(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の縫合装置は、軟性内視鏡に取り付けて、消化管腔内から縫合を行う装置であって、簡便かつ迅速に縫合を実施できるようにしたことに特徴を有している。
【0016】
本発明の縫合装置は、軟性内視鏡だけでなく、ラパロスコープの先端に取り付けて使用することもできる。とくに、本発明の縫合装置を軟性内視鏡に取り付けて使用した場合には、消化管腔内において、消化管に開口や貫通孔が形成されていない状態でも、組織の全層縫合等を実施できる。なお、全層縫合とは、消化管の全層(漿膜、漿膜下層、固有筋層、粘膜下層、粘膜)を貫通するように縫合糸を通して縫合することを意味している。
【0017】
以下では、本実施形態の縫合装置10を軟性内視鏡に取り付けて使用する場合を代表として説明する。
なお、装置各部の構造を分かりやすくするために、各図面における各部の相対的なサイズなどは必ずしも実際の装置におけるサイズとは対応させていない。
【0018】
(内視鏡1の説明)
図1において、符号2は、本実施形態の縫合装置10が取り付けられる内視鏡1のシャフトを示している。本実施形態の縫合装置10が取り付けられる内視鏡1は、一般的な内視鏡手術に使用される軟性内視鏡である。この内視鏡のシャフト2は、生体の消化管に挿入して使用されるものであれば、その径や長さ、材質などはとくに限定されない。例えば、シャフト2の径は、一般的な内視鏡では10mm程度であるが、5〜15mm程度のものでもよい。また、シャフト2の長さは、一般的な内視鏡では1200mm程度であるが、1200〜3000mm程度のものでもよい。
【0019】
つぎに、本実施形態の縫合装置10の各部を説明する。
【0020】
まず、アーム移動手段13を説明する。
図1〜
図4に示すように、アーム移動手段13は、軸方向に沿って延びた長尺な部材であり、内視鏡1のシャフト2に取り付けられるものである。このアーム移動手段13の長さは、内視鏡1のシャフト2の長さと同程度の長さであればよく、とくに限定されない。
【0021】
このアーム移動手段13の先端には、筒状の固定部13dが設けられている。この筒状の固定部13dに内視鏡1のシャフト2の先端部を挿入することによって、アーム移動手段13の先端は、内視鏡1のシャフト2の先端部に固定されている。
【0022】
また、アーム移動手段13の先端部から手元側までの部分は、アーム移動手段13がシャフト2に沿うように固定されている。例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アルミなどを素材とするベルト状部材や、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、金属などを素材とする輪状留め具などによって、アーム移動手段13をシャフト2に固定することができる。
【0023】
アーム移動手段13は、シャフト2に固定された状態において、シャフト2の曲りなどに追従して変形できる程度の柔軟性を有する素材によって形成されている。つまり、アーム移動手段13は、内視鏡1のシャフト2に取り付けても、内視鏡1の操作の妨げにならないような強度となるように形成されている。
【0024】
なお、アーム移動手段13をシャフト2に固定する方法はとくに限定されず、例えば、シャフト2の曲りなどの変形を妨げないように固定できる方法であればよい。
【0025】
具体的には、アーム移動手段13は、シース13aと、このシース13a内に挿入されたワイヤー部13bと、シース13aが内部に挿通されたチューブ13cと、から構成されている。
【0026】
チューブ13cはその先端から基端まで貫通孔が形成された筒状の部材であり、このチューブ13cが、上述したように、ベルト状部材などによってシャフト2に固定されている。このチューブ13cの素材はとくに限定されないが、例えば、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどの樹脂で形成されていることが好ましい。
【0027】
チューブ13c内には、シース13aが挿通されている。このシース13aは中空なチューブ状の部材であり、チューブ13cの軸方向に沿って移動可能かつチューブ13c内で回転可能となるようにチューブ13c内に挿入されている。このシース13aの素材はとくに限定されないが、シャフト2の曲り(言い換えればチューブ13cの曲り)に追従して変形できるが、軸方向に力が加わっても、伸びたり折れ曲がったりしにくい強度を有するように形成されていることが望ましい。例えば、ステンレスやニッケルチタン合金で形成された金属コイルチューブや補強材で補強された樹脂チューブなどで構成されていることが好ましい。このシース13aの先端には、後側アーム12の基端部が固定されている(
図5参照)。一方、シース13aの基端は、シャフト2を操作する操作部近傍まで延びている。したがって、アーム移動手段13のシース13aの基端を移動させることによって、チューブ13cの先端からシース13aが突出する長さを変化させることができる。言い換えれば、シャフト2の軸方向に沿って、シャフト2に対して後側アーム12を移動させることができる。また、シース13aの基端を回転させることによって、後側アーム12をシース13aの中心軸周りに回転させることができる。なお、シース13aの先端には、連結ピース33が設けられているが、その理由は後述する。
【0028】
ワイヤー部13bは、例えば、金属製のワイヤー等であり、シャフト2の曲り(言い換えればシース13aの曲り)に追従して変形できるものである。このワイヤー部13bは、シース13a内をその軸方向に沿って移動可能かつシース13a内で回転可能に設けられている。このワイヤー部13bの先端には挿入部材32が設けられており、この挿入部材32が後述するスライド機構40を介して前側アーム11の基端に連結されている(
