特許第6759648号(P6759648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6759648ポリウレタンインテグラルスキンフォーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759648
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】ポリウレタンインテグラルスキンフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20200910BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20200910BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20200910BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20200910BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20200910BHJP
【FI】
   C08G18/00 M
   C08G18/10
   C08G18/76
   C08G18/48
   C08G18/00 L
   C08G101:00
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-58313(P2016-58313)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-204635(P2016-204635A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-83399(P2015-83399)
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井邉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】吉井 直哉
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−306325(JP,A)
【文献】 特開平05−306324(JP,A)
【文献】 特開平06−322057(JP,A)
【文献】 特開平06−322058(JP,A)
【文献】 米国特許第05234961(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08G 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、および発泡剤(D)を原料とするポリウレタンインテグラルスキンフォームであって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であること、およびポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であること、を特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項2】
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、常温において液状であるジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a2)であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項3】
有機ポリイソシアネート組成物(A)中に粘度低減剤(F)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項4】
ポリオール成分(B)が、(b1)以外のポリエーテルポリオール(b2)を含み、(b2)が、平均官能基数2〜4の重合開始剤と、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合生成物であり、水酸基当量1,000〜3,000のポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項5】
フォーム密度が150〜500kg/mであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項6】
反発弾性率が60%以上であり、伸び率が200%以上であり、且つ引裂強さが30N/cm以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【請求項7】
有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、および発泡剤(D)の存在下で反応させるポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法において、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であること、および、ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であること、を特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【請求項8】
有機ポリイソシアネート組成物(A)が、常温で液状であるジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a2)であることを特徴とする請求項に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【請求項9】
有機ポリイソシアネート組成物(A)中に粘度低減剤(F)を含むことを特徴とする請求項7又は8に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【請求項10】
ポリオール成分(B)が、(b1)以外のポリエーテルポリオール(b2)を含み、(b2)が、平均官能基数2〜4の重合開始剤に、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を重合した、水酸基当量1,000〜3,000のポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ポリウレタンインテグラルスキンフォーム(以下、「ISF」と称する場合がある。)及び当該ISFの製造方法に関するものである。さらに詳しくは,幅広い温度帯域において高い反発弾性を有しつつ、生産性や成形物としての機械的強度に優れたISFの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ISFは、その生産性の良さ、機械的強度、感触の良さ等から、靴底用素材やステアリングホイールをはじめとする自動車の内装部品として広く使用されているが、高性能な靴底等に好適な高い反発弾性率を常用の温度帯で有しつつ、良好な機械的強度を有するISFの技術はこれまで知られていなかった。
【0003】
特許文献1には、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある。)を使用した比較的高い密度を有する高弾性軟質ポリウレタンフォームが提案されている。
【0004】
