(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムが、偏光フィルム層、並びに(I)ポリウレタンウレア樹脂および(II)フォトクロミック化合物を含むフォトクロミック組成物からなる接着層を介して積層されてなる積層体であって、
前記(I)ポリウレタンウレア樹脂の多分散度を表す重量平均分子量/数平均分子量の比が、1.6〜2.4の範囲にある上記積層体。
前記ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムと前記偏光フィルム層、及び/又は前記偏光フィルム層と前記フォトクロミック組成物からなる接着層とが、フォトクロミック化合物を含まない接着層を介して積層されている請求項1記載の積層体。
ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム、前記フォトクロミック化合物を含まない接着層、前記フォトクロミック組成物からなる接着層、偏光フィルム層、前記フォトクロミック化合物を含まない接着層、及びポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムの順で積層されてなる請求項7記載の積層体。
偏光フィルム層の前に記載されたフォトクロミック組成物からなる接着層は、偏光フィルム層の後に記載されたフォトクロミック化合物を含まない接着層と、フォトクロミック化合物を含むことのみが異なる請求項12に記載の積層体。
偏光フィルム層の後に記載されたフォトクロミック化合物を含まない接着層とポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムとの間に、さらに該フォトクロミック化合物を含まない接着層とは異なる接着層が介在する請求項12に記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層体は、一対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムが、偏光フィルム層、並びに(I)ポリウレタンウレア樹脂、及び(II)フォトクロミック化合物を含むフォトクロミック組成物からなる接着層を介して積層された積層体である。先ず
図1を参照に、本発明の積層体を具体例として、本発明を説明する。
【0011】
図1を参照すると、本発明の積層体4は、互いに対向する1対のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1及び1’が、偏光フィルム層3及びフォトクロミック組成物からなる接着層2を含んでなる構成体である。以下の説明において、積層体のフォトクロミック組成物からなる接着層側の光学シート又はフィルムの露出面を積層体の「表面」、偏光フィルム側の光学シート又はフィルムの露出面を積層体の「裏面」ということにする。なお、下記にも詳述するが、
図1〜
図5における、積層体の表面側に存在するポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1は、後述する偏光フィルムと同軸方向に1軸延伸されたものであることが好ましい。
また、
図2は、本発明の積層体を使用して形成される光学物品の具体例を示している。つまりは、本発明の積層体4の裏面に使用しているポリカーボネート光学シート又はフィルム1’と、熱可塑性樹脂であるポリカーボネートをその上に射出成型して得たレンズ基材5とからなる、裏面にポリカーボネート層が積層した光学物品6である。
図3は、本発明の積層体の構成を示す他の第2例を示している。互いに対向する1対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1及び1’が、偏光フィルム層3及びフォトクロミック組成物からなる接着層2を含んでなる構成体である。該偏光フィルム層3の両面側に接着層8を介して、それぞれ第3の光学シート又はフィルム7、またはポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1’が貼り付けられている積層体である。
図4は、本発明の積層体の構成を示すさらに他の第3例である。互いに対向する1対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1及び1’が、偏光フィルム層3及びフォトクロミック組成物からなる接着層2を含んでなる構成体である。該偏光フィルム層3の両面側に第3の光学シート又はフィルム7が貼り付けられ、一方の第3の光学シート又はフィルム7がフォトクロミック組成物からなる接着層2側に設置され、もう一方の第3の光学シート又はフィルム7が接着層8を介してポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1’に貼り付けられている積層体である。
図5は、本発明の積層体の構成を示すさらに他の第4例である。互いに対向する1対のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1及び1’が、偏光フィルム層3及びフォトクロミック組成物からなる接着層2を含んでなる構成体である。ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1から下方に順番に、接着層8、フォトクロミック組成物からなる接着層2、偏光フィルム層3、接着層9、接着層8、及びポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1’からなる積層体である。ただし、接着層9は必須ではないが、接着層9が存在することで密着性がより向上し、特に、ポリカーボネート光学シート又はフィルム1’の表面上に射出成型によりポリカーボネートのレンズ基材5を積層して光学物品6とした場合に、密着性の効果が顕著に発揮される。
なお、前記積層体の例示において、接着層8、および接着層9は、いずれもフォトクロミック化合物を含まないが、接着剤を異にする接着層である。
【0012】
以下、本発明の積層体の構成成分について、詳細に説明する。先ずは、本発明の互いに対向する1対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムについて説明する。
【0013】
<ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム>
本発明において、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムとしては、染色されたフィルム、染色されたシートも、使用することが可能である。当然のことであるが、染色されていないフィルム、又はシートも使用できる。なお、染色したポリカーボネートシート又はフィルムを使用する場合には、元々、染色されたものを使用することもできるし、本発明の積層体を作製した後、表面のポリカーボネートシート又はフィルムを染色してもよい。
上記染色フィルム又は染色シートを用いた積層体では、フォトクロミック組成物からなる接着層が該染色フィルム等よりも先に太陽光や紫外線によって照射されるように積層されることが好ましい。
本発明において使用するポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムの好適な厚みとしては、30〜1000μmが好ましく、50〜400μmがより好ましい。また、これらのポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムは、異なる厚みを組み合わせて使用することも可能である。
本発明において使用するポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムとしては、光学歪の観点から、後述する偏光フィルムと同軸方向に1軸延伸された光学シート又はフィルムを用いることが好ましい。さらには、この1軸延伸された光学フィルム又はシートは、位相差が3000nm以上であることが好ましい。
また、前記1軸延伸されたポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを使用する場合には、前記一対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムのうち、少なくとも積層体の表面側に存在する光学シート又はフィルムに使用されればよい。なお、他のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム(積層体の裏面側に存在するポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを含む)は、前記1軸延伸されたものであってもよいし、無延伸のものであってもよい。
次いで、本発明で使用される偏光フィルム層について説明する。
【0014】
<偏光フィルム層>
本発明において偏光フィルム層は、公知の偏光フィルムを特に制限なく使用することができる。中でも、該偏光フィルムは、厚さが10〜200μm、全光線透過率が30%以上そして偏光度が95.0%以上であることが好ましい。より好ましくは、それぞれ厚さは10〜100μm、全光線透過率は40%以上、偏光度は99.0%以上である。偏光フィルム自体の工業的な生産を考慮すると、全光線透過率の上限は50%であり、偏光度の上限は100%である。
本発明において、前記偏光フィルム層は、ベースフィルムとして一般的に用いられているポリビニルアルコール系フィルムを、二色性物質のヨウ素や二色性染料を用いて染色し、染色したポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸することにより形成される。
次いで、本発明で使用されるフォトクロミック組成物からなる接着層について説明する。本発明において、フォトクロミック組成物からなる接着層は、(I)ポリウレタンウレア樹脂、及び(II)フォトクロミック化合物を含むことを特徴とする。先ず、フォトクロミック組成物に含まれる(I)ポリウレタンウレア樹脂について説明する。
【0015】
<フォトクロミック組成物>
<(I)ポリウレタンウレア樹脂>
本発明において、(I)ポリウレタンウレア樹脂は、分子鎖中にウレア結合(−R−NH−CO−NH−)を有する。公知のポリウレタンウレア樹脂を特に制限なく使用できる。中でも、接着性、耐熱性、及び耐汗性の観点から、
(A)分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物と、
(C)分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物、
との反応生成物であることが好ましい。このようなポリウレタンウレア樹脂においては、原料である(B)成分としてポリアミン化合物を使用することに起因して、分子内にウレア結合が導入される。以下、これらの成分について説明する。以下、(I)ポリウレタンウレア樹脂を単に(I)成分という場合もある。
【0016】
<A成分:分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー>
上記ポリウレタンウレア樹脂の構成成分である分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A成分)としては、公知のウレタンプレポリマーを用いることが可能である。中でも、
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどの少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましい。
【0017】
<A1成分:ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどの少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物>
上記ポリオール化合物(A1成分)は、生成するポリウレタンウレア樹脂(I成分)が高架橋体になり過ぎないという理由から、一分子中に含まれる水酸基数が2〜6個であることが好ましく、さらに有機溶剤への溶解性を加味して考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数が2〜3個であることがより好ましい。また、前述のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどのポリオール化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用することもできる。中でも、耐熱性、接着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、特にポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。以下、A1成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
【0018】
<ポリカーボネートポリオール>
A1成分として使用されるポリカーボネートポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き低分子ポリオールの1種以上をホスゲン化するか或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネートの低分子カーボネートとエステル交換させて得られるポリカーボネートポリオールを挙げることができる。上記低分子ポリオールのなかでも、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂(I成分)の接着性、及び耐熱性の観点から、直鎖のアルキレン鎖を有する低分子ポリオールがより好ましい。側鎖にアルキル基を有する低分子ポリオールから合成されたポリカーボネートポリオールは、直鎖のアルキレン鎖を有する低分子ポリオール類と比較して、接着性が低下する傾向が見られる。
A1成分としてのポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂(I成分)の耐熱性の観点から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリカーボネートポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0019】
<ポリカプロラクトンポリオール>
A1成分として使用されるポリカプロラクトンポリオールとしては、例えばε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が好ましい。A1成分としてのポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリカプロラクトンポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0020】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとしては、例えば分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体である、ポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることができる。
上記分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの分子中に水酸基を1個以上有するグリコール、グリセリン等のポリオール化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリエーテルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどを挙げることができる。
【0021】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールとしては、例えば多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリエステルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0022】
<A2成分:分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物>
上記ジイソシアネート化合物(A2成分)としては、例えば脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からA2成分の30〜100質量%、特に50〜100質量%が脂肪族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0023】
A2成分として好適に使用できるジイソシアネート化合物を例示すれば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物などを挙げることができる。
【0024】
