(54)【発明の名称】樹脂−金属複合体、標識物質、免疫学的測定法、免疫学的測定用試薬、アナライトの測定方法、アナライト測定用キット、及び、ラテラルフロー型クロマト用テストストリップ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
[樹脂−金属複合体]
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る樹脂−金属複合体の断面模式図である。樹脂−金属複合体100は、樹脂粒子10と、金属粒子20と、を備えている。樹脂−金属複合体100は、樹脂粒子10に金属粒子20が固定化されている。樹脂粒子10は、金属粒子20よりも相対的に大きな粒子である。つまり、樹脂−金属複合体100では、大きな樹脂粒子10に、相対的に小さな多数の金属粒子20が固定されている。
図1に示すように、樹脂−金属複合体100全体の粒子径D1と、樹脂粒子10の粒子径D2と金属粒子20の粒子径D3との関係は、D1>D2>D3である。
【0030】
また、樹脂−金属複合体100は、金属粒子20の一部が樹脂粒子10の表層部60において三次元的に分布していてもよい。この場合、三次元的に分布した金属粒子20の一部が部分的に樹脂粒子10外に露出していてもよく、残りの一部が樹脂粒子10に内包されていてもよい。具体的には、
図1に示すように、金属粒子20には、樹脂粒子10に完全に内包された金属粒子(以下、「内包粒子30」ともいう。)、樹脂粒子10内に埋包された部位及び樹脂粒子10外に露出した部位を有する金属粒子(以下、「一部露出粒子40」ともいう。)及び樹脂粒子10の表面に吸着している金属粒子(以下、「表面吸着粒子50」ともいう。)が存在していることが好ましい。
【0031】
例えば、樹脂−金属複合体100を免疫学的測定用標識物質又は免疫学的測定用試薬に使用する場合、樹脂粒子10の表面又は一部露出粒子40もしくは表面吸着粒子50の表面に、抗体又は抗原を固定化して使用する。その際、一部露出粒子40及び表面吸着粒子50には、前記抗体又は抗原が固定化される一方で、内包粒子30には、固定化されない。しかし、一部露出粒子40、表面吸着粒子50及び内包粒子30のいずれも局在型表面プラズモン共鳴に加え、電子遷移による光エネルギー吸収を発現することから、一部露出粒子40及び表面吸着粒子50のみならず、内包粒子30も、免疫学的測定用標識物質及び免疫学的測定用試薬の視認性向上に寄与する。さらに、一部露出粒子40及び内包粒子30は、表面吸着粒子50と比較して樹脂粒子10との接触面積が大きいことに加え、埋包状態によるアンカー効果等が奏されるため、物理的吸着力が強く、樹脂粒子10から脱離しにくい。そのため、樹脂−金属複合体100を使用した免疫学的測定用標識物質及び免疫学的測定用試薬の耐久性、安定性を優れたものにすることができる。
【0032】
以下、樹脂−金属複合体100を免疫学的測定用標識物質(以下、単に「標識物質」ともいう。)又は免疫学的測定用試薬(以下、単に「試薬」ともいう。)に適用する場合を例として説明する。
【0033】
内包粒子30は、その表面の全てが、樹脂粒子10を構成する樹脂に覆われているものである。また、一部露出粒子40は、その表面積の5%以上100%未満が、樹脂粒子10を構成する樹脂に覆われているものである。免疫学的測定用標識物質及び免疫学的測定用試薬の耐久性の観点から、その下限は、表面積の20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、表面吸着粒子50は、その表面積の0%を超えて5%未満が、樹脂粒子10を構成する樹脂に覆われていることが好ましい。
【0034】
また、樹脂−金属複合体100への金属粒子20(内包粒子30、一部露出粒子40及び表面吸着粒子50の合計)の担持量は、樹脂−金属複合体100の重量に対して、5質量%〜70質量%であることが好ましい。この範囲であれば、樹脂−金属複合体100は、標識物質としての視認性、目視判定性及び検出感度に優れる。金属粒子20の担持量が5質量%未満では、抗体又は抗原の固定化量が少なくなり、検出感度が低下する傾向がある。金属粒子20の担持量は、より好ましくは、15質量%〜70質量%、さらに好ましくは、15質量%〜60質量%である。一方、70質量%を超えると、樹脂−金属複合体の比重が大きくなり、水等の分散媒に対する分散性が悪化する傾向にある。
【0035】
また、金属粒子20の10質量%〜90質量%が、一部露出粒子40及び表面吸着粒子50であることが好ましい。この範囲であれば、金属粒子20上への抗体又は抗原の固定化量が充分確保できるため、標識物質としての感度が高い。金属粒子20の20質量%〜80質量%が一部露出粒子40及び表面吸着粒子50であることがより好ましく、免疫学的測定用標識物質及び免疫学的測定用試薬の耐久性の観点から、表面吸着粒子50が20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
また、樹脂−金属複合体100を免疫学的測定に使用する場合に、優れた検出感度を得るためには、金属粒子20の60質量%〜100質量%、好ましくは、75質量%〜100質量%が、より好ましくは、85質量%〜100質量%が、表層部60に、より好ましくは、樹脂粒子10の表面から、深さ方向に粒子半径の40%の範囲に存在することがよい。また、表層部60に存在する金属粒子20の5質量%〜90質量%が、一部露出粒子40又は表面吸着粒子50であることが、金属粒子20上への抗体又は抗原の固定化量が充分確保できるため、標識物質としての感度が高くなり好ましい。換言すれば、表層部60に存在する金属粒子20の10質量%〜95質量%が内包粒子30であることがよい。
【0037】
ここで、前記「表層部」とは、樹脂−金属複合体100の最も外側の位置(つまり、一部露出粒子40又は表面吸着粒子50の突出端部)を基準にして、樹脂粒子10の表面から、深さ方向に粒子半径の50%の範囲を意味する。また、前記「三次元的に分布」とは、金属粒子20が、樹脂粒子10の面方向だけでなく、深さ方向にも分散されていることを意味する。
【0038】
上記のとおり、内包粒子30も局在型表面プラズモン共鳴に加え、電子遷移による光エネルギー吸収を発現することから、一部露出粒子40及び表面吸着粒子50のみならず、内包粒子30も、免疫学的測定用標識物質及び免疫学的測定用試薬の視認性向上に寄与する。このような視認性向上という観点では、樹脂−金属複合体100は、例えば
図2Aに示すように、内包粒子30が、樹脂粒子10の表面から深さ方向に一定の範囲内に集中して分布し、樹脂粒子10の中心付近には内包粒子30が存在しないことが好ましい。より具体的には、内包粒子30による局在型表面プラズモン共鳴に加え、電子遷移による光エネルギー吸収を効果的に発現させるためには、樹脂粒子10の表面から深さ方向に例えば0〜200nmの範囲内に内包粒子30の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90〜100質量%が、存在していることがよい。特に、内包粒子30の全て(100質量%)が分布する領域(内包粒子分布領域)が、樹脂粒子10の表面から例えば0〜100nmの範囲内である場合は、内包粒子30による局在型表面プラズモン共鳴に加え、電子遷移による光エネルギー吸収の発現を最大化できるので好ましい。
【0039】
また、樹脂−金属複合体100は、内包粒子30を有しなくもよい。例えば
図2Bに示すように、樹脂−金属複合体100において、金属粒子20のすべてが、樹脂粒子10の径方向に重なり合うことなく、樹脂粒子10の表面に固定されていてもよい。この場合、金属粒子20は、一部露出粒子40と表面吸着粒子50とから構成される。
【0040】
[樹脂粒子]
樹脂粒子10は、含窒素モノマーと多価ビニル化合物との共重合体である。ここで、含窒素モノマーとしては、例えば、芳香族アミン、脂肪族アミンが挙げられる。この含窒素モノマーと多価ビニル化合物とを重合させると、ポリアミン、ポリアミド、ポリペプチド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリピロール、ポリアニリン、側鎖に窒素原子を有するアクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等において、多価ビニル化合物由来のモノマー単位を有する共重合体が得られる。好ましい含窒素モノマーは、ビニルピリジンである。ビニルピリジンとしては、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等を用いることができる。従って、樹脂粒子10を構成するポリマーの主鎖は、好ましくは、ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−3−ビニルピリジン、ポリ−4−ビニルピリジンである。
【0041】
一方、多価ビニル化合物は、架橋剤として機能するものであり、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニルが挙げられる。好ましくは、架橋反応の反応性に優れる、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンである。
【0042】
含窒素モノマーと多価ビニル化合物との共重合体は、金属イオンを吸着することが可能な置換基を構造に有するポリマー粒子である。含窒素モノマーと多価ビニル化合物との共重合体中の窒素原子は、視認性に優れ、抗原又は抗体の固定化が容易な金、白金、パラジウムなどの金属粒子の前駆体であるアニオン性金属イオンを化学吸着しやすい。本実施の形態では、含窒素モノマーと多価ビニル化合物との共重合体中に吸着した金属イオンを還元し、金属ナノ粒子を形成する為、生成した金属粒子20の一部は、内包金属粒子30又は一部露出金属粒子40となる。
【0043】
樹脂粒子10を構成する含窒素モノマーと多価ビニル化合物との共重合体におけるモノマー由来成分の重量組成比(含窒素モノマー:多価ビニル化合物)は、試薬容器の内壁への樹脂−金属複合体100の付着抑制と、樹脂−金属複合体100を標識物質として免疫学的測定を行う場合の検出感度の向上とを両立させる観点から、49:1〜30:20の範囲内であり、48:2〜35:15の範囲内が好ましく、48:2〜40:10がより好ましく、48:2〜45:5の範囲内が最も好ましい。
【0044】
