(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2AD変換部は、前記第1AD変換部の変換速度よりも前記アナログ信号から前記第2デジタル信号に変換して出力する速度が速い、請求項1に記載の磁気センサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る制御装置10およびセンサ装置100の構成例を示す。制御装置10は、センサ装置100の検出信号に応じた処理を実行する。センサ装置100は、入力する磁場を検出する磁気センサであってよく、これに代えて、入力する電流を検出する電流センサであってもよい。センサ装置100は、外部から入力する磁場または電流の大きさに応じた検出信号を出力する。
【0011】
制御装置10は、センサ装置100が出力する検出信号に応じて、当該制御装置10に接続される装置等を制御する。制御装置10の制御対象は、センサ装置100が出力する検出信号に応じて制御する装置であれば、モーター、アクチェータ、移動ステージ、マニピュレータ、およびエンジン等でよい。本実施形態において、制御装置10は、モーターに接続され、モーターの駆動を制御する例を説明する。
【0012】
この場合、センサ装置100は、当該モーターの駆動電流を検出して出力する。制御装置10は、検出された駆動電流に応じたフィードバック制御を実行する。また、センサ装置100は、当該モーターの駆動電流が過電流となったことに応じて、異常を通知するための過電流検出信号を出力する。制御装置10は、検出された過電流に応じた制御を実行する。即ち、制御装置10、モーター、およびセンサ装置100は、モーターを安全かつ安定に駆動する処理システムを構成する。制御装置10は、CPU20と、過電流処理回路30と、を備える。
【0013】
CPU20は、センサ装置100が出力する検出信号に応じて、モーターの駆動を制御する。CPU20は、一例として、インバータ回路等を介してモーターに接続され、インバータ回路を制御する制御信号を供給することで、モーターを駆動する。CPU20は、予め定められたアルゴリズム等に基づき、モーターの駆動を制御してよい。CPU20は、ベクトル制御、またはPID制御等を実行してモーターを駆動してよい。
【0014】
CPU20は、過電流処理回路30が過電流検出信号を受け取ったことに応じて、制御をモーター、インバータ回路の保護制御への変更、または、制御を中止または中断する。例えば、過電流処理回路30は、これらを実行させる割り込み信号をCPU20へ送ってよい。以上の処理システムにおいて、装置の破壊等を招く重大な異常が検出された場合、過電流処理回路30は、CPU20へ制御の割り込みを実行し、CPU20がモーター、インバータ回路の制御を調整し、電流が過剰に流れないような保護制御への変更を行うか、制御の中止または中断させることが望ましい。
【0015】
ここで、モーターを駆動する電流が基準値を超えた過電流となった場合、当該モーターが加熱されることがあり、動作不良、故障、および破壊等に至る場合がある。また、制御システムが、電流制御に加えて、速度制御および位置制御等といった複数のフィードバックループを構成する場合もある。このように、複雑な制御を実行する場合、モーターの駆動電流が過電流となったことに応じて、直ちに駆動電流を遮断すると、制御回路の動作が不安定となり、故障に至ってしまうこともある。
【0016】
その一方で、モーターを駆動する電流が基準値を超えても、CPU20の制御により、正常動作の範囲に戻すことができる場合もある。また、モーターを駆動する電流が一時的に基準値を超えて過電流となっても、再び元に戻って正常動作を継続することもある。また。ノイズ等により、一時的に過電流検出信号が出力されてしまう場合もある。
【0017】
したがって、過電流処理回路30は、過電流の度合い、および過電流となった状態の継続時間等に応じて、CPU20に種々の動作を実行できることが望ましい。即ち、センサ装置100は、過電流か否かを通知するだけでなく、過電流の度合いおよび過電流の継時的な変化等を含めた過電流検出信号を制御装置10に供給できることが望ましい。
【0018】
例えば、過電流処理回路30は、検出信号が第1基準値以上になったことに応じて、モーターの駆動電流が過電流であると判断して、過電流に対応する制御を実行させる。また、過電流処理回路30は、検出信号が第1基準値よりも大きい第2基準値以上となったことに応じて、深刻な過電流と判断して、モーターの動作を停止させる制御を開始させてよい。また、過電流処理回路30は、第1基準値以上になった検出信号の継時的な変化に応じて、モーターの制御を変更してもよい。