しかしながら、当該ポリウレタンフォームは架橋剤を使用し、化学的架橋量を増やすことで高い弾性率を実現しているものであり、靴底用樹脂等として十分な伸び率や引き裂き強度等の機械的強度を実現することができない。
【0005】
また、特許文献2には、靴底部材としての低密度ポリウレタン成形物を与える方法が記載されているが複雑な工程であり、さらに開示されている弾性率では十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−342343号公報
【特許文献2】特表2015−507513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高反発弾性率を幅広い温度帯域で有し、機械的強度や生産性に優れるISFの提供及びISFの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、これらの問題点を解決することを目的として鋭意検討研究を重ねた結果、有機ポリイソシアネート組成物として特定分子量範囲のポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMEG」と称する場合がある。)でウレタン変性した特定のイソシアネート基含有率を有する有機ポリイソシアネート組成物を使用することにより本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は,以下の(1)〜(12)の実施形態を含む。
【0010】
(1)少なくとも有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、発泡剤(D)を原料とするポリウレタンインテグラルスキンフォームであって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であることを特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0011】
(2)有機ポリイソシアネート組成物(A)が、常温において液状であるジフェニルメタンジイソシアネートと数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールとのウレタン変性体であり、イソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a2)であることを特徴とする上記(1)に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0012】
(3)有機ポリイソシアネート組成物(A)中に粘度低減剤(F)を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0013】
(4)ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であることを特徴とする、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0014】
(5)ポリオール成分(B)が、(b1)以外のポリエーテルポリオール(b2)を含み、(b2)が、平均官能基数2〜4の重合開始剤と、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合生成物であり、水酸基当量1,000〜3,000のポリエーテルポリオールであることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0015】
(6)フォーム密度が150〜500kg/m3であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0016】
(7)反発弾性率が60%以上であり、伸び率が200%以上であり、且つ引裂強さが30N/cm以上であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォーム。
【0017】
(8)有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)の存在下で反応させるポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法であって、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であることを特徴とするポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【0018】
(9)有機ポリイソシアネート組成物(A)が、常温で液状であるジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a2)であることを特徴とする上記(8)に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【0019】
(10)有機ポリイソシアネート組成物(A)中に粘度低減剤(F)を含むことを特徴とする上記(8)又は(9)に記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【0020】
(11)ポリオール成分(B)が、数平均分子量600〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール(b1)を含み、ポリオール成分(B)中の(b1)の比率が50質量%以上であることを特徴とする、上記(8)乃至(10)のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【0021】
(12)ポリオール成分(B)が、(b1)以外のポリエーテルポリオール(b2)を含み、(b2)が、平均官能基数2〜4の重合開始剤に、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を重合した、水酸基当量1,000〜3,000のポリエーテルポリオールであることを特徴とする上記(8)乃至(11)のいずれかに記載のポリウレタンインテグラルスキンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、ISFにおいて機械的強度等の物性を低下させずに幅広い温度帯域で反発弾性率を顕著に向上させることができる。また、本発明により製造されたISFは靴底用樹脂等高い弾性性能が必要な素材に広く利用でき非常に有用である。さらに、ISF製造の際、一般的な発泡装置での高い生産安定性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明のポリウレタンインテグラルスキンフォームは、少なくとも有機ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、及び発泡剤(D)を原料とするポリウレタンインテグラルスキンフォームにおいて、有機ポリイソシアネート組成物(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを数平均分子量1,000〜3,500のポリテトラメチレンエーテルグリコールにてウレタン変性したイソシアネート基含有率7〜25質量%の有機ポリイソシアネート(a1)であることをその特徴とする。
【0025】
本発明で使用する有機ポリイソシアネート組成物(A)は、MDIをPTMEGにてウレタン変性した有機ポリイソシアネート(a1)又は、常温において液状であるMDI(以下、「液状MDI」と称する。)をPTMEGでウレタン変性した有機ポリイソシアネート(a2)である。ここで常温とは、JIS Z8703(試験場所の標準状態)に準じており、20℃±15℃を意味する。
