(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクリル系ブロック共重合体(A)が、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)が結合した構造を少なくとも1つ有し、かつ重合体ブロック(a1)の含有量が25〜60質量%である、請求項1または2に記載の成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、アクリル系ブロック共重合体(A)のペレット又はアクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物のペレットと、粉状添加剤(B)とを非加熱及び無オイル下で混合し、表面に粉状添加剤(B)が存在するペレットを得る工程(1)及び前記工程(1)で得られたペレットを、リペレット化させずに溶融成形して成形体を得る工程(2)を含む、アクリル系ブロック共重合体及び粉状添加剤を含む成形体の製造方法である。
【0012】
工程(1)は、アクリル系ブロック共重合体(A)のペレット又は前記アクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物のペレットと粉状添加剤(B)とを非加熱及び無オイル下で混合することで行う。混合方法としては、ヘンシェルミキサー、タンブラー、スパーミキサー、リボンブレンダーなどでブレンドする手法が挙げられる。また、少量規模の場合は、樹脂製などの袋にアクリル系ブロック共重合体(A)のペレット又は前記アクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物のペレット及び粉状添加剤(B)を仕込んだのち、袋の口を縛り、袋を振るなどして混合する、簡易的な手法を採ることもできる。工程(1)においては、溶剤や水を使用せずに上記混合操作を行うことが好ましい。
【0013】
本発明で用いたアクリル系ブロック共重合体(A)又は前記アクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物は、粘着性によるペレット同士のブロッキングによる問題が起こりやすいが、ペレットの表面に粉状添加剤(B)を付着させることで、ペレット同士の膠着を防止する作用が発現し、前記の問題を防ぐことができる。さらに、ブロッキングを防ぐことで、成形加工装置への供給がスムーズになり、製造される成形体の品質も安定する効果が得られる。
【0014】
上記ペレットを溶融成形する工程(2)は、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いることができる。例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの加熱溶融を経る成形加工法などにより成形体が製造できる。特に、本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)又はアクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物は、溶融流動性に優れるため、押出成形や射出成形に好適である。押出成形を用いる場合は、押出機シリンダー温度100〜190℃、ダイ温度150〜190℃の範囲で加工することが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法における工程(2)では、工程(1)で得られた生成物をリペレット化させずに溶融成形して成形体を得ることに特徴がある。一般的に、粉状添加剤(B)と前記ペレットとを混合する際は、分散性向上等のため単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどの公知の混練機を用いた溶融混合で混合物のペレットを作製、すなわちリペレット化された後に成形体に加工される。しかし、リペレット化した場合、その工程で加わる熱履歴によって樹脂の分解や黄変などが起こり、得られる成形体の導光性などが低下することがある。本発明の製造方法においては、リペレット化させる工程を含まないことで熱履歴を減らすことができ、得られる成形体の導光性を向上させることが可能となる。
【0016】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明で用いられるアクリル系ブロック共重合体(A)は、アクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)の両末端にそれぞれメタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)が結合した構造を少なくとも1つ有するものが好ましい。
【0017】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)における、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)は、主としてメタクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(a1)を形成させるためのメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどを挙げることができる。
【0018】
これらのメタクリル酸エステルの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。重合体ブロック(a1)は、これらのメタクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0019】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)におけるアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)は、主としてアクリル酸エステル単位から構成される重合体ブロックである。重合体ブロック(a2)を形成させるためのアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどを挙げることができる。