これらの中でも、得られるポリウレタンウレア樹脂((I)成分)の耐候性の観点から、上記の通り、A2成分のジイソシアネート化合物の、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好適である。好適な化合物の具体例としては、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0025】
<(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物>
前記分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物(B成分)は、分子内に2つ以上のアミノ基(−NH
2または−NH(R)。但し、Rはアルキル基、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基を意味する。)を有するポリアミン化合物である。
該B成分は、ポリウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成する際の鎖延長剤として機能するものであり、鎖延長剤として、B成分を用いることによりポリウレタン樹脂中にウレア結合が導入され、ポリウレタンウレア樹脂となる。
得られるポリウレタンウレア樹脂((I)成分)を適度の硬さにし、また、接着性、及び耐熱性を良好に維持するためには、ポリアミン化合物の分子量は、50〜300であることが好ましく、50〜250であることがより好ましく、100〜220であることが最も好ましい。
【0026】
B成分のポリアミン化合物としては、ジアミン、及びトリアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に使用し得る。本発明においてポリアミン化合物として好適に使用される化合物の具体例としては、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等を挙げることができる。
【0027】
ポリアミン化合物においては、接着性、及び耐熱性などの観点から、特にジアミン化合物を使用することが好ましい。この理由は、ポリウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成する際に、ポリアミン化合物を用いることにより、ウレア結合を有することになり、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固となるため、耐熱性が向上するものと推定される。また、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合がより強固となることによって、空気中の酸素が該ポリウレタンウレア樹脂((I)成分)中へ拡散し難くなり、該ポリウレタンウレア樹脂の光酸化劣化が抑制されたためであると推定される。さらに、接着力が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって樹脂の凝集破壊が起こりにくくなったためであると推定される。
また、前記ポリアミン化合物のなかで、耐水性、及び耐汗試験への安定性の観点から、イソホロンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミンを用いることがより好ましく、その中でも、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを用いることが最も好ましい。
【0028】
<(C)分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物>
上記のポリウレタンウレア樹脂を合成する際に、分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物(C成分)を併用する。このC成分を使用することにより、分子鎖の末端がキャッピングされたポリウレタンウレア樹脂となる。前述のイソシアネート基と反応しうる基としては、例えばアミノ基(−NH
2基、及び−NH(R)基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕が挙げられる。上記のC成分の中でも、分子内に少なくとも1つのピペリジン構造を有する機能性付与化合物であることが好ましい。機能性付与化合物としては、その他、ピペリジン構造の代わりにヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するものであってもよいが、最も優れた効果を発揮するのは、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物である。
このような機能性付与化合物を用いることによって、ポリウレタンウレア樹脂((I)成分)にピペリジン構造を導入することができ、その結果、光安定性能、酸化防止性能、及び紫外線吸収性能等の機能性に優れたポリウレタンウレア樹脂((I)成分)を得ることができる。
以下、C成分として使用される各種化合物について、代表例としてピペリジン構造を有する化合物などを詳しく説明する。
【0029】
<ピペリジン構造を有する化合物>
ポリウレタンウレア樹脂におけるC成分として使用されるピペリジン構造を有する化合物としては、下記式(i)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
【化1】
ここで、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に、メチル基であることが好ましい。上記ピペリジン環の窒素原子または4位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物つまり、上記式中の2本の結合手のいずれか一方に結合している基がイソシアネート基と反応し得る基である化合物がピペリジン構造を有する化合物である。
以下、より具体的な化合物について説明する。
【0030】
本発明でC成分として使用される化合物の中で、本発明のI成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記式(1)で示される化合物が好適に挙げられる。
【化2】
ここで、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、前記式(i)におけるものと同義であり、
R
5は、炭素数1〜10アルキル基または水素原子であり、
R
6は炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、aは0または1であり、
Xは、イソシアネート基と反応しうる基である。
上記式(1)において、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基である。4つのアルキル基が全てメチル基であることが好ましい。
R
5は、炭素数1〜10のアルキル基または水素原子である。中でも、入手の容易さの観点から、炭素数1〜4のアルキル基、または水素原子であることが好ましい。なお、R
1〜R
4が炭素数1〜4のアルキル基であるため、R
5が水素原子であっても、立体障害の影響でR
5が結合している窒素原子とイソシアネート基が反応することはない。
R
6は、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、aは、R
6の数を示すが、aが0の場合は、Xが直接ピペリジン環に結合していると理解されるべきである。
Xは、イソシアネート基と反応しうる基であり、好ましくは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、入手の容易さなどの観点からアミノ基及び水酸基が好適である。
【0031】
上記式(1)で示される化合物の具体例としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどを挙げることができる。
【0032】
<その他のC成分>
上記C成分としては、前述したピペリジン構造を有する耐候性の向上を目的とした化合物以外にも、一般的なアミン、アルコール、チオール、及びカルボン酸を用いることができる。これらの化合物は、分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有することにより、I成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端を、不活性化することができる。
本発明で使用されるその他のC成分の中でも、好ましい化合物としては、下記式(2)及び(3)で表される化合物を挙げることができる。
【化3】
ここで、
R
7は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であり、
R
8は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはエステル基である。
R
7が水素原子である化合物をC成分として用いた場合には、(I)成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端は、−NH(R
8)基となるが、この−NH(R
8)基は、他のポリマー、およびイソシアネート化合物とは実質的に反応しない。そのため、−NH(R
8)基は、イソシアネート基と反応しうる基には該当しない。
上記式(2)において、R
7は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカボニル基または水素原子である。中でも、R
7は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であることが好ましい。前記アリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR
7の例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基又は水素原子が挙げられる。
また、R
8は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基である。中でも、R
8は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。前記アリール基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR
8の例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、又はカルボキシプロピル基が挙げられる。
【0033】
下記式(3)
【化4】
ここで、
R
9は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基であり、
Zは、水酸基、カルボキシル基またはチオール基である。
で示される化合物も好適に使用できる。
上記式(3)において、R
9は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基であり、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。このアリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。好ましい基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子を有するフェニル基が挙げられる。好適なR
9の例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、及びカルボキシプロピル基が挙げられる。
上記式(3)におけるZは、イソシアネート基と反応しうる基であり、具体的には水酸基、カルボキシル基またはチオール基であり、好ましくは水酸基である。
【0034】
上記式(2)及び(3)で示される化合物の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、4−ヘプチルアミン、オクチルアミン、1,1−ジプロピルブチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルヘプチルアミン、メチルオクチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、エチルヘキシルアミン、エチルヘプチルアミン、エチルオクチルアミン、プロピルブチルアミン、イソプロピルブチルアミン、プロピルペンチルアミン、プロピルヘキシルアミン、プロピルヘプチルアミン、プロピルオクチルアミンなどのアミン;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デカノール、2−デカノールなどのアルコール;メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、プロパンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、2−メチルプロパンチオール、3−メチル−2−ブテンチオール、1,1−ジメチルヘプタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール、2,6−ジメチルベンゼンチオールなどのチオール;酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸などのカルボン酸などが挙げられる。
以上のC成分は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても構わない。中でも、ポリウレタンウレア樹脂の耐久性を向上させるという観点から、ピペリジン構造を有する化合物を用いることが好適である。
【0035】
<ポリウレタンウレア樹脂におけるA1、A2、B、及びC成分の使用量>
上記本発明において、接着層のフォトクロミック組成物におけるポリウレタンウレア樹脂(I成分)を構成する上記各成分、即ちA1成分、A2成分、B成分、およびC成分の量比は、ポリウレタンウレア樹脂を使用する用途等を勘案して適宜決定される。中でも、得られるポリウレタンウレア樹脂の耐熱性、接着力などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、B成分に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基等)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.4〜0.8/1.0/0.19〜0.59/0.01〜0.2となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.45〜0.75/1.0/0.23〜0.53/0.02〜0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.65〜0.75/1.0/0.23〜0.33/0.02〜0.1となる量比とすることが最も好ましい。ここで、上記n1〜n4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
上記ポリウレタンウレア樹脂((I)成分)においては、末端には反応性の基を有さないことが好ましい。特に、末端にイソシアネート基が残存しないように不活性化させることが好ましい。そのため、製造時には、n2=n1+n3+n4となるような配合割合で製造することが好ましい。n2よりもn1、n3、及びn4の合計モル数(n1+n3+n4)が大きい場合には、再沈殿等により、未反応のA1、B、C成分を除去することができる。
【0036】
<多分散度(重量平均分子量/数平均分子量の比)が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂>
本発明において、フォトクロミック組成物に用いるポリウレタンウレア樹脂としては、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量の比)が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂を用い
る。このように狭い範囲の多分散度を有するポリウレタンウレア樹脂を含むフォトクロミック組成物からなる接着層によりポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを接合して積層体を製造した場合、得られた積層体は優れた接着性、特に高温における優れた接着性を示し、優れたフォトクロミック特性を発揮する。さらに、得られた積層体は、耐汗性も高い。すなわち、人口汗と接触させた後であっても、優れた接着性を示す。このような効果が得られた理由として詳細は不明であるが、本発明者らは、以下の通り推測している。すなわち多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6〜2.4の範囲であることで、低分子量のポリウレタンウレアの含有量を低減でき、耐熱性が安定した点が挙げられる。さらに、低分子量ポリウレタンウレアの影響による物理的な分子間相互作用すなわちポリマー鎖の分子間での絡み合いの低下が抑制でき、ポリウレタンウレア樹脂を接着層に用いた際のポリウレタンウレア層内での破壊すなわち凝集破壊が抑制できたため、密着性が向上したものと推測される。
