(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂の分散性を高めるために、クリアランスの異なる複数の破砕型のミキシングデバイスが軸方向に接続されることがある。複数のミキシングデバイスは、カラーと呼ばれる円環状のパーツを介して互いに接続される。カラーによって樹脂が堰き止められないように、カラーの外径はミキシングデバイスの外径よりも小さくなっている。また、ミキシングデバイスの端部は、他の部品との干渉を抑制するために、外径が徐々に小さくなっている。そのため、ミキシングデバイスどうしの境界部に、外径の小さい領域が形成される。この領域では、シリンダーとの間のクリアランスが大きくなるため、樹脂が滞留しやすい。滞留した樹脂は、シリンダー内で長時間加熱されて劣化する。劣化した樹脂が滞留部から流出すると、異物として樹脂成形体に混入し、製品の信頼性が低下する。樹脂の分散性を高めるために樹脂に高いせん断力をかけると、せん断発熱が発生し樹脂の劣化が進む。
【0006】
本発明の目的は、樹脂の分散性を高め、樹脂の劣化を抑制し、かつ樹脂の滞留が生じにくいスクリュー、押出機およびミキシングデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るスクリューは、複数のミキシング部が軸部材の軸方向に並んで設けられ、前記ミキシング部には、前記軸部材の周方向に並ぶ複数のフライト部が設けられ、前記複数のフライト部には、複数の堰き止めフライト部と、前記堰き止めフライト部よりも外径が小さい複数の溢流フライト部と、が含まれ、前記複数の堰き止めフライト部と前記複数の溢流フライト部とは、前記周方向に交互に配置され、隣り合う前記ミキシング部の前記フライト部どうしは軸方向に接続され、軸方向一方側を上流側、軸方向他方側を下流側とした場合、上流側の前記ミキシング部の前記溢流フライト部の外径よりも、下流側の前記ミキシング部の前記溢流フライト部の外径のほうが大きい。
【0008】
この構成によれば、複数のミキシング部が軸方向に連続的に配置される。ミキシング部どうしの境界部には、外径の小さい領域が形成されない。そのため、境界部において樹脂の滞留が生じにくい。また、上流側のミキシング部の溢流フライト部の外径よりも、下流側のミキシング部の溢流フライト部の外径が大きいため、樹脂に加わるせん断力およびせん断発熱を調整することができる。
【0009】
例えば、前記複数のミキシング部は、前記溢流フライト部の位置を前記周方向に一つずつずらしながら前記軸方向に並んで配置されている。
【0010】
この構成によれば、樹脂が溢流フライト部を乗り越える方向は全てのミキシング部において等しくなる。いずれのミキシング部においても、周方向の樹脂の流動の向きは、軸部材の回転の向きと一致する。よって、周方向の樹脂の流れが安定する。
【0011】
例えば、前記複数のフライト部は、前記軸部材の外周面に螺旋状に設けられている
【0012】
この構成によれば、軸部材の回転によって、軸方向の樹脂の流動が促進される。
【0013】
例えば、前記軸部材の軸方向の一端部には、前記軸部材の外径が外側に向かって徐々に小さくなる第一のテーパー部が設けられている。
【0014】
この構成によれば、フライト部が、軸部材に接続される他の部品と干渉しにくくなる。
【0015】
例えば、前記第一のテーパー部には、前記堰き止めフライト部と同じ外径を有する一以上の掻き取りフライト部が設けられている。
【0016】
この構成によれば、第一のテーパー部において樹脂が滞留しにくい。
【0017】
例えば、前記掻き取りフライト部の数は、一つの前記ミキシング部に設けられた前記フライト部の数よりも少ない。
【0018】
この構成によれば、軸部材に接続される他の部品と掻き取りフライト部とが干渉しにくくなる。
【0019】
例えば、第一のテーパー部には、前記軸部材の中心軸に対して回転対称な位置に複数の前記掻き取りフライト部が設けられている。
【0020】
この構成によれば、樹脂の流れが中心軸に対して対称になる。よって、樹脂の流れに偏りが生じにくい。
【0021】
本発明の一態様に係る押出機は、本発明の一態様に係るスクリューを有する。
【0022】
この構成によれば、樹脂の滞留が生じにくい押出機が提供される。
【0023】
