(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761807
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】高品質薄膜を形成するための周期的連続処理
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20200917BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20200917BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20200917BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20200917BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20200917BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/31 B
H01L21/314 A
C23C16/42
C23C16/56
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-544598(P2017-544598)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公表番号】特表2018-512727(P2018-512727A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】US2016014004
(87)【国際公開番号】WO2016137606
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】62/119,714
(32)【優先日】2015年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リャン, チンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リー, チュン チャン
(72)【発明者】
【氏名】クオ, チンルイ
(72)【発明者】
【氏名】スリニバサン, ムクン
【審査官】
鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−259156(JP,A)
【文献】
特開平11−135622(JP,A)
【文献】
特開平11−335850(JP,A)
【文献】
特開2006−019366(JP,A)
【文献】
特開2009−135450(JP,A)
【文献】
特開2009−152303(JP,A)
【文献】
特開2010−153859(JP,A)
【文献】
特開2011−066187(JP,A)
【文献】
特表2008−537848(JP,A)
【文献】
特表2009−539265(JP,A)
【文献】
特表2009−539266(JP,A)
【文献】
特表2010−507259(JP,A)
【文献】
特表2012−533890(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/048337(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0238108(US,A1)
【文献】
米国特許第07790633(US,B1)
【文献】
米国特許第07888273(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/42
C23C 16/56
H01L 21/31
H01L 21/314
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための方法であって、
基板の特徴の中に、厚さを有する第1の流動性膜を形成することであって、前記厚さが前記特徴の高さより小さく、
前記特徴の中に前記第1の流動性膜を堆積させることと、
前記基板を酸素含有プラズマに曝すことと、
前記基板を紫外線に曝すことと
を含む、第1の流動性膜を形成することと、
第1の流動性膜の上に第2の流動性膜の一又は複数の層を形成するために、前記第1の流動性膜を形成する処理を繰り返すことであって、前記第1の流動性膜及び前記第2の流動性膜の一又は複数の層は全体で前記特徴の前記高さ以上の膜厚を有している、繰り返すことと、
前記第1の流動性膜及び前記第2の流動性膜をアニール処理することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の流動性膜を堆積させることが、
前記基板が配置される基板処理チャンバの中の処理領域にケイ素含有前駆体を供給することと、
プラズマ活性化ガスを形成するために遠隔プラズマシステムにガスを供給することと、
前記プラズマ活性化ガスの少なくとも一部を前記処理領域内に導入することと、
前記特徴の中に前記第1の流動性膜を形成するために、前記プラズマ活性化ガス及び前記ケイ素含有前駆体を反応させることと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板を前記酸素含有プラズマに曝すことが、前記基板を窒素含有プラズマに曝すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板を前記酸素含有プラズマに曝すことが、前記基板を炭素含有プラズマに曝すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板を紫外線に曝すことは、前記基板が紫外線に曝される間、前記基板を100℃未満に維持されたペデスタルの上に位置付けることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の流動性膜を形成することを繰り返すときに、前記第1の流動性膜及び前記第2の流動性膜の一又は複数の層の各々の厚さが、前記処理の繰り返し毎に増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の流動性膜及び前記第2の流動性膜の一又は複数の層が各々、同一の厚さを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基板の中に特徴を充填するための方法であって、
