特許第6761831号(P6761831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6761831柱状物体状態検出装置、柱状物体状態検出方法および柱状物体状態検出処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761831
(24)【登録日】2020年9月9日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】柱状物体状態検出装置、柱状物体状態検出方法および柱状物体状態検出処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20200917BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20200917BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20200917BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20200917BHJP
【FI】
   G01B11/16 Z
   G01C15/00 103A
   G06T7/60 150S
   G06T7/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-84369(P2018-84369)
(22)【出願日】2018年4月25日
(65)【公開番号】特開2019-191002(P2019-191002A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593154436
【氏名又は名称】アイサンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】和氣 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 重裕
(72)【発明者】
【氏名】片山 和典
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 修功
(72)【発明者】
【氏名】西久保 雄介
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−232513(JP,A)
【文献】 特開2017−156179(JP,A)
【文献】 特開2014−153336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01C 15/00
G06T 7/00
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状物体の状態を検出する装置であって、
前記柱状物体の複数の高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点の座標値を示す中心軸データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した中心軸データにおける所定の第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より高い第2の高さ位置の中心点までの第1のベクトルと、前記第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より低い第3の高さ位置の中心点までの第2のベクトルとに基づく、前記第1の高さ位置の中心点を起点とするたわみベクトルを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたたわみベクトルが、計測誤差によらないたわみを示すか、計測誤差による歪みを示すかを識別する識別手段と、
前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を補正する補正手段と、
を備える、柱状物体状態検出装置。
【請求項2】
前記取得手段により取得された中心軸データを、当該中心軸データを主成分分析することにより得られる第一主成分方向が鉛直方向となるように座標変換する座標変換手段をさらに備え、
前記検出手段は、
前記座標変換手段により座標変換された中心軸データにおける前記第1および第2のベクトルの水平方向の成分に基づいて、前記たわみベクトルを検出する、
請求項1に記載の柱状物体状態検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
前記中心軸データのうち異なる高さ位置のそれぞれについて、これらの高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点を起点とするたわみベクトルを検出し、
前記識別手段は、
前記検出手段により検出された、所定の高さ位置から所定の範囲内の各高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点を起点とするたわみベクトルの大きさまたは角度の標準偏差に基づいて、前記所定の高さ位置について前記検出手段により検出されたたわみベクトルが前記たわみを示すか前記歪みを示すかを識別する、
