【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/次世代パワーエレクトロニクス」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
GaN結晶では、[0001]および[000−1]に平行な結晶軸がc軸、<10−
10>に平行な結晶軸がm軸、<11−20>に平行な結晶軸がa軸と呼ばれる。c軸に直交する結晶面はC面(C-plane)、m軸に直交する結晶面はM面(M-plane)、a軸に直交する結晶面はA面(A-plane)と呼ばれる。
以下において、結晶軸、結晶面、結晶方位等に言及する場合には、特に断らない限り、GaN結晶の結晶軸、結晶面、結晶方位等を意味するものとする。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
1.C面GaN基板
本発明の一実施形態はC面GaN基板に関する。
1.1.形状およびサイズ
実施形態のC面GaN基板は、一方側の主表面とその反対側の主表面とを備える板の形状を有しており、その厚さ方向はc軸に平行または略平行である。該2つの主表面の一方はガリウム極性表面であり、他方は窒素極性表面である。主表面の形状に特に限定はない。
図1は、実施形態のC面GaN基板の形状を例示しており、
図1(a)は斜視図、
図1(b)は側面図である。
図1を参照するとC面GaN基板10は円盤形をしており、[0001]側の主表面であるガリウム極性表面11と、[000−1]側の主表面である窒素極性表面12の形状は円形である。ガリウム極性表面11と窒素極性表面12とは、側面13を介してつながっている。
【0015】
図2(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態のC面GaN基板が有し得る他の形状を例示する斜視図である。
図2においては、
図1に示された構成と対応する構成に、
図1と同じ符号を付している(後述する
図3においても同様である)。
図2(a)〜(c)において、C面GaN基板10が有する主表面(ガリウム極性表面11および窒素極性表面12)の形状は、それぞれ、四角形、六角形、および八角形である。
実施形態に係るC面GaN基板が有する主表面の面積は、好ましくは15cm
2以上で
あり、15cm
2以上50cm
2未満、50cm
2以上100cm
2未満、100cm
2以上
200cm
2未満、200cm
2以上350cm
2未満、350cm
2以上500cm
2未満
、500cm
2以上750cm
2未満などであり得る。
【0016】
実施形態のC面GaN基板において、ガリウム極性表面の方位は、[0001]から10°以内である。これは、ガリウム極性表面の法線ベクトルが[0001]となす角度が、10°以内ということである。
ガリウム極性表面の法線ベクトルを[0001]から傾斜させる場合、好ましい傾斜方向は、m軸方向またはa軸方向のいずれか一方から±10°の範囲内であるが、限定するものではない。
実施形態のC面GaN基板において、ガリウム極性表面の方位は[0001]から5°以内であることが好ましく、2°以内であることがより好ましく、1°以内であってもよい。実施形態のC面GaN基板において、窒素極性表面の方位は、[000−1]から10°以内であり、5°以内であることが好ましく、2°以内であることがより好ましく、1°以内であってもよい。
窒素極性表面の法線ベクトルを[0001]から傾斜させる場合、好ましい傾斜方向は、m軸方向またはa軸方向のいずれか一方から±10°の範囲内であるが、限定するものではない。
限定するものではないが、ガリウム極性表面と窒素極性表面とは互いに平行であることが好ましい。
【0017】
実施形態のC面GaN基板が円盤形であるとき、その直径は好ましくは45mm以上か
つ305mm以下である。該直径は、典型的には、45〜55mm(約2インチ)、95〜105mm(約4インチ)、145〜155mm(約6インチ)、195〜205mm(約8インチ)、295〜305mm(約12インチ)等である。
実施形態のC面GaN基板が矩形の主表面を有する場合、該主表面の縦横それぞれのサイズは、好ましくは5cm以上であり、また、15cm以下である。
実施形態に係るC面GaN基板の厚さは、好ましくは100μm以上であり、150μm以上250μm未満、250μm以上300μm未満、300μm以上400μm未満、400μm以上500μm未満、500μm以上750μm未満、750μm以上1mm未満、1mm以上2mm未満、2mm以上5mm未満等であり得る。該厚さに特に上限はないが、通常20mm以下である。
【0018】
実施形態のC面GaN基板において、ガリウム極性表面と側面との境界は面取りされていてもよい。窒素極性表面と側面との境界についても同じである。
実施形態に係るC面GaN基板には、結晶の方位を表示するオリエンテーション・フラットまたはノッチ、ガリウム極性表面と窒素極性表面の識別を容易にするためのインデックス・フラット等、必要に応じて様々なマーキングを設けることができる。
【0019】
1.2.結晶性
実施形態に係るC面GaN基板の主表面上には、下記条件(A1)および(B1)の少なくとも一方、好ましくは両方を充たす、長さ40mmの仮想的な線分である第一線分を、少なくともひとつ引くことができる。
(A1)当該第一線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第一線分と平行にして(004)反射のXRCを1mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が、30arcsec未満である。
(B1)当該第一線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第一線分と平行にして(004)反射のXRCを1mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
【0020】
ここでいうXRCとは、X線ロッキングカーブ(またはX線回折ロッキングカーブ)のことである。GaN結晶のXRC測定では、通常、CuKαが線源として用いられる。
XRCのFWHM(半値全幅:Full Width at Half Maximum)は、結晶の品質評価において一般的に用いられている指標である。
上記条件(B1)にいうXRCのピーク角度の最大値と最小値との差は、第一線分上においてc軸の方向がどのくらい変動しているかを表す指標である。
【0021】
好ましい例において、上記第一線分は、上記条件(A1)に加え、下記条件(A2)を充たす。
(A2)上記XRC測定から得られる、第一線分上の全測定点間でのXRCのFWHMの平均が、20arcsec未満である。
より好ましい例において、上記第一線分は、上記条件(A1)に加え、下記条件(A3)を充たす。
(A3)上記XRC測定から得られる、第一線分上の全測定点間でのXRCのFWHMの平均および標準偏差が、それぞれ12arcsec未満および5arcsec未満である。
【0022】
実施形態のC面GaN基板において、上記第一線分は、ガリウム極性表面と窒素極性表面の少なくともいずれかに引くことができればよい。場合によっては主表面の片方が粗面仕上げされていて、XRC測定に適さないことがあり得る。両主表面がXRC測定可能に仕上げられた基板において、一方の主表面に第一線分を引くことができれば、他方の主表面にも第一線分を引き得ることが多い。
実施形態に係るC面GaN基板の主表面上に引き得る上記第一線分のうち、少なくともひとつは、該主表面の中心(重心)を通ることが望ましいが、限定されるものではない。
【0023】
実施形態のC面GaN基板においては、上記第一線分を引き得る主表面上に、下記条件(C1)および(D1)の少なくとも一方、好ましくは両方を充たす、長さ40mmの仮想的な線分である第二線分を、少なくともひとつ引き得ることが望ましい。
(C1)第二線分は上記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(004)反射のXRCを1mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が、30arcsec未満である。
(D1)第二線分は上記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(004)反射のXRCを1mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
【0024】
好ましい例において、上記第二線分は上記条件(C1)に加え、下記条件(C2)を充たす。
(C2)上記XRC測定から得られる、第二線分上の全測定点間でのXRCのFWHMの平均が、20arcsec未満である。
より好ましい例において、上記第二線分は上記条件(C1)に加え、下記条件(C3)を充たす。