図5参照)。一方、ワイヤー部13bの基端は、シャフト2を操作する操作部近傍まで延びている。したがって、アーム移動手段13のワイヤー部13bの基端を移動させることによって、シース13aの先端からワイヤー部13bが突出する長さを変化させることができる。言い換えれば、シャフト2の軸方向に沿って、後側アーム12に対して前側アーム11を移動させることができる。また、後側アーム12と前側アーム12が相互に回転可能となった場合には、ワイヤー部13bの基端を回転させることによって、前側アーム12を後側アーム12に対して相対的に回転させることができる。
【0029】
以上のごとき構成であるので、アーム移動手段13のシース13aの基端およびワイヤー部13bの基端を操作して、シース13aやワイヤー部13bを軸方向に沿って移動させれば、前側アーム11と後側アーム12を移動させることができる。つまり、シャフト2の先端面2sに対して、前側アーム11や後側アーム12の相対的な位置を変化させることができる。例えば、シース13aとワイヤー13bを同じ量だけ同じ方向に移動させれば、シャフト2の先端面2sに対して、前側アーム11および後側アーム12を同じ量だけ同じ方向に移動させることができる。
【0030】
しかも、シース13aとワイヤー部13bを独立して移動させることができるので、前側アーム11と後側アーム12を互いに接近離間させることができる。例えば、ワイヤー部13bの移動を固定して、シース13aを移動させれば、後側アーム12を前側アーム11に対して接近離間させることができる。逆に、シース13aの移動を固定して、ワイヤー部13bを移動させれば、前側アーム11を後側アーム12に対して接近離間させることができる。
【0031】
なお、アーム移動手段13の外径(つまり、チューブ13cの外径)は、本実施形態の縫合装置10を取り付けた内視鏡1を消化管内(またはオーバーチューブ内)に挿入することができる程度であればよく、とくに限定されない。例えば、アーム移動手段13の外径は、アーム移動手段13とシャフト2の外径を合わせた径が、11〜15mm程度となる大きさが好ましく、11〜14mm程度となる大きさがより好ましい。
【0032】
(連結機構30)
図5および
図6に示すように、アーム移動手段13の先端には、前後一対のアーム11,12が連結されており、前後一対のアーム11,12はアーム移動手段13に連結機構30によって連結されている。この連結機構30は、スライド機構40を備えており、このスライド機構40は、前側アーム11と後側アーム12が接近離間可能かつ両者が接近離間する方向と直交する面内の相互回転を固定した状態に連結できる構造を有している。
【0033】
具体的には、後側アーム12の基端には、断面略方形に形成された略軸状のスライド機構40のベース部材42が設けられている。このベース部材42には、前側アーム11に連結されたスライド41が係合している。このスライド41には係合溝41gが設けられており、この係合溝41gの内面がベース部材42の外面と略面接触した状態(または略面接触した部分ができる状態)となるように係合している(
図6参照)。
【0034】
以上のごとき構造であるので、前後一対のアーム11,12が接近離間する際に、スライド機構40のスライド41に形成された係合溝41gの内面がベース部材42の外面と略面接触した状態で移動する。したがって、前側アーム11と後側アーム12が接近離間した際に、前側アーム11が後側アーム12に対して回転することなく(つまり接近離間する方向と直交する面内の相互回転を固定した状態で)移動させることができる。
【0035】
(前後一対のアーム11,12の説明)
つぎに、前後一対のアーム11,12を説明する。
【0036】
(後側アーム12について)
まず、後側アーム12について説明する。
図5に示すように、後側アーム12は、略短冊状であって前面12aと背面12bが互いに平行な平坦面に形成されたものである。ここでいう短冊状とは、長さに対して幅が短く、また、厚さも長さに対して短い形状のものを意味しており、長さ方向に沿って若干湾曲しているもの(
図1〜
図4参照)と、長さ方向に沿って真っ直ぐなものの両方を含む概念である。
【0037】
この後側アーム12の基端には、前述したシース13aの先端が連結されている。具体的には、後側アーム12の基端部に連結された連結機構30のベース部材42に設けられた連結管42pに、シース13aの先端に設けられた連結ピース33が連結されている。なお、連結管42pと連結ピース33が連結すると、その位置におけるシース13aの中心軸の延長線と後側アーム12の前面12aおよび背面12bが直交するように、連結管42pが設けられている。以下では、連結管42pと連結ピース33が連結する部分におけるシース13aの中心軸方向を、単に、シース13aの中心軸という場合がある。
【0038】
(縫合針部14)
一方、後側アーム12の先端部には、縫合針部14が設けられている。この縫合針部14は、後側アーム12の軸方向に沿って並ぶように配置された、一対の針状部材15,16を備えている。一対の針状部材15,16は、いずれも軸部bと、この軸部bの先端に設けられた、この先端よりも外径が大きい部分(やじり状部a)とを有している。やじり状部aは、その基端の外径が軸部bの先端の外径よりも大きく、軸部bとの連結部分に段差ができるように形成されている。このやじり状部aは、後述するように、一対の針状部材15,16が一対の係合部材21,21と係合した際に、一対の針状部材15,16から一対の係合部材21,21が脱落することを防ぐ役割を有する。
【0039】