重量組成比(含窒素モノマー:多価ビニル化合物)において、49:1を超えて含窒素モノマーの比率が多くなると、試薬容器の内壁に樹脂−金属複合体100が付着しやすくなるため、樹脂−金属複合体100を標識物質として免疫学的測定を行う場合に、定量的評価の精度と再現性が得られ難くなる。また、49:1を超えて含窒素モノマーの比率が多くなると、多価ビニル化合物による架橋密度が相対的に低下するため、樹脂粒子10が柔らかくなって金属イオンが内部に浸透しやすくなる。その結果、樹脂粒子10の内部で金属粒子が生成し、内包金属粒子30が多くなって、相対的に一部露出金属粒子40や表面吸着金属粒子50の比率が低下するとともに、その粒子径が小さくなる傾向がある。
【0045】
一方、重量組成比(含窒素モノマー:多価ビニル化合物)において、30:20を超えて多価ビニル化合物の比率が多くなると、多価ビニル化合物による架橋密度が相対的に高くなって、樹脂粒子が硬くなるとともに、樹脂−金属複合体100を標識物質として免疫学的測定を行う場合に、検出感度が低下する傾向となる。
【0046】
[金属粒子]
金属粒子20は、例えば、銀、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム等が適用できる。好ましくは、視認性に優れ、抗原又は抗体の固定化が容易な金、白金及びパラジウムである。これらは、局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収に由来する吸収を発現するため、好ましい。より好ましくは、保存安定性がよい金である。これらの金属は、単体もしくは合金等の複合体で使用することが可能である。ここで、例えば金合金としては、金と金以外の金属種からなり、金を10重量%以上含有する合金を意味する。
【0047】
[平均粒子径]
走査型電子顕微鏡(SEM)観察により測長される金属粒子20の平均粒子径(つまり、
図1における粒子径D3の平均)は、例えば1〜80nmであることが好ましい。金属粒子20の平均粒子径が、1nm未満の場合や80nmを超える場合は、局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収が発現しにくくなるため感度が低下する傾向がある。金属粒子20の平均粒子径は、金属粒子20が金粒子である場合は、好ましくは、20nm以上70nm未満であり、より好ましくは、22nm以上50nm未満である。また、金属粒子20が白金粒子である場合、その平均粒子径は、樹脂−金属複合体100を免疫学的測定に用いる場合に高い検出感度を得る観点から、好ましくは1nm以上50nm以下であり、より好ましくは1nm以上30nm以下であり、さらに好ましくは1nm以上20nm以下であり、最も好ましくは1nm以上15nm以下である。白金粒子の平均粒子径が15nm以下である場合、樹脂−金属複合体100をイムノクロマトグラフの標識物質として使用する場合に特に優れた検出感度が得られる。
【0048】
また、樹脂−金属複合体100の平均粒子径(つまり、
図1における粒子径D1の平均)は、例えば50〜1000nmであることが好ましい。樹脂−金属複合体100の平均粒子径が50nm未満では、例えば、金属粒子の担持量が少なくなる傾向がある為、同サイズの金属粒子より着色が弱くなる傾向にあり、1000nmを超えると、標識物質又は試薬とした際に、メンブランフィルター等のクロマトグラフ媒体の細孔内に詰まりやすい傾向や、分散性が低下する傾向がある。樹脂−金属複合体100の平均粒子径は、標識物質又は試薬とした際の分散性を向上させるとともに、樹脂−金属複合体100を免疫学的測定に用いる場合に高い検出感度を得る観点から、金属粒子20が金粒子である場合は、
好ましくは、100nm以上700nm未満であり、より好ましくは、340nm以上650nm未満である。金属粒子20が白金粒子である場合は、好ましくは100nm以上600nm以下であり、より好ましくは250nm以上600nm以下であり、最も好ましくは300nm以上600nm以下である。特に、樹脂−金属複合体100の平均粒子径が300nm以上であると、樹脂−金属複合体100をイムノクロマトグラフの標識物質として使用する場合に安定して優れた検出感度が得られる。
ここで、樹脂−金属複合体100の粒子径D1は、樹脂粒子10の粒子径に、一部露出粒子40又は表面吸着粒子50の突出部位の長さを加えた値を意味し、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法、又は遠心沈降法により測定することができる。
【0049】
[樹脂−金属複合体の製造方法]
樹脂−金属複合体100の製造方法は、特に限定されないが、例えば、乳化重合法により樹脂粒子10を製造することができる。樹脂粒子10の製造に際しては、試薬容器の内壁への樹脂−金属複合体100の付着抑制と、樹脂−金属複合体100を標識物質として免疫学的測定を行う場合の検出感度の向上とを両立させる観点から、含窒素モノマーと多価ビニル化合物との共重合体の原料モノマーである仕込み重量比率(含窒素モノマー:多価ビニル化合物)を49:1〜30:20の範囲内、好ましくは48:2〜35:15の範囲内、より好ましくは48:2〜40:10、最も好ましくは48:2〜45:5の範囲内とする。
【0050】
乳化重合は、例えば界面活性剤及び安定化剤の存在下、重合開始剤を用いて行うことが好ましい。ここで、好ましい界面活性剤としては、例えばAliquat 336[アルドリッチ社製]、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェート、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、ベンジルブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、n−オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド、トリメチルフェニルアンモニウムクロリド、トリプロピルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロリドが挙げられる。また、好ましい安定化剤としては、例えばポリエチレングリコール
メチルエーテルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ポリエチレングリコールメチルエチルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、ポリエチレングリコール変性ステアリルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートが挙げられる。好ましい重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)が挙げられる。樹脂粒子10の重合反応におけるpHは、有機化合物の乳化の観点から、例えばpH5〜10の範囲内に調節することが好ましく、反応温度は、重合開始剤の活性度の観点から、例えば30〜95℃の範囲内が好ましい。
【0051】
次に、得られた樹脂粒子10の分散液に、金属イオンを含有する溶液を加えて、金属イオンを樹脂粒子10に吸着させる(以下、「金属イオン吸着樹脂粒子」という。)。さらに、前記金属イオン吸着樹脂粒子を還元剤溶液中に加えることで、金属イオンを還元して金属粒子20を生成させ、樹脂−金属複合体100を得る。
【0052】
また、例えば、金属粒子20として、金粒子を使用する場合、金属イオンを含有する溶液としては、塩化金酸(HAuCl
4)水溶液等が挙げられる。また、金イオンの代わりに金錯体を用いても良い。また、例えば白金イオンを含有する溶液としては、塩化白金酸(H
2PtCl
6)水溶液、塩化白金(PtCl
2)溶液等が挙げられる。また、白金イオンの代わりに白金錯体を用いても良い。
【0053】
また、金属イオンを含有する溶液の溶媒として、水の代わりに、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の含水アルコール又はアルコール、塩酸、硫酸、硝酸等の酸等を用いても良い。
【0054】
また、前記溶液に、必要に応じて、例えば、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物、界面活性剤、アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、これらのモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、グリセリン等のポリオール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の各種水混和性有機溶媒等の添加剤を添加してもよい。このような添加剤は、金属イオンの還元反応速度を促進し、また生成される金属粒子20の大きさを制御するのに有効となる。
【0055】
また、還元剤は、公知の物を用いることができる。例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、クエン酸、次亜リン酸ナトリウム、抱水ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、ホルムアルデヒド、ショ糖、ブドウ糖、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ホスフィン酸ナトリウム、ハイドロキノン、ロッシェル塩等が挙げられる。このうち、水素化ホウ素ナトリウム又は、ジメチルアミンボラン、クエン酸が好ましい。還元剤溶液には、必要に応じて界面活性剤を添加したり、溶液のpHを調整することができる。pH調整には、ホウ酸やリン酸等の緩衝剤、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ等を用いることができる。さらに、還元剤溶液の温度により、金属イオンの還元速度を調整することで、形成する金属粒子の粒径をコントロールすることができる。
【0056】
また、前記金属イオン吸着樹脂粒子中の金属イオンを還元して金属粒子20を生成させる際、前記金属イオン吸着樹脂粒子を還元剤溶液に添加しても良いし、還元剤を前記金属イオン吸着樹脂粒子に添加しても良いが、内包金属粒子30及び一部露出金属粒子40の生成しやすさの観点から、前者が好ましい。
【0057】
また、樹脂−金属複合体100の、水への分散性を保持するために、例えば、クエン酸、ポリ−L−リシン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、DISPERBYK194、DISPERBYK180、DISPERBYK184(ビッグケミージャパン社製)等の分散剤を添加してもよい。
さらに、ホウ酸やリン酸等の緩衝剤、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリによりpHを調整し、分散性を保持することができる。
