特許第6756162号(P6756162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6756162コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔、積層板、多層配線板及び多層配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6756162
(24)【登録日】2020年8月31日
(45)【発行日】2020年9月16日
(54)【発明の名称】コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔、積層板、多層配線板及び多層配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20200907BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20200907BHJP
【FI】
   B32B15/08 J
   H05K3/46 T
   H05K3/46 N
   H05K3/46 B
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-114360(P2016-114360)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-217838(P2017-217838A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−203038(JP,A)
【文献】 特開2002−344144(JP,A)
【文献】 特開2005−050884(JP,A)
【文献】 特開2008−016536(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/087884(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/046770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
H05K 3/46
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と離型層と絶縁層とをこの順に有する、コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
【請求項2】
前記離型層が、アルキド系樹脂を含む、請求項1に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
【請求項3】
前記離型層の厚さが、0.01〜10μmである、請求項1又は2に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
【請求項4】
前記絶縁層が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤及び(C)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
【請求項5】
前記金属箔の厚さが、5〜50μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
【請求項6】
前記金属箔の離型層と対向する側の表面の十点平均粗さ(Rz)が、2.0μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
【請求項7】
下記工程(1)〜(5)を有する、多層配線板の製造方法。
(1)請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔を、内層基板の少なくとも一方の面に、前記絶縁層と前記内層基板とが対向する状態で積層成形し、内層基板と絶縁層と離型層と金属箔とをこの順に有する多層配線板を得る工程
(2)工程(1)で得られた多層配線板の金属箔を加工して、開口部を有するコンフォーマルマスクを形成する工程
(3)工程(2)で形成したコンフォーマルマスクを使用して、前記多層積層板に層間接続用ビアホールの穴あけ加工を行う工程
(4)工程(3)で穴あけ加工を行った多層積層板からコンフォーマルマスクである金属箔及び離型層を剥離して、絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層を露出させる工程
(5)工程(4)で露出させた絶縁層上に回路を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔、及びそれを用いた積層板、多層配線板、積層板の製造方法、多層配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高集積化に伴い、プリント配線板の製造分野において、多層配線板材料の微細配線性に優れるセミアディティブ法により配線を形成する方法が注目されている。セミアディティブ法は、例えば、絶縁層表面の全面に無電解銅めっきを施した後、必要な部分のみに電解銅めっきを行い、不要な部分にある無電解銅めっき層をエッチングによって除去して配線を形成する方法である。
【0003】
一方、多層配線板材料については、近年の電子部品の薄型化に伴い、使用される配線板材料の厚みが薄くなりつつある。従来、配線板材料としては、繊維基材に樹脂組成物を含浸又は塗工して得られるプリプレグ、繊維基材を含まない樹脂フィルム等が用いられているが、薄型化の観点からは、繊維基材を含まない樹脂フィルムが選択される場合があった。しかし、繊維基材を含まない樹脂フィルムを用いると、実装時の反りが大きくなり、接続信頼性が低下する場合があり、繊維基材を含むプリプレグが再度見直されている。
すなわち、微細配線性、薄型化、低反り等の要求に応えるためには、繊維基材を含むプリプレグを使用して製造した多層配線板に対して、セミアディティブ法を適用する必要性が高まっている。
【0004】
配線板材料としてプリプレグを用いる場合、多層配線板は、熱プレス工程を経て製造されるが、その際に高温及び高圧での熱プレス工程においても形状の変形が無く、平坦な絶縁層面を形成するために、絶縁層の最外層の上下に銅箔を構成した材料を用いて、銅箔が最外層となるように積層成形することがある。上記のとおり、セミアディティブ法は、絶縁層表面の全面にめっきを施して回路を形成する方法であるため、最外層に銅箔を有する多層配線板に適用するには、最外層の銅箔を全面エッチングしなければならない。
銅箔の全面エッチングにはコストがかかる上、エッチングによる銅箔除去の信頼性に課題がある。また、全面エッチングした後、ビアホール等を形成する目的でレーザー加工を施すが、その際に溶融飛散した絶縁材料が絶縁層の表面に付着することがあり、これにより微細配線に不良が生じて、歩留りが悪化するという課題がある。
【0005】