【0019】
ここで、第1基準値および第2基準値は、予め定められた値でよく、これに変えて、外部から指定される値でもよい。また、過電流処理回路30は、更に複数の基準値に応じて、種々の制御を実行させてよい。このように、処理システムが詳細な制御を実行すべく、センサ装置100は、過電流の大きさに応じた検出信号を出力できることが望ましい。
【0020】
このようなセンサ装置100を実現すべく、センサ装置100の検出信号の検出電圧レベルを拡大して、検出信号を過電流処理回路30に供給することが考えられる。しかしながら、検出信号の検出電圧レベルを拡大すると、モーターの正常動作を検出する検出信号の分解能が低減してしまう。また、検出電圧レベルの拡大に対応して回路の分解能を高く設計することも考えられるが、高分解能の回路素子を用いることからコストが増大してしまう。したがって、分解能の低減およびコストの増大を防止しつつ、過電流処理回路30に適切な過電流検出信号を供給するセンサ装置100が望まれていた。このようなセンサ装置100の一例である、磁気センサ装置200について、次に説明する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第1構成例を示す。磁気センサ装置200は、入力する磁場の大きさに応じた磁場検出信号を第1デジタル信号として出力する。また、磁気センサ装置200は、入力する磁場が基準範囲外となった場合に、基準範囲外の検出信号を第2デジタル信号として出力する。磁気センサ装置200は、磁気センサ素子210と、オフセット低減部220と、クロック生成部260と、増幅部270と、第1AD変換部280と、第2AD変換部290と、を備える。
【0022】
磁気センサ素子210は、当該磁気センサ装置200に入力する磁場の大きさに応じた検出信号を出力する。磁気センサ素子210は、例えば、基板等の表面に形成され、当該平面に略垂直な方向の磁場を検出する。本実施形態に係る磁気センサ素子210は、ホール素子を有する例を説明する。ここで、基板表面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ軸とすると、ホール素子は、X軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたY軸方向の起電力を発生させる(ホール効果)素子である。磁気センサ素子210は、XY平面において、十字形状に形成されてよい。磁気センサ素子210は、半導体等で形成されてよい。
【0023】
磁気センサ素子210は、端子212および端子214を含む第1端子対と、端子216および端子218を含む第2端子対と、を有する。磁気センサ素子210は、一例として、第1端子対および第2端子対が基板表面に形成され、基板に略垂直に入力する磁場を検出する。即ち、磁気センサ素子210は、第1端子対に電流を流すと、入力する磁場に応じて第2端子対から磁場に応じた起電力を発生させる。また、磁気センサ素子210は、第2端子対に電流を流すと、入力する磁場に応じて第1端子対から磁場に応じた起電力を発生させる。
【0024】
このような磁気センサ素子210は、出力信号に素子固有のオフセット信号を含めて出力することがある。このようなオフセット信号を低減すべく、非特許文献1に記載されているスピニングカレント法等を利用してよい。当該スピニングカレント法は、第1位相と第2位相を繰り返すスピニングカレントクロックに基づき、ホール素子に流す電流の方向を切り換え、磁場入力に応じた信号成分とオフセットによる信号成分の極性を反転させる。
【0025】
例えば、第1位相において、+Z方向の磁場入力Bに対して、端子212から端子214(+X方向とする)へと通電した磁気センサ素子210は、端子218(+Y方向側とする)からホール起電力信号+V
Sを発生する(−Y方向側の端子216からホール起電力信号−V
Sを発生する)と共に、+Y方向のオフセット電圧+V
Oを出力する。この場合、磁気センサ素子210は、同じ+Z方向の磁場入力に対して、第2位相において端子218から端子216(−Y方向)へと通電すると、+X方向側の端子214からホール起電力信号+V
Sを発生する(−X方向側の端子212からホール起電力信号−V
Sを発生する)と共に、+X方向のオフセット電圧+V
Oを出力する。
【0026】
したがって、第1位相において磁気センサ素子210のY軸方向の第2端子対から出力電圧V
h1を取得し、第2位相において磁気センサ素子210のX軸方向の第1端子対から出力電圧V