【0020】
これらのアクリル酸エステルの中でも、柔軟性を向上させる観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチルなどのアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。重合体ブロック(a2)は、これらのアクリル酸エステルの1種から構成されていても、2種以上から構成されていてもよい。
【0021】
アクリル系ブロック共重合体(A)の透明性や導光性を向上させる観点から、重合体ブロック(a2)は、アクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸芳香族エステルとの共重合体ブロックであることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルと共重合するアクリル酸芳香族エステルとしては、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシ-ポリエチレングリコール、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルなどが好ましく、アクリル酸ベンジルがより好ましい。
【0022】
また、本発明の目的及び効果の妨げにならない限りにおいて、重合体ブロック(a2)は、反応基を有するアクリル酸エステル単位、例えば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、又はアクリル酸エステル単位以外の他の重合性単量体単位、例えば、上記メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィンなどのモノマーを共重合成分として含んでいてもよい。これら反応基を有するアクリル酸エステル単位又は他の重合性単量体単位は本発明の効果を発現させる観点から少量であることが好ましく、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0023】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)の分子鎖形態は、特に限定されることはなく、例えば、線状、分枝状、放射状などのいずれでもよいが、メタクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a1)2個とアクリル酸エステル単位を主体とする重合体ブロック(a2)1個からなる(a1)−(a2)−(a1)構造を分子内に少なくとも1個を有することが好ましい。その中でも(a1)−(a2)−(a1)で表されるトリブロック体を用いることがより好ましく、(a1)−(a2)で表されるジブロック体でも好ましい。ここで、(a2)の両端の(a1)の分子量、組成などは同じであってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0024】
上記重合体ブロック(a1)の含有量は25〜60質量%であることが好ましく、25〜45質量%がより好ましい。特に25〜45質量%の場合、樹脂同士のブロッキングによって溶融成形時の原料供給が不安定になる傾向があるため、本発明の製造方法における効果がより顕著に発揮される。
【0025】
アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、10,000〜150,000が好ましく、本発明の製造方法によって得られる成形体の柔軟性や表面平滑性などを向上させる観点から、30,000〜120,000であるのが好ましく、50,000〜100,000であるのがより好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量が10,000以上であると、溶融押出成形において十分な溶融張力を保持でき、良好な成形体が得られる。また、得られた成形体の破断強度などの力学物性に優れる。一方、150,000以下であると、溶融押出成形で得られる成形体の表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツが発生にくく、良好な成形体が得られる傾向がある。
【0026】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、1.01以上1.50以下の範囲内にあるのが好ましく、1.01以上1.35以下の範囲内にあるのがより好ましい。このような範囲を取ることにより、本発明の製造方法で得られる成形体におけるブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
【0027】
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各ブロックを構成するモノマーをリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報参照)、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法(特開平6−93060号公報参照)、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下ラジカル重合する方法(マクロモレキュラケミカルフィジックス(Macromol. Chem. Phys.)201巻,1108〜1114頁(2000年)参照)などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、アクリル系ブロック共重合体(A)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法中、特に、アクリル系ブロック共重合体(A)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が推奨される。