上記の課題に対して、コンフォーマルマスク法を用いてレーザー加工する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、絶縁層にあらかじめ付与されている金属箔をエッチング等で形状を加工して、開口部を有するコンフォーマルマスクを形成し、該マスクから露出している絶縁層に対してレーザー光等を照射して穴あけ加工を行う方法である。この方法によると、マスク交換の手間を省くことができると同時に、より高精度な微細加工が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−16536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のコンフォーマルマスク法によると、レーザー加工後にコンフォーマルマスクである金属箔を除去するために全面エッチングを施す必要があり、その際に内層銅も溶解するという課題があった。また、金属箔の全面エッチングには、コスト及び作業負担がかかるため、経済性及び生産性の点からも改善が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、熱プレス工程後の金属箔の剥離が容易であり、コンフォーマルマスクとして使用した金属箔の全面エッチングが不要であると共に、セミアディティブ法に好適な絶縁層を形成することができる、コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔、及びそれを用いた積層板、多層配線板、積層板の製造方法、多層配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す絶縁層付き離型金属箔が上記課題に沿うものであることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1]金属箔と離型層と絶縁層とをこの順に有する、コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
[2]前記離型層が、アルキド系樹脂を含む、上記[1]に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
[3]前記離型層の厚さが、0.01〜5μmである、上記[1]又は[2]に記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
[4]前記絶縁層が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤及び(C)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
[5]前記金属箔の厚さが、10〜50μmである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
[6]前記金属箔の離型層と対向する側の表面の十点平均粗さ(Rz)が、2.0μm以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔。
[7]基板と、該基板の少なくとも一方の面に、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層と、離型層と、金属箔とをこの順に有する、積層板。
[8]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔を、基板の少なくとも一方の面に、前記絶縁層と前記基板とが対向する状態で積層成形した後、前記絶縁層付き離型金属箔の金属箔及び離型層を剥離する、積層板の製造方法。
[9]回路を有する配線板と、該回路を有する配線板の回路面に、プリプレグの硬化物と、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層と、離型層と、金属箔とをこの順に有する、多層配線板。
[10]下記工程(1)〜(5)を有する、多層配線板の製造方法。
(1)上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔を、内層基板の少なくとも一方の面に、前記絶縁層と前記内層基板とが対向する状態で積層成形し、内層基板と絶縁層と離型層と金属箔とをこの順に有する多層配線板を得る工程
(2)工程(1)で得られた多層配線板の金属箔を加工して、開口部を有するコンフォーマルマスクを形成する工程
(3)工程(2)で形成したコンフォーマルマスクを使用して、前記多層積層板に層間接続用ビアホールの穴あけ加工を行う工程
(4)工程(3)で穴あけ加工を行った多層積層板からコンフォーマルマスクである金属箔及び離型層を剥離して、絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層を露出させる工程
(5)工程(4)で露出させた絶縁層上に回路を形成する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、熱プレス工程後の金属箔の剥離が容易であり、コンフォーマルマスクとして使用した金属箔の全面エッチングが不要であると共に、セミアディティブ法に好適な絶縁層を形成することができる、コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔、及びそれを用いた積層板、多層配線板、積層板の製造方法、多層配線板の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の絶縁層付き離型金属箔の模式的断面図である。
図2】多層配線板の製造方法における工程(1)を表す模式的断面図である。
図3】多層配線板の製造方法における工程(1)で得られた多層配線板を表す模式的断面図である。
図4】多層配線板の製造方法における工程(2)を表す模式的断面図である。
図5】多層配線板の製造方法における工程(3)を表す模式的断面図である。
図6】多層配線板の製造方法における工程(4)を表す模式的断面図である。
図7】多層配線板の製造方法における工程(5)を表す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書においてはX以上でありY以下である数値範囲(X、Yは実数)を「X〜Y」と表すことがある。例えば、「0.1〜2」という記載は0.1以上であり2以下である数値範囲を示し、当該数値範囲には0.1、0.34、1.03、2等が含まれる。
【0014】
また、本明細書において「樹脂組成物」とは、後述する各成分の混合物、当該混合物を半硬化させた(いわゆるBステージ状とした)物及び硬化させた(いわゆるCステージ状とした)物の全てを含む。
【0015】
また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。
【0016】
[コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔]
本発明の絶縁層付き離型金属箔は、金属箔と離型層と絶縁層とをこの順に有する。
図1は、本発明の絶縁層付き離型金属箔20の模式的断面図である。コンフォーマルマスク用絶縁層付き離型金属箔20は、金属箔1、離型層2及び絶縁層3をこの順に有する。
以下、本発明の絶縁層付き離型金属箔を構成する、金属箔、離型層及び絶縁層について説明する。
【0017】
<金属箔>
本発明の絶縁層付き離型金属箔が有する金属箔は、コンフォーマルマスクとして用いられるものであり、コンフォーマルマスク法によるレーザー加工等の後に剥離される層である。
金属箔としては、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等を適用することができ、取り扱い性、加工性及びコストの観点からは、銅箔が好ましい。銅箔としては、例えば、圧延銅、電解銅箔等が用いられる。
金属箔の厚さは、目的により適宜選択されるが、被積層体に対する追従性及び剥離性の観点から、例えば、5〜50μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