また、縫合針部14の一対の針状部材15,16は、いずれもその先端が前側アーム11に向いた状態かつ、その軸方向が後側アーム12の前面12aと直交するように後側アーム12に取り付けられている。言い換えれば、一対の針状部材15,16は、いずれもその中心軸がベース部材42の軸方向(つまりシース13aの中心軸)と略平行となるように後側アーム12に取り付けられている。
【0040】
(前側アーム11について)
図5に示すように、前側アーム11は、略短冊状であって前面11aと背面11bが互いに平行な平坦面に形成されたものである。この前側アーム11は、実質的に、後側アーム12と同じ形状に形成されている。この前側アーム11の基端部は、前述したスライド機構40のスライド41に連結されている。
【0041】
このスライド41には、ワイヤー部13bの先端が連結されている。具体的には、後側アーム12のベース部材42を貫通する貫通孔42h(連結管42p内の空間)にワイヤー部13bが挿通されており、そのワイヤー部13bの先端に設けられた挿入部材32が、スライド41に固定されている筒状連結部材41sに連結されている。
なお、筒状連結部材41s内には、前側アーム11に固定された縫合糸収容パイプ11pが挿入されている。この縫合糸収容パイプ11pは、縫合器具20の縫合糸22が収容されるものである。
【0042】
この前側アーム11の先端部には、一対の収容空間18,19を有する収容部17が形成されている(
図6参照)。
図7に示すように、収容部17の一対の収容空間18,19は、前側アーム11の前面11aと背面11bとの間を貫通する貫通孔である。一対の収容空間18,19は、いずれも、その中心軸が前後一対のアーム11,12が接近離間する方向(つまりシース13aの中心軸と平行な方向)と平行となるように形成されている。なお、一対の収容空間18,19は、いずれも前側アーム11の側面と連通するスリットが形成されており、このスリットを通して、後述する縫合器具20の縫合糸22は一対の収容空間18,19に出入りすることができるようになっている。
【0043】
この一対の収容空間18,19は、その背面11b側(大径部a)の内径が前面11a側(小径部b)の内径より大きい段付き孔である。そして、各収容空間18,19は、小径部bの内径がやじり状部aの外径よりも大きくなるように形成されているが、かかる形状に形成されている理由は後述する。
【0044】
そして、一対の収容空間18,19は、その中心軸が一対の針状部材15,16の中心軸とそれぞれほぼ同軸となるように設けられている。
【0045】
以上のごとき構成であるので、前後一対のアーム11,12を接近させれば、一対の針状部材15,16のやじり状部aを一対の収容空間18,19内にそれぞれ挿入することができる。
【0046】
なお、一対の収容空間18,19の中心軸と一対の針状部材15,16の中心軸がそれぞれほぼ同軸とは、前後一対のアーム11,12を接近させた際に、一対の収容空間18,19に縫合針部14の一対の針状部材15,16が挿入できる程度のずれは許容されること意味している。
【0047】
なお、上記例では、前側アーム11および後側アーム12の前面および背面が平坦面の場合を説明したが、前側アーム11および後側アーム12の前面および背面は必ずしも平坦面である必要はない。
【0048】
また、後側アーム12において、一対の針状部材15,16を設ける位置はとくに限定されない。しかし、後側アーム12の大きさが体内に挿入するために支障がない範囲であれば、一対の針状部材15,16とスライド機構40との距離がある程度離れている方が、組織の端縁から縫合位置までの距離を長くできるという利点が得られる。この観点から、スライド機構40の位置(言い換えれば、前側アーム11および後側アーム12がアーム移動手段13に連結されている位置)から針状部材15までの、後側アーム12と前側アーム11が接近離間する方向に垂直な面に沿った距離L(
図5参照)は、5mm以上が好ましく、10〜20mmがより好ましい。
【0049】
さらに、一対の針状部材15,16は、その素材や長さ、軸径はとくに限定されない。具体的には、一対の針状部材15,16は、縫合する対象に突き刺してその対象を貫通させることができ、しかも、対象を貫通した状態から逆方向に移動させて対象から引き抜くことができる程度の長さおよび強度を有するものであればよい。例えば、本実施形態の縫合装置10によって胃壁を縫合する場合であれば、その長さは後側アーム12の前面からその先端までの長さが胃壁を貫通できる長さであればよく、その素材は金属が強度の点で好ましい。より具体的には、一対の針状部材15,16の先端から後側アーム12の前面までの長さH(
図5参照)が、7〜20mm程度が好ましく、7〜10mm程度がより好ましい。また、一対の針状部材15,16の軸径は、軸部bの先端部の軸径(やじり状部aとの連結部分)として、1〜2mm程度が好ましく、やじり状部aの最大径は軸部bの先端部の軸径よりも0.1〜1mm程度が大きい方が好ましい。
【0050】
(縫合器具20について)
また、
図7に示すように、本実施形態の縫合装置10は、縫合器具20を備えている。この縫合器具20は、円環状に形成された一対の係合部材21,21と、一対の係合部材21,21を連結する縫合糸22と、から構成されている。
【0051】
この縫合器具20の一対の係合部材21,21は、前側アーム11の収容部17の一対の収容空間18,19内にそれぞれ配置されるものである。
【0052】
この一対の係合部材21,21は、一対の収容空間18,19内に配置されたときに、その表裏を貫通する貫通孔が一対の収容空間18,19の小径部bを貫通する孔の上方に配置し得る大きさに形成されている。具体的には、一対の係合部材21,21は、その外径が一対の収容空間18,19の大径部aの内径よりも小さくかつ小径部bの内径よりも大きく形成されている(
