特許第6759372号(P6759372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6759372非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759372
(24)【登録日】2020年9月4日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/08 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   G01N11/08
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-7996(P2019-7996)
(22)【出願日】2019年1月21日
(65)【公開番号】特開2020-118491(P2020-118491A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 信章
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−522162(JP,A)
【文献】 特開2018−155564(JP,A)
【文献】 特表2007−528501(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/091869(WO,A1)
【文献】 長縄成実,掘屑運搬シミュレーションモデルにおけるHerschel-Bulkleyレオロジーモデル導入の有効性について,石油技術協会誌,日本,JAPT,2010年 1月,Vol.75, No.1,PP.89-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00−11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法であって、
前記配管の半径Rp又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件を、3条件以上準備する準備工程と、
前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得工程と、
前記条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する算出工程と、を備える、方法。
【数1】
(式(1)においてmは定数であり、m>1である。)
【請求項2】
前記算出工程において算出された前記レオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び式(4)から、前記非ニュートン流体のせん断速度
の関数として、前記非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【数2】
【請求項3】
前記準備工程は、前記一地点及び前記他地点を含み、異なる半径Rpを有する3区間を備える前記配管に前記非ニュートン流体を流す工程を含み、
前記方法は、前記配管の前記3区間における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得工程を更に備え、
前記圧力情報取得工程は、前記3区間にそれぞれ含まれる前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記配管の前記3区間は直列に並び、
前記流量情報取得工程は、前記3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、前記3区間における流量Qに関する情報として取得する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記準備工程は、前記一地点及び前記他地点を含む1区間を備える前記配管に前記非ニュートン流体を流す工程を含み、
前記方法は、前記配管の前記1区間の流量Qが異なる3時点における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得工程を更に備え、
前記圧力情報取得工程は、前記3時点における前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置であって、
前記配管の半径Rp又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得機構と、
前記条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する算出部と、を備える、装置。
【数3】
(式(1)においてmは定数であり、m>1である。)
【請求項7】
前記算出部において算出された前記レオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び式(4)から、前記非ニュートン流体のせん断速度
の関数として、前記非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出部をさらに備える、請求項6に記載の装置。
【数4】
【請求項8】
前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、異なる半径Rpを有し、前記非ニュートン流体が流れる3区間を備え、
前記装置は、前記配管の前記3区間における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、
前記圧力情報取得機構は、前記3区間にそれぞれ含まれる前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記配管の前記3区間は直列に並び、
前記流量情報取得機構は、前記3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、前記3区間における流量Qに関する情報として取得する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、前記非ニュートン流体が流れる1区間を有し、