前記特徴の中に厚さを有する第1の流動性誘電体膜を形成することであって、前記厚さが前記特徴の高さより小さく、
前記基板が配置される処理チャンバの中の処理領域にケイ素前駆体を供給することと、
プラズマを形成することと、
前記プラズマに曝されたガスの少なくとも一部を前記処理領域内に導入することと
を含む、第1の流動性誘電体膜を形成することと、
前記基板を酸素含有プラズマに曝すことと、
前記基板を紫外線に曝すことと、
前記第1の流動性誘電体膜の上に流動性誘電体膜の追加の層を形成するために、前記第1の流動性誘電体膜を形成することを繰り返すことであって、前記第1の流動性誘電体膜及び前記流動性誘電体膜の追加の層は全体で、前記特徴の高さ以上の膜厚を有する膜スタックを形成する、繰り返すことと、
前記膜スタックをアニール処理することと
を含む方法。
【請求項9】
前記膜スタックが均一の密度を有している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流動性誘電体膜を形成することを繰り返すときに、前記流動性誘電体膜の追加の層の各々の厚さが、前記第1の流動性誘電体膜の形成の繰り返し毎に増加する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
層を形成する方法であって、
第1の基板処理チャンバ内に配置された、パターン形成された基板の上に酸素を含まない前駆体を流すことと、
前記パターン形成された基板の上に厚さを有する第1の層として前記前駆体の少なくとも一部を堆積させることであって、前記厚さが前記基板の上の特徴の深さより小さい、堆積させることと、
前記パターン形成された基板をプラズマに曝すことと、
紫外線源を備えた第2の基板処理チャンバ内に前記パターン形成された基板を移送することと、
前記紫外線源によって供給された紫外線に前記パターン形成された基板を曝すことと、
前記第1の層の上に追加の層を形成するために、前記第1の層を形成することを繰り返すことであって、前記第1の層及び前記追加の層は全体で、均一の密度及び前記特徴の高さ以上の膜厚を有する膜スタックを形成する、繰り返すことと、
前記膜スタックをアニール処理することと
を含む方法。
【請求項12】
前記方法が連続真空下で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラズマが、酸素含有プラズマ、窒素含有プラズマ、又は炭素含有プラズマである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記パターン形成された基板を前記紫外線に曝す間、前記パターン形成された基板が100℃未満で維持されたペデスタルの上に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の層を形成することの各連続的繰り返しについて、前記第1の層及び前記追加の層の各層の厚さが前の繰り返しにおける前記層の厚さより大きい、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、一般に、半導体基板の上に膜を形成するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの形状寸法は、数十年前に半導体デバイスが導入されて以来、サイズが著しく減少している。現代の半導体製造機器は、45nm、32nm及び28nmの特徴サイズを有するデバイスを定期的に製作し、更に小さな形状寸法を有するデバイスをつくるために、新たな機器が開発及び実施されている。デバイスサイズの減少は、形成されたデバイス内の幅が減少した構造的特徴をもたらす。幅が狭い特徴として、誘電体材料で特徴を充填することはより困難になる。誘電体材料堆積処理は、特徴を完全に充填せずに、基板上に形成された特徴の中にシーム又はボイドを生成する傾向がある。高度な間隙充填の適用は、流動可能な化学気相堆積処理を用いて、平坦化された誘電体膜を形成し、同時に特徴内のボイド又はシームの形成を防止する。
【0003】
間隙充填適用のための典型的な処理は、低温でのバルク膜堆積ステップ、バルク膜堆積後の膜組成変換のための熱硬化処理又は非熱硬化処理、及び高温での最終高密度化処理を含む。バルク膜処理および高密度化処理の間、硬化の行為は、膜に異なる材料特性を有する領域を形成させる可能性があり、これは膜品質の変動につながることが多い。
【0004】
特に、特徴がバルク充填されている場合、硬化により、特徴の上に形成された堆積層の表面付近で、架橋結合及び高密度化が生じる。しばしば「クラスト形成(crusting)」と呼ばれるこの表面現象は、紫外線が特徴のより深くに浸透するのを防ぎ、よって、堆積した材料層全体にわたり完全な架橋結合及び高密度化を防止する。堆積した層の異なる領域における「硬化」の変化は、堆積した層の光学的、物理的及び電気的特性における勾配、例えば堆積した層の厚さにわたる誘電率の勾配を形成し、デバイスの電気的性能とデバイスの歩留まりに影響を与える可能性がある。
【0005】
また、より小型の新しい電気デバイスを配置することにより、高機能ノードで誘電体材料を堆積させるための熱収支が削減される。従来のバルク膜堆積は、300℃から1100℃の範囲を取り得る温度で最終的な高密度化処理を必要とする。このような高温は、これらの高機能ノードで使用されるセレンゲルマニウム(Si