請求項1に記載の柱状物体状態検出装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、前記第1の高さ位置から所定の範囲内の各高さ位置の中心点までの座標値の平均値に補正する、
請求項1に記載の柱状物体状態検出装置。
【請求項5】
前記補正手段は、
前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、当該たわみベクトルの終点に対応する座標値に補正する、
請求項1に記載の柱状物体状態検出装置。
【請求項6】
前記補正手段は、
前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、前記第1の高さ位置から所定の範囲内の各高さ位置の中心点の座標値の平均値に補正した結果を第1の補正結果とし、
前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、当該たわみベクトルの終点に対応する座標値に補正した結果を第2の補正結果とする、
請求項1に記載の柱状物体状態検出装置。
【請求項7】
柱状物体の状態を検出する柱状物体状態検出装置が行う柱状物体状態検出方法であって、
前記柱状物体の複数の高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点の座標値を示す中心軸データを取得し、
前記取得した中心軸データにおける所定の第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より高い第2の高さ位置の中心点までの第1のベクトルと、前記第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より低い第3の高さ位置の中心点までの第2のベクトルとに基づく、前記第1の高さ位置の中心点を起点とするたわみベクトルを検出し、
前記検出されたたわみベクトルが、計測誤差によらないたわみを示すか、計測誤差による歪みを示すかを識別し、
前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を補正する、
柱状物体状態検出方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の柱状物体状態検出装置の前記各手段としてプロセッサを機能させる柱状物体状態検出処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、屋外に設置された管理対象となる柱状物体の状態を検出する柱状物体状態検出装置、柱状物体状態検出方法および柱状物体状態検出処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設置された管理対象となる柱状物体の状態、例えばポール(電柱等)や樹木の形状等を計測するために、様々な走査装置が用いられている。例えば、(1)カメラにより画像を取得し、この取得した画像内の距離で上記の計測を行う、(2)測量機器を用いて物体表面上の複数の点を直接計測する、(3)レーザスキャナを用いて取り込まれた点群データから立体データを生成して上記の計測を行う、などの手法がある。
【0003】
しかし、これらの手法は、いずれも対象となる物体の近距離に走査装置を配置して、この装置を作業者が操作をする必要があった。また、3Dスキャナおよびレーザスキャナにより点群データを取得するには、例えば数分〜数十分の走査時間がかかる、などの課題がある。
【0004】
一方、検査車両に3次元レーザスキャナ(3Dレーザ測量機)、カメラ、GPS(Global Positioning System)受信機、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、およびオドメータ(Odometer:走行距離計)を搭載し、検査車両が路上を走行しながら周囲の建物、道路、橋梁などを含む屋外構造物の3次元測量を網羅的に行い、当該屋外構造物の表面上の多数の点の3次元(XYZ)座標を収集することにより、屋外構造物の3次元形状を取得するモービルマッピングシステム(Mobile Mapping System:MMS)が知られている(例えば非特許文献1を参照)。
【0005】
このシステムは、屋外構造物の表面に当てるレーザ光により、その照射された地点の絶対的な3次元座標を、MMSが有する測定誤差及びGPS受信機の測定誤差の範囲にて3次元点群データとして取得する。これにより、点群データを取得するための走査時間を短縮することが可能となる。
【0006】
また、このMMSを用いて取得した点群データより物体の立体データを生成し、この立体データより設備の状態を検出する方法が知られている(例えば特許文献1を参照)。この方法より、物体の立体データを生成し、この物体の形状、例えば電柱の中心軸の傾き、たわみ等の形状に関するデータを自動で生成することが可能となる。
【0007】