なお、多分散度が低いほど、すなわち多分散度が1.0に近いほど、本発明の効果が強く発現する傾向にある。ただし、多分散度が1.6未満であるポリウレタンウレア樹脂を得ることは、工業的製造方法においては実質困難だと考えられる。一方、多分散度が2.4を超える場合には、低分子量のポリウレタンウレア樹脂の影響により、軟化開始温度が低温となる傾向にある。そのため、多分散度が狭い樹脂と比較して、耐熱性に劣り、高温下での密着性が低下する傾向にある。また、高分子量ポリウレタンウレア樹脂の影響により、多分散度が狭い樹脂と比較して、有機溶剤に溶解した際の粘度が著しく上昇し、塗工が困難となる。良好な接着力、耐熱性、及び塗工性の観点から、本発明のポリウレタンウレア樹脂の多分散度は、1.8〜2.2の範囲であることがより好ましい。
また、本発明のポリウレタンウレア樹脂の分子量は、多分散度が上記範囲を満足するものであれば特に制限されるものではない。中でも、接着力、耐熱性、及び耐汗性の観点から、数平均分子量が好ましくは5千〜10万、より好ましくは8千〜5万であり、特に好ましくは1万〜4万であることが推奨される。
なお、上記ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量、及び重量平均分子量は、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタンウレア樹脂試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定し、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いて算出した値である。また、多分散度は、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、上記方法によって求められた数平均分子量、及び重量平均分子量より算出される値である。
また、前記A1成分、A2成分、B成分、及び、必要に応じてC成分を反応させて、本発明のポリウレタンウレア樹脂(I成分)を得る方法としては、多分散度が上記範囲を満足する様に反応させればよく、所謂ワンショット法又はプレポリマー法のいずれの方法も採用することができる。しかしながら、多分散度を制御し効率良くポリウレタンウレア樹脂を得るという観点から、プレポリマー法が好ましい。特に後述する製造方法によれば、多分散度が上記範囲を満足するポリウレタンウレア樹脂を簡便に製造することが可能である。
なお、前記ポリウレタンウレア樹脂((I)成分)は、フォトクロミック化合物を含まない接着層に使用することも可能である。
【0037】
<ポリウレタンウレア樹脂の製造方法>
<ウレタンプレポリマー(A)の製造方法>
本発明において、フォトクロミック組成物に用いるポリウレタンウレア樹脂は、一般にウレタンプレポリマーとジアミン等のポリアミンとの反応によって製造することができる。ウレタンプレポリマー(A成分)は、上記ポリオール化合物(A1成分)と、上記ジイソシアネート化合物(A2成分)とを反応(以下、「プレポリマー反応」ともいう)させることによって製造することができる。
本発明のウレタンプレポリマー(A成分)は、前述のように、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2としたときに、n1:n2=0.4/1.0〜0.8/1.0とすることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとすることが好ましい。
A1成分とA2成分を反応させる際の添加順序に特に制限はない。必要に応じて反応途中に適宜、A1成分及びA2成分を追加添加することも可能である。
A1成分とA2成分との反応は、有機溶媒の存在下または非存在下、両者を、好ましくは窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、反応温度70〜130℃で反応させることが好ましい。反応温度が70℃未満の場合には反応が完結せず、また130℃を超える場合にはA1成分の一部が分解して、所望の物性のポリウレタンウレア樹脂が得られなくなる。反応時間は、A1成分とA2成分の仕込み比、及び反応温度によっても変化するが、0.5〜24時間の範囲とすることができる。
有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種類以上混合して使用することもできる。
有機溶媒を使用する場合には、その使用量はA1成分とA2成分の合計量を100質量部とした際に、200質量部以下とすることが好ましい。有機溶媒の使用量が200質量部を超える場合には、A1成分とA2成分の反応時間が長くなり、A1成分の一部が分解するおそれがある。
反応に際しては、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基が不純物である水と反応するのを避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、例えばジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を用いてもよい。触媒の添加量は、A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部とすることが好ましい。
【0038】
<ポリウレタンウレア樹脂の製造方法>
ポリウレタンウレア樹脂は、ウレタンプレポリマーとジアミン等のポリアミンとの反応によって製造することができる。また、前記の方法においてウレタンプレポリマーを製造した場合には、上記プレポリマー化反応後の反応液にB成分であるポリアミン化合物を添加し、連続的にポリウレタンウレア樹脂の製造を行うこともできる。
上記のポリウレタンウレア樹脂の製造方法における他の反応条件は、製造設備等を勘案して適宜決定される。通常有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、反応温度−20℃〜40℃の範囲で、より好ましくは−10℃〜20℃の範囲で反応を行うことができる。
上記ポリウレタンウレア樹脂の製造における有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルなどのアルコール系有機溶媒を使用できる。これらの有機溶媒は、単独であるいは2種類以上混合して使用することもできる。
【0039】
上記有機溶媒の使用量は、効率的に反応を行うとの観点や、残留する有機溶媒の影響等の観点から、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂の合計量を100質量部に対し、130〜800質量部の範囲にあることが好ましく、150〜500質量部の範囲にあることがより好ましい。
反応に際しては、反応系中のイソシアネート基と不純物である水との反応を避けるため、各種反応試剤及び有機溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、例えばジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を新たに加えても良いし、プレポリマー反応で使用した場合には除去することなくそのまま使用してもよい。触媒の添加量は、ポリウレタンウレア樹脂の合計100質量部に対して0.001〜1質量部とすることが好ましい。
上記のポリウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成する際に、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物(C成分)を併用する。このC成分を使用することにより、分子鎖の末端がキャッピングされたポリウレタンウレア樹脂となる。
上記、分子鎖の末端がキャッピングされたポリウレタンウレア樹脂を得る方法(以下、「末端修飾反応」とも言う)としては、前述のA成分とB成分の反応が終了し、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンウレア樹脂が有機溶剤に溶解している反応液に、必要に応じて有機溶剤で希釈したC成分を滴下して加える方法が好適である。また、前述のA成分とB成分の反応の際に添加したアルコール系有機溶剤をC成分として末端修飾反応に使用する場合には、新たにC成分を添加しなくてもよい。
上記の末端修飾反応は、有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で実施される。反応温度は、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基の場合には、前述のA成分とB成分の反応のときと同様の温度である−20℃〜30℃の間の温度で反応させることもできる。一方、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基以外の場合には、イソシアネート基との反応速度が遅いため、30℃を超え130℃以下の温度で反応させることが好ましい。
【0040】
反応時間は、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基の場合には0.5〜3時間程度であり、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基以外の場合には1時間〜24時間程度である。
有機溶媒としては、前述のプレポリマー反応、及びA成分とB成分の反応に使用した有機溶剤と同じものを使用できる。また、当然のことながら、前述のプレポリマー反応、及びA成分とB成分の反応で使用した有機溶剤を含んだ状態で、末端修飾反応を実施しても構わない。
末端修飾反応における有機溶媒の使用量は、最終的に得られるA成分の合計量100質量部に対し、130〜800質量部の範囲であることが好ましい。
反応に際しては、反応系中のイソシアネート基と不純物である水との反応を避けるため、各種反応試剤及び有機溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、例えばジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を新たに加えても良いし、プレポリマー反応までに触媒を使用した場合には除去することなくそのまま使用してもよい。触媒の添加量は、A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0041】
<多分散度(重量平均分子量/数平均分子量の比)が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂の製造方法>
上記のようにして、多分散度が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレアを製造する場合には、ウレタンプレポリマー(A成分)と、ポリアミン化合物(B成分)とを反応させる際に、A成分とB成分との完全混合時間(θ
M)を、好ましくは30秒以下、より好ましくは15秒以下にすることにより、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂を得ることができる。
完全混合時間(θ
M)とは、撹拌槽(反応容器など)における混合特性を表わす指標であり、n・θ
M(nは撹拌翼の回転数(1/秒))とRe(レイノルズ数;液の乱れ状態を表す指標)との関係を示す「n・θ
M−Re曲線」から求められる。完全混合時間(θ
M)及びn・θ
M−Re曲線については、例えば、「住友重機械工業
技報 vol.35 No.104 1987年8月p74−78」、特開昭61−200842号公報、特開平6−312122号公報などに記載されている。
完全混合時間(θ
M)を、30秒以下にするための手段としては、任意の適切な方法が採用される。例えば撹拌槽(反応容器など)内に邪魔板等を設置し乱流を発生させる方法や、任意の適切な撹拌翼を用いる方法などが挙げられる。適切な撹拌翼としては、マックスブレンド翼、フルゾーン翼などが挙げられる。
また、前記の方法にてウレタンプレポリマーを製造した場合には、上記プレポリマー化反応後の反応液にB成分を添加し、連続的にポリウレタンウレア樹脂の製造を行うこともできる。
【0042】
上記の多分散度の範囲であるポリウレタンウレア樹脂の製造方法における他の反応条件は、製造設備等を勘案して適宜決定される。中でも、特に多分散度が狭い範囲にあるポリウレタンウレア樹脂が得られるという観点から、有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、反応温度−20℃〜40℃の範囲で、より好ましくは、−10℃〜20℃の範囲で反応を行うことが好ましい。反応温度が−20℃未満の場合には、鎖延長反応後半で粘度が上昇し撹拌不足となる傾向にある。また、反応温度が40℃を超える場合には、ウレア結合の形成反応が速く、A成分とB成分が接触直後に反応することによって不均一な反応となりやすく、多分散度が広がる傾向にある。上記反応温度における反応時間は0.5〜3時間程度で十分である。
次に、本発明で使用する(II)フォトクロミック化合物について説明する。
【0043】
<(II)フォトクロミック化合物>
本発明において(II)フォトクロミック化合物をとしては、例えばクロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を使用することができる。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
これらのフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ(2,1−f)ナフト(2,1−b)ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。これらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるためさらに好適である。
本発明において特に好適に使用できるフォトクロミック化合物を具体的に例示すると、以下のものが挙げられる。
【0045】
本発明において、(II)フォトクロミック化合物の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、(I)ポリウレタンウレア樹脂100質量部に対して0.1〜20.0質量部とすることが好適である。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向がある。一方、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、フォトクロミック組成物に溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、本発明のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムとの接着性を十分に保持するためには、(II)フォトクロミック化合物の添加量は、(I)ポリウレタンウレア樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5〜10.0質量部、特に好ましくは1.0〜7.0質量部とするのがよい。なお、本発明において、フォトクロミック組成物に、後述する(III)成分を配合する場合には、(II)フォトクロミック化合物の添加量は、(I)ポリウレタンウレア樹脂と(III)成分の合計量100質量部に対して0.1〜20.0質量部とすることが好ましく、0.5〜10.0質量部とすることがより好ましく、1.0〜7.0質量部とすることがさらに好ましい。
次に、本発明のフォトクロミック組成物に好適に使用される、(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物について説明する。
【0046】
<(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物>
本発明の積層体の接着または密着強度は、接着層に用いるフォトクロミック組成物が、前記(I)ポリウレタンウレア樹脂と、(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(以下、単に(III)成分ともいう。)とを反応させて得られる生成物を含むことにより、より向上させることができる。
(III)成分の分子内に、2つ以上のイソシアネート基を有することにより、フォトクロミック組成物からなる接着層を形成する際に、該(III)成分が(I)ポリウレタンウレア樹脂と反応し、橋架け構造を有するポリウレタンウレア樹脂を生成することができる。もしくは/更には、(III)成分の分子内に含まれるイソシアネート基の一部が加水分解してアミンとなり、他の(III)成分の分子内に含まれるイソシアネート基と反応することで、(I)成分中にウレア樹脂を生成することができる。この橋架け構造、及び/又は新たなウレア樹脂が(I)ポリウレタンウレア樹脂中に形成されたことによって、ポリウレタンウレア樹脂の耐熱性が向上するとともに、凝集破壊が起こりにくくなったものと考えられる。そのため、接着性向上の効果が高くなると考えられる。この効果は、通常の2液型のポリウレタン樹脂を使用した場合よりも、優れている。ただし、操作性、得られるフォトクロミック組成物の粘度、保存安定性等を考慮すると、前記(III)成分は、分子中のイソシアネート基の数が2〜3個であることが好ましい。