xGe
y)及びIII−V族化合物のような高機能材料に損傷を与え得る。
【0006】
したがって、高機能ノードで使用される誘電体層を堆積させ形成するための改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載の実施態様は、一般に、間隙充填用薄膜の堆積及び処理に関する。より具体的には、本明細書に記載の実施態様は、薄膜の周期的な連続堆積及び硬化に関する。1つの実施態様では、薄膜の周期的な連続堆積及び硬化方法が提供される。方法は、低温で膜の薄い層を堆積させることと、紫外線下で堆積させた膜を硬化させることと、基板を最終的な高密度化処理に曝す前に連続的に複数回繰り返すこととを含む。
【0008】
1つの実施態様では、基板を処理するための方法は、基板の特徴の中に、厚さを有する第1の流動性膜を形成することであって、厚さが特徴の高さより小さく、特徴の中に第1の流動性膜を堆積させることと、基板を酸素含有プラズマに曝すことと、基板を紫外線に曝すこととを含む、第1の流動性膜を形成することと、第1の流動性膜の上に第2の流動性膜の一又は複数の層を形成するために、第1の流動性膜を形成する処理を繰り返すことであって、第1の流動性膜及び第2の流動性膜の一又は複数の層は全体で特徴の高さ以上の膜厚を有している、繰り返すこととを含むことができる。
【0009】
別の実施態様では、基板の中に特徴を充填するための方法は、少なくとも1つの特徴の中に厚さを有する流動性誘電体膜を形成することであって、厚さが特徴の高さより小さく、基板が配置される処理チャンバの中の処理領域にケイ素前駆体を供給することと、プラズマを形成することと、プラズマに曝されたガスの少なくとも一部を基板処理領域内に導入することと、基板を酸素含有プラズマに曝すこととを含む、流動性誘電体膜を形成すること、基板を紫外線に曝すことと、流動性膜の上に流動性膜の追加の層を形成するために、先述のステップを繰り返すことであって、幾つかの層は全体で、少なくとも1つの特徴の高さ以上の膜厚を有する流動性膜スタックを形成する、繰り返すこととを含むことができる。
【0010】
別の実施態様では、層を形成する方法は、第1の基板処理チャンバ内に配置された、パターン形成された基板の上に酸素を含まない前駆体を流すことと、パターン形成された基板の上に厚さを有する膜を堆積させることであって、厚さが基板の上の特徴の深さより小さい、堆積させることと、パターン形成された基板をプラズマに曝すことと、紫外線源を備えた第2の基板処理チャンバ内にパターン形成された基板を移送することと、紫外線源によって供給された紫外線にパターン形成された基板を曝すことと、流動性膜の上に流動性膜の追加の層を形成するために、先述のステップを繰り返すことであって、幾つかの層は全体で、均一の密度及び少なくとも1つの特徴の高さ以上の膜厚を有する流動性膜スタックを形成する、繰り返すこととを含むことができる。
【0011】
別の実施態様では、処理システムは、第1のチャンバと結合したケイ素含有前駆体源及びプラズマ源を備える第1のチャンバと;紫外線源の源を備える第2のチャンバと;少なくとも1つの特徴の中に厚さを有する流動性膜を形成することであって、厚さが特徴の高さより小さく、流動性膜を形成する処理が流動性膜を特徴の中に堆積させることを含む、形成することと、基板を酸素含有プラズマに曝すことと、基板を紫外線源からの紫外線に曝すことと、形成された流動性膜の上に流動性膜の追加の層を形成するために流動性膜形成の処理を繰り返すことであって、形成された流動性膜及び一又は複数の追加の層の各々が類似の厚さを有しており、形成された流動性膜及び一又は複数の追加の膜が全体で少なくとも1つの特徴の高さ以上の膜厚を有している、繰り返すこととを含む方法を実行するためのコンピュータで実行可能な命令を有するメモリとを含むことができる。
【0012】
本デバイス及び方法の上記の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約した本デバイス及び方法のより詳細な説明は、実施態様を参照することによって得られ、これらの実施態様のいくつかが添付の図面に示されている。しかしながら、本デバイス及び方法は他の等しく有効な実施態様も許容し得るため、添付の図面は本デバイス及び方法の典型的な実施態様のみを示しており、したがってその範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に記載の実施態様による周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様を示すフローチャートである。
【
図2】本明細書に記載の実施態様による、基板処理システムの1つの実施態様の上面概略平面図である。
【
図3】A−Eは、本明細書に記載の実施態様による周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様に従って充填されているトレンチの一連の断面概略図である。
【
図4】本明細書に記載の実施態様による周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様に従って充填された特徴の断面概略図である。
【
図5】Aは、従来のバルク充填堆積及び硬化処理により堆積した薄膜の可視図であり、Bは、周期的な連続堆積及び硬化処理の1つの実施態様により堆積した薄膜の可視図である。
【
図6】深さの関数としての従来のバルク充填で堆積及び硬化した膜にわたる屈折率を、深さの関数としての本明細書に記載された周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜の屈折率と比較するグラフである。
【