取得した点群情報を元に、立体データの形状を推定しようとする技術(例えば特許文献2を参照)、または点群データを用いずに物体を計測する装置(例えば非特許文献2を参照)で計測した柱状物体のたわみ値を精度良く求めるために、計測誤差の影響を少なくすべく中心軸の補正が行なわれている。補正の手法としては柱状物体を複数回計測して平均値を求める方法、および推定する柱状物体の形状にフィットする点群データの数の大小により、柱状物体のたわみ形状を補正する方法、などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−078849号公報
【特許文献2】特開2015−224980号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“三菱モービルマッピングシステム 高精度GPS移動計測装置”、[online]、三菱電機株式会社、[平成30年1月11日検索]、インターネット<URL:http://www.mitsubishielectric.co.jp/mms/>
【非特許文献2】”バーム・ステーション”、[online]、アイサンテクノロジー株式会社、[平成30年1月22日検索]、インターネット<URL:http://www.aisantec.co.jp/products-services/atstation/baumstation.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記のように柱状物体を複数回計測する方法を実施するには、現場にて多くの時間をかける必要がある。また、上記のように点群データの数の大小により柱状物体のたわみ形状を補正する方法を実施するには、大容量の点群データを長時間にわたって処理する必要があり、そもそも点群データがないと処理が行なえない。
【0011】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、追加のデータを必要とせず、計測誤差に起因する中心軸データの歪みを高精度に補正できるようにした柱状物体状態検出装置、柱状物体状態検出方法および柱状物体状態検出処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第1の態様は、柱状物体状態検出装置が、柱状物体の状態を検出する装置であって、前記柱状物体の複数の高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点の座標値を示す中心軸データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得した中心軸データにおける所定の第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より高い第2の高さ位置の中心点までの第1のベクトルと、前記第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より低い第3の高さ位置の中心点までの第2のベクトルとに基づく、前記第1の高さ位置の中心点を起点とするたわみベクトルを検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたたわみベクトルが、計測誤差によらないたわみを示すか、計測誤差による歪みを示すかを識別する識別手段と、前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を補正する補正手段と、を備えるようにしたものである。
【0013】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第2の態様は、第1の態様において、前記取得手段により取得された中心軸データを、当該中心軸データを主成分分析することにより得られる第一主成分方向が鉛直方向となるように座標変換する座標変換手段をさらに備え、前記検出手段は、前記座標変換手段により座標変換された中心軸データにおける前記第1および第2のベクトルの水平方向の成分に基づいて、前記たわみベクトルを検出するようにしたものである。
【0014】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第3の態様は、第1の態様において、前記検出手段は、前記中心軸データのうち異なる高さ位置のそれぞれについて、これらの高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点を起点とするたわみベクトルを検出し、前記識別手段は、前記検出手段により検出された、所定の高さ位置から所定の範囲内の各高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点を起点とするたわみベクトルの大きさまたは角度の標準偏差に基づいて、前記所定の高さ位置について前記検出手段により検出されたたわみベクトルが前記たわみを示すか前記歪みを示すかを識別するようにしたものである。
【0015】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第4の態様は、第1の態様において、前記補正手段は、前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、前記第1の高さ位置から所定の範囲内の各高さ位置の中心点までの座標値の平均値に補正するようにしたものである。