前記装置は、前記配管の前記1区間の流量Qが異なる3時点における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、
前記圧力情報取得機構は、前記3時点における前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項11】
前記圧力情報取得機構は、前記一地点及び前記他地点において前記配管の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部を有する、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非ニュートン流体のレオロジー特性値を得るための様々な方法及び装置が知られている。例えば特許文献1には、サンプル流体のせん断率(せん断速度)が流量に比例することを前提とした上で、流体の流量及び圧力低下に基づいて、流体の粘度を計算することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017―510822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非ニュートン流体の応力τとせん断速度
(以下の説明においては、せん断速度を「γ」と表記することもある)との関係は、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を用いた以下の式によって表すことができる。
【数1】
なお、n=1,σ0=0とすれば、上の式はニュートン流体にも当てはまる。
【0005】
特許文献1に記載の方法は、ニュートン流体について粘性係数Kの値を求めたり、非ニュートン流体についてσ0=0であることを仮定した上で粘性係数K及び粘性指数nを求めたりすることはできるが、非ニュートン流体の降伏応力σ0の値を仮定せずに、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値をそれぞれ求めることはできなかった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法であって、前記配管の半径Rp又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件を、3条件以上準備する準備工程と、前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得工程と、前記条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する算出工程と、を備える、方法である。
【数2】
(式(1)においてmは定数である。)
【0008】
本発明による方法において、前記算出工程において算出された前記レオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び式(4)から、前記非ニュートン流体のせん断速度γの関数として、前記非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出工程をさらに備えてもよい。
【数3】
【0009】
本発明による方法において、前記準備工程は、前記一地点及び前記他地点を含み、異なる半径Rpを有する3区間を備える前記配管に前記非ニュートン流体を流す工程を含み、前記方法は、前記配管の前記3区間における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得工程を更に備え、前記圧力情報取得工程は、前記3区間にそれぞれ含まれる前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する工程を含んでもよい。
【0010】
本発明による方法において、前記配管の前記3区間は直列に並び、前記流量情報取得工程は、前記3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、前記3区間における流量Qに関する情報として取得する工程を含んでもよい。
【0011】
本発明による方法において、前記準備工程は、前記一地点及び前記他地点を含む1区間を備える前記配管に前記非ニュートン流体を流す工程を含み、前記方法は、前記配管の前記1区間の流量Qが異なる3時点における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得工程を更に備え、前記圧力情報取得工程は、前記3時点における前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する工程を含んでもよい。
【0012】
本発明は、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置であって、前記配管の半径Rp又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得機構と、前記条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する算出部と、を備える、装置である。
【数4】
(式(1)においてmは定数である。)
【0013】
本発明による装置において、前記算出部において算出された前記レオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び式(4)から、前記非ニュートン流体のせん断速度γの関数として、前記非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出部をさらに備えてもよい。
【数5】
【0014】
