香族基を含まない非芳香族系モノマーであって、置換又は非置換の長鎖のアルキレン基を含む非シリコン系ジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。この場合、封止用組成物は、蒸着などの方法で、有機発光素子又は有機発光素子を封止する無機障壁層上への有機障壁層の形成を容易にする。
【0040】
具体的に、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーは、置換又は非置換のC1〜C30のアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレート、より具体的には、(メタ)アクリレート基の間に非置換のC1〜C15のアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。このとき、アルキレン基の炭素数は、ジ(メタ)アクリレート基にある炭素を除いたアルキレン基自体にある炭素数のみを意味する。
【0041】
一実施形態において、非シリコン系ジ(メタ)アクリレートは下記化学式2で表される:
【0042】
【化3】
【0043】
前記化学式2において、R
3、R
4は、それぞれ独立して水素又はメチル基であり、
R
5は、置換又は非置換のC1〜C30のアルキレン基である。
【0044】
本発明の封止用組成物は、化学式2で表される非シリコン系光硬化性多官能モノマーを含むことによって光硬化率を高めることができ、粘度が低いので蒸着がさらに容易になり得る。例えば、化学式2において、R
5は、非置換のC4〜C30のアルキレン基、好ましくは非置換のC6〜C20のアルキレン基、より好ましくは非置換のC6〜C12のアルキレン基であってもよい。より具体的に、非シリコン系ジ(メタ)アクリレートは、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、及びドデカンジオールジ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0045】
(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーは、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして、約10重量%〜約50重量%、例えば、約10重量%〜約30重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、又は約30重量%の量で含まれてもよい。この範囲であれば、封止用組成物は、高い光硬化率および光透過率、ならびに低いプラズマエッチング率を有する有機障壁層を具現することができる。
【0046】
(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー
(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、シリコン原子に連結された少なくとも一つの置換又は非置換のC6〜C30のアリール基を含む。これにより、封止用組成物は、プラズマに対する耐性が著しく高くなって低いプラズマエッチング率を有する有機障壁層を具現することができる。
【0047】
(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、シリコン系ジ(メタ)アクリレートであって、下記化学式1で表される:
【0048】
【化4】
【0049】
前記化学式1において、
R
1およびR
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C20のアルキレン基、*−N(R’)−(R’’)−*(*は、元素の連結部位、R’は、水素、又は置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、R’’は、置換又は非置換のC1〜C20のアルキレン基)、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリーレン基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキレン基、又は*−(R’)−O−**(*は、化学式1中のOに対する連結部位、**は、化学式1中のSiに対する連結部位、R’は、置換又は非置換のC1〜C30のアルキレン基)であり、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6は、それぞれ独立して、水素、水酸基、ハロゲン、シアノ基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、*−N(R’)(R’’)(*は元素の連結部位、R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素又は置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基)、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、又は置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5及びX
6のうちの少なくとも一つは、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、又は置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素又はメチル基であり、
nは0〜30の整数であるか、0〜30の平均値を有する。ここで「単結合」は、化学式1でのSiとOとの間の直接結合(Si−O)を意味する。
【0050】
具体的に、化学式1において、R
1およびR
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは非置換のC1〜C20のアルキレン基、又は*−(R’)−O−**(*は、化学式1中のOに対する連結部位、**は、化学式1中のSiに対する連結部位、R’は、置換又は非置換のC1〜C30のアルキレン基)であってもよい。
【0051】
具体的に、化学式1において、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基、又は置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基であり、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5及びX
6のうちの少なくとも一つは、置換又は非置換のC6〜C30のアリール基であってもよい。