【0028】
上記アクリル系ブロック共重合体(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明の製造方法で用いるアクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物は、アクリル系ブロック共重合体(A)以外に、その他の重合体を含んでいてもよい。その他の重合体としては、例えば、メタクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド樹脂;エステル系ポリウレタンエラストマー、エーテル系ポリウレタンエラストマー、無黄変エステル系ポリウレタンエラストマー、無黄変カーボネート系ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーンゴム変性樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、メタクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
上記メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体又はメタクリル酸エステル単位を主体とする共重合体であることが好ましい。メタクリル樹脂を構成する主要成分であるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチルなどを挙げることができる。これらの中でも、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点、及び樹脂組成物の透明性、成形加工性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、メタクリル酸メチルであることがより好ましい。これらのメタクリル酸エステルの1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の目的及び効果を妨げない限りにおいて、上記メタクリル樹脂を構成するメタクリル酸エステル単位として、反応基を有するメタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等のモノマーを構成成分として少量、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下含んでいてもよい。
【0032】
上記メタクリル樹脂がメタクリル酸エステル単位を主体とする共重合体である場合、共重合体を構成する上記メタクリル酸エステルと共重合しうる他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;1,3−ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミドなどを挙げることができ、その中でもアクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。これらのモノマーの1種又は2種以上を用いることができる。なお、本発明においてメタクリル酸エステル単位を主体とするとは、メタクリル酸エステル単位を80質量%以上含むことを意味する。
【0033】
上記メタクリル樹脂が共重合体である場合、共重合の形態には特に制限はなく、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合などが一般的に用いられる。
【0034】
また、上記メタクリル樹脂の立体規則性については特に制限はなく、イソタクチック、ヘテロタクチックあるいはシンジオタクチックであるものを用いることができる。
【0035】
上記メタクリル樹脂の重量平均分子量に、特に制限はないが、通常30,000〜500,000であることが好ましく、70,000〜200,000であることがより好ましい。また、本発明に用いるメタクリル樹脂は、1種単独で用いることができるが、重量平均分子量などが異なる2種以上のメタクリル樹脂の混合物を用いることもできる。
【0036】
本発明で用いることのできるメタクリル樹脂は市販品を用いてもよい。かかる市販されているメタクリル樹脂としては、例えば「パラペットGF」、「パラペットH1000B」、「パラペットEH」、「パラペットHRL」[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
【0037】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、アクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物は、下記の粉状添加剤以外の他の各種添加剤、例えばゴム、フィラー、軟化剤等を含んでいてもよい。配合しうるゴムの具体例としては、アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられ、これらを1種以上使用することができる。また、配合しうるフィラーの例としては、補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維又は有機繊維などを挙げることができる。配合しうる軟化剤の具体例としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤などが挙げられる。
【0038】
アクリル系ブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系ブロック共重合体(A)及びその他の重合体、その他の添加剤を溶融混練する方法が挙げられる。混合操作は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合又は混練装置を使用して行なうことができる。特に、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するアクリル系ブロック共重合体(A)の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常110〜300℃の範囲内の温度がよい。