金属箔の表面粗さは、剥離後の絶縁層の平坦性を良好にする観点から、離型層と対向する側の表面の十点平均粗さ(Rz)が、2.0μm以下であることが好ましく、1.8μm以下であることがより好ましい。また、金属箔の離型層とは反対側の表面の十点平均粗さ(Rz)は、同様の観点から、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。金属箔の表面粗さは、JIS B0601:1994に準じて測定することができる。
【0018】
<離型層>
離型層は、金属箔と絶縁層との間に設けられる層であり、コンフォーマルマスク法によるレーザー加工等の後に、金属箔と共に剥離される層である。
離型層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmがより好ましい。離型層の厚さが前記範囲内にあることで、良好な剥離性が得られると共に、離型層に含まれる成分が熱プレス後に絶縁層へ移行することを抑制し、剥離性及び絶縁層の耐熱性等の低下を抑制できる。
【0019】
離型層に用いられる離型剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられ、これらの中でも、アルキド系樹脂が好ましい。
また、離型剤は、熱プレス工程時に絶縁層へ移行することを抑制し、剥離性の低下を抑制する観点から、熱硬化性樹脂であることが好ましい。したがって、離型剤としては、熱硬化性を有するアルキド系樹脂が好ましく、このようなアルキド系樹脂としては、例えば、アミノアルキド樹脂、シリコーン含有アミノアルキド樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
アルキド系樹脂は、市販品として入手可能であり、例えば、日立化成株式会社製の「TA31−209E」、「TA31−086」、「TA31−082A」、「テスファイン(登録商標)319」、「テスファイン(登録商標)305」、「テスファイン(登録商標)303」、「テスファイン(登録商標)314」等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性を有するシリコーン含有アミノアルキド樹脂である「テスファイン(登録商標)319」が好ましい。
【0020】
前記離型剤は、離型層の耐熱性及び剥離性を両立させる観点から、表面自由エネルギーが20〜35mN/mであることが好ましく、25〜30mN/mであることがより好ましい。
離型剤の表面自由エネルギーは、離型剤をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布後、150℃で30秒乾燥して得られた厚さ0.3μmの膜に対して、接触角計(協和界面科学株式会社製CA−X型)を用いて、水、エチレングリコール、及びヨウ化メチルの接触角を測定し、表面自由エネルギー解析ソフト(協和界面科学株式会社製、EG−2)により算出することができる。
【0021】
離型層中におけるアルキド系樹脂の含有量は、剥離性及び絶縁層の耐熱性等の低下を抑制する観点から、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。
【0022】
なお、これらの離型剤は、必要とされる要求に応じて適宜選択可能である。例えば、低価格であり、焼却時に有害ガスの発生が少ない点からは、シリコーン系樹脂を選択してもよく、また、表面張力を調整し易く、フィルム全体に薄い膜を形成することに適する点からは、ポリジメチルシロキサン系化合物を選択してもよい。
離型層は、必要に応じて、易滑剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0023】
前記離型剤は、離型層を形成する際、溶剤中に混合及び/又は分散させたワニス(以下、「離型剤ワニス」とも称する)とすることが作業性の点から好ましい。
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
離型剤ワニス中の離型剤の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10質量%とすることができる。
【0024】
離型層を形成する方法としては、例えば、前記離型剤ワニスを、リバースコーター、グラビアコーター、エアドクターコーター、ダイコーター、リップコーター、ロッドコーター等の塗工機を用いて、金属箔に塗布した後、乾燥する方法が挙げられる。乾燥条件は、例えば、80〜230℃で、30〜600秒の範囲とすることができる。
【0025】
<絶縁層>
本発明の絶縁層付き離型金属箔が有する絶縁層は、コンフォーマルマスク法によるレーザー加工等の後、金属箔及び離型層と共に剥離されることなく、被着体である積層板又は多層配線板の層の一部として用いられる。
絶縁層は、優れた平坦性と回路層との接着強度とを両立する観点から、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤及び(C)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物(以降、「絶縁層用樹脂組成物」とも称する)を含むことが好ましい。
本発明の絶縁層付き離型金属箔が有する絶縁層は、積層板又は多層配線板の層の一部とされる前は、半硬化状態(いわゆるBステージ状態)で存在することが好ましい。
以下、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤及び(C)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂について説明する。
【0026】
((A)エポキシ樹脂)
(A)エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」とも称する)としては、例えば、分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
(A)エポキシ樹脂は、例えば、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
(A)エポキシ樹脂としては、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;トリアジン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン骨格含有エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;これらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などに分類される。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、硬化物のガラス転移温度が高く、耐熱性に優れる観点から、例えば、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、回路層との接着強度の観点からは、例えば、ビフェニル構造を有するものが好ましく、ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。ビフェニル構造を有するアラルキルノボラック型エポキシ樹脂は、市販品として入手可能であり、例えば、日本化薬株式会社製の「NC−3000」、「NC−3000−H」等が挙げられる。
【0027】
