(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態の絞り装置100を備えるレンズ鏡筒200及びそのレンズ鏡筒200が着脱可能なカメラボディ300の概略図である。
【0009】
(カメラボディ)
カメラボディ300は、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像部302と、カメラボディ300全体を制御するカメラ制御部304と、撮影を開始するレリーズスイッチ305とを有する。
カメラボディ300は連写が可能で、連写速度を選択可能な設定部303を備える。本実施形態において撮影者は、設定部303より、例えば5コマ/秒の連写と10コマ/秒の連写とのいずれかを選択することができる。
また、設定部303は、撮影時の絞り値も設定可能であり、撮影者は、設定部303を介して任意の絞り値を選択することができる。
【0010】
(レンズ鏡筒)
レンズ鏡筒200は、撮影用レンズ(ズームレンズ201のみ示す)と、レンズ鏡筒200の絞り径を調整する絞り装置100と、レンズ鏡筒200の焦点距離を測定するエンコーダ202と、焦点距離ごとの絞り径制御データを持つメモリ203と、レンズ鏡筒200全体を制御するレンズ制御部204と、を備え、カメラボディ300に対して着脱可能となっている。
【0011】
図2は、テレ端の状態のレンズ鏡筒200の部分拡大図である。図示するようにレンズ鏡筒200は、上述した各部材のほかに、外側固定環210と、ズーム操作環211と、連動部材212と、カム環213と、内側固定環214とを備える。
【0012】
外側固定環210は、撮影用レンズの支持や全体構造の基準となる筒体である。
外側固定環210には、ズーム操作環211が、光軸OAを中心として回転可能に配置されている。
ズーム操作環211は、変倍動作(ズーミング)の際に、撮影者によって回転されるものである。ズーム操作環211の外周面には滑り止めのゴム層211aが設けられている。
ズーム操作環211には、連動部材212の一端が固定されている。
【0013】
連動部材212の他端は、ズーム操作環211の内径側に配置されたカム環213に連結されている。
ズーム操作環211が回転すると、連動部材212によって回転が伝達されてカム環213も共に回転する。
カム環213には、後述のカムローラ216が係合するカム溝213aが設けられている。
【0014】
カム環213の内側には内側固定環214が配置されている。
内側固定環214には、直進溝214aと、副絞りカム溝214bとが設けられている。
直進溝214aは、ズームレンズ201の回転を規制する。副絞りカム溝214bは、副絞り羽根122の開放径を所定量変化させるために、後述する副絞り側回転部材121に設けられた突起部121aと係合する。
【0015】
内側固定環214の内径側には、ズームレンズ201と、ズームレンズ201を保持するレンズ保持枠217と、絞り装置100が配置されている。
【0016】
レンズ保持枠217と、絞り装置100とは、連結部材218で連結されている。
連結部材218は、外周に上述のカムローラ216が取り付けられている。カムローラ216は、カム溝213aと直進溝214aとに係合する。
【0017】
(絞り装置)
絞り装置100は、開放絞り口径内で絞り口径を可変設定する主絞り機構110と、開放絞り口径を可変設定する副絞り機構120とがユニット化されたものである。
【0018】
(主絞り機構)
主絞り機構110は、ステッピングモータ130を駆動源とし、主絞り羽根112の基準位置検出用PI131と、2個のダボが一体の7枚の主絞り羽根112とを備える。
また、主絞り機構110は、一方のダボが係合する7個の穴を有し、光軸OAを中心として回転する主絞り側回転部材111を備える。
さらに、主絞り機構110は、他方のダボが係合する7個のカム溝213aを有し、レンズ鏡筒200に固定されている固定部材123を備える。
【0019】
主絞り羽根112は、薄板状部材で形成され、一辺が略直線で、円周方向に湾曲した略三角形状を有している。
ステッピングモータ130は、押さえ板114を介して固定部材123に固定されている。
また、ステッピングモータ130の出力ギヤは主絞り側回転部材111と結合されている。ステッピングモータ130を駆動源として主絞り側回転部材111が回転駆動されることにより主絞り羽根112が開閉し、副絞り羽根122によって形成された開放絞り径(副絞り径)以下の範囲内で所定の絞り径(主絞り径)を形成する。
【0020】
同様に押さえ板114には、フォトインタラプタ(以下、PIという)131が取り付けられ、一方、そのPI131の検出部の間を、主絞り側回転部材111から延びる遮光板111aが通過することで、主絞り羽根112の基準位置が検出される。
なお、ステッピングモータ130及びPI131は図示しないFPCに接続され、外部から信号及び電力が供給される。
