特許第6757629号(P6757629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6757629基板加熱装置、基板加熱方法及び赤外線ヒータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6757629
(24)【登録日】2020年9月2日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】基板加熱装置、基板加熱方法及び赤外線ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/66 20060101AFI20200910BHJP
   H05B 3/64 20060101ALI20200910BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20200910BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H05B3/66
   H05B3/64
   F27B17/00 B
   F27D11/02 C
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-167793(P2016-167793)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-37191(P2018-37191A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐保田 勉
(72)【発明者】
【氏名】山谷 謙一
(72)【発明者】
【氏名】升 芳明
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−019479(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3060663(JP,U)
【文献】 特開2005−011852(JP,A)
【文献】 特開2015−141965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00−3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を塗布した基板の収容空間の雰囲気を減圧する減圧部と、
前記基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータと、を含み、
前記赤外線ヒータは、複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、
外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、を含み、
前記ベンド部は、第一方向の両側に配置されるとともに、前記第一方向と交差する第二方向に並んで複数配置され、
複数の前記ベンド部は、前記赤外線ヒータ自体の前記カバー部により前記第一方向の両側の外方から覆われている
基板加熱装置。
【請求項2】
前記赤外線ヒータは、前記第一方向に長手を有するとともに、前記第二方向に並んで配置された複数のストレート部を更に含み、
前記ベンド部は、隣り合う2つの前記ストレート部の端部を連結し、
前記カバー部は、複数の前記ベンド部を外方から覆うように前記第二方向に直線状に延びている
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項3】
前記赤外線ヒータは、前記赤外線ヒータの一端に設けられた第一導入部と、前記赤外線ヒータの他端に設けられた第二導入部と、を更に含み、
前記第一導入部及び前記第二導入部の少なくとも一方は、前記カバー部の端部に設けられている
請求項1又は2に記載の基板加熱装置。
【請求項4】
複数の前記赤外線ヒータを一面に敷き詰めて構成したヒータユニットを更に含む
請求項1からの何れか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項5】
前記ヒータユニットは、一方向に敷き詰めて配置された複数の第一赤外線ヒータと、前記一方向と平行な方向に敷き詰めて配置された複数の第二赤外線ヒータと、を含み、
前記第二赤外線ヒータは、隣り合う2つの前記第一赤外線ヒータの境界部に隣接するように前記一方向と交差する方向で前記第一赤外線ヒータと敷き詰めて配置されている
請求項に記載の基板加熱装置。
【請求項6】
前記第二赤外線ヒータは、平面視で前記第一赤外線ヒータと同じ形状を有する
請求項に記載の基板加熱装置。
【請求項7】
前記基板を挟んで前記赤外線ヒータとは反対側に配置されるとともに、前記基板を加熱可能な加熱部を更に含む
請求項1からの何れか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項8】
前記基板、前記加熱部及び前記赤外線ヒータを収容可能なチャンバを更に含む
請求項に記載の基板加熱装置。
【請求項9】
前記基板の温度を検知可能な温度検知部を更に含む
請求項1からの何れか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項10】
溶液を塗布した基板の収容空間の雰囲気を減圧する減圧工程と、
前記基板を赤外線によって加熱する加熱工程と、を含み、
前記加熱工程では、複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、
外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、を含む赤外線ヒータを用いて前記基板を赤外線によって加熱し、
前記ベンド部は、第一方向の両側に配置されるとともに、前記第一方向と交差する第二方向に並んで複数配置され、
複数の前記ベンド部は、前記赤外線ヒータ自体の前記カバー部により前記第一方向の両側の外方から覆われている
基板加熱方法。
【請求項11】
基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータであって、
複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、
外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、
前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、を含み、
前記ベンド部は、第一方向の両側に配置されるとともに、前記第一方向と交差する第二方向に並んで複数配置され、
複数の前記ベンド部は、前記赤外線ヒータ自体の前記カバー部により前記第一方向の両側の外方から覆われている
赤外線ヒータ。
【請求項12】
溶液を塗布した基板の収容空間の雰囲気を減圧する減圧部と、
前記基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータと、を含み、
前記赤外線ヒータは、複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、
外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、
前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、
第一方向に長手を有するとともに、第二方向に並んで配置された複数のストレート部と、を含み、
前記ベンド部は、隣り合う2つの前記ストレート部の端部を連結し、
前記カバー部は、複数の前記ベンド部を外方から覆うように前記第二方向に直線状に延びており、
前記カバー部と前記ベンド部との間の間隔は、隣り合う2つの前記ストレート部の間の間隔よりも小さい
基板加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板加熱装置、基板加熱方法及び赤外線ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイス用の基板として、ガラス基板に代わりフレキシブル性を有した樹脂基板の市場ニーズがある。例えば、このような樹脂基板は、ポリイミド膜を用いる。例えば、ポリイミド膜は、基板にポリイミドの前駆体の溶液を塗布した後、前記基板を加熱する工程(加熱工程)を経て形成される。例えば、ポリイミドの前駆体の溶液としては、ポリアミック酸と溶媒からなるポリアミック酸ワニスがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−210632号公報
【特許文献2】国際公開第2009/104371号
【特許文献3】特開2006−170524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の加熱工程は、比較的低温で溶媒を蒸発させる第一工程と、比較的高温でポリアミック酸を硬化させる第二工程とを含む。第二工程では、基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータを用いることが考えられる。例えば、赤外線ヒータとしては、W型やU型をなすものが知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、W型やU型の赤外線ヒータは、外方に凸をなすように折り曲げられた部分が露出し、露出した部分は他の部分よりも降温するため、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上する上で課題があった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することが可能な基板加熱装置、基板加熱方法及び赤外線ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る基板加熱装置は、溶液を塗布した基板の収容空間の雰囲気を減圧する減圧部と、前記基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータと、を含み、前記赤外線ヒータは、複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、赤外線ヒータがベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部を含むことで、ベンド部が露出することを回避することができるため、ベンド部が他の部分よりも降温することを抑制することができる。すなわち、ベンド部の少なくとも一部をカバー部によって外方から加熱することができるため、ベンド部と他の部分とで温度差が生じることを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができる。
【0008】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータは、第一方向に長手を有するとともに、前記第一方向と交差する第二方向に並んで配置された複数のストレート部を更に含み、前記ベンド部は、隣り合う2つの前記ストレート部の端部を連結し、前記カバー部は、複数の前記ベンド部を外方から覆うように前記第二方向に直線状に延びていてもよい。
