特許第6758753号(P6758753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6758753アルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物及びその製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6758753
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】アルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/455 20060101AFI20200910BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20200910BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20200910BHJP
【FI】
   C01B25/455
   H01M4/58
   H01M10/0562
   H01M10/054
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-67428(P2016-67428)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-178661(P2017-178661A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−099245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B25/00−25/46
H01M4/00− 4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム原料、リン酸原料、遷移金属原料、フッ素原料及び還元剤を水に溶解又は分散し、容器中にて100〜200℃で反応させることを特徴とする一般式NaMPOF(式中、MはMn、Fe、Co、Niから選択される金属元素であり、単一又は複数の金属種を含んでいてもよい。)で表され、銅の特性X線(CuKα1)波長λ=1.5406Åを用いて測定したX線回折図にあって、2θ角が33°〜34°にあるミラー指数(020)回折線強度を100として、2θ角が19°〜21.5°にある回折線強度が1以下であることを特徴とするアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物の製造方法。
【請求項2】
水に溶解又は分散した水溶液のpHが7以上であることを特徴とする請求項に記載のアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質、二次電池正極材料、負極材料及び触媒等に有用な、アルカリ金属元素、遷移金属元素、リン酸イオン及びフッ化物イオンを含んでなるアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物は、固体電解質、二次電池の正極活物質、負極材料及び触媒等の多様な用途への利用が想定されている。特に自動車やロードレべリングへの使用を想定した大型二次電池は低コスト化の要求が大きく、資源的制限の少ないナトリウム(Na)二次電池への期待が高い。しかしながらNa二次電池はリチウム(Li)二次電池に比較して電圧が低くエネルギー密度が劣るという課題を有している。
【0003】
この課題を解決する手段として、Li二次電池に用いられているリン酸系正極材LiFePOのアルカリ金属(A)数を更に追加し、理論電気容量を2倍にしたアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物ABPOF(A=Li、Na、B=Mn、Fe)が報告されている。
【0004】
しかしながら、従来の合成法はアルカリ遷移金属リン酸塩、及びフッ化ナトリウム(NaF)やフッ化アンモニウム(NHF)等のフッ素濃度調整剤を1000℃以上の高温で密閉焼成するため、フッ素がルツボ壁等を強く浸食するという問題があった(例えば、特許文献1参照)。フッ素のルツボ壁等への浸食を解決するためにあらかじめ原料をボールミルで混合粉砕後に300℃で低温焼成することによる二段階法も提案されているが(例えば、特許文献2参照)、高価な金属シュウ酸塩等高価な原料を用いるのでコスト面の問題がある。
【0005】
また、高温焼成により製造された生成物は比表面積が小さくなる問題もあり、また、低温焼成された生成物は結晶性が低く安定性に劣るという問題もあった。
【0006】
このようにアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物の有用性は高いものの、そのニーズは未だ満たされておらず、電池反応性と安定性の優れたアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物、及びより低温条件でのその製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−204307
【特許文献2】特開2013−69653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、二次電池正極材、負極材、固体電解質として有用なアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、水中で原料を100〜200℃の温度で反応させることにより得られるアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は一般式NaMPOF(式中、MはMn、Fe、Co、Niから選択される金属元素であり、単一又は複数の金属種を含んでいてもよい。)で表され、銅の特性X線(CuKα1)波長λ=1.406Åを用いて測定したX線回折図にあって、2θ角が33°〜34°にあるミラー指数(020)回折線強度を100として、2θ角が19°〜21.5°にある回折線強度が1以下であることを特徴とするアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物及びその製造方法に関する。また本発明は、水中でナトリウム原料、リン酸原料、遷移金属原料、フッ素原料及び還元剤を100〜200℃で反応させることを特徴とする、一般式NaMPOF(式中、MはMn、Fe、Co、Niから選択される金属元素であり、単一又は複数の金属種を含んでいてもよい。)で表されるアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物の製造方法に関する。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の一般式NaMPOFで表されるアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物におけるMはマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)から選択される金属元素であり、一種類の元素又はこれらの組み合わせであってもよい。具体的な一般式NaMPOFで表されるアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物としては、NaMnPOF、NaFePOF、NaCoPOF、NaNiPOF、Na(Fe,Ni)POFが挙げられ、その中でも資源量、コスト等からNaMnPOF、NaFePOF、Na(Fe,Ni)POFが好ましい。
【0013】
本発明のアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物は、銅の特性X線(CuKα1)波長λ=1.406Åを用いて測定したX線回折図にあって、2θ角が33°〜34°にある面指数(020)回折線強度を100として、2θ角が19°〜21.5°にある回折線強度が1以下であり、その中でも電池反応性が優れている点で0.5以下が好ましい。
【0014】
次に、アルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物の製造方法について詳細に説明する。