【0047】
その中でも、より優れた密着性を有するフォトクロミック組成物からなる接着層を形成するためには、前記(III)成分として、2級炭素に結合したイソシアネート基を有する化合物を使用することが好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。2級炭素に結合したイソシアネート基を有する(III)成分を用いることの利点は、耐熱性、及び接着性向上の効果が大きいためである。
また、その他、前記(III)成分として、比較的柔軟な基(運動性が高い基)、および
少なくとも2つのイソシアネート基を分子内に有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物、およびヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物(以下、単に(IIIB)成分とする場合もある)を使用することにより、耐熱性、および接着性を向上することができる。比較的柔軟な基(運動性が高い基)、および
少なくとも2つのイソシアネート基を分子内に有するポリイソシアネート化合物((IIIB)成分)も、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
本発明において、(III)成分を(I)成分に添加した場合の耐熱性向上、及び接着性向上の効果は、それらを含有するフォトクロミック組成物を用いた積層体を作製した後に発現する。具体的には、(I)成分、及び(III)成分を含有するフォトクロミック組成物を用いて積層体を作製した後に、熱や湿気を供給することにより、耐熱性向上、及び接着性向上の効果が発現すると考えられている。つまりは、熱により一部の(III)成分の1つのイソシアネート基が(I)成分のウレタン結合、又はウレア結合と反応する。次いで、湿気反応(水存在下での反応)において、(I)成分に結合した(III)成分の残存するイソシアネート基と、フリーで残存する(III)成分のイソシアネート基の一部が、湿気により加水分解してアミンを生じることにより、架橋反応が進行すると考えられている。もしくは/更には、単にフリーで残存する(III)成分のイソシアネート基の一部が、湿気により加水分解してアミンを生じ、他のフリーで残存する(III)成分のイソシアネート基と反応することにより、(I)成分中に新たなウレア樹脂を生成すると考えられている。
前記(III)成分としては、少なくとも1種類の2級炭素に結合したイソシアネート基を有する化合物((IIIA)成分)に加えて、比較的柔軟な基(運動性が高い基)、および
少なくとも2つのイソシアネート基を分子内に有するポリイソシアネート化合物((IIIB)成分)を併用することにより、より接着性を向上させることもできる。
【0049】
上記(III)成分として、具体的には、2級炭素に結合したイソシアネート基を有する好ましい化合物(IIIA成分)として、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。中でも、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物を使用することが好ましい。
また、比較的柔軟な基(運動性が高い基)、および
少なくとも2つのイソシアネート基を分子内に有する好ましいポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト化合物((IIIB)成分)などが挙げられる。(IIIB)成分の中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化合物、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物からなる群より選ばれるポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
前記(IIIA)成分、および(IIIB)成分は、それぞれ単独で使用することもできるが、接着性をより一層高めるためには、両者を併用することが好ましい。その中でも、前記(IIIA)成分と前記(IIIB)成分とを併用して使用することが好ましい。併用して使用する場合に、特に効果を高めるためには、前記(IIIA)成分を100質量部としたとき、前記(IIIB)成分を20〜150質量部とすることが好ましい。さらに接着性を高めるためには、前記(IIIA)成分を100質量部としたとき、前記(IIIB)成分を20〜100質量部とすることがより好ましく、30〜80質量部とすることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の積層体に用いられるフォトクロミック組成物において、(III)成分の分子量は
、1000未満であることが好ましい。(III)成分の分子量が1000以上の場合、得られるフォトクロミック組成物からなる接着層の耐熱性、および膜強度が低下する傾向がある。これは、分子量が大きい(III)成分を用いると、イソシアネート基間の結合数が増える傾向にあり、たとえ橋架け構造を形成したとしても架橋点間の距離が長くなり、耐熱性があまり向上しないために接着性も十分に向上しないと考えられる。よって、(III)成分の分子量は、1000未満であることが好ましく、より好ましくは800以下、最も好ましくは500以下である。この(III)成分は、前記の通り、ポリマーでない方が好ましい。そのため、(III)成分の分子量は、(III)成分そのものの分子量である。(III)成分の分子量の下限は、その単体化合物の分子量であり、特に制限されるものではないが、100とするのが好ましい。
本発明の積層体において、フォトクロミック組成物における(III)成分の配合量は、接着性、耐熱性、耐汗性、及びフォトクロミック特性の観点から、(I)成分100質量部に対して4.0〜20.0質量部とすることが好適である。(III)成分の配合量がこの範囲を満足することにより、得られるフォトクロミック組成物が優れた効果を発揮する。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な接着性、及び耐熱性の向上効果が得られない傾向がある。また、多すぎる場合には、該フォトクロミック組成物から得られる接着層の白濁、接着性の低下、フォトクロミック化合物の耐久性低下などが起こる傾向がある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との接着性を向上させるためには、(III)成分の配合量は、(I)ポリウレタンウレア樹脂100質量部に対して、好ましくは6.0〜17.5質量部、さらに好ましくは7.0〜15.0質量部とすることが望ましい。なお、複数種類の(III)成分を使用した場合には、複数種類の(III)成分の合計配合量が前記配合量を満足するようにする。
【0051】
この際、(III)成分のイソシアネート基の割合は、(I)成分100質量部に対して、好ましくは1.0〜10.0質量部、より好ましくは1.5〜6.0質量部、もっとも好ましくは2.0〜5.0質量部である。ここで、イソシアネート基の量は、(III)成分の分子量、1分子当たりのイソシアネート基の数、及びイソシアネート基の分子量から求めることができる。なお、当然のことであるが、複数種類の(III)成分を使用した場合には、複数種類の(III)成分のイソシアネート基の合計割合が、イソシアネート基の前記割合を満足すればよい。
(I)ポリウレタンウレア樹脂と(III)成分との反応生成物の耐熱性は、
(i)ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム、及び後述する第3の光学シート又はフィルムなどを貼付して得られる積層体の物性の観点、
(ii)得られた積層体を用いて曲げ加工や射出成型により光学物品を製造する際の加工安定性の観点、
(iii)得られる積層体の接着性の観点、
(iv)さらにはこれら積層体又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点、
から、60〜200℃が好ましく、100〜200℃がさらに好ましく、100〜190℃がより好ましく、120〜190℃がさらに好ましく、150〜190℃が特に好ましい。本発明における耐熱性とは、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した軟化点を意味する。
〔測定条件〕 昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:
先端径0.5mmの針入プローブ。
【0052】
<好適なフォトクロミック組成物の特性>
本発明の積層体が、特に優れた密着性、及びフォトクロミック性を発揮するためには、前記フォトクロミック組成物からなる接着層の耐熱性が100℃以上となることが好ましい。
前記フォトクロミック組成物が、前記(III)成分を含まない場合には、前記(I)ポリウレタンウレア樹脂の耐熱性が100℃以上となることが好ましく、100〜190℃となることがより好ましい。
さらに、本発明の積層体がより優れた特性を発揮するためには、前記フォトクロミック組成物は、80℃以上120℃未満の(I)ポリウレタンウレア樹脂、(III)成分、および(II)フォトクロミック化合物を含むことが好ましい。そして、該フォトクロミック組成物からなる接着層の耐熱性が、100℃以上であることが好ましく、100〜190℃であることがより好ましく、120〜190℃であることがさらに好ましく、150〜190℃であることが特に好ましい。
80℃以上120℃未満の(I)ポリウレタンウレア樹脂は、柔らかいものとみなされる。この(I)ポリウレタンウレア樹脂をベースにすることにより、一定の耐熱性を有しながら、優れたフォトクロミック特性を発揮できる。さらに、柔らかい該(I)ポリウレタンウレア樹脂、及び前記(III)成分を含むものは、偏光フィルム層への密着性がよくなり、他の光学フィルム(シート)との接着性を高める一因になると考えられる。加えて、前記の通り、(III)成分を配合することの耐熱性向上、及び接着性向上の効果が積層体を作製した後に発現することにより、優れた特性を有する積層体となる。このとき、積層体におけるフォトクロミック組成物からなる接着層の耐熱性は、前記の通り、100℃以上であることが好ましく、100〜190℃であることがより好ましく、120〜190℃であることがさらに好ましく、150〜190℃であることが特に好ましい。
【0053】
<その他の成分>
さらに、本発明の積層体に用いるフォトクロミック組成物には、(II)フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、有機溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
例えば、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、t−ペンチルアルコール2,2,2−トリフルオロエタノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、n−ブチルメチルケトンなどのケトン;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタン及びこれらの組み合せを挙げることができる。
【0054】
例えば、界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の何れも使用できる。中でも、フォトクロミック組成物への溶解性からノニオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン性界面活性剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、さらにはシリコーン系やフッ素系の界面活性剤を挙げることができる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、(I)ポリウレタンウレア樹脂100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの添加剤の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤それぞれの添加量は、(I)ポリウレタンウレア樹脂100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。但し、これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネート樹脂製の樹脂製シート又はフィルムなどへのフォトクロミック組成物の接着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
【0055】
<フォトクロミック組成物の製造方法>
本発明の積層体に用いるフォトクロミック組成物は、上記(I)ポリウレタンウレア樹脂、(II)フォトクロミック化合物、及びその他の成分を混合することにより製造することができる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではない。
例えば、各成分を溶融混練してフォトクロミック組成物としペレット化することも可能であり、そのままシート成型することも可能である。また、有機溶媒を使用する場合には、各成分を有機溶媒に溶かすことでフォトクロミック組成物を得ることができる。
このようにして得られたフォトクロミック組成物は、フォトクロミック性接着剤、特に本発明のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムや、後述する第3の光学シート又はフィルムを接合するためのフォトクロミック性接着剤として好適に使用できる。そして、フォトクロミック組成物からなる接着層を介してポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムや、後述する第3の光学シート又はフィルムを接合することにより、本発明の積層体を容易に得ることができる。
該フォトクロミック組成物からなる接着層の厚みは、使用用途に応じて適宜決定される。中でも、フォトクロミック特性を考慮すると、1〜100μmであることが好ましい。
また、本発明の積層体には、互いに対向する1対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム以外に、第3の光学シート又はフィルムを用いることもできる。以下に、本発明に使用される第3の光学シート又はフィルムについて説明する。
【0056】
<第3の光学シート又はフィルム>
本発明において、第3の光学シート又はフィルムとして、好適に使用されるものは例えば前述のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム、及びセルローストリアセテートフィルムなどである。
本発明における第3の光学シート又はフィルムは、偏光フィルム層とフォトクロミック接着層との間に設けることにより、本発明の積層体の密着性をより強固にし、更には本発明の積層体の優れたフォトクロミック性能、偏光性能を維持することが可能となる。つまりは、特開2002−062423号公報に開示されている技術のように、フォトクロミック化合物を配合した接着剤層を偏光フィルム面に直接接合する場合(以下、「直接接合」とする場合もある)と比較して、製造工程における加熱の影響を受けることが少なく、フォトクロミック性能、偏光性能を高く維持できる。
例えば、典型的な偏光フィルムの一つである、ヨウ素で染色されたポリビニルアルコール偏光フィルムからなる積層フィルムと、該偏光フィルム上に位置するフォトクロミック化合物を配合した接着層と、を含んでなる積層フィルムを加熱した場合には、ヨウ素の高い昇華性によりヨウ素が偏光フィルムから接着剤層へ拡散し、積層フィルムの偏光性能が低下する傾向になる。
さらに、直接接合の場合であって、成形性の改善のために可塑剤をポリビニルアルコール偏光フィルムに含有させた場合には、前記可塑剤が溶媒として作用し、加熱による、接着層から偏光フィルムへフォトクロミック化合物の拡散が増える傾向となる。そして、このようなメカニズムによってフォトクロミック化合物がヨウ素と接触して酸化され、フォトクロミック化合物のフォトクロミック性能が低下する傾向となる。
【0057】