この構成によれば、カバー部が複数のベンド部を外方から覆うように第二方向に直線状に延びていることで、複数のベンド部が露出することを一括して回避することができるため、複数のベンド部が他の部分よりも降温することを一括して抑制することができる。すなわち、複数のベンド部をカバー部によって外方から一括して加熱することができるため、複数のベンド部と他の部分とで温度差が生じることを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを効率よく向上することができる。加えて、赤外線ヒータが第一方向に長手を有するとともに第一方向と交差する第二方向に並んで配置された複数のストレート部を更に含むことで、複数のストレート部が互いに隣り合うことにより互いの発熱温度を高め合うことができるため、赤外線ヒータの温度分布のバランスを高い温度で向上することができる。
【0009】
上記の基板加熱装置において、前記カバー部とベンド部との間の間隔は、隣り合う2つの前記ストレート部の間の間隔よりも小さくてもよい。
この構成によれば、カバー部とベンド部との間の間隔を隣り合う2つのストレート部の間の間隔以上とした場合と比較して、ベンド部が露出することをより確実に回避することができるため、ベンド部が他の部分よりも降温することをより確実に抑制することができる。すなわち、ベンド部の少なくとも一部をカバー部によって外方からより確実に加熱することができるため、ベンド部と他の部分とで温度差が生じることをより確実に抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスをより確実に向上することができる。
【0010】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータは、前記赤外線ヒータの一端に設けられた第一導入部と、前記赤外線ヒータの他端に設けられた第二導入部と、を更に含み、前記第一導入部及び前記第二導入部の少なくとも一方は、前記カバー部の端部に設けられていてもよい。
ところで、第一導入部と第二導入部とが近すぎると、その部分の温度が他の部分の温度よりも降温する傾向がある。しかし、この構成によれば、第一導入部と第二導入部とがある程度離反するため、赤外線ヒータが局所的に降温することを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができる。
【0011】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータの外形は、平面視で矩形状をなし、前記第一導入部及び前記第二導入部は、前記赤外線ヒータの一辺の中央部で対向して配置されていてもよい。
この構成によれば、第一導入部と第二導入部とをある程度離反するため、赤外線ヒータが局所的に降温することを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができる。
【0012】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータの外形は、平面視で矩形状をなし、前記第一導入部は、前記赤外線ヒータの一辺の一方側に配置され、前記第二導入部は、前記一辺の他方側に配置されていてもよい。
この構成によれば、赤外線ヒータのうち第一導入部又は第二導入部のいずれか一方からベンド部に至るまでの部分が2箇所で折り曲げられたU字管状(すなわち、赤外線ヒータの前記一辺を除く三辺に沿う形状)となるため、直管状及びL字管状の場合と比較して、赤外線ヒータの柔軟性を高くすることができる。したがって、赤外線ヒータの前記一辺が熱膨張又は熱収縮したとしても、赤外線ヒータの柔軟性によって前記一辺の膨張又は収縮を許容することができる。
【0013】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータの外形は、平面視で矩形状をなし、前記第一導入部は、前記赤外線ヒータの一角部に配置され、前記第二導入部は、前記一角部の対角部に配置されていてもよい。
この構成によれば、第一導入部及び第二導入部の配置位置が平面視で赤外線ヒータの中心を基準に点対称となるとともに、第一導入部及び第二導入部が遠く離反する。これにより、第一導入部及び第二導入部が他の部分よりも降温した場合であっても、互いの降温温度を低め合うことはなく、赤外線ヒータが局所的に過度に降温することを回避することができるため、赤外線ヒータの温度分布のバランスを可及的に向上することができる。
【0014】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータは、平面視で点対称形状をなしていてもよい。
この構成によれば、赤外線ヒータが平面視で非対称形状をなした場合と比較して、赤外線ヒータの温度分布のバランスをより確実に向上することができる。
【0015】
上記の基板加熱装置において、前記赤外線ヒータの外形は、平面視で矩形状をなし、前記第一導入部及び前記第二導入部は、前記赤外線ヒータの一角部に隣接して配置されていてもよい。
この構成によれば、第一導入部と第二導入部との間の距離が最小になるため、赤外線ヒータが熱膨張又は熱収縮することを可及的に抑制することができる。
【0016】
上記の基板加熱装置において、前記第一導入部及び前記第二導入部の少なくとも一部は、平面視で前記赤外線ヒータの外形内に入り込んでいてもよい。
この構成によれば、赤外線ヒータを配置する際に、第一導入部及び第二導入部が邪魔になることを回避することができるため、レイアウトの自由度を高めることができる。例えば、複数の赤外線ヒータを一面に敷き詰める際に、隣り合う2つの赤外線ヒータが第一導入部及び第二導入部において干渉することを回避することができるため、複数の赤外線ヒータを整然と敷き詰めることができる。
【0017】
上記の基板加熱装置において、複数の前記赤外線ヒータを一面に敷き詰めて構成したヒータユニットを更に含んでいてもよい。
この構成によれば、上記赤外線ヒータを備えているため、ヒータユニットの温度分布のバランスを向上することができる。加えて、複数の赤外線ヒータを個別に制御可能とした場合には、一部の赤外線ヒータの出力を他の赤外線ヒータの出力よりも大きくすることができるため、基板に対して温度分布のよい加熱を行うことができる。例えば、基板の四隅の温度が低い場合には、その部分にあたる位置に配置された赤外線ヒータの出力を、他の赤外線ヒータの出力よりも大きくすることによって、その部分だけ温度を高くして基板全体の温度分布を向上させることができる。
【0018】
上記の基板加熱装置において、前記ヒータユニットは、一方向に敷き詰めて配置された複数の第一赤外線ヒータと、前記一方向と平行な方向に敷き詰めて配置された複数の第二赤外線ヒータと、を含み、前記第二赤外線ヒータは、隣り合う2つの前記第一赤外線ヒータの境界部に隣接するように前記一方向と交差する方向で前記第一赤外線ヒータと敷き詰めて配置されていてもよい。
この構成によれば、第一赤外線ヒータの温度分布と第二赤外線ヒータの温度分布とを互いに補完することができるため、ヒータユニットの温度分布のバランスをより一層向上することができる。
【0019】
上記の基板加熱装置において、前記第二赤外線ヒータは、平面視で前記第一赤外線ヒータと同じ形状を有していてもよい。
この構成によれば、第二赤外線ヒータが平面視で第一赤外線ヒータと異なる形状を有した場合と比較して、ヒータユニットの温度分布のバランスをより確実に向上することができる。加えて、基板サイズを変えたとしても、赤外線ヒータの個数を変えて赤外線ヒータを等間隔に配置することによって、基板に対して温度分布のよい加熱を行うことができる。ところで、赤外線ヒータが単純なストレート管の場合は、基板サイズが大きくなるとストレート管の長さを伸ばす必要があるため、赤外線ヒータの熱膨張を許容することが困難になる可能性がある。しかし、この構成によれば、基板サイズが大きくなっても赤外線ヒータのサイズは変わらないため、赤外線ヒータの熱膨張を容易に許容することができる。
【0020】
上記の基板加熱装置において、前記第二赤外線ヒータは、平面視で前記第一赤外線ヒータを90度回転させた形状を有していてもよい。
この構成によれば、赤外線ヒータの形状に起因する温度分布を第一赤外線ヒータと第二赤外線ヒータとで互いに補完することができるため、ヒータユニットの温度分布のバランスをより一層向上することができる。
【0021】
上記の基板加熱装置において、前記基板を挟んで前記赤外線ヒータとは反対側に配置されるとともに、前記基板を加熱可能な加熱部を更に含んでいてもよい。
この構成によれば、加熱部による加熱と赤外線ヒータによる加熱とが相まって、基板をより一層効果的に加熱することができる。
【0022】
上記の基板加熱装置において、前記基板、前記加熱部及び前記赤外線ヒータを収容可能なチャンバを更に含んでいてもよい。
この構成によれば、チャンバ内で基板の加熱温度を管理することができるため、基板を効果的に加熱することができる。
【0023】
上記の基板加熱装置において、前記基板、前記加熱部及び前記赤外線ヒータは、共通の前記チャンバに収容されていてもよい。
この構成によれば、共通のチャンバ内で基板への加熱部による加熱処理と赤外線ヒータによる加熱処理とを一括して行うことができる。すなわち、加熱部及び赤外線ヒータが互いに異なるチャンバに収容された場合のように、異なる2つのチャンバ間で基板を搬送させるための時間を要しない。したがって、基板の加熱処理をより一層効率良く行うことができる。加えて、異なる2つのチャンバを備えた場合と比較して、装置全体を小型化することができる。
【0024】
上記の基板加熱装置において、前記溶液は、前記基板の第一面にのみ塗布されており、前記加熱部は、前記基板の第一面とは反対側の第二面の側に配置されていてもよい。
この構成によれば、加熱部から発せられた熱が、基板の第二面の側から第一面の側に向けて伝わるようになるため、基板を効果的に加熱することができる。加えて、加熱部で基板を加熱している間に、基板に塗布された溶液の揮発又はイミド化(例えば、成膜中のガス抜き)を効率良く行うことができる。
【0025】
上記の基板加熱装置において、前記加熱部及び前記赤外線ヒータの少なくとも一方は、前記基板を段階的に加熱可能であってもよい。
この構成によれば、加熱部及び赤外線ヒータが基板を一定の温度でのみ加熱可能な場合と比較して、基板に塗布された溶液の成膜条件に適合するように、基板を効率良く加熱することができる。したがって、基板に塗布された溶液を段階的に乾燥させ、良好に硬化させることができる。
【0026】
上記の基板加熱装置において、前記加熱部及び前記赤外線ヒータの少なくとも一方と前記基板との相対位置を調整可能な位置調整部を更に含んでいてもよい。
この構成によれば、前記位置調整部を備えない場合と比較して、基板の加熱温度を調整し易くなる。例えば、基板の加熱温度を高くする場合には加熱部及び赤外線ヒータと基板とを近接させ、基板の加熱温度を低くする場合には加熱部及び赤外線ヒータと基板とを離反させることができる。したがって、基板を段階的に加熱し易くなる。
【0027】
上記の基板加熱装置において、前記位置調整部は、前記基板を前記加熱部と前記赤外線ヒータとの間で移動可能とする移動部を含んでいてもよい。
この構成によれば、基板を加熱部と赤外線ヒータとの間で移動させることによって、加熱部及び赤外線ヒータの少なくとも一方を定位置に配置した状態で、基板の加熱温度を調整することができる。したがって、加熱部及び赤外線ヒータの少なくとも一方を移動可能とする装置を別途設ける必要がないため、簡素な構成で基板の加熱温度を調整することができる。
【0028】
上記の基板加熱装置において、前記加熱部と前記赤外線ヒータとの間には、前記基板を搬送可能とする搬送部が設けられており、前記搬送部には、前記移動部を通過可能とする通過部が形成されていてもよい。