【0016】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第5の態様は、第1の態様において、前記補正手段は、前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、当該たわみベクトルの終点に対応する座標値に補正するようにしたものである。
【0017】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第6の態様は、第1の態様において、前記補正手段は、前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、前記第1の高さ位置から所定の範囲内の各高さ位置の中心点の座標値の平均値に補正した結果を第1の補正結果とし、前記識別手段により前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を、当該たわみベクトルの終点に対応する座標値に補正した結果を第2の補正結果とするようにしたものである。
【0018】
本発明の一実施形態における、柱状物体状態検出装置が行う柱状物体状態検出方法の一つの態様は、柱状物体の状態を検出する柱状物体状態検出装置が行う柱状物体状態検出方法であって、前記柱状物体の複数の高さ位置における前記柱状物体の水平方向の中心点の座標値を示す中心軸データを取得し、前記取得した中心軸データにおける所定の第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より高い第2の高さ位置の中心点までの第1のベクトルと、前記第1の高さ位置の中心点から前記第1の高さ位置より低い第3の高さ位置の中心点までの第2のベクトルとに基づく、前記第1の高さ位置の中心点を起点とするたわみベクトルを検出し、前記検出されたたわみベクトルが、計測誤差によらないたわみを示すか、計測誤差による歪みを示すかを識別し、前記たわみベクトルが歪みを示すと識別された場合に、前記たわみベクトルの起点に対応する前記第1の高さ位置の中心点の座標値を補正するようにしたものである。
【0019】
本発明の一実施形態における柱状物体状態検出処理プログラムの一つの態様は、第1乃至第6の態様のいずれか1つにおける柱状物体状態検出装置の前記各手段としてプロセッサを機能させるものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第1の態様によれば、追加のデータを必要とせず、計測誤差に起因する中心軸データの歪みを高精度に補正することができる。
【0021】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第2の態様によれば、中心軸データの歪みを補正するためのたわみベクトルを検出することができる。
【0022】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第3の態様によれば、中心軸データの歪みを補正するためのたわみベクトルがたわみを示すか歪みを示すかを識別することができる。
【0023】
この発明の一実施形態における柱状物体状態検出装置の第4乃至第6の態様によれば、歪みと識別されたたわみベクトルの起点にある、補正前の中心点の座標値を補正することができる。
【0024】
すなわち、本発明によれば、追加のデータを必要とせず、計測誤差に起因する中心軸データの歪みを高精度に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施形態に係る柱状物体状態検出装置の一例としての概略構成図。
図2】測量機器による柱状物体の計測について説明する図。
図3】この発明の一実施形態に係る柱状物体状態検出装置の詳細な構成の一例を示すブロック図。
図4】歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
図5】たわみベクトルの定義について説明する図。
図6】電柱モデルの各高さ位置におけるたわみベクトルについて説明する図。
図7】たわみベクトル検出処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
図8】電柱モデルから指定の高さ近辺の高さ位置の中心点の座標を取得する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
図9】歪み・たわみ識別処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
図10】第1の局所歪み補正処理の概要について説明する図。
図11】第1の局所歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
図12】第1の局所歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
図13】第2の局所歪み補正処理の概要について説明する図。