この点において、発明者は以下のような事実を実験的に確認した。すなわち、100質量部のフォトクロミック化合物、具体的には6’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1イル)−1,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−1−プロピル−スピロ〔2H−インドール−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕(商品名、Reversacol Midnight Grey:James Robinso LTD製)と、1質量部のヨウ素とを含む有機溶媒を加熱すると、フォトクロミック化合物の発色濃度に対応する有機溶媒の発色濃度が、ヨウ素を加える前の有機溶媒の発色濃度と比較して低下することを確認した。
よって、本発明の積層体は、偏光フィルム層とフォトクロミック組成物からなる接着層との間に第3の光学シート又はフィルムを有することが好ましい。この場合には、上述のようなフォトクロミック化合物または染料が移動するという問題が起こらない。
【0058】
かくして得られる、本発明の積層体は、たとえば、サングラスレンズ、スポーツ用ゴーグル、矯正用眼鏡レンズ等の偏光レンズとして用いることができる。これらは、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外ではレンズが速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射のない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能する。
本発明において、第3の光学シート又はフィルムとして、セルローストリアセテートフィルムを用いる場合には、その厚さは20〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。厚さが20μm未満のフィルムは、フィルム強度が弱いために加工中にフィルムが切れやすく、また厚さが200μmを超えるフィルムは、価格が非常に高くなる。
また、本発明の積層体には、各光学シート又はフィルム、偏光フィルム、及びフォトクロミック組成物からなる接着層を接合する際に、フォトクロミック化合物を含まない接着層(以下、単に「接着層」と称す)を用いることもできる。この接着層は、前記フォトクロミック組成物からなる接着層とは異なる接着層であり、フォトクロミック化合物を含まない。以下に、本発明に使用される接着層について説明する。
【0059】
<接着層;フォトクロミック化合物を含まない接着層>
本発明の積層体に使用される上記接着層としては、各光学シート又はフィルム、偏光フィルム等の接合に用いられる公知の接着層が特に制限なく使用可能である。かかる接着層として具体的には、湿気硬化型ポリウレタン系、ポリイソシアネート−ポリエステル系の二液型、ポリイソシアネート−ポリエーテル系の二液型、ポリイソシアネート−ポリアクリル系の二液型、ポリイソシアネート−ポリウレタンエラストマー系の二液型、エポキシ系、エポキシ−ポリウレタン系の二液型、ポリエステル系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリイミド系、オレフィン系、酢酸ビニル系、ポリウレタンウレア系の一液型等の接着剤を塗布し、積層させた接着層が使用できる。
接着層の厚みは、使用用途に応じて適宜決定することができる。例えば、通常であれば、1〜100μmで十分である。
本発明において、接着層は、後述する曲げ加工、及び/または射出成型時の加工温度に耐えることができるようにするため、高い耐熱性を有することが好ましい。具体的には、前記の耐熱性が100℃以上であることが好ましい。接着層の耐熱性が100℃以上であることにより、曲げ加工、及び/または射出成型時の熱により偏光フィルム層の収縮を抑制することができ、その結果として、光学物品の歩留まりを向上できる。
前記のような耐熱性を満足する接着層としては、前記(I)ポリウレタンウレア樹脂からなる、ポリウレタンウレア系の一液型接着剤を挙げることができる。この場合、得られる積層体の接着性、及び耐熱性を向上させる観点から、該前記(I)ポリウレタンウレア樹脂から形成される接着層は、前記耐熱性が100℃以上であることが好ましく、100〜190℃であることがより好ましく、120〜190℃であることがさらに好ましく、150〜190℃であることが特に好ましい。そのため、前記(I)ポリウレタンウレア樹脂を接着層とする場合には、構成する成分を調整して、前記耐熱性が100℃以上となる(I)ポリウレタンウレア樹脂を使用することが好ましい。
また、接着層の耐熱性を100℃以上とするためには、フォトクロミック組成物のように、前記(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を併用することもできる。この場合、接着層は、前記(I)ポリウレタンウレア樹脂、および(III)成分を含んでなり、フォトクロミック化合物は含まない層となる。特に、80℃以上120℃未満の(I)ポリウレタンウレア樹脂、および(III)成分を含む組成物から形成される接着層は、偏光フィルム層との密着性が向上する。そして、特に、前記組成物からなる接着層の耐熱性が100℃以上となれば、耐熱性向上、および接着性向上効果が発揮される。この(III)成分の好ましい配合量は、前記に示した通りの値と同じである。また、好ましい(III)成分も、前記の通りであり、例えば、前記(IIIA)成分、および(IIIB)成分から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物であることが好ましい。その中でも、より接着性を高めるためには、前記の通り、(III)成分は、前記(IIIA)成分と前記(IIIB)成分との両者を使用することが好ましく、その配合割合、特に好ましい化合物も前記の通りである。
以下、本発明における積層体及びその製造方法について説明する。
【0060】
<積層体及びその製造方法>
本発明の積層体は、互いに対向する1対の、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムが、偏光フィルム層及びフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる積層体である。このような積層体としては、具体的には以下に挙げる積層体であることが好ましい。
(イ)偏光フィルム単体にフォトクロミック組成物からなる接着層を積層し、次いでこのフォトクロミック組成物からなる接着層側にポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを貼り付ける。更に、得られた積層シートの偏光フィルム側に接着層を塗布した後に、もう一枚のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを貼り付けて、本発明の積層体が得られる。また、フォトクロミック組成物からなる接着層とポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムの間には、前記接着層が設けられていても良い。
(ロ)偏光フィルム層の両側に前記接着層を介してポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムが貼り合わされた偏光シートを用意する。この偏光シートの一方の面にフォトクロミック組成物からなる接着層を積層し、更にこのフォトクロミック組成物からなる接着層上にポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを貼り合わせることにより、本発明の積層体が得られる。また、フォトクロミック組成物からなる接着層とポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムの間には、前記接着層が設けられていても良い。
(ハ)偏光フィルム層の両側にセルローストリアセテートフィルムが貼り合わされた偏光シートを用意する。この偏光シートの一方の面にフォトクロミック組成物からなる接着層を積層し、更にこのフォトクロミック組成物からなる接着層上にポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを貼り合わせる。更に、得られた積層シートのもう一方のセルローストリアセテートフィルム上に接着層を塗布した後に、もう一枚のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムを貼り付けて、本発明の積層体が得られる。また、フォトクロミック組成物からなる接着層とポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムの間、更にはフォトクロミック組成物からなる接着層とセルローストリアセテートフィルムの間には、前記接着層が設けられていても良い。
本発明の積層体においては、上述の様に各種層間に前記接着層を積層することにより、積層体の接着性をより向上させ、各種層を接着層で一体に積層した本発明の積層体とすることができる。
本発明の積層体の厚みは、球面状への曲げ加工する際の光学歪や形状等を考慮した加工性の観点から、300〜2000μmであることが好ましい。
【0061】
(好適な積層体の積層構造)
以上のような積層体の中でも、該積層体を後処理して使用する場合、例えば、曲げ加工する場合、および曲げ加工後に、射出成型によりレンズ基材を積層する場合には、偏光フィルム層を中心として、その上下において対称となる積層構造を有することが好ましい。そして、より一層優れた性能を有する積層体とするためには、以下の積層構造を有する積層体とすることが好ましい。
具体的には、
図5に示すような積層構造を有する積層体である。詳細に説明すると、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1、接着層8、フォトクロミック組成物からなる接着層2、偏光フィルム層3、接着層9、接着層8、及びポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1’からなる積層体である。なお、接着層8、9は、フォトクロミック化合物を含まない層である。なお、図示はされていないが、偏光フィルム層3は、偏光フィルムの上下の面に、前記第3の光学シート又はフィルムが形成されたものであってもよい。
前記接着層9は、なくてもよく、前記接着層8だけであってもよい。ただし、偏光フィルム層3との密着性、最終的には、積層体の接着性を考慮すると、接着層8とは異なる接着層9を設けることが好ましい。
具体的には、接着層8は、耐熱性が好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは120〜190℃、特に好ましくは150〜190℃となる前記(I)ポリウレタンウレア樹脂からなることが好ましい。この耐熱性を有する(I)ポリウレタンウレア樹脂は、構成する各成分の配合、および組成を調整することにより、合成することができる。
また、接着層9は、偏光フィルム層3と接するため、耐熱性が80℃以上120℃の前記(I)ポリウレタンウレア樹脂、および前記(III)成分を含む組成物から形成されることが好ましい。そして、該組成物から形成される接着層9の耐熱性が、100℃以上となることが好ましく、100〜190℃となることがより好ましく、120〜190℃となることがさらに好ましく、150〜190℃となることが好ましい。
【0062】
そして、フォトクロミック組成物からなる接着層2も、耐熱性が80℃以上120℃の前記(I)ポリウレタンウレア樹脂、(II)フォトクロミック化合物、および前記(III)成分を含む組成物から形成されることが好ましい。そして、該フォトクロミック組成物から形成される接着層2の耐熱性が、100℃以上となることが好ましく、100〜190℃となることがより好ましく、120〜190℃となることがさらに好ましく、150〜190℃となることが特に好ましい。
つまり、接着層8は、比較的硬く、耐熱性の高い(I)ポリウレタンウレア樹脂を含む組成物から形成されることが好ましい。また、接着層2および接着層9は、比較的柔らかい(I)ポリウレタンウレア樹脂、及び(III)成分を含む組成物から形成され、積層体となった際に、高い耐熱性を有するものに変換されることが好ましい。接着層2および接着層9を上記構成とすることにより、偏光フィルム層3との密着性、接着性をより向上できる。この場合、接着層2および接着層9を構成する(I)ポリウレタンウレア樹脂、及び(III)成分は、耐熱性が同じくらいのものであれば、同一のものを使用しても、別種類のものを使用してよい。ただし、積層体の生産性を考慮すると、同一種類の、同一配合量(ただし、(II)フォトクロミック化合物を考慮しないで計算した配合割合)のものを使用することが好ましい。
また、
図5の積層構造を有する場合においても、偏光フィルム層3を中心に、上下対称の構造とすることが好ましい。そのため、ポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1とポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム1’の上下の2つの接着層8は、同一種類の同一の厚みのものであることが好ましい。そして、フォトクロミック組成物からなる接着層2と接着層9とは、フォトクロミック化合物の有無が違うだけで、同一の組成、同一の厚みであることが好ましい。
【0063】
<積層体を用いた光学物品>
本発明の積層体は、裏面のポリカーボネートからなる光学シート又はフィルム上に、該光学シート又はフィルムと同じポリカーボネートを射出成型して一体化することにより、裏面にポリカーボネート層が積層した光学物品とすることができる。
一体化する方法としては、前記積層体を金型内に装着し、光学基材を構成するためのポリカーボネートを射出成型する方法が挙げられる。この際に、金型側にフォトクロミック組成物からなる接着層が、射出成型側に偏光フィルム層がくるように成形される。また、本発明の積層体は光学基材と一体化する前に、曲げ加工を施すことにより、レンズ状の球面形状に加工することもできる。前記積層体を曲げ加工する方法としては、例えば、熱プレス加工、加圧加工、減圧吸引加工などが挙げられる。曲げ加工する際の温度は、前記積層体に使用しているポリカーボネートからなる光学シート又はフィルムの種類によって適宜決定されるが、100℃から150℃で実施することが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例23、24は参考例である。
【0065】
実施例1
(1)ポリウレタンウレア樹脂(U1)の製造
(ウレタンプレポリマーの製造)
翼径135mmのマックスブレンド翼、邪魔板を備える内径260mm、高さ280mm、仕込用量10Lの反応容器に、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を接続した。マックスブレンド翼は100rpmで撹拌した。
この反応容器に、数平均分子量800のポリカーボネートジオール1770g、イソホロンジイソシアネート700g、トルエン500gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で7時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
【0066】
(ポリウレタンウレア樹脂(U1)の製造)
ウレタンプレポリマー反応終了後、反応液を0℃付近まで冷却し、イソプロピルアルコール1430g、ジエチルケトン2670gに溶解させた後、液温を0℃に保持した。次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン171gとジエチルケトン145gの混合溶液を30分以内に滴下し、0℃で1時間反応させた。その後さらに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン42gを滴下し、0℃で1時間反応させることにより、ポリウレタンウレア樹脂(U1)のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(U1)は、数平均分子量が19,000であり、重量平均分子量が41,000であり、多分散度が2.16であり、軟化点が105℃(軟化開始温度;約80℃)であり、動粘度が15,000cStであった。
なお、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時の反応液の粘度が0.06kg/m・s、密度が900kg/m
3、マックスブレンド翼の回転数が100rpmであり、レイノルズ数(Re)が456となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が14であることから、完全混合時間(θ
M)が8秒であった。
【0067】
<評価方法>
上記ポリウレタンウレア樹脂(U1)の、数平均分子量、重量平均分子量、多分散度、軟化点、及び動粘度については以下の方法によって測定した。
【0068】
(数平均分子量、重量平均分子量、及び多分散度)
数平均分子量、重量平均分子量、及び多分散度に関しては、本文中に記載の方法に分析を実施した。