図7】深さの関数としての従来のバルク充填で堆積及び硬化した膜にわたる消光係数を、深さの関数としての本明細書に記載された周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜の消光係数と比較するグラフである。
【
図8】従来のバルク充填堆積及び硬化方法により堆積させた膜の7日後の膜安定性を、周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様により堆積させた膜の7日後の膜安定性と比較するグラフである。
【
図9】周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜と比較された、従来のバルク充填堆積及び硬化方法によって堆積させた膜の表面からの変化する深さでの湿式エッチング速度比(WERR)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解を容易にするため、可能な限り、図面に共通する同一の要素を示すのに同一の参照番号を使用した。1つの実施態様の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実施態様に有益に組み込まれることがあると想定されている。
【0015】
本明細書に記載の実施態様は、一般に、改良された光学的、物理的、及び電気的特性を有する集積回路デバイス内で層を形成するための周期的堆積及び硬化処理を提供する。より具体的には、本明細書に記載の実施態様は、基板上に形成された特徴を充填するための周期的な連続堆積及び硬化処理を提供する。基板上に形成された集積回路での特徴の電気絶縁を確実にするために、特徴が充填される。本明細書に記載の処理は、基板上に形成された特徴内に作成されるボイド又はシームの低減に有効であった流動性膜堆積処理を使用し得る。しかしながら、流動性膜を使用する従来の間隙充填方法は、典型的には、不所望な物理的特性及び電気的特性を有する誘電体材料を製作する。特に、膜密度は均一でなく、膜の誘電率は膜の厚さ全域で変化し、膜の安定性は理想的でなく、膜の屈折率は一致せず、洗浄処理中の希フッ酸(DHF)に対する耐性は従来の流動性膜において理想的でない。本明細書に記載の周期的連続堆積及び硬化処理は、改善された材料特性、改善されたデバイス歩留り及び増加した使用可能な寿命を有するより高品質の膜を成形するために、これらの問題に対処する。
【0016】
幾つかの実施態様では、堆積した層を通して物理的特性及び電気的特性の変化を防止するために、周期的な連続処理を使用して、内部に形成された特徴を有する薄い流動性の膜層を基板の上に堆積させる。流動性膜の薄層堆積後に、基板は、オプションで、プラズマ、ラジカル含有ガス、ガス又はこれらの組み合わせに事前に浸漬され、硬化処理用に基板が準備される。次いで、基板が硬化処理に曝されるが、この硬化処理は、紫外線の源を使用して実行され得、結果的に薄層に架橋結合をもたらす。次に処理は、特徴が充填されるまで、周期的に繰り返される。基板上に形成された特徴を充填するための膜の連続積層により、基板上に形成された特徴内の架橋結合、密度及び誘電率値が改善され、基板上に形成された半導体デバイスの性能及び機能性が向上する。
【0017】
図1は、周期的な連続堆積及び硬化処理を使用して誘電体層を形成する方法を示すフローチャートである。ブロック102では、特徴を含む基板が、処理チャンバの基板処理領域内に位置付けられる。基板は、ケイ素基板、ケイ素−ゲルマニウム含有基板、若しくはIII−V化合物含有基板、又は他の有益な半導体基板材料であり得る。基板の上に形成される特徴は、トレンチ、ビア、間隙、スペーサ、他の分離特徴を含み得る。通常の特徴充填適用では、誘電体材料で特徴を充填するために、膜が基板の表面全域に流される。半導体形状寸法のサイズが小さくなるにつれて、基板上の特徴の空間寸法が減少するため、特徴の幅は、特徴の深さが同一のままである又は増加したとしても縮小する。誘電体材料が特徴を完全に充填する前に最上部でピンチオフ又は詰まりを起こしやすいので、特徴の深さ対幅の比が増加すると、特徴を従来の誘電体材料で充填する際に課題が生じる。これにより、誘電材料の表面下の特徴にボイド又はシームが形成され、半導体製品の完全性が損なわれる。本明細書に記載の方法は、この必要性に対処する。
【0018】
ブロック104では、基板上に形成された特徴の上に誘電体層を堆積させるために、一又は複数の前駆体が、堆積チャンバの基板処理領域内に導入される。幾つかの実施態様では、一又は複数の前駆体は、ケイ素含有前駆体などの前駆体を形成する誘電体材料である。誘電体材料前駆体の例は、シラン、ジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリエトキシシラン(TES)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチル−ジシロキサン(TMDSO)、テトラ−メチル シクロテトラシロキサン(TMCTS)、テトラメチル−ジエトキシ−ジシロキサン(TMDDSO)、ジメチル−ジメトキシ−シラン(DMDMS)、又はこれらの組み合わせを含むケイ素含有前駆体である。窒化ケイ素堆積用の追加の前駆体は、トリシリルアミン(TSA)及びジシリルアミン(DSA)を含むシリル−アミン及びその誘導体などのSi
xN
yH
z−含有前駆体、Si
xN
yH
zO
zz−含有前駆体、Si
xN
yH
zCl
zz−含有前駆体、又はこれらの組み合わせを含む。誘電体材料は、約1sccmから約5000sccmの流量で処理チャンバ内へ供給され得る。処理前駆体は、約1sccmから約1000sccmの流量で処理チャンバ内へ供給され得る。
【0019】
一又は複数の前駆体はまた、水素含有化合物、酸素含有化合物、窒素含有化合物、又はこれらの組み合わせを含み得る処理前駆体を含み得る。適した処理前駆体の例は、H
2、H
2/N
2混合物、NH
3、NH
4OH、O
3、O
2、H
2O
2、N