図7(B)参照)。つまり、一対の係合部材21,21が一対の収容空間18,19内に配置されると、一対の係合部材21,21の外縁と大径部aの内面との間にわずかな隙間しか形成されないような大きさに、一対の係合部材21,21は形成されている。
【0053】
そして、一対の係合部材21,21の貫通孔21hは、一対の針状部材15,16のやじり状部aを挿通させることはできるが、やじり状部aが完全に貫通孔21hを挿通すると一対の針状部材15,16から一対の係合部材21,21が抜け落ちない構造に形成されている。具体的には、一対の係合部材21,21は、その内径が一対の針状部材15,16のやじり状部aの外径よりも小さいが一対の針状部材15,16の軸部bの先端(つまりやじり状部aとの連結部分)の軸径よりも大きくなるように形成されている。
【0054】
なお、この一対の係合部材21,21の素材はとくに限定されない。しかし、上述したような貫通孔21hを形成しても、一対の針状部材15,16のやじり状部aを挿通させつつ、一対の針状部材15,16に係合した状態を維持できるような性質を有する素材が好ましい。つまり、一対の係合部材21,21は、ある程度は弾性変形可能な素材によって形成されていることが望ましい。例えば、金属製の板や軸材等を使用すれば、上述したような性質を有する一対の係合部材21,21を形成することができる。
【0055】
(本実施形態の縫合装置10の作動の概略)
以上のごとき構成であるので、本実施形態の縫合装置10では、アーム移動手段13を操作して前側アーム11と後側アーム12を接近させれば、一対の針状部材15,16を、同時に一対の収容空間18,19に挿入することができる。
【0056】
すると、一対の収容空間18,19内に配置されている縫合器具20の一対の係合部材21,21に、一対の針状部材15,16のやじり状部aを同時に挿通させることができる。そして、一対の針状部材15,16のやじり状部a全体が一対の収容空間18,19の小径部bに挿入されるまで前側アーム11と後側アーム12を接近させれば、一対の針状部材15,16を、その軸部bまで一対の係合部材21,21に貫通させることができる。
【0057】
この状態で、アーム移動手段13を操作して、前側アーム11と後側アーム12とを離間させれば、一対の係合部材21,21を一対の針状部材15,16とともに一対の収容空間18,19から離脱させることができる。なお、縫合糸22は、上述したスリットを通して一対の収容空間18,19から離脱させることができる。
【0058】
すると、一対の針状部材15,16に一対の係合部材21,21が係合した状態となるから、一対の係合部材21,21を連結する縫合糸22によって、一対の針状部材15,16が連結された状態とすることができる(
図8(C)参照)。
【0059】
したがって、本実施形態の縫合装置10によれば、前側アーム11と後側アーム12の間に物体を配置した状態で、前側アーム11と後側アーム12を1回接近離間させるだけで、縫合糸22を、その両端が物体の同じ側に位置するように物体を貫通させることができる。言い換えれば、縫合糸22の両端間の部分が物体に引っ掛かった状態となるように、縫合糸22を物体に貫通させることができるのである(
図8(C)参照)。
【0060】
(本実施形態の縫合装置10による生体の縫合について)
上記のごとき構成を有するので、本実施形態の縫合装置10を内視鏡1のシャフト2に取り付けておけば、胃壁などの組織を胃の内部から縫合することができる。
【0061】
以下、本実施形態の縫合装置10を使用して、胃壁を内反させた状態で縫合する縫合作業を、
図8に基づいて説明する。なお、
図8では、動きを分かりやすくするために、適宜構成の記載を削除している。
【0062】
まず、胃内に、本実施形態の縫合装置10を取り付けた内視鏡1のシャフト2を挿入する。そして、縫合すべき個所の胃壁を内視鏡に挿通した内視鏡用鉗子で内側に引き込む等の方法で内方に凹ませて、胃内部に突起状の部分(突起部PP)を形成させる。
【0063】
その状態で、アーム移動手段13を操作して、前側アーム11を後側アーム12から離間させる。そして、縫合針部14の一対の針状部材15,16の先端と、前側アーム11の背面11bとの間に、突起部PPを挟むことができる程度の隙間を形成する。その状態で、シャフト2を操作して、縫合針部14の一対の針状部材15,16の先端と前側アーム11の背面11bとの間の隙間に突起部PPを配置する(
図8(A))。
【0064】
そして、アーム移動手段13を操作して、前側アーム11の移動を固定した状態で後側アーム12を前側アーム11に向かって移動させる。すると、縫合針部14の一対の針状部材15,16が突起部PPを貫通し、その先端が一対の収容空間18,19に挿入されるので、一対の針状部材15,16のやじり状部aを縫合器具20の一対の係合部材21,21とそれぞれ係合させることができる(
図8(B))。
【0065】
なお、
図8(B)では、後側アーム12と前側アーム11とを接近させる際に、後側アーム12を前側アーム11に接近させる場合を説明したが、前側アーム11を後側アーム12に接近させてもよいし、両者をともに移動させて両者を接近させてもよい。
【0066】
一対の針状部材15,16のやじり状部aに一対の係合部材21,21を係合させたら、アーム移動手段13を操作して、後側アーム12を前側アーム11から離間させる。このとき、一対の針状部材15,16は、突起部PPを貫通した孔を通ってそれぞれ元の位置に戻る。すると、縫合糸22の両端が固定されている一対の係合部材21,21がいずれも突起部PPの一方の側(
図8(C)では上側)に位置した状態となる。すると、縫合糸22によって、針状部材15から突起部PPを貫通して針状部材15の反対側に出てから、突起部PPを貫通し針状部材16に戻る輪が形成される(
図8(C)参照)。
【0067】
