特許第6761353号(P6761353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761353フレッシュクリームの製造方法、および、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径調整方法
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  • 特許6761353-フレッシュクリームの製造方法、および、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径調整方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761353
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】フレッシュクリームの製造方法、および、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径調整方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 13/14 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   A23C13/14
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-574799(P2016-574799)
(86)(22)【出願日】2016年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2016053722
(87)【国際公開番号】WO2016129569
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年1月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-22838(P2015-22838)
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼ 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 茜
【審査官】 長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−267166(JP,A)
【文献】 特開2014−068605(JP,A)
【文献】 Journal of Dairy Science, 2004, Vol.87, No.11, p.3785-3788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 13/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
AGRICOLA(STN)
BIOSIS(STN)
BIOTECHNO(STN)
CAplus(STN)
FSTA(STN)
SCISEARCH(STN)
TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
均質化処理を伴わず、原料乳を3回以上、遠心分離処理してフレッシュクリームを得るフレッシュクリームの製造方法であって、
初回の遠心分離処理時の遠心加速度よりも2回目の遠心分離処理の遠心加速度を低下させ
前記初回の遠心分離処理と前記2回目の遠心分離処理との間に、前記初回の遠心分離処理で得られる軽液、前記初回の遠心分離処理で得られる重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち前記軽液および前記重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合する混合処理が行われる
フレッシュクリームの製造方法。
【請求項2】
前記初回の遠心分離処理時の遠心加速度は1300G以上2500G以下の範囲内であり、
前記2回目の遠心分離処理時の遠心加速度は350G以上750G以下の範囲内である
請求項1に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項3】
3回目の遠心分離処理時の遠心加速度は500G以上900G以下の範囲内である
請求項2に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項4】
前記初回の遠心分離処理では、前記原料乳が遠心分離処理されて、第1の軽液および第1の重液が得られ、
前記混合処理では、前記第1の軽液、前記第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち前記第1の軽液および前記第1の重液の少なくとも一方まれる2種以上混合されて第1の混合液られ
前記2回目の遠心分離処理では、前記第1の混合液が遠心分離処理されて、第2の軽液および第2の重液が得られ、
前記3回目の遠心分離処理では、前記第2の軽液が遠心分離処理されて、第3の軽液および第3の重液が得られる
請求項3に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項5】
最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径が3.3μm以上5μm以下の範囲内である
請求項1から4のいずれか1項に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項6】
3回目の遠心分離処理時の遠心加速度は350G以上750G以下の範囲内である
請求項2に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項7】
前記初回の遠心分離処理では、前記原料乳が遠心分離処理されて、第1の軽液および第1の重液が得られ、
前記混合処理では、前記第1の軽液、前記第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち前記第1の軽液および前記第1の重液の少なくとも一方まれる2種以上混合されて第1の混合液られ
前記2回目の遠心分離処理では、前記第1の混合液が遠心分離処理されて、第2の軽液および第2の重液が得られ、
前記3回目の遠心分離処理では、前記第2の重液が遠心分離処理されて、第3の軽液および第3の重液が得られる
請求項6に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項8】
最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径が2μm以上2.8μm以下の範囲内である
請求項1、2、6または7に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項9】
均質化処理を伴わないフレッシュクリームの製造方法であって、
原料乳を遠心分離処理して、第1の軽液および第1の重液を得る第1遠心分離工程と、
前記第1の軽液、前記第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち前記第1の軽液および前記第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合して第1の混合液を得る第1混合工程と、
前記第1の混合液を遠心分離処理して、第2の軽液および第2の重液を得る第2遠心分離工程と、
前記第2の軽液を遠心分離処理して、第3の軽液および第3の重液を得る第3遠心分離工程と
を備える、フレッシュクリームの製造方法。
【請求項10】
最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径が3.3μm以上5μm以下の範囲内である
請求項9に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項11】
均質化処理を伴わないフレッシュクリームの製造方法であって、
原料乳を遠心分離処理して、第1の軽液および第1の重液を得る第1遠心分離工程と、
前記第1の軽液、前記第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち前記第1の軽液および前記第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合して第1の混合液を得る第1混合工程と、
前記第1の混合液を遠心分離処理して、第2の軽液および第2の重液を得る第2遠心分離工程と、
前記第2の重液を遠心分離処理して、第3の軽液および第3の重液を得る第3遠心分離工程と
を備える、フレッシュクリームの製造方法。
【請求項12】
最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径が2μm以上2.8μm以下の範囲内である
請求項11に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項13】
前記原料乳は、未殺菌の原料乳である
請求項1から12のいずれか1項に記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項14】
膜分離処理が行われない
請求項1から13のいずれかに記載のフレッシュクリームの製造方法。
【請求項15】
均質化処理を伴わず、フレッシュクリームを3回以上遠心分離処理して、前記フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整する方法であって、