2、N
2H
4蒸気を含むN
xH
y化合物、NO、N
2O、NO
2、水蒸気、又はこれらの組み合わせを含むグループから選択された一又は複数の化合物を含む。処理前駆体は、N
*及び/又はH
*及び/又はO
*含有ラジカル又はプラズマ、例えば、NH
3,NH
2*,NH
*,N
*,H
*,O
*,N
*O
*など、又はこれらの組み合わせを含むように、RPSユニットの中などで、プラズマ励起されてもよい。処理前駆体は、代替的には、本明細書に記載の前駆体のうちの一又は複数を含み得る。幾つかの構成では、処理チャンバに供給された一又は複数の前駆体は、約0.1から約100の間の誘電体材料前駆体対処理前駆体の比率を含む混合ガスを含む。一又は複数の不活性ガスが、処理チャンバに供給される混合ガスと共に含まれることもある。不活性ガスは、Ar、He、Xeなどの希ガスを含み得るが、これらに限定されない。不活性ガスは、約1sccmから約50000sccmの間の流量比で処理チャンバに供給されうる。処理中にチャンバの処理領域の処理圧力は、約0.10Torrから約10Torrの間、例えば、約0.1Torrから約1Torr、約0.5Torrから約0.7Torrまでなどに維持され得る。
【0020】
1つの実施態様では、堆積処理中の基板温度は、所定の範囲に維持される。1つの実施態様では、基板温度は、基板上に形成された誘電体材料が、流動可能となって基板上に形成される特徴内に形成されるように、約200℃未満、例えば約100℃未満などに維持される。1つの実施態様では、処理チャンバの中の基板温度は、およそ室温から約200℃まで、例えば、約30℃から約80℃までなど約100℃未満の範囲で維持される。
【0021】
幾つかの実施態様では、堆積中にプラズマを維持するために、RF電力が印加される。RF電力は、約100kHzから約100MHzの間、例えば、約350kHz又は約13.56MHzなどで供給される。代替的には、約27MHzから約200MHzの間の周波数を供給するために、VHF電力が利用され得る。1つの実施態様では、RF電力は、約1000ワットから約10000ワットの間で供給され得る。
【0022】
ブロック104で実行される処理の1つの例では、ケイ素含有前駆体が処理チャンバに供給され得、基板が処理チャンバ内に維持されている間に、RFプラズマが形成される。前駆体は、炭素含有前駆体であり得る。
【0023】
ブロック106では、最小厚の薄膜層が基板上に堆積する。最小厚は、膜を流動可能にするのに十分であり、層が特徴の第1部分のみを充填するのに十分薄い。次に前駆体の流れが停止し、残留物ガスが、処理チャンバの基板処理領域から除去される。本出願に適した膜は、とりわけ、酸化ケイ素(SiO
x)、窒化ケイ素(SiN
x)、炭化ケイ素(SiC
x)、炭窒化ケイ素(Si
xC
yN
z)、又は多結晶シリコン(Si)を含み得る。流動性膜には粘着性があるので、基板の表面を確実に完全に覆うためには、ある程度厚さがなければならない。堆積した膜の各層は、膜の流動性を確実にするために最小厚を有していなければならない。1つの実施態様では、層の厚さは、50オングストロームから150オングストロームの間である。当業者は、層の厚さが、特徴のサイズ及び堆積している膜の性質を含む幾つかの要因により決まることを理解するだろう。
【0024】
ブロック108では、プラズマは、オプションで、基板処理領域内に導入される。場合によっては、プラズマは、酸素含有プラズマであり得る。酸化物膜は、紫外線に対して透明であり、酸化物膜が下位の膜層の最上部内に堆積した後に、紫外線はなおも堆積した膜層に浸透し、下位の膜層に到達し得る。
【0025】
ブロック110では、基板は、基板処理領域から硬化チャンバまで移送される。移送ステップ中に、不活性環境が維持され、基板は不所望な汚染物質に曝されない。真空状態の保存は、各サイクルのこの段階での薄膜層の望ましくない酸化を防止するのに有用であると理解される。酸化は、生じる誘電体膜の接着特性又は電気特性に悪影響を与えることがある。
【0026】
ブロック112では、基板は、硬化チャンバの光源からの低温の紫外線に曝される。紫外線は、200−450ワットのランプから供給され、100nmから250nmまでの波長を有し得る。曝露は、1分の持続時間を有し得る。しかしながら、当業者であれば、UV光のワット数及び波長並びに露光の持続時間は、堆積した膜の性質及び厚さにより決まることを理解するだろう。
【0027】
ブロック102に戻り、基板は、堆積型処理チャンバの基板処理領域に戻され得る。移送ステップ中に、不活性環境は、基板が汚染物質に曝されないレベルに維持される。更に、真空状態の保存は、各サイクルのこの段階での薄膜層の望ましくない酸化を防止するのに有用である。これは、追加の層の堆積、プラズマによる前処理、及びUVによる硬化の全サイクルを再開させ、その後そのサイクルが再び始まる。サイクルは、所望数の層を堆積及び硬化させるまで繰り返される。1つの実施態様では、サイクルは20回繰り返され、20の層が基板上に堆積する。当業者は、サイクル数が特徴の深さ、膜層の厚さ、及び他の要因次第で変わることを理解するだろう。
【0028】
サイクルが所望の回数繰り返された後に、ブロック114で、層が堆積した膜は、熱高密度化のために処理される。酸化物膜の場合、熱高密度化は、炉アニール処理の使用により実行される。
【0029】
図2は、1つの実施態様による、膜層を堆積及び硬化させるための基板処理システム200を示す。
図2に示すように、一対の前面開口型統一ポッドが基板を供給するが、それらの基板は、基板処理チャンバ208a−fの1つの中に載置される前に、ロボットアーム204によって受容され、低圧力保持エリア206内に載置される。第2のロボットアーム210は、保持エリア206から基板処理チャンバ208a−208fへ、及び基板処理チャンバ208a−208fから、基板を搬送するために使用され得る。