本発明による装置において、前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、異なる半径Rpを有し、前記非ニュートン流体が流れる3区間を備え、前記装置は、前記配管の前記3区間における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、前記圧力情報取得機構は、前記3区間にそれぞれ含まれる前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得してもよい。
【0015】
本発明による装置において、前記配管の前記3区間は直列に並び、前記流量情報取得機構は、前記3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、前記3区間における流量Qに関する情報として取得してもよい。
【0016】
本発明による装置において、前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、前記非ニュートン流体が流れる1区間を有し、前記装置は、前記配管の前記1区間の流量Qが異なる3時点における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、前記圧力情報取得機構は、前記3時点における前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得してもよい。
【0017】
本発明による装置において、前記圧力情報取得機構は、前記一地点及び前記他地点において前記配管の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部を有してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非ニュートン流体のレオロジー特性値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る装置を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る方法を示す図である。
図3】流体の応力τとせん断速度γとの関係の例を示す図である。
図4】式(1)及び式(2)が導かれる手順を説明するための図である。
図5】第1の変形例に係る方法を示す図である。
図6】第2の変形例に係る方法を示す図である。
図7】第3の変形例に係る方法を示す図である。
図8】第3の変形例に係る方法を示す図である。
図9】第4の変形例に係る方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法の概要について説明する。図1は、レオロジー特性値を得る方法に用いられる装置10を示すブロック図である。装置10は、流量情報取得機構11、圧力情報取得機構12、算出部13及び粘度算出部14を備える。
【0022】
流量情報取得機構11及び圧力情報取得機構12は、配管を流れる非ニュートン流体の流量Q及び圧力差ΔPを、3条件以上の異なる条件において測定する。図1に示す例においては、流量情報取得機構11及び圧力情報取得機構12は、配管を流れる非ニュートン流体の流量Q及び圧力差ΔPを、異なる3条件において測定する。図1の(Q1、ΔP1)、(Q2、ΔP2)及び(Q3、ΔP3)は、異なる3条件において取得された3組の流量Q及び圧力差ΔPを表している。算出部13は、取得された3組の流量Q及び圧力差ΔPを、非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係とを表す上述の式から導かれる方程式に代入することにより、非ニュートン流体の粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0を算出する。粘度算出部14は、算出された粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0に基づいて、非ニュートン流体の粘度を、せん断速度γの関数として算出する。
【0023】
以下、レオロジー特性値を得るための装置10及び方法の具体例について説明する。本実施の形態においては、非ニュートン流体が流れる配管の半径を変えることにより、上述の異なる3条件を実現する例について説明する。
【0024】
(準備工程)
まず、配管の半径Rp又は配管を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる3条件を準備する、準備工程を行う。
【0025】
本実施の形態における配管20は、一地点及び他地点を含み、異なる半径Rpを有する3区間を備える。この場合、3条件は、異なる半径Rpを有する3区間において準備される。図2は、本実施の形態に係る配管20を示す断面図である。配管20は、図2に示すように、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ3つの並列配管22と、を有する。図2に示す幅2Rp1、2Rp2及び2Rp3は、3つの並列配管の直径の幅、すなわち半径Rpの2倍の幅を示している。図2に示すように、3つの並列配管22は、それぞれ異なる半径Rp1、Rp2及びRp3を有する。換言すれば、配管20は、3つの並列配管22において、異なる半径Rp1、Rp2及びRp3を有する、第1区間31、第2区間32及び第3区間33の3つの区間を有する。
【0026】
配管20の材料は、例えばステンレスである。主配管21の半径は、例えば1cm以上150cm以下である。並列配管22の半径は、例えば1cm以上150cm以下である。
【0027】
本実施の形態における準備工程は、配管20に非ニュートン流体を流す工程を含む。本実施の形態においては、主配管21に非ニュートン流体を流すことによって、3つの並列配管22には、主配管21から非ニュートン流体が流れ込む。このとき、第1区間31、第2区間32、第3区間33には、3つの区間の半径Rpが異なることに起因して、異なる流量Q1、Q2及びQ3の非ニュートン流体が流れ込む。これによって、第1区間31、第2区間32及び第3区間33において、半径Rp及び流量Qの両方が異なる3条件が準備される。流量Q1、Q2及びQ3の範囲は、例えば体積流量において100L/h以上10,000L/h以下である。
【0028】