【0026】
本発明で使用している有機ポリイソシアネート(a1)、(a2)のイソシアネート基含有率は、7〜25質量%であり、好ましくは10〜20質量%である。イソシアネート基含有率が下限を下回る場合,有機ポリイソシアネートの粘度が非常に高くなり、発泡装置への導入が困難になると共に、一般的な発泡装置のイソシアネートやポリオール類の混合能力では十分均一に混合されない問題がある。一方上限以上のイソシアネート基含有率では、イソシアネートとポリオール、発泡剤としての水との反応がランダムとなり、特にイソシアネートと水との反応によって生じるウレア結合繰り返し単位の巨大化が原因として推定される反発弾性率の顕著な低下が見られる。
【0027】
本発明で使用している有機ポリイソシアネート(a1)及び(a2)のウレタン変性用ポリオールは、数平均分子量1,000〜3,500のPTMEGであり、好ましくは数平均分子量1,500〜3,500のPTMEGである。数平均分子量が下限を下回ると、PTMEG鎖がソフトセグメントとして十分機能しなくなるために反発弾性率目標値の達成が困難となる。一方で、上限値以上の分子量では靴底等の用途に好適なISFとしての硬さが得られなくなると共に、PTMEG鎖の結晶性が高まり、有機ポリイソシアネートの低温貯蔵安定性が悪化するという問題がある。
【0028】
有機ポリイソシアネート(a1)及び(a2)のウレタン変性用PTMEGは、テトラヒドロフランのみを開環重合した数平均分子量1,000〜3,500、さらに好ましくは数平均分子量1,500〜3,500の2官能ポリオールであることが、反発弾性率、伸び率、引裂き強度を中心とした機械物性の面で好ましい。ただし、重合前モノマーとして10モル%までの範囲であれば他のエーテル単位を分子内に導入しても本技術の効果を大きく損なうことは無い。一般的にはPTMEGの常温液状化を目的とした1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の導入が可能である。
【0029】
有機ポリイソシアネート(a1)に用いるMDIは、4,4’−MDIを主成分とすることが好ましい。MDIには4,4’−MDI以外に異性体として2,2’−MDI、2,4’−MDIが存在するが、これら異性体のMDI中の含有率は、60質量%以下が好ましい。MDI異性体が大量に含まれる場合、ISF硬度の低下、反応性低下による生産性の悪化等が生じる恐れがある。
【0030】
また、(a1)に用いるMDIは、類似構造体のポリフェニレンポリメチルポリイソシアネート(p−MDI)を含むことも可能であるが、イソシアネート官能基数増大によるISFの伸び率低下、p−MDI由来のISF着色等が生じるため、有機ポリイソシアネート(a1)に使用されるMDIに対し、p−MDIの含有率は10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
有機ポリイソシアネート(a2)に用いられる液状MDIは、
(1)MDIを200℃以上で反応させる、
(2)MDIにトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート等を触媒として添加した上で170℃以上で反応させる、又は
(3)MDIに3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン1−オキシド等のホスホレン化合物を触媒として添加した上で、70℃以上で反応させ、所定の反応率で反応停止剤を添加する、
等の方法で得られるMDIの部分カルボジイミド及び部分ウレトンイミン変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである。本発明に用いられる液状MDIは、ISFの着色を防止するという観点からホスホレン系触媒により低温で反応を進行させた液状MDIが望ましい。
【0032】
また、上記反応が終了し、反応停止剤を添加した後、50℃以下の温度で24時間以上保管し、カルボジイミド結合の大部分をウレトンイミン結合へ変換した状態において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等、ウレトンイミン結合を分解しない方法で測定される液状MDI中のカルボジイミド変性MDI及びウレトンイミン変性MDIの含有率の合計は、5〜40質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜35質量%である。カルボジイミド変性MDI及びウレトンイミン変性MDI含有率の合計が前記範囲内であることにより好適なイソシアネート官能基数とすることが可能となり、使用に際しての粘度も適切にすることができる。さらにISFとした場合にも伸び率や強度を満足することができる。
【0033】
有機ポリイソシアネート(a2)に用いられる液状MDIは、(a1)同様、カルボジイミド変性前又はウレトンイミン変性前のMDIとして、2,2’−MDI、2,4’−MDIの含有率合計は、60質量%以下が好ましい。これは(a1)と同様の理由による。
【0034】
さらに有機ポリイソシアネート(a2)に用いられる液状MDIは、カルボジイミド変性前又はウレトンイミン変性前のMDIに少量のp−MDIを含むことが可能である。
【0035】
しかし、(a1)に比較し(a2)は高いイソシアネート平均官能基数を有しており、カルボジイミド変性前又はウレトンイミン変性前のMDIとして、最大5質量%、さらに好ましくは3質量%以下に留める必要がある。
【0036】
本発明で使用するポリオール成分(B)としては、数平均分子量600〜3,500のPTMEGが好適に使用できる。さらに好ましくは1,000〜3,500である。また、ポリオール成分(B)中の(b1)含有量は50質量%以上が好ましい。さらに好ましくは60〜90質量%である。下限以下では、得られるISFの反発弾性率が十分高くならず、引裂き強度等の機械物性が低下する。また、上限以上では、常温における反発弾性率や機械物性は向上するが、PTMEGの結晶性から得られるISFの反発弾性率が0℃付近の低温域で大幅に低下する。
【0037】
本発明に使用する(b1)以外のポリオール成分(b2)としては、平均官能基数2〜4の重合開始剤に、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を重合した、水酸基当量1,000〜3,000の一般的に軟質ポリウレタンフォーム製造に使用されるポリエーテルポリオールを用いることができる。具体的には、開始剤として、水、エチレングリコール、プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ヒドロキノン、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、トルエンジアミン、メチレンジフェニルジアミン等を使用し、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)又はその両方を付加重合したポリエーテルポリオールである。さらには、上記ポリオールの中でアクリロニトリルやスチレン等のビニル化合物をラジカル重合することやアミンとイソシアネートの反応によりウレア化合物を生成させることによって得られるポリマーポリオールを使用することも可能である。
【0038】
