特許第6755554号(P6755554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6755554
(24)【登録日】2020年8月28日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】加熱部材および加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/64 20060101AFI20200907BHJP
   H05B 6/76 20060101ALI20200907BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20200907BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   H05B6/64 Z
   H05B6/76 B
   H01L21/324 G
   H01L21/268 Z
【請求項の数】23
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-547804(P2017-547804)
(86)(22)【出願日】2016年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2016081587
(87)【国際公開番号】WO2017073563
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-213206(P2015-213206)
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛島 満
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和愛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 歩太
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 俊之
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−037293(JP,B1)
【文献】 特開2006−147782(JP,A)
【文献】 特開平05−270942(JP,A)
【文献】 特開2009−295905(JP,A)
【文献】 特公平07−054742(JP,B2)
【文献】 国際公開第2013/145932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B6/46,6/52−6/64,6/70−6/80
H01L21/268,21/324,21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、
前記収容体に設けられ、前記収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、
を備え、
前記導体粒子は前記収容体内に封入され、前記収容体内の前記導体粒子の体積は、前記収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下であることを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
前記収容体のうち、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記収容体の内壁上に配置される導体層をさらに備えることを特徴とする請求項1またはに記載の加熱部材。
【請求項4】
前記収容体は、壁内に導体層を備えることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項5】
前記収容体は、前記導体層を覆う耐酸化性材料で形成される層をさらに備えることを特徴とする請求項またはに記載の加熱部材。
【請求項6】
前記導体層の厚さは、当該導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項7】
前記導体層は、アモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料またはタングステンもしくはモリブデンを含む高融点金属であることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項8】
前記導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有することを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項9】
前記窓部は誘電体であることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項10】
前記収容体の内部圧力は、大気圧の6分の1以下であることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項11】
前記収容体内部は、不活性ガス雰囲気または無酸素雰囲気であることを特徴とする請求項から10のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項12】
マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、
前記収容体に設けられ、前記収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、
を備え、
前記導体粒子は、誘電体と混合されて前記収容体に充填され、
前記収容体内の前記導体粒子の体積は、前記収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下であることを特徴とする加熱部材。
【請求項13】
前記収容体のうち、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の加熱部材。
【請求項14】
前記収容体の内壁上に配置される導体層をさらに備えることを特徴とする請求項12または13に記載の加熱部材。
【請求項15】
前記収容体は、壁内に導体層を備えることを特徴とする請求項12または13に記載の加熱部材。
【請求項16】
前記収容体は、前記導体層を覆う耐酸化性材料で形成される層をさらに備えることを特徴とする請求項14または15に記載の加熱部材。
【請求項17】
前記導体層の厚さは、当該導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであることを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項18】
前記導体層は、アモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料またはタングステンもしくはモリブデンを含む高融点金属であることを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項19】
前記導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有することを特徴とする請求項14から18のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項20】
前記窓部は誘電体であることを特徴とする請求項12から19のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項21】
前記収容体の内部圧力は、大気圧の6分の1以下であることを特徴とする請求項12から20のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項22】