h2を取得することで、磁気センサ素子210の磁場Bの検出信号は次式のように示される。なお、次式は、端子218および端子212を正側として符号を付与した例を示す。
(数1)
V
h1=+2V
S+V
O
V
h2=−2V
S+V
O
【0027】
このように、通電方向を切り換えることにより、(数1)式のように、ホール素子の検出信号のうち、ホール起電力信号V
Sの信号成分の符号を、第1位相と第2位相において反転させることができる。即ち、スピニングカレント法は、スピニングカレントクロックによってホール起電力信号V
Sを変調して変調信号にすると共に、オフセット電圧V
OをDC信号出力とするので、周波数領域で2つの信号を分離することができ、理想的には、フィルタ等を用いて当該オフセット信号を除去することができる。
【0028】
オフセット低減部220は、このように、磁気センサ素子210の駆動電流を切り換えて供給しつつ、磁気センサ素子210の変調された検出信号を受け取り、当該検出信号を復調して出力する。オフセット低減部220は、切換部230と、増幅回路240と、復調部250と、を有する。
【0029】
切換部230は、磁気センサ素子210の第1端子対および第2端子対の間で駆動電流を流す端子対および磁気センサ素子210の出力をセンスする端子対を、外部から供給される第1クロックに応じて切り換える。切換部230は、例えば、第1クロックの第1位相において、電源の電位V
DDを端子212に、基準電位V
SSを端子214にそれぞれ接続して、第1端子対に駆動電流を供給する。この場合、切換部230は、第1クロックの第2位相において、電源を端子218に、基準電位V
SSを端子216にそれぞれ接続して、第2端子対に駆動電流を供給する。なお、基準電位V
SSは、一例として、0Vである。
【0030】
また、切換部230は、例えば、第1クロックの第1位相において、端子216および端子218を検出用の端子とし、当該検出用の端子を後段の増幅回路240に接続する。この場合、切換部230は、第1クロックの第2位相において、端子212および端子214を検出用の端子とし、当該検出用の端子を後段の増幅回路240に接続する。なお、切換部230は、端子218および端子212を正側の検出用端子としてよい。
【0031】
増幅回路240は、切換部230から供給される磁気センサ素子210の出力信号を増幅する。増幅回路240は、差動増幅回路でよい。また、増幅回路240は、電圧を電流に変換するトランジスタ差動対でもよい。増幅回路240は、例えば、第1クロックの第1位相において、(数1)式に示す第2端子対からの出力電圧V
h1を増幅し、第1クロックの第2位相において、第1端子対からの出力電圧V
h2を増幅する。増幅回路240は、増幅した信号を復調部250に供給する。
【0032】
復調部250は、入力する信号の正負を予め定められたタイミングで反転する。復調部250は、切換部230の切り換えタイミングと同期したタイミングで、信号の正負を反転してよい。即ち、復調部250は、外部から供給される第1クロックに応じて、信号の正負を反転してよい。
【0033】
復調部250は、例えば、入力信号を2つの信号線を用いた差動信号として増幅回路240から受けとり、2つの信号線を用いた差動信号として出力する。この場合、復調部250は、入力信号線の一方を出力信号線の一方に接続し、かつ、入力信号線の他方を出力信号線の他方に接続するか、入力信号線の一方を出力信号線の他方に接続し、かつ、入力信号線の他方を出力信号線の一方に接続するか、を切り換えてよい。
【0034】
これにより、復調部250の第1位相の出力信号V
o1および第2位相の出力信号V
o2は、次式で示される。なお、次式において、Aは、増幅回路240の増幅率を示す。
(数2)
V
o1=+A(2V
S+V
O)
V
o2=+A(2V
S−V
O)
【0035】
復調部250は、入力信号を第1クロックに同期して反転させることで、ホール起電力信号V
Sを直流成分にし、オフセット電圧V
Oを変調信号成分とする。復調部250は、(数2)式に示すような出力信号を増幅部270に供給する。なお、以上のオフセット低減部220は、更に、帯域通過フィルタ等を有して、オフセット電圧V
Oを低減させてよい。
【0036】
クロック生成部260は、第1クロックを生成する。クロック生成部260は、生成した第1クロックを切換部230および復調部250に供給する。また、クロック生成部260は、磁気センサ装置200内のデジタル回路に、クロック信号を供給してよい。この場合、クロック生成部260は、第1クロックと同一のクロック信号を供給してよい。また、クロック生成部260は、第1クロックの周波数のn倍の周波数の第2クロック信号を発生して、供給してもよい。なお、クロック信号は、磁気センサ装置200の外部から供給されてもよく、この場合、クロック生成部260は、なくてもよい。