初回の遠心分離処理時の遠心加速度よりも2回目の遠心分離処理の遠心加速度を低下させる
フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整する方法。
【請求項16】
前記初回の遠心分離処理時の遠心加速度は1300G以上2500G以下の範囲内であり、
前記2回目の遠心分離処理時の遠心加速度は350G以上750G以下の範囲内である
請求項15に記載のフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整する方法。
【請求項17】
3回目の遠心分離処理時の遠心加速度は500G以上900G以下の範囲内である
請求項16に記載のフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整する方法。
【請求項18】
3回目の遠心分離処理時の遠心加速度は350G以上750G以下の範囲内である
請求項16に記載のフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフレッシュクリームの製造方法、および、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のフレッシュクリームは、通常、30℃以上60℃以下の範囲内の温度、1400G以上1800G以下の範囲内の遠心加速度(遠心力)の条件下で、原料乳(全脂乳等)を一度だけ遠心分離処理することによって製造されている(非特許文献1)。このように製造されるフレッシュクリームの平均脂肪球径(脂肪球径の平均値)は、通常、原料乳の平均脂肪球径と同程度であって、3.0μm程度である。
【0003】
ところで、過去に「クリーム中メディの脂肪球のアン径を2.0μm以下とするために、生乳を5.0MPa以上の圧力で均質化した後、その均質化された生乳を遠心分離処理してその生乳からクリームを分離する方法」が提案されている(例えば、特開2013−192460号公報参照)。このように製造されたクリームは、均質化処理を経ていないクリームに比べてスッキリした風味を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−192460号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山内邦男、横山健吉編、「ミルク総合辞典」、朝倉書店,1992年、p.167−170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先の通りフレッシュクリームを均質化処理すると、天然の脂肪球被膜が破壊されてフレッシュクリームの乳化安定性を十分に維持することができなくなるおそれがあり、場合によっては十分な乳化安定性を得るために新たな脂肪球被膜を形成させなければならない手間がかかってしまう。
【0007】
また、近年、通常のフレッシュクリームよりも濃厚な風味を有するフレッシュクリームを望む声が上がっている。そのためには、乳化安定性を商品流通上問題とならない程度に維持しつつ、平均脂肪球径を3.0μmよりも大きくする必要がある。しかしながら、今のところ、乳化安定性を商品流通上問題とならない程度に維持しつつ、平均脂肪球径を3.0μmよりも大きくする技術は確立されていない。
【0008】
本発明の課題は、乳化安定性を商品流通上問題とならない程度に維持しつつ、平均脂肪球径の大きさを一定の範囲内で自在に調整することができる(すなわち、平均脂肪球径を従前のフレッシュクリームの平均脂肪球径よりも大きくしたり小さくしたりすることができる)フレッシュクリームの製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の別の課題は、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法均質化処理を伴わず、原料乳が回以上、遠心分離処理されてフレッシュクリームが得るフレッシュクリームの製造方法であるこのフレッシュクリームの製造方法では、初回の遠心分離処理時の遠心加速度よりも2回目の遠心分離処理の遠心加速度が低下させられる。このフレッシュクリームの製造方法を採用することによって、脂肪球被膜の破壊を抑制または防止しながら、平均脂肪球径(脂肪球径の平均値)を調整することができる。
【0011】
なお、第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法は、初回の遠心分離処理時の遠心加速度が1300G以上2500G以下の範囲内であることが好ましく、2回目の遠心分離処理時の遠心加速度が350G以上750G以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、3回目の遠心分離処理時の遠心加速度が500G以上900G以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、初回の遠心分離処理で、原料乳が遠心分離処理されて、第1の軽液(主に乳脂肪を含む液)および第1の重液(主に脱脂乳を含む液)が得られる。そして、第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法には、第1混合工程が存在することが好ましい。第1混合工程では、第1の軽液、第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第1の軽液および第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第1の混合液が得られる。かかる場合、2回目の遠心分離処理で第1の混合液が遠心分離処理されて、第2の軽液および第2の重液が得られる。また、3回目の遠心分離処理で、500G以上900G以下の範囲内の遠心加速度で第2の軽液が遠心分離処理されて、第3の軽液および第3の重液が得られる。
【0014】
第3回目の遠心分離処理において500G以上900G以下の範囲内の遠心加速度で第2の軽液が遠心分離処理される場合、最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を大きくすることができ、延いては濃厚な風味のフレッシュクリームを製造することができる。具体的には、同脂肪球の平均球径を3.3μm以上5μm以下の範囲内に調整することができる。ただし、同脂肪球の平均球径をこの範囲内に収めるために第3の軽液に対してさらに遠心分離処理を実施しなければならない場合もある。
【0015】
一方、第3遠心分離処理において350G以上750G以下の範囲内の遠心加速度で第2の重液が遠心分離処理される場合、最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を小さくすることができ、延いてはスッキリ風味のフレッシュクリームを製造することができる。具体的には、同脂肪球の平均球径を2μm以上2.8μm以下の範囲内に調整することができる。ただし、同脂肪球の平均球径をこの範囲内に収めるために第3の軽液に対してさらに遠心分離処理を実施しなければならない場合もある。
【0016】
また、第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、必要に応じて、3回目の遠心分離処理の後に第2混合工程が実施されることが好ましい。第2混合工程では、第3の軽液、第3の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第3の軽液および第3の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第2の混合液が得られる。なお、この第2の混合液には、第3の軽液と第3の重液との混合液も当然に含まれる。ただし、かかる場合、この第2の混合液の組成を原料乳の組成と異ならせるために、第3の軽液と第3の重液との混合比を調整する必要がある。
【0017】
また、第1局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、必要に応じて、3回目の遠心分離処理の後に4回目の遠心分離処理5回目の遠心分離処理および第3混合工程が実施されることが好ましい。4回目の遠心分離処理では、第3の軽液が遠心分離処理されて、第4の軽液および第4の重液が得られる。5回目の遠心分離処理では、第4の軽液が遠心分離処理されて、第5の軽液および第5の重液が得られる。第3混合工程では、第5の軽液、第5の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第5の軽液および第5の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第3の混合液が得られる。なお、この第3の混合液には、第5の軽液と第5の重液との混合液も当然に含まれる。ただし、かかる場合、この第3の混合液の組成を原料乳の組成と異ならせるために、第5の軽液と第5の重液との混合比を調整する必要がある。
【0018】
本発明の第2局面に係るフレッシュクリームの製造方法は、均質化処理を伴わないフレッシュクリームの製造方法であって、第1遠心分離工程、第1混合工程、第2遠心分離工程および第3遠心分離工程を備える。第1遠心分離工程では、原料乳が遠心分離処理されて、第1の軽液および第1の重液が得られる。第1混合工程では、第1の軽液、第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第1の軽液および第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第1の混合液が得られる。なお、この第1の混合液には、第1の軽液と第1の重液との混合液も当然に含まれる。ただし、かかる場合、この第1の混合液の組成を原料乳の組成と異ならせるために、第1の軽液と第1の重液との混合比を調整する必要がある。第2遠心分離工程では、第1の混合液が遠心分離処理されて、第2の軽液および第2の重液が得られる。第3遠心分離工程では、第2の軽液が遠心分離処理されて、第3の軽液および第3の重液が得られる。