本発明の一態様に係るミキシングデバイスは、複数のミキシング部が軸部材の軸方向に並んで設けられ、前記ミキシング部には、前記軸部材の周方向に並ぶ複数のフライト部が設けられ、前記複数のフライト部には、複数の堰き止めフライト部と、前記堰き止めフライト部よりも外径が小さい複数の溢流フライト部と、が含まれ、前記複数の堰き止めフライト部と前記複数の溢流フライト部とは、前記周方向に交互に配置され、隣り合う前記ミキシング部の前記フライト部どうしは軸方向に接続され、軸方向一方側を上流側、軸方向他方側を下流側とした場合、上流側の前記ミキシング部の前記溢流フライト部の外径よりも、下流側の前記ミキシング部の前記溢流フライト部の外径のほうが大きい。
【0024】
この構成によれば、複数のミキシング部が軸方向に連続的に配置される。ミキシング部どうしの境界部には、外径の小さい領域が形成されない。そのため、境界部において樹脂の滞留が生じにくい。また、上流側のミキシング部の溢流フライト部の外径よりも、下流側のミキシング部の溢流フライト部の外径が大きいため、樹脂に加わるせん断力およびせん断発熱を調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、樹脂の分散性を高め、樹脂の劣化を抑制し、かつ樹脂の滞留が生じにくいスクリュー、押出機およびミキシングデバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、一実施形態に係る押出機EXTの断面図である。
【0028】
押出機EXTは、スクリューSCRと、シリンダーCYLと、を有する。シリンダーCLYの供給口SPには、図示略のホッパーが取り付けられている。成形材料となる樹脂RESは、ホッパーからシリンダーCYLに投入される。シリンダーCLYの外周部には図示略のヒートジャケットが取り付けられている。樹脂RESは、ヒートジャケットによって加熱されたシリンダーCYL内を、スクリューSCRの回転に伴って下流側に流動する。以下、樹脂RESの流動方向の上流側を「上流側」といい、流動方向の下流側を「下流側」という。
【0029】
スクリューSCRは、複数のメインフライトMFと、複数のサブフライトSFと、を有する。メインフライトMFの外径は、シリンダーCYLの内径よりも僅かに小さい。樹脂RESは、メインフライトMFとシリンダーCLYとの間のクリアランスを通過しない。サブフライトSFの外径は、メインフライトMFの外径よりも小さい。樹脂RESは、サブフライトSFとシリンダーCLYとの間のクリアランスを通過することで、せん断力を付与される。メインフライトMFおよびサブフライトSFは、スクリュー軸SAと一体に加工されている。
【0030】
押出機EXTは、供給部10と、圧縮部20と、計量部30と、を有する。供給部10、圧縮部20および計量部30は、上流側から順に設けられている。供給部10では、供給口SPから供給された樹脂RESが、メインフライトMFによって下流側に輸送される。圧縮部20では、供給部10から供給された樹脂RESが、メインフライトMFおよびサブフライトSFによって混練および圧縮される。計量部30では、圧縮部20によって混練および圧縮された樹脂RESがメインフライトMFによって下流側に輸送される。計量部30を通過した樹脂RESは、吐出口EPから図示略のダイに供給される。
【0031】
計量部30には、例えば、複数の混練部35が設けられている。混練部35では、スクリューSCRに設けられたミキシングデバイスによって、圧縮部20から供給された樹脂RESがさらに均一に混練される。本実施形態では、例えば、複数の混練部35として、第一の混練部31と、第二の混練部32と、が設けられている。
【0032】
第一の混練部31には、例えば、破砕型のミキシングデバイス100が設けられている。第二の混練部32には、例えば、混合型のミキシングデバイス105が設けられている。ミキシングデバイス100は、樹脂RESに高いせん断力を加えて、樹脂RESの内部の粒子および気泡を破砕する。ミキシングデバイス105は、樹脂RESを不規則に流動させて、樹脂RESの温度を均一化する。
【0033】
破砕型のミキシングデバイス100としては、例えば、ダムリング、Mailleferフライト、Maddockミキサー、Troesterミキサー、Drayミキサーおよびユニメルト(登録商標)ミキサーなどが用いられる。第一の混練部31では、分散性能を高めるために、複数のミキシングデバイス100を接続した多段ミキシングデバイスが用いられることがある。
【0034】