この構成によれば、基板を加熱部と赤外線ヒータとの間で移動させる場合に、通過部を通過させることができるため、搬送部を迂回して基板を移動させる必要がない。したがって、搬送部を迂回して基板を移動させるための装置を別途設ける必要がないため、簡素な構成で基板の移動をスムーズに行うことができる。
【0029】
上記の基板加熱装置において、前記移動部は、前記基板の第一面とは反対側の第二面を支持可能かつ前記第二面の法線方向に移動可能な複数のピンを含み、前記複数のピンの先端は、前記第二面と平行な面内に配置されていてもよい。
この構成によれば、基板を安定して支持した状態で、基板を加熱することができるため、基板に塗布された溶液を安定して成膜させることができる。
【0030】
上記の基板加熱装置において、前記加熱部には、前記加熱部を前記第二面の法線方向に開口する複数の挿通孔が形成されており、前記複数のピンの先端は、前記複数の挿通孔を介して前記第二面に当接可能とされていてもよい。
この構成によれば、複数のピンと加熱部との間での基板の受け渡しを短時間で行うことができるため、基板の加熱温度を効率良く調整することができる。
【0031】
上記の基板加熱装置において、前記加熱部は、ホットプレートであってもよい。
この構成によれば、基板の加熱温度を基板の面内で均一化させることができるため、膜特性を向上させることができる。例えば、ホットプレートの一面と基板の第二面とを当接させた状態で基板を加熱することによって、基板の加熱温度の面内均一性を高めることができる。
【0032】
上記の基板加熱装置において、前記基板の温度を検知可能な温度検知部を更に含んでいてもよい。
この構成によれば、基板の温度をリアルタイムで把握することができる。例えば、温度検知部の検知結果に基づいて基板を加熱することによって、基板の温度が目標値からずれることを抑制することができる。
【0033】
上記の基板加熱装置において、前記基板に塗布された前記溶液から揮発した溶媒を回収可能な回収部を更に含んでいてもよい。
この構成によれば、溶液から揮発した溶媒が工場側へ排出されることを防ぐことができる。また、回収部を減圧部(真空ポンプ)のラインに接続した場合には、溶液から揮発した溶媒が再び液化して真空ポンプ内に逆流することを防ぐことができる。さらに、溶液から揮発した溶媒を、洗浄液として再利用することができる。例えば、洗浄液は、ノズル先端の洗浄、ノズルに付着した液をかき取る部材に付着した液の洗浄等に用いることができる。
【0034】
本発明の一態様に係る基板加熱方法は、溶液を塗布した基板の収容空間の雰囲気を減圧する減圧工程と、前記基板を赤外線によって加熱する加熱工程と、を含み、前記加熱工程では、複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、を含む赤外線ヒータを用いて前記基板を赤外線によって加熱することを特徴とする。
【0035】
この方法によれば、加熱工程において、赤外線ヒータがベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部を含むことで、ベンド部が露出することを回避することができるため、ベンド部が他の部分よりも降温することを抑制することができる。すなわち、ベンド部の少なくとも一部をカバー部によって外方から加熱することができるため、ベンド部と他の部分とで温度差が生じることを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができる。
【0036】
本発明の一態様に係る赤外線ヒータは、基板を赤外線によって加熱可能な赤外線ヒータであって、複数箇所で折り曲げられた管状をなすとともに、外方に凸をなすように折り曲げられたベンド部と、前記ベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部と、を含むことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、赤外線ヒータがベンド部の少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部を含むことで、ベンド部が露出することを回避することができるため、ベンド部が他の部分よりも降温することを抑制することができる。すなわち、ベンド部の少なくとも一部をカバー部によって外方から加熱することができるため、ベンド部と他の部分とで温度差が生じることを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することが可能な基板加熱装置及び赤外線ヒータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第一実施形態に係る基板加熱装置の斜視図である。
図2】第一実施形態に係る赤外線ヒータの平面図である。
図3】搬送ローラ、基板及び加熱部の配置関係を説明するための図である。
図4】第一実施形態に係る基板加熱装置の動作の一例を説明するための図である。
図5図4に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
図6図5に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
図7】第一実施形態に係る赤外線ヒータの第一変形例を示す平面図である。
図8】第一実施形態に係る赤外線ヒータの第二変形例を示す平面図である。
図9】第二実施形態に係る赤外線ヒータの平面図である。
図10】第二実施形態に係る基板加熱装置の動作の一例を説明するための図である。
図11図10に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
図12図11に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置の動作説明図である。
図13】第三実施形態に係る赤外線ヒータの平面図である。
図14】第四実施形態に係るヒータユニットの平面図である。
図15】第五実施形態に係るヒータユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX方向、水平面内においてX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ方向とする。
【0041】
(第一実施形態)
<基板加熱装置>
図1は、第一実施形態に係る基板加熱装置1の斜視図である。
図1に示すように、基板加熱装置1は、チャンバ2、減圧部3、ガス供給部4、加熱部5、赤外線ヒータ6、位置調整部7、搬送部8、温度検知部9、回収部11、揺動部12及び制御部15を備えている。制御部15は、基板加熱装置1の構成要素を統括制御する。便宜上、図1においては、チャンバ2、減圧部3及びガス供給部4を二点鎖線で示している。
【0042】
<チャンバ>
チャンバ2は、基板10、加熱部5及び赤外線ヒータ6を収容可能である。基板10、加熱部5及び赤外線ヒータ6は、共通のチャンバ2に収容されている。チャンバ2は、直方体の箱状に形成されている。具体的に、チャンバ2は、矩形板状の天板21と、天板21と対向する矩形板状の底板22と、天板21及び底板22の外周縁に繋がる矩形枠状の周壁23とによって形成されている。例えば、周壁23の−X方向側には、チャンバ2に対して基板10の搬入及び搬出をするための基板搬出入口23aが設けられている。
【0043】
チャンバ2は、基板10を密閉空間で収容可能に構成されている。例えば、天板21、底板22及び周壁23の各接続部を溶接等で隙間なく結合することで、チャンバ2内の気密性を向上することができる。
【0044】
<減圧部>
減圧部3は、底板22の−Y方向側の基板搬出入口23a寄りの角部に接続されている。減圧部3は、チャンバ2内を減圧可能である。例えば、減圧部3は、ポンプ機構等の減圧機構を備えている。減圧機構は、真空ポンプ13を備えている。なお、減圧部3の接続部位は、底板22の−Y方向側の基板搬出入口23a寄りの角部に限定されない。減圧部3は、チャンバ2に接続されていればよい。
【0045】
減圧部3は、ポリイミド膜(ポリイミド)を形成するための溶液(以下「ポリイミド形成用液」という。)が塗布された基板10の収容空間の雰囲気を減圧可能である。例えば、ポリイミド形成用液は、ポリアミック酸又はポリイミドパウダーを含む。ポリイミド形成用液は、矩形板状をなす基板10の第一面10a(上面)にのみ塗布されている。なお、溶液は、ポリイミド形成用液に限定されない。溶液は、基板10に所定の膜を形成するためのものであればよい。
【0046】
<ガス供給部>
ガス供給部4は、周壁23の+X方向側の天板21寄りの角部に接続されている。ガス供給部4は、チャンバ2の内部雰囲気の状態を調整可能である。ガス供給部4は、窒素(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスをチャンバ2内へ供給する。なお、ガス供給部4の接続部位は、周壁23の+X方向側の天板21寄りの角部に限定されない。ガス供給部4は、チャンバ2に接続されていればよい。また、基板降温時にガスを供給することで基板冷却に使用してもよい。
【0047】
ガス供給部4により、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を調整することができる。チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度(質量基準)は、低いほど好ましい。具体的には、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を、100ppm以下とすることが好ましく、20ppm以下とすることがより好ましい。
例えば、後述のように、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を硬化するときの雰囲気において、このように酸素濃度を好ましい上限以下とすることにより、ポリイミド形成用液の硬化を進行しやすくすることができる。
【0048】
<加熱部>
加熱部5は、チャンバ2内の下方に配置されている。加熱部5は、基板10を第一の温度で加熱可能である。加熱部5は、基板10を段階的に加熱可能である。例えば、第一の温度を含む温度範囲は、20℃以上かつ300℃以下の範囲である。加熱部5は、基板10の第一面10aとは反対側の第二面10b(下面)の側に配置されている。
【0049】
加熱部5は、矩形板状をなしている。加熱部5は、基板10を下方から支持可能である。加熱部5の上面は、基板10の第一面10aに沿う平坦面をなす。例えば、加熱部5は、ホットプレートである。
【0050】
<赤外線ヒータ>
赤外線ヒータ6は、チャンバ2内の上方に配置されている。赤外線ヒータ6は、第一の温度よりも高い第二の温度で基板10を加熱可能である。赤外線ヒータ6は、加熱部5とは別個独立して設けられている。赤外線ヒータ6は、基板10を段階的に加熱可能である。例えば、第二の温度を含む温度範囲は、200℃以上かつ600℃以下の範囲である。赤外線ヒータ6は、基板10の第一面10aの側に配置されている。
【0051】
赤外線ヒータ6は、天板21に支持されている。赤外線ヒータ6は、チャンバ2内の天板21寄りで定位置に固定されている。例えば、赤外線ヒータ6のピーク波長範囲は、1.5μm以上かつ4μm以下の範囲である。なお、赤外線ヒータ6のピーク波長範囲は、上記範囲に限らず、要求仕様に応じて種々の範囲に設定することができる。
【0052】
図2は、第一実施形態に係る赤外線ヒータ6の平面図である。