前記収容体内部は、不活性ガス雰囲気または無酸素雰囲気であることを特徴とする請求項12から21のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の加熱部材と、
前記加熱部材と、被加熱対象とを収容する処理容器と、
前記処理容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波導入部と、
前記処理容器内に所定のガスを供給するガス供給部と、
前記処理容器内から酸素を除去する排気部と、
を備えることを特徴とする加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、加熱部材および加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜アモルファスシリコン、特に低温ポリシリコン(LTPS:Low-temperature Poly Silicon)を結晶化させるためのアニール技術としてエキシマレーザアニール(ELA)技術が広く利用されている。また、量子ドット(QD)超格子を太陽電池に利用して変換効率を高める研究が進められている。ナノ構造体の作成手法としては、ボトムアップアプローチとトップダウンアプローチが知られている。トップダウン方式での量子ドット太陽電池の製造では、たとえば、約2ナノメートル(nm)の厚みの極薄アモルファスシリコンの薄膜と、極薄酸化シリコン(SiC)層とを交互に積層する。そして、積層して作成した基板をアニーリングする。これによって、アモルファスシリコン層が結晶化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−330945号公報
【特許文献2】特開2004−172200号公報
【特許文献3】特開2006−147782号公報
【特許文献4】特開平1−216522号公報
【特許文献5】特開2009−295905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような基板をランプアニールやレーザアニールを用いて結晶化させようとすると、所望の結晶化が達成できない場合がある。特に、アモルファスシリコン層が薄い場合、光吸収が不十分なためにランプアニールやレーザアニールでは結晶化が困難である。たとえば、量子ドット超格子を利用したアモルファスシリコンの膜厚は約2ナノメートルと極薄であるため、レーザ光を吸収できない。また、ホットウォール型のアニール炉を使用した場合にはサーマルバジェットが大きくなるため、下地のn層またはp層の不純物が拡散してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示する加熱部材の一態様は、マイクロ波吸収体である導体粒子と誘電体との混合物で形成される発熱体と、発熱体の表面の少なくとも一部を覆う導体層と、導体層の少なくとも一部に設けられ、発熱体に照射されるマイクロ波を案内する窓部と、を備える。発熱体の体積に対する導体粒子の体積の比率は、0.04以上0.15以下である。
【0006】
また、開示する加熱部材の一態様は、マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、収容体に設けられ、収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、を備える。導体粒子は収容体内に封入され、収容体内の導体粒子の体積は、収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下である。
【0007】
また、開示する加熱部材の一態様は、マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、収容体に設けられ、収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、を備える。導体粒子は、誘電体と混合されて収容体に充填される。収容体内の導体粒子の体積は、収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下である。
【0008】
また、開示する加熱装置の一態様は、上記のような加熱部材と、加熱部材と被加熱対象とを収容する処理容器と、処理容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波導入部と、処理容器内に所定のガスを供給するガス供給部と、処理容器内から酸素を除去する排気部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示する加熱部材および加熱装置の一態様によれば、効率的な加熱処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る加熱部材の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態に係る加熱部材の製造方法の流れの他の例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態の変形例に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る加熱部材の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第3の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す断面図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
図9図9は、第4の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す断面図である。
図10図10は、第1の実験例について説明するための図である。
図11A図11Aは、第2の実験例について説明するための図である。
図11B図11Bは、第2の実験例について説明するための他の図である。
図11C図11Cは、第2の実験例について説明するためのさらに他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、発熱体と、導体層と、窓部と、を備える。発熱体は、マイクロ波吸収体である導体粒子と誘電体との混合物で形成される。導体層は、発熱体の表面の少なくとも一部を覆う。窓部は、導体層の少なくとも一部に設けられ、発熱体に照射されるマイクロ波を案内する。発熱体の体積に対する導体粒子の体積の比率は、0.04以上0.15以下である。
【0012】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、発熱体の表面のうち、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料をさらに備えてもよい。
【0013】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、発熱体を直接覆ってもよい。
【0014】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、発熱体の外側に設けられた外壁内に配置されてもよい。
【0015】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、外壁は耐酸化性材料で形成されてもよい。
【0016】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層の厚さは、当該導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであってもよい。
【0017】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、アモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料またはタングステンまたはモリブデンを含む高融点金属であってもよい。
