(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル系樹脂(A)、水酸基を有するイオン性化合物(B)及び架橋剤(C)を含み、アクリル系樹脂(A)が水酸基含有モノマー由来の構造単位を5〜30重量%含有するアクリル系樹脂(A)であり、
水酸基を有するイオン性化合物(B)がカチオン成分(b1)とアニオン成分(b2)とからなるイオン性化合物であり、カチオン成分(b1)の少なくとも一部が炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基と炭素数1〜18のアルキル基とで置換されたアンモニウムカチオンであることを特徴とする粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、水酸基を有するイオン性化合物(B)及び架橋剤(C)を必須成分として含有するものである。
【0015】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を主成分とし、必要に応じて、官能基含有モノマー(a2)を共重合成分として共重合してなるものであり、更に、その他の共重合性モノマー(a3)を共重合成分とすることもできる。本発明におけるアクリル系樹脂(A)は、共重合成分として官能基含有モノマー(a2)を使用したものであることが、アクリル系樹脂(A)の架橋点となり、基材や被着体との密着性を更に上昇させる点で好ましい。
【0016】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、アルキル基の炭素数が、通常1〜20、特には1〜12、更には1〜8、殊には4〜8であることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0017】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手のしやすさの点で、n−メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、特には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)全体に対してn−ブチルアクリレートを50重量%以上含有することが、イオン性化合物(B)との相溶性の点、および粘着物性の点から好ましい。
【0018】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の含有量は、共重合成分全体に対して、40〜95重量%であることが好ましく、特には50〜85重量%、更には55〜70重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、粘着物性のバランスを取りにくくなる傾向があり、多すぎると湿熱白化性が低下したり、水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶性が低下する傾向がある。
【0019】
上記の官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好まく、更に耐湿熱白化性も向上できる点で水酸基含有モノマーが好ましい。また、水酸基とイソシアネート系架橋剤の反応を促進する点では、アミノ基含有モノマーを用いることも好ましく、また耐熱性やリワーク性向上の点では、アミド基含有モノマーを用いることも好ましい。
【0020】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点、水酸基含有イオン性化合物との相溶性が良好な点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、特には、2−ヒドロキシエチルアクリレートが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で特に好ましい。
【0022】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2%以下、殊には0.1%以下のものを使用することが好ましい。
【0023】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0024】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有モノマー、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有モノマー、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記アミノ基含有モノマーの中でも、樹脂溶液の保存安定性及び、架橋促進効果の点で3級アミノ基含有モノマーが好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0025】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0026】
イソシアネート基含有モノマーとしては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0027】
グリシジル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
【0028】
かかる官能基含有モノマー(a2)の含有量は、共重合成分全体に対して、5〜50重量%であることが好ましく、特には6〜30重量%、更には7〜10重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、耐湿熱白化性が低下したり、水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶性が低下したりしやすくなる傾向があり、多すぎると偏光度が低下したり、リワーク性が低下する傾向がある。
【0029】
本発明においては、かかる官能基含有モノマー(a2)として、水酸基含有モノマーを用
い、水酸基含有モノマーの含有量が共重合成分全体に対して5〜30重量%であ
り、6〜25重量%
であることが好ましく、
特には7〜15重量%、
更には8〜10重量%であることが好ましい。
水酸基含有モノマーの含有量が少なすぎると、水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶性が低下したり、耐湿熱白化性が低下したりする傾向があり、多すぎると、偏光板用に使用した際に粘着剤層に水分が浸入しやすくなり偏光度の低下を引き起こしたり、リワーク性や耐光漏れ性が低下したりする傾向がある。
【0030】
かかる官能基含有モノマー(a2)として、カルボキシ基含有モノマーを用いる場合においては、カルボキシ基含有モノマーの含有量が共重合成分全体に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、特には0.1〜3重量%、更には0.5〜1重量%であることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーの含有量が少なすぎると、架橋促進効果が低くなり、偏光板に含まれているアルコールや水分、または環境中の水分の影響を受け架橋が阻害される傾向があり、多すぎると、被着体等が腐食しやすい傾向がある。