【0052】
より具体的に、化学式1において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、単結合、又は置換もしくは非置換のC1〜C20のアルキレン基であってもよい。この場合、封止用組成物はプラズマエッチング率をさらに低下させることができる。
【0053】
さらに具体的に、化学式1において、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキル基、又は置換もしくは非置換のC6〜C10のアリール基であり、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5及びX
6のうちの少なくとも一つは、置換又は非置換のC6〜C10のアリール基であってもよい。さらに具体的に、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、およびX
6は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基、ビフェニル基、又はナフチル基であってもよく、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5及びX
6のうちの1個、2個、3個又は6個はフェニル基又はナフチル基であってもよい。この場合、封止用組成物はプラズマエッチング率をさらに低下させることができる。さらに具体的に、nは1〜5の整数であってもよい。この場合、封止用組成物はプラズマエッチング率をさらに低下させることができる。
【0054】
さらに具体的に、nは1〜30の整数であってもよい。
【0055】
具体的に、シリコン系ジ(メタ)アクリレートは、下記の化学式3〜9のうちの一つで表される:
【0056】
【化5】
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
(B)シリコン系多官能光硬化性モノマーは、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして約20重量%〜約70重量%、具体的に、約25重量%〜約65重量%、約25重量%〜約60重量%、約25重量%〜約50重量%、約25重量%〜約45重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%の量で含まれてもよい。この範囲であれば、封止用組成物は高い光硬化率を有し、高い光透過率および低いプラズマエッチング率を有する有機障壁層を具現できる。
【0064】
(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマーと(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーとは合計重量で、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして約30重量%〜約60重量%、具体的に、約30重量%〜約55重量%、約30重量%〜約50重量%、約35重量%〜約55重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%の量で含まれてもよい。この範囲であれば、封止用組成物は、プラズマエッチング率の低い有機障壁層を具現することができる。
【0065】
(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、公知の通常の方法で製造することができる。例えば、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基又は置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基が、少なくとも一つのシリコン原子と連結されたシロキサン化合物と炭素鎖を延長させる化合物(たとえばアリルアルコール)とを反応させた後、(メタ)アクリロイルクロリドを反応させて製造できるが、これに制限されない。又は、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基又は置換もしくは非置換のC2〜C30のヘテロアリール基が、少なくとも一つのシリコン原子と連結されたシロキサン化合物と(メタ)アクリロイルクロリドとを反応させて製造できるが、これに制限されない。
【0066】
(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー
(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマーは、封止用組成物の光硬化率を高め、有機障壁層の光透過率を高めることができる。
【0067】
(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマーは、非シリコン系モノ(メタ)アクリレートとして、芳香族基を有する芳香族系モノ(メタ)アクリレート、及び芳香族基を有さない非芳香族系モノ(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つを含んでもよい。芳香族系モノ(メタ)アクリレートおよび(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、両方とも芳香族基を有しているため、これらを封止用組成物に共に使用する場合、芳香族系モノ(メタ)アクリレートおよび(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは、有機発光素子封止用組成物中の相溶性がさらに改良される。これによって、芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーとの混和性をさらに高めることができる。その結果、封止用組成物は、有機障壁層のプラズマエッチング率をさらに低下させることができる。
【0068】
芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、置換又は非置換の芳香族基を有するモノ(メタ)アクリレートを含んでもよい。このとき、「芳香族基」は、単環(monocyclic)又は縮合された(fused)形態などを含む多環(polycyclic)芳香族基を意味するか、または単環がシグマ結合で連結された形態を意味する。例えば、芳香族基は、置換又は非置換のC6〜C50のアリール基、置換又は非置換のC7〜C50のアリールアルキル基、置換又は非置換のC3〜C50のヘテロアリール基、及び置換又は非置換のC3〜C50のヘテロアリールアルキル基のうちの少なくとも一つを意味し得る。さらに具体的に、芳香族基は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、クオーターフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、クリセニル、トリフェニレニル、テトラセニル、ピレニル、ベンゾピレニル、ペンタセニル、コロネニル、オバレニル、コランヌレニル、ベンジル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、アクリジニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、フリニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、及びイソベンゾフラニルのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0069】
例えば、芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、下記化学式10で表される:
【0070】
【化12】
【0071】
化学式10において、R
3は水素又はメチル基であり、sは0〜10の整数であり、
R
6は、置換もしくは非置換のC6〜C50のアリール基又は置換もしくは非置換のC6〜C50のアリールオキシ基である。
【0072】
例えば、R
6は、フェニルフェノキシエチル基、フェノキシエチル基、ベンジル基、フェニル基、フェニルフェノキシ基、フェノキシ基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、メチルフェニルエチル基、プロピルフェニルエチル基、メトキシフェニルエチル基、シクロヘキシルフェニルエチル基、クロロフェニルエチル基、ブロモフェニルエチル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、プロピルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フェニルフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、アントラセニル基、ナフタレニル基、トリフェニレニル基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、メトキシフェニルオキシ基、プロピルフェノキシ基、シクロヘキシルフェノキシ基、クロロフェノキシ基、ブロモフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、クオーターフェニルオキシ基、アントラセニルオキシ基、ナフタレニルオキシ基、トリフェニレニルオキシ基であってもよい。
【0073】
具体的に、芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、2−エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、3−フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4−フェニルブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、4−(ビフェニル−2−イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、3−(ビフェニル−2−イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、1−(ビフェニル−2−イルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート、4−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、1−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、1−(4−ベンジルフェニル)エチル(メタ)アクリレート又はこれらの構造異性体のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、これに制限されることはない。すなわち、ここで記載された(メタ)アクリレートは、一例に該当するに過ぎないことが理解されるべきであり、本発明はこれに限定されるものではない。さらに、本発明の(メタ)アクリレートは、構造異性体の関係にあるアクリレートを全て含む。例えば、一例として2−フェニルエチル(メタ)アクリレートのみが言及されているとしても、本発明の(メタ)アクリレートは、3−フェニルエチル(メタ)アクリレートおよび4−フェニル(メタ)アクリレートを全て含む。
【0074】
非芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、置換又は非置換のC1〜C20のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートであってもよい。具体的に、非芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、非置換の直鎖型のC1〜C20のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート、より具体的には、非置換の直鎖型のC10〜C20のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートであってもよい。例えば、非芳香族系モノ(メタ)アクリレートは、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、及びアラキジル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、これに制限されない。
【0075】
(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマーは、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして約5重量%〜約50重量%、具体的に、約5重量%〜約45重量%、約5重量%〜約40重量%、約5重量%〜約35重量%、約5重量%〜約30重量%、約15重量%〜約35重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%の量で含まれてもよい。この範囲であれば、封止用組成物は光硬化率を高めることができる。また、封止用組成物は、高い光透過率および低いプラズマエッチング率を有する有機障壁層を具現できる。
【0076】