すなわち、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタンウレア樹脂(U1)試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定し、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いて算出した。また、多分散度は、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、上記方法によって求められた数平均分子量、及び重量平均分子量より算出した。
【0069】
(耐熱性;軟化点)
ポリウレタンウレア樹脂溶液(U1)を、ステンレスの容器に流し込み、40℃で10時間、60℃で10時間、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間乾燥させることにより、厚み1mmの試験片を作製した。得られた試験片を、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用い、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブの条件にて軟化点を測定した。
【0070】
(動粘度)
ポリウレタンウレア樹脂(U1)溶液約10gを、キャノンフェンスケ粘度計(#600)に入れ、このキャノンフェンスケ粘度計(柴田科学株式会社製)を25℃±0.1℃に制御した恒温水槽に15分浸した後、動粘度を測定した。
【0071】
(2)フォトクロミック組成物1の調製
ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g、フォトクロミック化合物5.7g(PC1/PC2/PC3=4.0/1.0/0.7g)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物
43.2g、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]3.6g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、フォトクロミック組成物1を得た。
【0072】
PC1:下記式で示される化合物
【化6】
【0073】
PC2:下記式で示される化合物
【化7】
【0074】
PC3:下記式で示される化合物
【化8】
【0075】
(3)偏光フィルムの調製
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルム(商品名VF−PS#7500;クラレ社製)原反を、ヨウ素0.04%とヨウ化カリウム0.4%の混合溶液(染色液)を用いて、30℃に保持した前記染色浴中で、原反の長さに対して3倍になるように延伸しながら、前記フィルムを染色した。このフィルムをさらに3.5%ホウ酸水溶液(延伸浴)に浸漬して、原反の6倍になるように延伸を行うことによって、偏光フィルム1(厚み27μm)を作製した。得られた偏光フィルムの視感透過率は42.5%、偏光度は99.2%であった。
【0076】
(4)ポリウレタンウレア樹脂(U2)の製造
(ウレタンプレポリマーの製造)
翼径135mmのマックスブレンド翼、邪魔板を備える内径260mm、高さ280mm、仕込用量10Lの反応容器に、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を接続した。マックスブレンド翼は100rpmで撹拌した。
この反応容器に、数平均分子量1000のポリカーボネートジオール800g、イソホロンジイソシアネート350g、トルエン250gを仕込み、窒素雰囲気下、110℃で7時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
【0077】
(ポリウレタンウレア樹脂(U2)の製造)
ウレタンプレポリマー反応終了後、反応液を20℃付近まで冷却し、プロピレングリコール−モノメチルエーテル5000gに溶解させた後、液温を20℃に保持した。次いで、鎖延長剤であるイソホロンジアミン121.5gを30分以内に滴下し、20℃で1時間反応させた。その後さらに、n−ブチルアミン9gを滴下し、20℃で1時間反応させることにより、ポリウレタンウレア樹脂(U2)のプロピレングリコール−モノメチルエーテル溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(U2)は、数平均分子量が49,000であり、重量平均分子量が89,000であり、多分散度が1.82であり、軟化点が175℃(軟化開始温度;約155℃)であり、動粘度が2,500cStであった。
なお、ポリアミン化合物であるイソホロンジアミンの滴下開始時の反応液の粘度が0.04kg/m・s、密度が950kg/m
3、マックスブレンド翼の回転数が100rpmであり、レイノルズ数(Re)が721となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が12であることから、完全混合時間(θ
M)が7秒であった。
【0078】
(5)接着層用接着剤1の調製
ポリウレタンウレア樹脂(U2)の溶液1000gに、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.7gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、接着層用接着剤1を得た。
【0079】
(6)積層体の作製
(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)で得られた偏光フィルム上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を有する偏光フィルムを得た。次いで、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に、厚み300μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
更に、上記積層シートの偏光フィルム側に、(5)で得られた接着層用接着剤1(U2)をコーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚3μmの接着層を積層し、次いでこの接着層に厚み300μmのポリカーボネートからなる光学シートを貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約670μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する本発明の積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は25℃が150N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が120N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約400時間(408時間は密着性を維持した。)であった。
なお、これらの評価は以下のようにして行った。
【0080】
〔視感透過率(発色前)〕
得られた積層体を試料とし、島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550を用いて、積層体の紫外線照射前の視感透過率を測定した。
〔偏光度(発色前)〕
得られた積層体2枚を試料とし、島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550を用いて、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、偏光度(P)を次式により求めた。
偏光度(P)(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}×100
なお、上記TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
〔フォトクロミック特性〕
得られた積層体を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2、245nm=24μW/cm
2で120秒間照射して発色させ、積層体のフォトクロミック特性を測定した。
【0081】
フォトクロミック特性;1)発色時の視感透過率:(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた上記光を120秒照射後の視感透過率である。
フォトクロミック特性;2)退色速度〔t1/2(sec.)〕:まず、(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により、発色後の最大吸収波長を求めた。次いで、前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差〔ε(120)−ε(0)〕を求め、120秒間照射後に光照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間(退色速度)を求めた。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
フォトクロミック特性;3)耐久性(%)=〔(A96/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により96時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A96)を測定し、〔(A96)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0082】
〔剥離強度〕
得られた積層体を、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験雰囲気温度が設定可能な恒温槽を備えた試験機(オートグラフAGS−500NX、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、それぞれ下記1)〜3)の剥離強度を測定した。
【0083】
剥離強度;1)25℃での剥離強度は、上記サイズに切り出した試験片を、25℃に設定した恒温槽内で10分放置した後、上記のようにして測定した。
剥離強度;2)70℃雰囲気下での剥離強度は、上記サイズに切り出した試験片を、70℃に設定した恒温槽内で10分加熱した後、上記のようにして測定した。
剥離強度;3)150℃雰囲気下での剥離強度は、上記サイズに切り出した試験片を、150℃に設定した恒温槽内で10分加熱した後、上記のようにして測定した。
【0084】
〔耐汗試験〕
得られた積層体を、直径50mmの円形に切り出し、この試験片の外周をリング状のステンレス製治具で締め付けた。別途、蓋付きのプラスチック容器に人工汗(10%の食塩、及び5%の乳酸を添加した蒸留水)を用意し、この人工汗中に前記試験片を浸漬した。この試験片、及び人工汗が入ったプラスチック容器を70℃で保管し、24時間毎に試験片端部の剥離有無を目視評価した。評価結果の数値は、安定した接着性を示した時間(剥離が生じる直前までの時間)である。
【0085】
実施例2
実施例1にて得られた積層体をフォトクロミック組成物1からなる接着層側が凸面に、偏光フィルム層側が凹面になるように球面形状に熱曲げ加工した。熱曲げ加工は、金型中心に減圧吸引可能な吸引口を有する凹型の金型を用意し、φ80mmに型抜きした積層体をフォトクロミック組成物1からなる接着層側が金型側になるように配置し、その後130℃で5分間減圧吸引することにより実施した。これにより、フォトクロミック組成物1からなる接着層側が凸面、偏光フィルム層側が凹面になった球面形状を有する積層体を得た。
次いで、得られた球面形状を有する積層体を射出成型機の凹型の金型に設置し、100℃に加熱した。射出成型機に120℃、5時間の予備加熱を行ったポリカーボネート樹脂のペレット(帝人化成製パンライト)を充填し、300℃、60rpmで加熱溶融し、射出圧力14000N/cm
2で積層体の裏面側(偏光フィルム層側)に射出することで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.5%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1000時間(1008時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Aであった。なお、曲げ加工性の評価は、以下のようにして行った。
【0086】
〔曲げ加工性〕
前述の曲げ加工を実施した際に、所望の形状通りに曲げ加工出来たものをA、若干歪を生じたものをB、射出成型機の金型にセットし難いほどの歪を生じたものをCとして、目視評価を実施した。
【0087】
実施例3
(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)で得られた偏光フィルム上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を有する偏光フィルムを得た。次いで、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に、厚み300μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
更に、上記積層シートの偏光フィルム側に、アクリル系接着剤(サイデン化学社製サイビノールAT−245)を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚10μmの接着層を積層し、次いでこの接着層に厚み300μmのポリカーボネートからなる光学シートを貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約677μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する本発明の積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が120N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が90N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が10N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約200時間(216時間は密着性を維持した。)であった。
【0088】
実施例4
実施例3で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.6%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約500時間(504時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0089】
実施例5
(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)で得られた偏光フィルム上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を有する偏光フィルムを得た。次いで、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に、厚み300μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
更に、上記積層シートの偏光フィルム側に、オレフィン系接着剤(巴工業社製ライコン142)を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚10μmの接着層を積層し、次いでこの接着層に厚み300μmのポリカーボネートからなる光学シートを貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約677μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する本発明の積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が120N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が80N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が10N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約200時間(216時間は密着性を維持した。)であった。
【0090】
実施例6
実施例5で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.6%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約400時間(408時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0091】