【0018】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有してもよい。
【0019】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、窓部は誘電体であってもよい。
【0020】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、収容体に設けられ、収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、を備え、導体粒子は収容体内に封入され、収容体内の導体粒子の体積は、収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下であってもよい。
【0021】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体のうち、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料をさらに備えてもよい。
【0022】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、収容体の内壁上に配置される導体層をさらに備えてもよい。
【0023】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体は、壁内に導体層を備えてもよい。
【0024】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体は、導体層を覆う耐酸化性材料で形成される層をさらに備えてもよい。
【0025】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層の厚さは、当該導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであってもよい。
【0026】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、アモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料またはタングステンもしくはモリブデンを含む高融点金属であってもよい。
【0027】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有してもよい。
【0028】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、窓部は誘電体であってもよい。
【0029】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体の内部圧力は、大気圧の6分の1以下であってもよい。
【0030】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体内部は、不活性ガス雰囲気または無酸素雰囲気であってもよい。
【0031】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、収容体に設けられ、収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、を備え、導体粒子は、誘電体と混合されて前記収容体に充填され、収容体内の導体粒子の体積は、収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下である。
【0032】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、収容体のうち、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料をさらに備えてもよい。
【0033】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態は、収容体の内壁上に配置される導体層をさらに備えてもよい。
【0034】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体は、壁内に導体層を備えてもよい。
【0035】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体は、導体層を覆う耐酸化性材料で形成される層をさらに備えてもよい。
【0036】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層の厚さは、当該導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであってもよい。
【0037】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、アモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料またはタングステンもしくはモリブデンを含む高融点金属であってもよい。
【0038】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有してもよい。
【0039】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、窓部は誘電体であってもよい。
【0040】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体の内部圧力は、大気圧の6分の1以下であってもよい。
【0041】
また、開示する加熱部材および加熱装置の一つの実施形態において、収容体内部は、不活性ガス雰囲気または無酸素雰囲気であってもよい。
【0042】
また、開示する加熱装置の一つの実施形態は、上記の加熱部材と、処理容器と、マイクロ波導入部と、ガス供給部と、排気部と、を備える。処理容器は、加熱部材と被加熱対象とを収容する。マイクロ波導入部は、処理容器内にマイクロ波を供給する。ガス供給部は、処理容器内に所定のガスを供給する。排気部は、処理容器内から酸素を除去する。
【0043】
以下に、開示する加熱部材および加熱装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0044】
以下に説明する実施形態は、被加熱対象を効率的に加熱するため、マイクロ波吸収体である導体粒子と、誘電体との混合物で形成され、所定の体積率の導体粒子を含有する発熱体を使用する。まず、実施形態の前提として、従来のマイクロ波吸収体について説明する。
【0045】
[従来のマイクロ波吸収体]
従来、マイクロ波吸収体として多孔体を用いたものが知られている。たとえば、一例では、樹脂発泡体を炭化させた多孔質カーボンの気孔内表面および外表面にCVD法によって炭化珪素を析出させる。そして、その後カーボンを酸化消失させて炭化珪素多孔体とし、炭化珪素多孔体の片面にシリコン層を形成してマイクロ波吸収発熱体を製造する。このマイクロ波吸収発熱体では、気孔率を40〜95%とすることで、ガス拡散性を高めるともに、熱の対流、耐熱衝撃性を良好にしている(特許文献1)。
【0046】
また、シリコーンエマルションに導電性材料を分散させた後、硬化させて得られる多孔質体を電波吸収体として利用することが知られている(特許文献2)。当該電波吸収体の場合、空隙率を30〜80%に調整することで、機械的強度や導電率が調節される。
【0047】
しかしながら、従来のマイクロ波吸収体は、導電性が低い材料からなる誘電体を含む場合など、マイクロ波が少なくとも一部透過する。このため、必ずしも所望の加熱効率を達成できるわけではなかった。
【0048】
[マイクロ波吸収体の加熱効率]
そこで、本願発明者らは、黒体に最も近い放射率となる粉末状カーボンたとえばカーボンナノパウダーを用いて実験を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0049】