【0015】
一般式NaMPOF(M=Mn、Fe、Co、Ni)で表されるアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物は、ナトリウム原料、遷移金属原料、リン酸原料、フッ素原料及び還元剤を100〜200℃で反応させることにより得ることができる。
【0016】
ナトリウム原料の例としては、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水溶性ナトリウム塩が挙げられる。また、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸三ナトリウム等の水溶性リン酸ナトリウム塩類も用いることが可能であり、この際においては、後述のリン酸原料のリン酸分の一部又は全部を補うことができる。好ましいナトリウム原料としては、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムである。なお、これらのナトリウム原料は、固体又は水溶液であっても良い。
【0017】
遷移金属原料としては、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル等の硫酸塩、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル等の硝酸塩、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル等の塩化物等が挙げられ、その中でも硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、塩化鉄が好ましい。これらの遷移金属原料のうち一つを単独で用いても良く、複数を任意の比率で用いても良い。
【0018】
リン酸原料としては、リン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸等が挙げられ、その中でもリン酸又はピロリン酸が好ましい。また、ナトリウム原料としてリン酸ナトリウム塩類を用いた場合、リン酸原料の使用量を減らすことが出来る。
【0019】
フッ素原料としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムを挙げることができ、その中でもフッ化ナトリウム又はフッ化カリウムが好ましい。とりわけフッ化ナトリウムが好ましい。
【0020】
還元剤としては、シュウ酸、アスコルビン酸、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸、チオ硫酸ナトリウム、一硫化水素ナトリウム、ヒドラジン等が挙げられ、その中でもシュウ酸、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム又はヒドラジンが好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。還元剤は遷移金属元素の価数を2+の状態に維持するために効果があり、遷移金属原料の種類により、例えばNaMnPOFを合成する場合には一硫化水素ナトリウムが好ましく、NaFePOFを合成する場合には亜硫酸ナトリウムが不純物相を含まない単一相を合成できるのでより好ましい。
【0021】
本発明のアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物の製造方法では、式(1)の通りナトリウム原料としてリン酸三ナトリウム、フッ素原料としてフッ化ナトリウムを用いることが特に好ましい。
【0022】
【数1】
本発明の製造方法において、ナトリウム原料、リン酸原料、遷移金属原料及びフッ素原比に特に制限は無い。好ましくは、遷移金属イオン1モルに対してリン酸イオン1〜2モ料を混合した際のNaイオン、リン酸イオン、遷移金属イオン及びフッ化物イオンのモルル、フッ化物イオン1〜4モル及びNaイオン2モル以上となるように、更に好ましくは
【0023】
リン酸イオン1〜1.25モル、フッ化物イオン1〜2モル及びNaイオン2〜2.25モルとなるように各原料の仕込み比を適宜調整することにより、電池反応性と安定性の優れたアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物(1)を製造することが出来る。また還元剤については、遷移金属イオン1モルに対して好ましくは還元当量が0.5モル〜1.5モルの範囲、更に好ましくは0.8モル〜1.2モルの範囲となるように仕込み比を調整することにより、電池反応性と安定性の優れたアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物(1)を製造することが出来る。
【0024】
また、用いる水の重量は、ナトリウム原料、リン酸原料、遷移金属原料、フッ素原料及び還元剤の重量の総和の0.5倍〜5倍が好ましく、1倍〜3倍が特に好ましい。
【0025】
本発明の製造方法はpHは7以上で実施するのが好ましく、7〜12が特に好ましい。
【0026】
本発明の製造方法における反応温度は、好ましくは100〜200℃、特に好ましくは120〜180℃である。反応時間は5時間以上が好ましく、5〜20時間が更に好ましく、8〜16時間が特に好ましい。
【0027】
反応は遷移金属原料やフッ素原料と容器素材との反応を避けるため、フッ素樹脂などで内表面を被覆した密閉耐圧容器中で行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物は、不純物相をほとんど含まず結晶性も優れていることから、Naイオン電池の電解液中での安定性に優れる。更に100〜200℃という低温での合成条件であるため、結晶成長が抑制された微粒子からなり、比表面積が大きくNaイオンの挿入脱離の反応性に優れている。これらのことから、本発明のアルカリ遷移金属フッ化リン酸塩化合物は、Naイオン二次電池の正極材として好適である。
【0029】
また本発明の製造方法は、水に溶解しやすくコスト的に有利な遷移金属硫酸塩を遷移金属原料に用いることが可能であり、かつワンポット反応であることから工業的な効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例及び比較例で用いた密閉型反応容器
図2】実施例1で得られたNaMnPOFのX線回析図
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、XRDの測定にはリガク製SmartLabを、熱重量分析にはリガク製ThermoPlusをそれぞれ用いた。
【0032】
(実施例1)
リン酸三ナトリウム12水和物(NaPO・12HO)21.3wt%、硫酸マンガン5水和物(MnSO・5HO)14.9wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)を3.6wt%の割合で秤量し、さらに亜硫酸ナトリウム(NaSO)を7.0wt%秤量し、メノウ乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに53.2wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度120℃に加温した恒温槽で8時間加熱した。8時間後にこれを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過をした。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0033】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、主生成物はナトリウムマンガンフッ化リン酸塩化合物(NaMnPOF)であり、僅かな不純物相としてNaMnPOを含んでいた。
【0034】
(実施例2)