【0031】
かかる官能基含有モノマー(a2)としてアミノ基含有モノマーを用いる場合においては、含有量が共重合成分全体に対して0.01〜1重量%であることが好ましく、特には0.05〜0.5重量%、更には0.1〜0.2重量%であることが好ましい。アミノ基含有モノマーの含有量が少なすぎると、架橋促進効果が低くなり、偏光板に含まれているアルコールや水分、または環境中の水分の影響を受け架橋が阻害される傾向がある。アミノ基による触媒効果が得られにくく、エージングが長くなり架橋効率が低下する傾向があり、多すぎると、黄変しやすかったり、ポットライフが短くなったりする傾向がある。
【0032】
かかる官能基含有モノマー(a2)としてアミド基含有モノマーを用いる場合においては、アミド基含有モノマーの含有量が共重合成分全体に対して0.01〜5重量%、特に好ましくは0.01〜3重量%、更には0.1〜1重量%であることが好ましい。
アミド基含有モノマーが多すぎると偏光板用に使用した際に、耐光漏れが低下したり、リワーク性が低下したりする傾向がある。
【0033】
かかる官能基含有モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよく、好ましくは2種類以上を併用すること、特には水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーまたは、水酸基含有モノマーとアミノ基含有モノマー(好ましくは3級アミノ基含有モノマー)を併用することが好ましい。
【0034】
上記その他の共重合性モノマー(a3)としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香環含有モノマーや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマーなどが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、屈折率を効率よく高くできる点、及び粘着剤の複屈折を効率よく正に調整できる点で、芳香環含有モノマーが好ましく、特に好ましくはフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートである。
【0036】
その他の共重合性モノマー(a3)の含有量は、共重合成分全体に対して、5〜40重量%であることが好ましく、特には10〜30重量%、更には15〜25重量%であることが好ましい。かかる含有量が多すぎると、リワーク性が低下したり、水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶性が低下したり、耐湿熱白化性が低下しやすい傾向があり、少なすぎると偏光板用に使用した際に耐久後の耐光漏れ性が低下する傾向がある。
【0037】
上記(a1)〜(a3)の共重合成分を適宜選択して重合することにより、本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)を製造することができる。かかる重合に当たっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行なうことができるが、安定に高分子量のアクリル樹脂を得られる点から溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、更に好ましくは溶液ラジカル重合ある。具体的には、例えば、有機溶媒中に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)等の共重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で2〜20時間重合する。
【0038】
かかる重合に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0039】
また、かかるラジカル重合に使用する重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が具体例として挙げられる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0040】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー由来の構造単位を5〜30重量%含有するものであ
り、特には6〜25重量%、更には7〜15重量%、殊には8〜10重量%含有するものであることが好ましい。水酸基含有モノマー由来の構造単位が少なすぎると耐湿熱白化性が低下したり、水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶解性が低下する傾向があり、多すぎるとリワーク性が低下したり、水分が浸入しやすくなり偏光度が低下する傾向がある。
【0041】
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、通常20万〜300万、好ましくは60万〜200万、特に好ましくは80万〜180万、更に好ましくは100〜150万である。重量平均分子量が小さすぎると、水酸基を有するイオン性化合物(B)が動きやすくなり、偏光度が低下しやすくなる傾向があり、高すぎると水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶性が低下して同様に粘着剤層から移行しやすくなり、偏光度が低下しやすくなる傾向がある。
【0042】
上記アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、10以下であることが好ましく、特には5以下が好ましく、更には4.5以下が好ましく、殊には4以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると、低分子成分を多く含むことになり、凝集力が低下しやすくなったり、水酸基を有するイオン性化合物(B)が動きやすくなり偏光度が低下しやすい傾向がある。
【0043】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10
7、分離範囲:100〜2×10
7、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
【0044】
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、好ましくは−70〜0℃、特に好ましくは−55〜−20℃、更に好ましくは−50〜−30℃であり、ガラス転移温度が低すぎると、水酸基を有するイオン性化合物(B)が動きやすくなり偏光度が低下しやすい傾向にあり、高すぎると粘着性能が低下する傾向にある。
【0045】
なお、ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0046】