【0039】
<粉状添加剤(B)>
本発明の製造方法で用いる粉状添加剤(B)の例としては、熱安定剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;発泡剤;着色剤;染色剤;無機充填剤;光拡散剤などを挙げることができる。これらの添加剤の中でも、透明性、導光性、耐熱性、耐候性、耐光性をさらに良好なものとするために、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、染色剤などを添加することが好ましい。これらの粉状添加剤(B)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記酸化防止剤の例としては、ホスファイト系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物などが挙げられる。この中でも、透明性、導光性、色相を向上させる観点から、ホスファイト系化合物又はフェノール系化合物を用いることが好ましく、下記化学式で表されるホスファイト系化合物(i)を単独で用いることがより好ましい。
【0042】
(式中、R
1は置換又は非置換の芳香族基、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示し、R
1とR
2又はR
3は互いに結合してホスファイトを構成しているリン原子及び酸素原子と共に環を形成していてもよく、R
2とR
3は互いに結合してホスファイトを構成しているリン原子及び酸素原子と共に環を形成していてもよい。)
ホスファイト系化合物(i)に係る上記式における置換又は非置換の芳香族基であるR
1としては、例えばフェニル基、置換基を有するフェニル基、フェニレン基、置換基を有するフェニレン基などを挙げることができる。また、上記式において、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子又は有機基である。R
2及び/又はR
3が有機基である場合は、ホスファイト系化合物(i)の機能を損なわない有機基であればいずれでもよく、例えば、アルキル基、置換基を有するアルキル基、フェニル基、置換基を有するフェニル基、アルキレン基などを挙げることができる。また、ホスファイト系化合物(i)において、R
1とR
2が互いに結合してホスファイトを構成しているリン原子及び酸素原子と共に環を形成していてもよく、R
1とR
3が互いに結合してホスファイトを構成しているリン原子及び酸素原子と共に環を形成していてもよく、又はR
2とR
3が互いに結合してホスファイトを構成しているリン原子及び酸素原子と共に環を形成していてもよい。
【0043】
ホスファイト系化合物(i)の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクタデシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12〜15混合アルキル)・ビスフェノールAジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’−n−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスホナイト、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールモノホスファイト、トリス(2−[(2,4,8,10−テトラキスtert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチル)アミンなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
【0044】
本発明で用いることのできるホスファイト系化合物(i)は市販品を用いてもよい。かかる市販されているホスファイト系化合物としては、例えば「アデカスタブPEP−36」、「アデカスタブPEP−36A」、「アデカスタブ2112」[いずれも商品名、株式会社ADEKA製]などが挙げられる。
【0045】
また、成形体に光を通した際の色度変化を小さくする観点から、最大吸収波長が590〜610nmの範囲である青色着色剤や最大吸収波長が510〜530nmの範囲である紫色着色剤を用いてもよい。色度変化をより小さくするためには、該青色着色剤及び該紫色着色剤を併用することが好ましく、該青色着色剤及び/又は該紫色着色剤をホスファイト系化合物(i)と共に含有することが更に好ましい。なお、前記最大吸収波長とは、紫外可視分光光度計を用いて、着色剤を含有させた樹脂組成物の成形片をサンプルとして、分光透過率を測定する方法により算出することができる。
【0046】
前記着色剤の例としては、無機顔料、有機顔料、染料などが挙げられるが、特に限定はされない。また、着色剤は市販品を用いてもよい。かかる市販されている着色剤としては、例えば青色顔料「BPA−5500A」、紫色顔料「TV−4M」[いずれも商品名、日本ピグメント株式会社製]などが挙げられる。前記算出方法により特定した着色剤の最大吸収波長は、青色顔料「BPA−5500A」が600nmであり、紫色顔料「TV−4M」が520nmである。
【0047】
本発明の製造方法において、着色剤以外の粉状添加剤(B)の好ましい使用量は、特に限定されるものではないが、アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部の割合で含有することが好ましく、0.02〜0.5質量部の割合で含有することがより好ましい。上記着色剤の使用量については、アクリル系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10ppmの割合で含有することが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法を用いた成形加工方法により、ファイバー、型物、パイプ、シート、フィルム、繊維状物、積層体等の任意の形状の成形体を得ることができる。また、コア−クラッド構造を持つ成形体を得ることもできる。