【0037】
増幅部270は、復調部250から供給される出力信号を増幅する。増幅部270は、差動増幅回路でよい。また、増幅部270は、電流電圧変換回路でもよい。増幅部270は、例えば、(数2)式に示すような入力信号の和(V
o1+V
o2=+4AV
S)を、シングルエンド出力として出力する。増幅部270は、増幅したアナログ信号を第1AD変換部280に供給する。また、増幅部270は、増幅したアナログ信号を第2AD変換部290に供給する。
【0038】
第1AD変換部280は、増幅部270から受け取ったアナログ信号をデジタル信号に変換する。即ち、第1AD変換部280は、磁気センサ素子210による検出結果に応じたアナログ信号を第1デジタル信号に変換する。第1AD変換部280は、アナログ信号を多値のデジタル信号に変換する。第1AD変換部280は、一例として、ΔΣAD変換器を有する。
【0039】
第1AD変換部280は、磁気センサ素子210の検出結果における予め定められた第1電圧範囲のアナログ信号を、第1デジタル信号に変換する。第1AD変換部280は、例えば、磁気センサ素子210の計測対象が正常動作をしている場合に、当該磁気センサ素子210が出力する検出信号の電圧範囲に対応するアナログ信号の電圧範囲を、第1電圧範囲とする。第1AD変換部280は、一例として、モーターの駆動電流が正常動作の範囲内である場合に、磁気センサ素子210が出力する信号電圧の電圧範囲に対応するアナログ信号の電圧範囲を、第1電圧範囲とする。
【0040】
第2AD変換部290は、増幅部270から受け取ったアナログ信号をデジタル信号に変換する。第2AD変換部290は、磁気センサ素子210による検出結果に応じたアナログ信号を第2デジタル信号に変換する。
【0041】
第2AD変換部290は、磁気センサ素子210の検出結果における第1電圧範囲よりも広い予め定められた第2電圧範囲のアナログ信号を、第2デジタル信号に変換する。即ち、磁気センサ素子210の計測対象が正常動作の範囲から外れた動作をしている場合に、当該磁気センサ素子210が出力する検出信号の電圧範囲に対応するアナログ信号の電圧範囲を、第2電圧範囲とする。一例として、第2AD変換部290が出力する第2デジタル信号は、磁気センサ素子210の検出結果が過電流を示すアナログ信号を検出するための信号である。言い換えると、第2AD変換部290は、アナログ信号から過電流が検出されたことを示す第2デジタル信号を出力する。
【0042】
第2AD変換部290は、アナログ信号を多値のデジタル信号に変換する。第2AD変換部290は、第1AD変換部280とは異なる種類のAD変換器を有する。第2AD変換部290は、第1AD変換部280よりも測定レンジが広いことが望ましい。また、第2AD変換部290は、第1AD変換部280よりも変換速度が速いことが望ましい。また、第2AD変換部290は、第1AD変換部280と比較して、分解能が低くてもよい。第2AD変換部290は、一例として、逐次比較型AD変換器およびフラッシュ型AD変換器等の、AD変換器を有する。
【0043】
これにより、磁気センサ装置200は、正常動作する計測対象から検出される磁場に基づく検出信号を、第1デジタル信号として第1AD変換部280から出力できる。また、磁気センサ装置100は、異常な動作の計測対象から検出される磁場に基づく検出信号を、第2デジタル信号として第2AD変換部290から出力できる。このように、磁気センサ装置200は、計測対象の動作に応じて異なるAD変換部が設けられるので、検出すべき動作に対応してAD変換器をそれぞれ設定できる。
【0044】
例えば、第1AD変換部280は、正常動作する計測対象から検出される磁場の範囲に対応させて、測定範囲を第1電圧範囲とすることで、より高い分解能で高精度にアナログ信号をデジタル変換できる。また、第2AD変換部290は、異常動作する計測対象から検出される正常動作の範囲を超える磁場の範囲に対応させて、測定範囲を第1電圧範囲よりも広い第2電圧範囲とすることで、より高速にアナログ信号をデジタル変換して出力できる。
【0045】
したがって、例えば、本実施形態に係る磁気センサ装置200に接続される制御装置10は、第2AD変換部290の高速な第2デジタル信号に応じて、モーターに過電流が発生したか否かを検知することができる。この場合、制御装置10は、過電流が発生していない場合に、第1AD変換部280の高分解能および高精度な第1デジタル信号を用いて、モーター等を制御することができる。