図10は、第1の実験例について説明するための図である。第1の実験例では、業務用の電子レンジを使用して、カーボンナノパウダーをマイクロ波吸収材として用いてサンプルを加熱した。電子レンジ内のサンプルから放射される放射光は、放射温度計で計測した。放射温度計は、放射光を受光する受光部、光ファイバ、光学フィルタ、検出部、モニタ、レコーダ等で構成した。
【0050】
まず、ガラスのシャーレにカーボンパウダーを3ミリメートルの厚さに敷き詰めた。そして、敷き詰めたカーボンパウダーの上にサンプルを載置した。サンプルは極薄のアモルファスシリコン層を含む材料とした。サンプルをカーボンパウダー上に載せた状態でシャーレを電子レンジに入れ、2.45GHzで120秒間加熱した。この結果、アモルファスシリコン層2ナノメートルの結晶化が確認された。
【0051】
このように、カーボンナノパウダーをマイクロ波吸収材として用いることで、アモルファスシリコンを短時間で結晶化することができる。しかし、たとえば半導体の加熱処理の都度、処理容器内にカーボンナノパウダーを供給したり処理基板をカーボンナノパウダーで被覆したりすることは処理効率を著しく低下させる。また、カーボンナノパウダーの被覆量によって昇温特性が変動するため、プロセスを安定させるためには、カーボンナノパウダーをそのまま利用することは好ましくない。
【0052】
そこで、本発明者らはさらに、カーボンナノパウダーを容器の体積に対して所定の体積率で容器内に充填したサンプルを作成し、当該サンプルを用いて第2の実験を行った。ここで、体積率とは、容器の内容積に対する、一様に分散しているカーボンナノパウダー総量の体積分率を指す。つまり、体積率とは、容器内部の体積に対する、容器内に充填されるカーボンナノパウダーの体積の比率を指す。また、言い換えれば、容器内部に充填される物質が発熱体を構成するととらえるならば、体積率とは、発熱体の体積に対するカーボンナノパウダーすなわち導体粒子の体積の比率を指す。
【0053】
図11A乃至図11Cは、第2の実験例について説明するための図である。図11A乃至図11Cに示す第2の実験例ではまず、サンプルによるマイクロ波の透過率、反射率および吸収率を計測することができる計測器を作成した。
【0054】
第2の実験例に用いた計測器につき、図11Aを参照して説明する。計測器200は、マイクロ波発振部201と、導波管202と、光源203と、サンプル位置制御部204と、パワーメータ205と、ロックインインテグレータ206と、を備える。また、マイクロ波発振部201とパワーメータ205との間に、サンプルを載置するためのサンプル載置部207が設けられる。サンプル位置制御部204およびロックインインテグレータ206は、パーソナルコンピュータ(PC)208と接続される。
【0055】
マイクロ波発振部201は、マイクロ波を発振する。第2の実験例では、周波数9.35GHzのマイクロ波を用いた。発振されたマイクロ波は、導波管202に供給される。
【0056】
導波管202は、マイクロ波発振部201から供給されるマイクロ波と、光源203から供給されるレーザ光をサンプル載置部207に配置されるサンプルへ案内する。
【0057】
光源203は、レーザダイオードで構成され、光ファイバを介して波長635ナノメートル(nm)および波長980nmのレーザ光を供給する。
【0058】
サンプル位置制御部204は、サンプル載置部207の位置を調整することで、サンプル載置部207に載置されるサンプルの位置を調整する。サンプル位置制御部204は、サンプル載置部207に載置されるサンプルをY軸方向に移動させるY軸移動ステージ204Aと、サンプルをX軸方向に移動させるX軸移動ステージ204Bと、を有する。
【0059】
パワーメータ205は、サンプルを透過したマイクロ波のパワーを計測する。
【0060】
ロックインインテグレータ206は、パワーメータ205の後段に接続され、PC208に接続される。ロックインインテグレータ206と、光源203とには、同期パルスが供給される。
【0061】
マイクロ波発振部201が発振したマイクロ波は、導波管202を通ってサンプル載置部207を通過し、パワーメータ205に到達する。
【0062】
このように構成した計測器200において、サンプル載置部207に載置するサンプルを準備した。サンプルは、カーボンナノパウダーを円盤状の容器に充填して作成した。サンプルは、容器中のカーボンナノパウダーの体積率を変化させて複数準備し、各々について、透過率を計測した。
【0063】
図11Bは、第2の実験例において使用したサンプルについて説明するための図である。図11Bは、サンプルの断面図である。図11Bに示すように、容器中には所定の空隙を開けてカーボンナノパウダーが充填される。なお、カーボンナノパウダーは、いったん空気中に拡散すると3年程度は重力によって一方に堆積したりしないため、充填後は容器中に一様に分布するものと仮定する。
【0064】
図11Cは、第2の実験例の実験結果を説明するための図である。図11Cに示すグラフは、横軸にサンプル中のカーボンナノパウダーの体積率を示し、縦軸に、透過率、反射率および吸収率を示す。図11Cのグラフ中、線分(実線、点線、一点鎖線)で示す値はそれぞれシミュレーションによって得られた計算値を示し、丸印は実験で計測された実測値を示す。グラフから分かるように、シミュレーションによる計算値と実測値とはほぼ一致している。通常、マイクロ波は導体によって反射される。しかし、グラフをみると、カーボンナノパウダーの体積率が低い、すなわち空孔率が高いサンプル(グラフ中最も左側の丸印、体積率0.08)の場合、マイクロ波の吸収度はピークとなり約50%を吸収した。この実験結果から、ピーク吸収率の90%以上の吸収度となる0.04以上0.15以下の体積率のカーボンナノパウダーを発熱体として使用することで、マイクロ波の吸収効率すなわち加熱効率を高めることが可能であると考えられる。
【0065】
このようにカーボンナノパウダーを容器に充填し、かつ、容器の内容積に対するカーボンナノパウダー総量の体積分率を好適な範囲に設定することで、カーボンナノパウダーの取り扱いを容易にできるとともに、加熱効率の向上を実現できることが分かった。
【0066】
(第1の実施形態)
[加熱部材の構成の一例]
第1の実施形態に係る加熱部材は、上記実験から得られた知見に基づき、発熱体全体の体積に対する導体粒子の体積の比率が、0.04以上0.15以下となるように調整した発熱体を備える。なお、発熱体が空孔を有する場合、当該空孔の体積も発熱体の体積とみなす。図1は、第1の実施形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。
【0067】
図1に示す加熱部材10は、発熱体1と、導体層2と、誘電体窓3と、外壁4と、高熱伝導材料5と、導波路6と、を備える。
【0068】
発熱体1は、マイクロ波吸収体である導体粒子の体積率が0.04以上0.15以下の多孔質体である。導体粒子はたとえば、カーボンパウダー、カーボンナノパウダー等である。
【0069】
発熱体1は、カーボンの含有率が0.15以下の多孔質体であってもよい。
【0070】
発熱体1はまた、導体粒子と誘電体との混合物である。発熱体1は、たとえば導体粒子としてカーボンパウダー(カーボンナノパウダー)を含み、誘電体として炭化珪素等を含む。たとえば、発熱体1は、シリカゲルとカーボンナノパウダーとを、カーボンナノパウダーの分布が一様となるように混合し、空隙が材料全体に一様に分布するように成形することによって形成される。
【0071】
発熱体1は、カーボンパウダーを用いて形成する場合、基本波長がスキンデプスの2倍より小さくなるように成形することが好ましい。ここで、基本波長とは、周期性のある構造体の最小周期区間の長さを指す。ここでは、発熱体1の基本波長とは、発熱体1内の、カーボン粒子の繰り返し周期(隣接するカーボン粒子の中心間の距離)を示したものとする。基本波長をスキンデプスの2倍より小さく設定することの意義については後述する。
【0072】