【0049】
本発明の製造方法によって得られる成形体の用途は特に限定されないが、光学分野、食品分野、医療分野、民生分野、自動車分野、電気・電子分野などの多岐の用途で利用することができる。特に本発明において得られる成形体は、異形押出性及び表面平滑性に優れ、且つ透明性、導光性にも優れる点から、光学部材に好適に使用できる。かかる光学部材としては、例えば、コア−クラッド構造を持つライトガイドをはじめとした導光体や各種カバー、各種端子板、プリント配線板、スピーカー、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計;映像・光記録・光通信・情報機器関連部品としてカメラ、VTR、プロジェクションTV等のファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板保護フィルム、光スイッチ、光コネクター、液晶ディスプレイ;液晶ディスプレイ用導光フィルム・シート、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ用導光フィルム・シート、プラズマディスプレイ、プラズマディスプレイ用導光フィルム・シート、位相差フィルム・シート、偏光フィルム・シート、偏光板保護フィルム・シート、波長板、光拡散フィルム・シート、プリズムフィルム・シート、反射フィルム・シート、反射防止フィルム・シート、視野角拡大フィルム・シート、防眩フィルム・シート、輝度向上フィルム・シート、液晶やエレクトロルミネッセンス用途の表示素子基板、タッチパネル、タッチパネル用導光フィルム・シート、各種前面板と各種モジュール間のスペーサーなどが挙げられる。また、耐候性、柔軟性などに優れている点から、例えば、建築用内・外装用部材、カーテンウォール、屋根用部材、屋根材、窓用部材、雨どい、エクステリア類、壁材、床材、造作材、道路建設用部材、再帰反射フィルム・シート、農業用フィルム・シート、照明カバー、看板、透光性遮音壁など、公知の建材用途へも好適に適用可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 実施例及び比較例で用いた測定機器及び測定方法を以下に記す。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によりポリスチレン換算分子量で求めた。
・装置:東ソー株式会社製 GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
(2)各重合体ブロックの含有量等
アクリル系ブロック共重合体(A)における各重合体ブロックの含有量及び各重合体ブロックを構成するモノマー組成比は、
1H−NMR(
1H−核磁気共鳴)測定によって求めた。
・装置:日本電子株式会社製 核磁気共鳴装置「JNM−LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
(3)押出機スクリュートルク
以下の実施例又は比較例で得られたペレットを用いて、下記の温度で押出成形した際の押出機スクリュートルク表示値を加工安定性の指標とした。スクリュートルク値が高いほどスクリューへの噛み込みが良く、成形体の脈動やシリンダー内での樹脂滞留が減少し、加工が安定していると解釈することができる。
・加工装置:株式会社池貝製 単軸押出機
・押出温度:175℃(実施例1、比較例1)、185℃(実施例2、3)
【0051】
(4)表面平滑性
以下の実施例又は比較例で得られたペレットを用いて、シリンダー温度及びダイス温度220℃で、L字型の口を持つダイ(L字の縦方向最大長さ5mm×L字の横方向最大長さ5mm)により押出成形した。得られたL字型の棒状成形体のL字型の内側に当る直線面の表面状態を光学顕微鏡により観察評価し、これを表面平滑性の指標とした。
◎:表面が平滑であり、表面にスジ状あるいはシボ調の凹凸が見られず、光沢がある。
○:表面が平滑であり、表面にスジ状あるいはシボ調の凹凸が見られない。
△:表面はほぼ平滑であるが、一部の表面にスジ状あるいはシボ調の凹凸が見られる。
×:表面がスジ状及びシボ調の凹凸により平滑でない。
・装置:株式会社東洋精機製作所製 「キャピログラフC1」
・ピストン速度:100mm/秒
(5)導光性
以下の実施例又は比較例で得られたペレットを用いて、下記の温度で押出成形した直径3.3mmの丸棒状成形体の両端面を垂直に切断し、長さ1mの成形体を得た。得られた成形体を用いて、光路長1mにおける分光透過率を測定し、光波長400〜700nmにおける平均光線透過率を求めた。
・装置:日本分光株式会社製 「V−670」
・光源:重水素ランプ(D2)及びハロゲンランプ(WI)
・押出温度:175℃(実施例1、比較例1)、185℃(実施例2、3)
(6)透明性
以下の実施例又は比較例で得られたペレットを用いて、射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE18DU」)により、下記のシリンダー温度及び金型温度で長さ5cm、幅5cm、厚さ3mmのシート状成形体を作製し、直読へイズメーター(日本電色製)により、ISO 14782に準拠してヘイズ値を測定した。
・シリンダー温度:220℃(実施例1〜3、比較例1)
・金型温度:50℃(実施例1〜3、比較例1)
【0052】
《製造例1》[アクリル系ブロック共重合体(A1)の合成]