混合型のミキシングデバイス105としては、例えば、ピンスクリュー、切欠きフライト、ピンバレル、溝形ミキサー、パイナップルミキサーおよびダルメージミキサーなどが用いられる。第二の混練部32では、分散性能を高めるために、複数のミキシングデバイス105を接続した多段ミキシングデバイスが用いられることがある。
【0035】
スクリューSCRは、ミキシングデバイス100およびミキシングデバイス105を含む複数の部品によって構成されている。それぞれの部品は一体として成形されてもよいし、互いに独立した部品として構成されてもよい。複数の部品がそれぞれ独立の部品として構成されている場合には、それぞれの部品は、カラーと呼ばれる円環状のパーツを介して互いに軸方向に接続される。独立した複数の部品を接続して得られるスクリューSCRは、分割式スクリューと呼ばれる。本実施形態のスクリューSCRは、例えば、分割式スクリューである。
【0036】
図2は、本実施形態のミキシングデバイス100をスクリューSCRの中心軸AXと直交する方向から見た側面図である。
【0037】
ミキシングデバイス100は、軸部材AMと、ねじ部141と、を有する。軸部材AMとねじ部141は一体として成形されている。ねじ部141は、軸部材AMの一端側に設けられている。軸部材AMの他端側には、ねじ穴142が設けられている。ねじ穴142の入り口の内径は他の部分よりも大きい。他の部品のインロー部は、ねじ穴142の入り口に嵌め込まれる。軸部材AMの外径は、シリンダーCLYの内径よりも僅かに小さい。軸部材AMの外径は、例えば、メインフライトMFの外径と同じである。
【0038】
軸部材AMの中心軸はスクリューSCRの中心軸AXと一致する。以下、符号AXを軸部材AMの中心軸の符号として兼用する。また、中心軸AXの延在方向を軸方向という。中心軸AXと直交する平面内において軸部材AMの外周面に沿う方向を軸部材AMの周方向という。軸方向一方側が上流側であり、軸方向他方側が下流側である。
【0039】
ミキシングデバイス100は、軸部材AMの周方向に並ぶ複数の溝120と、軸部材AMの軸方向に並ぶ複数のダム列DAと、を有する。隣り合う溝120の境界部は、フライト110である。複数の溝120は、周方向に並ぶ複数のフライト110によって仕切られている。
【0040】
ダム列DAは、周方向に並ぶ複数のダム130によって一本おきに溝120の一部を塞ぐ。複数のダム列DAは、複数のダム130によって塞ぐ溝120の位置を一本ずつずらしながら軸部材AMの軸方向に並ぶ。ダム列DAの数は、三以上である。複数の溝120は、例えば、軸部材AMの外周面に螺旋状に設けられている。軸部材AMの回転によって、軸方向への樹脂RESの流動が促進される。
【0041】
本実施形態では、溝120の数は、例えば、八つである。ダム列DAの数は、例えば、三つである。複数のダム列DAとして、第一のダム列DA1と第二のダム列DA2と第三のダム列DA3とが上流側から順に設けられている。第一のダム列DA1には、一本目、三本目、五本目および七本目の溝120の一部をそれぞれ塞ぐ四つのダム130が周方向に並んで配置されている。第二のダム列DA2には、二本目、四本目、六本目および八本目の溝120の一部をそれぞれ塞ぐ四つのダム130が周方向に並んで配置されている。第三のダム列DA3には、一本目、三本目、五本目および七本目の溝120の一部をそれぞれ塞ぐ四つのダム130が周方向に並んで配置されている。
【0042】
ミキシングデバイス100は、軸方向に並ぶ複数のミキシング部MPを有する。複数のミキシング部MPは、複数のダム列DAによって軸方向に区画されている。本実施形態では、複数のミキシング部MPとして、第一のミキシング部MP1と、第二のミキシング部MP2と、が設けられている。第一のミキシング部MP1は、第一のダム列DA1と第二のダム列DA2との間に配置されている。第二のミキシング部MP2は、第二のダム列DA2と第三のダム列DA3との間に配置されている。
【0043】
図3は、ミキシングデバイス100の展開図である。
図4は、第一のミキシング部MP1の軸方向と直交する断面図である。
図5は、第二のミキシング部MP2の軸方向と直交する断面図である。
図4および
図5において最上部に記載されたフライト部110Aは、同一のフライト110に属するフライト部110Aである。
【0044】