【0058】
以上の構成を有する樹脂−金属複合体100は、特に、金属粒子20の表面に抗原又は抗体を吸着させることにより、標識物質として、例えばEIA、RIA、CLIA、FIA、LIA、PA、ICA、HA、HI等の免疫学的測定法に好ましく適用できる。また、特に、低濃度域(高感度領域)での目視判定性に優れた免疫学的測定用標識物質又は免疫学的測定用試薬の材料として好ましく適用できる。また、免疫学的測定用標識物質又は免疫学的測定用試薬の形態に特に限定はないが、例えば、樹脂−金属複合体100を水もしくは、pHを調整した緩衝液中に分散させた分散液として使用できる。
【0059】
上記金属粒子20の表面に抗原又は抗体を吸着させる方法としては特に限定せず、公知の物理吸着及び化学吸着による方法を用いることができる。例えば、抗原又は抗体を含む緩衝液中に樹脂−金属複合体100を浸漬させ、インキュベートする等の物理吸着や、抗原又は抗体にSH基を導入し、樹脂−金属複合体100と反応させてAu−SH結合を形成する等の化学吸着が挙げられる。なかでも、金属粒子20と抗原又は抗体との結合が強固となることから化学吸着が好ましい。
【0060】
樹脂−金属複合体100の免疫学的測定用標識物質又は免疫学的測定用試薬以外の用途としては、固体触媒、顔料、塗料、導電性材料、電極、センサー素子として好ましく適用できる。
【0061】
次に、樹脂−金属複合体100を標識物質として使用したアナライトの測定方法、ラテラルフロー型クロマト用テストストリップ及びアナライト検出・定量キットについて説明する。
【0062】
[ラテラルフロー型クロマト用テストストリップ]
まず、
図3を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るラテラルフロー型クロマト用テストストリップ(テストストリップ)について説明する。このテストストリップ200は、後述するように、本発明の一実施の形態のアナライトの測定方法に好ましく使用できるものである。
【0063】
テストストリップ200は、メンブレン110を備えている。メンブレン110には、試料の展開方向において順に、試料添加部120、判定部130及び吸液部140が設けられている。
【0064】
<メンブレン>
テストストリップ200に使用されるメンブレン110としては、一般的なテストストリップにおいてメンブレン材料として使用されるものを適用可能である。メンブレン110は、例えば毛管現象を示し、試料を添加すると同時に、試料が展開するような微細多孔性物質からなる不活性物質(アナライト160、各種リガンドなどと反応しない物質)で形成されているものである。メンブレン110の具体例としては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、セルロース誘導体等で構成される繊維状又は不織繊維状マトリクス、膜、濾紙、ガラス繊維濾紙、布、綿等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはセルロース誘導体やナイロンで構成される膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等が用いられ、より好ましくはニトロセルロース膜、混合ニトロセルロースエステル(ニトロセルロースと酢酸セルロースの混合物)膜、ナイロン膜、濾紙が用いられる。
【0065】
テストストリップ200は、操作をより簡便にするため、メンブレン110を支持する支持体を備えていることが好ましい。支持体としては、例えばプラスチック等を用いることができる。
【0066】
<試料添加部>
テストストリップ200は、アナライト160を含む試料を添加するための試料添加部120を有していてもよい。試料添加部120は、テストストリップ200に、アナライト160を含む試料を受け入れるための部位である。試料添加部120は、試料が展開する方向において、判定部130よりも上流側のメンブレン110に形成されていてもよいし、あるいは、例えばセルロース濾紙、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、綿布などの材料で構成された試料添加パッドがメンブレン110に設けられて試料添加部120を構成していてもよい。
【0067】
<判定部>
判定部130には、アナライト160と特異的に結合する捕捉リガンド131が固定されている。捕捉リガンド131は、アナライト160と特異的な結合を形成するものであれば特に制限なく使用でき、例えばアナライト160に対する抗体などを好ましく用いることができる。捕捉リガンド131は、テストストリップ200に試料を提供した場合においても、判定部130から移動することがないように不動化している。捕捉リガンド131は、物理的又は化学的な結合や吸着等によって、メンブレン110に直接的又は間接的に固定されていればよい。
【0068】
また、判定部130は、標識抗体150とアナライト160とを含む複合体170が、アナライト160と特異的に結合する捕捉リガンド131に接触するような構成である限り特に限定されない。例えば、メンブレン110に、直接、捕捉リガンド131が固定されていてもよいし、あるいは、メンブレン110に固定されたセルロース濾紙、グラスファイバー、不織布等からなるパッドに捕捉リガンド131が固定されていてもよい。
【0069】
<吸液部>
吸液部140は、例えば、セルロ−ス濾紙、不織布、布、セルロースアセテート等の吸水性材料のパッドにより形成される。添加された試料の展開前線(フロントライン)が吸液部140に届いてからの試料の移動速度は、吸液部140の材質、大きさなどにより異なるものとなる。従って、吸液部140の材質、大きさなどの選定により、アナライト160の検出・定量に最適な速度を設定することができる。なお、吸液部140は任意の構成であり、省略してもよい。
【0070】
テストストリップ200は、必要に応じて、さらに、反応部、コントロール部等の任意の部位を含んでいてもよい。
【0071】
<反応部>
図示は省略するが、テストストリップ200には、メンブレン110に、標識抗体150を含む反応部が形成されていてもよい。反応部は、試料が流れる方向において、判定部130よりも上流側に設けることができる。なお、
図3における試料添加部120を反応部として利用してもよい。テストストリップ200が反応部を有する場合、アナライト160を含む試料を、反応部又は試料添加部120に供すると、反応部において、試料に含まれるアナライト160と標識抗体150とを接触させることができる。この場合、試料を、単に反応部又は試料添加部120に供することで、アナライト160と標識抗体150とを含む複合体170を形成させることができるので、いわゆる1ステップ型のイムノクロマトグラフが可能になる。
【0072】
反応部は、アナライト160と特異的に結合する標識抗体150を含む限り特に限定されないが、メンブレン110に、直接、標識抗体150が塗布されてなるものであってもよい。あるいは、反応部は、例えばセルロース濾紙、グラスファイバー、不織布等からなるパッド(コンジュゲートパッド)に標識抗体150を含浸したものを、メンブレン110に固定してなるものであってもよい。
【0073】
<コントロール部>
図示は省略するが、テストストリップ200は、メンブレン110に、試料が展開する方向において、標識抗体150と特異的に結合する捕捉リガンドが固定されてなるコントロール部が形成されていてもよい。判定部130とともに、コントロール部でも発色強度が測定されることにより、テストストリップ200に供した試料が展開して、反応部及び判定部130に到達し、検査が正常に行われたことを確認することができる。なお、コントロール部は、捕捉リガンド131の代わりに、標識抗体150と特異的に結合する別の種類の捕捉リガンドを用いることを除いては、上述の判定部130と同様にして作製され、同様の構成を採ることができる。
【0074】
[アナライトの測定方法]
次に、テストストリップ200を用いて行われる本発明の一実施の形態のアナライト160の測定方法について説明する。
【0075】
本実施の形態のアナライト160の測定方法は、試料中に含まれるアナライト160を検出又は定量するアナライト160の測定方法である。実施の形態のアナライト160の測定方法は、メンブレン110、及び当該メンブレン110にアナライト160と特異的に結合する捕捉リガンド131が固定されてなる判定部130を含むテストストリップ200を用い、下記工程(I)〜(III);
工程(I):試料に含まれる前記アナライト160と、該アナライト160に特異的に結合する抗体を、樹脂粒子10に複数の金属粒子20が固定化された構造を有する樹脂−金属複合体100で標識した標識抗体150と、を接触させる工程、
工程(II):判定部130にて、工程(I)において形成された、アナライト160と標識抗体150とを含む複合体を、捕捉リガンド131に接触させる工程、
工程(III):樹脂−金属複合体100の局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収に由来する発色強度を測定する工程、
を含むことができる。
【0076】
工程(I):
工程(I)は、試料に含まれるアナライト160を、標識抗体150に接触させる工程である。アナライト160と標識抗体150とを含む複合体170を形成する限り、接触の態様は特に限定されるものではない。例えば、テストストリップ200の試料添加部120又は反応部(図示省略)に試料を供し、当該反応部においてアナライト160を標識抗体150に接触させてもよいし、テストストリップ200に試料を供する前に、試料中のアナライト160を標識抗体150に接触させてもよい。
【0077】
工程(I)で形成された複合体170は、テストストリップ200上で展開して移動し、判定部130に至る。
【0078】
工程(II):
工程(II)は、テストストリップ200の判定部130において、工程(I)において形成された、アナライト160と標識抗体150とを含む複合体170を、捕捉リガンド131に接触させる。複合体170を、捕捉リガンド131に接触させると、捕捉リガンド131は、複合体170のアナライト160に特異的に結合する。その結果、複合体170が判定部130において捕捉される。
【0079】