図14】第2の局所歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、この発明に係わる一実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る柱状物体状態検出装置の一例としての概略構成図である。
この検出装置は、検査車両MBに搭載されるもので、3Dレーザ測量機としての3次元レーザスキャナ1と、カメラ2と、GPS受信機3と、慣性計測装置としてのIMU4と、走行距離計としてのオドメータ5と、記憶媒体11と、演算装置12とを備え、柱状物体をモデル化した柱状モデルの中心軸データを生成するための元計測データ(補正前の計測データ)を取得する。記憶媒体11は、不揮発性メモリなどの記憶装置により実現できる。3次元レーザスキャナ1、カメラ2、GPS受信機3は複数台搭載することも可能である。
【0027】
検出装置は、検査車両MBの走行中に3次元レーザスキャナ1、カメラ2、GPS受信機3、IMU4、オドメータ5により周囲の3次元測量を行い、これらの測量の結果を示す点群データを保存装置としての記憶媒体11に格納することで、クロージャ(Closure)7、ケーブル8、ポール9、樹木10、信号機10a、交通標識10b,10c等を含む柱状物体の表面上の点における3次元座標を表す3次元点群データ(以下、点群データと称することがある)と、この柱状物体の外観の画像データとして取得する。つまり、3次元レーザスキャナ1、カメラ2、GPS受信機3、IMU4およびオドメータ5は、3次元点群データを計測する計測部である。複数のポール9にはケーブル8が引き通されており、各ポール9間のケーブル8にはクロージャ7が取り付けられることがある。
【0028】
図2は、測量機器による柱状物体の計測について説明する図である。
本発明が適用可能な計測の形態は、図1に示した検査車両MBを用いた形態に限られず、図2に示した測量機器(例えば非特許文献2を参照)により、柱状物体の水平方向の中心軸Cとなる数箇所の座標を計測し、この計測結果を記憶媒体11に格納するような形態にも適用可能である。
【0029】
図3は、この発明の一実施形態に係る柱状物体状態検出装置の詳細な構成の一例を示すブロック図である。
GPS受信機3は、図示しない複数のGPS衛星から送信されるGPS信号を受信して検査車両MBの位置座標(緯度経度高度)を算出する。
【0030】
3次元のレーザスキャナ1は、上記GPS受信機3により算出された位置座標と連動して、クロージャ7、ケーブル8、ポール9、樹木10、信号機10a、交通標識10b,10cなどの柱状物体の表面上の複数点の位置座標データ、つまり上記GPS受信機3により検出された位置座標を反映した3次元(X,Y,Z)の位置座標データを取得する。取得された3次元の位置座標データは、計測時刻を表す情報と関連付けられて記憶媒体11に記憶される。
【0031】
カメラ2は、上記柱状物体を含む領域を撮影する。この撮影により得られた画像データは、撮影時刻と、上記GPS受信機3により検出された位置座標と関連付けられて記憶媒体11に記憶される。なお、上記IMU4およびオドメータ5からそれぞれ出力された検査車両MBの加速度データおよび検査車両MBの走行距離データは、計測時刻、カメラ2により撮影した画像データおよび上記位置座標と関連付けられて記憶媒体11に記憶される。なお、ここまでの構成は、背景技術で述べたMMSにより実現することができる。
【0032】
演算装置12は、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)、プログラムメモリ、および演算用メモリなどを備えたコンピュータとして構成することができ、この実施形態を実施するために必要な機能として、抽出処理部13と、演算部14と、データベースであるDB15と、表示部16とを有する。抽出処理部13、演算部14は、プログラムメモリに格納されたプログラムを上記CPUに実行させることにより実現できる。
【0033】
DB15は、不揮発性メモリなどの記憶装置により実現でき、表示部16は液晶ディスプレイなどにより実現でき、演算装置12による各種処理結果などを表示することができる。なお、演算装置12はハードウェアで構成することもできるが、後述するフローチャートに示された手順を備えるプログラムを、媒体もしくは通信回線を介して周知のコンピュータにインストールして、このコンピュータとDB15との組み合わせ、又はDB15を有するコンピュータなどによっても実現可能である。
【0034】
なお、DB15は、演算装置12内に設けずに記憶媒体11に設けてもよく、さらには検出装置以外のクラウドサーバまたはローカルサーバ等に設けてもよい。この場合検出装置は、通信部により、クラウドサーバまたはローカルサーバのDB15から通信ネットワークを介して、このDB15に格納されるデータを取得する。
【0035】
抽出処理部13は、3Dモデル抽出部13aおよび取得部13bを有する。
3Dモデル抽出部13aは、記憶媒体11に格納された点群データより柱状物体を3Dモデル化した3D柱状モデルデータ(以降では、例として電柱モデルと称することがある)を作成する。この3D柱状モデルデータは、柱状物体の3次元形状を表す3次元オブジェクトと当該3次元オブジェクトの3次元座標情報とを含む。