(C3)上記XRC測定から得られる、第二線分上の全測定点間でのXRCのFWHMの平均および標準偏差が、それぞれ12arcsec未満および5arcsec未満である。
実施形態のC面GaN基板の主表面上に引き得る上記第二線分のうち、少なくともひとつは、該主表面の中心(重心)を通ることが望ましいが、限定されるものではない。
【0025】
主表面上に、上記の第一線分および第二線分にそれぞれ該当する2つの線分を引き得る、C面GaN基板の一例を
図3に示す。
図3に示すC面GaN基板10は円盤形をしており、その直径は45〜55mmの範囲内である。C面GaN基板10のガリウム極性表面11には、第一線分に該当する線分LS1と、第二線分に該当する線分LS2を引くことができる。
互いに直交する線分LS1および線分LS2は、長さがいずれも40mmであり、かつ、いずれもガリウム極性表面11の略中心を通過している。線分LS1と線分LS2の各々は、その中点において他方の線分と交わっている。
【0026】
線分LS1上において、各ωスキャンの際のX線入射面を線分LS1と平行にして(004)反射のXRCを1mm間隔で測定することができる。X線入射面が線分LS1と平行であるとき、C面GaN基板10に対するX線の入射方向は、線分LS1を含みC面に垂直な平面と平行である。
かかるXRC測定から得られる、線分LS1上の40個の測定点間でのXRCのFWHMの最大値は、30arcsec未満であり、好ましくは25arcsec未満、より好ましくは20arcsec未満である。
該40個の測定点間でのXRCのFWHMの平均は、好ましくは20arcsec未満、より好ましくは16arcsec未満、より好ましくは12arcsec未満である。
更に好ましくは、該40個の測定点間におけるXRCのFWHMの平均および標準偏差が、それぞれ12arcsec未満かつ5arcsec未満である。
該40個の測定点間におけるXRCのピーク角度の最大値と最小値との差は、好ましくは0.2°未満、より好ましくは0.15°未満、より好ましくは0.1°未満である。
【0027】
線分LS2上において、各ωスキャンの際のX線入射面を線分LS2と平行にして(004)反射のXRC−FWHMを1mm間隔で測定することができる。X線入射面が線分LS2と平行であるとき、C面GaN基板10に対するX線の入射方向は、線分LS2を含みC面に垂直な平面と平行である。
かかるXRC測定から得られる、線分LS2上の40個の測定点間でのXRCのFWHMの最大値は、30arcsec未満であり、好ましくは25arcsec未満、より好ましくは20arcsec未満である。
該40個の測定点間でのXRCのFWHMの平均は、好ましくは20arcsec未満、より好ましくは16arcsec未満、より好ましくは12arcsec未満である。
更に好ましくは、該40個の測定点間におけるXRCのFWHMの平均および標準偏差が、それぞれ12arcsec未満かつ5arcsec未満である。
該40個の測定点間におけるXRCのピーク角度の最大値と最小値との差は、好ましくは0.2°未満、より好ましくは0.15°未満、より好ましくは0.1°未満である。
【0028】
1.3.転位アレイ
実施形態に係るC面GaN基板は、線状に並んだ転位の群れ、すなわち転位アレイを主表面上に有していてもよい。ここでいう転位とは、貫通転位(刃状転位、螺旋転位および混合転位)の端点のことである。
実施形態に係るC面GaN基板の主表面には、複数の転位アレイが、周期的に配置されていてもよい。該複数の転位アレイの配置は、二次元的であってもよく、更に、2以上の方向に周期性を有していてもよい。
C面GaN基板の主表面における転位アレイの存否、形状、配置等は、該主表面を適切な条件でエッチングして、貫通転位の端点にエッチピットを形成すれば、光学顕微鏡で確認することが可能である。確認は、ガリウム極性表面と窒素極性表面の少なくとも一方で行えばよい。
例えば、ガリウム極性表面の場合、270℃に加熱した89%硫酸をエッチャントに用いて1時間以上のエッチングを行うことにより、当該表面に存在する全ての種類の貫通転位に対応したエッチピットを形成することができる。
実施形態に係るC面GaN基板が、主表面に周期的に配置された複数の転位アレイを有し得るのは、例えば、当該C面GaN基板の製造に、後述する2.項のC面GaN基板製造方法が使用された場合や、あるいは、当該GaN基板の製造に使用されたGaNシードが、後述する2.項のC面GaN基板製造方法で製造された場合である。
【0029】
1.4.不純物
GaN結晶中の各種の不純物の濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry
)で測定するのが一般的である。以下で言及する不純物濃度は、SIMSで測定される、結晶表面からの深さが1μm以上の部分における値である。
実施形態のC面GaN基板は、NH
4F、NH
4Cl(塩化アンモニウム)、NH
4Br
(臭化アンモニウム)およびNH
4Iのようなハロゲン化アンモニウムを鉱化剤に用いて
、Pt(白金)製のカプセル内でアモノサーマル的に成長させたGaN結晶を好ましく含み得る。かかるGaN結晶においては、意図的に添加しない限り、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)およびK(カリウム)のようなアルカリ金属や、Mg(マグネシウム)およびCa(カルシウム)のようなアルカリ土類金属の濃度が、各元素とも1×10
16atoms/cm
3未満であり得る。
【0030】
ハロゲン化アンモニウムを鉱化剤に用いて、アモノサーマル的に成長させたGaN結晶は、鉱化剤に由来するハロゲンを含有し得る。例えば、NH
4Fを鉱化剤に用いてアモノ
サーマル法で成長されたGaN結晶は、5×10
14atoms/cm
3以上1×10
1
6atoms/cm
3未満、1×10
16atoms/cm
3以上1×10
17atoms/cm
3未満等の濃度でF(フッ素)を含有し得る。
本発明者等が実験で確認しているところでは、鉱化剤にNH
4FとNH
4Iを用いてアモノサーマル的に成長させたGaN結晶中のI(ヨウ素)濃度は、通常、1×10
16atoms/cm
3未満である。
【0031】
ハロゲン化アンモニウムを鉱化剤に用いてアモノサーマル的に成長させたGaN結晶は、5×10
17atoms/cm
3以上の濃度でH(水素)を含有し得る。かかるGaN結晶における水素濃度は、通常10
21atoms/cm
3以下であり、5×10
20atoms/cm
3以下、1×10
20atoms/cm
3以下、あるいは5×10
19atoms/cm
3以下であり得る。
アモノサーマル的に成長させたGaN結晶は、一般に、ガリウム空孔‐水素複合体(gallium vacancy‐hydrogen complex)に帰属する赤外吸収ピークを3140〜3200c
m
-1に有する。HVPE法やNaフラックス法で成長されたGaN結晶において、かかる赤外吸収ピークが観測されることはない。
【0032】
1.5.用途
(1)窒化物半導体デバイス
実施形態のC面GaN基板は、窒化物半導体デバイスの製造に好ましく使用することができる。
通常は、C面GaN基板上に一種以上の窒化物半導体をエピタキシャル成長させて、デバイス構造を備えたエピタキシャル基板を形成する。エピタキシャル成長法としては、薄膜の形成に適したMOCVD法、MBE法、パルス蒸着法などの気相法を好ましく用いることができるが、限定はされない。
デバイス構造は、前述の第一線分を引くことができる主表面上に形成される。
エッチング加工および電極や保護膜などの構造物の付与を含む半導体プロセスが実行された後、エピタキシャル基板は分断されて窒化物半導体デバイスチップとなる。
【0033】
実施形態のC面GaN基板を用いて製造し得る窒化物半導体デバイスの具体例としては、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光デバイス、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの
電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、太陽電池等が挙げられる。
その他、実施形態のC面GaN基板は、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、
振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、電圧ア
クチュエータ、人工光合成デバイス用電極等の用途にも適用可能である。
【0034】
(2)シード
実施形態のC面GaN基板は、バルク窒化物半導体結晶、とりわけバルクGaN結晶の製造に好ましく使用することができる。
具体的には、様々な方法によるバルク窒化物半導体結晶の成長において、実施形態のC面GaN基板をシードに用いることができる。