上記のごとき縫合糸22の輪が形成されると、突起部PPの対向する壁面同士を接触させた状態で縫合糸22を結紮する。具体的には、縫合糸22において、針状部材15(つまり一方の係合部材21)から突起部PPに向かって延びている部分と、針状部材16(つまり他方の係合部材21)から突起部PPに向かって延びている部分を結紮する。
【0068】
最後に、縫合糸22において、結紮した部分よりも一対の針状部材15,16側に位置する部分を切れば、突起部PPの対向する壁面同士を接触させた状態で固定することができるのである。
【0069】
縫合糸22の結紮は、市販されているクリップなどを利用することができる。例えば、クリップなどを内視鏡1の鉗子口から供給して縫合糸22に取り付ければ、結紮することができる。また、日本国特許5294181号に記載されている結紮部材や、この結紮部材と同等の機能を有する結紮部材によって結紮してもよい。
【0070】
例えば、日本国特許5294181号に記載されている結紮部材と同等の機能を有する結紮部材(以下単に結紮部材50という)が、
図12に示すような構造を有している場合を説明する。
【0071】
図12に示すように、結紮部材50は、中空な管状部材51と、この管状部材に挿通された線状部材52と、を備えている。
この線状部材52は輪状に形成されたものであり、管状部材51に挿通されている。線状部材52は、その一端部が管状部材51の一端側に突出しており、管状部材51の一端側で輪状のループ部52rを形成している。また、線状部材52の他端部は管状部材51の他端側に突出しており、管状部材51の他端側で輪状のループ部52aを形成している。
【0072】
管状部材51は、線状部材52(つまり2本の線状部材)が挿通できる程度の内径に形成されている。言い換えれば、線状部材52が管状部材51内を移動できる程度の内径に形成されている。例えば、線状部材52の素線径が0.3〜1.0mm程度であれば、管状部材51は、その内径は約1.5〜2.5mm程度となるように形成されている。
【0073】
以上のごとき構造であるので、管状部材51の移動を固定しながら、線状部材52のループ部52aを管状部材51から離間する方向に引っ張れば、管状部材51から突出していたループ部52rを管状部材51に引き込むことができる。すると、ループ部52rを小さくすることができる。
逆に、線状部材52のループ部52aを保持した状態で、管状部材51を線状部材52のループ部52rに向かって押した場合でも、管状部材51から突出していたループ部52rを管状部材51内に収容することができるから、ループ部52rを小さくすることができる。
【0074】
この結紮部材50によって結紮を実施する場合には、縫合装置10の縫合針部14が、線状部材52のループ部52r内に挿入された状態となるように配置する。そして、
図13に示すようにすれば、縫合した縫合糸22を結紮することができる。
【0075】
まず、結紮部材50を備えた縫合装置10を内視鏡1のシャフト2に取り付ける。このとき、縫合針部14の一対の針状部材15,16が、線状部材52のループ部52r内に挿通された状態となるように、結紮部材50を配置しておく(
図12参照)。
【0076】
その状態で、縫合装置10によって上述したような方法で突起部PPを縫合する。つまり、縫合器具20の縫合糸22の両端が、突起部PPに対して同じ側に位置するように配置される(
図13(A))。
【0077】
この状態で、内視鏡用結紮装置等を用いて、結紮部材50の線状部材52のループ部52rを移動させて、縫合糸22の両端(つまり一対の針状部材15,16の先端)と突起部PPの間に位置するように配置する(
図13(A))。
【0078】
ループ部52rを結紮に適した位置に配置すると、内視鏡用結紮装置等によって、管状部材51の移動を固定しながら、線状部材52の他端部を管状部材51から離間する方向に引っ張る。すると、ループ部52rが小さくなり、ループ部52rによって縫合糸22の両端部が束ねられた状態となる(
図13(B))。
【0079】
そして、ループ部52rによって縫合糸22の両端部が束ねられた状態からさらに線状部材52を引っ張ると、ループ部52rとともに縫合糸22も管状部材51内に引き込まれる((
図13(C)))。すると、管状部材51の内径は線状部材52が2本挿通できる程度であるから、管状部材51内に線状部材52と縫合糸22と密着しかつ圧縮された状態で収容される。つまり、線状部材52と縫合糸22が管状部材51内に締まりばめされた状態で収容されることになるので、縫合糸22および線状部材52は、管状部材51から抜け落ちないように固定される。つまり、縫合糸22の両端部が結紮されるのである。
【0080】
以上のように、結紮部材50を使用すれば、縫合糸22の両端部を囲むように線状部材52のループ部52rを配置し、線状部材52を引っ張るだけで、ループ部52rによって縫合糸22を束ねて結紮することができるので、迅速かつ簡単に縫合糸22の結紮を行うことができる。
【0081】
(連結機構30について)
本実施形態の縫合装置10では、前側アーム11だけ、または、前側アーム11と後側アーム12の両方がアーム移動手段13に着脱可能に設けられている。つまり、アーム移動手段13をシャフト2に取り付けた状態で、前側アーム11だけ、または、前側アーム11と後側アーム12の両方を交換できるようになっている。かかる構成とすることによって、一回の縫合作業の終了後、前側アーム11だけ、または、前側アーム11と後側アーム12の両方を取り外し、既に係合部材21がセットされている別の前側アーム11を取り付けるだけで、次の縫合作業を行うことができる。すると、縫合装置10全体を着脱する場合に比べて、一回の縫合が終了したのち、次の縫合を実施するまでの時間を短くすることができる。言い換えれば、一回の縫合が終了したのち、アーム移動手段13をシャフト2に着脱することなく、次の縫合を実施できる。したがって、複数個所の縫合を行う場合において、縫合作業全体の時間を短縮することができる。