<水酸基を有するイオン性化合物(B)>
本発明で用いられる水酸基を有するイオン性化合物(B)は、カチオン成分(b1)とアニオン成分(b2)からなるイオン性化合物であり
、カチオン成分(b1)が水酸基を含有するイオン性化合物であ
る。
【0047】
水酸基を含有するカチオン成分(b1
−1)は、カチオン成分一分子中に水酸基を1〜4個有することが好ましく、特には1〜2個、更には1個有することが好ましい。水酸基の個数が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、水への溶解性が高くなり偏光度が低下しやすい傾向がある。
また、かかる水酸基は1級水酸基〜3級水酸基のいずれであってもよいが、架橋剤(C)との反応性に優れる点から1級水酸基であることが好ましい。
【0048】
水酸基を含有するカチオン成分(b1−1)としては、カチオンの少なくとも一部が水酸基含有置換基で置換されたものであればよいが、オニウムカチオンの少なくとも一部が水酸基含有置換基で置換されたものであることが好ましい。
【0049】
上記オニウムカチオンとしては、窒素を含有するオニウムカチオン、リンを含有するオニウムカチオン、硫黄を含有するオニウムカチオン等が挙げられる。
窒素を含有するオニウムカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウム等の5員環化合物のオニウムカチオンや、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウム等の6員環化合物のオニウムカチオンや、第四級アンモニウムカチオンなどが挙げられる。
リンを含有するオニウムカチオンとしては、例えば、ホスホニウムカチオンが挙げられ、硫黄を含有するオニウムカチオンとしては、例えば、スルホニウムカチオンが挙げられる。
かかるオニウムカチオンのなかでも、アクリル系樹脂(A)との相溶性、帯電防止性能の点から窒素を含有するオニウムカチオンが好ましく、特にはアンモニウムカチオン、更には第四級アンモニウムカチオンが好ましい。
【0050】
上記水酸基含有置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシステアリル基などのヒドロキシアルキル基(アルキル基の炭素数が好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜12、更に好ましくは4〜8である。);ヒドロキシエーテル基等が挙げられるが、水酸基の自由度が高く架橋剤(C)との反応性が高い点から、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシエーテル基が好ましい。
【0051】
なかでも、水酸基を含有するカチオン成分(b1−1)としては、水酸基の自由度が高く架橋剤との反応性が高い点や、アクリル系樹脂(A)との相溶性、架橋剤(C)との反応性の点などから、オニウムカチオンの少なくとも一部がヒドロキシアルキル基及び/又はヒドロキシエーテル基で置換されたものであることが好ましく、更には炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基、特には炭素数4〜8のヒドロキシルアルキル基で置換されたものであることが好ましい。
【0052】
水酸基を含有するカチオン成分(b1−1)としては、水酸基含有置換基以外に、水素及び/又は有機置換基で置換されていてもよく、特に好ましくはアクリル系樹脂(A)や架橋剤(C)との相溶性に優れる点で、水酸基含有置換基以外にアルキル基で置換されていることが好ましく、特には炭素数1〜30のアルキル基、更には炭素数4〜18のアルキル基、殊には炭素数4〜8のアルキル基で置換されていることが好ましい。
【0053】
また、水酸基を含有するカチオン成分(b1−1)を置換する全ての置換基の炭素数の合計が4以上であること好ましく、特には4〜24、更には8〜18、殊には10〜16であることが好ましい。かかる炭素数の合計が少なすぎると、親水性が高くなり湿熱環境下において偏光度が低下しやすい傾向にあり、多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
【0054】
本発明においては、カチオン成分(b1)が水酸基を含有するアンモニウムカチオン(好ましくは、第四級アンモニウムカチオン)であり、カチオン
成分(b1)の少なくとも一部が水酸基を有する炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基と炭素数1〜18のアルキル基で置換されたものであ
り、特には、湿熱環境下での偏光度の低下を抑制する点から、ヒドロキシエチル基及び炭素数1〜8のアルキル基で置換されたものであることが好ましい。
【0055】
カチオン成分(b1)としては、具体的には
、ヒドロキシエチルトリ−ブチルアンモニウムカチオン、2−ヒドロキシエチルオクチルジメチルアンモニウムカチオ
ン等が挙げられ、好ましくは2−ヒドロキシエチルオクチルジメチルアンモニウムカチオンである。
【0056】
上記水酸基を有するイオン性化合物(B)のアニオン成分(b2)は、金属アニオン、有機アニオンから選択すればよく、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
具体的には、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ブロマイドアニオン、クロライドアニオン等の金属アニオンや、トリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン、ビスフルオロスルホニルイミドアニオン等の有機アニオンが挙げられる。
これらの中でも帯電防止性能や融点降下の観点から有機アニオンが好ましく、アクリル系樹脂(A)との相溶性や融点降下の点でトリフルオロメタンスルホニルイミドが更に好ましい。
【0057】
本発明の水酸基を有するイオン性化合物(B)の融点は150℃以下であることが好ましく、更に好ましくは80℃以下であり、特に好ましくは50℃以下である。かかる融点が低すぎると、湿熱環境下で偏光度が低下しやすくなる傾向があり、高すぎると、アクリル系樹脂(A)との相溶性が低下したり、低温で析出したりする傾向がある。
【0058】
本発明の水酸基を有するイオン性化合物(B)としては
、2−ヒドロキシエチルオクチルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド
等が好ましく用いられる。
【0059】
水酸基を有するイオン性化合物(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましく、特には2〜5重量部、更には3〜4.5重量部であることが好ましい。イオン性化合物(B)の含有量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない傾向があり、多すぎると湿熱条件下において偏光度が低下しやすい傾向がある。
【0060】