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマー
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは、封止用組成物から形成された有機障壁層の硬化後モジュラスを低下させることができ、これによって、封止用組成物のフレキシブル有機発光表示装置への使用を可能にする。
【0077】
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは、シリコン系モノ(メタ)アクリレートであって、下記化学式11で表され得る:
【0078】
【化13】
【0079】
化学式11において、R
3は、水素又はメチル基であり、
nは1以上の整数であり、
Y
1、Y
2及びY
3は同一又は異なり、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC6〜C20のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC1〜C30のジアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基、又は下記化学式12で表される官能基である:
【0080】
【化14】
【0081】
化学式12において、*は、化学式11中のSiに対する連結部位であり、
mは1以上の整数であり、
Z
1、Z
2及びZ
3は同一又は異なり、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルコキシ基、置換もしくは非置換のC6〜C20のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のC1〜C30のジアルキルアミン基、置換もしくは非置換のC1〜C30のアルキルスルフィド基、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、又は置換もしくは置換のC7〜C30のアリールアルキル基である:
但し、Y
1、Y
2又はY
3が化学式12で表される官能基であって、mが2以上である場合、化学式12で表されかつ(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーに含まれる官能基は、同じであってもよいし異なるものであってもよい。
【0082】
具体的に、nおよびmは、それぞれ独立して、1〜10の整数であってもよい。一実施形態において、Y
1、Y
2及びY
3のうちの少なくとも一つは、置換もしくは非置換のC6〜C30のアリール基、又は置換もしくは非置換のC7〜C30のアリールアルキル基を含んでもよい。具体的に、Y
1、Y
2及びY
3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキル基、又は置換もしくは非置換のC6〜C10のアリール基であり、Z
1、Z
2及びZ
3がそれぞれ独立して置換もしくは非置換のC1〜C10のアルキル基、好ましくは置換もしくは非置換のC1〜C5のアルキル基であるか、又は置換もしくは非置換のC6〜C10のアリール基である化学式12で表される官能基であってもよい。一実施形態において、Y
1、Y
2及びY
3のうちの少なくとも一つは、化学式12で表される官能基であってもよい。
【0083】
化学式11において、Y
1、Y
2又はY
3が化学式12で表される官能基であり、mが2以上である場合、化学式12で表されかつ(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーに含まれる官能基は、同じであってもよいし、化学式13で表されるように異なるものであってもよい。
【0084】
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは、下記化学式13〜17のうちの少なくとも一つを含んでもよい:
【0085】
【化15】
【0086】
【化16】
【0087】
【化17】
【0088】
【化18】
【0089】
【化19】
【0090】
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは、公知の通常の方法で製造され得る。例えば、(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは、所定のシロキサン化合物にアリルアルコールを反応させた後、(メタ)アクリロイルクロリドを反応させて製造できるが、これに制限されない。
【0091】
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーは、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして約1重量%〜約50重量%、具体的に、約1重量%〜約50重量%、約1重量%〜約45重量%、約1重量%〜約40重量%、約1重量%〜約35重量%、約1重量%〜約30重量%、約1重量%〜約25重量%、約10重量%〜約30重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%の量で含まれてもよい。この範囲であれば、封止用組成物は、低いモジュラスを有する有機障壁層を具現することができる。
【0092】
(E)開始剤
(E)開始剤は、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー、化学式1で表される(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー、(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー、および(D)シリコン系光硬化性単官能モノマーを硬化させることによって有機障壁層を形成させるものであって、通常の光重合開始剤を制限なく含むことができる。
【0093】
(E)開始剤は、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、リン系、およびオキシム系開始剤のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、これに制限されない。例えば、リン系開始剤としては、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル(ジフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド又はこれらの混合物であってもよい。例えば、リン系開始剤は、本発明の組成物において、長波長のUV光でより良い開始性能を示すことができる。
【0094】
