(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の複合材料の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体およびゴムを含有する複合材料を製造する際に用いられる。そして、本発明の複合材料の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体と、ゴムと、有機溶媒とを含む繊維状炭素ナノ構造体分散液を貧溶媒と混合し、繊維状炭素ナノ構造体およびゴムを含むクラムを形成させる凝固工程を含む。また、本発明の複合材料の製造方法は、凝固工程において、貧溶媒として水およびアルコールを含む混合溶媒を使用することを特徴とする。なお、本発明の複合材料の製造方法は、凝固工程において形成したクラムを回収する固液分離工程を更に含み得る。
【0017】
(凝固工程)
凝固工程では、繊維状炭素ナノ構造体と、ゴムと、有機溶媒とを含む繊維状炭素ナノ構造体分散液を、水およびアルコールを含む混合溶媒からなる貧溶媒と混合し、繊維状炭素ナノ構造体およびゴムを含むクラムを形成させる。
【0018】
ここで、本発明者の検討によれば、理由は明らかではないが、繊維状炭素ナノ構造体と、ゴムと、有機溶媒とを含む繊維状炭素ナノ構造体分散液では、単一の溶媒からなる貧溶媒を用いると、粗大なクラムを形成することが困難である。しかし、本発明の複合材料の製造方法の凝固工程では、水およびアルコールを含む混合溶媒からなる貧溶媒を使用しているので、分離が容易な粗大なクラムを形成することができる。
【0019】
<繊維状炭素ナノ構造体分散液>
凝固工程で用いられる繊維状炭素ナノ構造体分散液は、ゴムの有機溶媒溶液中に繊維状炭素ナノ構造体が分散したものであり、繊維状炭素ナノ構造体と、ゴムと、有機溶媒とを含み、任意に、分散剤などの添加剤を更に含有し得る。
【0020】
[繊維状炭素ナノ構造体]
繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、導電性等の物性に優れる複合材料が得られるからである。
【0022】
ここで、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
【0023】
そして、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。カーボンナノチューブの層数が少ないほど、複合材料の物性を高めることができるからである。
なお、繊維状炭素ナノ構造体中のカーボンナノチューブの層数が少ない場合には、繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒とを混合した際に形成されるクラムが特に粗大化し難い傾向がある。しかし、本発明の複合材料の製造方法の凝固工程では、水およびアルコールを含む混合溶媒からなる貧溶媒を使用しているので、カーボンナノチューブの層数が少ない場合であっても、クラムを十分に粗大化させることができる。
【0024】
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が1nm以上であれば、凝固工程で形成されるクラムを十分に粗大化させることができると共に、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した複合材料を得ることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が60nm以下であれば、少ない配合量であっても複合材料の物性を十分に向上させることができる。
【0025】
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、平均長さが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることがさらに好ましく、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。平均長さが上記下限値以上であれば、少ない配合量であっても複合材料の物性を十分に向上させることができる。また、平均長さが上記上限値以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した複合材料を得ることができる。
【0026】
そして、繊維状炭素ナノ構造体は、通常、アスペクト比が10超である。
【0027】
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、100本の繊維状炭素ナノ構造体について直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。また、「繊維状炭素ナノ構造体の平均長さ」は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で、例えば、100本の繊維状炭素ナノ構造体について長さを測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。更に、「繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比」は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0028】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が、200m
2/g以上であることが好ましく、400m
2/g以上であることがより好ましく、600m
2/g以上であることがさらに好ましく、2000m
2/g以下であることが好ましく、1800m
2/g以下であることがより好ましく、1600m
2/g以下であることがさらに好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が200m
2/g以上であれば、少ない配合量であっても複合材料の物性を十分に向上させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2000m
2/g以下であれば、凝固工程で形成されるクラムを十分に粗大化させることができると共に、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した複合材料を得ることができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が600m
2/g以上である場合には、繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒とを混合した際に形成されるクラムが特に粗大化し難い傾向がある。しかし、本発明の複合材料の製造方法の凝固工程では、水およびアルコールを含む混合溶媒からなる貧溶媒を使用しているので、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が600m
2/g以上の場合であっても、クラムを十分に粗大化させることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0029】
そして、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物およびキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。