【0046】
また、制御装置10は、過電流が発生している場合は、第2デジタル信号を用いることで速やかに過電流に応じた制御に移行することができる。なお、第2デジタル信号は、多値のデジタル信号なので、制御装置10は過電流の度合いも含めて検知でき、過電流が深刻であるか否かも判断することができる。即ち、制御装置10は、過電流の検出レベルに応じて、モーター等を細やかに制御することができる。また、第2AD変換部290は、異常動作の動向を判別するものであるから、第1AD変換部280よりも精度および分解能は低くてよい。したがって、コストが増大することを防止しつつ、制御装置10に適切な過電流検出信号を供給することができる。
【0047】
図3は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第2構成例を示す。第2構成例の磁気センサ装置200は、入力する磁場の大きさに応じた磁場検出信号を、第1デジタル信号および第2デジタル信号のいずれかとして、一の出力端子から出力する。第2構成例の磁気センサ装置200において、
図2に示された第1構成例の磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の磁気センサ装置200は、比較部310と、選択部320と、を更に備える。
【0048】
比較部310は、増幅部270が出力するアナログ信号と閾値電圧とを比較して、比較結果を出力する。ここで、閾値電圧は、第1AD変換部280の測定レンジの範囲内の予め定められた電圧でよい。一例として、閾値電圧は、第1AD変換部280の第1電圧範囲の上限値である。即ち、比較部310は、入力するアナログ信号が、第1AD変換部280の測定範囲の電圧値であるか否かを、閾値電圧と比較することで判別してよい。
【0049】
比較部310は、ヒステリシスコンパレータを有することが望ましい。これにより、比較部310は、雑音等が混入した場合の影響を低減させることができる。比較部310は、比較結果を選択部320に供給する。また、比較部310は、比較結果を磁気センサ装置200の外部に供給してよい。
【0050】
選択部320は、第1AD変換部280および第2AD変換部290に接続され、入力する制御信号に応じて、第1デジタル信号および第2デジタル信号のうちいずれか一方を選択して出力する。選択部320は、比較部310の比較結果を制御信号として入力する。選択部320は、一例として、マルチプレクサである。選択部320は、例えば、アナログ信号が閾値電圧以下であることを示す比較結果に応じて、第1デジタル信号を出力する。即ち、選択部320は、アナログ信号が第1AD変換部280の測定範囲の電圧値である場合に、第1AD変換部280の変換結果を選択して出力する。
【0051】
また、選択部320は、例えば、制御信号が閾値電圧よりもアナログ信号の方が大きいことを示すことに応じて、第2デジタル信号を出力する。即ち、選択部320は、アナログ信号が第1AD変換部280の測定範囲外の電圧値である場合に、第2AD変換部290の変換結果を選択して出力する。このように、第2構成例の磁気センサ装置200は、入力する磁場の大きさに応じた磁場検出信号の電圧レベルに応じて、対応する測定範囲のAD変換部を選択して当該磁場検出信号をデジタル変換したデジタル信号を出力する。
【0052】
なお、計測対象は、正常動作および異常動作の間を行き来する状態となることもある。この場合、第2構成例の磁気センサ装置200は、計測対象の状態に応じて、第1デジタル信号および第2デジタル信号を切り換えて出力してよい。これに代えて、第2構成例の磁気センサ装置200は、このような動作を第2AD変換部290を用いて観測してもよい。この場合、選択部320は、制御信号が閾値電圧よりもアナログ信号の方が大きいことを示すことに応じて、第2デジタル信号を予め定められた期間出力してよい。これにより、磁気センサ装置200は、計測対象の不安定な動作を、測定レンジの広い第2AD変換部290で測定することができる。
【0053】
以上の第2構成例の磁気センサ装置200は、第1デジタル信号および第2デジタル信号を切り換えて出力することを説明した。この場合、磁気センサ装置200は、予め定められたワード数のデジタル信号として、第1デジタル信号および第2デジタル信号のいずれかを出力してよい。本実施形態において、第1デジタル信号は、第2デジタル信号よりも分解能が高いことを説明したので、磁気センサ装置200は、第2デジタル信号にダミーデータを追加して出力してよい。例えば、選択部320は、第2デジタル信号を出力する場合、当該第2デジタル信号にダミービットデータを追加して、当該第2デジタル信号を第1デジタル信号のビット数と同じビット数にして出力する。