図2に示すように、赤外線ヒータ6は、複数個所で折り曲げられた管状をなしている。赤外線ヒータ6の外形は、平面視で矩形状をなしている。例えば、赤外線ヒータ6の外形の一辺の長さは、225mm程度とされている。例えば、赤外線ヒータ6の全長(管路全長)は、2475mm程度とされている。例えば、赤外線ヒータ6は、石英管で形成されている。
【0053】
赤外線ヒータ6は、ストレート部群30、ベンド部群31、カバー部32,33、第一導入部34及び第二導入部35を備えている。
ストレート部群30は、複数(例えば、本実施形態では9つ)のストレート部30a〜30iを備えている。ストレート部30a〜30iは、第一方向V1に長手を有する直管状をなしている。ストレート部30a〜30iは、第一方向V1と直交(交差)する第二方向V2に並んで複数配置されている。複数のストレート部30a〜30iは、第二方向V2に実質的に同じ間隔S1(中心軸間のピッチ)をあけて配置されている。例えば、隣り合う2つのストレート部30a〜30iの間の間隔S1は、25mm程度とされている。なお、ストレート部30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g,30h,30iは、第二方向V2の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0054】
ベンド部群31は、複数(例えば、本実施形態では8つ)のベンド部31a〜31hを備えている。ベンド部31a〜31hは、外方に凸をなすように折り曲げられている。ベンド部31a〜31hは、隣り合う2つのストレート部30a〜30iの端部を連結している。例えば、ベンド部31aは、ストレート部30aの一端部とストレート部30bの一端部とを連結している。すなわち、ベンド部31a〜31hは、赤外線ヒータ6のうち隣り合う2つのストレート部30a〜30iの端部を連結するように屈曲する屈曲部である。平面視で、ベンド部31a〜31hは、外方に凸をなすU字管状をなしている。なお、ベンド部31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,31hは、第二方向V2の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0055】
カバー部32,33は、複数のベンド部31a〜31hを外方から覆うように第二方向V2に直線状に延びている。具体的に、カバー部32,33は、4つのベンド部31b,31d,31f,31hを第一方向V1の一方側から覆う第一カバー部32と、4つのベンド部31a,31c,31e,31gを第一方向V1の他方側から覆う第二カバー部33と、を備えている。
【0056】
第一カバー部32は、第二方向V2の一方側のストレート部30aの一端部に連結されている。第一カバー部32は、第二方向V2に長手を有する直管状をなしている。第一カバー部32とベンド部31b,31d,31f,31hとの間の間隔S2(中心軸間のピッチ)は、隣り合う2つのストレート部30a〜30iの間の間隔S1と実質的に同じ大きさとされている。例えば、第一カバー部32とベンド部31b,31d,31f,31hとの間の間隔S2は、25mm程度とされている。
【0057】
第二カバー部33は、第二方向V2の他方側のストレート部30iの一端部に連結されている。第二カバー部33は、L字管状をなしている。すなわち、第二カバー部33は、第二方向V2に長手を有するカバー本体33aと、カバー本体33aの一端部に連結されるとともに第一方向V1に長手を有する延在部33bと、を備えている。第二カバー部33とベンド部31a,31c,31e,31gとの間の間隔S3(中心軸間のピッチ)は、隣り合う2つのストレート部30a〜30iの間の間隔S1と実質的に同じ大きさとされている。例えば、第二カバー部33におけるカバー本体33aとベンド部31a,31c,31e,31gとの間の間隔S3は、25mm程度とされている。なお、第二カバー部33における延在部33bとストレート部30aとの間の間隔も、25mm程度とされている。
【0058】
第一導入部34は、赤外線ヒータ6の一端に設けられている。第一導入部34は、赤外線ヒータ6の一辺の一方側に配置されている。具体的に、第一導入部34は、第一カバー部32の一端に設けられている。第一導入部34の一部は、平面視で赤外線ヒータ6の外形内に入り込んでいる。
【0059】
第二導入部35は、赤外線ヒータ6の他端に設けられている。第二導入部35は、赤外線ヒータ6の一辺の他方側に配置されている。第二導入部35は、第二方向V2において第一導入部34とは反対側に配置されている。具体的に、第二導入部35は、第二カバー部33における延在部33bの一端に設けられている。第二導入部35の一部は、平面視で赤外線ヒータ6の外形内に入り込んでいる。
【0060】
<位置調整部>
図1に示すように、位置調整部7は、チャンバ2の下方に配置されている。位置調整部7は、加熱部5及び赤外線ヒータ6と基板10との相対位置を調整可能である。位置調整部7は、移動部7aと駆動部7bとを備える。移動部7aは、上下(Z方向)に延びる柱状の部材である。移動部7aの上端は、加熱部5の下面に固定されている。駆動部7bは、移動部7aを上下に移動可能とする。移動部7aは、基板10を加熱部5と赤外線ヒータ6との間で移動可能とする。具体的に、移動部7aは、基板10が加熱部5の上面に載置された状態で、駆動部7bの駆動によって、基板10を上下に移動させる(図5及び図6参照)。
【0061】
駆動部7bは、チャンバ2の外部に配置されている。そのため、仮に駆動部7bの駆動に伴いパーティクルが発生したとしても、チャンバ2内を密閉空間とすることによって、チャンバ2内へのパーティクルの侵入を回避することができる。
【0062】
<搬送部>
搬送部8は、チャンバ2内において、加熱部5と赤外線ヒータ6との間に配置されている。搬送部8は、基板10を搬送可能である。搬送部8には、移動部7aを通過可能とする通過部8hが形成されている。搬送部8は、基板10の搬送方向であるX方向に沿って配置された複数の搬送ローラ8aを備えている。
【0063】
複数の搬送ローラ8aは、周壁23の+Y方向側と−Y方向側とに離反して配置されている。すなわち、通過部8hは、周壁23の+Y方向側の搬送ローラ8aと、周壁23の−Y方向側の搬送ローラ8aとの間の空間である。
【0064】
例えば、周壁23の+Y方向側及び−Y方向側のそれぞれには、Y方向に延びる複数のシャフト(不図示)がX方向に沿って配置されている。各搬送ローラ8aは、駆動機構(不図示)によって、各シャフトの回りに回転駆動されるようになっている。
【0065】
図3は、搬送ローラ8a、基板10及び加熱部5の配置関係を説明するための図である。図3は、基板加熱装置1の上面図に相当する。便宜上、図3においては、チャンバ2を二点鎖線で示す。
図3において、符号L1は、周壁23の+Y方向側の搬送ローラ8aと、周壁23の−Y方向側の搬送ローラ8aとが離反する間隔(以下「ローラ離反間隔」という。)である。また、符号L2は、基板10のY方向の長さ(以下「基板長さ」という。)である。また、符号L3は、加熱部5のY方向の長さ(以下「加熱部長さ」という。)である。
【0066】
図3に示すように、ローラ離反間隔L1は、基板長さL2よりも小さくかつ加熱部長さL3よりも大きい(L3<L1<L2)。ローラ離反間隔L1が加熱部長さL3よりも大きいことによって、移動部7aは、加熱部5と共に通過部8hを通過できるようになっている(図5及び図6参照)。
【0067】
<温度検知部>
図1に示すように、温度検知部9は、チャンバ2外に配置されている。温度検知部9は、基板10の温度を検知可能である。具体的に、温度検知部9は、天板21の上部に設置されている。天板21には、不図示の窓が取り付けられている。温度検知部9は、天板21の窓越しに基板10の温度を検知する。例えば、温度検知部9は、放射温度計等の非接触温度センサである。なお、図1では温度検知部9を1つのみ図示しているが、温度検知部9の数は1つに限らず、複数であってもよい。例えば、複数の温度検知部9を天板21の中央部及び四隅に配置することが好ましい。
【0068】
<回収部>
回収部11は、減圧部3(真空ポンプ13)のラインに接続されている。回収部11は、基板10に塗布されたポリイミド形成用液から揮発した溶媒を回収可能である。
【0069】
<揺動部>
揺動部12は、チャンバ2内において、基板10の−X方向側に配置されている。揺動部12は、基板10を揺動可能である。例えば、揺動部12は、基板10が加熱されている状態において、基板10をXY平面に沿う方向又はZ方向に沿う方向に揺動させる。なお、揺動部12の配置位置は、チャンバ2内における基板10の−X方向側に限定されない。例えば、揺動部12は、位置調整部7に設けられていてもよい。
【0070】
<基板加熱方法>
次に、本実施形態に係る基板加熱方法を説明する。本実施形態では、上記の基板加熱装置1を用いて基板10を加熱する。基板加熱装置1の各部で行われる動作は、制御部15によって制御される。
【0071】
図4は、第一実施形態に係る基板加熱装置1の動作の一例を説明するための図である。図5は、図4に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置1の動作説明図である。図6は、図5に続く、第一実施形態に係る基板加熱装置1の動作説明図である。
便宜上、図4図6においては、基板加熱装置1の構成要素のうち、減圧部3、ガス供給部4、温度検知部9、回収部11、揺動部12及び制御部15の図示を省略する。
【0072】
本実施形態に係る基板加熱方法は、減圧工程、第一加熱工程及び第二加熱工程を含む。
減圧工程では、ポリイミド形成用液が塗布された基板10の収容空間の雰囲気を減圧する。
図4に示すように、減圧工程では、基板10が搬送ローラ8aに配置されている。また、減圧工程では、加熱部5は、底板22寄りに位置している。減圧工程において、加熱部5及び基板10は、加熱部5の熱が基板10に伝わらない程度に離反している。減圧工程において、加熱部5の電源はオンになっている。例えば、加熱部5の温度は、250℃程度になっている。一方、減圧工程において、赤外線ヒータ6の電源はオフになっている。
【0073】
減圧工程では、基板10の収容空間の雰囲気を大気圧から500Pa以下まで減圧する。例えば、減圧工程では、チャンバ内圧力を、大気圧から20Paまで徐々に下降させる。
【0074】
減圧工程では、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を可及的に低くする。例えば、減圧工程では、チャンバ2内の真空度を20Pa以下とする。これにより、チャンバ2内の酸素濃度を100ppm以下とすることができる。
【0075】
減圧工程の後、第一加熱工程では、基板10を第一の温度で加熱する。
図5に示すように、第一加熱工程では、加熱部5を上方に移動させて、基板10を加熱部5の上面に載置させる。これにより、加熱部5は基板10の第二面10bに当接するため、加熱部5の熱が基板10に直接伝わるようになる。例えば、第一加熱工程において、加熱部5の温度は、250℃を維持している。そのため、基板温度は、250℃まで上昇可能とされている。一方、第一加熱工程において、赤外線ヒータ6の電源はオフのままとなっている。
【0076】
なお、第一加熱工程において、加熱部5は、通過部8h(図1参照)内に位置している。便宜上、図5において、移動前(減圧工程時の位置)の加熱部5を二点鎖線、移動後(第一加熱工程時の位置)の加熱部5を実線で示す。
【0077】