なお、スーパーグロース法により製造された繊維状炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブのみから構成されていてもよいし、カーボンナノチューブに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
【0030】
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に含まれる繊維状炭素ナノ構造体の量は、ゴム100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の量が上記下限値以上であれば、複合材料の物性を十分に向上させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の量が上記上限値以下であれば、凝固工程で形成されるクラムを十分に粗大化させることができると共に、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した複合材料を得ることができる。
【0031】
[ゴム]
ゴムとしては、特に限定されることなく、複合材料に使用し得る既知のゴムを用いることができる。
【0032】
中でも、ゴムとしては、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、フッ素ゴム、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を用いることがより好ましい。フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種のゴムを使用すれば、複合材料を良好に形成することができる。
【0033】
なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液中のゴムの濃度は、特に限定されることなく、例えば、1質量%以上とすることが好ましく、3質量%以上とすることがより好ましく、10質量%以下とすることが好ましく。7質量%以下とすることがより好ましい。ゴムの濃度が上記範囲内であれば、粗大なクラムを良好に形成することができる。
【0034】
[有機溶媒]
有機溶媒としては、特に限定されることなく、上述したゴムを溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、有機溶媒としては、温度30℃におけるゴムの溶解度が0.1g/100g以上の有機溶媒を用いることができる。
【0035】
中でも、粗大なクラムを良好に形成する観点からは、有機溶媒としては、ケトン系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンおよびアセトンがより好ましく、メチルエチルケトンが更に好ましい。
これらは、1種類を単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
[添加剤]
繊維状炭素ナノ構造体分散液に任意に配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、分散剤などの既知の添加剤が挙げられる。
そして、添加剤の配合量は、特に限定されることなく、凝固工程におけるクラムの形成を阻害しない量とすることができる。
【0037】
[分散液の調製方法]
そして、繊維状炭素ナノ構造体分散液は、特に限定されることなく、上述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて繊維状炭素ナノ構造体の分散処理を施すことにより、調製することができる。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体分散液は、例えば、有機溶媒にゴムを溶解させてなるゴム溶液に対し、繊維状炭素ナノ構造体と、任意の添加剤とを添加した後、繊維状炭素ナノ構造体の分散処理を施すことにより、調製することができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の分散処理方法としては、特に限定されることなく、例えば国際公開第2014/097626号や国際公開第2016/013219号などに記載されている方法を用いることができる。
【0038】
<貧溶媒>
凝固工程で用いられる貧溶媒は、アルコールと水とを含む混合溶媒である。なお、貧溶媒は、本発明の目的を達成し得る範囲内であればアルコールおよび水以外の任意の溶媒を更に含有してもよい。但し、粗大なクラムを良好に形成する観点からは、貧溶媒は、アルコールおよび水のみを含む混合溶媒であることが好ましい。
【0039】
[アルコール]
アルコールとしては、凝固工程を実施する環境下において液状のアルコールであれば、任意のアルコールを用いることができる。
【0040】
中でも、粗大なクラムを良好に形成する観点からは、アルコールとしては、炭素数が1以上5以下のアルコールが好ましく、エタノールおよび2−プロパノールがより好ましい。
これらは、1種類を単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
[混合割合]
また、粗大なクラムを良好に形成する観点からは、貧溶媒として用いる混合溶媒中の水とアルコールとの混合割合(水:アルコール)は、質量比で、5:95〜95:5であることが好ましく、40:60〜80:20であることがより好ましい。
【0042】
<繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒との混合>
凝固工程における繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒との混合は、特に限定されることなく、任意の混合方法を用いて実施することができる。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒との混合は、撹拌中の繊維状炭素ナノ構造体分散液に貧溶媒を添加することにより行ってもよいし、撹拌中の貧溶媒に繊維状炭素ナノ構造体分散液を添加することにより行ってもよい。
【0043】
なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒とを混合する温度および時間は、クラムの形成が可能であれば、任意の温度および時間とすることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液と混合する貧溶媒の量は、特に限定されることなく、例えば、繊維状炭素ナノ構造体分散液の量の0.5倍以上10倍以下(質量比)とすることができる。
【0044】
そして、凝固工程では、繊維状炭素ナノ構造体分散液と貧溶媒とを混合することにより、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に含まれていたゴムが析出すると共に繊維状炭素ナノ構造体と複合化し、繊維状炭素ナノ構造体およびゴムを含むクラムが形成される。
なお、凝固工程では、水およびアルコールを含む混合溶媒からなる貧溶媒を使用しているので、直径が例えば0.5cm以上、好ましくは1cm以上の粗大なクラムが良好に形成される。
【0045】
(固液分離工程)
凝固工程の後に任意に実施される固液分離工程では、凝固工程で形成したクラムを既知の固液分離方法を用いて回収する。そして、回収したクラムは、任意に乾燥した後に複合材料として良好に使用することができる。