配管20に流して、レオロジー特性値を得る対象とする非ニュートン流体の種類は、特に限られない。非ニュートン流体は、例えばマヨネーズ、ケチャップ、ソース類、流動食などの食品、又は歯磨き粉、乳化タイプ・液粉混合タイプの洗剤や化粧品、インク、ペンキ、接着剤などである。
【0029】
(流量情報取得工程)
準備工程の後、装置10の流量情報取得機構11を用いて、準備工程において準備された3条件における非ニュートン流体の流量Qに関する情報を取得する、流量情報取得工程を行う。本実施の形態においては、配管20のうち異なる半径Rpを有する、第1区間31、第2区間32、第3区間33における流量Q1、Q2及びQ3を取得する。
【0030】
流量情報取得機構11は、例えば非ニュートン流体の流量Qを測定する流量計を有する。図2に示す場合、流量情報取得機構11は、例えば3つの区間にそれぞれ設けられた3つの流量計を有する。この場合、流量情報取得工程では、3つの流量計を用いて3つの区間における流量Qを測定することによって、流量Qに関する情報を取得する。流量計は、例えば電磁流量計又は質量流量計である。
【0031】
本実施の形態においては、3つの区間における流量Qに関する情報を、体積流量として取得する。流量Qを体積流量として取得する方法としては、流量Qを体積流量にて測定する流量計を用いる方法、又は流量Qを質量流量にて測定した上で、質量流量に非ニュートン流体の密度を除して体積流量に換算する方法が挙げられる。
【0032】
(圧力情報取得工程)
また、装置10の圧力情報取得機構12を用いて、流量情報取得工程を行った3条件において、配管20の一地点と、一地点から非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する、圧力情報取得工程を行う。
【0033】
本実施の形態においては、第1区間31の一地点31aと、一地点31aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L1だけ離れた他地点31bとの間の圧力差ΔP1、第2区間32の一地点32aと、一地点32aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L2だけ離れた他地点32bとの間の圧力差ΔP2、及び第3区間33の一地点33aと、一地点33aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L3だけ離れた他地点33bとの間の圧力差ΔP3に関する情報を取得する。3条件における一地点と他地点との間の距離Lは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。図2に示す例において、第1区間31の一地点31aと他地点31bとの距離L1、第2区間32の一地点32aと他地点32bとの間の距離L2、第3区間33の一地点33aと他地点33bとの間の距離L3は、それぞれ異なっている。
【0034】
圧力情報取得機構12は、例えば、3つの区間にそれぞれ設けられた3つの差圧計を有する。この場合、圧力情報取得工程では、差圧計を用いて一地点と他地点との間の圧力差ΔPを測定することによって、圧力差ΔPに関する情報を取得する。また、圧力情報取得機構12は、3つの区間にそれぞれ設けられ、一地点の圧力を測定する第1圧力計と、3つの区間にそれぞれ設けられ、他地点の圧力を測定する第2圧力計と、を有してもよい。この場合、圧力情報取得工程では、第1圧力計及び第2圧力計を用いて一地点及び他地点の圧力を測定し、一地点の圧力から他地点の圧力を引くことによって、圧力差ΔPに関する情報を取得する。
【0035】
圧力情報取得機構12は、一地点及び他地点において配管20の内側に設けられた弾性体を含むセンサ部を有してもよい。例えば、圧力情報取得機構12が第1圧力計及び第2圧力計を有する場合、第1圧力計及び第2圧力計が、配管20の内側に設けられた弾性体を含むセンサ部をそれぞれ有する。この場合、第1圧力計及び第2圧力計は、配管20内の圧力による弾性体のゆがみを検知することによって、配管20内の圧力を測定する。
【0036】
また、圧力情報取得機構12は、一地点及び他地点において配管20の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部を有してもよい。例えば、圧力情報取得機構12が第1圧力計及び第2圧力計を有する場合、第1圧力計及び第2圧力計が、配管20の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部をそれぞれ有する。この場合、第1圧力計及び第2圧力計は、配管20内の圧力による配管20の壁面のゆがみを、ひずみゲージを用いて検知することによって、配管20内の圧力を測定する。ひずみゲージは、配管20の内側に設けられていてもよく、配管20の外側に設けられていてもよい。ひずみゲージが配管20の内側に設けられている場合、ひずみゲージが配管20内の非ニュートン流体の流れを妨げにくくするためには、ひずみゲージは、配管20の壁面に埋め込まれていることが好ましい。
【0037】
図2に示すように、圧力差ΔPに関する情報を取得する一地点と他地点との位置は、一地点及び他地点の間において配管20が一方向に延びているように定められる。以下の理由のためである。後述する算出工程においては、一地点と他地点との間の圧力差ΔPが、配管20の壁面において生じる粘性摩擦力によって生じるとの仮定のもとで、レオロジー特性値を算出する。一方、配管20の壁面に折れが形成されている折れ部23においては、配管20を流れる非ニュートン流体の流れが十分に発達していない。したがって、配管20の一地点と他地点との間に折れ部23が存在する場合、流れを十分に発達させるための助走区間を設ける必要がある。助走区間がない、もしくは短い場合、折れ部23における流れが十分に発達していないため圧力差ΔPに影響を及ぼす恐れがある。これに対し、上述のように一地点及び他地点の位置を定めることによって、一地点と他地点との間の圧力差ΔPに対して助走区間中の流れが影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、後述する算出工程において圧力差ΔPが粘性摩擦力によって生じるとの仮定のもとでレオロジー特性値の算出を行うに際して、算出の精度を向上することができる。