図3に示すように、フライト110は、複数のフライト部110Aを有する。複数のフライト部110Aは、複数のダム列DAによって軸方向に区画されている。ミキシング部MPには、複数の溝120を仕切る複数のフライト部110Aが設けられている。複数のフライト部110Aは、軸部材AMの周方向に並ぶ。複数のフライト部110Aは、例えば、軸部材AMの外周面に螺旋状に設けられている。隣り合うミキシング部MPのフライト部110Aどうしは軸方向に接続されている。
【0045】
複数のフライト部110Aには、複数の堰き止めフライト部111と、複数の溢流フライト部112と、が含まれている。溢流フライト部112は、堰き止めフライト部111よりも外径が小さい。複数の堰き止めフライト部111と複数の溢流フライト部112とは周方向に交互に配置されている。
【0046】
図4および
図5に示すように、各ミキシング部MPの堰き止めフライト部111の外径は互いに等しい。堰き止めフライト部111の外径R0は、シリンダーCYLの内径RCよりも僅かに小さい。堰き止めフライト部111の外径R0は、例えば、メインフライトMFの外径と同じである。樹脂RESは、堰き止めフライト部111とシリンダーCLYとの間のクリアランスを通過しない。
【0047】
溢流フライト部112の外径は、ミキシング部MPごとに異なる。上流側のミキシング部MPほど溢流フライト部112の外径が小さい。本実施形態では、第一のミキシング部MP1が第二のミキシング部MP2よりも上流側に配置されている。そのため、上流側の第一のミキシング部MP1の溢流フライト部112の外径R1よりも、下流側の第二のミキシング部MP2の溢流フライト部112の外径R1のほうが大きい。樹脂RESは、溢流フライト部112とシリンダーCLYとの間のクリアランスを通過する。溢流フライト部112とシリンダーCLYとの間のクリアランスを樹脂RESが通過することで、樹脂RESにせん断力が付与される。
【0048】
溢流フライト部112の外径が大きいほど、溢流フライト部112とシリンダーCLYとの間のクリアランス(以下、溢流フライトギャップという)は小さくなる。本実施形態では、第一のミキシング部MP1の溢流フライトギャップG1は、第二のミキシング部MP2の溢流フライトギャップG2よりも大きい。溢流フライトギャップが小さいほど樹脂RESに加わるせん断力は大きくなる。よって、せん断力は、上流側から下流側に向けて大きくなる。樹脂RESの内部の粒子および液滴は、下流側に流動しながら徐々に破砕される。よって、せん断発熱が小さくなる。
【0049】
第一のミキシング部MP1の溢流フライトギャップG1と第二のミキシング部MP2の溢流フライトギャップG2を調整することで、樹脂RESに加わるせん断力とせん断発熱を調整することができる。
【0050】
ミキシングデバイス100は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、環状オレフィン樹脂のように熱安定性が低い樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂のように混練に高せん断力が必要な樹脂のスクリューSCRに好適に用いることができる。なお、樹脂の熱安定性とは、押出機内での樹脂の劣化しにくさを示す。押出機内での樹脂の劣化現象としては、熱を主要因とする架橋や分解、熱や酸素を主要因とする酸化等が挙げられる。
【0051】
図3に示すように、フライト110には、例えば、堰き止めフライト部111と溢流フライト部112とが軸方向に交互に設けられている。複数のミキシング部MPは、溢流フライト部112の位置を周方向に一つずつずらしながら軸方向に並んで配置されている。樹脂RESが溢流フライト部112を乗り越える方向は全てのミキシング部MPにおいて等しい。いずれのミキシング部MPにおいても、周方向の樹脂RESの流動の向きは、軸部材AMの回転の向きと一致する。よって、周方向の樹脂RESの流れが安定する。
【0052】
溝120は、複数のダム列DAによって軸方向に区画された複数の溝部120Aを有する。複数の溝部120Aには、流入溝部121と流出溝部122とが含まれている。流入溝部121は、上流側が開放され、下流側がダム130によって塞がれた溝部120Aである。流出溝部122は、下流側が開放され、上流側がダム130によって塞がれた溝部120Aである。
【0053】