【0046】
なお、簡便な操作でクラムを効率的に回収する観点からは、クラムの回収に用いる固液分離方法としては、ろ過を用いることが好ましく、金網や篩などのメッシュ状のろ材を使用したろ過を用いることがより好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「ppm」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、クラムの形成の有無および複合材料の収率は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0048】
<クラムの形成>
目視にてクラムの形成の有無を確認した。
<複合材料の収率>
得られた凝固液を2mmメッシュの篩に通過させた後、篩上を温度40℃で12時間真空乾燥し、得られた複合材料(篩上)の重量を測定した。そして、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の固形分量(ゴムおよび繊維状炭素ナノ構造体の仕込み量の合計)に対する複合材料の重量の割合を算出し、複合材料の収率とした。
【0049】
<製造例1(カーボンナノチューブの合成)>
特許第4,621,896号公報に記載のスーパーグロース法を用いてカーボンナノチューブ(SGCNT)を得た。
具体的には次の条件において、SGCNTを成長させた。
炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
雰囲気(ガス):ヘリウム、水素混合ガス;供給速度1000sccm
圧力:1大気圧
水蒸気添加量:300ppm
反応温度:750℃
反応時間:10分
金属触媒(存在量):鉄薄膜;厚さ1nm
基材:シリコンウェハー
得られたSGCNTは、BET比表面積が1,050m
2/gであり、ラマン分光光度計での測定において、単層CNTに特長的な100〜300cm
−1の低波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に100本のSGCNTの直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径分布(3σ)が1.9nm、(3σ/Av)が0.58であった。
【0050】
(実施例1)
<繊維状炭素ナノ構造体分散液の作製>
有機溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)95gに、水素化ニトリルゴム(H−NBR;日本ゼオン社製、製品名「Zetpol(登録商標)2020」)5gを入れ、25℃で24時間以上撹拌して、濃度5%のゴム溶液を100g作製した。
次に、繊維状炭素ナノ構造体としての製造例1で作製したSGCNT0.5gを上記で作製したゴム溶液に添加し、温度25℃で1時間以上撹拌し、SGCNTをプレ分散させて粗分散液を得た。
次いで、湿式ジェットミル(常光社製、製品名「JN−20」)を使用し、圧力100MPa、温度20℃の条件で粗分散液を5回分散処理して、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。
<貧溶媒の作製>
2−プロパノールと蒸留水とを表1に示す比率(2−プロパノール:蒸留水(質量比)=10:90)で混合し、貧溶媒を作製した。
<凝固液の作製>
スターラーで撹拌されている繊維状炭素ナノ構造体分散液100gに対し、貧溶媒100gを添加し、凝固液を得た。
そして、得られた凝固液について、クラムの形成の有無を確認すると共に、複合材料の収率を求めた。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
貧溶媒の作製時に、2−プロパノールに替えてエタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3〜4)
貧溶媒の作製時に、エタノールと蒸留水とを表1に示す比率で混合した以外は実施例2と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例5〜7)
繊維状炭素ナノ構造体分散液の作製時に、SGCNTに替えて市販の多層カーボンナノチューブ(MWCNT;Nanocyl社製、製品名「NC7000」、BET比表面積290m
2/g、平均直径9.5nm、平均長さ1.5μm)を使用した以外はそれぞれ実施例2〜4と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例8)
繊維状炭素ナノ構造体分散液の作製時に、水素化ニトリルゴムに替えてフッ素ゴム(FKM;デュポンエラストマー社製、製品名「バイトンGBL600s」)を使用した以外は実施例2と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例9)
繊維状炭素ナノ構造体分散液の作製時に、水素化ニトリルゴムに替えてニトリルゴム(NBR;日本ゼオン社製、製品名「DN3350」)を使用した以外は実施例2と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1)
貧溶媒の作製を実施せず、凝固液の作製時に貧溶媒として蒸留水100gを用いた以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
(比較例2)
凝固液の作製時に貧溶媒として蒸留水200gを用いた以外は比較例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
(比較例3)
凝固液の作製時に貧溶媒として蒸留水300gを用いた以外は比較例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
(比較例4)
貧溶媒の作製を実施せず、凝固液の作製時に貧溶媒としてエタノール100gを用いた以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液および凝固液を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例5)
貧溶媒の作製時に、2−プロパノールおよび蒸留水に替えてエタノールとシクロヘキサンとを表2に示す比率で混合した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。
シクロヘキサンとエタノールの分離が確認されたが、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
(比較例6)
貧溶媒の作製時に、2−プロパノールおよび蒸留水に替えて蒸留水とシクロヘキサンとを表2に示す比率で混合した以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液、貧溶媒および凝固液を作製した。
シクロヘキサンと蒸留水の分離が確認されたが、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1および表2より、水およびアルコールを含む混合溶媒を貧溶媒として使用した実施例1〜9では、粗大なクラムを良好に形成し、複合材料を高収率で効率的に製造することができることが分かる。一方、水およびアルコールを含む混合溶媒を貧溶媒として使用しなかった比較例1〜6では、粗大なクラムを形成できず、複合材料の収率が低下してしまうことが分かる。