【0038】
一地点よりも非ニュートン流体の流れる上流側に位置する折れ部23のうち、一地点に最も近い近接折れ部231と、一地点との距離Wは、対象となる被測定物の粘度によって異なるが、粘度が100Pa・s以上であれば距離Wは1mm以上であることが好ましく、粘度が10Pa・s以上であれば距離Wは10mm以上であることがより好ましく、粘度が1Pa・s以上であれば距離Wは100mm以上であることがさらに好ましい。距離Wが上記の範囲であることによって、近接折れ部231と一地点との距離を確保して、近接折れ部231において発生した助走区間中の流れの圧力差ΔPに対する影響を抑制して、より精度よくレオロジー特性値を算出することができる。
【0039】
圧力情報取得工程は、流量情報取得工程よりも前に行ってもよく、流量情報取得工程と同時に行ってもよく、流量情報取得工程よりも後に行ってもよい。
【0040】
(算出工程)
流量情報取得工程及び圧力情報取得工程の後に、算出部13を用いて、3条件における半径Rp、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する、算出工程を行う。算出部13は、例えばCPUである。
【数6】
(式(1)においてmは定数である。)
【0041】
ここで、式(1)において、τは配管20の壁面に生じる粘性摩擦応力である。また、式(1)において、mは、レオロジー特性値を得る対象とする非ニュートン流体の種類に応じて定められる定数である。mの値は、1より大きく、かつ10以下である。
【0042】
mの値は、例えば以下のようなキャリブレーションによって得ることができる。まず、配管20にキャリブレーション用の流体を流して、配管20の半径Rp又は配管20を流れるキャリブレーション用の流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件を4条件以上準備する。キャリブレーション用の流体は、例えば、レオロジー特性値を得る対象の非ニュートン流体と同種類の流体である。条件を4条件以上準備する方法は、例えば、準備工程において3条件を準備する方法と同様である。次に、キャリブレーション用の流体の、4条件以上の条件における流量Q及び圧力差ΔPを取得する。最後に、4条件以上の条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値とともに、mの値を算出する。
【0043】
一例として、配管20の半径Rp又は配管20を流れるキャリブレーション用の流体の流量Qの少なくとも一方が異なる4条件を準備した場合について説明する。この場合、粘性係数K、粘性指数n、降伏応力σ0、及びmは、式(1)及び式(2)を満たす以下の式(5)、式(6)、式(7)及び式(8)のようなモデルによって表現することができる。
【数7】
【0044】
以上より、4条件におけるキャリブレーション用の流体の半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、式(1)及び式(2)を満たすK、n、σ0、及びmの値の組み合わせを算出することによって、mの値を算出することができる。
【0045】
キャリブレーションによってmの値を得る方法は、例えば、レオロジー特性値を測定する非ニュートン流体を配管20に流す際にミキサーを用いる場合には、ミキサーが安定稼働するまでに行うことができる。
【0046】
式(1)が導かれる手順について説明する。図3に、非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係について、ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係とともに示す。非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係は、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値に基づいて、以下の式(4)によって表される。
【数8】
例えば、非ニュートン流体のうち、応力τとせん断速度γとの関係が図3の符号(I)が付された一点鎖線で表されるビンガム流体は、式(4)においてn=1,σ0>0となっている場合に該当する。また、非ニュートン流体のうち、応力τとせん断速度γとの関係が図3の符号(II)が付された実線で表される、降伏応力がゼロではない擬塑性流体は、式(4)においてn<1,σ0>0となっている場合に該当する。また、非ニュートン流体のうち、応力τとせん断速度γとの関係が図3の符号(III)が付された実線で表される、降伏応力がゼロではないダイラタント流体は、式(4)においてn>1,σ0>0となっている場合に該当する。なお、応力τとせん断速度γとの関係が図3の符号(IV)が付された二点鎖線で表されるニュートン流体も、式(4)においてn=1,σ0=0となっている場合に該当すると考えることが可能である。
【0047】
図4に示すように、断面円形の配管120の一地点120aと、一地点120aから距離Lだけ離れた他地点120bとの間を、一地点120aから他地点120bへ向かうz方向に非ニュートン流体が流れる場合であって、配管120の半径がRp、配管120を流れる非ニュートン流体の流量がQである場合について考える。図4に示す符号Aが付された一点鎖線は、断面円形の配管120の中心軸の位置を示す仮想の線である。この場合、図4に示すように、配管の中心軸Aからの距離をrとおくと、配管の一地点と他地点との間を流れる非ニュートン流体の流速uの分布と、流量Qとの関係から、以下の式(9)が得られ、流速uとせん断速度γとの関係から、以下の式(10)が得られる。
【数9】
【0048】
また、上記の式(4)を書き換えることによって、以下の式(11)が得られる
【数10】
【0049】
ここで、配管120中において生じる応力τの分布関数を、式(12)のようなm次関数として定義する。