触媒(C)としては、当該分野において公知である各種ウレタン化触媒が使用できる。例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等の3級アミン及びこれらの有機酸塩、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等のアミノアルコール類、及びこれらの有機酸塩、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物類等が挙げられる。これら触媒は、必要に応じて2種類以上を混合して使用することができる。また、これら触媒を低粘度化、液状化、成形機械の計量精度向上のための増容、等の理由で各種溶媒、ポリオール、可塑剤、等に溶解して使用することも可能である。
【0039】
本発明に使用される発泡剤(D)としては水が望ましいが、必要に応じて地球環境等に重大な影響を及ぼすことが少ない公知のものも使用することができる。この公知の発泡剤には不活性低沸点溶剤と反応性発泡剤の二種があり、前者としてはジクロルメタン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、アセトン、蟻酸メチル、ヘキサン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン等、さらに窒素ガス、炭酸ガスや空気等を挙げることができる。後者の例としては、室温より高い温度等により分解して気体を発生する、例えばアゾ化合物や炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0040】
本発明において、必要に応じて助剤(E)を使用してもよい。このような助剤(E)としては、例えば、整泡剤、減粘剤、顔料又は染料、マイカ、ガラス繊維等の補強材又は充填剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防カビ剤、抗菌剤、VOCキャッチャー剤等が挙げられ、必要に応じて使用することができる。
【0041】
整泡剤としては、一般にポリウレタンフォーム製造に使用されている公知のものを挙げることができる。例えば、ポリジメチルシロキサン−ポリアルキレンオキシドブロックポリマー、ビニルシラン−ポリアルキレンポリオール重合体等を挙げる事ができる。
【0042】
本発明に使用される粘度低減剤(F)としては、一般に高粘度液体の粘度低減に使用される液状物質の内、イソシアネート基と反応する活性水素基、カルボジイミド基、ホルミル基などを含有しないものを使用することができる。好ましくは、粘度低減効果の面から25℃における粘度が100mPa・s以下、取扱いの面から融点が0℃以下、安全性の面からJIS K2265の方法で計測される引火点が70℃以上、毒性、環境汚染性等が低いものであることが好ましい。具体的には、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸系ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリスβクロロプロピル、アセチルクエン酸トリブチル、ジベンジルエーテル等が上げられる。
【0043】
粘度低減剤(F)の含有量は有機ポリイソシアネート組成物中に25質量%以下であることが好ましい。上限を超えると、ISF成形物の成形性悪化や反発弾性率及び引裂き強度等の機械物性低下が見られる場合がある。
【0044】
本発明によるISFは、例えば、有機ポリイソシアネート組成物(A)とポリオール成分(B)とを、触媒(C)、発泡剤(D)、及び必要に応じて助剤(E)の存在下、攪拌混合後、金型内に注入して得られるモールドフォーム、又は上下左右に壁面を有するコンベアーに注入することで得られる連続シート状フォーム等として製造される。両製造方法とも、有機ポリイソシアネート組成物(A)以外の成分をあらかじめ混合してポリオールプレミックスを準備し、これと(A)との2成分を混合発泡させる方法、一部又は全ての成分を別々に攪拌混合機の混合ヘッドに導入し、発泡する方法が可能である。
【0045】
本発明の有機ポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基と水を含むイソシアネート反応性化合物中の全イソシアネート反応性基のモル比(イソシアネート基/NCO反応性基)としては、0.5〜1.2(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=50〜120)であることが好ましく、0.6〜1.1(NCO INDEX=60〜110)であることがより好ましい。
【0046】
本発明のISFは、その用途を特に限定するものではないが、通常、反発弾性率として40%前後を有する靴底、靴底の一部、靴の中敷等に用いられる発泡樹脂や従来のISFを本発明によるISFに置き換えることで、非常に優れた使用感を得ることができる。なお、このような用途に求められるISFの機械的強度は、伸び率200%以上,引裂強さ25N/cm以上であり、これを実現するためには、本発明によるISFの密度を最低でも150kg/mとする必要がある。また、一方で経済性や生産性を考慮するとISF密度の上限は500kg/m以下が好ましい。触媒(C)の種類や配合量にもよるが、水のみを発泡剤として使用する場合、この密度帯域を達成するために必要な水の添加部数は、ポリオール成分(B)100質量部に対し0.3〜2.5質量部である。
【実施例】
【0047】
以下、さらに本発明の具体的実施例について述べるが、本実施例のみによって本発明が限定されることはない。なお実施例において、すべての部及び%は特に断りの無い限り質量によるものである。
【0048】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例I−1]
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、異性体含有率1%のMDI:439gを仕込み、75℃まで昇温した後、数平均分子量1000のPTMEG(PTG−1000SN:保土ヶ谷化学工業社製)を561g仕込み、温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら2時間ウレタン化反応を行った。室温まで冷却して有機ポリイソシアネート組成物「I−1」(NCO基含有率10%)を得た。
【0049】
[有機ポリイソシアネート組成物 合成例I−2]
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量1Lの反応器に、異性体含有率1%のMDIをカルボジイミド変性及びウレトンイミン変性して得られた、MDI含有率68%、イソシアネート基含有率28.9%の液状MDI:819gを仕込み、75℃まで昇温した後、数平均分子量2000のPTMEG(PTG−2000SN:保土谷化学工業社製)を182g仕込み、温度を維持したまま攪拌羽根で均一に混合しながら2時間ウレタン化反応を行った。室温まで冷却して有機ポリイソシアネート組成物「I−2」(NCO基含有率23%)を得た。
【0050】
[イソシアネート合成例I−3〜I−18]
表1〜表3に示した原料を用い、I−1、I−2と同様の操作を行うことで有機ポリイソシアネート組成物I−3〜I−18を得た。なお、粘度低減剤は、反応終了後に添加し均一に混合した。表中の原料配合は、質量部にて示した。
【0051】
【表1】
【0052】
PTG−1000SN:保土谷化学工業社製PTMEG、数平均分子量=1000.