導体層2は、発熱体1の表面の少なくとも一部を覆う。導体層2は、発熱体1に吸収されたマイクロ波を発熱体1内に閉じ込める。図1に示す第1の実施形態では、導体層2は、誘電体窓3が配置される位置を除く発熱体1の表面全体を直接覆う。
【0073】
導体層2は、スキンデプス以上の厚みを有する。たとえば、導体層2をタングステンまたはモリブデンで形成したとする。タングステン、モリブデンの比抵抗は100℃で約5μΩcm、1200℃で約38μΩcmである。使用する高周波が2.45GHzであると、スキンデプスは約2μmから6μmとなる。したがって、タングステンまたはモリブデンを導体層2に用いた場合、導体層2の厚さは、2μm以上であることが好ましい。
【0074】
導体層2はたとえば、アモルファスカーボン、カーボングラファイト等の炭素材料またはタングステン、モリブデン等の高融点金属等で形成する。
【0075】
導体層2は、熱容量を下げるために、シート状ではなくメッシュ状としてもよい。この場合、メッシュ状の導体層2は、導波管6から導入されるマイクロ波の波長の約10分の1程度のメッシュ状の空隙を有してもよい。たとえば、マイクロ波の周波数が2.45GHzの場合、波長は約122mmである。したがって、導体層2に約1.2mm以下のメッシュ状の空隙を形成してもよい。
【0076】
誘電体窓3は、導波路6から発熱体1内にマイクロ波を案内する。第1の実施形態では、誘電体窓3は、発熱体1の、被加熱対象(サンプル)Sが載置される側とは反対側に設ける。ただし、導波路6の形状や構造によって、誘電体窓3の位置および形状は適宜変更することができる。
【0077】
第1の実施形態において、マイクロ波を発熱体1に案内する窓は、導体ではなく誘電損失の小さい誘電体で形成する。導体を用いるとマイクロ波が反射されてしまうが、誘電体を用いることでマイクロ波を減衰させることなくマイクロ波吸収体に誘導できる。
【0078】
外壁4は、発熱体1の表面を覆う導体層2の外表面上に形成される。外壁4は、導体層2の材料の性質に応じて設けられる。たとえば、導体層2の材料としてアモルファスカーボン、カーボングラファイト等の炭素材料を使用する場合、導体層2と酸素が接触すると、導体層2が酸化する。そこで、導体層2の酸素との接触による酸化を防止するため、外壁4を設ける。導体層2の材料によっては、外壁4は設けなくてもよい。
【0079】
高熱伝導材料5は、発熱体1の、被加熱対象Sが配置される側に配置される。高熱伝導材料5は、発熱体1から被加熱対象Sに熱を伝える。高熱伝導材料5は、たとえば、結晶SiCで形成する。
【0080】
導波路6は、マイクロ波を誘電体窓3を介して発熱体1に案内する。図1の例では、導波路6を、被加熱対象Sの載置面と反対側に配置したが、導波路6の位置および形状は特に限定されない。
【0081】
上記のように、発熱体1は、表面が導体層2または誘電体窓3によって覆われ、直接酸素に触れないように構成される。
【0082】
[多孔質体の基本波長とスキンデプスとの関係]
発熱体1の基本波長をスキンデプスの2倍より小さくする意義についてさらに説明する。スキンデプスとは、高周波電流を物質に印加した場合、周波数が高くなるにつれて物質の表面に近いところに電流が集中して流れる現象において、電流が流れる表面からの深さを示す概念である。たとえば、グラファイトのスキンデプス(ds)は、電磁波の角振動数が1.54E10、比誘電率が1(H/m)、導電率が3000(S/m)とした場合、0.186mmである。
【0083】
カーボン粒子を用いて多孔質体を形成した場合、多孔質体内にカーボン粒子の集合体が形成される。直径がスキンデプスよりも小さいカーボン粒子を用いて多孔質体を形成すると、多孔質体内にカーボン粒子のクラスタが形成されると考えられる。そして、かかる多孔質体に電流を印加すると、誘導電流はカーボン粒子の表面を流れる。さらに、多孔質体の表面にあるカーボン粒子だけでなく、表面よりも奥に配置されるカーボン粒子の表面にも電流が流れる。そして、個々のカーボン粒子に流れる電流の位相はランダムになる。すると、各粒子の径が小さくなると、誘導電流がベクトル型からスカラー型に変化すると考えられる。すなわち、誘導電流のスカラー型への変化を引き起こす特性を多孔質体に持たせることで、多孔質体の発熱効率を上げることができると考えられる。言い換えれば、多孔質体に含まれるカーボン粒子のサイズを、誘導電流がスカラー型に変化する閾値以下に設定すればよい。カーボン粒子27個をクラスタ上にしたサンプルに基づく、発明者らの計算および実験によれば、好適な基本波長はスキンデプスの2倍より小さいと考えられる。この結果に基づき、本実施形態では、発熱体1として用いる多孔質体の基本波長をスキンデプスの2倍より小さく設定する。
【0084】
[加熱部材の製造方法の一例]
図2は、第1の実施形態に係る加熱部材の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0085】
まず、発熱体1の成型を行う(ステップS21)。たとえば、マイクロ波吸収体であるカーボンナノパウダーをまず準備する。そして、セラミックスとカーボンナノパウダーを混合してパウダーが流動しないよう固着させ、成型する。このとき、カーボンナノパウダーが材料中に一様に存在するようにする。また、発熱体1中に、カーボンナノパウダーが体積率0.04以上0.15以下の割合で存在するように加工する。
【0086】
次に、成型した発熱体1を焼結する(ステップS22)。
【0087】
焼結した発熱体1の上に、導体層2を形成する(ステップS23)。このとき、発熱体1の表面のうち、誘電体窓3を形成する部分にはマスクを形成する。そして、マスクを施した発熱体1に対して、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)を施して導体層2を形成する。化学蒸着においては、アモルファスカーボン、カーボングラファイト等の炭素材料、タングステン、モリブデン等の高融点金属等を用いる。
【0088】
そして、導体層2が形成された発熱体1からマスクを除去し、誘電体窓3となる誘電体材料(たとえば、石英、アルミナセラミックス、窒化アルミニウム、酸化イットリウム等)を堆積させる。これにより誘電体窓3が形成される(ステップS24)。その後、外壁4および高熱伝導材料5を形成することで、加熱部材10が完成する。
【0089】
なお、導波路6は別部材として形成して加熱部材10に後から取り付けるものとする。また、図2の例では誘電体としてセラミックスを用いたが、他の材料を用いてもよい。
【0090】
[加熱部材の製造方法の他の例]
図3は、第1の実施形態に係る加熱部材の製造方法の流れの他の例を示すフローチャートである。
【0091】
図3の例では、まず、第1の成型を実施する(ステップS31)。第1の成型ではまず、カーボンナノパウダーを準備する。そして、セラミックスとカーボンナノパウダーを混合して、パウダーが流動しないよう固着させ、成型する。このとき、カーボンナノパウダーが材料中に一様に存在するようにする。また、発熱体1中に、カーボンナノパウダーが体積率0.04以上0.15以下の割合で存在するように加工する。
【0092】
次に、第2の成型を実施する(ステップS32)。第2の成型では、誘電体窓3を形成する部分にマスクを施す。そして、導体層2の材料を、焼結後に所定の厚さとなるように発熱体1上に被覆する。導体層2の材料は、たとえば、焼結後の導体層2の厚さがスキンデプス以上となるように被覆する。導体層2の材料としては、アモルファスカーボン、カーボングラファイト等の炭素材料、モリブデン、タングステン等の高融点金属等の粉末を使用すればよい。
【0093】
次に、第1および第2の成型により得られた発熱体1を焼結する(ステップS33)。
【0094】
そして、焼結後の、導体層2が形成された発熱体1に、誘電体窓3を形成する(ステップS34)。まず、発熱体1からマスクを除去し、誘電体窓3となる誘電体材料(たとえば、石英、アルミナセラミックス、窒化アルミニウム、酸化イットリウム等)を堆積させる。これにより誘電体窓3が形成される。その後、外壁4および高熱伝導材料5を形成することで、加熱部材10が製造される。