第一加熱工程では、減圧工程の雰囲気を保った状態で、基板温度が150℃から300℃の範囲で、基板10に塗布されたポリイミド形成用液が揮発又はイミド化するまで基板10を加熱する。例えば、第一加熱工程では、基板10を加熱する時間を10min以下とする。具体的には、第一加熱工程では、基板10を加熱する時間を3minとする。例えば、第一加熱工程では、基板温度を25℃から250℃まで緩やかに上昇させる。
【0078】
第一加熱工程の後、第二加熱工程では、第一の温度よりも高い第二の温度で基板10を加熱する。第二加熱工程では、第一加熱工程で用いる加熱部5とは別個独立して設けられている赤外線ヒータ6を用いて基板10を加熱する。なお、第二加熱工程は、特許請求の範囲に記載の加熱工程に相当する。
【0079】
図6に示すように、第二加熱工程では、加熱部5を第一加熱工程時の位置よりも更に上方に移動させて、基板10を赤外線ヒータ6に近接させる。例えば、第二加熱工程において、加熱部5の温度は、250℃を維持している。また、第二加熱工程において、赤外線ヒータ6の電源はオンとされる。例えば、赤外線ヒータ6は、450℃で基板10を加熱可能である。そのため、基板温度は、450℃まで上昇可能とされている。第二加熱工程では、第一加熱工程時よりも基板10が赤外線ヒータ6に近づくため、赤外線ヒータ6の熱が基板10に十分に伝わるようになる。
【0080】
なお、第二工程において、加熱部5は、搬送ローラ8a(図1に示す通過部8h)の上方かつ赤外線ヒータ6の下方に位置している。便宜上、図6において、移動前(第一加熱工程時の位置)の加熱部5を二点鎖線、移動後(第二加熱工程時の位置)の加熱部5を実線で示す。
【0081】
第二加熱工程では、減圧工程の雰囲気を保った状態で、基板温度が第一加熱工程の温度から600℃以下になるまで基板10を加熱する。例えば、第二加熱工程では、基板温度を250℃から450℃まで急峻に上昇させる。また、第二加熱工程では、チャンバ内圧力を20Pa以下に維持する。
【0082】
第二加熱工程は、基板10を冷却させる冷却工程を含む。例えば、冷却工程では、減圧工程の雰囲気、もしくは低酸素雰囲気を保った状態で、基板温度が第二加熱工程の温度から基板10を搬送可能な温度になるまで基板10を冷却する。冷却工程では、赤外線ヒータ6の電源をオフにする。
【0083】
以上の工程を経ることにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の揮発又はイミド化を行うとともに、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化時の分子鎖の再配列を行い、ポリイミド膜を形成することができる。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、赤外線ヒータ6がベンド部31a〜31hの少なくとも一部を外方から覆うように配置されたカバー部32,33を含むことで、ベンド部31a〜31hが露出することを回避することができるため、ベンド部31a〜31hが他の部分よりも降温することを抑制することができる。すなわち、ベンド部31a〜31hの少なくとも一部をカバー部32,33によって外方から加熱することができるため、ベンド部31a〜31hと他の部分とで温度差が生じることを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータ6の温度分布のバランスを向上することができる。
【0085】
また、カバー部32,33が複数のベンド部31a〜31hを外方から覆うように第二方向V2に直線状に延びていることで、複数のベンド部31a〜31hが露出することを一括して回避することができるため、複数のベンド部31a〜31hが他の部分よりも降温することを一括して抑制することができる。すなわち、複数のベンド部31a〜31hをカバー部32,33によって外方から一括して加熱することができるため、複数のベンド部31a〜31hと他の部分とで温度差が生じることを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータ6の温度分布のバランスを効率よく向上することができる。加えて、赤外線ヒータ6が第一方向V1に長手を有するとともに第一方向V1と交差する第二方向V2に並んで配置された複数のストレート部30a〜30iを更に含むことで、複数のストレート部30a〜30iが互いに隣り合うことにより互いの発熱温度を高め合うことができるため、赤外線ヒータ6の温度分布のバランスを高い温度で向上することができる。
【0086】
ところで、第一導入部34と第二導入部35とが近すぎると、その部分の温度が他の部分の温度よりも降温する傾向がある。しかし、本実施形態によれば、第一導入部34及び第二導入部35の双方がカバー部32,33の端部に設けられていることで、第一導入部34と第二導入部35とがある程度離反するため、赤外線ヒータ6が局所的に降温することを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータ6の温度分布のバランスを向上することができる。加えて、本実施形態によれば、第一導入部34と第二導入部35との距離(赤外線ヒータ6の外形の一辺の長さ)を225mm程度としたことによって、チャンバ2の天板21が熱膨張又は熱収縮したとしても、前記膨張又は収縮を許容することができる。
【0087】
また、赤外線ヒータ6の外形が平面視で矩形状をなし、第一導入部34が赤外線ヒータ6の一辺の一方側に配置され、第二導入部35が前記一辺の他方側に配置されていることで、以下の効果を奏する。赤外線ヒータ6のうち第二導入部35からベンド部31hに至るまでの部分が2箇所で折り曲げられたU字管状(すなわち、赤外線ヒータ6の前記一辺を除く三辺に沿う形状)となるため、直管状及びL字管状の場合と比較して、赤外線ヒータ6の柔軟性を高くすることができる。したがって、赤外線ヒータ6の前記一辺が熱膨張又は熱収縮したとしても、赤外線ヒータ6の柔軟性によって前記一辺の膨張又は収縮を許容することができる。
【0088】
また、第一導入部34及び第二導入部35の双方が平面視で赤外線ヒータ6の外形内に入り込んでいることで、赤外線ヒータ6を配置する際に、第一導入部34及び第二導入部35が邪魔になることを回避することができるため、レイアウトの自由度を高めることができる。例えば、複数の赤外線ヒータ6を一面に敷き詰める際に、隣り合う2つの赤外線ヒータ6が第一導入部34及び第二導入部35において干渉することを回避することができるため、複数の赤外線ヒータ6を整然と敷き詰めることができる。
【0089】
また、基板10を挟んで赤外線ヒータ6とは反対側に配置されるとともに基板10を加熱可能な加熱部5を更に含むことで、加熱部5による加熱と赤外線ヒータ6による加熱とが相まって、基板10をより一層効果的に加熱することができる。
【0090】
また、基板10、加熱部5及び赤外線ヒータ6を収容可能なチャンバ2を更に含むことで、チャンバ2内で基板10の加熱温度を管理することができるため、基板10を効果的に加熱することができる。
【0091】
また、基板10、加熱部5及び赤外線ヒータ6が共通のチャンバ2に収容されていることで、共通のチャンバ2内で基板10への加熱部5による加熱処理と赤外線ヒータ6による加熱処理とを一括して行うことができる。すなわち、加熱部5及び赤外線ヒータ6が互いに異なるチャンバ2に収容された場合のように、異なる2つのチャンバ2間で基板10を搬送させるための時間を要しない。したがって、基板10の加熱処理をより一層効率良く行うことができる。また、異なる2つのチャンバ2を備えた場合と比較して、装置全体を小型化することができる。
【0092】
また、ポリイミド形成用液が基板10の第一面10aにのみ塗布されており、加熱部5が基板10の第一面10aとは反対側の第二面10bの側に配置されていることで、加熱部5から発せられた熱が、基板10の第二面10bの側から第一面10aの側に向けて伝わるようになるため、基板10を効果的に加熱することができる。また、加熱部5で基板10を加熱している間に、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の揮発又はイミド化(例えば、成膜中のガス抜き)を効率良く行うことができる。
【0093】
また、加熱部5及び赤外線ヒータ6の双方が基板10を段階的に加熱可能であることで、加熱部5及び赤外線ヒータ6が基板10を一定の温度でのみ加熱可能な場合と比較して、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の成膜条件に適合するように、基板10を効率良く加熱することができる。したがって、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を段階的に乾燥させ、良好に硬化させることができる。
【0094】
また、加熱部5及び赤外線ヒータ6と基板10との相対位置を調整可能な位置調整部7を更に含むことで、前記位置調整部7を備えない場合と比較して、基板10の加熱温度を調整し易くなる。例えば、基板10の加熱温度を高くする場合には加熱部5及び赤外線ヒータ6と基板10とを近接させ、基板10の加熱温度を低くする場合には加熱部5及び赤外線ヒータ6と基板10とを離反させることができる。したがって、基板10を段階的に加熱し易くなる。
【0095】
また、位置調整部7が基板10を加熱部5と赤外線ヒータ6との間で移動可能とする移動部7aを含むことで、基板10を加熱部5と赤外線ヒータ6との間で移動させることによって、加熱部5及び赤外線ヒータ6の少なくとも一方を定位置に配置した状態で、基板10の加熱温度を調整することができる。したがって、加熱部5及び赤外線ヒータ6の少なくとも一方を移動可能とする装置を別途設ける必要がないため、簡素な構成で基板10の加熱温度を調整することができる。
【0096】
また、加熱部5と赤外線ヒータ6との間には、基板10を搬送可能とする搬送部8が設けられており、搬送部8には、移動部7aを通過可能とする通過部8hが形成されていることで、以下の効果を奏する。基板10を加熱部5と赤外線ヒータ6との間で移動させる場合に、通過部8hを通過させることができるため、搬送部8を迂回して基板10を移動させる必要がない。したがって、搬送部8を迂回して基板10を移動させるための装置を別途設ける必要がないため、簡素な構成で基板10の移動をスムーズに行うことができる。
【0097】
また、加熱部5がホットプレートであることで、基板10の加熱温度を基板10の面内で均一化させることができるため、膜特性を向上させることができる。例えば、ホットプレートの一面と基板10の第二面10bとを当接させた状態で基板10を加熱することによって、基板10の加熱温度の面内均一性を高めることができる。
【0098】
また、基板10の温度を検知可能な温度検知部9を更に含むことで、基板10の温度をリアルタイムで把握することができる。例えば、温度検知部9の検知結果に基づいて基板10を加熱することによって、基板10の温度が目標値からずれることを抑制することができる。
【0099】
また、基板10に塗布されたポリイミド形成用液から揮発した溶媒を回収可能な回収部11を更に含むことで、ポリイミド形成用液から揮発した溶媒が工場側へ排出されることを防ぐことができる。また、回収部11を減圧部3(真空ポンプ13)のラインに接続した場合には、ポリイミド形成用液から揮発した溶媒が再び液化して真空ポンプ13内に逆流することを防ぐことができる。さらに、ポリイミド形成用液から揮発した溶媒を、洗浄液として再利用することができる。例えば、洗浄液は、ノズル先端の洗浄、ノズルに付着した液をかき取る部材に付着した液の洗浄等に用いることができる。