【0030】
基板処理チャンバ208a−208fは、SiO、SiN、SiC、SiCN、多結晶シリコンなどの流動性膜、又は基板上に形成された特徴の中の他の膜を堆積、アニール処理、硬化及び/又はエッチングするための一又は複数のシステム構成要素を含み得る。1つの構成において、2対の処理チャンバ(例えば、208c‐208d及び208e‐208f)が、特徴内に流動性膜を堆積させ、膜を事前に浸漬するために使用されてもよく、第3の対の処理チャンバ(例えば、208a‐208b)が、UV処理を実行するなど、堆積した膜を処理するのに使用されてもよい。この基板処理システムの使用により、一定の真空環境内での方法全体の実行が可能になる。堆積及び硬化処理を実行するために一体的な真空システムを使用することにより、周期的処理の進行中に、薄膜層の不所望な酸化が回避される。
【0031】
図3A−3Eは、本明細書に記載の実施態様による周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様に従って充填されている特徴の一連の断面概略図である。
図3Aは、周期的な連続堆積及び硬化処理開始前の特徴310の断面概略図を示す。基板300は、ケイ素基板、ケイ素−ゲルマニウム含有基板、III−V化合物含有基板、又は別の適切な基板であり得る。基板300は、トレンチ、ビア、間隙、又は他の分離特徴などの少なくとも1つの特徴310を有している。基板300は、堆積処理連続中に基板支持体320上に配置される。
【0032】
図3Bでは、第1の材料層330が基板300の上に配置される。第1の材料層330は、SiO
x、SiN
x、SiC
x、Si
xC
yN
z、多結晶シリコン、又は他の膜などのケイ素含有層であり得る。材料層は、基板支持体320及び基板300が配置された基板処理領域内に前駆体、蒸気及び/又はガスを流すことによって配置され得る。前駆体、蒸気又はガスは、先ほど議論されたように、ケイ素及び窒素前駆体、若しくはケイ素及び水素前駆体、又はケイ素、窒素及び水素含有前駆体などの炭素を含まないケイ素前駆体、又は炭素含有前駆体を含む別の前駆体であり得る。
【0033】
第1の材料層堆積中の基板温度は、100℃未満であり得る。当業者は、膜堆積中の基板温度がケイ素前駆体及び使用されるプラズマ蒸気若しくはガス次第で変化し得ることを理解するだろう。
【0034】
第1の材料層330は、厚さL
1を有している。特徴それ自体は、深さFを有している。厚さL
1は、少なくとも膜が流動可能となるのに十分な最小厚であり、層が基板上の一又は複数の特徴310の第1の部分だけを充填するのに十分なほど薄い。要するに、厚さL
1は、深さF未満である。特徴の深さF未満である材料層厚L
1を提供することによって、UV硬化ステップ中の層内のより良好な光浸透性が可能になり、したがって、より均一の膜特性につながるだろう。例えば、材料層は、50Åから150Åの間、例えば、100Åの厚さを有し得る。より薄い層は、本明細書で議論されるように、誘電体膜の光学的特性及び電気的特性の均一性を促進する傾向があるので、より高品質の膜を提供するだろうと考えられる。しかしながら、より厚い層は、スループットを増加させるが、前述のバルク充填堆積処理の問題を危険にさらすだろう。最小厚を有する第1の材料層330が基板上及び一又は複数の特徴310内に堆積した後に、前駆体及びガスの流れが停止し、残った前駆体及びガスが基板処理領域からポンプで吸い出される。
【0035】
第1の材料層330は、次に酸素含有プラズマで事前に処理され、第1の材料層330の硬化準備が行われる。酸素含有プラズマは、原子酸素(O)、分子酸素(O
2)、オゾン(O
3)、酸化水素(例えば、H
2O、H
2O
2)、窒素酸化物(例えば、NO、NO
2、N
2O)、又は他の酸素含有プラズマ核種のうちの一又は複数を含み得る。酸素含有プラズマはまた、原子酸素(O)、水酸化物(OH)、並びに他の核種などの酸素含有核種又はラジカル酸素及びヒドロキシル核種のイオンを含み得る。
【0036】
図3Cでは、基板300及び第1の材料層330は、低温の紫外線340に曝される。紫外線に対する曝露は、基板処理領域から分離されている硬化チャンバ内で発生し得る。紫外線への曝露中に、基板は、100℃以下の温度に維持されたペデスタル又は基板支持体上に配置され得る。紫外線340への曝露により、第1の材料層330に架橋結合が生じる。紫外線340への曝露に続き、基板が基板処理領域から硬化領域に早期に移動された場合に、基板は次に基板処理領域に戻される。
【0037】
図3Dでは、厚さL
2を有する第2の材料層350は、以前に堆積及び硬化した第1の材料層330の最上部に堆積する。幾つかの実施態様では、第2の材料層350は、第1の材料層330を堆積させるために使用された同一の前駆体及びガスを使用して堆積させられ得る。第2の材料層350の厚さL
2は、第1の材料層330の厚さL
1以下であっても厚さL
1以上であってもよい。以下で検討される理由から、第2の材料層厚L
2は、第1の材料層厚L
1を上回ることが好ましいことがある。第2の材料層350の堆積後に、第2の材料層350は、前述のプロセスに従って酸素含有プラズマで事前に処理され、第2の材料層350の硬化準備が行われる。
【0038】
図3Eでは、基板300並びに第2の材料層350及び第1の材料層330が、前述のプロセスに従って低温の紫外線340に再び曝される。紫外線に対する曝露は、基板処理領域から分離されている硬化チャンバ内で再び発生し得る。紫外線340への曝露により、第2の材料層350に架橋結合が生じる。紫外線への曝露はまた、第2の材料層350下に配置されている第1の材料層330に更なる架橋結合を生じさせ得る。連続した架橋結合が早期に堆積した層で発生し得るので、内部で架橋結合などの材料特性が堆積した膜の深さにわたって変化する勾配が発生し得る。紫外線への曝露時に下層のこの連続した架橋結合を調節するために、連続する各堆積材料層が、その下に堆積した材料層を上回る厚さを有していてもよい。しかしながら、各堆積材料層は、堆積した積層膜スタックの材料特性の均一性を改善するために、流動可能な膜が適切に流れることができるのに必要な最小厚を有すべきである。更に、各連続的堆積材料層は、その下に堆積した層がUV硬化処理に複数回曝されることから保護し得る。この保護効果を高めるために、各連続的堆積材料層は、早期堆積層の過度の硬化を防止するために、その下に堆積した層の厚さを上回る厚さを有し得る。