本発明で用いられる水酸基を含むイオン性化合物(B)は、アクリル樹脂(A)と架橋剤(C)との相溶性に優れ、また架橋剤(C)と反応し架橋構造の中に取り込まれることによって、湿熱環境下におけるイオン性化合物の移行を抑制し、偏光度を維持できるものである。
【0061】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、水酸基を有するイオン性化合物(B)以外のイオン性化合物を用いてもよいが、多すぎると偏光度が低下する傾向にあり、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して好ましくは2重量部以下、更に好ましくは1重量部以下、特に好ましくは0.5部以下である。
【0062】
<架橋剤(C)>
本発明に用いられる架橋剤(C)は、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。
【0063】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;
ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;
ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0064】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0065】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0066】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0067】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0068】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0069】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0070】
これらの架橋剤(C)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
かかる架橋剤(C)の中でも、水酸基と反応性を有する官能基を含有する架橋剤を用いることが、水酸基を有するイオン性化合物(B)と反応し、水酸基を有するイオン性化合物(B)を架橋構造に組み込むことができる点で好ましく、特にはイソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤が好ましく、更にはポットライフが長い点、アクリル系樹脂(A)及び水酸基を有するイオン性化合物(B)との相溶性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤が好ましく、殊には、立体障害が小さく水酸基を有するイオン性化合物(B)との反応性に優れる点から脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0071】
本発明においては、架橋剤(C)が少なくとも脂肪族ポリイソシアネートを含有することが好ましく、特に好ましくは架橋剤(C)が脂肪族ポリイソシアネートを10重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、殊には80重量%以上含有することが好ましい。なお、上限は通常100重量%である。
【0072】
上記架橋剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜3重量部、特に好ましくは0.4〜2重量部である。
かかる架橋剤の含有量が少なすぎると、耐久性や偏光度が低下しやすい傾向があり、多すぎると応力緩和性が低下したり長時間のエージングが必要となったりする傾向がある。
【0073】
また、架橋剤(C)の含有量は、水酸基を有するイオン性化合物(B)100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましく、特には5〜20重量部、更には5〜15重量部であることが好ましい。水酸基を有するイオン性化合物(B)に対する含有量が少なすぎると偏光度が低下しやすい傾向があり、多すぎると帯電防止性能が低下する傾向がある。
【0074】
シランカップリング剤(D)は、官能基を有する置換基及びアルコキシ基を置換基として有するシラン化合物である。
【0075】
上記官能基としては、例えば、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0076】
また、アルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素数1〜8のアルコキシ基を有することが好ましく、更には炭素数2以上のアルコキシ基を有することが好ましく、特にはエトキシ基を有すること好ましい。
【0077】
また、シランカップリング剤(D)としては、長期間に渡って耐湿熱性を維持できる点、保存安定性の点からアルコキシ基含有量が30重量%以上であることが好ましい。
【0078】
さらに、シランカップリング剤(D)としては、モノマー型のシラン化合物でも、一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シラン化合物でもよいが、耐久性やリワーク性に優れる点や、粘着剤の塗工後の乾燥時に揮発しにくい点で、オリゴマー型シラン化合物を用いることが好ましい。
【0079】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、水酸基含有シランカップリング剤、カルボキシル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、アミド基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
【0080】
上記エポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン化合物や、シラン化合物等の一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シラン化合物(エポキシ基含有シリコーンアルコキシオリゴマー等)、或いはこれらシラン化合物の一部をエーテル変性したシラン化合物があげられる。
中でも好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや、シラン化合物等のオリゴマー型シラン化合物、或いはこれらシラン化合物の一部をエーテル変性したシラン化合物があげられる。
【0081】
上記メルカプト基含有シランカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のシラン化合物や、シラン化合物等の一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シラン化合物(メルカプト基含有シリコーンアルコキシオリゴマー等)があげられる。
【0082】