【0095】
図2の例と同様、導波路6は別部材として形成して加熱部材10に後から取り付けるものとする。また、誘電体としてセラミックス以外の材料を用いてもよい。
【0096】
[第1の実施形態の効果]
このように、第1の実施形態に係る加熱部材は、マイクロ波吸収体である導体粒子と誘電体との混合物で形成される発熱体と、発熱体の表面の少なくとも一部を覆う導体層と、導体層の少なくとも一部に設けられ、発熱体に照射されるマイクロ波を案内する窓部と、を備える。また、発熱体の体積に対する導体粒子の体積の比率は、0.04以上0.15以下である。このように、発熱体における導体粒子の体積率を0.04以上0.15以下に設定するため、所望の加熱効率を実現することができる。
【0097】
また、第1の実施形態に係る加熱部材はさらに、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料を備えてもよい。このため、発熱体が発する熱を効率的に被加熱対象に伝えることができる。
【0098】
また、第1の実施形態に係る加熱部材において、導体層は、発熱体を直接覆ってもよい。このため、発熱体に案内されたマイクロ波が導体層の広がり方向に伝播してさらに加熱(吸収)効率を高めることができる。
【0099】
また、第1の実施形態に係る加熱部材において、導体層の厚さは、導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであってもよい。
【0100】
また、第1の実施形態に係る加熱部材において、導体層はアモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料、またはタングステンもしくはモリブデンを含む高融点金属であってもよい。
【0101】
また、第1の実施形態に係る加熱部材において、導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有してもよい。このため、導体層の熱容量を下げることができる。
【0102】
また、第1の実施形態に係る加熱部材において、窓部は誘電体であってよい。このため、窓部を通して、マイクロ波を減衰させることなくマイクロ波吸収体に誘導することができる。
【0103】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態においては、発熱体1の外表面上に導体層2を設け、導体層2が配置されない箇所には誘電体窓3を配置して、発熱体1内にマイクロ波を閉じ込めるよう構成した。これに対して、外壁4内に導体層2を埋め込む構成としてもよい。たとえば、外壁4の厚さ方向の一部を導体層2として構成してもよい。このように構成すれば、導体層2が大気(酸素)に接触することが防止され、耐酸化性を確保することができる。導体層2および外壁4の材料は、第1の実施形態と同様とすればよい。
【0104】
図4は、第1の実施形態の変形例に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。図4の例では、第1の実施形態と異なり、加熱部材10Aが備える導体層2Aは、発熱体1の上面(被加熱対象S載置側)には直接接触するよう設けられ、他の面においては、外壁4Aを介して発熱体1上に設けられる。その他の点では、第1の実施形態の変形例に係る加熱部材10Aの構成は、第1の実施形態の加熱部材10の構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0105】
なお、図4のように外壁4Aの一部として(外壁4Aに埋め込んで)導体層2Aを構成する場合であっても、少なくとも導体層2Aの一部が発熱体1に直接接触するよう構成することが好ましい。この理由は、導体層2Aの面に沿ってマイクロ波が伝播することによって、発熱体1によるマイクロ波の吸収効率が向上することが見込まれるためである。また、発熱体1と導体層2Aとの間に他の部材を設けないことで、他の部材を設ける場合よりも発熱体1によるマイクロ波の吸収効率を向上させることができると予測される。
【0106】
[第1の実施形態の変形例の効果]
第1の実施形態の変形例に係る加熱部材においては、導体層は、発熱体の外側に設けられた外壁内に配置されてもよい。このように構成すると、酸素との接触により酸化する材料を導体層に用いた場合でも、外壁によって酸素との接触が防止され、加熱部材の性質劣化を防止することができる。
【0107】
また、第1の実施形態の変形例に係る加熱部材において、外壁は耐酸化性材料で形成されてもよい。このように構成すると、導体の酸化をさらに防止することができ、加熱部材の性質劣化を防止することができる。
【0108】
このほか、第1の実施形態の変形例に係る加熱部材は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0109】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、マイクロ波吸収体である導体粒子と誘電体との混合物を焼結して発熱体とし、発熱体の上に導体層等を形成した。これに対して、第2の実施形態においては、マイクロ波吸収体である導体粒子を収容する収容体を準備し、収容体の中に導体粒子を封入して加熱部材を構成する。
【0110】
[加熱部材の構成の一例]
図5は、第2の実施形態に係る加熱部材の構成の一例を示す断面図である。図5に示すように、第2の実施形態に係る加熱部材10Bは、発熱体1Bと、導体層2Bと、窓3Bと、高熱伝導材料5Bと、導波路6Bと、収容体7と、を備える。
【0111】
発熱体1Bは、マイクロ波吸収体である導体粒子で構成される。発熱体1Bは、全体として一つの固体であってもよく、空間内に一様に分布するパウダー状の物体であってもよい。発熱体1Bは、マイクロ波吸収体である導体粒子と誘電体の粒子とを含んでもよい。たとえば、発熱体1Bは、収容体7内に封入され収容体7の内部空間に一様に分布するカーボンナノパウダーであってもよい。また、発熱体1Bは、収容体7内に封入され収容体7の内部空間に分布するカーボンナノパウダーと誘電体ナノパウダーとの混合物であってもよい。誘電体ナノパウダーとしては、たとえば酸化シリコン等のパウダーを使用できる。また、第1の実施形態において発熱体1に用いた他の誘電体をパウダー状にしたものを使用することもできる。
【0112】
発熱体1Bに含まれるマイクロ波吸収体である導体粒子の体積は、収容体7の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下である。ここで、収容体7の体積とは、収容体7の内部空間の体積を指す。
【0113】
導体層2Bは、収容体7の内壁の少なくとも一部を覆う。導体層2Bは、収容体7に入ったマイクロ波を収容体7内に閉じ込める。導体層2Bは、収容体7の内壁のうち、窓3Bとなる部分以外の部分を覆う。なお、導体層2Bの材料は、第1の実施形態の導体層2の材料と同様である。また、導体層2Bの厚みについても、第1の実施形態の導体層2と同様、スキンデプス以上の厚みとする。また、導体層2Bの形状についても、第1の実施形態の導体層2と同様メッシュ状、シート状等にすることができる。
【0114】
窓3Bは、収容体7の内壁に導体層2Bが形成されていない部分である。窓3Bは、第1の実施形態の誘電体窓3と同様、収容体7の外から中へマイクロ波を案内する。第2の実施形態では、収容体7として誘電体を用い、窓3B以外の収容体7の内壁を導体層2Bで覆うことにより、マイクロ波を案内する窓3Bを形成する。
【0115】
高熱伝導材料5Bは、収容体7の、被加熱対象(サンプル)Sが載置される側に配置される。高熱伝導材料5Bは、発熱体1から被加熱対象Sに熱を伝える。高熱伝導材料5Bはたとえば、石英、アルミナセラミックス、窒化アルミセラミックス等を使用できる。ただし、被加熱対象Sと同質の材料を高熱伝導材料5Bとして使用することが好ましい。これは、放射率および吸収率に鑑みると同質の材料間の方が効率的な加熱が実現できると考えられるためである。