【0039】
紫外線340への曝露に続き、基板が基板処理領域から硬化領域に早期に移動された場合に、基板は次に、基板処理領域に戻され、ここで追加の材料層が堆積し、事前に処理され、次に硬化のために硬化チャンバに戻され得る。
図3Aから
図3Eは2つの堆積材料層330及び350だけを示しているが、処理は何回も繰り返され得、少なくとも特徴が完全に充填されるまで多くの材料層を堆積させる。処理の結果、物理的、電気的及び材料的特性の均一性が改善され、よってより高品質な膜であるマルチレイヤ堆積膜がもたらされる。
【0040】
図4は、本明細書に記載の実施態様による周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様に従って充填された特徴の断面概略図である。
図4は、少なくとも基板上に形成された特徴を完全に充填するのに必要な
図1に示したステップの繰り返しから生じ得る薄膜の概略図である。基板300及びその一又は複数の特徴310は、少なくとも特徴310が完全に充填された十分なサイクルを通して、周期的な連続堆積及び硬化方法100のステップに曝された。したがって、
図4には4つの材料層330、350、360、370だけが示されているが、当業者は、より多くの層を堆積させ得ることも理解するだろう。更に、材料層330、350、360、370は類似した厚さを有しているように見えるが、材料層330、350、360、370は、代替的には、各材料層が少なくとも流動可能な膜が流れることができるのに必要な最小厚を有している限り、可変厚を有していてもよい。先ほど議論されたように、各材料層の厚さはまた、各連続的材料層が、その下の一又は複数の層を極度の紫外線硬化から保護するよう機能し得るように変化し得る。そのため、各連続的材料層は、その下の層よりも厚いとされ得、よって、材料層370は材料層360より厚く、材料層360は材料層350より厚く、材料層350は材料層330より厚い、などである。
【0041】
図5Aは、従来のバルク充填堆積及び硬化処理の1つの実施態様により堆積した薄膜の可視図であり、
図5Bは、周期的な連続堆積及び硬化処理の1つの実施態様により堆積した薄膜の可視図である。
図5Aは、バルク充填堆積及び硬化処理により製作された膜の特徴内に存在する勾配を示す。
図5Aに示された膜が単一ステップで堆積されるので、硬化処理中に供給された紫外線は、膜深くに浸透せず、架橋結合及び高密度化が表面付近でより完全に発生する。
図5Aの矢印はこの勾配を示し、架橋結合及び高密度化の程度が表面により近い膜の深いところで増加することが示されている。これとは対照的に、
図5Bは、周期的な連続堆積及び硬化処理により提供される、形成された堆積層スタックの材料特性の向上した均一性を示している。膜が薄層に堆積し周期的に硬化するので、架橋結合は、深さに関わらずより一貫している。
図5Bは、10サイクルの堆積及び硬化により提供された向上した均一性を示しているが、薄膜の特定の要求次第で、堆積及び硬化のサイクルはより多くもより少なくもなり得る。
【0042】
膜の深さ全体における薄膜の均一性は、膜の品質の重要な指標である。理想的には、密度は、膜全体で高く均一性があるだろう。1つの実験では、従来のバルク充填堆積方法の1つの実施態様によって堆積させた薄膜の密度が、周期的な連続堆積薄膜の1つの実施態様によって堆積させた薄膜の密度と比較された。硬化前に堆積させた膜の密度は、1.3g/ccと測定された。単一処理バルク充填で堆積した薄膜の密度が1.6g/ccから1.7g/ccと測定され、増加密度は、膜の表面18nm内のみで測定された。周期的に連続堆積した薄膜の密度は、1.9g/ccから2.1g/ccに増加し、向上した密度は、膜の深さを通して均一であった。これらの結果は、向上した均一の密度が周期的な連続堆積及び硬化方法によって達成されたことを実証している。
【0043】
図6は、深さの関数としての従来のバルク充填で堆積及び硬化した膜にわたる屈折率を、深さの関数としての本明細書に記載された周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜の屈折率と比較するグラフである。屈折率は、堆積した膜の密度の指標であり、したがって、より高い屈折率はより高密度の膜を指す。高密度化は、膜の品質、とりわけ酸化物膜などの炉アニールされることになる膜にとって重要である。膜が炉アニールされるとき、膜の密度は増し、結果的に膜層が収縮することになる。炉アニール処理前により高密度化された膜が受ける収縮は限定され、よって受ける応力も限定されることになるだろう。したがって、炉アニールステップ前の膜の高密度化は、最終的な膜の特性を改善させるために重要である。
【0044】
図6において、バルク充填堆積方法を使用して堆積させた膜についての膜の深さにわたり屈折率が試験され、本明細書に記載の周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様に従って堆積させた膜についての膜の深さにわたる屈折率と比較された。膜の深さ全体で、周期的な連続堆積及び硬化処理により堆積させた膜は、単一の堆積及び硬化処理によって堆積させた膜よりも、形成された層スタック全域で大きな屈折率、小さな屈折率変化、ひいては大きな密度の均一性を示す。この場合、単一処理のバルク充填堆積及び硬化処理、並びに周期的な連続堆積及び硬化処理に対して、250nmの光波長について屈折率を測定した。単一サイクルの堆積及び硬化方法(即ち、