絶縁層用樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、絶縁層用樹脂組成物の固形分換算総量100質量部当たり、20〜80質量部が好ましく、40〜70質量部がより好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量が前記範囲内であることで、回路層との接着強度及びはんだ耐熱性を良好な状態にすることができる。
ここで、本発明における「固形分換算」とは、有機溶剤等の揮発性成分を除いた不揮発分のみを基準とすることを意味する。つまり、固形分換算総量100質量部とは、不揮発分総量100質量部相当を意味する。
【0028】
((B)エポキシ樹脂硬化剤)
(B)エポキシ樹脂硬化剤(以下、「(B)成分」とも称する)としては、例えば、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジット類等が挙げられる。これらの中でも、信頼性を向上させる観点から、フェノール樹脂が好ましい。
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂が好ましい。具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF及び置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;アラルキル型フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アミノトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂;p−キシリレン及び/又はm−キシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、信頼性を向上させる観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂がより好ましい。
【0029】
酸無水物類としては、例えば、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が挙げられる。アミン類として、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を混合して使用してもよい。
【0030】
絶縁層用樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、(B)エポキシ樹脂硬化剤の活性水素量が、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基に対して、0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.8〜1.2当量であることがより好ましい。(B)成分の含有量が、前記範囲内であると、回路層との接着強度、耐熱性及び絶縁性により優れる。
【0031】
また、絶縁層用樹脂組成物は、必要に応じて反応促進剤を含んでいてもよい。反応促進剤としては、例えば、潜在性の反応促進剤である各種イミダゾール類、BFアミン錯体、リン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの中でも、絶縁層用樹脂組成物の保存安定性、取り扱い性及びはんだ耐熱性の点から、例えば、イミダゾール類が好ましく、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールがより好ましい。
絶縁層用樹脂組成物中の反応促進剤の含有量は、絶縁層用樹脂組成物の保存安定性、取り扱い性及びはんだ耐熱性の点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、0.3〜3.0質量部がより好ましい。
【0032】
((C)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂)
絶縁層用樹脂組成物は、優れた回路層との接着強度を得る観点から、(C)フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂(以下、「(C)成分」とも称する)を含むことが好ましい。
(C)成分を含むことで優れた回路層との接着強度が得られる理由については、必ずしも明らかではないが、次のような理由が考えられる。すなわち、(C)成分は、(A)エポキシ樹脂と反応可能であるため、(A)エポキシ樹脂の良好な耐熱性を維持したまま、樹脂の強靭化が可能であり、さらに、銅等の回路層との接着性が高いアミド基を多く有するため、高い接着強度が得られると考えられる。
【0033】
(C)成分は、フェノール性水酸基を含有するポリアミド樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸由来の構造単位と、ジアミン由来の構造単位とを有するポリアミド樹脂であり、前記ジカルボン酸及び前記ジアミンから選ばれる1種以上が、フェノール性水酸基を有するもの等が挙げられる。ジカルボン酸、ジアミンとしては、以下の化合物が例示される。
【0034】
フェノール性水酸基を有するジカルボン酸としては、例えば、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸等のヒドロキシイソフタル酸;2−ヒドロキシフタル酸、3−ヒドロキシフタル酸等のヒドロキシフタル酸;2−ヒドロキシテレフタル酸等のヒドロキシテレフタル酸などが挙げられる。
また、フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジカルボキシナフタレン、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−メチレン二安息香酸等が挙げられる。
これらのジカルボン酸は単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
フェノール性水酸基を有するジアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフロロメタン、3,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)メタン等が挙げられる。
また、フェノール性水酸基を有しないジアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノナフタレン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニル、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
これらの中でも、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。
これらのジアミンは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
また、(C)成分は、優れた回路層との接着強度を得る観点から、フェノール性水酸基含有ポリアミドとポリブタジエンとの共重合体、フェノール性水酸基含有ポリアミドとポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体との共重合体であることが好ましい。
【0037】