PTG−2000SN:保土谷化学工業社製PTMEG、数平均分子量=2000.
PTG−3000SN:保土谷化学工業社製PTMEG、数平均分子量=3200.
【0053】
【表2】
【0054】
PTG−650SN:数平均分子量=650
【0055】
【表3】
【0056】
[ポリオール成分の調整]
表4〜表6に示す割合で原料を均一に混合し、ポリオールプレミックスとして、ポリオール成分P−1〜P−18を調整した。なお、原料配合は質量部にて示した。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
表4〜表6で使用した原料は以下の通り。
【0061】
ポリオール1:グリセリンのプロピレンオキサイド付加重合物、水酸基当量1000.
ポリオール2:エチレングリコールのプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド付加重合物、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド=55/45(質量比)、水酸基当量1000.
ポリオール3:ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド付加重合物、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド=86/14(質量比)、水酸基当量2000.
ポリオール4:グリセリンのプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド付加重合物、
プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド=86/14(質量比)、水酸基当量2300.
ポリオール5:エチレングリコールのプロピレンオキサイド付加重合物、水酸基当量3000.
ポリオール6:グリセリンのプロピレンオキサイド付加重合物、水酸基当量500.
ポリオール7:エチレングリコールのプロピレンオキサイド付加重合物、水酸基当量5000.
Toyocat ET:ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルの70質量%DPG溶液.
DABCO NCIM:1−イソブチル−2−メチルイミダゾール.
DOTDL:ジオクチルチンジラウレート
【0062】
有機ポリイソシアネート組成物としてイソシアネートプレポリマーI−1〜I−18、ポリオールプレミックスP−1〜P−18を用いISFを作製した。
【0063】
即ち、表7〜10に示す割合で温度45℃に温調した各有機ポリイソシアネート組成物とポリオールプレミックスを7000r.p.m.の回転数で卓上ミキサーにより混合撹拌した。60℃に加熱し、離型剤塗布後、乾燥した300mm×300mm×5mmサイズの金属モールドにこの混合物を注入した後、蓋をして7分間硬化させた。硬化後、金型から取り出し、ISFのテストピース(以下TPと略す)を得た。得られたTPについては、密度、硬さ、機械物性等の評価を実施した。
【0064】
<機械物性の測定方法>
密度は、JIS K7222に、硬さ(アスカーC、スキン付き表面硬度)、TB(引張強度、3号ダンベル使用)、EB(引張伸び、3号ダンベル使用)、TR(引裂き強度、B型ダンベル使用)、反発弾性率(リュプケ式)は、JIS K7312に準じて測定を行った。0℃における反発弾性率は、24時間0±1℃に温度調節された恒温槽に保管したサンプルを取り出した後、10秒以内に上記常温の場合と同じ方法にて測定した。
【0065】
作製したISFの評価結果を表7〜表10に記載する。
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
【表9】
【0069】
【表10】
【0070】
表7〜10から明らかなように、本願発明により得られるISFは、高い反発弾性率、優れた機械的強度を有する。具体的に述べると、表7〜10おいてアスカ−C硬度を20〜60程度に調整したISFの実施例1〜24は、比較例の中で成形が可能であった比較例1、3、5に比べ、反発弾性率が顕著に向上している。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明による従来市場に無い低密度かつ高い反発弾性率と良好な機械的物性を有するポリウレタンインテグラルスキンフォームは、靴底、靴のインソール、産業用機械の部品、玩具、楽器等に、使用感の向上、軽量化等の優れた効果をもたらす。