(E)開始剤は、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量を基準にして約1重量%〜約10重量%、具体的に、約1重量%〜約5重量%の量で含まれてもよい。この範囲であれば、開始剤は、露光時に十分な光重合を起こさせ、光重合後に残る未反応の開始剤を低減させ、有機障壁層の光透過率をさらに改良させることができる。
【0095】
封止用組成物は、溶剤を含まない無溶剤の組成物として形成されてもよい。例えば、封止用組成物が無溶剤の組成物である場合、重量%は、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量に基づく。
【0096】
封止用組成物は、25℃±2℃(23℃〜27℃)で粘度が約0cP〜約200cP、具体的には約100cP以下、より具体的に約5cP〜約50cP、約5cP〜約40cP又は約5cP〜約30cPであってもよい。この範囲であれば、有機障壁層の形成時、蒸着やインクジェット印刷などの方法を行うのに有利になり得る。
【0097】
封止用組成物は、光硬化組成物であって、約10mW/cm
2〜約500mW/cm
2で約1秒〜約100秒間のUV照射によって硬化されてもよいが、これに制限されない。
【0098】
封止用組成物は、有機発光素子を封止するのに使用されてもよい。特に、封止用組成物は、非フレキシブル有機発光表示装置のみならず、フレキシブル有機発光表示装置に使用されてもよい。
【0099】
封止用組成物は、装置用部材、特に、ディスプレイ装置用部材として、周辺環境の気体又は液体、例えば、大気中の酸素及び/又は水分及び/又は水蒸気と電子製品の加工に使用された化学物質の透過によって、品質の変化や低下を受ける装置用部材の封止用途にも使用可能である。装置用部材の例は、照明装置、金属センサパッド、マイクロディスクレーザ、電気変色装置、光変色装置、マイクロ電子機械システム、太陽電池、集積回路、電荷結合装置、発光重合体、発光ダイオードなどを含むが、これに制限されない。
【0100】
以下、本発明の他の実施形態に係る有機発光素子封止用組成物を説明する。
【0101】
本発明の他の実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー、(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー、(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー、(D)シリコン系光硬化性単官能モノマー、(E)開始剤及び(F)熱安定剤を含み、ここで(B)シリコン系光硬化性多官能モノマーは化学式1で表される。その結果、本実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、封止用組成物の常温での粘度変化を抑制することができる。本実施形態の有機発光素子封止用組成物は、熱安定剤を含まない封止用組成物に比べて光透過率及び光硬化率をさらに改良し、プラズマエッチング率をさらに低下させ得る。本実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、熱安定剤を除いては、上記実施形態に係る有機発光素子封止用組成物と実質的に同一である。よって、以下では、熱安定剤のみを説明する。
【0102】
封止用組成物において、(F)熱安定剤は、封止用組成物の常温での粘度変化を抑制するものであって、通常の熱安定剤を含み得る。一実施形態では、(F)熱安定剤は、立体障害を有する(sterically hindered)フェノール性熱安定剤であり得る。具体的には、(F)熱安定剤は、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ステアリル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチルヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びトリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、これに制限されない。(F)熱安定剤は、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の総重量に対して約2000ppm以下、具体的に約0.01ppm〜約2000ppm、より具体的に約100ppm〜約800ppmの量で含まれてもよい。この範囲であれば、熱安定剤は、液体状態の封止用組成物の貯蔵安定性及び工程性をさらに改良することができる。
【0103】
本発明の有機発光表示装置は、本発明の実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成された有機障壁層を含んでもよい。具体的に、有機発光表示装置は、有機発光素子と、有機発光素子上に形成され、無機障壁層及び有機障壁層を含む障壁スタックとを含み、有機障壁層は、本発明の実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成されてもよい。その結果、有機発光表示装置は高い信頼性を発現する。
【0104】
本発明の有機発光表示装置において、有機障壁層は、有機発光素子封止用組成物のインクジェット法又は蒸着で形成されたものであってもよい。
【0105】
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置の断面図である。
【0106】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置100は、基板10と、基板10上に形成された有機発光素子20と、有機発光素子20上に形成され、無機障壁層31及び有機障壁層32を含む障壁スタック30とを含み、無機障壁層31は有機発光ダイオード20と接触する状態となっており、有機障壁層32は、本発明の実施形態に係る有機発光素子封止用組成物から形成され得る。
【0107】
基板10は、有機発光素子が形成され得る基板であれば特に制限されず、例えば、透明ガラス、プラスチックシート、シリコン又は金属基板などの物質から形成されてもよい。
【0108】
有機発光素子20は、通常、有機発光表示装置で使用されるものであって、
図1に示してはいないが、第1電極、第2電極、及び第1電極と第2電極との間に形成される有機発光層を含む。さらに、有機発光層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層が順次積層されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0109】
障壁スタック30は無機及び有機障壁層を含み、無機および有機障壁層は、異なる成分から構成されており、それぞれの有機発光素子封止機能を具現することができる。