(C)成分は、市販品として入手することもでき、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製の「BPAM−155」が挙げられる。また、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体変成ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製の「BPAM−01」が挙げられる。
【0038】
次に、(C)成分の製造方法について説明する。
(C)成分は、例えば、前記ジカルボン酸と前記ジアミンとを縮合反応させる方法により合成することができる。例えば、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸成分に対して当量のジアミンを加え、これらを、亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で縮合剤を使用して縮合反応させて、フェノール性水酸基を含有するポリアミド樹脂を製造することができる。
【0039】
また、フェノール性水酸基含有ポリアミドとポリブタジエンとの共重合体、又はフェノール性水酸基含有ポリアミドとポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体との共重合体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸に対して過剰量のジアミンを加え、これらを、亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下で縮合剤を使用して縮合反応させて、両末端にアミノ基を有するフェノール性水酸基を含有するポリアミドオリゴマーを生成させる。次に、得られたポリアミドオリゴマー溶液に、両末端にカルボキシ基を有するポリブタジエン又はポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を添加し、重縮合することにより得ることができる。
また、別の方法としては、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸の量をジアミンに対して過剰にして縮合反応させて、両末端にカルボキシ基を有するポリアミドを合成し、これに対して両末端にアミノ基を有するポリブタジエン又は両末端にアミノ基を有するポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を反応させてもよい。更には、これらポリアミド、ポリブタジエン又はポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体の末端を変性して、反応させてもよい。この場合、例えば、一方をビニル基で他方を−NH基又は−SH基で変性してもよい。
両末端に種々の官能基を持つポリブタジエンは、例えば、Goodrich社の「HycarCTB」として市販されており、ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体は、例えば、Goodrich社の「HycarCTBN」として市販されている。これらを前記フェノール性水酸基含有ポリアミドオリゴマーと反応させてもよい。
【0040】
なお、上記ではフェノール性水酸基を有するジカルボン酸を用いることで、フェノール性水酸基をポリアミド中に導入する例を示したが、ジアミンの一部又は全部にフェノール性水酸基を含有する化合物を使用することで、フェノール性水酸基をポリアミド中に導入してもよい。この場合、ジカルボン酸は、フェノール性水酸基を有するものであってもよく、フェノール性水酸基を有しないものであってもよい。
【0041】
(C)成分の重量平均分子量は、回路層との接着強度に優れる絶縁層を得る観点から、50000〜200000であることが好ましく、80000〜130000であることがより好しい。
【0042】
絶縁層用樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましい。(C)成分の含有量が1質量部以上の場合、回路層との良好な接着性が得られる傾向がある。また、30質量部以下の場合、耐熱性及び粗化工程時の薬液への耐性に優れる傾向がある。
【0043】
絶縁層用樹脂組成物は、絶縁層の表面形状を調整する観点及びレーザー加工形状を整える観点から、無機充填材を含んでいてもよい。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、例えば、ヒュームドシリカ、アルミナが好ましい。これらは単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
無機充填材の種類は、目的に応じて適宜選択できるが、絶縁層に微細配線を形成する観点から、例えば、比表面積が10m/g以上であるものが好ましく、50〜150m/gであるものがより好ましい。
比表面積は、当業者が通常行う測定方法で求めることができ、例えば、BET法により測定できる。BET法は、粉体粒子表面に、吸着占有面積が既知の分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。比表面積分析で、最もよく利用されているのが、窒素等の不活性気体によるBET法である。
【0045】
また、めっきプロセスにおける粗化処理後の表面粗度を小さくする観点から、無機充填材は、例えば、平均一次粒径が100nm以下であるものが好ましく、10〜100nmであるものがより好ましい。
なお、ここでいう「平均一次粒径」とは、凝集した粒子の平均径、つまり二次粒子径ではなく、凝集していない単体での平均粒子径をいう。平均一次粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布計で測定して求めることができる。
平均一次粒径が100nm以下の無機充填材の市販品としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の「AEROSIL(登録商標)R972」(商品名)及び「AEROSIL(登録商標)R202」(商品名)、扶桑化学工業株式会社製の「PL−1」(商品名、比表面積181m/g)及び「PL−7」(商品名、比表面積36m/g)、CIKナノテック株式会社の「AL−A06」(商品名、比表面積55m/g)等が挙げられる。
【0046】
無機充填材を用いる場合、分散性を高める目的で、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール、ナノマイザー等の混練装置を用いて分散処理を行ってもよい。
また、無機充填材は、耐湿性を向上させるためにシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていてもよく、分散性を向上させるために疎水性化処理されていてもよい。
【0047】
絶縁層用樹脂組成物が無機充填材を含む場合、その含有量は、絶縁層用樹脂組成物の固形分換算総量100質量部当たり、10質量部以下であることが好ましい。10質量部以下であると、粗化処理後の良好な表面形状を維持することができ、めっき特性及び層間の絶縁信頼性の低下を防ぐことができる。また、無機充填材の含有量の下限値に特に制限はないが、例えば、1質量部以上としてもよい。
【0048】
絶縁層用樹脂組成物は、上記各成分の他、有機充填材、チキソ性付与剤、界面活性剤、カップリング剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらを充分に撹拌した後、泡がなくなるまで静置して絶縁層用樹脂組成物を得ることができる。