【数11】
式(10)、(11)及び(12)を用いて式(9)を置換積分することによって、上記の式(1)を導くことができる。
【0050】
式(2)が導かれる手順について説明する。まず、配管120の一地点120aにおける圧力と他地点120bにおける圧力との圧力差ΔPについて考える。圧力差ΔPが、配管120の壁面において生じる粘性摩擦力Fによって生じると仮定すると、ΔPとFとの間には以下の式(13)が成立する。
【数12】
【0051】
また、Fは、以下の式(14)で表される。
【数13】
式(12)より、τはz方向に依存しない値なので、式(14)は以下の式(15)と表される。
【数14】
式(13)に式(15)を代入することによって、以下の式(16)が得られる。
【数15】
式(16)を整理することによって、上記の式(2)を導くことができる。
【0052】
式(1)及び式(2)から、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する方法について説明する。粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0は、上述の通りmの値を適宜定義することによって、式(1)及び式(2)を満たす以下の式(5)、式(6)及び式(7)のようなモデルによって表現することができる。
【数16】
【0053】
以上より、算出工程においては、半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる3条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、式(1)及び式(2)を満たすK、n、及びσ0の値を算出することによって、3つのレオロジー特性値を算出することができる。
【0054】
(粘度算出工程)
次に、粘度算出部14を用いて、算出工程において算出されたレオロジー特性値に基づいて、非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出工程を行う。粘度算出工程では、上記の式(4)に、算出工程において算出された粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の値を代入した上で、式(4)を上述の式(3)に代入することによって、せん断速度γの関数としての粘度μ、すなわちμ(γ)を算出する。粘度算出部14は、例えばCPUである。
【0055】
本実施の形態に係る方法によれば、配管20を連続的に流れる非ニュートン流体について、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値、及びせん断速度γの関数としての粘度μを算出することができる。このため、配管20を連続的に流れる非ニュートン流体について、粘性係数K、粘性指数n、降伏応力σ0及び粘度μを継続的に算出してモニタリングすることができる。
【0056】
(第1の変形例)
上述の実施の形態においては、配管20が、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ、3つの並列配管22と、を有する場合に、3つの並列配管22を、半径Rpが異なる3区間として用いる例について示した。しかしながら、3区間の態様はこれに限られない。図5は、第1の変形例に係る方法に用いられる配管20を示す断面図である。図5に示すように、第1の変形例において、配管20は、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ2つの並列配管22と、を有する。そして、主配管21及び2つの並列配管22が、異なる半径Rp1、Rp2及びRp3をそれぞれ有する。この場合、主配管21と2つの並列配管22とを、半径Rpが異なる第1区間31、第2区間32及び第3区間33の3区間として用いてもよい。
【0057】
(第2の変形例)
上述の実施の形態及び変形例においては、配管20が、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ並列配管22と、を有する場合に、並列配管22を、半径Rpが異なる区間として用いる例について示した。しかしながら、3区間の態様はこれに限られない。図6は、第2の変形例に係る方法に用いられる配管20を示す断面図である。第2の変形例における配管20は、図6に示すように、直列に並ぶ、第1区間31、第2区間32及び第3区間33の3区間を備える。3区間は、異なる半径Rp1、Rp2及びRp3をそれぞれ有する。この場合、3区間が直列に並ぶために、3区間を流れる非ニュートン流体の流量Q1、Q2及びQ3は等しくなる。このため、流量情報取得工程においては、3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、3区間における流量Qに関する情報として取得してもよい。この場合、流量情報取得機構11は、3区間のうち1区間の流量Qを測定するように設けられた1つの流量計を有してもよい。例えば第1区間31の流量Q1を測定するように設けられた流量計を用いて流量Q1を測定し、第2区間32の流量Q2及び第3区間33のQ3も流量Q1と同様とすることによって、流量Q1、Q2及びQ3に関する情報を取得することができる。また、流量情報取得工程においては、3区間と直列に並ぶ図示しない第4区間における流量を測定し、流量Q1、Q2及びQ3は第4区間の流量と同様とすることによって、流量Q1、Q2及びQ3を取得してもよい。この場合、流量情報取得機構11は、第4区間の流量を測定するように設けられた1つの流量計を有してもよい。
【0058】