【0100】
また、赤外線ヒータ6が基板10の第一面10aの側に配置されていることで、赤外線ヒータ6から発せられた熱が、基板10の第一面10aの側から第二面10bの側に向けて伝わるようになるため、加熱部5による加熱と赤外線ヒータ6による加熱とが相まって、基板10をより一層効果的に加熱することができる。
【0101】
また、赤外線ヒータ6の赤外線加熱によって、基板10を第二の温度まで短時間で昇温することができる。また、赤外線ヒータ6と基板10とを離反させた状態で基板10を加熱すること(いわゆる非接触加熱)ができるため、基板10を清浄に保つ(いわゆるクリーン加熱を行う)ことができる。
【0102】
また、赤外線ヒータのピーク波長範囲が1.5μm以上かつ4μm以下の範囲であることで、1.5μm以上かつ4μm以下の範囲の波長は、ガラス及び水等の吸収波長と一致するため、基板10及び基板10に塗布されたポリイミド形成用液をより一層効果的に加熱することができる。
【0103】
また、基板10を揺動可能な揺動部12を更に含むことで、基板10を揺動させつつ加熱することができるため、基板10の温度均一性を高めることができる。
【0104】
(第一変形例)
次に、第一実施形態の第一変形例について、図7を用いて説明する。
図7は、第一実施形態に係る赤外線ヒータの第一変形例を示す平面図である。
第一変形例では、第一実施形態に対して、赤外線ヒータの形状が特に異なる。図7において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0105】
<赤外線ヒータ>
図7に示すように、本変形例に係る赤外線ヒータ6Aの外形の一辺の長さ及び全長は、第一実施形態に係る赤外線ヒータ6(図2参照)におけるものよりも短い。例えば、赤外線ヒータ6Aの外形の一辺の長さは、210mm程度とされている。例えば、赤外線ヒータ6Aの全長は、1890mm程度とされている。
【0106】
ストレート部30a〜30gは、第二方向V2に並んで複数(例えば、本変形例では7つ)配置されている。本変形例に係る隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1は、第一実施形態に係る隣り合う2つのストレート部30a〜30iの間の間隔S1よりも大きい。例えば、本変形例に係る隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1は、30mm程度とされている。
【0107】
カバー部32,33は、複数(例えば、本変形例では6つ)のベンド部31a〜31fを外方から覆うように第二方向V2に直線状に延びている。具体的に、カバー部32,33は、3つのベンド部31b,31d,31fを第一方向V1の一方側から覆う第一カバー部32と、3つのベンド部31a,31c,31eを第一方向V1の他方側から覆う第二カバー部33と、を備えている。
【0108】
第一カバー部32とベンド部31b,31d,31fとの間の間隔S2は、隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1と実質的に同じ大きさとされている。例えば、第一カバー部32とベンド部31b,31d,31fとの間の間隔は、30mm程度とされている。
【0109】
第二カバー部33とベンド部31a,31c,31eとの間の間隔S3は、隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1と実質的に同じ大きさとされている。例えば、第二カバー部33におけるカバー本体33aとベンド部31a,31c,31eとの間の間隔は、30mm程度とされている。なお、第二カバー部33における延在部33bとストレート部30aとの間の間隔も、30mm程度とされている。
【0110】
以上のように、本変形例によれば、赤外線ヒータ6Aの外形の一辺の長さ及び全長は、第一実施形態に係る赤外線ヒータ6におけるものよりも短いことで、赤外線ヒータ6Aの軽量化及びコンパクト化を図ることができる。加えて、本変形例の赤外線ヒータ6Aは、低温用(例えば、350℃〜400℃の加熱温度)の赤外線ヒータとしては問題なく使用可能であるため、低コスト化を図ることができる。
【0111】
(第二変形例)
次に、第一実施形態の第二変形例について、図8を用いて説明する。
図8は、第一実施形態に係る赤外線ヒータの第二変形例を示す平面図である。
第二変形例では、第一変形例に対して、赤外線ヒータの形状が特に異なる。図8において、第一変形例と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0112】
<赤外線ヒータ>
図8に示すように、本変形例に係る赤外線ヒータ6Bの全長は、第一変形例に係る赤外線ヒータ6A(図7参照)におけるものよりも長い。例えば、赤外線ヒータ6Bの全長は、2070mm程度とされている。なお、赤外線ヒータ6Bの外形の一辺の長さは、210mm程度とされている。
【0113】
第一カバー部32とベンド部31b,31d,31fとの間の間隔は、隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1よりも小さい。例えば、第一カバー部32とベンド部31b,31d,31fとの間の間隔は、15mm程度とされている。
【0114】
第二カバー部33とベンド部31a,31c,31eとの間の間隔は、隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1よりも小さい。例えば、第二カバー部33におけるカバー本体33aとベンド部31a,31c,31eとの間の間隔は、15mm程度とされている。なお、第二カバー部33における延在部33bとストレート部30aとの間の間隔は、30mm程度とされている。
【0115】
以上のように、本変形例によれば、カバー部32,33とベンド部31a〜31fとの間の間隔S2,S3が隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1よりも小さいことで、以下の効果を奏する。カバー部32,33とベンド部31a〜31fとの間の間隔S2,S3を隣り合う2つのストレート部30a〜30gの間の間隔S1以上とした場合と比較して、ベンド部31a〜31fが露出することをより確実に回避することができるため、ベンド部31a〜31fが他の部分よりも降温することをより確実に抑制することができる。すなわち、ベンド部31a〜31fの少なくとも一部をカバー部32,33によって外方からより確実に加熱することができるため、ベンド部31a〜31fと他の部分とで温度差が生じることをより確実に抑制することができる。したがって、赤外線ヒータ6Bの温度分布のバランスをより確実に向上することができる。
【0116】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図9図12を用いて説明する。
図9は、第二実施形態に係る赤外線ヒータ206の平面図である。
第二実施形態では、第一実施形態に対して、赤外線ヒータの形状が特に異なる。図9において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0117】
<赤外線ヒータ>
図9に示すように、赤外線ヒータ206の外形は、平面視で矩形状をなしている。赤外線ヒータ206は、平面視で点対称形状(2回対称の形状)をなしている。
【0118】
第一カバー部32は、第二方向V2の一方側のストレート部30aの一端部に連結されている。第一カバー部32は、第二方向V2に長手を有する直管状をなしている。
第二カバー部233は、第二方向V2の他方側のストレート部30iの一端部に連結されている。第二カバー部233は、第二方向V2に長手を有する直管状をなしている。
【0119】
第一導入部34は、赤外線ヒータ206の一角部に配置されている。具体的に、第一導入部34は、第一カバー部32の一端に設けられている。
第二導入部35は、前記一角部の対角部に配置されている。具体的に、第二導入部35は、第二カバー部233の一端に設けられている。すなわち、第二導入部35は、第一方向V1及び第二方向V2において第一導入部34とは反対側に配置されている。
【0120】
図10は、第二実施形態に係る基板加熱装置201の動作の一例を説明するための図である。図11は、図10に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置201の動作説明図である。図12は、図11に続く、第二実施形態に係る基板加熱装置201の動作説明図である。
便宜上、図10図12においては、基板加熱装置201の構成要素のうち、減圧部3、ガス供給部4、搬送部8、温度検知部9、回収部11、揺動部12及び制御部15の図示を省略する。
【0121】
第二実施形態では、第一実施形態に対して、位置調整部207の構成が特に異なる。図10図12において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0122】
<位置調整部>
図10に示すように、位置調整部207は、収容部270、移動部275及び駆動部279を備えている。
収容部270は、チャンバ2の下側に配置されている。収容部270は、移動部275及び駆動部279を収容可能である。収容部270は、直方体の箱状に形成される。具体的に、収容部270は、矩形板状の第一支持板271と、第一支持板271と対向する矩形板状の第二支持板272と、第一支持板271及び第二支持板272の外周縁に繋がるとともに移動部275及び駆動部279の周囲を囲むように覆う囲い板273とによって形成されている。なお、囲い板273は設けられていなくてもよい。すなわち、位置調整部207は、少なくとも第一支持板271、移動部275及び駆動部279を備えていればよい。例えば、装置全体を覆う外装カバーが設けられていてもよい。
【0123】
第一支持板271の外周縁は、チャンバ2の周壁23の下端に接続されている。第一支持板271は、チャンバ2の底板としても機能する。第一支持板271には、加熱部205が配置されている。具体的に、加熱部205は、チャンバ2内で第一支持板271に支持されている。
【0124】
囲い板273と周壁23とは、上下に連続して連なっている。チャンバ2は、基板10を密閉空間で収容可能に構成されている。例えば、天板21、底板としての第一支持板271、及び周壁23の各接続部を溶接等で隙間なく結合することで、チャンバ2内の気密性を向上することができる。
【0125】
移動部275は、ピン276、伸縮管277及び基台278を備える。
ピン276は、基板10の第二面10bを支持可能かつ第二面10bの法線方向(Z方向)に移動可能である。ピン276は、上下に延びる棒状の部材である。ピン276の先端(上端)は、基板10の第二面10bに当接可能かつ基板10の第二面10bから離反可能とされている。
【0126】
ピン276は、第二面10bと平行な方向(X方向及びY方向)に間隔を空けて複数設けられている。複数のピン276は、それぞれ略同じ長さに形成されている。複数のピン276の先端は、第二面10bと平行な面内(XY平面内)に配置されている。
【0127】
伸縮管277は、第一支持板271と基台278との間に設けられている。伸縮管277は、ピン276の周囲を囲むように覆うとともに、上下に延びる管状の部材である。伸縮管277は、第一支持板271と基台278との間で上下に伸縮自在とされている。例えば、伸縮管277は、真空ベローズである。
【0128】