なお、捕捉リガンド131は、標識抗体150には特異的に結合しないために、アナライト160と未結合の標識抗体150が判定部130に到達した場合、当該アナライト160と未結合の標識抗体150は、判定部130を通過する。ここで、テストストリップ200に、標識抗体150に特異的に結合する別の捕捉リガンドが固定されたコントロール部(図示省略)が形成されている場合、判定部130を通過した標識抗体150は、展開を続け、コントロール部で当該別の捕捉リガンドと結合する。その結果、アナライト160と複合体170を形成していない標識抗体150は、コントロール部で捕捉される。
【0080】
工程(II)の後、必要に応じて工程(III)の前に、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等の生化学検査で汎用される緩衝液で、テストストリップ200を洗浄する洗浄工程を実施してもよい。洗浄工程によって、判定部130、又は、判定部130及びコントロール部に捕捉されなかった標識抗体150(アナライト160と結合しておらず、複合体170を形成していない標識抗体150)を除去することができる。
【0081】
洗浄工程を実施することで、工程(III)において、判定部130、又は、判定部130及びコントロール部における樹脂−金属複合体100の局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収による発色を測定する際に、バックグラウンドの発色強度を低減させることができ、シグナル/バックグラウンド比を高め、一層、検出感度や定量性を向上させることができる。
【0082】
工程(III):
工程(III)は、樹脂−金属複合体100の局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収に由来する発色強度を測定する工程である。上記工程(II)又は必要に応じて洗浄工程を実施した後、テストストリップ200において、樹脂−金属複合体100の局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収に由来する発色強度を測定する。
【0083】
なお、テストストリップ200にコントロール部が形成されている場合、工程(II)によって、コントロール部にて、標識抗体150が別の捕捉リガンドによって捕捉され複合体が形成される。そのため、工程(III)では、テストストリップ200おいて、判定部130だけでなく、コントロール部においても局在型表面プラズモン共鳴及び、電子遷移による光エネルギー吸収による発色を生じさせることができる。このように、判定部130とともにコントロール部においても発色強度を測定することで、テストストリップ200に供した試料が正常に展開して、反応部及び判定部130に到達したか否かを確認できる。
【0084】
<試料及びアナライト>
本実施の形態のアナライトの測定方法における試料は、アナライト160として、蛋白質などの抗原となり得る物質を含むものである限り特に限定されるものではない。例えば、目的のアナライト160を含む生体試料(すなわち、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、鼻腔又は咽頭拭い液、髄液、羊水、乳頭分泌液、涙、汗、皮膚からの浸出液、組織や細胞及び便からの抽出液等)や食品の抽出液等が挙げられる。必要に応じて、標識抗体150及び捕捉リガンド131とアナライト160との特異的な結合反応が生じやすくするために、上記工程(I)に先立って、試料に含まれるアナライト160を前処理してもよい。ここで、前処理としては、酸、塩基、界面活性剤等の各種化学薬品等を用いた化学的処理や、加熱・撹拌・超音波等を用いた物理的処理が挙げられる。特に、アナライト160がインフルエンザウィルスNP抗原等の、通常は表面に露出していない物質である場合、界面活性剤等による処理を行うことが好ましい。この目的に使用される界面活性剤として、特異的な結合反応、例えば、抗原抗体反応等のリガンドとアナライト160との結合反応性を考慮して、非イオン性界面活性剤を用いることができる。
【0085】
また、前記試料は、通常の免疫学的分析法で用いられる溶媒(水、生理食塩水、又は緩衝液等)や水混和有機溶媒で適宜希釈されていてもよい。
【0086】
前記アナライト160としては、例えば、腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモン等のタンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等を含む)、核酸(一本鎖又は二本鎖の、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を含む)又は核酸を有する物質、糖(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等を含む)又は糖鎖を有する物質、脂質などその他の分子が挙げられ、標識抗体150及び捕捉リガンド131に特異的に結合するものである限り特に限定されないが、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、HER2タンパク、前立腺特異抗原(PSA)、CA19−9、α−フェトプロテイン(AFP)、免疫抑制酸性タンパク(IAP)、CA15−3、CA125、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、便潜血、トロポニンI、トロポニンT、CK−MB、CRP、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、梅毒抗体、インフルエンザウィルス、ヒトヘモグロビン、クラミジア抗原、A群β溶連菌抗原、HBs抗体、HBs抗原、ロタウイルス、アデノウイルス、アルブミン、糖化アルブミン等が挙げられる。これらの中でも非イオン性界面活性剤により可溶化される抗原が好ましく、ウィルスの核タンパク質のように自己集合体を形成する抗原がより好ましい。
【0087】
<標識抗体>
標識抗体150は、工程(I)において、試料に含まれるアナライト160に接触させて、アナライト160と標識抗体150とを含む複合体170を形成するために使用される。標識抗体150は、アナライト160に特異的に結合する抗体を、樹脂粒子10に複数の金属粒子20が固定化された構造を有する樹脂−金属複合体100で標識化してなるものである。ここで、「標識化」とは、工程(I)〜(III)において、標識抗体150から樹脂−金属複合体100が脱離しない程度に、抗体に樹脂−金属複合体100が直接的に又は間接的に、化学的又は物理的な結合や吸着等で固定されていることを意味する。例えば、標識抗体150は、抗体に樹脂−金属複合体100が直接結合してなるものであってもよいし、抗体と樹脂−金属複合体100とが、任意のリンカー分子を介して結合してなるものや、それぞれが不溶性粒子に固定されてなるものであってもよい。
【0088】
また、本実施の形態において、「抗体」としては、特に制限はなく、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子組み換えにより得られた抗体のほか、抗原と結合能を有する抗体断片[例えば、H鎖、L鎖、Fab、F(ab’)
2等]などを用いることができる。また、免疫グロブリンとして、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよい。抗体の産生動物種としては、ヒトをはじめ、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)でもよい。抗体の具体例としては、抗PSA抗体、抗AFP抗体、抗CEA抗体、抗アデノウイルス抗体、抗インフルエンザウィルス抗体、抗HCV抗体、抗IgG抗体、抗ヒトIgE抗体等が挙げられる。
【0089】
<標識抗体の好ましい作製方法>
次に、標識抗体150の好ましい作製方法を挙げて説明する。標識抗体150の製造は、少なくとも、次の工程A;
工程A)樹脂−金属複合体100を第1のpH条件で抗体と混合して結合させることによって、標識抗体150を得る工程
を含み、好ましくは、さらに工程B;
工程B)標識抗体150を第2のpH条件で処理する工程
を含むことができる。
【0090】
[工程A]
工程Aでは、樹脂−金属複合体100を第1のpH条件で抗体と混合して標識抗体150を得る。工程Aは、固体状の樹脂−金属複合体100を液相中に分散させた状態で抗体と接触させることが好ましい。第1のpH条件は、樹脂−金属複合体100における金属粒子20の金属種によって異なる。
【0091】
樹脂−金属複合体100の金属粒子20が金粒子(金合金粒子を含む;以下同様である)である場合には、第1のpH条件は、抗体との結合は、樹脂−金属複合体100の分散と抗体の活性を維持したまま樹脂−金属複合体100と抗体を均一に接触させる観点から、pH2〜7の範囲内の条件が好ましく、さらに酸性条件、例えばpH2.5〜5.5の範囲内がより好ましい。金属粒子20が金粒子である場合、樹脂−金属複合体100と抗体とを結合させるときの条件が、pH2未満では強酸性により抗体が変質し失活する場合があり、pH7を超えると樹脂−金属複合体100と抗体を混合した際に凝集し分散が困難となる。ただし、強酸性により抗体が失活しない場合はpH2未満においても処理が可能である。
【0092】
また、樹脂−金属複合体100の金属粒子20が金以外の粒子、例えば白金、パラジウム又はそれらの合金等である場合には、第1のpH条件は、抗体との結合は、樹脂−金属複合体100の分散と抗体の活性を維持したまま樹脂−金属複合体100と抗体を均一に接触させる観点から、pH2〜10の範囲内の条件が好ましく、さらに例えばpH5〜9の範囲内がより好ましい。金属粒子20が金以外の粒子である場合、樹脂−金属複合体100と抗体とを結合させるときの条件が、pH2未満では強酸性により抗体が変質し失活する場合があり、pH10を超えると樹脂−金属複合体100と抗体を混合した際に凝集し分散が困難となる。ただし、強酸性により抗体が失活しない場合はpH2未満においても処理が可能である。
【0093】
工程Aは、第1のpH条件に調整した結合用緩衝液(Binding Buffer)中で行うことが好ましい。例えば、上記pHに調整した結合用緩衝液に所定量の樹脂−金属複合体100を混合し、十分に混和する。結合用緩衝液としては、例えば、所定濃度に調整したホウ酸溶液などを用いることができる。結合用緩衝液のpHの調整は、例えば塩酸、水酸化ナトリウムなどを用いて行うことができる。
【0094】
次に、得られた混合液に、所定量の抗体を添加し、十分に撹拌、混合することによって、標識抗体含有液を得ることができる。このようにして得られた標識抗体含有液は、例えば遠心分離などの固液分離手段により、固形部分として標識抗体150のみを分取できる。
【0095】
[工程B]