水酸化ナトリウム(NaOH)2.0wt%、硫酸マンガン5水和物(MnSO・5HO)20.5wt%及びフッ化カリウム(KF)3.6wt%の割合で秤量し、乳鉢で粉砕混合し、この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらにリン酸(HPO)2.4wt%及びヒドラジン(N)3.6wt%を加えた後、純水を68.2wt%加え全体を100wt%となるように調整し、蓋をしたこの容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度120℃に加温した恒温槽で6時間加熱した。6時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散攪拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で16時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物はナトリウムマンガンフッ化リン酸塩化合物(NaMnPOF)であり、不純物相として僅かなNaMnPOを含んでいた。
【0035】
(実施例3)
リン酸三ナトリウム12水和物(NaPO・12HO)19.6wt%、硫酸マンガン5水和物(MnSO・5HO)13.7wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)3.3wt%を秤量し、さらに一硫化水素ナトリウム(NaSH)を6.4wt%加え、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに57.1wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を140℃に加温した恒温槽で8時間加熱した。8時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0036】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物は不純物相を含まないナトリウムマンガンフッ化リン酸塩化合物(NaMnPOF)単一相であった。
【0037】
(実施例4)
無水リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)9.4wt%、硫酸マンガン5水和物(MnSO・5HO)15.9wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)4.2wt%を秤量し、さらに一硫化水素ナトリウム(NaSH)を7.8wt%加え、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに62.7wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度180℃に加温した恒温槽で16時間加熱した。16時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0038】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物は不純物相を含まないナトリウムマンガンフッ化リン酸塩化合物(NaMnPOF)単一相であった。
【0039】
(実施例5)
リン酸三ナトリウム12水和物(NaPO・12HO)19.5wt%、硫酸第一鉄7水和物(FeSO・7HO)14.1wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)4.5wt%を秤量し、さらに亜硫酸ナトリウム(NaSO)を6.4wt%加え、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに56.7wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度180℃に加温した恒温槽で8時間加熱した。8時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0040】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物はナトリウム鉄フッ化リン酸塩化合物(NaFePOF)の単一相であった。
【0041】
(実施例6)
リン酸三ナトリウム12水和物(NaPO・12HO)22.1wt%、塩化第一鉄4水和物(FeCl・4HO)11.6wt%及びフッ化アンモニウム(NHF)3.7wt%を秤量し、さらに亜硫酸ナトリウム(NaSO)を7.3wt%加え、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに55.3wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度140℃に加温した恒温槽中で16時間加熱した。16時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0042】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物はナトリウム鉄フッ化リン酸塩化合物(NaFePOF)の単一相であった。
【0043】
(実施例7)
リン酸三ナトリウム12水和物(NaPO・12HO)21.1wt%、硫酸コバルト7水和物(CoSO・7HO)15.6wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)3.6wt%を秤量し、さらに亜硫酸ナトリウム(NaSO)を6.9wt%加え、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに52.8wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度140℃に加温した恒温槽中で8時間加熱した。8時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0044】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物はナトリウムコバルトフッ化リン酸塩化合物(NaCoPOF)の単一相であった。
【0045】
(実施例8)
リン酸三ナトリウム十二水和物(NaPO・12HO)21.1wt%、硫酸第一鉄七水和物(FeSO・7HO)7.7wt%、硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)7.8wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)3.6wt%を秤量し、さらに亜硫酸ナトリウム(NaSO)6.9wt%を加え、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに52.9wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度140℃に加温した恒温槽中で8時間加熱した。8時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0046】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物は、鉄とニッケル遷移金属元素が固溶したナトリウム鉄ニッケルフッ化リン酸塩化合物Na(Fe+Ni)POFの単一相であった。
【0047】
(比較例1)
リン酸三ナトリウム十二水和物(NaPO・12HO)20.9wt%、硫酸マンガン五水和物(MnSO・5HO)14.6wt%及びフッ化ナトリウム(NaF)3.5wt%を秤量し、乳鉢にて粉砕混合を行った。この混合粉末をテフロン(登録商標)樹脂からなる蓋付き容器に投入し、さらに61.0wt%の純水を加え全体を100wt%となるように調整し、この容器をさらに鉄製の金属容器に密閉した。この容器を温度100℃に加温した恒温槽中で16時間加熱した。16時間後これを取り出し、室温まで冷却し、密閉容器を開封し試料量の8倍に相当する純水中に分散撹拌し洗浄を行った。この溶液をろ紙によりろ過した。ろ取物は120℃の乾燥庫で6時間乾燥を行った後、さらに乳鉢による粉砕を行った。
【0048】
このようにして得られた粉末をX線回折装置及び熱重量分析装置を用いて生成物の構造と組成を評価した結果、生成物はナトリウムを含まないマンガンフッ化リン酸塩化合物(MnPOF)のみであった。
【符号の説明】
【0049】
1 反応容器(テフロン(登録商標)樹脂製)
2 外装缶(ステンレススチール製)
図1
図2