【0019】
第3遠心分離工程において第2の軽液が遠心分離処理される場合、最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を大きくすることができ、延いては濃厚な風味のフレッシュクリームを製造することができる。具体的には、同脂肪球の平均球径を3.3μm以上5μm以下の範囲内に調整することができる。ただし、同脂肪球の平均球径をこの範囲内に収めるために第3の軽液に対してさらに遠心分離処理を実施しなければならない場合もある。
【0020】
本発明の第3局面に係るフレッシュクリームの製造方法は、均質化処理を伴わないフレッシュクリームの製造方法であって、第1遠心分離工程、第1混合工程、第2遠心分離工程および第3遠心分離工程を備える。第1遠心分離工程では、原料乳が遠心分離処理されて、第1の軽液および第1の重液が得られる。第1混合工程では、第1の軽液、第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第1の軽液および第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第1の混合液が得られる。第2遠心分離工程では、第1の混合液が遠心分離処理されて、第2の軽液および第2の重液が得られる。第3遠心分離工程では、第2の重液が遠心分離処理されて、第3の軽液および第3の重液が得られる。
【0021】
第3遠心分離工程において第2の重液が遠心分離処理される場合、最終的に得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を小さくすることができ、延いてはスッキリ風味のフレッシュクリームを製造することができる。具体的には、同脂肪球の平均球径を2μm以上2.8μm以下の範囲内に調整することができる。ただし、同脂肪球の平均球径をこの範囲内に収めるために第3の軽液に対してさらに遠心分離処理を実施しなければならない場合もある。
【0022】
また、第2局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、必要に応じて、第3遠心分離工程の後に第2混合工程が実施されることが好ましい。第2混合工程では、第3の軽液、第3の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第3の軽液および第3の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第2の混合液が得られる。なお、この第2の混合液には、第3の軽液と第3の重液との混合液も当然に含まれる。ただし、かかる場合、この第2の混合液の組成を原料乳の組成と異ならせるために、第3の軽液と第3の重液との混合比を調整する必要がある。
【0023】
また、第2局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、必要に応じて、第3遠心分離工程の後に第4遠心分離工程、第5遠心分離工程および第3混合工程が実施されることが好ましい。第4遠心分離工程では、第3の軽液が遠心分離処理されて、第4の軽液および第4の重液が得られる。第5遠心分離工程では、第4の軽液が遠心分離処理されて、第5の軽液および第5の重液が得られる。第3混合工程では、第5の軽液、第5の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第5の軽液および第5の重液の少なくとも一方を含む2種以上が混合されて第3の混合液が得られる。なお、この第3の混合液には、第5の軽液と第5の重液との混合液も当然に含まれる。ただし、かかる場合、この第3の混合液の組成を原料乳の組成と異ならせるために、第5の軽液と第5の重液との混合比を調整する必要がある。
【0024】
なお、第1局面および第2局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、原料乳が未殺菌の原料乳であることが好ましい。
【0025】
また、第1局面および第2局面に係るフレッシュクリームの製造方法では、膜分離処理が行われないことが好ましい。
【0026】
本発明の第局面に係る方法均質化処理を伴わず、フレッシュクリームが3回以上遠心分離処理されて、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径が調整される方法であるそして、この方法では、初回の遠心分離処理時の遠心加速度よりも2回目の遠心分離処理の遠心加速度が低下させられる。なお、このフレッシュクリームは、遠心分離処理のみによって得られたものであることが好ましい。
【0027】
なお、第4局面に係る方法では、初回の遠心分離処理時の遠心加速度が1300G以上2500G以下の範囲内であることが好ましく、2回目の遠心分離処理時の遠心加速度が350G以上750G以下の範囲内であることが好ましい。
【0028】
また、第4局面に係る方法では、3回目の遠心分離処理時の遠心加速度が500G以上900G以下の範囲内であるか、350G以上750G以下の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るフレッシュクリームの製造方法を採用すれば、乳化安定性を商品流通上問題とならない程度に維持しつつ、フレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径を調整することができ、延いてはフレッシュクリームの風味を所望の通りに変化させることができる(すなわち、通常のフレッシュクリームよりも乳風味が濃厚なフレッシュクリームを調製したり、通常のフレッシュクリームよりもスッキリした風味のフレッシュクリームを調製したりすることができる。)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1および比較例1で調製されたフレッシュクリームの官能検査(2点比較)の結果を示すレーダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームは、生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、加工乳などから乳脂肪分以外の殆どの成分を除去したものであって、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(最終改正:平成一九年一〇月三〇日厚生労働省令第一三二号)では「クリーム」と定義されている。フレッシュクリームの乳脂肪率はその用途に応じて適宜調整される。例えば、コーヒー向けや料理向けのフレッシュクリームでは乳脂肪率が20%以上30%以下の範囲内に調整され、ケーキなどの作製に用いられるホイップクリーム作製用のフレッシュクリームでは乳脂肪率が35%以上50%以下の範囲内に調整されている。
【0032】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの原料乳としては、例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、加工乳などを挙げることができる。そして、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームは、上記原料乳を複数回、遠心分離処理するによって調製されるが、この遠心分離処理を実行する装置(すなわち遠心分離機)としては、密閉型遠心分離機や半開放型遠心分離機などが例示される。半開放型遠心分離機は、ディスク型遠心分離機(例えば、エレクレムF−3、ウエストファリアセパレーター社製の遠心分離機)であることが好ましい。ディスク型遠心分離機は、一般的に、分離板のディスク、回転体のボウルおよび駆動部から構成されている。そして、このディスク型遠心分離機において分離温度(℃)、遠心加速度(G)、投入流量(投入速度、すなわち、原料乳などを遠心分離機に投入する流量)(L/分)、排出流量(排出速度、軽液(フレッシュクリームなど)や重液(脱脂乳など)を遠心分離機から排出する流量)(L/分)などの制御パラメータを適切に設定することによって、乳化安定性を商品流通上問題とならない程度に維持しつつ、フレッシュクリームの脂肪率と脂肪球径を調整することができる。
【0033】
本発明の目的を達することができれば、原料乳を遠心分離処理する回数は、特に限定されない。ただし、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの脂肪球径の分布幅を狭くする(標準偏差を小さくする)ためにはこの回数を多くすることが好ましく、実際の製造工程や製造設備を簡便化するためにはこの回数を少なくすることが好ましい。なお、上記の観点から、この回数は、具体的には2回以上7回以下の範囲内の回数や、3回以上7回以下の範囲内の回数であることが好ましく、2回以上6回以下の範囲内の回数や、3回以上6回以下の範囲内の回数であることがより好ましく、2回以上5回以下の範囲内の回数や、3回以上5回以下の範囲内の回数であることがさらに好ましく、2回以上4回以下の範囲内の回数や、3回以上4回以下の範囲内の回数であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、遠心分離処理で得られた軽液(主に乳脂肪を含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)を1回以上混合して、次の遠心分離処理時の原料乳の乳脂肪分を調整することができる。このとき、本発明の目的を達することができれば、遠心分離処理で得られた軽液と重液とを混合する回数は、特に限定されない。ただし、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの乳脂肪分を調整しやすくするためにはこの回数を多くすることが好ましく、実際の製造工程や製造設備を簡便化するためにはこの回数を少なくすることが好ましい。なお、上記の観点から、この回数は、具体的には1回以上5回以下の範囲内の回数であることが好ましく、1回以上4回以下の範囲内の回数であることがより好ましく、1回以上3回以下の範囲内の回数であることがさらに好ましく、1回か2回であることが特に好ましい。