工程Bでは、工程Aで得られた標識抗体150を第2のpH条件で処理することによって、標識抗体150への非特異的な吸着を抑制するブロッキングを行う。この場合、固液分離手段によって分取しておいた標識抗体150を、第2のpH条件で液相中に分散させる。このブロッキングの条件は、樹脂−金属複合体100における金属粒子20の金属種によって異なる。
【0096】
樹脂−金属複合体100の金属粒子20が金粒子である場合には、第2のpH条件は、抗体の活性を保ちかつ標識抗体150の凝集を抑制する観点から、例えばpH2〜9の範囲内が好ましく、標識抗体150の非特異的な吸着を抑制する観点から、さらに酸性条件、例えばpH2〜6の範囲内がより好ましい。ブロッキングの条件が、pH2未満では強酸性により抗体が変質し失活する場合があり、pH9を超えると標識抗体150が凝集してしまい分散が困難となる。
【0097】
また、樹脂−金属複合体100の金属粒子20が金以外の粒子である場合には、第2のpH条件は、抗体の活性を保ちかつ標識抗体150の凝集を抑制する観点から、例えばpH2〜10の範囲内が好ましく、標識抗体150の非特異的な吸着を抑制する観点から、pH5〜9の範囲内がより好ましい。ブロッキングの条件が、pH2未満では強酸性により抗体が変質し失活する場合があり、pH10を超えると標識抗体150が凝集してしまい分散が困難となる。
【0098】
工程Bは、第2のpH条件に調整したブロック用緩衝液(Blocking Buffer)を用いて行うことが好ましい。例えば、所定量の標識抗体150に上記pHに調整したブロック用緩衝液を添加し、ブロック用緩衝液中で標識抗体150を均一に分散させる。ブロック用緩衝液としては、例えば、被検出物と結合しない蛋白質の溶液を用いることが好ましい。ブロック用緩衝液に使用可能な蛋白質としては、例えば牛血清アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどを挙げることができる。より具体的には、所定濃度に調整した牛血清アルブミン溶液などを用いることが好ましい。ブロック用緩衝液のpHの調整は、例えば塩酸、水酸化ナトリウムなどを用いて行うことができる。標識抗体150の分散には、例えば超音波処理などの分散手段を用いることが好ましい。このようにして標識抗体150が均一分散した分散液が得られる。
【0099】
以上のようにして、標識抗体150の分散液が得られる。この分散液から、例えば遠心分離などの固液分離手段により、固形部分として標識抗体150のみを分取できる。また、必要に応じて、洗浄処理、保存処理などを実施することができる。以下、洗浄処理、保存処理について説明する。
【0100】
(洗浄処理)
洗浄処理は、固液分離手段によって分取した標識抗体150に洗浄用緩衝液を添加し、洗浄用緩衝液中で標識抗体150を均一に分散させる。分散には、例えば超音波処理などの分散手段を用いることが好ましい。洗浄用緩衝液としては、特に限定されるものではないが、例えばpH8〜9の範囲内に調整した所定濃度の、トリス(Tris)緩衝液、グリシンアミド緩衝液、アルギニン緩衝液などを用いることができる。洗浄用緩衝液のpHの調整は、例えば塩酸、水酸化ナトリウムなどを用いて行うことができる。標識抗体150の洗浄処理は、必要に応じて複数回を繰り返し行うことができる。
【0101】
(保存処理)
保存処理は、固液分離手段によって分取した標識抗体150に保存用緩衝液を添加し、保存用緩衝液中で標識抗体150を均一に分散させる。分散には、例えば超音波処理などの分散手段を用いることが好ましい。保存用緩衝液としては、例えば、洗浄用緩衝液に、所定濃度の凝集防止剤及び/又は安定剤を添加した溶液などを用いることができる。凝集防止剤としては、例えば、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロースに代表される糖類や、グリセリン、ポリビニルアルコールに代表される多価アルコールなどを用いることができる。安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば牛血清アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの蛋白質を用いることができる。このようにして標識抗体150の保存処理を行うことができる。
【0102】
以上の各工程では、さらに必要に応じて、界面活性剤や、アジ化ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステルなどの防腐剤を用いることができる。
【0103】
[アナライト検出・定量キット]
本発明の一実施の形態に係るアナライト測定用キットは、例えばラテラルフロー型クロマト用テストストリップ200を用いて、本実施の形態のアナライトの測定方法に基づき、試料中に含まれるアナライト160の検出又は定量するためのキットである。
【0104】
本実施の形態のキットは、
メンブレン110と、
メンブレン110に、前記アナライト160と特異的に結合する捕捉リガンドが固定されてなる判定部130を含むラテラルフロー型クロマト用テストストリップ200と、
アナライト160に特異的に結合する抗体を樹脂粒子10に複数の金属粒子20が固定化された構造を有する樹脂−金属複合体100で標識した標識抗体150を含む検出試薬と、
を含んでいる。本実施の形態のキットは、必要に応じて、さらにその他の構成要素を含むものであってもよい。
【0105】
本発明に係るキットを使用するにあたっては、試料中のアナライト160と検出試薬中の標識抗体150とを接触させて工程(I)を実施した後、テストストリップ200の反応部又は試料添加部120に試料を供して、工程(II)、工程(III)を順次実施してもよい。あるいは、テストストリップ200の判定部130よりも上流側に、検出試薬を塗布して、適宜乾燥させて反応部を形成した後、形成された反応部あるいは該反応部よりも上流側の位置(例えば、試料添加部120)に試料を添加して、工程(I)〜(III)を順次実施してもよい。
【実施例】
【0106】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例、比較例において特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。
【0107】
<樹脂−金属複合体の吸光度測定>
樹脂−金属複合体の吸光度は、光学用白板ガラス製セル(光路長10mm)に0.01wt%に調製した樹脂−金属複合体分散液(分散媒:水)を入れ、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)を用いて、金の場合570nm、白金の場合400nmの吸光度を測定した。
【0108】
<固形分濃度測定及び金属担持量の測定>
磁製るつぼに濃度調整前の樹脂−金属複合体分散液1gを入れ、70℃、3時間熱処理を行った。熱処理前後の重量を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
【0109】
固形分濃度(wt%)=[乾燥後の重量(g)/ 乾燥前の重量(g)]×100
【0110】
また、上記熱処理後のサンプルを、さらに500℃、5時間加熱処理を行い、加熱処理前後の重量を測定し、下記式より金属担持量を算出した。
金属担持量(wt%)=
[500℃加熱処理後の重量(g)/500℃加熱処理前の重量(g)]×100
【0111】
<樹脂粒子及び樹脂−金属複合体の平均粒子径の測定>
ディスク遠心式粒度分布測定装置(CPS Disc Centrifuge DC24000 UHR、CPS instruments, Inc.社製)を用いて測定した。測定は、樹脂−金属複合体を水に分散させた状態で行った。
【0112】
<金属粒子の平均粒子径の測定>
樹脂−金属複合体分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM;日立ハイテクノロジーズ社製、SU−9000)により観測した画像から、任意の100個の金属粒子の面積平均径を測定した。
<イムノクロマトグラフによる評価>
各実施例等で作製した樹脂−金属複合体標識抗体分散液を用いて、下記に示すイムノクロマト法での測定を行い、樹脂−金属複合体の性能を評価した。
(評価方法)
評価は、インフルエンザA型評価用モノクロスクリーン(アドテック社製)を用い、5分後、10分後、15分後の発色レベルを比較した。性能評価において、抗原はインフルエンザA型陽性コントロール(APC)の2倍希釈列(1倍〜1024倍)を用いた(APC希釈前のウィルスの濃度は5000FFU/ml)。
(評価手順)
96ウェルプレートの各ウェルに、樹脂−金属複合体標識抗体分散液を3μlずつ入れ、APCの2倍希釈列(1倍〜1024倍)及び陰性コントロールを、それぞれ100μl混和した。次に、インフルエンザA型評価用モノクロスクリーンに、この混和した分散液を50μl添加し、5分後、10分後、15分後の発色レベルを評価した。15分後の発色レベルが0.5以上のものを「良好」と判定した。発色レベルは、金コロイド判定用色見本(アドテック社製)を用いて判定した。
【0113】
[実施例1]
<樹脂粒子の合成>
トリオクチルアンモニウムクロリド(1.20g)及びポリエチレングリコール
メチルエーテルメタクリレート(10.00g)を300gの純水に溶解した後、2−ビニルピリジン(40.00g)及びジビニルベンゼン(10.00g)を加え、窒素気流下において150rpm、30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.00gの純水に溶解した2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.250g)を約2分かけて滴下し、150rpm、60℃で3.5時間撹拌することで、平均粒子径307nmの樹脂粒子A−1を得た。遠心分離(9000rpm、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させる操作を3回行った後、透析処理により不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10wt%の樹脂粒子分散液B−1を得た。
【0114】
<樹脂−金複合体の合成>
実施例1で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−1(4.57g)に純水11.25gを加えた後、400mM塩化金酸水溶液(7.34g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−1を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−1を調製した。