ミキシング部MPには、複数の流入溝部121と複数の流出溝部122とが周方向に交互に配置されている。軸方向に隣り合う第一のミキシング部MP1の流入溝部121と第二のミキシング部MP2の流出溝部122とはダム130によって軸方向に仕切られている。軸方向に隣り合う第一のミキシング部MP1の流出溝部122と第二のミキシング部MP2の流入溝部121とは接続されている。
【0054】
圧縮部20(
図1参照)から第一のミキシング部MP1の流入溝部121に流入した樹脂RESは、溢流フライト部112を乗り越えて、周方向に隣り合う第一のミキシング部MP1の流出溝部122に流入する。流出溝部122に流入した樹脂RESは、軸方向に隣り合う第二のミキシング部MP2の流入溝部121に流入する。
【0055】
第二のミキシング部MP2の流入溝部121に流入した樹脂RESは、溢流フライト部112を乗り越えて、周方向に隣り合う第二のミキシング部MP2の流出溝部122に流入する。第二のミキシング部MP2の流出溝部122に流入した樹脂RESは、下流側に設けられたメインフライトMFによってミキシングデバイス105(
図1参照)に供給される。
【0056】
軸部材AMの軸方向の一端部には、軸部材AMの外径が外側に向かって徐々に小さくなる第一のテーパー部TP1が設けられている。軸部材AMの軸方向の他端部には、軸部材AMの外径が外側に向かって徐々に小さくなる第二のテーパー部TP2が設けられている。第一のテーパー部TP1は、例えば、複数のダム列DAのうち、軸方向の一端側に設けられたダム列DAの外側に設けられている。第二のテーパー部TP2は、例えば、複数のダム列DAのうち、軸方向の他端側に設けられたダム列DAの外側に設けられている。第一のテーパー部TP1および第二のテーパー部TP2が存在することによって、ダム130およびフライト部110Aが、軸部材AMに接続される他の部品と干渉しにくくなる。
【0057】
上流側に位置する第一のテーパー部TP1には、堰き止めフライト部111と同じ外径を有する一以上の掻き取りフライト部113が設けられている。掻き取りフライト部113の数は、一つのミキシング部MPに設けられたフライト部110Aの数よりも少ない。例えば、第一のテーパー部TP1には、軸部材AMの中心軸AXに対して回転対称な位置に複数の掻き取りフライト部113が設けられている。
図3では、下流側に位置する第二のテーパー部TP2には、掻き取りフライト部113は設けられていないが、第二のテーパー部TP2においても、第一のテーパー部TP1と同様に掻き取りフライト部113が設けられていてもよい。
【0058】
以下、比較例と比較しながら、本実施形態のスクリューSCRの効果を説明する。
図6は、比較例の多段ミキシングデバイス104を示す図である。
図7は、本実施形態のミキシングデバイス100を示す図である。
図8は、比較例の多段ミキシングデバイス104のテーパー部TPの拡大図である。
図9は、本実施形態のミキシングデバイス100の第一のテーパー部TP1の拡大図である。
【0059】
図6に示すように、多段ミキシングデバイス104は、軸方向に接続された複数のミキシングデバイス101を有する。ミキシングデバイス101には、一つのミキシング部MPのみが設けられている。テーパー部TPには、掻き取りフライト部は設けられていない。複数のミキシングデバイス101は、カラー103と呼ばれる円環状のパーツを介して互いに接続されている。カラー103によって樹脂RESが堰き止められないように、カラー103の外径はミキシングデバイス101の外径よりも小さくなっている。
【0060】
多段ミキシングデバイス104では、ミキシングデバイス101どうしの境界部に、外径の小さい領域が形成される。この領域では、シリンダーCYLとの間のクリアランスが大きくなるため、樹脂RESが滞留しやすい。
【0061】
例えば、上流側のミキシングデバイス101の流出溝部122から流出した樹脂RESは、境界部に沿って周方向に広がる。周方向に広がった樹脂RESは、シリンダーCYLの内周面に付着し、そのまま滞留する。滞留した樹脂RESは、シリンダーCYL内で長時間加熱されて劣化する。劣化した樹脂RESが滞留部から流出すると、異物として樹脂成形体に混入し、製品の信頼性が低下する。
【0062】
図7に示すように、本実施形態のミキシングデバイス100では、複数のミキシング部MPが軸方向に連続的に配置されている。ミキシング部MPどうしの境界部には、外径の小さい領域が形成されない。そのため、境界部において樹脂RESの滞留が生じにくい。
【0063】