取得部13bは、3Dモデル抽出部13aにより作成した3D柱状モデルデータから、柱状物体の一定の高さ位置ごとの水平方向の中心点の座標値の配列である中心軸データを取得する。
【0036】
演算部14は、座標変換部14a、たわみベクトル検出部14b、歪み・たわみ識別部14c、局所歪み補正部14d、座標逆変換部14eを有する。
座標変換部14aは、3D柱状モデルデータに対し、主成分分析を行なったときの第一主成分方向がZ軸となるよう座標変換を行なう。
たわみベクトル検出部14bは、座標変換後の3D柱状モデルデータに対して、たわみベクトル検出処理を行なう。たわみベクトルとは、柱状物体のモデルの中心軸データで示される中心軸のずれを示すベクトルである。中心点の座標値は、検出されたたわみベクトルの起点(根元)に位置する。中心軸のずれとは、中心軸の座標値の真値に対する、上記の取得された中心軸データの座標値のずれである。
【0037】
歪み・たわみ識別部14cは、たわみベクトルで示されるずれが、中心軸の実際のずれである「たわみ」であるか、中心軸の計測誤差に起因するずれである「歪み」であるかを識別する歪み・たわみ識別処理を行なう。
【0038】
局所歪み補正部14dは、歪みであると識別されたたわみベクトルを用いて中心軸データの座標値を補正する局所歪み補正処理を行なう。この実施形態では、局所歪み補正処理は、第1の局所歪み補正処理、および第2の局所歪み補正処理に区分される。
第1の局所歪み補正処理は、中心軸データにおける、歪みであると識別されたたわみベクトルの起点にある、補正前の中心点と、当該中心点の高さと異なる高さ位置の中心点とでなる複数の中心点の座標値の平均を求め、この平均を補正後の中心点の座標値とすることで、中心軸データの歪みを補正する処理である。
【0039】
第2の局所歪み補正処理は、中心軸データにおける、歪みであると識別されたたわみベクトルの起点にある、補正前の中心点の座標値を、当該たわみベクトルの終点(先端)が示す座標値に置き換え、この座標値を補正後の中心点の座標値とすることで、中心軸データの歪みを補正する処理である。演算部14は、この演算部14の各部による処理結果をDB15に格納して、文字情報、画像情報などにより表示部16に表示してもよい。
座標逆変換部14eは、主成分分析による座標変換の逆変換を行なう。
【0040】
抽出処理部13における点群データからの3D柱状モデルデータの作成、ならびに、中心軸のデータの取得には、例えば特開2017−156179号公報などに開示された既知の手法を用いることができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、中心軸補正を行なう前に、たわみベクトルが「たわみ」を示すか「歪み(計測誤差)」を示すかを識別することで、たわみと歪みをと分解し、歪みと識別された部分軸ベクトルを前後の軸ベクトルと方向が一致するように合わせる補正を行なうことで、歪みを補正する。
【0042】
本発明の一実施形態により、複数回測定すること、または点群などの附随データを必要とせず、中心軸のデータのみで高精度な歪み補正処理が可能となる。
本発明の一実施形態により、たわみと歪みとを識別し、歪みのみを前後の高さ位置のベクトルと方向をあわせて補正することができる。
【0043】
次に、演算部14による歪み補正処理について説明する。図4は、歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
歪み補正処理は、座標変換処理、たわみベクトル検出処理、歪み・たわみ識別処理、局所歪み補正処理、座標逆変換処理に区分される。
【0044】
まず、座標変換部14aは、3D柱状モデルデータに対し、主成分分析を行なったときの第一主成分方向がZ軸となるよう座標変換処理を行なう(S1)。そして、たわみベクトル検出部14bは、座標変換後の3D柱状モデルデータに対してたわみベクトルを作成する、たわみベクトル検出処理を行なう(S2)。歪み・たわみ識別部14cは、S2で検出したたわみベクトルに対する歪み・たわみ識別処理を実行する(S3)。局所歪み補正部14dは、S3で歪みであると識別されたたわみベクトルを用いて、第1の局所歪み補正処理(S4)、および第2の局所歪み補正処理(S5)をそれぞれ行なう。
そして、座標逆変換部14eは、主成分分析による座標変換の逆変換処理を行なう(S6)。S4ならびにS5はそれぞれのみ実施しても良いし、双方実施しても良い。
【0045】
次に、たわみベクトルの定義について説明する。図5は、たわみベクトルの定義について説明する図である。
図5では、電柱モデルに対し、この電柱モデルの中心軸データについて主成分分析を行ったときの第一主成分方向がZ軸(鉛直方向の座標軸)となるよう座標変換を行なったときの中心軸上の中心点P(点Pと称することもある)におけるたわみベクトルの算出について示す。ここでは、中心軸は、電柱の断面の中心を結んだ線Lとして算出されている。中心点Pは線L上の一点である。
【0046】