【0115】
次に、純水158gに前記2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−1(4.33g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、528mMのジメチルアミンボラン水溶液(1.0g)を2分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径310nmの樹脂−金複合体D−1を得た。樹脂−金複合体D−1を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−金複合体分散液E−1を得た。樹脂−金複合体分散液E−1中の樹脂−金複合体F−1の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.07であった。また、F−1における金粒子の平均粒子径は22.7nm、金の担持量は49.5wt%であった。
【0116】
<イムノクロマトの評価>
得られた樹脂−金複合体分散液E−1の1ml(0.1wt%)にインフルエンザ抗体を100μg混合し、室温で約3時間攪拌して樹脂−金複合体F−1に抗体を結合させた。終濃度が1%となるように牛血清アルブミン溶液を添加し、室温にて2時間攪拌して樹脂−金複合体F−1表面をブロックした。12000rpm、4℃で5分間遠心分離を行って回収し、0.2%牛血清アルブミンを含む緩衝液に懸濁して樹脂−金複合体標識抗体分散液G−1を作製した。
【0117】
作製した樹脂−金複合体標識抗体分散液G−1を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−金複合体分散液E−1の性能を評価した。その結果を表1に示した。
【0118】
【表1】
【0119】
上記表1から、樹脂−金複合体標識抗体分散液G−1は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0120】
[実施例2]
<樹脂−白金複合体の合成>
実施例1で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−1(4.57g)に純水14gを加えた後、400mM塩化白金酸水溶液(5.00g)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−1を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−2を調製した。
【0121】
次に、純水139gに5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−2(2.06g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、132mMのジメチルアミンボラン水溶液(4g)を20分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径310nmの樹脂−白金複合体D−2を得た。樹脂−白金複合体D−2を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−白金複合体分散液E−2を得た。樹脂−白金複合体分散液E−2中の樹脂−白金複合体F−2の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.62であった。また、樹脂−白金複合体F−2における白金粒子の平均粒子径は5.0nm未満、白金の担持量は33.5wt%であった。
【0122】
<イムノクロマトの評価>
得られた樹脂―白金複合体分散液E−2の1ml(0.1wt%)にインフルエンザ抗体を100μg混合し、室温で約3時間攪拌して樹脂−白金複合体F−2に抗体を結合させた。終濃度が1%となるように牛血清アルブミン溶液を添加し、室温にて2時間攪拌して樹脂−白金複合体F−2の表面をブロックした。12000rpm、4℃で5分間遠心分離を行って回収し、0.2%牛血清アルブミンを含む緩衝液に懸濁して樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−2を作製した。
【0123】
作製した樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−2を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−白金複合体分散液E−2の性能を評価した。その結果を表2に示した。
【0124】
【表2】
【0125】
上記表2から、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−2は、128倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0126】
[実施例3]
トリオクチルアンモニウムクロリド(1.20g)及びポリエチレングリコール
メチルエーテルメタクリレート(10.00g)を300gの純水に溶解した後、2−ビニルピリジン(48.00g)及びジビニルベンゼン(2.00g)を加え、窒素気流下において150rpm、30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.00gの純水に溶解した2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.250g)を約2分かけて滴下し、150rpm、60℃で3.5時間撹拌することで、平均粒子径361nmの樹脂粒子A−3を得た。遠心分離(9000rpm、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させる操作を3回行った後、透析処理により不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10wt%の樹脂粒子分散液B−3を得た。
<樹脂−金複合体の合成>
実施例3で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−3(92.0g)に純水255gを加えた後、400mM塩化金酸水溶液(147g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置した後、遠心分離(3000rpm、30分)により樹脂粒子A−3を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−3を調製した。
【0127】
次に、純水1580gに前記2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−3(43.3g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、528mMのジメチルアミンボラン水溶液(10.0g)を2分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径365nmの樹脂−金複合体D−3を得た。樹脂−金複合体D−3を遠心分離(3000rpm、30分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、1620gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−金複合体分散液E−3を得た。樹脂−金複合体分散液E−3中の樹脂−金複合体F−3の吸光度は上記方法に従って測定した結果、0.96であった。また、樹脂−金複合体F−3における金粒子の平均粒子径は23.1nm、金の担持量は54.1wt%であった。この樹脂−金複合体F−3において、金粒子は、樹脂粒子に完全に内包された内包金粒子と、樹脂粒子内に埋包された部位及び樹脂粒子外に露出した部位を有する一部露出金粒子と、樹脂粒子の表面に吸着している表面吸着金粒子と、を含んでおり、少なくとも一部の金粒子が、樹脂粒子の表層部において三次元的に分布していた。なお、金粒子は表層部に100%存在していた。
【0128】
<イムノクロマトの評価>
得られた樹脂―金複合体分散液E−3の1ml(0.1wt%)にインフルエンザ抗体を100μg混合し、室温で約3時間攪拌して樹脂−金複合体F−3に抗体を結合させた。終濃度が1%となるように牛血清アルブミン溶液を添加し、室温にて2時間攪拌して樹脂−金複合体F−3表面をブロックした。12000rpm、4℃で5分間遠心分離を行って回収し、0.2%牛血清アルブミンを含む緩衝液に懸濁して樹脂−金複合体標識抗体分散液G−3を作製した。
【0129】
作製した樹脂−金複合体標識抗体分散液G−3を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−金複合体分散液E−3の性能を評価した。その結果を表3に示した。
【0130】
【表3】
【0131】
上記表3から、樹脂−金複合体標識抗体分散液G−3は、256倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0132】
[実施例4]
<樹脂−白金複合体の合成>
実施例3で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−3(18.2g)に純水54gを加えた後、400mM塩化白金酸水溶液(20g)を加え、30℃で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置した後、遠心分離(3000rpm、30分)により樹脂粒子A−3を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−4を調製した。
【0133】
次に、純水1392gに5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−4(20.6g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、132mMのジメチルアミンボラン水溶液(40g)を20分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径369nmの樹脂−白金複合体D−4を得た。樹脂−白金複合体D−4を遠心分離(3000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、1400gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−白金複合体分散液E−4を得た。樹脂−白金複合体分散液E−4中の樹脂−白金複合体F−4の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.61であった。また、樹脂−白金複合体F−4における白金粒子の平均粒子径は5.0nm未満、白金の担持量は40.0wt%であった。