例えば、上流側のミキシング部MPの流出溝部122から流出した樹脂RESは、そのまま下流側のミキシング部MPの流入溝部121に流入する。上流側のミキシング部MPの流出溝部122と下流側のミキシング部MPの流入溝部121とが接続されているため、樹脂RESが境界部に沿って周方向に広がりにくい。樹脂RESの滞留が抑制されるため、樹脂成形体の信頼性は高い。
【0064】
また、
図8に示すように、多段ミキシングデバイス104では、テーパー部TPに掻き取りフライト部が設けられていない。そのため、メインフライトMFによって圧縮部20から供給された樹脂RESは、テーパー部TPに沿って周方向に広がる。周方向に広がった樹脂RESは、シリンダーCLYの内周面に付着し、そのまま滞留する。
【0065】
図9に示すように、本実施形態のミキシングデバイス100では、第一のテーパー部TP1に、一以上の掻き取りフライト部113が設けられている。そのため、周方向に広がった樹脂RESは、掻き取りフライト部113によってただちに掻き取られる。よって、第一のテーパー部TP1において樹脂RESが滞留しにくい。
【0066】
また、本実施形態では、掻き取りフライト部113の数は、一つのミキシング部MPに設けられたフライト部110Aの数よりも少ない。そのため、軸部材AMに接続される他の部品と掻き取りフライト部113とが干渉しにくくなる。また、第一のテーパー部TP1には、軸部材AMの中心軸AXに対して回転対称な位置に複数の掻き取りフライト部113が設けられている。そのため、樹脂RESの流れが中心軸AXに対して対称になる。よって、樹脂RESの流れに偏りが生じにくい。
【0067】
図10は、本実施形態のスクリューSCRを有するフィルム製造装置1000の概略図である。
【0068】
フィルム製造装置1000は、押出機1001と、ギヤポンプ1002と、フィルターチェンジャー1003と、ダイ1004と、フィルム成形部1005と、異物検査器1006と、巻き取り機1007と、を有する。押出機1001として、上述した本実施形態の押出機EXTが用いられている。本実施形態のフィルム製造装置1000では、押出機1001に本実施形態のスクリューSCRが用いられているため、信頼性の高いフィルムが製造される。
【0069】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した発明を基にして当業者が適宜設計変更して実施しうる全ての発明も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の技術的範囲に属する。
【0070】
例えば、上記の実施形態では、スクリューSCRが互いに独立した複数の部品によって構成されている例について説明したが、スクリューSCRの構成はこれに限定されない。例えば、スクリューSCRは、複数の部品が一体として成形された一体型のスクリューでもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、溝120の数が八つである例が示されたが、溝120の数はこれに限定されない。流入溝部121および流出溝部122は同じ数ずつ設けられるため、溝120の数は偶数となる。樹脂RESの分散性を高めるためには、溝120は、四つ以上設けられることが好ましい。
【0072】
また、上記の実施形態では、ミキシング部MPの数が二つである例が示されたが、ミキシング部MPの数はこれに限定されない。ミキシング部MPの数は二つ以上であればよい。例えば、
図11は、ミキシング部MPの数がn個(nは2以上の任意の整数)である例を示す図である。
【0073】
ミキシングデバイス100には、(n+1)本のダム列DAが軸方向に並んで設けられている。(n+1)本のダム列DAによって、n個のミキシング部MPが軸方向に区画されている。(n+1)本のダム列DAは、複数のダム130によって塞ぐ溝120の位置を一本ずつずらしながら軸部材AMの軸方向に並んでいる。n個のミキシング部MPは、溢流フライト部112の位置を周方向に一つずつずらしながら軸方向に並んで配置されている。
【0074】
n個のミキシング部MPの溢流フライト部112の外径は、複数のミキシング部MPの並び順に沿って順に大きくなっている。例えば、下流側に位置するミキシング部MPほど溢流フライト部112の外径は大きい。これにより、シリンダーCLYと溢流フライト部112との間のクリアランスは、上流側に位置するミキシング部MPほど大きくなる。