【0082】
前側アーム11だけ、または、前側アーム11と後側アーム12の両方をアーム移動手段13に着脱可能にする構成の一例を、
図5、9〜11に基づいて説明する。
【0083】
(前側アーム11だけを着脱する場合)
本実施形態の縫合装置10では、スライド機構40のスライド41と前側アーム11を着脱可能に連結することによって、前側アーム11が後側アーム12やアーム移動手段13に着脱できるようになっている。
【0084】
図5に示すように、前側アーム11の基端縁には、連結片31が設けられている。この連結片31は、スライド41の背面に形成された溝gに係合している。この連結片31の先端には、爪部nが設けられている。この爪部nは、連結片31をスライド41の背面の溝gに係合すると、爪部nと前側アーム11の背面11bとの間にスライド41を挟んで固定できるようになっている。
【0085】
以上のような構造になっているので、前側アーム11の連結片31の爪部nとスライド41との係合を外せば、前側アーム11を後側アーム12から、取り外すことができる。
【0086】
一方、前側アーム11に設けられている縫合糸収容パイプ11pを筒状連結部材41sに挿入し、連結片31をスライド41の背面の溝gに係合すれば、前側アーム11をスライド41に固定することができる。
【0087】
一方、前側アーム11は、スライド41を介してアーム移動手段13のワイヤー部13bに連結されており、ワイヤー部13bとは直接連結されていない。このため、前側アーム11を着脱する際に、ワイヤー部13bと前側アーム11を着脱する作業が不要である。
【0088】
したがって、連結片31をスライド41の背面の溝gに係合離脱するだけで、前側アーム11を、後側アーム12やアーム移動手段13に対して着脱できるので、前側アーム11の交換作業を簡素化できる。
【0089】
そして、前側アーム11と後側アーム12の相対的な移動は、スライド機構40のベース部材42とスライド41によって案内されるので、前側アーム11が着脱可能になっていても、前側アーム11と後側アーム12の相対的な移動を安定させることができる。とくに、ベース部材42とスライド41が、互いにスライド可能ではあるが分離できないようにしておけば、前側アーム11を後側アーム12に対して着脱可能としても、前側アーム11と後側アーム12の接近離間する移動を安定した状態に維持できる。
【0090】
なお、上記例では、スライド41がワイヤー部13bに連結されている場合を説明した。つまり、前側アーム11は、スライド41を介してワイヤー部13bに連結されている場合を説明した。しかし、前側アーム11を直接アーム移動手段13のワイヤー部13bに着脱する構成としてもよい。例えば、以下の構成を採用すれば、前側アーム11を直接アーム移動手段13のワイヤー部13bに着脱することができる。
【0091】
上述した筒状連結部材41sを、スライド41ではなく前側アーム11に固定し、この筒状連結部材41sを上述した連結管42pの貫通孔に挿入した状態とする(
図5参照)。この状態の筒状連結部材41sの先端に、ワイヤー部13bの先端を着脱可能に連結する。具体的には、ワイヤー部13bの先端に、その外径が筒状連結部材41sの内径よりも若干大きくなるように形成された挿入部材32を設ける。すると、挿入部材32を筒状連結部材41sの先端に挿入すれば、ワイヤー部13bが筒状連結部材41sに固定される。つまり、ワイヤー部13bが、筒状連結部材41sを介して(言い換えれば直接)前側アーム11に固定される。一方、ワイヤー部13bを引っ張れば、ワイヤー部13bを筒状連結部材41sの先端から離脱できる。つまり、ワイヤー部13bを前側アーム11から分離することができる。
【0092】
なお、ワイヤー部13bと筒状連結部材41sを着脱可能に連結する方法は、上記のごとき方法に限られず、種々の方法を採用できる。例えば、ワイヤー部13bの先端に雄ネジを設けて、筒状連結部材41sの先端に雌ネジを設けてもよい。この場合には、ワイヤー部13bを回転させれば、ワイヤー部13bと筒状連結部材41sを連結したり外したりすることができる。
【0093】
また、前側アーム11を直接アーム移動手段13のワイヤー部13bに着脱する構成とした場合には、前側アーム11とスライド41は、上述したような機構で分離可能に設けられていてもよいし固定されていてもよい。前側アーム11とスライド41が固定されている場合には、スライド41をベース部材42から分離できるようにすれば、前側アーム11とともにスライド41を後側アーム12に対して取り外すことができる。なお、前側アーム11とともにスライド41を後側アーム12に対して取り外す場合には、筒状連結部材41sはスライド41に固定されていてもよい。
【0094】
上述した連結片31およびスライド41の背面の溝gが、特許請求の範囲にいう前側アーム連結部に相当する。しかし、スライド41と前側アーム11を固定する方法は上記のごとき方法に限られない。例えば、ネジなどによってスライド41と前側アーム11を固定してもよい。しかし、上述した連結片31およびスライド41の背面の溝g等のように、工具などを使用せずにスライド41と前側アーム11を着脱可能できる方法が望ましい。
【0095】
(前側アーム11と後側アーム12の両方を着脱する場合)
また、前側アーム11と後側アーム12の両方を着脱する場合には、シース13aおよびワイヤー部13bをスライド機構40に対して着脱可能に連結すればよい。例えば、以下のような構成とすることができる。
【0096】