本発明においては、シランカップリング剤(D)として、上記シラン化合物の中でも、オリゴマー型シラン化合物を用いることが好ましく、更には保存安定性の点で、アルコキシ基としてエトキシ基を有するオリゴマー型シラン化合物を用いることが最も好ましい。
具体的には、市販品の信越化学社製「X41−1805」、「X41−1059」等を用いればよい。
【0083】
上記シランカップリング剤(D)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、通常0.001〜2重量部であり、好ましくは0.01〜0.4重量部、特に好ましくは0.015〜0.15重量部である。
かかるシランカップリング剤(D)の含有量が少なすぎると、効果が得られない傾向があり、多すぎるとブリードして耐久性が低下する傾向にある。
【0084】
本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の各種添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。また、上記添加剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
上記その他の成分の含有量は、所望する物性が得られるように適宜設定すればよいが、アクリル系樹脂(A)に対して5重量部以下であることが好ましく、特には1重量部以下、更には0.5重量以下であることが好ましい。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し透明性が損なわれる傾向がある。
【0085】
かくして本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
本発明の粘着剤組成物は、偏光板とガラス基板等を貼り合わせる粘着剤として用いた際に湿熱条件下でも優れた光学特性(偏光度)を示すことができ、帯電防止性にも優れた粘着剤を得ることができるものであり、ディスプレイやそれを構成する光学部品を貼り合せるための光学部材用粘着剤、特に、偏光板と液晶セルのガラス基板等を貼り合わせるための偏光板用粘着剤として有用である。
【0086】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(C)により架橋させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましい。
【0087】
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、
〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行う方法、
〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行う方法等がある。
これらの中でも、[2]の方法で、常温状態でエージングする方法が、が基材を痛めない点、基材密着性に優れる点で好ましい。
【0088】
上記エージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0089】
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、加熱残分濃度として、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0090】
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0091】
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と偏光度低下抑制の点から30〜95%であることが好ましく、特に好ましくは40〜85%であり、更に好ましくは60〜90%である。ゲル分率が低すぎるとイオン性化合物の移動を抑制できずに偏光度が低下する傾向にあり、高すぎると帯電防止性能が低下する傾向にある。
【0092】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる偏光板に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)から粘着層をこそぎ取り、粘着層を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
なお、ゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。
【0093】
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いため、作業性が上がる傾向があり好ましい。
【0094】
また、得られる粘着剤層付き光学部材における粘着剤層の厚みは、5〜300μmが好ましく、特には10〜50μmが好ましく、更には10〜30μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると含まれるイオン性化合物量が多くなるため偏光度の低下が発生したり、湿熱白化(ヘイズ値)が悪化したりする傾向にある。
【0095】
本発明の粘着剤層付き光学部材は、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば液晶表示板に供されるのである。
【0096】
本発明の粘着剤層の初期粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、ガラス基板に貼着する場合には、0.2N/25mm〜20N/25mmの粘着力を有することが好ましく、特に好ましくは1N/25mm〜10N/25mm、更に好ましくは2N/25mm〜8N/25mmである。
【0097】
上記初期粘着力は、つぎのようにして算出される。粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「イーグルコーニングXG」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合する。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行った後、23℃・50%R.H.で24時間放置後に、180℃剥離試験を行なう。
【0098】
本発明で用いられる偏光板は、通常、偏光フィルムの両面にトリアセチルセルロース(TAC)系フィルムを保護フィルムとして積層したものであり、上記偏光フィルムとしては、平均重合度が1,500〜10,000、ケン化度が85〜100モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを原反フィルムとして、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液あるいは二色性染料により染色された一軸延伸フィルム(通常、2〜10倍、好ましくは3〜7倍程度の延伸倍率)が用いられる。