【0134】
<イムノクロマトの評価>
実施例2と同様の操作を行い、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−4を作製した。
【0135】
作製した樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−4を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−白金複合体分散液E−4の性能を評価した。その結果を表4に示した。
【0136】
【表4】
【0137】
上記表4から、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−4は、512倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0138】
[実施例5]
トリオクチルアンモニウムクロリド(0.40g)及びポリエチレングリコール
メチルエーテルメタクリレート(10.00g)を300gの純水に溶解した後、2−ビニルピリジン(48.00g)及びジビニルベンゼン(2.00g)を加え、窒素気流下において150rpm、30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.00gの純水に溶解した2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.250g)を約2分かけて滴下し、150rpm、60℃で3.5時間撹拌することで、平均粒子径428nmの樹脂粒子A−5を得た。遠心分離(9000rpm、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させる操作を3回行った後、透析処理により不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10wt%の樹脂粒子分散液B−5を得た。
<樹脂−金複合体の合成>
実施例5で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−5(4.57g)に純水11.25gを加えた後、400mM塩化金酸水溶液(7.34g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−5を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−5を調製した。
次に、純水158gに前記2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−5(4.33g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、528mMのジメチルアミンボラン水溶液(1.0g)を2分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径438nmの樹脂−金複合体D−5を得た。樹脂−金複合体D−5を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−金複合体分散液E−5を得た。樹脂−金複合体分散液E−5中の樹脂−金複合体F−5の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.02であった。また、樹脂−金複合体F−5における金粒子の平均粒子径は22.1nm、金の担持量は51.1wt%であった。
【0139】
<イムノクロマトの評価>
得られた樹脂−金複合体分散液E−5の1ml(0.1wt%)にインフルエンザ抗体を100μg混合し、室温で約3時間攪拌して樹脂−金複合体F−5に抗体を結合させた。終濃度が1%となるように牛血清アルブミン溶液を添加し、室温にて2時間攪拌して樹脂−金複合体F−5表面をブロックした。12000rpm、4℃で5分間遠心分離を行って回収し、0.2%牛血清アルブミンを含む緩衝液に懸濁して樹脂−金複合体標識抗体分散液G−5を作製した。
【0140】
作製した樹脂−金複合体標識抗体分散液G−5を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−金複合体分散液E−5の性能を評価した。その結果を表5に示した。
【0141】
【表5】
【0142】
上記表5から、樹脂−金複合体標識抗体分散液G−5は、256倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0143】
[実施例6]
<樹脂−白金複合体の合成>
実施例5で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−5(4.57g)に純水14gを加えた後、400mM塩化白金酸水溶液(5.00g)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−5を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−6を調製した。次に、純水139gに5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−6(2.06g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、132mMのジメチルアミンボラン水溶液(4g)を20分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径459nmの樹脂−白金複合体D−6を得た。樹脂−白金複合体D−6を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−白金複合体分散液E−6を得た。樹脂−白金複合体分散液E−6中の樹脂−白金複合体F−6の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.66であった。また、樹脂−白金複合体F−6における白金粒子の平均粒子径は5.0nm未満、白金の担持量は37.8wt%であった。
【0144】
<イムノクロマトの評価>
実施例2と同様の操作を行い、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−6を作製した。
【0145】
作製した樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−6を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−白金複合体分散液E−6の性能を評価した。その結果を表6に示した。
【0146】
【表6】
【0147】
上記表6から、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−6は、1024倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0148】
[比較例1]
トリオクチルアンモニウムクロリド(3.00g)及びポリエチレングリコール
メチルエーテルメタクリレート(10.00g)を300gの純水に溶解した後、2−ビニルピリジン(49.50g)及びジビニルベンゼン(0.50g)を加え、窒素気流下において150rpm、30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.00gの純水に溶解した2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.250g)を約2分かけて滴下し、150rpm、60℃で3.5時間撹拌することで、平均粒子径370nmの樹脂粒子A−7を得た。遠心分離(9000rpm、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させる操作を3回行った後、透析処理により不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10wt%の樹脂粒子分散液B−7を得た。
【0149】
<樹脂−金複合体の合成>
比較例1で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−7(4.57g)に純水11.25gを加えた後、400mM塩化金酸水溶液(7.34g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−7を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−7を調製した。
【0150】
次に、純水158gに前記2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−7(4.33g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、528mMのジメチルアミンボラン水溶液(1.0g)を2分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径393nmの樹脂−金複合体D−7を得た。樹脂−金複合体D−7を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−金複合体分散液E−7を得た。樹脂−金複合体分散液E−7中の樹脂−金複合体F−7の吸光度は上記方法に従って測定した結果、0.92であった。また、樹脂−金複合体F−7における金粒子の平均粒子径は12.3nm、金の担持量は55.9wt%であった。
【0151】
<イムノクロマトの評価>
得られた樹脂―金複合体分散液E−7の1ml(0.1wt%)にインフルエンザ抗体を100μg混合し、室温で約3時間攪拌して樹脂−金複合体F−7に抗体を結合させた。終濃度が1%となるように牛血清アルブミン溶液を添加し、室温にて2時間攪拌して樹脂−金複合体F−7表面をブロックした。12000rpm、4℃で5分間遠心分離を行って回収し、0.2%牛血清アルブミンを含む緩衝液に懸濁して樹脂−金複合体標識抗体分散液G−7を作製した。
【0152】