バルク窒化物半導体結晶の成長方法としては、HVPE(ハイドライド気相成長法)法、アモノサーマル法およびNaフラックス法に加え、THVPE(Tri-Halide Vapor Phase Epitaxy)法、OVPE(Oxide Vapor Phase Epitaxy)法なども好ましく使用するこ
とができる。
THVPE法は、GaCl
3のような13族元素の三塩化物とNH
3のような含窒素化合物とを原料に用いる窒化物半導体結晶の気相成長方法で、その詳細については、例えば、国際公開WO2015/037232号公報を参照することができる。THVPE法を用いたバルクGaN結晶の製造においては、実施形態のC面GaN基板の窒素極性表面上に、GaN結晶をエピタキシャル成長させる。
OVPE法は、Ga
2OとNH
3を原料に用いるGaNの気相成長方法で、その詳細に
ついては、例えば、M. Imade, et al., Journal of Crystal Growth, 312 (2010) 676-679を参照することができる。
【0035】
(3)GaN層接合基板
一例では、実施形態のC面GaN基板を用いて、GaN層接合基板を製造することができる。
GaN層接合基板とは、GaNとは異なる化学組成を有する異組成基板にGaN層が接合した構造を有する複合基板であり、発光デバイスその他の半導体デバイスの製造に使用することができる。異組成基板としては、サファイア基板、AlN基板、SiC基板、ZnSe基板、Si基板、ZnO基板、ZnS基板、石英基板、スピネル基板、カーボン基板、ダイヤモンド基板、Ga
2O
3基板、ZrB
2基板、Mo基板、W基板、セラミックス
基板などが例示される。
GaN層接合基板の構造、製造方法、用途等の詳細については、特開2006−210660号公報、特開2011−44665号公報等を参照することができる。
【0036】
GaN層接合基板は、典型的には、GaN基板の主表面近傍にイオンを注入する工程と、該GaN基板の該主表面側を異組成基板に接合させる工程と、イオン注入された領域を境として該GaN基板を2つの部分に切り離すことによって、異組成基板に接合したGaN層を形成する工程とを、この順に実行することによって製造される。
イオン注入を行わないGaN層接合基板の製造方法として、GaN基板を異組成基板に接合させた後、該GaN基板を機械的に切断して、異組成基板に接合したGaN層を形成する方法も開発されている。
いずれの方法で製造するにせよ、実施形態のC面GaN基板を材料に用いた場合には、該C面GaN基板から分離されたGaN層が異組成基板に接合された構造のGaN層接合基板が得られる。
【0037】
2.C面GaN基板製造方法
本発明の一実施形態はC面GaN基板製造方法に関する。
実施形態に係るC面GaN基板製造方法のフローチャートを
図4に示す。この方法は、順次実行される下記ステップS1〜S3を含む。
S1:窒素極性表面を有するGaNシードを準備するステップ。
S2:ステップS1で準備したGaNシードの窒素極性表面上にパターンマスクを配置するステップ。
S3:ステップS1で準備したGaNシードの窒素極性表面上に、ステップS2で配置したパターンマスクを通してGaN結晶をアモノサーマル的に成長させるステップ。
S4:ステップS3で成長させたGaN結晶を加工して、C面GaN基板を得るステップ。
以下に、ステップS1〜S4の詳細を説明する。
【0038】
(1)ステップS1
ステップS1では、窒素極性表面を有するGaNシードを準備する。
好ましいGaNシードは、HVPE法または酸性アモノサーマル法で成長させたバルクGaN結晶を加工して得られるC面GaN基板であり、本2.項で説明する方法で製造されたものであってもよい。C面GaN基板では、[0001]側の主表面がガリウム極性表面、[000−1]側の主表面が窒素極性表面である。
GaNシードの窒素極性表面の方位は、好ましくは[000−1]から2°以内、より好ましくは[000−1]から1°以内である。
GaNシードの窒素極性表面の面積は、好ましくは15cm
2以上であり、15cm
2以上50cm
2未満、50cm
2以上100cm
2未満、100cm
2以上200cm
2未満、
200cm
2以上350cm
2未満、350cm
2以上500cm
2未満、500cm
2以上
750cm
2未満などであり得る。
【0039】
GaNシードの窒素極性表面が円形であるとき、その直径は好ましくは45mm以上である。該直径は、典型的には、45〜55mm(約2インチ)、95〜105mm(約4インチ)、145〜155mm(約6インチ)、195〜205mm(約8インチ)、295〜305mm(約12インチ)等である。
例えばGaNシードが直径50mmのC面GaN基板である場合、その厚さは、好ましくは300μm以上であり、直径がこれより大きければ、その厚さの好ましい下限値もより大きくなる。GaNシードの厚さに上限は特に無いが、通常は20mm以下である。
【0040】
GaNシードのサイズは、後のステップS3で成長させるべきGaN結晶のサイズを考慮して決定する。
例えば、成長させるGaN結晶から、[1−100]方向、[10−10]方向および[01−10]方向のサイズがいずれも45mmのC面GaN基板を切り出そうとする場合、該GaN結晶を、[1−100]方向、[10−10]方向および[01−10]方向のサイズがいずれも45mm以上となるように成長させることが必要である。[1−100]方向、[10−10]方向および[01−10]方向のサイズがいずれも45mmであるGaN結晶を成長させるには、GaNシードとして、[1−100]方向、[10−10]方向および[01−10]方向のサイズがいずれも45mm以上であるものを用いることが好ましい。
GaNシードの窒素極性表面は、通常、研磨または研削により平坦化される。好ましくは、CMP(Chemical Mechanical Polishing)および/またはエッチングによって、平
坦化加工により導入されたダメージ層が該窒素極性表面から除去される。
【0041】
(2)ステップS2
ステップS2では、ステップS1で準備したGaNシードの窒素極性表面上に、パターンマスクを配置する。
パターンマスクの表面を形成する材料は、好ましくは白金族金属、すなわちRu(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)およびPt(白金)から選ばれる金属であり、特に好ましくはPt(白金)である。パターンマスクは、白金族金属またはその合金からなる単層膜であってもよいが、好ましくは、白金族金属よりもGaN結晶との密着性の良い金属からなる下地層の上に表層として白金族金属層を積層してなる多層膜である。該下地層の材料として、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)およびこれらから選ばれる1種以上を含む合金が例示されるが、限定するものではない。
【0042】
パターンマスクには、線状開口から構成される周期的開口パターンが設けられる。一例を、
図5および
図6を参照して説明する。
図5(a)は、GaNシードを示す斜視図である。GaNシード20は円盤形のC面GaN基板であり、ガリウム極性表面21、窒素極性表面22、および側面23を有している。
図5(b)は、窒素極性表面22上にパターンマスク30を形成した後のGaNシード20を示す斜視図である。パターンマスク30には、互いに平行に配置された複数の線状開口31が設けられている。線状開口31が形成する周期的開口パターンはストライプパターンである。
図6は、パターンマスク30を配置した後の、GaNシード20の窒素極性表面22側の一部を示す平面図である。
図6を参照すると、パターンマスク30には複数の線状開口31が一定のピッチPで互いに平行に設けられ、GaNシードの窒素極性表面22が各線状開口の内側に露出している。ピッチは、パターンマスクの非開口部を挟んで隣り合う平行な線状開口間の中心線間
距離を意味する。
【0043】
後のステップS3で成長するGaN結晶がGaNシード20から引き継ぐ転位欠陥を減らすためには、線状開口31の線幅Wが狭い方が有利である。従って、該線幅Wは0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
製造効率の観点からは、線状開口31の線幅Wが適度に広いことが好ましい。その方が、後のステップS3でGaN結晶が成長する際に、初期段階での成長レートが高くなるからである。従って、該線幅Wは5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがより好ましい。
後のステップS3で成長させるGaN結晶がGaNシード20から引き継ぐ転位欠陥を減らすためには、線状開口31間のピッチPが大きい方が有利である。従って、該ピッチPは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上である。
【0044】