(第3の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、配管20の半径Rp又は配管20を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる3条件として、配管20の異なる3区間における3条件を準備する例について示した。しかしながら、3条件の態様はこれに限られない。図7は、第3の変形例に係る方法を示す図である。第3の変形例における配管20は、図7に示すように、一地点35aと、一地点35aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L5だけ離れた他地点35bと、を含む区間35を備える。区間35は、半径Rp5を有する。
【0059】
第3の変形例では、準備工程において、区間35を備える配管20に、非ニュートン流体を流す。ここで、区間35を流れる非ニュートン流体の流量Qは、時間毎に変化しているものとする。時間毎の流量Qの変化は、例えば、ポンプを用いて非ニュートン流体を区間35に流している場合に、ポンプの脈動に起因して生じる。図7(a)〜(c)は、流量Qが異なる3時点における区間35の様子をそれぞれ示している。図7(a)は流量がQ1である第1時点、図7(b)は流量がQ1とは異なるQ2である第2時点、図7(c)は流量がQ1及びQ2とは異なるQ3である第3時点における区間35の様子を示している。脈動による流量Qの変化の周期は、10ミリ秒以上500ミリ秒以下であり、例えば80ミリ秒である。ここで、流量Qの変化の周期とは、流量Qを連続的に測定した場合における、極大値を記録してから次の極大値を記録するまでに経過した時間の平均値を意味する。この場合に、流量情報取得工程では、配管20の区間35の流量Qが異なる、第1時点、第2時点及び第3時点の3時点において、流量Q1、Q2及びQ3に関する情報を取得する。流量情報取得機構11は、区間35の流量を測定するように設けられた1つの流量計を有する。流量情報取得工程では、1つの流量計を用いて、3時点において流量を測定することによって、流量Q1、Q2及びQ3に関する情報を取得することができる。
【0060】
第3の変形例における、流量Q1、Q2及びQ3に関する情報を取得する3時点の定め方について説明する。図8は、区間35の流量Qを連続的に測定した場合における測定結果の一例について、区間35の一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔPの測定結果の一例とともに示す図である。図8の横軸は経過した時間tを表す。また、図8の縦軸は、流量Q又は圧力差ΔPの大きさを表す。「Q」と付された実線は流量Qの測定結果の一例を表し、「ΔP」と付された一点鎖線は圧力差ΔPの測定結果の一例を表す。流量Qが図8に示すように変化する場合、流量Qが極値をとる時点のうち3つを、流量Q1、Q2及びQ3に関する情報を取得する、第1時点T1、第2時点T2及び第3時点T3の3時点と定めることができる。流量Qが極値をとる時点は、流量Qの変化率が0となる時点として検出することができる。3つの時点を定める基準となる流量Qの3つの極値は、3つの極小値又は3つの極大値であってもよいが、極小値と極大値とを少なくとも1つ含むことが好ましい。3つの極値が極小値と極大値とを少なくとも1つ含むことによって、より流量Qが大きく異なる3条件に基づいて、より精度よくレオロジー特性値を算出することができる。
【0061】
また、圧力情報取得工程では、流量Qに関する情報を取得した3時点において、区間35の一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3に関する情報を取得する。この場合、圧力情報取得機構12は、例えば、一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔPを測定するように設けられた1つの差圧計を有する。圧力情報取得機構12が1つの差圧計を有する場合、圧力情報取得工程では、1つの差圧計を用いて、3時点において圧力差を測定することによって、圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3に関する情報を取得することができる。又は、圧力情報取得機構12は、一地点35aの圧力を測定する第1圧力計と、他地点35bの圧力を測定する第2圧力計と、を有してもよい。圧力情報取得機構12が第1圧力計と第2圧力計とを有する場合、圧力情報取得工程では、第1圧力計及び第2圧力計を用いて、3時点における一地点35a及び他地点35bの圧力を測定し、一地点35aの圧力から他地点35bの圧力を引くことによって、圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3に関する情報を取得する。
【0062】
区間35の流量Qを連続的に測定した場合における測定結果と、区間35の一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔPを連続的に測定した場合における測定結果とは、極値をとる時点がずれる場合がある。図8に示す例においては、流量Qが極値を有する3時点T1、T2及びT3と、圧力差ΔPが極値を有する3時点T1´、T2´及びT3´との間には、それぞれΔT分のずれが生じている。このずれは、流量Qを測定する流量計の位置と、圧力差ΔPを測定する差圧計又は圧力計の位置との距離に起因するずれであると考えられる。この場合、圧力情報取得工程では、圧力差ΔPが極値を有する時点T1´、T2´及びT3´のうち、それぞれ3時点T1、T2及びT3と最も近い時点における圧力差ΔPを、3時点T1、T2及びT3における圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3として取得してもよい。このようにΔPを取得することによって、流量Qの極値と圧力差ΔPの極値とを対応させ、流量Qの変化と圧力差ΔPの変化とのずれを補正することができる。この場合、圧力差ΔPが極値をとる時点は、圧力差ΔPの変化率が0となる時点として検出することができる。
【0063】