作製した樹脂−金複合体標識抗体分散液G−7を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−金複合体分散液E−7の性能を評価した。その結果を表7に示した。
【0153】
【表7】
【0154】
上記表7から、樹脂−金複合体標識抗体分散液G−7は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0155】
[比較例2]
<樹脂−白金複合体の合成>
比較例1で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−7(4.57g)に純水14gを加えた後、400mM塩化白金酸水溶液(5.00g)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−7を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−8を調製した。
次に、純水139gに5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−8(2.06g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、132mMのジメチルアミンボラン水溶液(4g)を20分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径382nmの樹脂−白金複合体D−8を得た。樹脂−白金複合体D−8を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−白金複合体分散液E−8を得た。樹脂−白金複合体分散液E−8中の樹脂−白金複合体F−8の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.50であった。また、樹脂−白金複合体F−8における白金粒子の平均粒子径は5.0nm未満、白金の担持量は38.4wt%であった。
【0156】
<イムノクロマトの評価>
実施例2と同様の操作を行い、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−8を作製した。
【0157】
作製した樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−8を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−白金複合体分散液E−8の性能を評価した。その結果を表8に示した。
【0158】
【表8】
【0159】
上記表8から、樹脂−白金複合体標識抗体は、512倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0160】
[比較例3]
トリオクチルアンモニウムクロリド(1.50g)及びポリエチレングリコールメチルエチルエーテルメタクリレート(10.00g)を300gの純水に溶解した後、2−ビニルピリジン(49.50g)及びジビニルベンゼン(0.50g)を加え、窒素気流下において150rpm、30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.00gの純水に溶解した2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.50g)を約2分かけて滴下し、150rpm、60℃で3.5時間撹拌することで、平均粒子径430nmの樹脂粒子A−9を得た。遠心分離(9000rpm、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させる操作を3回行った後、透析処理により不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10wt%の樹脂粒子分散液B−9を得た。
【0161】
<樹脂−金複合体の合成>
比較例3で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−9(4.57g)に純水11.25gを加えた後、400mM塩化金酸水溶液(7.34g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−9を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−9を調製した。
【0162】
次に、純水158gに前記2.5wt%金イオン吸着樹脂粒子分散液C−9(4.33g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、528mMのジメチルアミンボラン水溶液(1.0g)を2分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径442nmの樹脂−金複合体D−9を得た。樹脂−金複合体D−9を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−金複合体分散液E−9を得た。樹脂−金複合体分散液E−9中の樹脂−金複合体F−9の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.26であった。また、樹脂−金複合体F−9における金粒子の平均粒子径は16.1nm、金の担持量は53.9wt%であった。
【0163】
<イムノクロマトの評価>
得られた樹脂―金複合体分散液E−9の1ml(0.1wt%)にインフルエンザ抗体を100μg混合し、室温で約3時間攪拌して樹脂−金複合体F−9に抗体を結合させた。終濃度が1%となるように牛血清アルブミン溶液を添加し、室温にて2時間攪拌して樹脂−金複合体F−9表面をブロックした。12000rpm、4℃で5分間遠心分離を行って回収し、0.2%牛血清アルブミンを含む緩衝液に懸濁して樹脂−金複合体標識抗体分散液G−9を作製した。
【0164】
作製した樹脂−金複合体標識抗体分散液G−9を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−金複合体分散液E−9の性能を評価した。その結果を表9に示した。
【0165】
【表9】
【0166】
上記表9から、樹脂−金複合体標識抗体分散液G−9は、256倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0167】
[比較例4]
<樹脂−白金複合体の合成>
比較例3で作製した10wt%樹脂粒子分散液B−9(4.57g)に純水14gを加えた後、400mM塩化白金酸水溶液(5.00g)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、24時間静置させた後、遠心分離(8000rpm、20分)により樹脂粒子A−9を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰り返すことで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度調整を行い、5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−10を調製した。
【0168】
次に、純水139gに5wt%白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−10(2.06g)を加え、150rpm、3℃で撹拌しながら、132mMのジメチルアミンボラン水溶液(4g)を20分かけて滴下した後、3℃で3時間、室温で2時間撹拌することで、平均粒子径454nmの樹脂−白金複合体D−10を得た。樹脂−白金複合体D−10を遠心分離(8000rpm、10分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、140gの純水に再度分散させる作業を3回繰り返した後、透析処理により精製し、濃度調整することで1wt%の樹脂−白金複合体分散液E−10を得た。樹脂−白金複合体分散液E−10中の樹脂−白金複合体F−10の吸光度は上記方法に従って測定した結果、1.45であった。また、樹脂−白金複合体F−10における白金粒子の平均粒子径は5.0nm未満、白金の担持量は37.7wt%であった。
【0169】
<イムノクロマトの評価>
実施例2と同様の操作を行い、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−10を作製した。
【0170】
作製した樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−10を用いて、イムノクロマト法での測定を行って当該樹脂−白金複合体分散液E−10の性能を評価した。その結果を表10に示した。
【0171】
【表10】
【0172】
上記表10から、樹脂−白金複合体標識抗体分散液G−10は、1024倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
【0173】
[付着試験]
実施例1〜3及び比較例1、2で得た樹脂−金属複合体の分散液(濃度 1質量%;分散媒 水)を、下記示す材質の容器に入れ、24時間後に容器の内壁面への金属-樹脂複合体の付着を目視で観察し、付着なしを「○」、付着ありを「×」と判定した。その結果を表11に示した。表11中の重量組成比は、ビニルピリジンとジビニルベンゼンとの共重合体における重量組成比(ビニルピリジン:ジビニルベンゼン)を意味する。
<容器材質>
PP:ポリプロピレン
PC:ポリカーボネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
【0174】
【表11】
【0175】
また、PP容器、PC容器、PET容器に対する付着試験の結果を示す写真を、それぞれ
図4、
図5A・5B及び
図6に示した。なお、
図4、
図5A・5B、
図6中では、Aが比較例1、Bが実施例3、Cが実施例1、Dが比較例2、Eが実施例4、Fが実施例2を示している。
【0176】
表11及び
図4〜6より、免疫学的測定の試薬容器として汎用されているPP容器、PC容器、PET容器において、ビニルピリジンとジビニルベンゼンとの共重合体における重量組成比がコントロールされた実施例では、容器内壁への樹脂−金属複合体の付着がなかった。一方、ビニルピリジンとジビニルベンゼンとの共重合体における重量組成比が49.5:0.5である比較例1、2では、PP容器、PC容器、PET容器のいずれにおいても、容器内壁への樹脂−金属複合体の付着が観察された。
【0177】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。