線状開口31間のピッチPが大きい程、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉じるまでの時間が長くなる。従って、製造効率の観点からは、該ピッチPは10mm以下とすることが好ましく、4mm以下、3mm以下、更には2mm以下とすることもできる。
GaNシード20における窒素極性表面22とM面[(1−100)面、(10−10)面または(01−10)面]との交線の方向を基準方向としたとき、線状開口31の長手方向と該基準方向とがなす角度θは、好ましくは12°±5°である。該角度θは、12°±3°、12°±2°または12°±1°であってもよい。線状開口をこのように配向させると、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉塞し易くなる。
【0045】
パターンマスクには、線状開口から構成され、交差部を含む周期的開口パターンを設けてもよい。一例を、
図7を参照して説明する。
図7は、パターンマスク30が形成された後の、GaNシード20の窒素極性表面22側の一部分を示す平面図である。
パターンマスク30には、線状開口31が設けられ、GaNシードの窒素極性表面22が該線状開口31の内側に露出している。
パターンマスク30に設けられた線状開口は2種類、すなわち、長手方向が互いに異なる第一線状開口311と第二線状開口312である。複数の該第一線状開口311と複数の該第二線状開口312とによって四角格子パターンが構成されている。
第一線状開口311間のピッチP
1および第二線状開口312間のピッチP
2は、それぞれ一定である。ピッチは、パターンマスクの非開口部を挟んで隣り合う、互いに平行な線状開口間の中心線間距離を意味する。
ピッチP
1およびピッチP
2は同じであってもよいが、本発明者等が経験的に見出しているところでは、ピッチP
1とピッチP
2が異なっている方が、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉塞し易い傾向がある。従って、該ピッチP
1およびP
2は、一方が他方の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
【0046】
パターンマスク30に設けられた四角格子パターンは、第一線状開口311と第二線状開口312との間で形成された交差部Kを含んでいる。後述するように、開口パターンに交差部を設けることは、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴の閉塞を促すうえで有利である。かかる観点から、パターンマスクが含む交差部の数密度は、好ましくは1cm
−2以上である。
一方で、交差部の数密度を上げるためには線状開口の密度を高くする必要があること、
そして、線状開口の密度を高くするにつれて、後のステップS3で成長するGaN結晶がGaNシードから引き継ぐ転位欠陥が増加することを考慮すると、交差部の数密度は好ましくは20cm
−2以下、より好ましくは15cm
−2以下、より好ましくは10cm
−2以下である。
【0047】
第一線状開口311と第二線状開口312の方位は、窒素極性表面22とM面との交線の方向のひとつを第一基準方向、他のひとつを第二基準方向として表すと便利である。例えば、第一基準方向が窒素極性表面22と(1−100)面との交線の方向であるとき、第二基準方向は、(10−10)面または(01−10)面と窒素極性表面22との交線の方向である。
好適例のひとつにおいては、第一線状開口311の長手方向が第一基準方向と成す角度θ
1と、第二線状開口312の長手方向が該二基準方向と成す角度θ
2の、少なくとも一方を、12°±5°とすることができる。
第一線状開口311の総延長が第二線状開口312の総延長と同等以上であるときは、少なくとも角度θ
1が12°±5°であることが好ましい。換言すれば、線状開口31の総延長の50%以上の部分における長手方向が、GaNシードの窒素極性表面とM面との交線の方向に対し12°±5°の角度をなすことが好ましい。
より好ましい例では、角度θ
1および角度θ
2の両方が12±5°、すなわち、線状開口31の全ての部分における長手方向が、GaNシードの窒素極性表面とM面との交線の方向に対し12±5°の角度をなす。
角度θ
1およびθ
2は、12±3°、12±2°、12±1°であってもよい。
線状開口を上記のように配向させると、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときにパターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉塞し易くなる。
【0048】
角度θ
1およびθ
2のいずれか一方または両方を7°未満とすることが妨げられるものではない。一例では、角度θ
1およびθ
2のいずれか一方または両方を、±3°、±2°、±1°等としてもよい。本発明者等が見出しているところによれば、線状開口の長手方向をGaNシードのM面と略平行に配向させると、後のステップS3でGaN結晶を成長させたとき、結晶中で貫通転位がラテラル方向に曲げられる効果が生じる。
第一線状開口と第二線状開口とがなす角度θ
12は、例えば、30°以上45°未満、45°以上75°未満または75°以上90°以下とし得る。該角度θ
12は、60°±10°、60°±5°、60°±3°、60°±1°等としてもよい。
【0049】
後のステップS3で成長するGaN結晶がGaNシード20から引き継ぐ転位欠陥を減らすためには、第一線状開口311の線幅W
1および第二線状開口312の線幅W
2が狭い方が有利である。従って、該線幅W
1およびW
2は、それぞれ、0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
製造効率の観点からは、第一線状開口311の線幅W
1および第二線状開口312の線
幅W
2が適度に広いことが好ましい。その方が、後のステップS3でGaN結晶が成長す
る際に、初期段階での成長レートが高くなるからである。従って、該線幅W
1およびW
2は、それぞれ、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがより好ましい。
【0050】
後のステップS3で成長させるGaN結晶がGaNシード20から引き継ぐ転位欠陥を減らすためには、第一線状開口311間のピッチP
1および第二線状開口312間のピッ
チP
2が大きい方が有利である。従って、該ピッチP
1およびP
2は、好ましくは1mm以
上、より好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上である。
該ピッチP
1およびP
2が大きい程、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに
、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉じるまでに要する時間が長くなる。従って、製造効率の観点からは、ピッチP
1およびP
2の少なくとも一方を10mm以下とすることが好ましい。一例では、ピッチP
1およびP
2の一方または両方を4mm以下、3mm以下、更には2mm以下としてもよい。
好適例では、引き継がれる転位欠陥の低減と製造効率改善の両方を考慮して、ピッチP
1およびP
2のいずれか一方だけを4mm以下、3mm以下または2mm以下とすることができる。
【0051】
ステップS2でGaNシードの窒素極性表面上に配置するパターンマスクに設け得る周期的開口パターンは、上述のストライプパターンや四角格子パターンに限定されない。
図8〜10に含まれる各図面は、窒素極性表面22上にパターンマスク30が配置された後のGaNシード20の平面図であり、パターンマスクに設け得る各種の周期的開口パターンを例示しているが、採用し得る開口パターンはこれらに限定されない。
図8(a)では、線状開口31がジグザグストライプ開口パターンを形成している。
図8(b)では、線状開口31が一種の格子パターンを形成している。
図8(c)では、線状開口31が傾斜したレンガ格子パターンを形成している。
図8(d)では、線状開口31が傾斜した四角格子パターンを形成している。
【0052】
図9(e)では、線状開口31がヘリンボーン格子パターンを形成している。
図9(f)では、線状開口31が、傾斜したレンガ格子と傾斜した四角格子を折衷した格子パターンを形成している。
図9(g)では、線状開口31が三角格子パターンを形成している。
図9(h)では、線状開口31が扁平ハニカム格子パターンを形成している。
【0053】
図10(i)では、線状開口31が毘沙門亀甲格子パターンを形成している。
図10(j)および(k)の各々では、線状開口31が立方体パターンを形成している。
図10(l)では、線状開口31がY字形パターンを形成している。
【0054】
図8〜10に示すいずれの例においても、パターンマスク30が有する周期的開口パターンは交差部を含んでいる。交差部のいくつかの類型を
図11(a)〜(f)および