伸縮管277は、複数のピン276と同じ数だけ複数設けられている。複数の伸縮管277の先端(上端)は、第一支持板271に固定されている。具体的に、第一支持板271には、第一支持板271を厚み方向に開口する複数の挿通孔271hが形成されている。各挿通孔271hの内径は、各伸縮管277の外径と略同じ大きさとされている。例えば、各伸縮管277の先端は、第一支持板271の各挿通孔271hに嵌合固定されている。
【0129】
基台278は、第一支持板271と対向する板状の部材である。基台278の上面は、基板10の第二面10bに沿う平坦面をなしている。基台278の上面には、複数のピン276の基端(下端)及び複数の伸縮管277の基端(下端)が固定されている。
【0130】
複数のピン276の先端は、加熱部205を挿通可能とされている。加熱部205には、第一支持板271の各挿通孔271h(各伸縮管277の内部空間)に第二面10bの法線方向で重なる位置で、加熱部205を第二面10bの法線方向(ホットプレートの厚み方向)に開口する複数の挿通孔205hが形成されている。
【0131】
複数のピン276の先端は、各伸縮管277の内部空間及び加熱部205の各挿通孔205hを介して、基板10の第二面10bに当接可能とされている。そのため、複数のピン276の先端によって、基板10がXY平面に平行に支持されるようになっている。複数のピン276は、チャンバ2内に収容される基板10を支持しつつチャンバ2内のZ方向に移動するようになっている(図10図12参照)。
【0132】
駆動部279は、チャンバ2の外部である収容部270内に配置されている。そのため、仮に駆動部279の駆動に伴いパーティクルが発生したとしても、チャンバ2内を密閉空間とすることによって、チャンバ2内へのパーティクルの侵入を回避することができる。
【0133】
<基板加熱方法>
次に、本実施形態に係る基板加熱方法を説明する。本実施形態では、上記の基板加熱装置201を用いて基板10を加熱する。基板加熱装置201の各部で行われる動作は、制御部15によって制御される。なお、第一実施形態と同様の工程については、その詳細な説明は省略する。
【0134】
本実施形態に係る基板加熱方法は、減圧工程、第一加熱工程及び第二加熱工程を含む。
減圧工程では、ポリイミド形成用液が塗布された基板10を減圧する。
図10に示すように、減圧工程では、基板10が加熱部205から離反している。具体的に、各伸縮管277の内部空間及び加熱部205の各挿通孔205hを介して複数のピン276の先端を基板10の第二面10bに当接させるとともに、基板10を上昇させることによって、基板10を加熱部205から離反させている。減圧工程において、加熱部205及び基板10は、加熱部205の熱が基板10に伝わらない程度に離反している。減圧工程において、加熱部205の電源はオンになっている。例えば、加熱部205の温度は、250℃程度になっている。一方、減圧工程において、赤外線ヒータ206の電源はオフになっている。
【0135】
減圧工程の後、第一加熱工程では、基板10を加熱部205の温度で加熱する。
図11に示すように、第一加熱工程では、複数のピン276の先端を基板10の第二面10bから離反させることによって、基板10を加熱部205に当接させる。すなわち、基板10を加熱部205の上面に載置させる。これにより、加熱部205は基板10の第二面10bに当接するため、加熱部5の熱が基板10に直接伝わるようになる。例えば、第一加熱工程において、加熱部205の温度は、250℃を維持している。そのため、基板温度は、250℃まで上昇可能とされている。一方、第一加熱工程において、赤外線ヒータ206の電源はオフのままとなっている。
【0136】
第一加熱工程の後、第二加熱工程では、第二の温度で基板10を加熱する。
図12に示すように、第二加熱工程では、基板10を第一加熱工程時の位置よりも更に上昇させることによって、基板10を赤外線ヒータ206に近接させる。例えば、第二加熱工程において、加熱部205の温度は、250℃を維持している。また、第二加熱工程において、赤外線ヒータ206の電源はオンとされる。例えば、赤外線ヒータ206は、450℃で基板10を加熱可能である。そのため、基板温度は、450℃まで上昇可能とされている。第二加熱工程では、第一加熱工程時よりも基板10が赤外線ヒータ206に近づくため、赤外線ヒータ206の熱が基板10に十分に伝わるようになる。
【0137】
その後、第一実施形態と同様の工程を経ることにより、基板10に塗布されたポリイミド形成用液の揮発又はイミド化を行うとともに、基板10に塗布されたポリイミド形成用液のイミド化時の分子鎖の再配列を行い、ポリイミド膜を形成することができる。
【0138】
以上のように、本実施形態によれば、赤外線ヒータ206の外形が平面視で矩形状をなし、第一導入部34が赤外線ヒータ206の一角部に配置され、第二導入部35が前記一角部の対角部に配置されていることで、第一導入部34及び第二導入部35の配置位置が平面視で赤外線ヒータ206の中心を基準に点対称となるとともに、第一導入部34及び第二導入部35が遠く離反する。これにより、第一導入部34及び第二導入部35が他の部分よりも降温した場合であっても、互いの降温温度を低め合うことはなく、赤外線ヒータ206が局所的に過度に降温することを回避することができるため、赤外線ヒータ206の温度分布のバランスを可及的に向上することができる。
【0139】
また、赤外線ヒータ206が平面視で点対称形状をなしていることで、赤外線ヒータ206が平面視で非対称形状をなした場合と比較して、赤外線ヒータ206の温度分布のバランスをより確実に向上することができる。
【0140】
また、移動部275が基板10の第二面10bを支持可能かつ第二面10bの法線方向に移動可能な複数のピン276を含み、複数のピン276の先端が第二面10bと平行な面内に配置されていることで、以下の効果を奏する。基板10を安定して支持した状態で、基板10を加熱することができるため、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を安定して成膜させることができる。
【0141】
また、加熱部205には、加熱部205を第二面10bの法線方向に開口する複数の挿通孔205hが形成されており、各ピン276の先端が各挿通孔205hを介して第二面10bに当接可能とされていることで、以下の効果を奏する。複数のピン276と加熱部205との間での基板10の受け渡しを短時間で行うことができるため、基板10の加熱温度を効率良く調整することができる。
【0142】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について、図13を用いて説明する。
図13は、第三実施形態に係る赤外線ヒータ306の平面図である。
第三実施形態では、第一実施形態に対して、赤外線ヒータの形状が特に異なる。図13において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0143】
<赤外線ヒータ>
図13に示すように、赤外線ヒータ306の外形は、平面視で矩形状をなしている。
第一カバー部32は、第二方向V2の一方側のストレート部30aの一端部に連結されている。第一カバー部32は、第二方向V2に長手を有する直管状をなしている。
第二カバー部333は、第二方向V2の他方側のストレート部30iの一端部に連結されている。第二カバー部333は、U字管状をなしている。すなわち、第二カバー部333は、第二方向V2に長手を有するカバー本体333aと、カバー本体333aの一端部に連結されるとともに第一方向V1に長手を有する第一延在部333bと、第一延在部333bの一端部に連結されるとともに第一カバー部32を外方から覆うように第二方向V2に長手を有する第二延在部333cと、を備えている。なお、第二カバー部333におけるカバー本体333aとベンド部31a,31c,31e,31gとの間の間隔S3は、第二カバー部333における第二延在部333cと第一カバー部32との間の間隔S4と実質的に同じ大きさとされている。
【0144】
第一導入部34及び第二導入部35は、赤外線ヒータ306の一角部に隣接して配置されている。第一導入部34は、第一方向V1において第二導入部35よりも内方に配置されている。すなわち、第一導入部34は、ベンド部31hと第二導入部35との間に配置されている。
【0145】
以上のように、本実施形態によれば、赤外線ヒータ306の外形が平面視で矩形状をなし、第一導入部34及び第二導入部35が赤外線ヒータ306の一角部に隣接して配置されていることで、第一導入部34と第二導入部35との間の距離が最小になるため、赤外線ヒータ306が熱膨張又は熱収縮することを可及的に抑制することができる。
【0146】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態について、図14を用いて説明する。
図14は、第四実施形態に係るヒータユニット560の平面図である。
第四実施形態では、第一実施形態に対して、赤外線ヒータの配置態様が特に異なる。図14において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0147】
<ヒータユニット>
図14に示すように、本実施形態に係る基板加熱装置は、複数(例えば、本実施形態では11台)の赤外線ヒータ6を敷き詰めて構成したヒータユニット560を備えている。
ヒータユニット560は、第一赤外線ヒータ群561、第二赤外線ヒータ群562及び第三赤外線ヒータ群563を備えている。
【0148】
第一赤外線ヒータ群561は、複数(例えば、本実施形態では4台)の第一赤外線ヒータ561a〜561dを備えている。複数の第一赤外線ヒータ561a〜561dは、第一方向V1(一方向)に敷き詰めて配置されている。なお、第一赤外線ヒータ561a,561b,561c,561dは、第一方向V1の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0149】
第二赤外線ヒータ群562は、複数(例えば、本実施形態では3台)の第二赤外線ヒータ562a〜562cを備えている。複数の第二赤外線ヒータ562a〜562cは、第一方向V1と平行な方向に敷き詰めて配置されている。なお、第二赤外線ヒータ562a,562b,562cは、第一方向V1と平行な方向の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0150】
第三赤外線ヒータ群563は、複数(例えば、本実施形態では4台)の第三赤外線ヒータ563a〜563dを備えている。複数の第三赤外線ヒータ563a〜563dは、第一方向V1と平行な方向に敷き詰めて配置されている。なお、第三赤外線ヒータ563a,563b,563c,563dは、第一方向V1と平行な方向の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0151】
第二赤外線ヒータ562a〜562cは、隣り合う2つの第一赤外線ヒータ561a〜561dの境界部に隣接するように第二方向V2(一方向と交差する方向)で第一赤外線ヒータ561a〜561dと敷き詰めて配置されている。さらに、第二赤外線ヒータ562a〜562cは、隣り合う2つの第三赤外線ヒータ563a〜563dの境界部に隣接するように第二方向V2で第三赤外線ヒータ563a〜563dと敷き詰めて配置されている。すなわち、第二赤外線ヒータ562a〜562cは、第二方向V2において隣り合う2つの第一赤外線ヒータ561a〜561dの境界部と隣り合う2つの第三赤外線ヒータ563a〜563dの境界部とに挟まれて配置されている。