【0110】
無機障壁層は、有機障壁層とは異なる成分を有することによって、有機障壁層の効果を補完することができる。無機障壁層は、光透過性に優れ、水分及び/又は酸素遮断性に優れた無機材料で形成され得る。例えば、無機障壁層は、金属、非金属、少なくとも2つの金属からなる金属間化合物もしくは合金、少なくとも2つの非金属からなる化合物もしくは合金、金属もしくは非金属の酸化物、金属もしくは非金属のフッ化物、金属もしくは非金属の窒化物、金属もしくは非金属の炭化物、金属もしくは非金属の酸窒化物、金属もしくは非金属の硼化物、金属もしくは非金属の酸硼化物、金属もしくは非金属のシリサイド、又はこれらの混合物であってもよい。金属又は非金属は、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、遷移金属、およびランタノイド金属であってもよいが、これに制限されない。具体的に、無機障壁層は、シリコン酸化物(SiO
x)、シリコン窒化物(SiN
x)、シリコン酸窒化物(SiO
xN
y)、ZnSe、ZnO、Sb
2O
3、Al
2O
3を含むAlO
x、In
2O
3、SnO
2であってもよい。
【0111】
無機障壁層は、プラズマ工程、真空工程、例えば、スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴−プラズマ蒸気蒸着及びそれらの組み合わせにより蒸着され得る。無機障壁層は、厚さが約40nm〜約1000nm、具体的に、約100nm〜約1000nmであってもよい。
【0112】
有機および無機障壁層が交互に蒸着されることによって、無機障壁層の平滑性を確保し、一つの無機障壁層の欠陥が他の無機障壁層に広がることを防止することができる。
【0113】
有機障壁層は、有機発光素子封止用組成物の蒸着、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スピンコーティング、ブレードコーティング、および硬化又はこれらの組み合わせによって形成され得る。例えば、有機障壁層は、有機発光ダイオード封止用組成物を約1μm〜約50μmの厚さでコーティングし、約10mW/cm
2〜約500mW/cm
2で約1秒〜約100秒間照射することによって硬化させて形成され得る。有機障壁層は、約1μm〜約50μmの厚さであってもよい。
【0114】
障壁スタックは、有機及び無機障壁層を含む。有機障壁層と無機障壁層の総層数は、酸素及び/又は水分及び/又は水蒸気及び/又は化学物質に対する透過抵抗性の水準によって変更可能である。例えば、有機および無機障壁層の総層数は10層以下、例えば2層〜7層であってもよい。具体的に、有機および無機障壁層は以下の、無機障壁層/有機障壁層/無機障壁層/有機障壁層/無機障壁層/有機障壁層/無機障壁層の順に合計7層で形成されてもよい。
【0115】
障壁スタックにおいて、有機および無機障壁層は、交互に蒸着されてもよい。これは、前述した組成物が、その物性により有機障壁層に与える効果を有するためである。これによって、有機および無機障壁層は、装置用部材の封止を補完又は強化することができる。
【0116】
以下、
図2を参照して、本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置を説明する。
図2は、本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置の断面図である。
【0117】
図2を参照すると、本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置200は、基板10と、基板10上に形成された有機発光素子20と、有機発光素子20上に形成され、無機障壁層31及び有機障壁層32を含む障壁スタック30とを含み、無機障壁層31は、有機発光素子20が収容された内部空間40を封止し、有機障壁層32は、本発明の実施形態に係る有機発光素子封止用組成物で形成され得る。本発明の他の実施形態に係る有機発光表示装置200は、無機障壁層が有機発光素子と接触しない点を除いては、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置と実質的に同一である。
【実施例】
【0118】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示したものであって、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈することはできない。
【0119】
製造例1
冷却管及び撹拌機を備えた1000mlのフラスコに、酢酸エチル 300mlを入れ、3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン 21gと、アリルアルコール 43g(大井化金株式会社製)とを入れ、30分間窒素置換した。その後、白金担持カーボンブラック(Pt on carbon black)粉末(Aldrich社製)72ppmを追加し、フラスコ内の温度を80℃に上げた後で4時間撹拌した。残留溶媒を蒸留で除去することによって化合物を得た。得られた化合物 71.5gをジクロロメタン 300mlに入れ、トリエチルアミン39gを追加し、0℃で撹拌しながらメタクリロイルクロリド 30.2gをゆっくり添加した。残留溶媒を蒸留で除去し、下記化学式4で表されるモノマー(分子量:584.92g/mol)をHPLC純度95%で得た。(1H NMR:δ7.52、m、6H;δ7.42、m、4H;δ6.25、d、2H;δ6.02、dd、2H;δ5.82、t、1H;δ5.59、d、2H;δ3.86、m、4H;δ1.52、m、4H;δ0.58、m、4H;δ0.04、m、12H)。
【0120】
【化20】
【0121】
製造例2
製造例1において、3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン21gの代わりに3−フェニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン(Gelest社)25gを使用したことを除いては同様の方法で、下記化学式9で表されるモノマーを得た。
【0122】
【化21】
【0123】
製造例3