まず、スライド機構40のベース部材42に、中空な筒状の連結管42pを設ける。具体的には、連結管42pの軸方向が縫合針部14の針状部材15,16の軸方向と平行となるように設ける。しかも、連結管42pは、連結管42pによって、ベース部材42を貫通孔(言い換えれば、後側アーム12を貫通する孔)が形成されるように配置する。
【0097】
そして、この連結管42pの基端(
図5、9、11では上端)に、シース13aの先端を着脱可能に連結すれば、後側アーム12をアーム移動手段13に着脱することができる。
【0098】
この場合において、連結管42pとシース13aの先端を着脱可能に連結する方法はとくに限定されない。例えば、
図5に示すように、シース13aの先端に雄ネジを設けて、連結管42pの内面に雌ネジを設けて、外面に雄ネジが形成され内面に雌ネジが形成された連結ピース33によって連結することができる。この場合には、シース13a先端の雄ネジを連結ピース33内面の雌ネジに螺合し、連結ピース33外面の雄ネジを連結管42pの雌ネジに螺合する。すると、連結ピース33を介して、シース13aと連結管42p(つまり後側アーム12)を連結したり外したりすることができる。この場合、シース13aを回転させなくても、連結ピース33を回転させるだけでシース13aと連結管42pとを着脱できるので、シース13aと連結管42p(つまり後側アーム12)の着脱を容易にすることができる。
【0099】
また、シース13aの先端に雄ネジを設けて、連結管42pの先端に雌ネジを設けてもよい。この場合は、シース13aに対して連結管42pを回転させれば、シース13aと連結管42p(つまり後側アーム12)を連結したり外したりすることができる。
【0100】
一方、前側アーム11をアーム移動手段13に着脱する方法としては、以下の構成を採用することができる。
上述した連結管42pの貫通孔に、スライド41に固定されている筒状連結部材41sを挿入し(
図5参照)。この筒状連結部材41sの先端に、ワイヤー部13bの先端を着脱可能に連結する。具体的には、ワイヤー部13bの先端に、その外径が筒状連結部材41sの内径よりも若干大きくなるように形成された挿入部材32を設ける。すると、挿入部材32を筒状連結部材41sの先端に挿入すれば、ワイヤー部13bが筒状連結部材41sに固定される。つまり、ワイヤー部13bがスライド41に固定される。一方、ワイヤー部13bを引っ張れば、ワイヤー部13bを筒状部材11dの先端から離脱できる。つまり、ワイヤー部13bをスライド41から分離することができる。
【0101】
なお、ワイヤー部13bと筒状連結部材41sを着脱可能に連結する方法は、上記のごとき方法に限られず、種々の方法を採用できる。例えば、ワイヤー部13bの先端に雄ネジを設けて、筒状連結部材41sの先端に雌ネジを設けてもよい。この場合には、ワイヤー部13bを回転させれば、ワイヤー部13bと筒状連結部材41sを連結したり外したりすることができる。
【0102】
このように、前側アーム11と後側アーム12の両方を着脱できるようにしておけば、上述したような結紮部材50を使用する場合において、縫合作業の時間を短縮することができるという利点も得られる。
【0103】
上述した結紮部材50は、縫合装置10の縫合針部14を線状部材52のループ部52に挿入した状態で取り付けられる。したがって、前側アーム11のみを着脱するようにした場合には、前側アーム11の交換の際に、結紮部材50を設置する作業が必要になる。
【0104】
しかし、後側アーム12も着脱可能とし、前側アーム11とともに後側アーム12も交換するようにすれば、予め縫合装置10(つまり縫合針部14)に結紮部材50を取り付けておくことができる。すると、結紮部材50を設置する手間を省くことができるので、縫合作業の時間を短縮することができる。
【0105】
(縫合針部14について)
縫合針部14は一対の針状部材15,16を備えているが、一対の針状部材15,16の軸間距離は、とくに限定されない。縫合糸22によって縫合部分を適切に縫合できる程度の距離に設けられていればよい。例えば、2〜4mm程度にしておけば、外科手術における縫合と同等程度の縫合状態を実現することが可能となる。
【0106】
また、上記例では、縫合針部14の一対の針状部材15,16が、後側アーム12の軸方向に沿って並ぶように配設されている場合を説明した。しかし、一対の針状部材15,16は、必ずしも軸方向に沿って並ぶように配設されていなくてもよい。例えば、後側アーム12の軸方向に対して傾けて配設したり、直交するように配設したりしてもよい。なお、前側アーム11の収容部17の一対の収容空間18,19は、縫合針部14の一対の針状部材15,16に対応するように配置される。
【0107】
(縫合装置10の他の構造)
上記例では、縫合針部14が一対の針状部材15,16を有する場合を説明した。しかし、日本国特許5294181号に記載されている縫合装置のように、縫合針部14が、針状部材15を一本のみ備えているものとしてもよい(
図14参照)。この場合には、前側アーム11に一対の分岐部11s,11sを設けて、前側アーム11と後側アーム12が相互回転できるようにする。例えば、スライド機構40のスライド41とベース部42を着脱できるように構成し、スライド41とベース部42が離脱した際には、両者が相互回転できるようする。そして、各分岐部11sに、収容部17の収容空間18をそれぞれ設けて、各収容空間18に縫合糸22によって連結された一対の係合部材21,21を配置しておけば、胃壁等に形成された開口部を全層縫合することができる。
【0108】