【0035】
本発明に係るフレッシュクリームの製造方法において、遠心分離機の温度(すなわち遠心分離処理時の原料乳等の温度)は、10℃以上60℃以下の範囲内の温度に調整されることが好ましく、15℃以上60℃以下の範囲内の温度に調整されることがより好ましく、20℃以上55℃以下の範囲内の温度に調整されることがさらに好ましく、25℃以上55℃以下の範囲内の温度に調整されることが特に好ましい。
【0036】
上述の通り、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、原料乳が複数回、遠心分離処理されるが、より好ましい具体的な形態は、以下の二つの形態−第1形態および第2形態−である。
【0037】
(第1形態)
第1形態に係るフレッシュクリームの製造方法は、以下の(1A)から(4A)までの工程を含む。なお、このフレッシュクリームの製造方法では、フレッシュクリームの平均脂肪球径は通常のフレッシュクリームの平均脂肪球径よりも大きくなる。
【0038】
(1A)原料乳を遠心分離処理して、第1の軽液(主に乳脂肪を含む液)および第1の重液(主に脱脂乳を含む液)を得る工程
【0039】
(2A)第1の軽液、第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第1の軽液および第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合して第1の混合液を得る工程
【0040】
(3A)第1の混合液を遠心分離処理して、第2の軽液および第2の重液を得る工程
【0041】
(4A)第2の軽液を遠心分離処理して、第3の軽液および第3の重液を得る工程
【0042】
なお、第1形態のフレッシュクリームの製造方法は、以下の(5A)の工程をさらに含むことが好ましい。
【0043】
(5A)第3の軽液、第3の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第3の軽液および第3の重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合して第2の混合液を得る工程
【0044】
(第2形態)
第2形態のフレッシュクリームの製造方法は、以下の(1B)から(6B)までの工程を含む。なお、このフレッシュクリームの製造方法では、フレッシュクリームの平均脂肪球径は通常のフレッシュクリームの平均脂肪球径よりも小さくなる。
【0045】
(1B)原料乳を遠心分離処理して、第1の軽液(主に乳脂肪を含む液)および第1の重液(主に脱脂乳を含む液)を得る工程
【0046】
(2B)第1の軽液、第1の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第1の軽液および第1の重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合して第1の混合液を得る工程
【0047】
(3B)第1の混合液を遠心分離処理して、第2の軽液および第2の重液を得る工程
【0048】
(4B)第2の重液を遠心分離処理して、第3の軽液および第3の重液を得る工程
【0049】
(5B)第3の軽液を遠心分離処理して、第4の軽液および第4の重液を得る工程
【0050】
(6B)第4の軽液を遠心分離処理して、第5の軽液および第5の重液を得る工程
【0051】
なお、第2形態のフレッシュクリームの製造方法は、以下の(7B)の工程をさらに含むことが好ましい。
【0052】
(7B)第5の軽液、第5の重液、フレッシュクリーム、脱脂乳および生乳のうち第5の軽液および第5の重液の少なくとも一方を含む2種以上を混合して第2の混合液を得る工程
【0053】
以下、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法において、フレッシュクリームの平均脂肪球径を大きく調整する場合、同平均脂肪球径を小さく調整する場合における各設定値について詳述する。
【0054】
(1)本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法において、フレッシュクリームの平均脂肪球径を大きく調整する場合
【0055】
初回の遠心分離処理時の遠心加速度(遠心力)を1300G以上2500G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、1400G以上2200G以下の範囲内の数値に設定することがより好ましく、1500G以上2000G以下の範囲内の数値に設定することがさらに好ましく、1600G以上1800G以下の範囲内の数値に設定することが特に好ましい。また、かかる場合、2回目の遠心分離処理時の遠心加速度を350G以上750G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、400G以上700G以下の範囲内の数値に設定することがより好ましく、450G以上650G以下の範囲内の数値に設定することがさらに好ましく、500G以上600G以下の範囲内の数値に設定することが特に好ましい。また、かかる場合、3回目の遠心分離処理時の遠心加速度を500G以上900G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、550G以上850G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、600G以上800G以下の範囲内の数値に設定することがより好ましく、650G以上750G以下の範囲内の数値に設定することがさらに好ましい。
【0056】
初回の原料乳(生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、加工乳など)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液(主に乳脂肪を含む液)の排出速度は0.1L/分以上1L/分以下の範囲内の数値に設定されることが好ましく、0.2L/分以上0.8L/分以下の範囲内の数値に設定されることがより好ましく、0.3L/分以上0.7L/分以下の範囲内の数値に設定されることがさらに好ましく、0.4L/分以上0.6L/分以下の範囲内の数値に設定されることが特に好ましい。すなわち、初回の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は2%以上20%以下の範囲内であることが好ましく、4%以上16%以下の範囲内であることがより好ましく、6%以上14%以下の範囲内であることがさらに好ましく、8%以上12%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0057】
上述の条件下で初回の遠心分離処理を実施することによって、原料乳を軽液(主に乳脂肪を含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、40重量%以上50重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、42重量%以上48重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、43重量%以上47重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、44重量%以上46重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0058】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、初回の遠心分離処理で得られた軽液に脱脂乳を添加してその乳脂肪分および無脂乳固形分を調整することができる。この混合液の乳脂肪分は、11重量%以上25重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、12重量%以上20重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、13重量%以上18重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、14重量%以上16重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。また、この混合液の無脂乳固形分は、6.7重量%以上7.9重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、7.1重量%以上7.8重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、7.3重量%以上7.7重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、7.4重量%以上7.6重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。