(第4の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、算出工程において、異なる3条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、レオロジー特性値を算出する例について示した。しかしながら、レオロジー特性値を算出する方法はこれに限られず、半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる条件を4条件以上用いて、レオロジー特性値を算出してもよい。この場合、準備工程においては、半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる条件を4条件以上準備する。
【0064】
第4の変形例として、異なる4条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、レオロジー特性値を算出する例について説明する。
【0065】
算出工程において用いられる式(1)を変形することによって、以下の式(1)´が得られる。
【数17】
【0066】
ここで、以下のようにx、y、a、b及びcを定める。
【数18】
【0067】
式(1)´及び式(17)〜式(21)から、以下の式(22)が得られる。
【数19】
【0068】
式(17)より、xは、配管20の半径Rp及び流量Qから算出することができる。また、式(2)及び式(18)より、yは、配管20の半径Rp、距離L、及び圧力差ΔPから算出することができる。このため、準備工程において4条件を準備し、4条件における圧力差ΔP及び流量Qを取得することによって、(x,y)の数値の組が4つ得られる。図9は、得られた4つの(x,y)の数値の組の一例を示す図である。図9の横軸はxの値を表す。また、図9の縦軸はyの値を表す。図9の点D1、D2、D3及びD4は、得られた4つの(x,y)の数値の組のプロットを表す。これら数値の組の関係を、式(22)で表される関数を用いて近似し、式(22)で表される関数が(x,y)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなa、b及びcの値を決定する。図9の曲線C1は、(x,y)の数値の組の関係を近似する、式(22)で表される関数の一例を表す。式(22)で表される関数を用いた近似、並びにa、b及びcの値の決定は、例えば最小二乗法によって行う。式(22)で表される関数を用いた近似、並びにa、b及びcの値の決定は、最小絶対値法によって行ってもよい。求められたa、b及びcの値から、式(19)〜式(21)を用いて、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値を算出する。
【0069】
異なる条件を4条件以上用いてレオロジー特性値を算出することによって、異なる条件を3条件用いてレオロジー特性値を算出する場合よりも、より多くの条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいてレオロジー特性値が算出されるため、レオロジー特性値の算出精度を向上することができる。特に、図9に示すように、(x,y)の数値の組の関係を式(22)で表される関数を用いて近似することによってレオロジー特性値を算出する場合、近似に用いられる(x,y)の数値のプロット数が増加するため、レオロジー特性値の算出精度を向上することができる。
【0070】
(第5の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、配管20にキャリブレーション用の流体を流してキャリブレーションを行うことによって式(1)のmの値を算出した上で、算出したmの値を用いてレオロジー特性値を算出する例について示した。しかしながら、レオロジー特性値を算出する方法はこれに限られず、非ニュートン流体の3つのレオロジー特性値を算出する際に、mの値と3つのレオロジー特性値とを算出してもよい。この場合、準備工程においては、半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる条件を4条件以上準備する。
【0071】
第5の変形例として、異なる4条件における半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、mの値と3つのレオロジー特性値とを算出する例について説明する。この場合、粘性係数K、粘性指数n、降伏応力σ0、及びmは、式(1)及び式(2)を満たす以下の式(5)、式(6)、式(7)及び式(8)のようなモデルによって表現することができる。
【数20】
【0072】
以上より、4条件における非ニュートン流体の半径Rp、流量Q、距離L、及び圧力差ΔPに基づいて、式(1)及び式(2)を満たすK、n、σ0、及びmの値の組み合わせを算出することによって、mの値と、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値とを算出することができる。
【0073】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。例えば、準備工程において準備される3条件以上の条件は、主配管及び並列配管を備える配管においては、主配管内に位置し、半径Rp1を有する第1区間と、主配管内に位置して第1区間と直列に並び、半径Rp1とは異なる半径Rp2を有する第2区間と、主配管と並列に並ぶ並列配管に位置し、半径Rp1及び半径Rp2とは異なる半径Rp3を有する第3区間と、において準備される3条件を含み得る。また、準備工程において準備される3条件以上の条件は、流量Qが時間毎に変化する配管においては、半径Rp1を有する配管の第1区間における、流量Qが異なる第1時点及び第2時点と、半径Rp1とは異なる半径Rp2を有する配管の第2区間と、において準備される3条件を含んでもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 装置
11 流量情報取得機構
12 圧力情報取得機構
13 算出部
14 粘度算出部
20 配管
21 主配管
22 並列配管
23 折れ部
231 近接折れ部
31 第1区間
32 第2区間
33 第3区間
35 区間
120 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9