【0049】
絶縁層用樹脂組成物は、作業性の点から、溶剤中に混合及び/又は分散させたワニス(以下、「絶縁樹脂ワニス」とも称する)とすることが好ましい。溶剤としては、前記離型剤ワニスに用いることができる溶剤と同様の溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
絶縁樹脂ワニス中における絶縁層用樹脂組成物の固形分換算質量が占める割合は、絶縁層用樹脂組成物の塗膜形成の設備に合わせて適宜調整されるが、例えば、8〜40質量%が好ましい。
【0050】
絶縁層は、液状又はワニスにした絶縁層用樹脂組成物を、離型層の上に塗布した後、乾燥して形成することができる。絶縁層用樹脂組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、リバースコーター、グラビアコーター、エアドクターコーター、ダイコーター、リップコーター等を用いる方法が挙げられる。乾燥条件は、例えば、80〜230℃で、30〜600秒の範囲とすることができる。
【0051】
ここで、絶縁層をBステージ状態のプリプレグ等に積層して硬化させる場合、積層前の絶縁層の硬化度を制御することが好ましい。硬化度は示差走査熱量計から測定される反応率により測定することができる。その際、絶縁層の反応率は、50〜99%であることが好ましい。反応率を50%以上とすることで、積層及び硬化中に絶縁層に含まれる成分がプリプレグと混ざることを防止できる。また、99%以下とすることで、プリプレグとの界面接着力が良好になると共に、優れた回路層との接着力が得られる。
【0052】
絶縁層の厚さは、1〜20μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。絶縁層の厚さが前記範囲内にあることで、積層体の厚みに占める絶縁層の厚みの割合を少なく抑えることができ、プリプレグ本来の特性が反映された高弾性率で耐熱性に優れる積層体が得られる。
【0053】
また、本発明の絶縁層付き離型金属箔を、後述する積層板、多層配線板等に適用する場合、回路層との接着力を高める観点から、熱硬化後の絶縁層の表面に粗化処理を施すことが好ましい。その場合、粗化処理後の絶縁層の表面粗さ(Ra)は、0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。表面粗さ(Ra)が0.2μm以下であることで、半導体パッケージの高密度化に十分に対応させることができる。なお、粗化処理の条件は、後に説明する粗化処理条件を適用できる。絶縁層の表面粗さ(Ra)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0054】
[積層板及びその製造方法]
本発明の積層板は、基板と、該基板の少なくとも一方の面に、本発明の絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層と離型層と金属箔とをこの順に有するものである。
基板としては、従来公知の基板を用いることができ、例えば、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板、前記プリプレグ及びその硬化物等が挙げられる。
本発明の積層板は、基板の少なくとも一方の面に、本発明の絶縁層付き離型金属箔を、絶縁層と基板とが対向する状態で、積層成形することにより製造できる。さらに、その後、本発明の絶縁層付き離型金属箔に由来する離型層と金属箔とを剥離することで、基板上に本発明の絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層を有する積層板とすることもできる。
【0055】
積層成形の方法としては、例えば、絶縁層付き離型金属箔を、絶縁層が内側となるように基板の片面又は両面に重ね、さらに外側に鏡板を重ねてプレス成型する方法、または、絶縁層付き離型金属箔を、絶縁層が内側となるように基板の片面又は両面に重ね、耐熱性ゴムシートを用いたラミネーターで加熱及び加圧して積層し、積層後に加熱して硬化させる方法等が挙げられる。
プレス成型における加熱温度は、150〜260℃とすることが好ましく、加圧時の圧力は0.5〜10MPaとすることが好ましい。また、耐熱性ゴムシートを用いたラミネーターにおける加熱温度は、80〜150℃とすることが好ましく、加圧時の圧力は0.3〜10MPaとすることが好ましい。
【0056】
[多層配線板及びその製造方法]
本発明の多層配線板は、回路を有する配線板と、該回路を有する配線板の回路面に、プリプレグの硬化物と、本発明の絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層と離型層と金属箔とをこの順に有する、多層配線板である。
本発明の多層配線板に用いられるプリプレグとしては、配線板用であれば特に制限はないが、例えば、ガラスクロス、紙等の基材に、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シアネートエステル樹脂等の樹脂を含む組成物を含浸してなるものを使用することができる。
プリプレグは、市販品を用いてもよく、例えば、日立化成株式会社製の「GEA−67N」、「GEA−679F」、「GEA−679GT」、「GEA−700G(R)」、「GEA−705G」(いずれも商品名)等が挙げられる。
本発明の多層配線板に用いられる回路を有する配線板(以下、「内層基板」ともいう)としては、前記基板の片面又は両面に、パターン加工された回路層を有するものが挙げられる。
本発明の多層配線板は、本発明の絶縁層付き離型金属箔と、プリプレグと、回路を有する配線板とを、前記絶縁層が前記プリプレグの一方の面と対向し、前記回路を有する配線板の回路が前記プリプレグの他方の面と対向する状態で積層成形することにより製造できる。積層成形の方法は、本発明の積層板の製造方法と同様の方法を適用することができる。
【0057】
次に、本発明の絶縁層付き離型金属箔をコンフォーマルマスクとして用いて形成された回路を有する多層積層板の製造方法について説明する。
このような多層積層板は、下記工程(1)〜(5)により製造することができる。
(1)本発明の絶縁層付き離型金属箔を、内層基板の少なくとも一方の面に、前記絶縁層と前記内層基板とが対向する状態で積層成形し、内層基板と絶縁層と離型層と金属箔とをこの順に有する多層配線板を得る工程
(2)工程(1)で得られた多層配線板の金属箔を加工して、開口部を有するコンフォーマルマスクを形成する工程
(3)工程(2)で形成したコンフォーマルマスクを使用して、前記多層積層板に層間接続用ビアホールの穴あけ加工を行う工程
(4)工程(3)で穴あけ加工を行った多層積層板からコンフォーマルマスクである金属箔及び離型層を剥離して、絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層を露出させる工程
(5)工程(4)で露出させた絶縁層上に回路を形成する工程
以下、工程(1)〜(5)について、図2図6を参照しながら順次説明する。なお、本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0058】
<工程(1)>
工程(1)は、図2に示すとおり、本発明の絶縁層付き離型金属箔20を、内層基板7の少なくとも一方の面に、前記絶縁層3と前記内層基板7とが対向する状態で積層成形する工程である。図2に示す実施形態は、内層基板7と本発明の絶縁層付き離型金属箔20との間にプリプレグ4を用いるものである。工程(1)における積層成形の方法は、本発明の積層板の製造方法と同様の方法を適用することができる。