【0054】
また、磁気センサ装置200は、第1デジタル信号および第2デジタル信号のいずれかを出力する場合、情報を追加して出力してもよい。例えば、磁気センサ装置200は、比較部310の比較結果の情報を、予め定められたビット位置に追加して出力する。この場合、選択部320は、第1デジタル信号および第2デジタル信号のうち出力すべきデジタル信号に、比較部310の比較結果を含めて出力してよい。選択部320は、一例として、先頭ビットに比較結果に対応するビットデータを追加して出力する。
【0055】
これにより、制御装置10は、適切な測定範囲のAD変換部で変換されたデジタル信号を一の出力端子から受け取ることができる。また、制御装置10は、受け取ったデジタル信号に基づき、比較部310の比較結果を取得することができる。これに代えて、または、これに加えて、制御装置10は、比較部310の比較結果を当該比較部310から受け取ってもよい。
【0056】
以上の第2構成例の磁気センサ装置200は、選択部320が比較部310の比較結果に応じて、出力すべきデジタル信号を選択することを説明した。これに代えて、磁気センサ装置200は、外部からの制御信号に応じて、デジタル信号を選択して出力してもよい。この場合、選択部320は、外部から入力する制御信号に応じて、第1デジタル信号および第2デジタル信号のうちいずれか一方を選択して出力する。
【0057】
なお、選択部320は、外部入力の制御信号と、比較部310の比較結果とが、異なるデジタル信号の選択を指示する制御信号の場合、予め定められた優先順位にしたがって、デジタル信号を選択してよい。また、磁気センサ装置200は、外部から制御信号を受け取る場合、比較部310が設けられなくてもよい。即ち、磁気センサ装置200の外部に、比較部310が設けられてよい。また、制御装置10は、受け取ったデジタル信号と、制御すべき動作に基づき、磁気センサ装置200が出力すべきデジタル信号を指示する制御信号を当該磁気センサ装置200に供給してもよい。
【0058】
以上の第2構成例の磁気センサ装置200は、比較部310が増幅部270のアナログ信号出力と閾値電圧とを比較する例を説明したが、これに限定されることはない。比較部310は、例えば、計測対象が過電流の状態であるか否かを検出できればよく、磁気センサ素子210またはオフセット低減部220の出力と対応する閾値等を比較してよい。また、比較部310は、オフセット低減部220の内部の信号と対応する閾値等を比較してもよい。
【0059】
以上の本実施形態に係る磁気センサ装置200は、計測対象の磁場を検出することを説明した。また、このような磁気センサ装置200は、電流路と組み合わされて、電流センサ装置として機能できる。即ち、電流センサ装置は、計測対象の電流を流す電流路と、第1構成例の磁気センサ装置200または第2構成例の磁気センサ装置200とを備える。ここで、電流路は、導電体および半導体等の導電性材料で形成された配線等でよい。また、磁気センサ装置200は、当該電流路に対応して配置され、電流路に流れる電流に応じて生じる磁場を検知する。即ち、磁気センサ装置200は、当該電流路を流れる電流の変化に応じた磁場を検出して、電流センサとして機能できる。磁気センサ装置200が電流センサとして用いられる場合の構成例について、次に説明する。
【0060】
図4は、第1構成例の磁気センサ装置200を実装したパッケージ50を備える電流センサ装置300の第1構成例を示す。第1構成例の電流センサ装置300に接続された制御装置10は、
図1に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200に接続された制御装置10の動作と略同一なので同一の符号を付け、説明を省略する。電流センサ装置300は、電流路40および電流路42と、パッケージ50と、第1構成例の磁気センサ装置200と、を備える。
【0061】
電流路40および電流路42は、計測対象の電流を流す。電流路40および電流路42は、例えば、モーターを駆動する電流を流す。パッケージ50は、第1構成例の磁気センサ装置200を内部に収容する。パッケージ50は、規格化された形状および電極等を有するパッケージでよい。
【0062】
パッケージ50は、第1AD変換部280が出力する第1デジタル信号を外部に出力する第1出力端子52と、第2AD変換部290が出力する第2デジタル信号を外部に出力する第2出力端子54と、を有する。また、パッケージ50は、外部から制御信号等を授受する入出力端子56を有してよい。また、パッケージ50は、電源電圧V