ここで、線L上における、中心点Pから高さ位置がLだけ高い高さ位置の中心点Pと、中心点Pから高さ位置がLだけ低い高さ位置の中心点Pとをそれぞれ定義し、中心点Pを起点として中心点Pを終点とするベクトルvと、中心点Pを起点として中心点Pを終点とするベクトルuとをそれぞれ定義する。中心点Pにおける、ずれの量と方向をベクトルv+uとして定義し、このベクトルv+uを中心点Pのずれを示すたわみベクトルと定義する。
【0047】
図6は、電柱モデルの各高さ位置におけるたわみベクトルについて説明する図である。
図6に示すように、たわみベクトル検出部14bは、たわみベクトルを、中心軸の真値に対して中心軸にずれがある電柱モデルA(座標変換後)の中心軸データの各高さ位置においてそれぞれ求めることができる。
【0048】
次に、たわみベクトル検出処理(S2)の詳細を説明する。図7は、たわみベクトル検出処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0049】
たわみベクトル検出部14bは、「for (z=電柱最下点のZ値+ベクトル作成距離;z<電柱最上点のZ値−ベクトル作成距離;z+=ベクトル作成間隔)」の条件でループ処理を開始する。ベクトル作成間隔とは、電柱モデルの座標変換後の中心軸に対する、たわみベクトルを作成する高さの間隔であり、例えば、電柱モデル中の中心軸データにおける中心点のZ座標値の間隔と同じ間隔(40[mm]など)であって、作成される各たわみベクトルの起点の座標値は、中心軸データにおける各中心点の座標値と同じであってもよい。
【0050】
また、上記に限らず、ベクトル作成間隔は、中心軸データにおける中心点のZ座標値で示される間隔より短い間隔(20[mm]など)であってもよく、この結果、作成されるたわみベクトルの起点の座標値は、中心軸データにおける中心点の座標値と異なっていてもよい。
【0051】
たわみベクトル検出部14bは、電柱モデルの座標変換後の中心軸から、指定の高さ位置(ループ処理で定めたZ値)の中心点の座標値、およびこの高さ位置の近辺の高さ位置の中心点の座標をそれぞれ取得する(S21)。指定の高さ位置の近辺の高さ位置とは、この指定の高さ位置より所定距離だけ高い高さ位置と、この指定の高さ位置より所定距離だけ低い高さ位置を含む。
【0052】
このS21の詳細について説明する。図8は、電柱モデルから指定の高さ位置近辺の高さ位置の中心点の座標を取得する処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
このS21の処理において、たわみベクトル検出部14bは、「z(高さZ0と称する),z-ベクトル作成距離(高さZ1と称する),z+ベクトル作成距離(高さZ2と称する)」の3つの高さそれぞれに対して、座標変換後の電柱モデルからP[n]<Z(Z値)<P[n+1]の条件を満たす、隣り合う2つの中心点P[n],P[n+1]の組み合わせをそれぞれ探す(S21−1)。すなわち高さZ0に対応する中心点(P[n0], P[n0+1])、高さZ1に対応する中心点(P[n1],P[n0+1])、高さZ2に対応する中心点(P[n2],P[n2+1])でなる3つの中心点の組み合わせが得られる。ベクトル作成距離とは、図5に示す高さLに相当し、例えば1[m]である。P[n]の高さとP[n+1]の高さは電柱モデルの中心軸データにおける中心点のZ座標値の間隔となる。
【0053】
たわみベクトル検出部14bは、上記3つの中心点の組み合わせそれぞれにおいて、ベクトルP[n+1]-P[n](P[n+1]-P[n]との間のベクトル)と、Z軸を法線とする点(0, 0, z)を通る平面との交点を算出する。たわみベクトル検出部14bは、高さZ0に対応するベクトルP[n0+1]-P[n0]とZ軸を法線とする点(0,0,Z0)を通る平面との交点をp、高さZ1に対応するベクトルP[n1+1]-P[n1]とZ軸を法線とする点(0,0,Z1)を通る平面との交点をp1、高さZ2に対応するベクトルP[n2+1]-P[n2]とZ軸を法線とする点(0,0,Z2)を通る平面との交点をp2として出力し(S21−2)、S21の処理を終了する。
【0054】
たわみベクトル検出部14bは、ベクトルv1=p1-p,v2=p2-pをそれぞれ作成する(S22)。
たわみベクトル検出部14bは、v1,v2のx, y成分のみを合成したベクトル*0.5をベクトルv'とする(S23)。
【0055】
たわみベクトル検出部14bは、上記の指定の高さの中心点のたわみベクトル(座標値p,ベクトルv')を検出結果として出力し、(S24)、ループ処理の先頭に戻る。この中心点の座標値は、たわみベクトルの起点の座標値に対応する。
ループ処理が終了すると、たわみベクトル検出処理が終了する。
【0056】
次に、歪み・たわみ識別処理について説明する。
計測状況が悪い電柱モデルは、高さごとに、たわみベクトルのベクトルの大きさ、角度がばらつく傾向がある。そこで、この発明の一実施形態では、電柱モデルにおける、ある高さにおけるたわみベクトル、および、この高さの近辺の高さにあるたわみベクトルでなる、たわみベクトルの集合について、ベクトルの大きさの標準偏差が一定値未満、かつ、ベクトルの角度、例えば3次元座標における角度の標準偏差が一定値未満であるとの条件を満たす場合、この位置に計測誤差によらない「たわみ」が生じていると識別し、上記の条件を満たさなければ、上記の位置に計測誤差に起因する「歪み」が生じていると識別する。