図6で「1x」と表示)では、膜の底部の屈折率(約1.9)は、膜の表面の屈折率(約2.2)よりもはるかに低い。20のサイクル周期的な連続堆積及び硬化方法(即ち、
図6で「周期的」と表示)について、屈折率は、膜の深さ全体にわたり変化がはるかに小さく、密度の均一性がより高く、ゆえに膜の品質がより高いことが示されている。更に、屈折率は表面(約2.1)よりも膜の底部(2.3以上)の方がいっそう高かった。より深い層をより多くの回数硬化させるので、この逆効果又は測定された屈折率の様々な形状が観察され、その結果、表面の密度と比較してより深い深度で密度が増加すると考えられる。
【0045】
図7は、深さの関数としての従来のバルク充填で堆積及び硬化した膜にわたる消光係数(k)を、深さの関数としての本明細書に記載された周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜の消光係数と比較するグラフである。消光係数(k)は、膜の中の架橋結合の程度の指標であり、kの値が高いことは架橋結合がより大きいことを示す。この場合、単一処理のバルク充填堆積及び硬化処理、並びに周期的な連続堆積及び硬化処理に対して、250nmの光波長について消光係数を測定した。単一の周期的堆積及び硬化方法(即ち、
図7で「1x」と表示)について、消光係数は、膜全体を通して低く、約0.2から0.3未満の範囲であった。周期的な連続堆積及び硬化方法(即ち、
図7で「周期的」と表示)について、消光係数は、膜全体を通して高く、約0.4から0.5未満の範囲であった。更に、周期的方法によって堆積させた膜は、表面より膜の底部で消光係数がより高いことを実証し、これは、単一の堆積ステップ処理によって堆積させた膜と反対であった。より深い層をより多くの回数硬化させるので、この逆効果又は測定された消光係数の様々な形状が観察され、その結果、表面の架橋結合の程度と比較して、周期的堆積膜のより深い深度で架橋結合が増加すると考えられる。
【0046】
図8は、従来のバルク充填堆積及び硬化方法の1つの実施態様により堆積させた膜の膜安定性を、周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様により堆積させた膜の膜安定性と比較するグラフである。経時的な膜の安定性は、フィルム品質の重要な指標である。より高品質の膜は、空気に曝されると劣化しにくい。1つの実験では、
図8に示されるように、変動する波長で光の吸収を測定するために、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法が使用された。測定は、従来のバルク充填堆積方法によって堆積させた膜と、周期的連続堆積方法によって堆積させた膜とに対して、両方とも膜堆積後の7日で行われた。バルク充填堆積膜は、酸化ケイ素(SiO
x)と相関する波長に追加のピークを有し、バルク充填膜が空気に曝されると劣化することを示している。これに対して、周期的に堆積させた膜は、酸化ケイ素(SiO
x)波長と相関するピークを示さず、周期的堆積は、より安定性があり、空気に曝されると劣化しにくい膜をもたらす。この安定性により、SiN、SiC、SiCN、及び多結晶シリコンなどの酸素を含有しない流動性膜が堆積可能となり、時間及び空気暴露で劣化又は「老化」しない膜を生成する。
【0047】
図9は、周期的な連続堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜と比較された、従来のバルク充填堆積及び硬化方法の1つの実施態様によって堆積させた膜の表面からの変化する深さでの湿式エッチング速度比(WERR)のグラフである。WERRが低いほど、希フッ酸(DHF)に対する耐性が高まることを示し、これは高品質の膜であることを示す。この実験は、500℃での熱高密度化後の薄膜についての100:1のDHFのWERRを比較した。
図9において、上3つの曲線は、種々の膜の深さにわたったバルク充填堆積膜の3つの実施態様のWERRを示している。底部曲線は、周期的堆積膜についてのWERRを示している。1つの深さにおいて、周期的堆積膜は、WERR1.8を示しており、これはバルク堆積膜の何れかのWERR(約3.2、約4.8、及び約6.0)よりも劇的に良好である。750℃での熱高密度化後に湿式エッチング速度比を測定する別の実験において、周期的堆積膜のWERRは、バルク充填堆積膜と比較していっそう低かった。
【0048】
本明細書に記載の実施態様が実行できる特定の装置は限定されないが、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.,によって販売されているProducer(登録商標)Eterna(登録商標)FVCD(登録商標)システム、Producer(登録商標)Onyx(登録商標)システム、及びProducer(登録商標)Nanocure(登録商標)システムにおいて実施態様を実行することが特に有益である。加えて、他の製造業者から入手可能なFCVDシステムもまた、本明細書に記載の実施態様から有益であり得る。
【0049】
この処理は、原子層堆積リソグラフィにおけるトレンチの均一性を達成するためにも使用され得る。CVD及びALDに関連して本明細書の特定の実施態様について検討されているが、また、本明細書に記載の方法は、膜の厚さ及び均一性が重要な考慮事項であるすべての用途に適用可能であると理解すべきである。
【0050】
上記は本デバイス及び方法の実施態様を対象とするが、本デバイス及び方法の基本的な範囲から逸脱することなく、それらの他の更なる実施態様を考案することもでき、本デバイス及び方法の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。