【0059】
2回目の遠心分離処理に供される原料乳(乳脂肪分は11重量%以上25重量%以下の範囲内であることが好ましく、12重量%以上20重量%以下の範囲内であることがより好ましく、13重量%以上18重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、14重量%以上16重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液の排出速度は1.0L/分以上2.0L/分以下の範囲内であることが好ましく、1.1L/分以上1.8L/分以下の範囲内であることがより好ましく、1.2L/分以上1.6L/分以下の範囲内であることがさらに好ましく、1.3L/分以上1.5L/分以下の範囲内であることが特に好ましい。すなわち、2回目の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は20%以上40%以下の範囲内であることが好ましく、22%以上36%以下の範囲内であることがより好ましく、24%以上32%以下の範囲内であることがさらに好ましく、26%以上30%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0060】
上述の条件下で2回目の遠心分離処理を実施することによって、2回目の遠心分離処理に供される原料乳を軽液(主に乳脂肪をを含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、34重量%以上45重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、35重量%以上42重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、36重量%以上40重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、37重量%以上39重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0061】
3回目の遠心分離処理に供される原料乳(乳脂肪分は34重量%以上45重量%以下の範囲内であることが好ましく、35重量%以上42重量%以下の範囲内であることがより好ましく、36重量%以上40重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、37重量%以上39重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液の排出速度は3.3L/分以上4.5L/分以下の範囲内であることが好ましく、3.4L/分以上4.2L/分以下の範囲内であることがより好ましく、3.5L/分以上4.0L/分以下の範囲内であることがさらに好ましく、3.6L/分以上3.8L/分以下の範囲内であることが特に好ましい。すなわち、3回目の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は66%以上90%以下の範囲内であることが好ましく、68%以上84%以下の範囲内であることがより好ましく、70%以上80%以下の範囲内であることがさらに好ましく、72%以上76%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0062】
上述の条件下で3回目の遠心分離処理を実施することによって、3回目の遠心分離処理に供される原料乳を軽液(主に乳脂肪をを含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、48重量%以上58重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、50重量%以上56重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、51重量%以上55重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、52重量%以上54重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0063】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、3回目の遠心分離処理で得られた軽液に脱脂乳を添加してその乳脂肪分および無脂乳固形分を調整することができる。この混合液の乳脂肪分は、40重量%以上50重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、42重量%以上48重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、43重量%以上47重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、44重量%以上46重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。また、この混合液の無脂乳固形分は、4.5重量%以上5.3重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、4.6重量%以上5.2重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、4.7重量%以上5.1重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、4.8重量%以上5.0重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。
【0064】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法により得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径(平均脂肪球径)は、生乳の平均脂肪球径である3μmよりも大きければ、特に限定されないが、3.3μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましく、3.5μm以上4.8μm以下の範囲内であることがより好ましく、3.6μm以上4.6μm以下の範囲内であることがさらに好ましく、3.7μm以上4.4μm以下の範囲内であることが特に好ましく、3.8μm以上4.2μm以下の範囲であることが最も好ましい。また、その平均脂肪球径の標準偏差は、特に限定されないが、0.02μm以上0.4μm以下の範囲内であることが好ましく、0.05μm以上0.37μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.1μm以上0.35μm以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.15μm以上0.32μm以下の範囲内であることが特に好ましく、0.2μm以上0.3μm以下の範囲内であることが最も好ましい。
【0065】
上述の通り、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、膜分離処理しなくても、フレッシュクリームの平均脂肪球径を、生乳の平均脂肪球径である3μmよりも大きく調整することができるだけでなく、その平均脂肪球径の標準偏差も生乳のそれよりも小さく調整することができる。なお、膜分離処理する装置としては、精密濾過膜分離機、限外濾過膜分離機などが例示される。
【0066】
(2)本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法において、フレッシュクリームの平均脂肪球径を小さく調整する場合
【0067】
初回の遠心分離処理時の遠心加速度を1300G以上2500G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、1400G以上2200G以下の範囲内の数値に設定することがより好ましく、1500G以上2000G以下の範囲内の数値に設定することがさらに好ましく、1600G以上1800G以下の範囲内の数値に設定することが特に好ましい。また、かかる場合、2回目の遠心分離処理時の遠心加速度を350G以上750G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、400G以上700G以下の範囲内の数値に設定することがより好ましく、450G以上650G以下の範囲内の数値に設定することがさらに好ましく、500G以上600G以下の範囲内の数値に設定することが特に好ましい。また、かかる場合、3回目の遠心分離処理時の遠心加速度を350G以上750G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、400G以上700G以下の範囲内に設定することがより好ましく、450G以上650G以下の範囲内に設定することがさらに好ましく、500G以上600G以下の範囲内に設定することが特に好ましい。さらに、かかる場合、4回目の遠心分離処理時の遠心加速度を1300G以上2500G以下の範囲内の数値に設定することが好ましく、1400G以上2200G以下の範囲内の数値に設定することがより好ましく、1500G以上2000G以下の範囲内の数値に設定することがさらに好ましく、1600G以上1800G以下の範囲内の数値に設定することが特に好ましい。