図12(a)〜(f)に示す。
図11(a)〜(f)に示すものを含め、長手方向が互いに異なる2以上の線状開口間が接続されている交差部を、本明細書では連続的交差部と呼ぶ。
本明細書にいう交差部は、特に断らない限り、連続的交差部のみならず、
図12(a)〜(f)に例示する不連続的交差部を包含する。不連続的交差部は、連続的交差部に対し、線状開口間の接続を切り離す変更を加えてなる交差部と見做すことができる。
不連続的交差部における、非開口部で隔てられた2つの線状開口間の距離は、300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
【0055】
図8〜10では、
図8(b)を除く全ての例で、周期的開口パターンに含まれる交差部の配置が二次元的である。
周期的開口パターンに交差部が含まれると、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときにパターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉塞し易くなる。この効果は、周期的開口パターン中における交差部の配置が二次元的であるとき顕著であり、更に、交差部の数密度を高くすることによってより顕著となる。
このことから、周期的開口パターンにおける交差部の配置は二次元的であることが好ましく、そのときにパターンマスクが含む交差部の数密度は、好ましくは1cm
−2以上である。ただし、交差部の数密度を上げるには線状開口の密度を高くする必要があること、そして、線状開口の密度を高くするにつれて、後のステップS3で成長するGaN結晶が
GaNシードから引き継ぐ転位欠陥が増加することを考慮すると、交差部の数密度は好ましくは20cm
−2以下、より好ましくは15cm
−2以下、より好ましくは10cm
−2以下である。
【0056】
図8〜10に示す種々の周期的開口パターンをパターンマスクに設けるときの、線状開口の方位、線幅およびピッチに関する好ましい設計は、次の通りである。
線状開口の少なくとも一部は、その長手方向が、GaNシードの窒素極性表面とM面との交線の方向に対し12±5°の角度をなすことが好ましい。より好ましいのは、該線状開口の総延長の50%以上を占める部分において、更には該線状開口の全ての部分において、長手方向が、GaNシードの窒素極性表面とM面との交線の方向に対し12±5°の角度をなすことである。
線状開口の線幅は、0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがより好ましく、また、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがより好ましい。線状開口の全ての部分で線幅が同じである必要はない。
【0057】
パターンマスクの単位パターンが含む非開口部が全て四角形または全て六角形であるとき、線状開口間のピッチに関して次のことがいえる。
GaNシード上に成長させるGaN結晶が該GaNシードから引き継ぐ転位欠陥の低減という観点からは、パターンマスクが1mm未満のピッチで配置された線状開口を含まないことが好ましく、2mm未満のピッチで配置された線状開口を含まないことがより好ましく、3mm未満のピッチで配置された線状開口を含まないことがより好ましく、4mm未満のピッチで配置された線状開口を含まないことがより好ましい。
一方、製造効率の改善という観点からは、パターンマスクが10mm以下のピッチで配置された線状開口を含むことが好ましく、更には、4mm以下、3mm以下または2mm以下のピッチで配置された線状開口を含んでもよい。
上記観点の両方を考慮して、パターンマスクには1mm以上4mm以下のピッチで配置された線状開口と、4mmを超えるピッチで配置された線状開口とを設けたり、1mm以上3mm以下のピッチで配置された線状開口と、3mmを超えるピッチで配置された線状開口とを設けたり、あるいは、1mm以上2mm以下のピッチで配置された線状開口と、2mmを超えるピッチで配置された線状開口とを設けたりしてもよい。これらのいずれの場合にも、パターンマスクには、4mmを超えるピッチで配置された線状開口を設け得る。
図8〜10に示す例のうち、パターンマスクの単位パターンが含む非開口部が全て四角形であるのは、
図8(c)および(d)、
図9(e)および(f)、
図10(j)および(k)である。周期的開口パターンが扁平ハニカムパターンである
図9(h)の例では、パターンマスクの単位パターンが含む非開口部が全て六角形である。
【0058】
(3)ステップS3
ステップS3では、ステップS1で準備したGaNシード上の窒素極性表面上に、ステップS2で配置したパターンマスクを通してGaN結晶をアモノサーマル的に成長させる。
ステップS3におけるGaN結晶の成長過程を、
図13を参照して説明する。
図13(a)は、結晶成長が始まる前の状態を示す断面図である。GaNシード20の窒素極性表面22上には、線状開口31を有するパターンマスク30が設けられている。
図13(b)は、パターンマスク30に設けられた線状開口31の内側に露出した窒素極性表面22上で、GaN結晶40が成長し始めたところを示す。
パターンマスク30を通り抜けた後、GaN結晶40は
図13(c)に示すように、[000−1]方向だけではなくラテラル方向(窒素極性表面22に平行な方向)にも成長するが、GaN結晶40とパターンマスク30との間にはギャップGが形成される。その
結果、パターンマスク30との接触により起こり得るGaN結晶40の配向乱れが抑制される。
【0059】
図13(c)に示す成長段階では、GaN結晶40は、パターンマスク30の非開口部の上方に貫通穴Tを有している。
GaN結晶40が更に成長することにより、ギャップGは徐々に埋まるが、完全に埋まることはなく、
図13(d)に示すように、ボイドVを残した状態で貫通穴Tが閉じる。
貫通穴Tが塞がった後、
図13(e)に示すように、GaN結晶40を[000−1]方向に更に成長させる。GaNシード20とGaN結晶40との間に発生する応力が、ボイドVによって緩和され、ひいてはGaN結晶40の歪が低減されると考えられる。
貫通穴Tが塞がった後の、GaN結晶40の[000−1]方向の成長量は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、特に上限は無い。
注記すると、ステップS3において、GaN結晶はGaNシード20のガリウム極性表面21上でも成長するが、
図13では図示を省略している。
【0060】
図13(d)の段階で貫通穴Tが閉じるときに、コアレス面で転位が発生するか、あるいは、コアレス面で転位が一斉に[000−1]方向に曲げられるかの、いずれかまたは両方の理由により、
図13(e)の段階で形成されるGaN結晶から切り出されるC面GaN基板の主表面には、転位アレイが現れる。該転位アレイの形状は、該コアレス面を[000−1]方向に延長した延長面と、該C面基板の主表面とが形成する交線の形状である。
上記のコアレス面はパターンマスクの非開口部上に形成されるので、パターンマスクが複数の閉じた非開口部を有するときには、上述のC面GaN基板の主表面に、複数の転位アレイが離散的に現れる。パターンマスクにおける複数の閉じた非開口部の配置に周期性があるときには、上述のC面GaN基板の主表面における該複数の転位アレイの配置も周期的となる。パターンマスクにおける複数の閉じた非開口部の配置が二次元的である場合には、上述のC面GaN基板の主表面における該複数の転位アレイの配置も二次元的となる。
閉じた非開口部とは、周囲が線状開口で囲まれた非開口部であり、
図8〜10に示す各種の例のうちパターンマスクが閉じた非開口部を有するのは、
図8(c)および(d)、
図9(e)〜(h)、
図10(i)〜(k)である。これらの例において、パターンマスクにおける閉じた非開口部の配置は、周期的かつ二次元的である。
【0061】
パターンマスクに設けられる線状開口の方位が、GaN結晶40の成長に与える影響について説明すると、次の通りである。
本発明者等が実験を通して知り得たところでは、パターンマスクに設ける開口パターンがストライプ型の場合、GaN結晶40の成長が
図13(c)の段階から
図13(d)の段階へ最も確実に進むのは、すなわち、GaN結晶40に生じる貫通穴Tが最も塞がり易いのは、窒素極性表面とM面との交線の方向に対し、線状開口の長手方向を約12°傾斜させたときである。該傾斜を0°に近付けたときも、また、30°に近付けたときも、貫通穴Tは塞がり難くなる。
一方、線状開口31が形成するパターンに交差部を導入すると、線状開口31がM面と平行であっても、GaN結晶40に生じる貫通穴Tが閉塞し易くなる。
その理由について、本発明者等は、次に説明する凹入角効果が関係していると考えている。
【0062】
図14(a)は、線状開口が交差部を形成するパターンマスクが配置された、GaNシードの窒素極性表面側の一部を示す平面図である。パターンマスク30には、長手方向の異なる第一線状開口311および第二線状開口312が設けられており、これらの間で連