上記の積層成形により、図3に示すとおり、内層基板7、絶縁層3、離型層2及び金属箔1をこの順に有し、内層基板7と絶縁層3との間にはプリプレグ4を有する多層配線板が得られる。
【0059】
<工程(2)>
工程(2)は、図4に示すとおり、工程(1)で得られた多層配線板の金属箔1を加工して、開口部8を有するコンフォーマルマスク9を形成する工程である。
コンフォーマルマスク9の形成方法は、特に限定されないが、エッチング法等により金属箔1の一部分を除去する方法が挙げられる。エッチング法は、例えば、金属箔1上に感光性樹脂組成物等を用いてレジスト層を形成し、該レジスト層を露光及び現像した後、露出した金属箔1を、例えば、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液を用いてエッチング除去することにより、所望の形状を有するコンフォーマルマスク9を形成することができる。
【0060】
<工程(3)>
工程(3)は、図5に示すとおり、工程(2)で形成したコンフォーマルマスク9を使用して、前記多層配線板に層間接続用ビアホール10の穴あけを行う工程である。
本工程では、レーザー、プラズマ、又はこれらの組合せ等の方法により、穴あけを行い、多層配線板にビアホール、スルーホール等を形成する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
本工程では、コンフォーマルマスク9から露出した部分にレーザー等を照射することで、当該露出部に選択的に穴をあけることができる。その際、コンフォーマルマスク9が存在する部分では、レーザー等が反射されるため穴があくことがない。
【0061】
<工程(4)>
工程(4)は、図6に示すとおり、工程(3)で穴あけ加工を行った多層配線板から、コンフォーマルマスク9である金属箔1及び離型層2を剥離して、絶縁層付き離型金属箔に由来する絶縁層3を露出させる工程である。
金属箔1及び離型層2の剥離方法は、特に限定されず、ピール剥離、スライド剥離、加熱剥離等の方法が挙げられる。
本発明の絶縁層付き金属箔は、金属箔を除去した面に絶縁層を有するため、微細回路を形成することが容易となる。
【0062】
<工程(5)>
工程(5)は、図7に示すとおり、工程(4)で露出させた絶縁層3上に回路11を形成する工程である。
回路11の形成は、例えば、下記の方法により行うことができる。
まず、絶縁層3に対して、パラジウムを付着させるためのめっき触媒付与処理を行った後、無電解めっき処理を行って、絶縁層3上に、好ましくは厚さ0.3〜1.5μmの無電解めっき層を形成する。ここで、めっき触媒付与処理は、塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬して行われ、無電解めっき処理は、無電解めっき液に浸漬して行われる。無電解めっき液としては、公知の無電解めっき液を使用することができ、特に制限されないが、無電解銅めっき液を用いることが好ましい。
次に、無電解めっき層上にめっきレジストのパターンを形成した後に、電解めっき処理を行って、所望の箇所に所望の厚さの電解めっき層を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、不要な無電解めっき層をエッチングにより除去する。これにより、絶縁層3上に無電解めっき層と電解めっき層とからなる導体層が形成される。めっきレジストとしては、公知のめっきレジストを使用することができ、特に制限はない。電解めっき処理は、公知の方法に準じて行うことができ、特に制限されないが、電解めっき液として、電解銅めっき液を用いることが好ましい。
【実施例】
【0063】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0064】
[絶縁層用樹脂ワニスの調製]
(調製例1)
(絶縁層用樹脂ワニスAの調製)
フェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド(日本化薬株式会社製、商品名:BPAM−155)0.75gに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を6.75g配合した後、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)10g、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:KA−1165)4.1g、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2PZ)0.1gを添加した後、NMPで希釈し、スリーワンモータを用いて混合して、絶縁層用樹脂ワニスA(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0065】
(調製例2)
(絶縁層用樹脂ワニスBの調製)
フェノール性水酸基含有ポリブタジエン−アクリロニトリル変成ポリアミド(日本化薬株式会社製、商品名:BPAM−01)1.5gに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を13.5g配合した後、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)10g、ノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、商品名:TD−2090)3.6g、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2PZ)0.1g、ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:R972、比表面積:90−130m/g)0.9gを添加した後、DMAc及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤(DMAc:メチルエチルケトン=90:10(質量比))で希釈した。その後、分散機(吉田機械興業株式会社製、商品名:ナノマイザー(登録商標))を用いて混合及び分散し、絶縁層用樹脂ワニスB(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0066】
(調製例3)
(絶縁層用樹脂ワニスCの調製)
フェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性ポリアミド(日本化薬株式会社製、商品名:BPAM−155)0.75gに、DMAcを6.75g配合した後、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000H)10g、ビスフェノールAノボラック(三菱化学株式会社製、商品名:YLH129)4.1g、硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2PZ)0.1gを添加した後、DMAcで希釈し、スリーワンモータを用いて混合して、絶縁層用樹脂ワニスC(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0067】
(実施例1)
<絶縁層付き離型金属箔の製造>
金属箔として、古河電気工業株式会社製「F0−WS−18」(厚さ18μm、表面粗さRz1.5μm)を準備した。