【0068】
初回の原料乳(生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、加工乳など)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液(主に乳脂肪を含む液)の排出速度は0.1L/分以上1L/分以下の範囲内の数値に設定されることが好ましく、0.2L/分以上0.8L/分以下の範囲内の数値に設定されることがより好ましく、0.3L/分以上0.7L/分以下の範囲内の数値に設定されることがさらに好ましく、0.4L/分以上0.6L/分以下の範囲内の数値に設定されることが特に好ましい。すなわち、初回の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は2%以上20%以下の範囲内であることが好ましく、4%以上16%以下の範囲内であることがより好ましく、6%以上14%以下の範囲内であることがさらに好ましく、8%以上12%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0069】
上述の条件下で初回の遠心分離処理を実施することによって、原料乳を軽液(主に乳脂肪を含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、40重量%以上50重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、42重量%以上48重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、43重量%以上47重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、44重量%以上46重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0070】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、初回の遠心分離処理で得られた軽液に脱脂乳を添加してその乳脂肪分および無脂乳固形分を調整することができる。この混合液の乳脂肪分は、11重量%以上25重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、12重量%以上20重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、13重量%以上18重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、14重量%以上16重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。また、この混合液の無脂乳固形分は、6.7重量%以上7.9重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、7.1重量%以上7.8重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、7.3重量%以上7.7重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、7.4重量%以上7.6重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。
【0071】
2回目の遠心分離処理に供される原料乳(乳脂肪分は11重量%以上25重量%以下の範囲内であることが好ましく、12重量%以上20重量%以下の範囲内であることがより好ましく、13重量%以上18重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、14重量%以上16重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液の排出速度は1.0L/分以上2.0L/分以下の範囲内であることが好ましく、1.1L/分以上1.8L/分以下の範囲内であることがより好ましく、1.2L/分以上1.6L/分以下の範囲内であることがさらに好ましく、1.3L/分以上1.5L/分以下の範囲内であることが特に好ましい。すなわち、2回目の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は20%以上40%以下の範囲内であることが好ましく、22%以上36%以下の範囲内であることがより好ましく、24%以上32%以下の範囲内であることがさらに好ましく、26%以上30%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0072】
上述の条件下で2回目の遠心分離処理を実施することによって、2回目の遠心分離処理に供される原料乳を軽液(主に乳脂肪をを含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、34重量%以上45重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、35重量%以上42重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、36重量%以上40重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、37重量%以上39重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。また、重液には、3重量%以上11重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、4重量%以上10重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、5重量%以上9重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、6重量%以上8重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0073】
3回目の遠心分離処理に供される原料乳(乳脂肪分は3重量%以上11重量%以下の範囲内であることが好ましく、4重量%以上10重量%以下の範囲であることがより好ましく、5重量%以上9重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、6重量%以上8重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液の排出速度は1.9L/分以上2.7L/分以下の範囲であることが好ましく、2.0L/分以上2.6L/分以下の範囲内であることがより好ましく、2.1L/分以上2.5L/分以下の範囲内であることがさらに好ましく、2.2L/分以上2.4L/分以下の範囲内であることが特に好ましい。すなわち、3回目の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は38%以上54%以下の範囲内であることが好ましく、40%以上52%以下の範囲内であることがより好ましく、42%以上50%以下の範囲内であることがさらに好ましく、44%以上48%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0074】
上述の条件下で3回目の遠心分離処理を実施することによって、3回目の遠心分離処理に供される原料乳を軽液(主に乳脂肪をを含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、8重量%以上16重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、9重量%以上15重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、10重量%以上14重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、11重量%以上13重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0075】
4回目の遠心分離処理に供される原料乳(乳脂肪分は8重量%以上16重量%以下の範囲内であることが好ましく、9重量%以上15重量%以下の範囲内であることがより好ましく、10重量%以上14重量%以下の範囲内であることがさらに好ましく、11重量%以上13重量%以下の範囲内であることが特に好ましい。)の投入速度を5.3L/分に設定したとき、軽液の排出速度は0.8L/分以上1.6L/分以下の範囲内であることが好ましく、0.9L/分以上1.5L/分以下の範囲内であることがより好ましく、1.0L/分以上1.4L/分以下の範囲内であることがさらに好ましく、1.1L/分以上1.3L/分以下の範囲内であることが特に好ましい。すなわち、4回目の原料乳の投入速度に対する軽液の排出速度の割合は16%以上32%以下の範囲内であることが好ましく、18%以上30%以下の範囲内であることがより好ましく、20%以上28%以下の範囲内であることがさらに好ましく、22%以上26%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0076】