DDに接続される電源端子と、基準電位V
SSに接続される基準電位端子とを更に有してよい。なお、電源電圧V
DDは予め定められた電源電圧でよく、基準電位V
SSは0Vでよい。
【0063】
このようなパッケージ50は、一例として、計測対象の電流を流す電流路に接続される。
図4は、電流路40および電流路42の間にパッケージ50が接続される例を示す。即ち、磁気センサ装置200は、電流路40および電流路42に対応して配置され、計測対象の電流に応じて生じる磁場を検知する。これによって、電流路40、電流路42、および磁気センサ装置200は、電流センサ装置300を構成することができる。
【0064】
以上の電流センサ装置300に接続された制御装置10は、磁気センサ装置200が出力する第1デジタル信号および第2デジタル信号を受け取って、外部の装置等を制御することができる。また、磁気センサ装置200は、パッケージ50に実装されることにより、小型および軽量化した磁気センサとして、外部の装置等に容易に搭載することができる。
【0065】
したがって、制御装置10がモーター等を駆動する場合、
図4に示すように、第1構成例の電流センサ装置300は、駆動電流をモーターに供給する電流路に設けられることにより、当該駆動電流の変動を検出することができる。また、電流センサ装置300は、駆動電流が過大になっても、駆動電流の変動および動向等を、第2デジタル信号として、第2出力端子54から制御装置10に供給することができる。
【0066】
図5は、第2構成例の磁気センサ装置200を実装したパッケージ50を備える電流センサ装置300の第2構成例を示す。第2構成例の電流センサ装置300に接続された制御装置10も、
図1に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200に接続された制御装置10の動作と略同一なので同一の符号を付け、説明を省略する。電流センサ装置300は、電流路40および電流路42と、パッケージ50と、第2構成例の磁気センサ装置200と、を備える。
【0067】
電流路40および電流路42は、
図4で説明したので、ここでは説明を省略する。パッケージ50は、第2構成例の磁気センサ装置200を内部に収容する。パッケージ50は、規格化された形状および電極等を有するパッケージでよい。
【0068】
パッケージ50は、選択部320が出力するデジタル信号を外部に出力する第1出力端子第52と、比較部が出力する比較結果を外部に出力する第3出力端子58と、を有する。また、パッケージ50は、外部から制御信号等を授受する入出力端子56を有してよい。また、パッケージ50は、電源電圧V
DDに接続される電源端子と、基準電位V
SSに接続される基準電位端子とを更に有してよい。なお、電源電圧V
DDは予め定められた電源電圧でよく、基準電位V
SSは0Vでよい。
【0069】
このようなパッケージ50は、一例として、計測対象の電流を流す電流路に接続される。
図5は、電流路40および電流路42の間にパッケージ50が接続される例を示す。即ち、磁気センサ装置200は、電流路40および電流路42に対応して配置され、計測対象の電流に応じて生じる磁場を検知する。これによって、電流路40、電流路42、および磁気センサ装置200は、電流センサ装置300を構成することができる。
【0070】
以上の電流センサ装置300に接続された制御装置10は、磁気センサ装置200が第1出力端子52から出力する第1デジタル信号または第2デジタル信号を受け取って、外部の装置等を制御することができる。また、磁気センサ装置200は、磁気センサ装置200が第3出力端子58から出力する比較結果を受け取って、第1出力端子52から受け取ったデジタル信号が第1デジタル信号および第2デジタル信号のいずれであるかを識別してよい。
【0071】
第2構成例の電流センサ装置300は、第1構成例の電流センサ装置300と同様に、駆動電流をモーターに供給する電流路に設けられることにより、当該駆動電流の変動を検出することができる。第2構成例の電流センサ装置300は、駆動電流が過大になっても、駆動電流の変動および動向等を、第1出力端子52から制御装置10に供給することができる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0073】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。