続的交差部が形成されている。
図14(b)は、
図14(a)に示すGaNシード上に、
図13(c)に示す成長段階のGaN結晶40が形成された状態を示している。GaN結晶40は、線状開口に沿って成長している。破線で表示されているのは、GaN結晶40の下方に隠れた線状開口311、312の輪郭である。
図14(b)中の4つの矢印は、それぞれ、線状開口311および312が形成する交差部の上に成長するGaN結晶40の側部に形成された凹入部を指している。矢印の方向は、凹入部の凹入方向を表している。
かかる凹入部の形成によって凹入角効果(re-entrant angle effect)が発生し、Ga
N結晶40は矢印と反対の方向に向かって成長するように促される。すなわち、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴を閉塞させるようGaN結晶を成長させる駆動力が、凹入角効果によって生じる。
翻って考えると、開口パターンがストライプ型の場合に、貫通穴の閉じ易さに対して線状開口の方位が支配的な影響を持つ理由は、凹入角効果が発生しないためと推察される。
【0063】
同様のメカニズムは、線状開口が連続的交差部ではなく、不連続的交差部を形成する場合においても発生し得る。このことを、
図15を参照して説明する。
図15(a)は、線状開口が不連続的交差部を形成するパターンマスクが配置された、GaNシードの窒素極性表面側の一部を示す平面図である。第一線状開口311と、2つに分断された第二線状開口312とによって、不連続的交差部が形成されている。
このGaNシード上にGaN結晶を成長させたとき、第一線状開口311と第二線状開口312の間の距離が小さいため、
図13(c)の成長段階におけるGaN結晶の形状は、連続的交差部上に成長したときと同様である。すなわち、
図15(b)に示すように、不連続的交差部上に成長するGaN結晶40の側部には矢印で示す凹入部が形成される。その結果発生する凹入角効果によって、GaN結晶40は矢印と反対の方向に向かって成長するよう促される。
以上に説明した凹入角効果が、
図10および11に例示する各種の交差部上でGaN結晶が成長したときに発生し得ることを、当業者は理解できるであろう。
【0064】
以下では、ステップS3で好ましく使用し得る結晶成長装置および結晶成長条件について説明する。
ステップS3における、アモノサーマル法によるGaN結晶の成長には、
図16に示すタイプの結晶成長装置を好ましく用いることができる。
図16を参照すると、結晶成長装置100は、オートクレーブ101と、その中に設置されるPt製のカプセル102を備えている。
カプセル102は、Pt製のバッフル103で相互に区画された原料溶解ゾーン102aおよび結晶成長ゾーン102bを内部に有する。原料溶解ゾーン102aにはフィードストックFが置かれる。結晶成長ゾーン102bには、Ptワイヤー104で吊されたシードSが設置される。
真空ポンプ105、アンモニアボンベ106および窒素ボンベ107が接続されたガスラインが、バルブ108を介してオートクレーブ101およびカプセル102と接続される。カプセル102にNH
3(アンモニア)を入れる際には、アンモニアボンベ106から供給されるNH
3の量をマスフローメーター109で確認することが可能となっている。
【0065】
フィードストックには、加熱下で単体Ga(金属ガリウム)にHCl(塩化水素)ガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で製造した多結晶GaNを、好ましく用いることができる。
フィードストックの溶解を促進するための鉱化剤には、NH
4Cl(塩化アンモニウム)、NH
4Br(臭化アンモニウム)およびNH
4I(ヨウ化アンモニウム)から選ばれ
る一種以上のハロゲン化アンモニウムと、NH
4Fとを組合せて用いることが好ましい。
特に好ましくは、NH
4FとNH
4Iを併用する。
650℃以下の成長温度を使用する場合に、鉱化剤にNH
4F以外のハロゲン化アンモ
ニウムのみを用いることは推奨されない。なぜなら、GaN結晶の成長方向が実質的に[000−1]方向のみとなり、ラテラル方向成長が起こらないからである。
一方、NH
4Fを単独で鉱化剤に用いた場合はラテラル成長が強く促進されるために、
図13に示す態様でGaN結晶を成長させること、すなわち、パターンマスクとの間にギャップが形成されるようにGaN結晶を成長させることが難しくなる。
【0066】
シードS上にGaN結晶を成長させる際には、オートクレーブ101とカプセル102の間の空間にもNH
3を入れたうえで、オートクレーブ101の外側からヒーター(図示せず)で加熱して、カプセル102内を超臨界状態または亜臨界状態とする。
フィードストックFが十分に溶解して溶媒が飽和状態に達するまでの間は、シードSの表面でもエッチングが生じる。必要な場合には、成長開始前に、シードSのエッチバックを促進させる目的のために、原料溶解ゾーン102aと結晶成長ゾーン102bの間の温度勾配を結晶成長時とは逆にする温度反転期間を設けることもできる。
成長温度は、好ましくは550℃以上である。1000℃以上の成長温度を使用することは妨げられないが、700℃以下であっても十分に品質の高いGaN結晶を成長させることが可能である。
成長圧力は、例えば、100〜250MPaの範囲内で設定することができるが、限定するものではない。
【0067】
一例として、鉱化剤としてNH
4FとNH
4Iを、NH
3に対するモル比がそれぞれ0.5%および4.0%となるように使用し、圧力が約220MPa、原料溶解ゾーンの温度Tsと結晶成長ゾーンの温度Tgの平均値が約600℃、これら2つのゾーン間の温度差Ts−Tgが約5℃(Ts>Tg)という条件で、GaNを成長させることができる。
原料溶解ゾーンと結晶成長ゾーンの温度差を大きくすることによって、GaN結晶の成長レートを高くすることが可能であるが、成長レートが高過ぎる場合には、GaN結晶の成長が
図13(c)の段階から
図13(d)の段階に進み難くなる、すなわち、GaN結晶の貫通穴が閉じ難くなるという問題が生じ得る。
ステップS3では、フィードストックが使い尽くされる度にカプセルを交換し、GaN結晶の再成長を繰り返すことができる。
成長させるGaN結晶にn型導電性を付与するには、O(酸素)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、S(硫黄)等でドープすればよい。
成長させるGaN結晶を半絶縁性とするには、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マグネシウム(マグネシウム)等でドープすればよい。
【0068】
(4)ステップS4
ステップS3で成長させたGaN結晶を加工することによって、様々な面方位を有するGaN基板を製造することができる。該加工は、GaN結晶をシングルワイヤソーまたはマルチワイヤソーのようなスライサーを用いてスライスすることを含んでもよい。スライス厚は目的に応じて適宜定めることができるが、通常は100μm以上であり、かつ、20mm以下である。
GaN結晶の切断面の平坦化は、グラインディングとラッピングのいずれかまたは両方によって行うことができる。切断面からのダメージ層除去は、CMPとエッチングのいずれかまたは両方によって行うことができる。
ステップS3で成長させたGaN結晶40を、C面に平行または略平行にスライスしてC面GaN基板を作る場合、
図17(a)に破線で示す位置でスライスすると、貫通穴を有さないC面GaN基板が得られる。かかる基板は、半導体デバイスやGaN層接合基板
の製造に好適に使用可能である他、各種の結晶成長技法でバルクGaN結晶を成長させるときにシードとして好適に使用することができる。かかる基板は、上述のステップS1で準備すべきGaNシードの好適例のひとつでもある。
【0069】
一方、GaN結晶40を
図17(b)に破線で示す位置でスライスした場合、得られるC面GaN基板は主表面に貫通穴を有するため、半導体デバイス用の基板としての使用には適さないが、Fを含有する酸性鉱化剤を用いてバルクGaN結晶をアモノサーマル的に成長させるときに、シードとして使用可能である。酸性鉱化剤がFを含有すると、シードに貫通穴があっても、それを塞ぐようにGaN結晶が成長するからである。
一例においては、ステップS3で、GaN結晶40の成長が完全に
図13(d)の段階まで進まない状態、すなわち、貫通穴Tの全部または一部が閉じないまま残った状態で、GaN結晶40の成長を終了させることもできるが、そうした場合、ステップS4では、成長させたGaN結晶40をどの位置でスライスしたとしても、貫通穴のあるC面GaN基板しか得られない。この貫通穴のあるC面GaN基板は、Fを含有する酸性鉱化剤を用いてバルクGaN結晶をアモノサーマル的に成長させるときのシードとして使用することが可能である。