上述の条件下で4回目の遠心分離処理を実施することによって、4回目の遠心分離処理に供される原料乳を軽液(主に乳脂肪をを含む液)と重液(主に脱脂乳を含む液)に分離することができる。なお、この際、この軽液には、42重量%以上50重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが好ましく、43重量%以上49重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがより好ましく、44重量%以上48重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることがさらに好ましく、45重量%以上47重量%以下の範囲内の乳脂肪分が含有されることが特に好ましい。
【0077】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、4回目の遠心分離処理で得られた軽液に脱脂乳を添加してその乳脂肪分および無脂乳固形分を調整することができる。この混合液の乳脂肪分は、35重量%以上47重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、35重量%以上45重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、36重量%以上40重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、37重量%以上39重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。また、この混合液の無脂乳固形分は、4.7重量%以上6.0重量%以下の範囲内に調整されることが好ましく、5.0重量%以上5.7重量%以下の範囲内に調整されることがより好ましく、5.2重量%以上5.6重量%以下の範囲内に調整されることがさらに好ましく、5.3重量%以上5.5重量%以下の範囲内に調整されることが特に好ましい。
【0078】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法により得られるフレッシュクリーム中の脂肪球の平均球径(平均脂肪球径)は、生乳の平均脂肪球径である3μmよりも小さければ、特に限定されないが、2μm以上2.8μm以下の範囲内であることが好ましく、2.1μm以上2.8μm以下の範囲内であることがより好ましく、2.2μm以上2.8μm以下の範囲内であることがさらに好ましく、2.3μm以上2.7μm以下の範囲内であることが特に好ましく、2.4μm以上2.7μm以下の範囲であることが最も好ましい。また、その平均脂肪球径の標準偏差は、特に限定されないが、0.02μm以上0.3μm以下の範囲内であることが好ましく、0.04μm以上0.25μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.06μm以上0.2μm以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.08μm以上0.18μm以下の範囲内であることが特に好ましく、0.1μm以上0.16μm以下の範囲内であることが最も好ましい。
【0079】
上述の通り、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、均質化処理しなくても、フレッシュクリームの平均脂肪球径を、生乳の平均脂肪球径である3μmよりも小さく調整することができるだけでなく、その平均脂肪球径の標準偏差も生乳のそれよりも小さく調整することができる。なお、均質化処理する装置としては、ホモゲナイザー、ホモミキサーなどが例示される。
【0080】
なお、本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法では、フレッシュクリームの平均脂肪球径を小さく調整する場合であっても、大きく調整する場合であっても、遠心分離処理の前後に、原料乳や中間生成物を殺菌する工程を含んでいてもよい。ここで、原料乳や中間生成物を殺菌する方法としては、加熱殺菌方法などの常用の殺菌方法を適用することができる。加熱殺菌方法としては、具体的には、低温保持殺菌法(LTLT)や、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)が例示される。なお、低温保持殺菌法(LTLT)では60℃以上65℃以下の範囲内の温度で30分間以上40分間以下の範囲内の時間などで加熱殺菌されることが好ましく、高温短時間殺菌法(HTST法)では70℃以上90℃以下の範囲内の温度で10秒間以上30秒間以下の範囲内の時間、または、100℃以上110℃以下の範囲内の温度で5秒間以上10秒間以下の範囲内の時間で加熱殺菌されることが好ましく、超高温殺菌法(UHT法)では120℃以上145℃以下の範囲内の温度で1秒間以上5秒間以下の範囲内の時間で加熱殺菌されることが好ましい。なお、このように、原料乳や中間生成物が殺菌される場合、その直後に、原料乳や中間生成物が冷却される。なお、その際の冷却温度は、例えば、10℃以下の温度である。
【0081】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの製造方法により得られるフレッシュクリームは、種々の油脂食品や油脂含有食品などに用いることができる。油脂食品としては具体的にはファットスプレッド、製菓用や製パン用の練込油脂などであり、油脂含有食品としては具体的にはコンパウンドクリーム、カスタードクリーム、プリンなどである。
【0082】
本発明の実施の形態に係るフレッシュクリームの平均脂肪球径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、SALD−2000、島津製作所)を用いて測定することができる。かかる場合、その平均脂肪球径は、50%粒子径の測定値として求められる。なお、この50%粒子径の測定値は、レーザー回折・散乱法に基づいており、フレッシュクリームの分散質の粒度分布において総積算値の50%に当たる粒子の直径、すなわち、小さい粒子径から粒子数を加算していき、粒子数の合計値の50%に到達したところの粒子の直径である。そして、レーザー回折式粒度分布計を用いる方法以外の方法を用いて平均脂肪球径を測定した場合、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した平均脂肪球径の測定値との差異を調整して、本発明に係る平均脂肪球径の範囲(上限値、下限値など)を設定することができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明に関して、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
1.大きい平均脂肪球径を有するフレッシュクリームの製造
以下の手順に従って、通常のフレッシュクリームの平均脂肪球径よりも大きな平均脂肪球径を有するフレッシュクリームを製造した。
【0085】
(1)
先ず、遠心分離機としてウエストファリアセパレーター社製のエレクレムF−3を用い、その遠心分離機に5.3L/分の投入流量(処理速度)で生乳を投入しながら、分離温度:50℃、遠心加速度:1700G(7000rpm)、軽液を分離する流量:0.5L/分の条件下で生乳の遠心分離処理を実施した。その結果、45重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリーム(軽液)および脱脂乳(重液)を得た。
【0086】
(2)
次に、先に得られたフレッシュクリーム(軽液)と脱脂乳(重液)を混合して、15重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(1A)を調製した。
【0087】
(3)
次いで、分離温度:30℃、遠心加速度:550G(4000rpm)、軽液を分離する流量:1.4L/分の条件下で、乳原料液(1A)を遠心分離処理し、38重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(2A軽)(軽液)を得た。
【0088】
(4)
続いて、分離温度:40℃、遠心加速度:700G(5000rpm)、軽液を分離する流量:3.7L/分の条件下で、乳原料液(2A軽)を遠心分離処理し、53重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(3A軽)(軽液)を得た。
【0089】
(5)
そして、乳原料液(3A軽)と脱脂乳を混合して、45重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリームを調製した。最後に、このフレッシュクリームを、加熱温度:120℃、加熱時間:15秒の条件下で加熱殺菌してから、均質化せずに冷却(5℃)した。その結果、45重量%の乳脂肪率および4.9重量%の無脂乳固形分率を有するフレッシュクリームが得られた。
【0090】
2.フレッシュクリームの平均脂肪球径測定
上述のフレッシュクリームの平均脂肪球径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製SALD−2000)を用いて測定したところ、その平均脂肪球径は4.0μm(標準偏差:0.28μm)であった。
【0091】
(実施例2)
1.小さい平均脂肪球径を有するフレッシュクリームの製造
以下の手順に従って、通常のフレッシュクリームの平均脂肪球径よりも小さな平均脂肪球径を有するフレッシュクリームを製造した。
【0092】
(1)