実施例7
(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)で得られた偏光フィルム上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を有する偏光フィルムを得た。次いで、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に、厚み300μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
更に、上記積層シートの偏光フィルム側に、湿気硬化型ウレタン接着剤(三井武田ケミカル社製タケネート)とトリイソシアネート系硬化剤を混合した塗工液を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚10μmの接着層を積層し、次いでこの接着層に厚み300μmのポリカーボネートからなる光学シートを貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約677μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する本発明の積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が160N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が120N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約450時間(456時間は密着性を維持した。)であった。
【0092】
実施例8
実施例7で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.6%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1000時間(1008時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0093】
実施例9
(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)で得られた偏光フィルム上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を有する偏光フィルムを得た。次いで、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に、厚み300μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
更に、上記積層シートの偏光フィルム側に、ポリビニルアルコール系接着剤(日本合成社製ゴーセノール)を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚10μmの接着層を積層し、次いでこの接着層に厚み300μmのポリカーボネートからなる光学シートを貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約677μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する本発明の積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が130N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が100N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が15N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約350時間(360時間は密着性を維持した。)であった。
【0094】
実施例10
実施例7で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.6%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約800時間(816時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0095】
実施例11
(5)で得られた接着層用接着剤1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)で得られた偏光フィルム上に塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚3μmの接着層を有する偏光フィルムを得た。この接着層に、厚み150μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
更に、もう一方の偏光フィルム面に(5)で得られた接着層用接着剤1を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させ膜厚3μmの接着層を積層した後、この接着層に厚み300μmのポリカーボネートシートを貼り合わせ、2枚のポリカーボネートで挟みこんだ偏光シートを得た。
上記偏光シートの厚み150μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)の面に、(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を有する偏光シートを得た。次いで、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に、厚み150μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約673μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.3%、偏光度が99.2%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が140N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が110N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約400時間(408時間は密着性を維持した。)であった。
【0096】
実施例12
実施例11で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.6%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1000時間(1008時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Aであった。
【0097】
実施例13
実施例11で得られた積層体に対し、フォトクロミック組成物1からなる接着層の両側に(5)で得られた接着層用接着剤1を塗布した接着層を設けた以外は、実施例3と同じ構成の積層体を得た。この積層体の総厚は、約680μmであった。
得られた積層体の視感透過率は41.5%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が180N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が125N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が30N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約800時間(816時間は密着性を維持した。)であった。
【0098】
実施例14
実施例13で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.8%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1400時間(1416時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Aであった。
【0099】
実施例15
実施例11で得られた積層体に対し、フォトクロミック組成物1からなる接着層の両側に湿気硬化型ウレタン接着剤(三井武田ケミカル社製タケネート)とトリイソシアネート系硬化剤を混合した塗工液を塗布した接着層を設けた以外は、実施例13と同じ構成の積層体を得た。この積層体の総厚は、約680μmであった。
得られた積層体の視感透過率は41.5%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が170N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が125N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が30N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約700時間(720時間は密着性を維持した。)であった。
【0100】
実施例16
実施例15で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.8%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1300時間(1320時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0101】
実施例17
実施例11で得られた積層体に対し、フォトクロミック組成物1からなる接着層の片側にポリビニルアルコール系接着剤(日本合成社製ゴーセノール)を塗布した接着層を設け、フォトクロミック組成物1からなる接着層のもう片側にアクリル系接着剤(サイデン化学社製サイビノールAT−245)を塗布した接着層を設けた以外は、実施例13と同じ構成の積層体を得た。この積層体の総厚は、約680μmであった。
得られた積層体の視感透過率は41.5%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が130N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が110N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約500時間(504時間は密着性を維持した。)であった。
【0102】
実施例18
実施例17で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.8%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1100時間(1104時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0103】
実施例19
偏光フィルムとしては、厚さ180μm、視感透過率が43.7%の偏光シート(住友化学工業社製、商品名スミカランSQ−1852A)を使用した。この偏光シートは、ヨウ素系染料を用いて偏光度99.9%のポリビニルアルコールでできた厚さ20μmの偏光フィルムの両面に、それぞれの厚さが80μmのセルローストリアセテートフィルムを接合されてなるものである。
(5)で得られた接着層用接着剤1を、コーター(テスター産業製)を用いて、(3)記載の偏光シート上に塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚3μmの接着層を有する偏光シートを得た。この接着層に、厚み300μmのポリカーボネートシートを貼り合わせた。
更に、もう一方の偏光シート上のセルローストリアセテートフィルム面に(2)で得られたフォトクロミック組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させ膜厚40μmのフォトクロミック組成物1からなる接着層を積層した後、このフォトクロミック組成物1からなる接着層に厚み150μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)を貼り合わせた。
この積層体を、40℃で1週間放置することにより、総厚約673μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は43.3%、偏光度が99.9%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が140N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が110N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約400時間(408時間は密着性を維持した。)であった。
【0104】
実施例20
実施例19で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は43.2%、偏光度が99.9%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約900時間(912時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Aであった。
【0105】
実施例21
実施例19で得られた積層体に対し、フォトクロミック組成物1からなる接着層の両側に(5)で得られた接着層用接着剤1を塗布した接着層を設けた以外は、実施例19と同じ構成の積層体を得た。この積層体の総厚は、約686μmであった。
得られた積層体の視感透過率は43.3%、偏光度が99.9%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は室温が180N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が125N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が30N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約800時間(816時間は密着性を維持した。)であった。
【0106】
実施例22
実施例21で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は43.2%、偏光度が99.9%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約1400時間(1416時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Aであった。
【0107】
実施例23
ポリウレタンウレア樹脂(U3)の製造
ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時のマックスブレンド翼の回転数を40rpmにした以外は、前述の(1)と同じ方法でフォトクロミック組成物からなる接着層用ポリウレタンウレア樹脂の製造を行った。得られたポリウレタンウレア樹脂(U3)は、数平均分子量が21,000であり、重量平均分子量が54,000であり、多分散度が2.57であり、軟化点が100℃(軟化開始温度;約50℃)であり、動粘度が55,000cStであった。
なお、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時のマックスブレンド翼の回転数を40rpmに変更したことにより、レイノルズ数(Re)が192となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が25であることから、完全混合時間(θ
M)が38秒であった。
次いで、ポリウレタンウレア樹脂(U3)の溶液を用いた以外は、前述の(2)と同様にしてフォトクロミック組成物2を得た。
更に、フォトクロミック組成物1をフォトクロミック組成物2に置き換えた以外は、実施例1記載の方法と同様にして、積層体を得た。この積層体は、総厚約670μmである偏光特性とフォトクロミック特性を有する積層体であった。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は91%であった。また、剥離強度は室温が140N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が80N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は約100時間(96時間は密着性を維持した。)であった。
【0108】
実施例24
実施例23で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は40.5%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は91%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は約300時間(312時間は密着性を維持した。)であった。また、曲げ加工性は、Bであった。