【0021】
エンコーダ202は、ズームレンズ201の位置をより焦点距離を検出する。エンコーダ202により測定されたレンズ鏡筒200の焦点距離情報は、レンズ制御部204に送信される。
メモリ203は、焦点距離情報を焦点距離ごとの主絞り羽根112の絞り径制御データを有する。
レンズ制御部204は、メモリ203に記憶されている絞り径制御データと、焦点距離情報を照合する。
そしてレンズ制御部204は、レンズ鏡筒200の焦点距離に対応した主絞り羽根の絞り径制御データに基づき、撮影者により設定された絞り値、又は、カメラ制御部304により自動的に設定された絞り値に対応してステッピングモータ130を介して主絞り羽根112を駆動する。
【0022】
(副絞り機構)
副絞り機構120は、ズーム操作環211と連動し焦点距離に応じた開放径を形成する。
副絞り機構120は、2個のダボが一体の7枚の副絞り羽根122と、一方のダボが係合する7個の穴を有する固定部材123を備える。さらに副絞り機構120は、他方のダボが係合する7個のカム溝213aを有するとともに、光軸OA中心に回転する外周部に突起部121aを有する副絞り側回転部材121とを備える。なお、固定部材123は主絞り機構110と共通である。
【0023】
ズーム操作環211をテレ側からワイド側へ回転させると、連動部材212が回転する。
そうすると、連動部材212と係合しているカム環213が回転し、カム環213のカム溝213aと内側固定環214の直進溝214aに係合しているカムローラ216が固定されている連結部材218が直進移動する。
連結部材218と一体の移動を行う副絞り機構120の副絞り側回転部材121の突起部121aが内側固定環214の直進溝214aと係合しているので、副絞り機構120が直進移動することで副絞り側回転部材121を回転させ開放径を小さい方に変化させる。
【0024】
(レンズ制御部)
レンズ制御部204は、カメラボディ300の設定部303を介して連写が設定されると、カメラ制御部304を介して、設定された連写のコマ速情報を受信する。
また、レンズ制御部204は、ズーム操作環211の回転により駆動されたズームレンズ201の焦点距離情報をエンコーダ202より受信する。
【0025】
レンズ制御部204は、受信したコマ速情報に対応した絞り径制御データをメモリ203より読み出し、このコマ速及び焦点距離に応じて、ステッピングモータ130によって、絞り装置100の主絞り羽根112の駆動を制御する。
【0026】
(絞り装置の制御)
次に、本実施形態の絞り装置100(電磁絞り)の制御について説明する。
図3は、連写速度が5コマ/秒の場合の絞り装置100の駆動を説明するグラフである。
図4は、連写速度が10コマ/秒の場合の絞り装置100の駆動を説明するグラフである。
【0027】
図3及び
図4において、横軸はレンズ鏡筒200の焦点距離を示す。ftは焦点距離がテレ端、fwは焦点距離がワイド端、その間のfm1〜fm3は、焦点距離がテレ端とワイド端の間の中間にある場合である。テレ側からfm1、fm2、fm3の順になっている。縦軸は、主絞り機構110及び副絞り機構120の径の大きさを示す。
【0028】
1)副絞り径(開放径)
図3及び
図4中の二点鎖線ALは、各焦点距離において副絞り羽根122によって形成される副絞り径を示す。
φstは、焦点距離がテレ端のときの副絞り径である。
φsm1〜φsm3は、焦点距離がテレ端とワイド端との間のミドル時の副絞り径であり、テレ側からφsm1、φsm2、φsm3ある。
φswは、焦点距離がワイド端のときの副絞り径である。
【0029】
2)主絞り最少絞り径
図3及び
図4中の一点鎖線は、各焦点距離において主絞り羽根112によって形成される最小絞り径を示す。
φetsは、焦点距離がテレ端のときの主絞り羽根112によって形成される最小絞り径である。
φem1s〜φems3は、焦点距離がテレ端とワイド端との間のミドル時のときの主絞り羽根112によって形成される最小絞り径である。
φewsは、焦点距離がワイド端のときの主絞り羽根112によって形成される主最小絞り径である。
【0030】
3)主絞り駆動開始径
実線EALは主絞り羽根112の駆動開始径の駆動線を示す。駆動開始径は、絞り自体の開放径を形成する副絞り羽根122によって形成される径よりも開いている。主絞り羽根112は、撮影ごとに、この駆動開始径から駆動を開始し、副絞り羽根122によって形成される径を通過し、設定された絞り径まで駆動される。
【0031】
図3の5コマ/秒の場合、主絞り羽根112の駆動開始径は、レンズ鏡筒200がテレ端であるかワイド端であるかにかかわらず、φetwで一定である。
一方、
図4の10コマ/秒の場合、主絞り羽根112の駆動開始径は、レンズ鏡筒200がテレ端である場合は、5コマと同様にφetwである。
しかし、レンズ鏡筒200の焦点距離がワイド端に移動し、所定の位置(図中焦点距離fmcの位置)になると、主絞り羽根112の駆動開始径は減少し始める。