先ず、遠心分離機としてウエストファリアセパレーター社製のエレクレムF−3を用い、その遠心分離機に5.3L/分の投入流量(処理速度)で生乳を投入しながら、分離温度:50℃、遠心加速度:1700G(7000rpm)、軽液を分離する流量:0.5L/分の条件下で生乳の遠心分離処理を実施した。その結果、45重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリーム(軽液)および脱脂乳(重液)を得た。
【0093】
(2)
次に、先に得られたフレッシュクリーム(軽液)と脱脂乳(重液)を混合して、15重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(1B)を調製した。
【0094】
(3)
次いで、分離温度:30℃、遠心加速度:550G(4000rpm)、軽液を分離する流量:3.9L/分の条件下で、乳原料液(1B)を遠心分離処理し、7重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(2B重)(重液)を得た。
【0095】
(4)
続いて、分離温度:30℃、遠心加速度:550G(4000rpm)、軽液を分離する流量:2.3L/分の条件下で、乳原料液(2B重)を遠心分離処理し、12重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(3B軽)(軽液)を得た。
【0096】
(5)
さらに続いて、分離温度:48℃、遠心加速度:1700G(7000rpm)、軽液を分離する流量:1.2L/分の条件下で、乳原料液(3B軽)を遠心分離処理し、46重量%の乳脂肪率を有する乳原料液(4B軽)(軽液)を得た。
【0097】
(6)
そして、乳原料液(4B軽)と脱脂乳を混合して、38重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリームを調製した。最後に、このフレッシュクリームを、加熱温度:120℃、加熱時間:15秒の条件下で加熱殺菌してから、均質化せずに冷却(5℃)した。その結果、38重量%の乳脂肪率および5.4重量%の無脂乳固形分率を有するフレッシュクリームが得られた。
【0098】
2.フレッシュクリームの平均脂肪球径測定
上述のフレッシュクリームの平均脂肪球径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製SALD−2000)を用いて測定したところ、その平均脂肪球径は2.7μm(標準偏差:0.14μm)であった。
【0099】
(比較例1)
1.通常のフレッシュクリームの製造
以下の手順に従って、通常のフレッシュクリームを製造した。
【0100】
(1)
先ず、遠心分離機としてウエストファリアセパレーター社製のエレクレムF−3を用い、その遠心分離機に5.3L/分の投入流量(処理速度)で生乳を投入しながら、分離温度:50℃、遠心加速度:1700G(7000rpm)、軽液を分離する流量:0.5L/分の条件下で生乳の遠心分離処理を実施した。その結果、45重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリーム(軽液)および脱脂乳(重液)を得た。
【0101】
(2)
そして、フレッシュクリーム(軽液)を、加熱温度:120℃、加熱時間:15秒の条件下で加熱殺菌してから、均質化せずに冷却(5℃)した。その結果、45重量%の乳脂肪率および4.9重量%の無脂乳固形分率を有するフレッシュクリームが得られた。
【0102】
2.フレッシュクリームの平均脂肪球径測定
上述のフレッシュクリームの平均脂肪球径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製SALD−2000)を用いて測定したところ、その平均脂肪球径は3.1μm(標準偏差:0.18μm)であった。
【0103】
(比較例2)
1.通常のフレッシュクリームの製造
以下の手順に従って、通常のフレッシュクリームを製造した。
【0104】
(1)
先ず、遠心分離機としてウエストファリアセパレーター社製のエレクレムF−3を用い、その遠心分離機に5.3L/分の投入流量(処理速度)で生乳を投入しながら、分離温度:50℃、遠心加速度:1700G(7000rpm)、軽液を分離する流量:0.5L/分の条件下で生乳の遠心分離処理を実施した。その結果、45重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリーム(軽液)および脱脂乳(重液)を得た。
【0105】
(2)
そして、フレッシュクリーム(軽液)と脱脂乳(重液)を混合して、38重量%の乳脂肪率を有するフレッシュクリームを調製した。最後に、このフレッシュクリームを、加熱温度:120℃、加熱時間:15秒の条件下で加熱殺菌してから、均質化せずに冷却(5℃)した。その結果、38重量%の乳脂肪率および5.4重量%の無脂乳固形分率を有するフレッシュクリームが得られた。
【0106】
2.フレッシュクリームの平均脂肪球径測定
上述のフレッシュクリームの平均脂肪球径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製SALD−2000)を用いて測定したところ、その平均脂肪球径は3.1μm(標準偏差:0.18μm)であった。
【0107】
(試験例1)
「実施例1で製造されたフレッシュクリーム(以下「発明品A」という。)」と「比較例1で製造されたフレッシュクリーム(以下「対照品A」という。)」の物性の比較表を表1に示した。
【0108】
【表1】
【0109】
乳化安定性値とは、発明品A(100g)および対照品A(100g)それぞれをビーカー(200mL)に入れて常温(25℃)において120回/分の速度で振とうしたときに、対照品Aが凝固する所要時間を100として、発明品Aが凝固する所要時間を相対的に算出した数値である。
【0110】
ホイップ時間とは、7重量%の砂糖を有するフレッシュクリームを家庭用のハンドミキサーでホイップしたときに最適なホイップ(起泡)の状態に達するまでの所要時間である。
【0111】
オーバーランは、フレッシュクリームの容積の増加率(増加の割合)であって、次式で算出される。
【0112】
([一定容積のクリームの重量]−[起泡後の一定容積のクリームの重量])
÷[起泡後の一定容積のクリームの重量]×100[%]
【0113】
戻り値とは、一定の寸法の容器に入れたホイップクリームの針入度を100として、そのホイップクリームを5℃、24時間で静置した後の針入度を相対的に算出した数値である。この戻り値が小さい程、最適なホイップの状態が維持されており、物性が良好である。
【0114】
保形性値とは、ホイップ直後のホイップクリームを密閉容器に花絞りした際の高さを100として、そのホイップクリームを5℃で24時間、および、15℃で24時間静置した後の高さを相対的に表した数値である。この保形性値が大きい程、最適なホイップの状態が維持されており、物性が良好である。
【0115】
発明品Aは、対照品Aに比べて乳化安定性値が半減していたが、商品の流通上は問題がない数値であった。そして、発明品Aは、対照品Aと比べると、オーバーランが僅かに低下していたが、使用上は問題がない数値であった。なお、発明品Aは、対照品Aに比べてホイップ時間、戻り値、5℃における保形性値、15℃における保形性値は同程度であり、何れも良好な数値であった。この現象は、フレッシュクリームの平均脂肪球径を大きく調整したために見られたと考えられた。
【0116】
発明品Aと対照品Aの風味を比較して、図1に示した。風味の評価では、フレッシュクリームの風味に敏感な専門パネルの18名で官能検査を実施してもらって1〜5の評価点を付けてもらった。なお、風味は、この評価点を人数で平均することによって求められる。
【0117】
発明品Aは、対照品Aに比べて、乳脂肪感の強さ、濃厚感(コク)の強さが有意に高かった。そして、発明品Aは、対照品Aに比べてトップに感じる乳風味の強さ、後味の乳風味の強さが高かった。また、発明品Aは、対照品Aに比べて卵のような風味の強さ、硫黄臭の強さが低かった。すなわち、発明品Aは、対照品Aに比べて、総合評価が高くなり、風味が改良されていた。この現象は、フレッシュクリームの平均脂肪球径を大きく調整したために見られたと考えられた。
【0118】
(試験例2)
「実施例2で製造されたフレッシュクリーム(以下「発明品B」という。)」と「比較例2で製造されたフレッシュクリーム(以下「対照品B」という。)」の物性の比較表を表2に示した。なお、これらのフレッシュクリームの乳化安定性値、ホイップ時間、オーバーラン、戻り値、保形性値は、試験例1と同様に評価して算出した。
【0119】
発明品Bは、対照品Bに比べて、乳化安定性値が1.5倍以上に向上すると共に、オーバーランも向上していた。そして、発明品Bは、対照品Bに比べて、戻り値が低下していた。なお、発明品Bのホイップ時間、5℃における保形性値、および15℃における保形性値は、対照品Bと同程度であり、何れも良好な数値であった。この現象は、フレッシュクリームの平均脂肪球径を小さく調整したために見られたと考えられた。
【0120】
【表2】
【0121】
発明品Bの風味と対照品Bの風味を比較した。風味の評価では、試験例1と同様に官能検査が実施された。発明品Bの風味は対照品Bの風味と同程度であったが、対照品BBよりも発明品Bの方に、よりスッキリ感を感じた専門パネルが僅かながら多かった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係るフレッシュクリームの製造方法は、脂肪球被膜の破壊を抑制または防止しながら、平均脂肪球径(脂肪球径の平均値)を調整することができるという特徴を有し、商品流通上問題とならない程度の乳化安定性を有する濃厚な風味のフレッシュクリームや、スッキリした風味のフレッシュクリームを商業的な規模で提供することができる。
図1