20リットルの反応槽内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にて乾燥トルエン10.29kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.019kg、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム0.17molを含有するトルエン溶液0.35kgを加え、さらに、sec−ブチルリチウム0.077molを加えた。これにメタクリル酸メチル0.50kgを加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−25℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル2.09kgを1時間かけて滴下した。続いて、メタクリル酸メチル0.82kgを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌した。次いで、反応液にメタノールを0.30kg添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、重合体ブロック(a1−1)−重合体ブロック(a2)−重合体ブロック(a1−2)からなるトリブロック構造のアクリル系ブロック共重合体(A1)を得た。各重合体ブロックの含有量(質量比)は、(a1−1):(a2):(a1−2)=14.7:61.2:24.1であった。評価結果を表1に示す。
【0053】
《製造例2》[アクリル系ブロック共重合体(A2)の合成]
20リットルの反応槽内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にて乾燥トルエン10.29kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.019kg、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム0.17molを含有するトルエン溶液0.35kgを加え、さらに、sec−ブチルリチウム0.077molを加えた。これにメタクリル酸メチル0.50kgを加え、室温で1時間反応させた。引き続き、重合液の内部温度を−25℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル1.21kgとアクリル酸ベンジル0.48kgとの混合液を1時間かけて滴下した。続いて、メタクリル酸メチル1.23kgを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌した。次いで、反応液にメタノールを0.30kg添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノール中に注ぎ、析出した沈殿物を回収し、重合体ブロック(a1−1)−重合体ブロック(a2)−重合体ブロック(a1−2)からなるトリブロック構造のアクリル系ブロック共重合体(A2)を得た。各重合体ブロックの含有量(質量比)は、(a1−1):(a2):(a1−2)=14.6:49.5:35.9であった。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
《実施例1》
上記製造例1で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)のペレットと、粉状添加剤(B)であるホスファイト系酸化防止剤(i)「アデカスタブPEP−36/36A」[商品名、株式会社ADEKA製]を下記の表2に示す配合割合で非加熱及び無オイル下で混合することで、表面に粉状添加剤(B)が存在するアクリル系ブロック共重合体(A1)のペレットを得た(工程1)。ついで、上記(3)〜(6)に従ってこのペレットを溶融成形(押出成形又は射出成形)することで成形体を作製した(工程2)。この成形体の評価結果を表2に示す。
《実施例2》
上記製造例1で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)のペレットと、粉状添加剤(B)であるホスファイト系酸化防止剤(i)「アデカスタブPEP−36/36A」[商品名、株式会社ADEKA製]を下記の表2に示す配合割合で非加熱及び無オイル下で混合することで、表面に粉状添加剤(B)が存在するアクリル系ブロック共重合体(A1)のペレットを得た(工程1)。ついで、上記(3)〜(6)に従ってこのペレットを溶融成形(押出成形又は射出成形)することで成形体を作製した(工程2)。この成形体の評価結果を表2に示す。
《実施例3》
上記製造例2で得られたアクリル系ブロック共重合体(A2)のペレットと、粉状添加剤(B)であるホスファイト系酸化防止剤(i)「アデカスタブPEP−36/36A」[商品名、株式会社ADEKA製]を下記の表2に示す配合割合で非加熱及び無オイル下で混合することで、表面に粉状添加剤(B)が存在するアクリル系ブロック共重合体(A2)のペレットを得た(工程1)。ついで、上記(3)〜(6)に従ってこのペレットを溶融成形(押出成形又は射出成形)することで成形体を作製した(工程2)。この成形体の評価結果を表2に示す。
【0056】
《比較例1》
上記製造例1で得られたアクリル系ブロック共重合体(A1)のペレットと、粉状添加剤(B)であるホスファイト系酸化防止剤(i)「アデカスタブPEP−36/36A」[商品名、株式会社ADEKA製]を下記の表2に示す配合割合で、シリンダー温度200℃の二軸押出機により溶融混練したのち、押出し、切断することによってリペレット化し、樹脂組成物のペレットを作製した。ついで、上記(3)〜(6)に従ってこのペレットを溶融成形(押出成形又は射出成形)することで成形体を作製した。この成形体の評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から、リペレット化させる工程を含まない成形体の製造方法(実施例1〜3)では、ペレットの表面に付着した粉状添加剤によって膠着防止作用が発現するため、押出機スクリューへの噛み込みが良く、すなわちスクリュートルク値が高く、且つ成形体の表面平滑性が良いことから加工安定性に優れていることがわかる。また、平均光線透過率が高いことから導光性に優れた成形体の製造方法であることもわかる。一方、リペレット化させる工程を含む比較例1の製造方法では、加工安定性に劣り、得られる成形体の導光性にも劣ることがわかる。さらに、実施例1〜3の製造方法で得られる成形体は、比較例1の製造方法で得られる成形体と比較してヘイズ値が同等以下であることから、混練不足による透明性の低下も発生していないことがわかる。