【0109】
実施例25(
図5の構成の積層体)
厚み300μmのポリカーボネートシート(1軸延伸のシート;位相差約4500nm)に、(5)で得られた接着層用接着剤1を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚5μmの接着層(
図5の接着層8)を積層した。次いで、PET(ポリエチレンテレフタレート)製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に(2)で得られたフォトクロミック組成物1を塗布し、110℃で10分間乾燥させた後膜厚40μmのフォトクロミック層を作製し、このフォトクロミック層を前述の接着層(
図5の接着層8)と貼り合わせた。
別途、厚み300μmのポリカーボネートシートに、(5)で得られた接着層用接着剤1を、コーター(テスター産業製)を用いて塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させることにより、膜厚5μmの接着層(
図5の接着層8)を積層した。次いで、PET(ポリエチレンテレフタレート)製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に、以下の(7)で得られる接着層用接着剤2を塗布し、110℃で10分間乾燥させた後膜厚40μmの該接着層用接着剤2からなる層を作製し、この該接着層用接着剤2からなる層を前述のポリカーボネートシート上の接着層(
図5の接着層8)と貼り合わせた。
上記2種類のシートから、それぞれPET製フィルムを剥離しながら、両シートの間に前記(3)の偏光フィルム1を挟み込みこんだ。得られた積層物を、40℃、真空下で24時間静置した後、90℃で60分加熱処理し、次いで60℃、100%RHで24時間の加湿処理を行い、最後に40℃、真空下で24時間静置することにより、総厚約710μmの偏光特性とフォトクロミック特性を有する
図5に示す積層構造の積層体を得た。なお、この積層体は、層構成が耐熱性的に対称性を有する積層体である。
【0110】
(7)接着層用接着剤2の調製
ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物43.2g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、接着層用接着剤2を得た。この接着層用接着剤2は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物1と同じ組成のものである。
得られた積層体の評価は実施例1と同様にして実施した。
【0111】
実施例26
実施例25で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表5に記載した。
【0112】
実施例27
実施例1で得られた積層体に対し、フォトクロミック組成物1を、下記フォトクロミック組成物3に変えた以外は実施例1と同様な操作を実施し、実施例1と同じ構成の積層体を得、同様の評価を行った。この積層体の総厚は、約670μmであった。
【0113】
(8)フォトクロミック組成物3の調製
ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g、フォトクロミック化合物5.7g(PC1/PC2/PC3=4.0/1.0/0.7g)、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]3.6g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、フォトクロミック組成物3を得た。
【0114】
実施例28
実施例27で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。
【0115】
実施例29
実施例25で得られた積層体に対し、フォトクロミック組成物1を、フォトクロミック組成物3に変えた以外は実施例25と同様な操作を実施し、実施例25と同じ構成の積層体を得、同様の評価を行った。この積層体の総厚は、約710μmであった。
【0116】
実施例30
実施例29で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。
【0117】
実施例31
実施例25で得られた積層体に対し、接着層用接着剤2から得られる接着層の厚みを5μmにした以外は実施例25と同様な操作を実施し、実施例25と同じ構成の積層体を得、同様の評価を行った。この積層体の総厚は、約675μmであった。
【0118】
実施例32
実施例31で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。
【0119】
実施例33
フォトクロミック組成物1の代わりに表2に示す組成のフォトクロミック組成物5を使用し、接着層用接着剤2の代わりに表3に示す組成の接着層用接着剤3を使用した以外は、実施例25と同様の方法で積層体を作製した。評価結果を表5に記載した。
なお、フォトクロミック組成物5は、前述した(2)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表2に示した配合割合とした以外は、前述した(2)と同じ方法で作製した。
接着層用接着剤3は、前述した(7)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表3に示した配合割合とした以外は、前述した(7)と同じ方法で作製した。この接着層用接着剤3は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物5と同じ組成のものである。
【0120】
実施例34
実施例33で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表6に記載した。
【0121】
実施例35
フォトクロミック組成物1の代わりに表2に示す組成のフォトクロミック組成物6を使用し、接着層用接着剤2の代わりに表3に示す組成の接着層用接着剤4を使用した以外は、実施例25と同様の方法で積層体を作製した。評価結果を表5に記載した。
なお、フォトクロミック組成物6は、前述した(2)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表2に示した配合割合とした以外は、前述した(2)と同じ方法で作製した。
接着層用接着剤4は、前述した(7)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表3に示した配合割合とした以外は、前述した(7)と同じ方法で作製した。この接着層用接着剤4は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物6と同じ組成のものである。
【0122】
実施例36
実施例35で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表6に記載した。
【0123】
実施例37
フォトクロミック組成物1の代わりに表2に示す組成のフォトクロミック組成物7を使用し、接着層用接着剤2の代わりに表3に示す組成の接着層用接着剤5を使用した以外は、実施例25と同様の方法で積層体を作製した。評価結果を表5に記載した。
なお、フォトクロミック組成物7は、前述した(2)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表2に示した配合割合とした以外は、前述した(2)と同じ方法で作製した。
接着層用接着剤5は、前述した(7)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表3に示した配合割合とした以外は、前述した(7)と同じ方法で作製した。この接着層用接着剤5は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物7と同じ組成のものである。
【0124】
実施例38
実施例37で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表6に記載した。
【0125】
実施例39
フォトクロミック組成物1の代わりに表2に示す組成のフォトクロミック組成物8を使用し、接着層用接着剤2の代わりに表3に示す組成の接着層用接着剤6を使用した以外は、実施例25と同様の方法で積層体を作製した。評価結果を表5に記載した。
なお、フォトクロミック組成物8は、前述した(2)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表2に示した配合割合とした以外は、前述した(2)と同じ方法で作製した。
接着層用接着剤6は、前述した(7)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット化合物を表3に示した配合割合とした以外は、前述した(7)と同じ方法で作製した。この接着層用接着剤6は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物8と同じ組成のものである。
【0126】
実施例40
実施例39で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表6に記載した。
【0127】
実施例41
フォトクロミック組成物1の代わりに表2に示す組成のフォトクロミック組成物9を使用し、接着層用接着剤2の代わりに表3に示す組成の接着層用接着剤7を使用した以外は、実施例25と同様の方法で積層体を作製した。評価結果を表5に記載した。
なお、フォトクロミック組成物9は、前述した(2)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物を表2に示した配合割合とした以外は、前述した(2)と同じ方法で作製した。
接着層用接着剤7は、前述した(7)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物を表3に示した配合割合とした以外は、前述した(7)と同じ方法で作製した。この接着層用接着剤7は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物9と同じ組成のものである。
【0128】
実施例42
実施例41で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表6に記載した。
【0129】
実施例43
フォトクロミック組成物1の代わりに表2に示す組成のフォトクロミック組成物10を使用し、接着層用接着剤2の代わりに表3に示す組成の接着層用接着剤8を使用した以外は、実施例25と同様の方法で積層体を作製した。評価結果を表5に記載した。
なお、フォトクロミック組成物10は、前述した(2)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物を表2に示した配合割合とした以外は、前述した(2)と同じ方法で作製した。
接着層用接着剤8は、前述した(7)において、(III)成分として(IIIA)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物に加え、(IIIB)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物を表3に示した配合割合とした以外は、前述した(7)と同じ方法で作製した。この接着層用接着剤8は、フォトクロミック化合物を含まない以外は、前記フォトクロミック組成物10と同じ組成のものである。
【0130】
実施例44
実施例43で得られた積層体を、実施例2と同様な方法でプラスチックレンズ(光学物品)の製造、及び評価を実施した。評価結果は、表6に記載した。
【0131】
比較例1
(1’)フォトクロミック組成物からなる接着層用ポリウレタンウレア樹脂の製造
以下の方法により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(PI)、及び分子鎖の末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(PII)を合成した。
【0132】
(ポリウレタン樹脂(PI)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量1000のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学株式会社製プラクセル)100g、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)39.5gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(ポリウレタン樹脂(PI))を得た。得られたプレポリマー(ポリウレタン樹脂(PI))の分子量は、ポリオキシエチレン換算で2500(理論値;2800)であった。
【0133】
(ポリウレタン樹脂(PII)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量1000のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学株式会社製プラクセル)100g、水添ジフェニルメタンジイソシアネート61.3gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得た。その後、トルエン200mlを加えた後、窒素雰囲気下で1,4−ブタンジオール12.7gを滴下しながら加え、滴下終了後90℃で24時間反応させ、分子鎖の末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(PII)を合成した。得られたポリウレタン樹脂(PII)の分子量は、ポリオキシエチレン換算で2万(理論値;1万8千)であった。
【0134】
(2’)フォトクロミック組成物の調製
以上のように得られたポリウレタン樹脂(PI)175g、ポリウレタン樹脂(PII)溶液376g、フォトクロミック化合物5.7g(PC1/PC2/PC3=4.0/1.0/0.7g)、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]3.6g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、フォトクロミック組成物を得た。
(3)偏光フィルムの調製、(4)接着層用ポリウレタンウレア樹脂の製造、(5)接着層用接着剤の調製、及び(6)積層体の作製は、実施例1記載の方法と全く同様にして実施した。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は60%であった。また、剥離強度は初期が80N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が50N/25mm、150℃雰囲気下での剥離強度が5N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は24時間であった。
【0135】
比較例2
比較例1で得られた積層体を、実施例2と同様な方法で熱曲げ加工及び射出成型をすることで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。得られたプラスチックレンズの視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は60%であった。また、耐汗試験における密着安定時間は48時間であった。
本発明の接着層に用いた樹脂の物性を表1、表2、および表3に、本発明の積層体の層構成を表4にまとめた。また、本発明の積層体の評価結果、及びプラスチックレンズの評価結果を、それぞれ表5、及び表6にまとめて記載した。なお、表2、および表3において、フォトクロミック組成物、および接着層用接着剤の軟化点は、それぞれの実施例・比較例と同じ処理を施し、得られたフォトクロミック組成物からなる接着層、および接着層用接着剤からなる接着層の軟化点を記した。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2-1】
【0138】
【表2-2】
【0139】
【表3-1】
【0140】
【表3-2】
【0141】
【表4-1】
【0142】
【表4-2】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
上記実施例1〜44から明らかなように、フォトクロミック組成物からなる接着層にポリウレタンウレア樹脂を用いた本発明の積層体は、良好なフォトクロミック特性、偏光特性、及び高温や耐汗試験における優れた密着性を有していることが分かる。
一方、比較例1、及び2に示すように、フォトクロミック組成物からなる接着層に2液基硬化型のウレタン樹脂を用いた場合には、フォトクロミック特性(耐久性)、及び密着性が不十分であった。