【0070】
実施形態の方法で製造されるC面GaN基板の窒素極性表面上に、パターンマスクを用いずに、酸性アモノサーマル法でGaN結晶を成長させる場合について説明すると、次の通りである。
成長装置には
図16に示すタイプのものを好ましく用いることができる。
フィードストックには、加熱下で単体GaにHClガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で製造した多結晶GaNを、好ましく用いることができる。
鉱化剤には、NH
4Fを好ましく用いることができる。NH
4Cl、NH
4BrおよびNH
4Iから選ばれる一種以上のハロゲン化アンモニウムをNH
4Fと併用してもよく、例えば、NH
4FとNH
4Iを併用してよい。
NH
4Fの濃度は、NH
3に対するモル比で0.1〜1%とすることができる。NH
4F以外のハロゲン化アンモニウムの濃度は、NH
3に対するモル比で1〜5%とすることができる。
圧力および温度については、例えば、100〜250MPaの範囲内および550〜650℃の範囲内でそれぞれ設定することができるが、限定するものではない。
【0071】
3.実験結果
3.1.実験1
<C面GaN基板の作製>
GaNシードとして、HVPE法で成長させたGaN結晶から切り出されたC面GaN基板を準備した。このC面GaN基板は、それぞれCMP仕上げされた窒素極性表面とガリウム極性表面を有していた。窒素極性表面の方位は[000−1]方向から1°以内であった。
該GaNシードの窒素極性表面上に、100nm厚のTiW層上に100nm厚のPt層を有する積層膜からなる、ストライプ型の開口パターンを有するパターンマスクを形成した。該マスクのパターニングにはリフトオフ法を用いた。開口パターンを構成する線状開口の線幅は50μm、線状開口間のピッチは4mmとした。ストライプ方向は、GaNシードの窒素極性表面とM面との交線から12°傾けた。
【0072】
パターンマスクの形成後、
図16に示すタイプの結晶成長装置を用いて、GaNシード上にアモノサーマル法でGaN結晶を成長させた。
フィードストックには、加熱下で単体GaにHClガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で合成した多結晶GaNを用いた。
鉱化剤にはNH
4FおよびNH
4Iを併用した。NH
4FおよびNH
4Iの量は、NH
3に対するモル比で、それぞれ0.5%および4.0%とした。NH
4Iは、NH
3を入れた後のPt製カプセル内にHI(ヨウ化水素)を導入することにより合成した。
【0073】
成長条件は、結晶成長ゾーンの温度Tgと原料溶解ゾーンの温度Tsの平均値を598℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を5℃(Ts>Tg)、圧力を220MPaとした。
成長開始から35日間が経過したところでカプセルを開放してGaNシードを取り出し、[000−1]側に成長したGaN結晶を観察したところ、成長フロントはパターンマスクの上方に達していたが、ラテラル方向の成長レートは面内で一様ではなく、パターンマスクの非開口部の上方に生じた貫通穴は、一部では閉塞が始まっていたが、殆どの部分で閉じていなかった。
観察後、GaNシードを新しく準備したカプセルに移し換え、再び同じアモノサーマル成長条件で再成長を行った。再成長の開始から35日間が経過したところで成長を終了させた。
【0074】
再成長の間に、GaN結晶の上記貫通穴は完全に閉塞し、成長フロントは平坦化していた。
成長したGaN結晶をGaNシードから分離させ、その[0001]側(GaNシードと結合していた側)の表面を観察すると、互いに平行な複数のV溝が、等間隔で形成されていた。
V溝の長手方向は、パターンマスクに設けた線状開口の長手方向と同じであり、また、V溝間のピッチは、該線状開口間のピッチと同じであった。このことは、このGaN結晶が
図13に示す態様で成長したこと、および、その結果として形成されたボイドの名残が該V溝であることを示している。
レーザー顕微鏡で計測した該V溝の深さは最深部において1.9mmであった。再成長前の観察結果と合わせると、成長中のGaN結晶に生じた上記の貫通穴は、GaN結晶が[000−1]方向に1〜2mm成長した時点で閉塞し始めたと考えられた。
アモノサーマル法により成長させた上記のGaN単結晶を、C面に平行にスライスし、複数のブランク基板を得た。そのうち一枚を加工して、両主表面がCMP仕上げされた、厚さ350μmのC面GaN基板を作製した。
【0075】
<X線ロッキングカーブ測定>
作製したC面GaN基板のガリウム極性表面における(004)反射のXRCを、CuKαをX線源に用いたX線回折装置[スペクトリス(株)製 パナリティカル X’Pert Pro MRD]を用いて測定した。入射側光学系には、1/2スリット、X線ミラー、Ge(
440)4結晶モノクロメータおよびw0.2mm×h1mmのクロススリットを用い、受光光学系にはPIXcel
3D(登録商標)検出器の0Dモードを用いた。光学系の分解能は5〜6arcsecであった。試料表面におけるX線のビームサイズは、X線の入射角が90°(X線の入射方向が試料表面と直交)の場合に0.2mm×5mmとなるように設定した。測定時には、該ビームサイズが5mmとなる方向とX線入射面とが直交するようにした。
【0076】
まず、ガリウム極性表面の略中心を通る、m軸に平行な長さ70mmの線分上において、1mm間隔でωスキャンを行った。各ωスキャンにおいて、X線入射面はm軸に平行にした。つまり、試料のガリウム極性表面に対し、a軸に直交する方向からX線を入射させた。
全測定点における(004)反射のXRCのピーク角度およびFWHMは下記表1に示す通りであった。
【0078】
全測定点間におけるFWHMの最大値、平均値および標準偏差は、それぞれ、26.3arcsec、11.7arcsecおよび3.8arcsecであった。
全測定点間におけるピーク角度の最大値と最小値との差は0.17°であった。
測定点No.16から測定点No.55までの40個の測定点を含む長さ40mmの区間について見ると、FWHMの最大値、平均値および標準偏差が、それぞれ、17.0arcsec、10.4arcsecおよび2.8arcsecであり、ピーク角度の最大
値と最小値との差は0.10°であった。
【0079】
次に、ガリウム極性表面の略中心を通る、a軸に平行な長さ59mmの線分上において、1mm間隔でωスキャンを行った。各ωスキャンにおいて、X線入射面はa軸に平行にした。つまり、試料のガリウム極性表面に対し、m軸に直交する方向からX線を入射させた。
全測定点における(004)反射のXRCのピーク角度およびFWHMは下記表2に示す通りであった。
【0081】
全測定点間におけるFWHMの最大値、平均値および標準偏差は、それぞれ、24.3arcsec、13.0arcsecおよび4.2arcsecであった。全測定点間におけるピーク角度の最大値と最小値との差は0.16°であった。
測定点No.11から測定点No.50までの40個の測定点を含む長さ40mmの区間について見ると、FWHMの最大値、平均値および標準偏差が、それぞれ、23.2arcsec、12.7arcsecおよび3.7arcsecであり、ピーク角度の最大値と最小値との差は0.11°であった。
【0082】
<赤外吸収スペクトル測定>
作製したC面GaN基板の赤外吸収スペクトルを測定したところ、3100〜3500cm
-1に、ガリウム空孔−水素複合体(gallium vacancy‐hydrogen complex)に帰属す
る吸収ピークが複数観察された。この複数の吸収ピークの中には、ピーク波長がそれぞれ3150cm
−1付近、3164cm
−1付近、3176cm
−1付近および3188cm
−1付近にある4つのピークが含まれていた。
【0083】
3.2.実験2<C面GaN基板の作製>
上記実験1においてアモノサーマル的に成長させたGaN結晶から切り出した厚さ330μmのC面GaN基板をGaNシードとして使用し、
図16に示すタイプの結晶成長装置を用いて、アモノサーマル法によりGaN結晶を成長させた。GaNシードは、研削による平坦化時に形成されたダメージ層を除去するために、両方の主表面をCMP仕上げした。
フィードストックには、加熱下で単体GaにHClガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で合成した多結晶GaNを用いた。
鉱化剤にはNH
4FおよびNH
4Iを用いた。NH
4FおよびNH
4Iの量は、NH
3に対するモル比で各々1%とした。NH
4Iは、NH
3を入れた後のPt製カプセル内にHIを導入することにより合成した。
【0084】
成長条件は、結晶成長ゾーンの温度Tgと原料溶解ゾーンの温度Tsの平均値を605〜610℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を5〜10℃(Ts>Tg)、圧力を220MPaとした。