また、離型層形成用の調製液として、シリコーン含有アミノアルキド樹脂(日立化成株式会社製、商品名:テスファイン(登録商標)319)を、メチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=3:7(質量比))を用いて2.5質量%に希釈した溶液を調製した。
上記で得た調製液を、前記金属箔上に、ダイコーターを用いて塗布し、160℃で40秒間乾燥させ、厚さ0.2μmの離型層を形成した。得られた離型層付き金属箔の離型層面に絶縁層用ワニスAをダイコーターを用いて塗布し、180℃で5分間乾燥させ、厚さ5μmの絶縁層を形成して、絶縁層付き離型金属箔を得た。
【0068】
<積層板の製造>
プリプレグ(日立化成株式会社製、商品名:GEA−700G、厚さ:0.10mm)4枚を重ね、その上下に、上記で得た絶縁層付き離型金属箔の金属箔面が外側になるように各々重ね、さらに該絶縁層付き離型金属箔に、各々鏡板とクッション紙を重ねて、プレス機を用いて、3.0MPa、240℃で1時間加熱硬化させて、積層板を得た。
【0069】
(実施例2)
絶縁層用ワニスとして絶縁層用ワニスBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、絶縁層付き離型金属箔及び積層板を得た。
【0070】
(実施例3)
離型層形成用の調製液として、アミノアルキド樹脂(日立化成株式会社製、商品名:テスファイン(登録商標)303)を実施例1と同様の条件で希釈して得た調製液を用い、絶縁層用ワニスとして絶縁層用ワニスCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、絶縁層付き離型金属箔、及び積層板を得た。
【0071】
(比較例1)
実施例1において、絶縁層付き離型金属箔の代わりに、離型層及び絶縁層を有していない金属箔(古河電気工業株式会社製、商品名:F0−WS−18、厚さ18μm、表面粗さRz1.5μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層板を得た。
【0072】
(比較例2)
実施例1において、離型層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、離型層を有していない絶縁層付き金属箔を作製した。次に、該離型層を有していない絶縁層付き金属箔を用いて、実施例1と同様にして積層板を得た。
【0073】
(比較例3)
実施例1において、絶縁層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、絶縁層を有してない離型金属箔を作製した。次に、該絶縁層を有してない離型金属箔を用いて、実施例1と同様にして積層板を得た。
【0074】
(比較例4)
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ株式会社製、商品名:ユニピール(登録商標)TR1、厚さ38μm)の離型層面に絶縁層用ワニスAをダイコーターを用いて塗布し、180℃で5分間乾燥させ、厚さ5μmの絶縁層を形成して、絶縁層付き離型フィルムを得た。次に、該絶縁層付き離型フィルムを用いて、実施例1と同様にして積層板を得た。
【0075】
[多層配線板の製造]
各例で得た積層板から、室温で、表層の銅箔を手で剥がすことにより、金属箔及び離型層を剥離した後、露出した絶縁層上に下記の手順で回路層を形成し、多層配線板を作製した。ただし、比較例1、2及び4の積層板は、金属箔又は離型フィルムを剥離できなかったため、以下の工程は、実施例1〜3及び比較例3で得られた積層板についてのみ行った。
積層板を化学粗化するために、膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル濃度が200ml/L、NaOH濃度が5g/Lの水溶液を作製し、70℃に加温した該水溶液に積層板を5分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO濃度60g/L、NaOH濃度40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温した該水溶液に積層板を10分間浸漬して粗化処理した。次いで、粗化処理後の積層板を、中和液(SnCl濃度30g/L、HCl濃度300ml/L)の水溶液に、室温で5分間浸漬処理して中和した。
【0076】
続いて、絶縁層に回路層を形成するために、中和後の積層板を、PdCl2を含む無電解めっき用触媒である「HS−202B」(日立化成株式会社製)に、室温で10分間浸漬処理した。水洗した後、無電解銅めっき用であるめっき液「CUST−201」(日立化成株式会社製)に室温で15分間浸漬して無電解銅めっきを行い、さらに硫酸銅電解めっきを行った。その後、180℃で60分間アニール処理を行い、絶縁層上に厚さ35μmの導体層を形成した。
【0077】
[積層板及び多層配線板の評価]
各例で得られた積層板及び多層配線板について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(離型金属箔の剥離性)
各例で得た積層板から離型金属箔又は離型フィルムを剥離したときに、離型層と絶縁層との界面で剥離できているかどうかを目視により確認した。なお、離型金属箔又は離型フィルムの剥離は、室温で、表層の銅箔を手で剥がすことにより行った。
○:界面で容易に剥離できる。
×:界面で容易に剥離できない。
「界面で容易に剥離できる」とは、離型金属箔又は離型フィルムを容易剥離でき、かつ、剥離後、離型金属箔又は離型フィルムに絶縁層の樹脂組成物が付着していない場合をいう。
「界面で容易に剥離できない」とは、離型金属箔又は離型フィルムを剥離できない場合、又は剥離後、離型金属箔又は離型フィルムに絶縁層の樹脂組成物が付着している場合をいう。
【0079】
(回路層との接着強度)
各例で得た多層配線板の回路層の一部に、銅のエッチング処理によって、幅10mm、長さ100mmの部分を形成し、この一端を回路層と絶縁層との界面で剥がして、つかみ具でつかみ、垂直方向に引張り速度約50mm/分、室温中で引き剥がしたときの荷重を測定した。
【0080】
(絶縁層の表面粗さ)
各例で得た多層配線板の回路層をエッチング処理することで露出させた絶縁層の表面を高精度3次元表面形状粗さ測定システム(Veeco社製、商品名:WYKONT9100)を用いて、表面粗さRz(μm)を測定した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1から、本発明の絶縁層付き離型金属箔を用いた実施例1〜3では、高温の熱プレス後に離型金属箔を容易に剥離できた。また、銅エッチング後の絶縁層の表面粗さも小さく平滑であり、かつ該絶縁層は回路層と高い接着強度を有していた。
一方、比較例1及び2の離型層を有しない金属箔を用いた場合、熱プレス後に金属箔を剥離できなかった。また、金属箔以外のフィルムを用いた比較例4では、PETフィルムが鏡板に融着したため容易に剥離できず、平滑な絶縁層面が得られなかった。さらに、比較例3で得られた多層配線板は、回路層との接着強度が低かった。
【符号の説明】
【0083】
1 金属箔
2 離型層
3 絶縁層
4 プリプレグ
5 基板
6 回路
7 内層基板
8 開口部
9 コンフォーマルマスク
10 層間接続用ビアホール
11 回路
20 絶縁層付き離型金属箔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7