【0116】
導波路6Bは、マイクロ波を窓3Bを介して収容体7内の発熱体1に案内する。図5の例では、導波路6Bを、被加熱対象Sの載置面と反対側に配置したが、導波路6Bの位置および形状は特に限定されない。
【0117】
収容体7は、皿状の底部7Aと、蓋状の蓋部7Bとを有する。収容体7は、たとえば石英、アルミナセラミックス、窒化アルミセラミックス等の誘電体材料で形成する。
【0118】
なお、第2の実施形態に係る加熱部材10Bの各部は、特記しない限り、第1の実施形態に係る加熱部材10Aの対応する各部と同様の材料および形状とすることができる。
【0119】
[第2の実施形態の加熱部材の製造方法の一例]
次に、図6を参照して加熱部材10Bの製造方法の一例について説明する。図6は、第2の実施形態に係る加熱部材の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0120】
図6に示すように、まず、収容体7を形成する(ステップS61)。収容体7は、石英、アルミナセラミックス、窒化アルミセラミックス等の誘電体材料で形成する。収容体7は、皿状の底部7Aと、蓋状の蓋部7Bとを別個に成型して形成する。収容体7の外面は、サセプタの外壁として機能するよう構成する。
【0121】
次に、形成した収容体7の、底部7Aおよび蓋部7Bのそれぞれの内壁面上に導体層2Bを形成する(ステップS62)。導体層2Bは、誘電材料を用いて底部7Aおよび蓋部7Bの内壁面にメッキをほどこすことで形成してもよく、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)を用いて形成してもよい。また、収容体7に金属薄板の成型体をはめ込んで導体層2Bとしてもよい。
【0122】
導体層2Bを形成する際には、窓3Bとする箇所には導体層2Bを形成しないようにする。
【0123】
そして、収容体7の内容積に基づいて予め収容体7の体積に対する比率が0.04以上0.15以下となるよう計測されたマイクロ波吸収体を、収容体7に充填する(ステップS63)。ここで、充填量は、たとえばマイクロ波吸収体である導体粒子の質量であり、導体粒子について予め計測したまたは既知である平均粒径から必要な導体粒子の全体積、および既知である同導体粒子の密度から計測できる。または、収容体7の体積に対する比率が0.04以上0.15以下となるよう計測されたマイクロ波吸収体と、誘電体と、を収容体7に充填する。マイクロ波吸収体はたとえばカーボンナノパウダーであり、誘電体はたとえば酸化シリコン等の誘電体ナノパウダーである。
【0124】
なお、マイクロ波吸収体の充填(ステップS63)は、真空中で行う。または、マイクロ波吸収体の充填は、いったん真空にした空間を減圧した不活性雰囲気中で行う。たとえば、大気圧の6分の1以下に減圧した不活性雰囲気中で行う。不活性雰囲気はたとえばアルゴン(Ar)または窒素(N2)雰囲気である。また、不活性雰囲気は、酸素を含まないものとする。
【0125】
次に、マイクロ波吸収体が充填された収容体7の底部7Aと蓋部7Bとを封止する(ステップS64)。収容体7の封止は、ステップS63と同様の真空中または不活性雰囲気下で行う。封止には加熱圧着などを用いる。このようにして、加熱部材10Bが形成される。
【0126】
なお、図6の例では、高熱伝導材料5Bおよび導波路6Bについて説明を省略しているが、高熱伝導材料5Bおよび導波路6Bは、ステップS64の完了後適宜形成することができる。
【0127】
[第2の実施形態の効果]
このように、第2の実施形態に係る加熱部材は、マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、収容体に設けられ、収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、を備える。さらに、導体粒子は収容体内に封入され、収容体内の導体粒子の体積は、収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下である。このため、マイクロ波吸収体による所望の加熱効率を実現し、効率的な加熱処理を実現することができる。また、収容体内部を、真空若しくは減圧された、酸素を含まない不活性雰囲気にすることで、高温下でもマイクロ波吸収体が酸化することを防止することができる。また、マイクロ波吸収体の導体粒子のみを収容体に封入する場合には、真空中は熱泳動、減圧下では気体の対流および熱泳動によりマイクロ波吸収体の導体粒子が収容体内に均一に分散することになる。
【0128】
また、第2の実施形態に係る加熱部材は、マイクロ波吸収体である導体粒子が収容される収容体と、収容体に設けられ、収容体内の導体粒子に照射するマイクロ波を案内する窓部と、を備える。さらに、導体粒子は、誘電体と混合されて収容体に充填され、収容体内の導体粒子の体積は、収容体の体積に対する比率が、0.04以上0.15以下である。このため、マイクロ波吸収体による所望の加熱効率を実現し、効率的な加熱処理を実現することができる。また、収容体内部を、真空若しくは減圧された、酸素を含まない不活性雰囲気にすることで、高温下でもマイクロ波吸収体が酸化することを防止することができる。
【0129】
また、第2の実施形態に係る加熱部材は、収容体のうち、被加熱対象が配置される面に配置される高熱伝導材料をさらに備えてもよい。このため、発熱体が発する熱を効率的に被加熱対象に伝えることができる。
【0130】
また、第2の実施形態に係る加熱部材は、収容体の内壁上に配置される導体層をさらに備えてもよい。これによって、収容体内に案内されたマイクロ波を収容体内に閉じ込めて、マイクロ波のパワー密度を向上させることができる。
【0131】
また、第2の実施形態に係る加熱部材において、収容体は、導体層を覆う耐酸化性材料で形成される層をさらに備えてもよい。これによって、導体層の酸化を防止することができる。
【0132】
また、第2の実施形態に係る加熱部材において、導体層の厚さは、当該導体層の材料のスキンデプス以上の厚さであってもよい。
【0133】
また、第2の実施形態に係る加熱部材において、導体層は、アモルファスカーボンもしくはカーボングラファイトを含む炭素材料またはタングステンもしくはモリブデンを含む高融点金属であってもよい。
【0134】
また、第2の実施形態に係る加熱部材において、導体層は、マイクロ波波長の10分の1以下の大きさの隙間や空隙を有してもよい。このため、導体層の熱容量を下げることができる。
【0135】
また、第2の実施形態に係る加熱部材において、窓部は誘電体であってよい。このため、窓部を通して、マイクロ波を減衰させることなくマイクロ波吸収体に誘導することができる。
【0136】
[第2の実施形態の変形例]
なお、図5に示した例では、収容体7の内壁上に導体層2Bを形成するものとした。しかし、これに限らず、導体層2Bを、収容体7の中に形成してもよい。たとえば、収容体7の壁を、導体層2Bを二つの誘電体板で挟み込む構造とし、導体層2Bが露出しないように構成してもよい。このように構成することでも、導体層2Bの酸化を防止することができる。
【0137】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す断面図である。第3の実施形態に係る加熱装置100は、マイクロ波による加熱効率を高めるためマイクロ波閉じ込め機構を備える。
【0138】
加熱装置100は、処理容器101と、加熱部材102と、マイクロ波導入機構103と、ガス供給機構104と、排気機構105と、マイクロ波閉じ込め機構106と、を備える。加熱装置100はまた、装置内の各部と接続され各部を制御する制御部107を備える。
【0139】
処理容器101は、被加熱対象Sと、被加熱対象Sが載置される加熱部材102と、を収容する。処理容器101は、マイクロ波導入機構103、ガス供給機構104および排気機構105と接続される。処理容器101はまた、マイクロ波閉じ込め機構106を収容する。処理容器101は閉状態のとき、気密にシールされるよう構成される。