28日間の成長により、GaNシードの窒素極性表面上ではGaN結晶が[000−1]方向に1.8mm成長した。
次いで、成長させたGaN結晶を加工して、直径50mmのC面GaN基板を作製した。該GaN基板の主表面は、両側とも研削して平坦化した後、更にCMP仕上げしてダメージ層を除去した。最終的な基板厚さは350μmとした。
【0085】
<X線ロッキングカーブ測定>
作製したC面GaN基板のガリウム極性表面における(004)反射のXRCを、実験1と同様にして測定した。
まず、ガリウム極性表面の略中心を通る、m軸に平行な長さ48mmの線分上において、1mm間隔でωスキャンを行った。各ωスキャンにおいて、X線入射面はm軸に平行にした。つまり、試料のガリウム極性表面に対し、a軸に直交する方向からX線を入射させた。
全測定点における(004)反射のXRCのピーク角度およびFWHMは下記表3に示す通りであった。
【0087】
全測定点間におけるFWHMの最大値、平均値および標準偏差は、それぞれ、17.5arcsec、10.2arcsecおよび2.3arcsecであった。
全測定点間におけるピーク角度の最大値と最小値との差は0.08°であった。
測定点No.5から測定点No.44までの40個の測定点を含む長さ40mmの区間について見ると、FWHMの最大値、平均値および標準偏差が、それぞれ、12.6arcsec、9.6arcsecおよび1.4arcsecであり、ピーク角度の最大値と最小値との差は0.07°であった。
【0088】
次に、ガリウム極性表面の略中心を通る、a軸に平行な長さ49mmの線分上において、1mm間隔でωスキャンを行った。各ωスキャンにおいて、X線入射面はa軸に平行にした。つまり、試料のガリウム極性表面に対し、m軸に直交する方向からX線を入射させた。
全測定点における(004)反射のXRCのピーク角度およびFWHMは下記表4に示す通りであった。
【0090】
全測定点間におけるFWHMの最大値、平均値および標準偏差は、それぞれ、18.2arcsec、9.5arcsecおよび2.5arcsecであった。
全測定点間におけるピーク角度の最大値と最小値との差は0.07°であった。
測定点No.5から測定点No.44までの40個の測定点を含む長さ40mmの区間について見ると、FWHMの最大値、平均値および標準偏差が、それぞれ、18.2arcsec、9.5arcsecおよび2.7arcsecであり、ピーク角度の最大値と最小値との差は0.06°であった。
<赤外吸収スペクトル測定>
作製したC面GaN基板の赤外吸収スペクトルを測定したところ、3140〜3200cm
−1に、ガリウム空孔−水素複合体に帰属する複数の吸収ピークが観察された。
【0091】
3.3.実験3
<C面GaN基板の作製>
一次GaNシードとして、HVPE法で成長させたGaN結晶から切り出されたC面GaN基板を準備した。このC面GaN基板は、それぞれCMP仕上げされた窒素極性表面とガリウム極性表面を有していた。窒素極性表面の方位は[000−1]から1°以内であった。
該一次GaNシードの窒素極性表面上に、100nm厚のTiW層上に100nm厚のPt層を有する積層膜からなる、四角格子型の周期的開口パターンを有するパターンマスクを形成した。該マスクのパターニングにはリフトオフ法を用いた。
四角格子型の周期的開口パターンは、互いに60°の角度をなす第一線状開口と第二線状開口とから構成した。各線状開口の線幅は50μmとした。第一線状開口間のピッチは4mmとし、第二線状開口間のピッチは2mmとした。
第一線状開口と第二線状開口の長手方向は、それぞれ、一次GaNシードの窒素極性表面とM面との交線のひとつから12°傾けた。
【0092】
パターンマスクの形成後、
図16に示すタイプの結晶成長装置を用いて、該一次GaNシード上に、酸性アモノサーマル法でGaN結晶を成長させた。
フィードストックには、加熱下で単体GaにHClガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で合成した多結晶GaNを用いた。
鉱化剤にはNH
4FおよびNH
4Iを併用した。NH
4FおよびNH
4Iの量は、NH
3に対するモル比で、それぞれ0.5%および4.0%とした。NH
4Iは、NH
3を入れた後のPt製カプセル内にHI(ヨウ化水素)を導入することにより合成した。 成長条件は、結晶成長ゾーンの温度Tgと原料溶解ゾーンの温度Tsの平均値を605〜610℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を3〜8℃(Ts>Tg)、圧力を220MPaとした。
22日間の成長により、一次GaNシードの窒素極性表面上ではGaN結晶が[000−1]方向に3.2mm成長した。
【0093】
アモノサーマル的に成長させた上記GaN結晶を加工して、厚さ430μmのC面GaN基板を作製した。具体的には、マルチワイヤソーを用いてGaN結晶をC面に平行にスライスし、得られたブランク基板の両方の主表面を研削して平坦化した後、更にCMP仕上げしてダメージ層を除去した。
次いで、該C面GaN基板の窒素極性表面上に、リフト法を用いて、一次GaNシードに設けたパターンマスクと同じパターンマスクを形成した。パターンマスクに設ける傾斜した四角格子パターンの方位も、一次GaNシードと同じとした。
【0094】
パターンマスクの形成後、該C面GaN基板を二次GaNシードとして使用し、酸性アモノサーマル法でGaN結晶を成長させた。
結晶成長装置には、
図16に示すタイプのものを用いた。
フィードストックには、加熱下で単体GaにHClガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で合成した多結晶GaNを用いた。
鉱化剤にはNH
4FおよびNH
4Iを併用した。NH
4FおよびNH
4Iの量は、NH
3に対するモル比で、それぞれ1.0%とした。NH
4Iは、NH
3を入れた後のPt製カプセル内にHI(ヨウ化水素)を導入することにより合成した。
成長条件は、結晶成長ゾーンの温度Tgと原料溶解ゾーンの温度Tsの平均値を605〜610℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を5〜10℃(Ts>Tg)、圧力を220MPaとした。
28日間の成長により、二次GaNシードの窒素極性表面上ではGaN結晶が[000−1]方向に2.0mm成長した。
次いで、成長させたGaN結晶を加工して、直径50mmの導電性C面GaN基板を作製した。該GaN基板の主表面は、両側とも研削して平坦化した後、更にCMP仕上げしてダメージ層を除去した。最終的な基板厚さは309μmとした。
【0095】
<X線ロッキングカーブ測定>
作製したC面GaN基板のガリウム極性表面における(004)反射のXRCを、実験1と同様にして測定した。
まず、ガリウム極性表面の略中心を通る、m軸に平行な長さ47mmの線分上において、1mm間隔でωスキャンを行った。各ωスキャンにおいて、X線入射面はm軸に平行にした。つまり、試料のガリウム極性表面に対し、a軸に直交する方向からX線を入射させた。
全測定点における(004)反射のXRCのピーク角度およびFWHMは下記表5に示す通りであった。
【0097】
全測定点間におけるFWHMの最大値、平均値および標準偏差は、それぞれ、19.7arcsec、11.2arcsecおよび2.7arcsecであった。
全測定点間におけるピーク角度の最大値と最小値との差は0.10°であった。
測定点No.4から測定点No.43までの40個の測定点を含む長さ40mmの区間について見ると、FWHMの最大値、平均値および標準偏差が、それぞれ、19.7arcsec、11.2arcsecおよび3.1arcsecであり、ピーク角度の最大値と最小値との差は0.10°であった。
【0098】
次に、ガリウム極性表面の略中心を通る、a軸に平行な長さ46mmの線分上において、1mm間隔でωスキャンを行った。各ωスキャンにおいて、X線入射面はa軸に平行にした。つまり、試料のガリウム極性表面に対し、m軸に直交する方向からX線を入射させ
た。
全測定点における(004)反射のXRCのピーク角度およびFWHMは下記表6に示す通りであった。
【0100】
全測定点間におけるFWHMの最大値、平均値および標準偏差は、それぞれ、18.8arcsec、10.6arcsecおよび2.1arcsecであった。
全測定点間におけるピーク角度の最大値と最小値との差は0.11°であった。
測定点No.4から測定点No.43までの40個の測定点を含む長さ40mmの区間について見ると、FWHMの最大値、平均値および標準偏差が、それぞれ、18.8arcsec、10.6arcsecおよび2.1arcsecであり、ピーク角度の最大値と最小値との差は0.10°であった。
【0101】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。