【0152】
第二赤外線ヒータ562a〜562cは、平面視で第一赤外線ヒータ561a〜561d及び第三赤外線ヒータ563a〜563dと同じ形状を有している。なお、第一赤外線ヒータ561a〜561d、第二赤外線ヒータ562a〜562c及び第三赤外線ヒータ563a〜563dは、第一実施形態に係る赤外線ヒータ6に相当する。
【0153】
以上のように、本実施形態によれば、複数の赤外線ヒータ6を一面に敷き詰めて構成したヒータユニット560を備えていることで、以下の効果を奏する。上記赤外線ヒータ6を備えているため、ヒータユニット560の温度分布のバランスを向上することができる。加えて、複数の赤外線ヒータ6を個別に制御可能とした場合には、一部の赤外線ヒータ6の出力を他の赤外線ヒータ6の出力よりも大きくすることができるため、基板10に対して温度分布のよい加熱を行うことができる。例えば、基板10の四隅の温度が低い場合には、その部分にあたる位置に配置された赤外線ヒータ6の出力を、他の赤外線ヒータ6の出力よりも大きくすることによって、その部分だけ温度を高くして基板10全体の温度分布を向上させることができる。
【0154】
また、ヒータユニット560が、第一方向V1に敷き詰めて配置された複数の第一赤外線ヒータ561a〜561dと、第一方向V1と平行な方向に敷き詰めて配置された複数の第二赤外線ヒータ562a〜562cと、を含み、第二赤外線ヒータ562a〜562cが隣り合う2つの第一赤外線ヒータ561a〜561dの境界部に隣接するように第一方向V1と交差する第二方向V2で第一赤外線ヒータ561a〜561dと敷き詰めて配置されていることで、以下の効果を奏する。第一赤外線ヒータ561a〜561dの温度分布と第二赤外線ヒータ562a〜562cの温度分布とを互いに補完することができるため、ヒータユニット560の温度分布のバランスをより一層向上することができる。
さらに、第二赤外線ヒータ562a〜562cが隣り合う2つの第三赤外線ヒータ563a〜563dの境界部に隣接するように第二方向V2で第三赤外線ヒータ563a〜563dと敷き詰めて配置されていることで、第三赤外線ヒータ563a〜563dの温度分布と第二赤外線ヒータ562a〜562cの温度分布とを互いに補完することができるため、ヒータユニット560の温度分布のバランスをより一層向上することができる。
【0155】
また、第二赤外線ヒータ562a〜562cが平面視で第一赤外線ヒータ561a〜561d及び第三赤外線ヒータ563a〜563dと同じ形状を有していることで、以下の効果を奏する。第二赤外線ヒータ562a〜562cが平面視で第一赤外線ヒータ561a〜561d及び第三赤外線ヒータ563a〜563dと異なる形状を有した場合と比較して、ヒータユニット560の温度分布のバランスをより確実に向上することができる。加えて、基板サイズを変えたとしても、赤外線ヒータ6の個数を変えて赤外線ヒータ6を等間隔に配置することによって、基板10に対して温度分布のよい加熱を行うことができる。ところで、赤外線ヒータが単純なストレート管の場合は、基板サイズが大きくなるとストレート管の長さを伸ばす必要があるため、赤外線ヒータの熱膨張を許容することが困難になる可能性がある。しかし、本実施形態によれば、基板サイズが大きくなっても赤外線ヒータ6のサイズは変わらないため、赤外線ヒータ6の熱膨張を容易に許容することができる。
【0156】
(第五実施形態)
次に、本発明の第五実施形態について、図15を用いて説明する。
図15は、第五実施形態に係るヒータユニット660の平面図である。
第五実施形態では、第四実施形態に対して、赤外線ヒータの配置態様が特に異なる。図15において、第四実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0157】
<ヒータユニット>
図15に示すように、本実施形態に係るヒータユニット660は、第一赤外線ヒータ群561、第二赤外線ヒータ群662及び第三赤外線ヒータ群563を備えている。
【0158】
第二赤外線ヒータ662a〜662cは、平面視で第一赤外線ヒータ561a〜561d又は第三赤外線ヒータ563a〜563dを90度回転させた形状を有している。具体的に、第二赤外線ヒータ662a〜662cは、平面視で、第一赤外線ヒータ561a〜561d又は第三赤外線ヒータ563a〜563dを、その中心を起点として、右回り(時計回り)に90度回転させた形状を有している。なお、第一赤外線ヒータ561a〜561d、第二赤外線ヒータ662a〜662c及び第三赤外線ヒータ563a〜563dは、第一実施形態に係る赤外線ヒータ6に相当する。
【0159】
以上のように、本実施形態によれば、第二赤外線ヒータ662a〜662cが平面視で第一赤外線ヒータ561a〜561d又は第三赤外線ヒータ563a〜563dを90度回転させた形状を有していることで、赤外線ヒータ6の形状に起因する温度分布を第一赤外線ヒータ561a〜561dと第二赤外線ヒータ662a〜662cと第三赤外線ヒータ563a〜563dとで互いに補完することができるため、ヒータユニット660の温度分布のバランスをより一層向上することができる。
【0160】
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
また、上記実施形態においては、基板、加熱部及び赤外線ヒータが共通のチャンバに収容されているが、これに限らない。例えば、加熱部及び赤外線ヒータが互いに異なるチャンバに収容されていてもよい。
【0161】
また、上記実施形態においては、加熱部及び赤外線ヒータの双方が基板を段階的に加熱可能であるが、これに限らない。例えば、加熱部及び赤外線ヒータの少なくとも一方が、基板を段階的に加熱可能であってもよい。また、加熱部及び赤外線ヒータの双方が、基板を一定の温度でのみ加熱可能であってもよい。
【0162】
また、上記実施形態においては、チャンバの内壁が赤外線を反射可能とされていてもよい。例えば、チャンバの内壁が、アルミニウム等の金属による鏡面(反射面)とされていてもよい。これにより、チャンバの内壁が赤外線を吸収可能とされている場合と比較して、チャンバ内の温度均一性を高めることができる。
【0163】
また、上記実施形態においては、搬送部として複数の搬送ローラを用いたが、これに限らない。例えば、搬送部としてベルトコンベアを用いてもよいし、リニアモータアクチュエータを用いてもよい。例えば、ベルトコンベア及びリニアモータアクチュエータは、X方向に継ぎ足し可能とされてもよい。これにより、X方向における基板の搬送距離を調整することができる。
【0164】
また、搬送部として図3に示す構成(搬送部に通過部が形成されている構成)以外の構成を採用する場合には、加熱部の平面視サイズは、基板の平面視サイズと同等以上であってもよい。これにより、加熱部の平面視サイズが基板の平面視サイズよりも小さい場合と比較して、基板の加熱温度の面内均一性をより一層高めることができる。
【0165】
また、上記実施形態においては、減圧工程及び第一加熱工程において、加熱部の電源はオンになっており、赤外線ヒータの電源はオフになっているが、これに限らない。例えば、減圧工程及び第一加熱工程において、加熱部及び赤外線ヒータの電源がオンになっていてもよい。
【0166】
また、上記実施形態においては、赤外線ヒータの外形は、平面視で矩形状をなし、第一導入部及び第二導入部は、赤外線ヒータの一辺の中央部で対向して配置されていてもよい。この構成によれば、第一導入部と第二導入部とをある程度離反するため、赤外線ヒータが局所的に降温することを抑制することができる。したがって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができる。
【0167】
なお、上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【実施例】
【0168】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0169】
本発明者は、赤外線ヒータがベンド部を外方から覆うように配置されたカバー部を含むことによって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができることを以下の評価により確認した。
【0170】
(比較例)
比較例の赤外線ヒータは、ストレート部及びベンド部のみを備えたものを用いた。すなわち、比較例は、カバー部を備えていない。
【0171】
(実施例)
実施例の赤外線ヒータは、ストレート部、ベンド部及びカバー部を備えたものを用いた。すなわち、実施例の赤外線ヒータは、比較例に対して更にカバー部を備えている。なお、実施例の赤外線ヒータは、第一実施形態に係る赤外線ヒータ6(図2参照)に相当する。
【0172】
(評価条件)
以下、比較例及び実施例における赤外線ヒータよる加熱時の基板の温度分布の評価条件を説明する。
基板はガラス基板を用いた。基板は、赤外線ヒータの直下に配置した。基板温度は450℃とした。
基板において、ストレート部の長手方向中央部にあたる部分(すなわち、基板の法線方向で重なる部分)の温度(以下「ストレート部温度」という。)を測定した。また、基板において、ベンド部にあたる部分(すなわち、基板の法線方向で重なる部分)の温度(以下「ベンド部温度」という。)を測定した。そして、ストレート部温度とベンド部温度との差(以下「温度差」という。)を算出した。
【0173】
(赤外線ヒータによる加熱時の基板の温度分布の評価結果)
比較例の場合、ベンド部はストレート部よりも暗くなった。これにより、ベンド部温度はストレート部温度よりも低いことが分かった。比較例の場合、温度差は5.8℃であった。
【0174】
実施例の場合、ベンド部はストレート部よりも暗くなった。しかし、実施例のベンド部は、比較例のベンド部よりも明るくなった。これにより、実施例においてもベンド部温度はストレート部温度よりも低いものの、その低減度合いは比較例よりも小さいことが分かった。実施例の場合、温度差は2.4℃であった。
以上により、赤外線ヒータがベンド部を外方から覆うように配置されたカバー部を含むことによって、赤外線ヒータの温度分布のバランスを向上することができることが分かった。加えて、基板の温度分布を向上することができることが分かった。
【符号の説明】
【0175】
1,201…基板加熱装置 2…チャンバ 3…減圧部 5,205…加熱部 5a…載置面 6,6A,6B,206,306…赤外線ヒータ 7,207…位置調整部 7a,275…移動部 8…搬送部 8h…通過部 9…温度検知部 10…基板 10a…第一面 10b…第二面 11…回収部 30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g,30h,30i…ストレート部 31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,31h…ベンド部、32…第一カバー部(カバー部) 33,233,333…第二カバー部(カバー部) 34…第一導入部 35…第二導入部 205h…挿通孔 276…ピン 560,660…ヒータユニット 561a,561b,561c,561d…第一赤外線ヒータ 562a,562b,562c,662a,662b,662c…第二赤外線ヒータ S1…隣り合う2つのストレート部の間の間隔 S2,S3…カバー部とベンド部との間の間隔 V1…第一方向 V2…第二方向
図1
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