つまり、針状部材15と一方の分岐部11sの収容空間18(一方の収容空間18)が対向するように前側アーム11と後側アーム12を配置して前側アーム11と後側アーム12とを接近させる。すると、一方の収容空間18内に配置されている係合部材21(一方の係合部材21)と針状部材15の先端部とを係合させることができる。また、一方の係合部材21が針状部材15の先端部に係合された状態で前側アーム11と後側アーム12とを離間させた後、後側アーム12を揺動させて、針状部材15と他方の分岐部11sの収容空間18(他方の収容空間18)とが対向するように前側アーム11と後側アーム12を配置する。その状態で前側アーム11と後側アーム12とを接近させれば、針状部材15の先端部を他方の収容空間18内に挿入させることができるから、他方の収容空間18内の係合部材21(他方の係合部材21)と針状部材15の先端部とを係合させることができる。すると、一対の係合部材21,21がいずれも一本の針状部材15に係合した状態となるから、一対の係合部材21,21同士を連結する縫合糸22を輪状にすることができる。
【0109】
このため、縫合装置10を内視鏡に取り付けた状態で体内に挿入し、胃壁などの切開部において、一方の口縁部を前側アーム11と後側アーム12とによって挟むように配置して、前側アーム11と後側アーム12とを一旦接近させてから離間させれば、一方の口縁部に縫合糸22を貫通させることができる。そして、他方の口縁部を前側アーム11と後側アーム12とによって挟むように配置して、前側アーム11と後側アーム12とを一旦接近させてから離間させれば、他方の口縁部に縫合糸22を貫通させることができる。すると、切開部の一対の口縁部を挿通し両端部(一対の係合部材21,21と連結されている部分)がいずれも後側アーム12側に位置した縫合糸22の輪を形成することができる。したがって、輪状になった縫合糸22の両端部を結紮すれば、通常の外科手術における縫合と同様に、一対の口縁部の端面(切開面)同士を突き合わせた状態で切開部を縫合することができる。
【0110】
このように、縫合針部14の針状部材15を一本のみとし、前側アーム11に一対の分岐部11s,11sを設けて前側アーム11と後側アーム12が相互回転できるようにした場合には、針状部材15と各収容空間18の位置合わせが重要になる。スライド機構40のスライド41とベース部42を以下のような構造にすれば、針状部材15と各収容空間18の位置合わせが容易になる。
【0111】
図14および
図15に示すように、スライド機構40におけるベース部42を断面正方形に形成し、その側面を揺動軸(言い換えればシース13aの中心軸)と平行な平坦面に形成する。具体的には、ベース部42に、揺動軸の軸方向と平行かつ針状部材15が設けられている側と反対側に位置するように基準側面42aを形成する。そして、基準側面42aを両側から挟むように、基準側面42aと直交する一対の位置決め側面42b,42cを設ける(
図15(A)参照)。
【0112】
一方、スライド41の案内溝41gに、揺動軸の軸方向と平行な平坦面であって、その交差角度がベース部42の基準側面42aと一対の位置決め側面41b,41cがなす角度と同じになるように一対の案内面41a,41bを形成する。つまり、一対の案内面41a,41bを互いに直交するように設ける(
図15(B)参照)。
【0113】
そして、案内溝41gを、ベース部42の基準側面42aが案内面41aまたは案内面41bに面接触するようにベース部42を係合させると、一対の位置決め側面42b,42cのいずれか一方が案内面41aまたは案内面41bと面接触して、針状部材15の中心軸がいずれかの収容空間18の中心軸と同軸となるように形成する。
図14(B)であれば、ベース部42の基準側面42aを案内面41bに面接触させると、位置決め側面42bは案内面41aに面接触する。すると、ベース部42は、針状部材15の中心軸が一方の収容空間18(
図14(B)であれば左側の収容空間18)の中心軸と同軸となるように位置決めされる。逆にベース部42の基準側面42aを案内面41aに面接触させると、位置決め側面42cが案内面41bに面接触する。すると、針状部材15の中心軸は他方の収容空間18(
図14(B)であれば右側の収容空間18)の中心軸と同軸となるように位置決めされる。
【0114】
以上のごとき構成とすることによって、スライド機構40のベース部42をスライド41における後側アーム12側の端部から案内溝41gに係合させれば、案内溝41gに沿ってベース部42を前側アーム11に移動させることができる。すると、ベース部42と案内溝41gを2面で面接触させることができるので、後側アーム12と前側アーム11との相対的な回転を固定した状態、つまり、後側アーム12と前側アーム11を位置決めした状態で接近離間させることができる。したがって、針状部材15の中心軸を収容空間18の中心軸と同軸に保ったまま接近させることができるから、針状部材15を収容空間18内に確実かつ簡単に挿入することができる。
【0115】
また、
図15(B)に示すように、案内溝41gの一対の案内面41a,41bにそれぞれ案内面41a,41bに沿って伸びたレール上の突起41pを形成しておき、ベース部42に突起41pと係合し得る溝42gを形成しておいてもよい。この場合には、ベース部42とスライド41をより確実に位置決めすることができる。言い換えれば、後側アーム12と前側アーム11を確実に位置決めすることができるという利点が得られる。
【0116】
なお、
図14(B)では、基準側面42aの法線方向が針状部材15の中心軸と揺動軸(シース13aの中心軸)を結ぶ線と平行になるように配設されている構造を示しているが、上述したような機能を満たすのであれば、基準側面42aの法線方向は針状部材15の中心軸と揺動軸を結ぶ線に対してある程度角度を持っていてもよい。
【0117】
また、スライド機構の構造は、上述したよう構造に限定されない。針状部材15の中心軸と収容空間18の中心軸とが同軸上に位置した状態で、前側アーム11に対する後側アーム12の揺動は固定するが両者が接近離間する方向への移動は許容するような構造であればよい。