【0140】
加熱部材102は、第1の実施形態に関して先述した加熱部材10,10Aと同様であるが、導体層3を備えない点で、第1の実施形態に係る加熱部材10,10Aと異なる。
【0141】
図8は、第3の実施形態に係る加熱部材102の構成の一例を示す断面図である。図8に示すように、加熱部材102は、発熱体1Cと、誘電体窓3Cと、外壁4Cと、高熱伝導材料5Cと、導波路6Cと、を備える。
【0142】
発熱体1Cは、被加熱対象Sが載置される面以外の面、すなわち、側面と下面を外壁4Cで覆われる。また、発熱体1Cの下面には導波路6Cからのマイクロ波を発熱体1Cに導入するための誘電体窓3Cが設けられる。誘電体窓3Cが設けられる位置には外壁4Cは設けられない。また、発熱体1Cの、被加熱対象Sが載置される面上には高熱伝導材料5Cが設けられる。なお、発熱体1C、誘電体窓3C、外壁4C、高熱伝導材料5C、導波路6Cの構成および機能はそれぞれ、第1の実施形態の対応する部材と同様である。
【0143】
図7に戻り、マイクロ波導入機構103は、処理容器101内にマイクロ波を導入する。マイクロ波導入機構103は、加熱部材102の導波路6Cを介して、発熱体1Cにマイクロ波を導入する。なお、図7の例では、マイクロ波導入機構103を、処理容器101の下方に配置するが、これに限定されず、マイクロ波導入機構103を任意の位置に配置してよい。
【0144】
ガス供給機構104は、パージガス等の処理ガスを処理容器101内に供給する。
【0145】
排気機構105は、処理容器101に供給される各種ガスを排気して、処理容器内の酸素を除去する。排気機構105は、被加熱対象Sから放出されたガスや酸素を処理容器101から除去する。
【0146】
マイクロ波閉じ込め機構106は、加熱部材102すなわち発熱体1Cに導入されたマイクロ波を加熱部材102内に閉じ込める。マイクロ波閉じ込め機構106は、加熱部材102の周囲を包囲する支持部106Aと、支持部106Aの上端に加熱部102を上から覆って配置されるメッシュ部106Bと、を備える。支持部106Aおよびメッシュ部106Bはマイクロ波を反射することができる材料で構成する。支持部106Aが、制御部107からの制御指示に応じて上下に移動することにより、メッシュ部106Bと被加熱対象Sとの距離が調整される。
【0147】
網状に構成されるメッシュ部106Bは、加熱部材102内からマイクロ波閉じ込め機構106内に放射されるマイクロ波を、マイクロ波閉じ込め機構106の内側へと向けて反射する。これによって、メッシュ部106Bは、マイクロ波をマイクロ波閉じ込め機構106内に閉じ込める。メッシュ部106Bの材料は、マイクロ波を反射する金属であればよい。たとえば、メッシュ部106Bの材料としては、導体で加工が容易な材料が好ましく、導体金属たとえばアルミニウム等でもよい。マイクロ波閉じ込め機構106は、マイクロ波を内側に向けて反射することで、マイクロ波閉じ込め機構106内のマイクロ波パワーの空間密度を上昇させる。これによって、加熱装置100は、マイクロ波パワーを効率的に熱エネルギーに変換して加熱部材102の発熱体1Cに吸収させ、被加熱対象Sを効率的に加熱することができる。
【0148】
[第3の実施形態の効果]
第3の実施形態に係る加熱装置100は、加熱部材と、加熱部材と被加熱対象とを収容する処理容器と、処理容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波導入部と、処理容器内に所定のガスを供給するガス供給部と、処理容器内から酸素を除去する排気部と、を備える。加熱装置100が備える加熱部材のマイクロ波吸収体は、その表面上に外壁と、誘電体窓と、高熱伝導材料が形成される。そして、処理容器内の加熱部材の周囲を覆うようにマイクロ波閉じ込め機構が配置される。このため、加熱部材に供給されるマイクロ波は、加熱部材から外に向けて放射してもマイクロ波閉じ込め機構によって反射される。このため、マイクロ波閉じ込め機構内のマイクロ波パワーの空間密度が上昇し、マイクロ波の熱エネルギーを効率的にマイクロ波吸収体に吸収させることができる。これによって、加熱装置は、効率的に被加熱対象Sを加熱することができる。
【0149】
なお、第2の実施形態に係る加熱部材10Bから導体層2Bを取り除き、第3の実施形態の加熱部材102として適用することもできる。
【0150】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る加熱装置の構成の一例を示す断面図である。第4の実施形態に係る加熱装置100Aは、加熱部材102に代えて加熱部材102Aを備える。加熱部材102Aの構成および機能は、第1の実施形態の加熱部材10、第1の実施形態の変形例の加熱部材10Aまたは第2の実施形態の加熱部材10Bと同様である。第4の実施形態に係る加熱装置100Aはまた、マイクロ波閉じ込め機構106を有しない点で、第3の実施形態の加熱装置100と異なる。
【0151】
加熱装置100Aは、処理容器101Aと、加熱部材102Aと、マイクロ波導入機構103Aと、ガス供給機構104Aと、排気機構105Aと、を備える。加熱装置100Aはまた、装置内の各部と接続され各部を制御する制御部107Aを備える。
【0152】
処理容器101A、マイクロ波導入機構103A、ガス供給機構104Aおよび排気機構105Aの構成および機能は、第2の実施形態の処理容器101、マイクロ波導入機構103、ガス供給機構104および排気機構105と同様である。また制御部107Aの構成および機能も、マイクロ波閉じ込め機構106の制御を実行しない点を除き、第2の実施形態と同様である。
【0153】
加熱装置100Aにおいては、制御部107Aからの指示に基づき加熱処理が開始すると、マイクロ波導入機構103Aにより加熱部材102Aにマイクロ波が供給される。そして、加熱部材102A内に閉じ込められるマイクロ波によって加熱部材102A中のマイクロ波吸収部材が短時間で高温となり、被加熱対象Sを加熱する。処理容器101A内に不所望のガスが滞留しないよう、ガス供給機構104Aがパージガス等のガスを処理容器101A内に供給し、排気機構105Aが排気を実行する。
【0154】
[第4の実施形態の効果]
第4の実施形態に係る加熱装置は、第1の実施形態に係る加熱部材、第1の実施形態の変形例に係る加熱部材または第2の実施形態に係る加熱部材を備えることにより、第1の実施形態、第1の実施形態の変形例および第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0155】
(その他)
なお、カーボンは大気中で高温にさらされると酸化して二酸化炭素に変わるため、カーボンパウダーを用いて加熱部材を製造する際には、窒素雰囲気等の低酸素濃度雰囲気中で処理を行う。
【0156】
また、上記実施形態に記載の加熱部材および加熱装置は、量子ドット超格子を利用したナノ構造体だけでなく、半導体装置を製造する際のアニーリングにも適用することができる。たとえば、現在ランプアニールやレーザアニールによって行っている処理を、上記実施形態の加熱部材および加熱装置を用いて実施することにより、短時間で効率的な処理を実現することができる。
【0157】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0158】
1,1A,1B,1C 発熱体
2,2A,2B 導体層
3 誘電体窓
4,4A 外壁
5 高熱伝導材料
6 導波路
10,10A,10B 加熱部材
100,100A 加熱装置
101,101A 処理容器
102,102A 加熱部材
103,103A マイクロ波導入機構
104,104A ガス供給機構
105,105A 排気機構
106 マイクロ波閉じ込め機構
107,107A 制御部
S 被加熱対象(サンプル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C