本実施形態では、焦点距離fmcからfw(ワイド端)になるまでφetwからφetw’まで線形に減少する。
【0032】
4)絞り込み時間
ここで、主絞り羽根112は、撮影の度に、実線で示す駆動開始径から、設定された絞り径まで変化する。そのときの駆動にかかる最大絞り込み時間を図中Tで示す。
【0033】
図3に示す連写速度5コマ/秒の場合、Ttは、レンズ鏡筒200がテレ端のときの最小絞りまでの絞り込み時間である。このときの副絞り羽根122と、開放状態の主絞り羽根112の状態を
図2に示す(主絞り羽根112(A)と副絞り羽根122(A)の状態)。
【0034】
図3に示す連写速度5コマ/秒の場合、Twは、レンズがワイド端のときの絞り込み時間であり、Tm1〜Tm3は、レンズがテレ端とミドル端の間の場合の絞り込み時間であり、テレ側からTm1、Tm2、Tm3である。
Tm2のときの主絞り羽根112と副絞り羽根122の開放位置関係は
図3に示す主絞り羽根112(B)と副絞り羽根122(B)の状態である。
また、
図5は、
図2と同様のレンズ鏡筒の部分断面図であるが、5コマでTm2のときの主絞り羽根112と副絞り羽根122の開放位置関係である主絞り羽根112(B)と副絞り羽根122(B)の状態を示す。
【0035】
図示するように、主絞り機構110の最小絞り径は、レンズ鏡筒200の焦点距離がテレからワイドに変化するのに従い、副絞り機構120で形成する開放径と同様に小さくなる。
しかし、5コマでは、主絞り機構110の駆動開始径は一定のφetwである。
このため、レンズ鏡筒200がテレからワイドになるに従い、絞り込量が多くなり、絞り込み時間TはTt<Tm1<Tm2<Tm3<Twと長くなる。
【0036】
(コマ速との関連)
ここで、カメラボディ300が、設定されたコマ速度10コマ/秒を達成するために、絞り込み時間として使用できる時間をTmcとすると、5コマ/時の場合に絞り込み時間として使用できる時間は、Tmcの2倍である。
【0037】
図3に示すように、絞り込みは、一定値である主絞り機構110の駆動開始径φettから開始して設定された絞り径まで絞られる。
このとき、最長時間はレンズがワイドのときのTwである。
しかし、2Tmc>Twなので開放時は電磁絞り径はテレ状態のままで仕様を達成できる。
【0038】
しかし、
図4に示すように、焦点距離が、テレ端のftから、テレ端とワイド端との間のテレ端よりである絞り込み時間がTmcになるfmcまでは、一定値である主絞りの駆動開始径φettから開始して設定された絞り径まで絞られる。
しかし、焦点距離がfmcからfwへと開放側になり、駆動開始径をφettからにすると、絞り込み時間がTmc以上になる場合、駆動開始径φetは、縮小される。
【0039】
そして、主絞りの駆動開始径は、Tmcを確保するような電磁絞り径位置へ駆動される。この時間はTmcと同じかそれよりも短い。但し、開放径光束径よりも大きい。
fm2のときの主絞り羽根112と副絞り羽根122の開放位置関係は
図4に示す主絞り羽根112(C)と副絞り羽根122(C)の状態である。
また、
図6は、
図2と同様のレンズ鏡筒の部分断面図であるが、10コマでTm2のときの主絞り羽根112と副絞り羽根122の開放位置関係である主絞り羽根112(C)と副絞り羽根122(C)の状態を示す。
【0040】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)絞り駆動開始位置は、絞り開放径の変化に応じて、絞り開放径よりも外径側の範囲内において、絞り部材(主絞り羽根112)の絞り駆動開始位置から絞り位置までの駆動時間を短縮するように変更される。したがって、例えば高速連写の場合でも、絞り部材(主絞り羽根112)の駆動時間により、高速連写速度が制限されてしまう可能性が低減する。
そして、コマ速データとズームの焦点距離データから開放時の電磁絞り駆動の必要性の有無を判断し、必要と判断した場合は適切な位置まで駆動することで仕様の達成を行うことができる。
【0041】
(2)開放径形成部材(副絞り羽根122)によって規定される絞り開放径は、焦点距離に応じて変化する。本実施形態の絞り部材(主絞り羽根112)は、絞り開放径の変化、すなわち焦点距離に応じて変更される。
(3)カメラボディ300より連写速度情報を取得する連写速度情報取得部(レンズ制御部)204を備え、絞り駆動開始位置は、連写速度情報取得部より取得された連写速度情報に基づき変更される。したがって、連写速度に支障がない場合は絞り駆動開始位置の変更を行わないことを選択可能なので、不要な電力消費を抑えることができる。
【0042】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
なお、実施形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。