冷却管及び撹拌機を備えた1000mlのフラスコに、酢酸エチル 300mlを入れ、3−フェニル−1,1,1,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(Gelest社製)25gと、アリルアルコール47gとを入れ、30分間窒素置換した。次に、白金担持カーボンブラック(Pt on carbon black)粉末(Aldrich社製)72ppmを追加し、フラスコ内の温度を80℃に上げた後で4時間撹拌した。残留溶媒を蒸留で除去することによって化合物を得た。得られた化合物 65.5gをジクロロメタン300mlに入れ、トリエチルアミン 48gを追加し、0℃で撹拌しながらメタクリロイルクロリド 31.3gをゆっくり添加した。残留溶媒を蒸留で除去し、下記化学式13で表される化合物(分子量:410.73g/mol)をHPLC純度97%で得た。(1H NMR:δ7.61、m、3H;δ7.12、m、2H;δ6.25、d、1H;δ6.02、dd、1H;δ3.87、m、2H;δ2.82、s、3H;δ1.54、m、2H;δ0.58、m、2H;δ0.02、m、18H)
【0124】
【化22】
【0125】
製造例4
製造例3において、3−フェニル−1,1,1,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(Gelest社)25gの代わりに3−フェニル−1,1,1,5,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(Gelest社)25gを使用したことを除いては同様の方法で、下記化学式14で表される化合物(分子量:410.73g/mol)をHPLC純度96%で得た。(1H NMR:δ7.61、m、3H;δ7.12、m、2H;δ6.25、d、1H;δ6.02、dd、1H;δ3.87、m、2H;δ2.82、s、3H;δ1.54、m、2H;δ0.58、m、2H;δ0.02、m、18H)
【0126】
【化23】
【0127】
実施例及び比較例で使用した成分の詳細は、次の通りである。
【0128】
(A)非シリコン系光硬化性多官能モノマー:(A1)1,12−ドデカンジオールジメタクリレート(サートマー株式会社製)、(A2)1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(サートマー株式会社製)
(B)シリコン系光硬化性多官能モノマー:(B1)製造例1のモノマー、(B2)製造例2のモノマー
(C)非シリコン系光硬化性単官能モノマー:2−フェニルフェノキシエチルアクリレート(日立化成株式会社製)
(D)シリコン系光硬化性単官能モノマー:(D1)製造例3のモノマー、(D2)製造例4のモノマー
(E)開始剤:リン系開始剤、ダロキュア(Darocur) TPO(BASF株式会社製)
実施例1
(A1)19重量部、(B2)29重量部、(C)29重量部、(D1)20重量部、および(E)3重量部を125mlの褐色ポリプロピレン瓶に入れ、シェーカーを用いて3時間室温で混合することによって封止用組成物を得た。
【0129】
実施例2〜実施例5、比較例1〜比較例2及び参考例1
実施例1において、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の種類及び/又は含有量を下記表1(単位:重量部)のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、封止用組成物を製造した。
【0130】
実施例、比較例及び参考例で製造した封止用組成物のそれぞれに対して、下記表1の物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0131】
【表1】
【0132】
表1に示すように、本発明の有機発光素子封止用組成物は、光硬化率及び光透過率が高く、プラズマに対するエッチング率の低い有機障壁層を具現することができ、これにより、有機発光素子の信頼性を高めることができる。また、本発明の有機発光素子封止用組成物は、フレキシブル表示装置に適用可能な低いモジュラスを有する有機障壁層を具現することができる。
【0133】
一方、(A)、(B)及び(C)のうちのいずれか一つを含まない比較例1及び比較例2の封止用組成物は、モジュラスが高いかプラズマエッチング率が高いという問題があり、(D)を含まない参考例1の封止用組成物は、プラズマエッチング率が比較的高い有機障壁層を具現した。
【0134】
<物性評価方法>
(1)モジュラス:封止用組成物を所定の厚さで成膜し、波長395nm、500mJのUV条件で硬化させることによって厚さ30μmの有機障壁層を製造し、モジュラス測定のための試験片を製造した。試験片のモジュラスは、ナノインデンター(Nano indentor) G200(アジレント社製)でモジュラスを測定し、実験モード:インデンテーションモード(Berkovitzを使用)、制御モード:力制御、最大力:60μN(0213−TJ:100nm 変位制御で54μN)の条件で、常温(20℃〜25℃)で、試験片を5秒間ローディングし、2秒間維持した後、5秒間アンローディングする方法で測定した。
【0135】
(2)光硬化率:封止用組成物を、FT−IR(NICOLET 4700、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いて、1635cm
−1付近(C=C)、1720cm
−1付近(C=O)での吸収ピークの強度を測定した。ガラス基板上に封止用組成物をスプレーで塗布し、100mW/cm
2で10秒間UV照射して硬化させ、20cm×20cm×3μm(幅×長さ×厚さ)の試験片を得た。その後、FT−IR(NICOLET 4700、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を用いて、1635cm
−1付近(C=C)、および1720cm
−1付近(C=O)での吸収ピークの強度を測定した。光硬化率は、下記式1によって計算した。
【0136】
【数2】
【0137】
数式1において、Aは、硬化されたフィルムで測定された1720cm
−1付近での吸収ピークの強度に対する1635cm
−1付近での吸収ピークの強度の比であり、
Bは、封止用組成物において測定された1720cm
−1付近での吸収ピークの強度に対する1635cm
−1付近での吸収ピークの強度の比である。
【0138】
(3)プラズマエッチング率:封止用組成物を所定の厚さで蒸着及び光硬化させ、有機封止層を形成し、有機蒸着層の初期の蒸着高さ(T1、1μm〜10μm)を測定した。ICP電力:2500W、RE電力:300W、DCバイアス:200V、Arの流量:50sccm、エッチング時間:1min、圧力:10mtorrの条件で有機障壁層にプラズマ処理した後、有機障壁層の高さ(T2、単位:μm)を測定した。プラズマエッチング率は、数式2によって計算した。
【0139】
【数3】
【0140】
様々な応用、変形、変更、および同様の実施形態は、本発明の思想および領域を離れることなく、この分野で通常の知識を有する者によって実施可能であると理解されるべきである。