【0099】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。また、ポリビニルアルコールを酸の存在下でアルデヒド類と反応させた、例えば、ポリブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のいわゆるポリビニルアセタール樹脂およびポリビニルアルコール誘導体があげられる。
【0100】
上記偏光板の保護フィルムとしては、従来のTAC系フィルムに加えアクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルムなどもあげられる。
また、薄膜化のために光学部材に貼り合わせる側の保護フィルムをなくした片保護フィルム偏光板も挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、TAC系フィルム、アクリル系フィルム、シクロオレフィン系フィルム、PET系フィルム等から選ばれるいずれの保護フィルムに対しても好適に用いられる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0102】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0103】
<アクリル樹脂(A)の調製>
〔アクリル系樹脂(A−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、アクリル酸ブチル(a1)71.3部、アクリル酸ベンジル(a3)19部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)9部、アクリル酸(a1)0.7部、酢酸エチル54.9部、アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.013部を仕込み、適宜AIBNと酢酸エチルを追加しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(固形分21.2%、粘度6,900mPa・s/25℃、ガラス転移温度−42℃)を得た。
【0104】
<イオン性化合物(B)>
水酸基を有するイオン性化合物(B)として以下の化合物を用意した。
B−1:2−ヒドロキシエチルオクチルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミドと2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルオクチルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミドの混合物(混合比99:1重量%)
また、水酸基を有しないイオン性化合物として以下の化合物を用意した。
B’−1:トリブチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド
【0105】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として以下のものを用意した。
C−1:イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(三井化学株式会社製「タケネート D−160N」)
C−2:水添キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(三井化学株式会社製「タケネート D−120N」)
C−3:ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(旭化成株式会社製「デュラネート24A−100」)
C−4:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(東ソー株式会社製「コロネートHX」)
C−5:ヘキサメチレンジイソシアネートとカプロラクトン変性ポリオールとの反応物(旭化成株式会社製「デュラネートE402−100」)
【0106】
<シランカップリング剤(D)>
シランカップリング剤(D)として以下のものを用意した。
D−1:オリゴマー型シラン化合物(信越化学社製「X41−1059A」、含有官能基:エポキシ基、含有アルコキシ基:メトキシ基及びエトキシ基、アルコキシ基含有量:42%)
【0107】
<実施例1〜5、比較例1〜2>
上記の成分(A)〜(D)を下記表1の通りに配合し、酢酸エチルにて固形分濃度を12.5%に調整し、粘着剤組成物を得た。
【0108】
〔粘着剤層付き偏光板の作製〕
得られた粘着剤組成物を38μmのセパレーター(東レ株式会社製「ルミラーSP−0138BU」)に塗布し、100℃×3分間乾燥したのち、TACフィルムを両面に積層した偏光板の一方のTAC表面に、セパレーターと反対側の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RH環境下で7日間養生し粘着座層付き偏光板を得た(層構成;セパレーター/粘着剤層/TACフィルム/偏光子/TACフィルム)。
得られた粘着剤層付き偏光板を用いて、帯電防止性能(表面低効率)、耐湿熱性(偏光度)を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
<帯電防止性>
上記で得られた粘着剤層付き偏光板を23℃×50%RH雰囲気下で24時間静置したのち、セパレーターを剥離し、表面抵抗率測定装置(三菱化学アナリテック株式会社製、装置名「Hiresta−UP MCP−HT450」)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
○・・・1.0E+11未満
×・・・1.0E+11以上
【0110】
上記で得られた粘着剤層付き偏光板を3.5cm×3.5cmにカットし、セパレ
ーターを剥離して粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合した後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、20分)を行い、耐湿熱試験用サンプルを作製した。
【0111】
<耐湿熱性>
〔偏光度〕
上記で得られた耐湿熱試験用サンプルの偏光度(初期偏光度)を測定した。その後、80℃×90%RH環境下に5日間暴露し取り出した後の偏光度(湿熱後偏光度)を測定し、下記式(1)より耐久試験前後での偏光度の維持率を求め、下記の通り評価した。
なお、偏光度は、日本分光株式会社製「紫外可視近赤外分光光度計:V7000、及び自動偏光測定装置VAP7070」を用いて測定した。
偏光度維持率(%)=湿熱後偏光度/初期偏光度・・・(1)
(評価基準)
◎・・・99.70以上
○・・・99.60〜99.70未満
△・・・99.50〜99.60未満
×・・・99.50未満
【0112】
【表1】
【0113】
表1の結果より、イオン性化合物として水酸基を有するイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物を用いてなる実施例1〜5は、湿熱試験後の偏光度維持率が高く、偏光度の低下が抑制されているのに対し、水酸基を有していないイオン性化合物を用いた比較例1、2は耐湿熱試験後の偏光度の低下が大きく、耐湿熱環境下での光学特性に劣ることがわかる。