【0057】
図9は、歪み・たわみ識別処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。歪み・たわみ識別処理において、まず、歪み・たわみ識別部14cは、たわみベクトルv1,v2,…,vnに対するループ処理を開始する。
【0058】
歪み・たわみ識別部14cは、たわみベクトル検出処理で検出したたわみベクトルv1,v2,…,vnのうち、ループ処理で特定した1つのたわみベクトルvxおよび、このたわみベクトルvxの高さ± 歪み・たわみ識別距離の範囲にあるたわみベクトルでなる、たわみベクトルの集合をたわみベクトルの集合Sとして求める(S31)。歪み・たわみ識別距離は、例えば1[m]である。
【0059】
歪み・たわみ識別部14cは、S31で求めた、たわみベクトルの集合Sのうち、「ベクトルの大きさの標準偏差>歪みと識別する、ベクトルの大きさの最小標準偏差」の条件を満たすとき、たわみベクトルvxについて、歪み・たわみフラグ「歪みである」を識別結果として出力して、ループ処理の先頭へ戻る(S32)。この、「歪みと識別する、ベクトルの大きさの最小標準偏差」は、例えば1.5[mm]である。
【0060】
S32での条件を満たさないとき、歪み・たわみ識別部14cは、S31で求めた、たわみベクトルの集合Sのうち、「ベクトルの角度の標準偏差>歪みと識別する、ベクトルの角度の最小標準偏差」の条件を満たすとき、たわみベクトルvxについて、歪み・たわみフラグ「歪みである」を識別結果として出力して、ループ処理の先頭へ戻る(S33)。この、「歪みと識別する、ベクトルの角度の最小標準偏差」は、例えば15[°]である。
【0061】
S33での条件を満たさないとき、歪み・たわみ識別部14cは、たわみベクトルvxについて、歪み・たわみフラグ「たわみである」を識別結果として出力して、ループ処理の先頭へ戻る(S34)。
ループ処理が終了すると、歪み・たわみ識別処理が終了する。
【0062】
次に、第1の局所歪み補正処理について説明する。図10は、第1の局所歪み補正処理の概要について説明する図である。
この、第1の局所歪み補正処理は、歪み・たわみ識別処理で歪みと判断されたベクトルの起点にある、補正前の中心点Pと、当該中心点Pの高さ位置と異なる高さ位置の中心点との集合に対して主成分分析を行い、この第一主成分方向がZ軸となるよう座標変換したときの、上記の集合に属する複数の中心点におけるx座標の平均値xm、y座標の平均値ymをそれぞれ求め、補正前の中心点Pの座標値(xp, yp)を(xm, ym)に差し替えて、補正後の中心点P’とする処理である。
【0063】
図11および図12は、第1の局所歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
第1の局所歪み補正処理において、まず、局所歪み補正部14dは、電柱モデルの中心点P1,P2,…,Pnに対するループ処理を開始する。中心点P1,P2,…,Pnは、所定の高さ位置ごとの中心点である。
【0064】
ベクトル作成間隔が、中心軸データにおける中心点のZ座標値の間隔と同じ間隔であるとき、局所歪み補正部14dは、P1,P2,…,Pnからループ処理で選択した1つの中心点Pxを起点とするたわみベクトルvの歪み・たわみフラグの種別を調べ、種別が「たわみである」である場合には、中心点の座標値の補正後のモデル(初期値は空のモデル)に中心点Pxを追加して(S41)、ループ処理の先頭へ戻る。
【0065】
S41の別の例として、ベクトル作成間隔が、中心軸データにおける中心点のZ座標値の間隔より短い間隔であるとき、局所歪み補正部14dは、P1,P2,…,Pnからループ処理で選択した1つの中心点Pxから最も近い高さ位置についてたわみベクトル検出処理で検出された中心点を起点とするたわみベクトルvの歪み・たわみフラグの種別を調べ、種別が「たわみである」である場合には、上記の補正後のモデルに中心点Pxを追加して、ループ処理の先頭へ戻る。
【0066】
歪み・たわみフラグの種別が「歪みである」である場合には、局所歪み補正部14dは、モデルの中心点Pxに対して主成分分析を行なったときの固有値をλ0,λ1,λ2としたとき、以下の式(1)に従って定数Fを定める(S42)。
【0067】
F=λ2/(λ012) * 108+主成分分析による歪みの指標の補正値 …式(1)
主成分分析による歪みの指標の補正値は、例えば500である。
【0068】
局所歪み補正部14dは、中心点Pxから高さ位置が±たわみベクトルvの長さ*F[m]の範囲にある中心点Pの集合Sを得る(S43)。
【0069】
局所歪み補正部14dは、集合Sに対して主成分分析を行なったときの固有値をλ'0、λ'1、λ'2としたとき、条件「λ'1/λ'0<補正を行う最小固有値比率」を満たす場合はループ処理の先頭へ戻る(S44)。
【0070】
条件「λ'1/λ'0<補正を行う最小固有値比率」を満たさない場合は、局所歪み補正部14dは、集合Sに対して主成分分析を行なったときの第一主成分方向がZ軸となるように集合Sを座標変換したときの、集合Sに属する各中心点のx座標値の平均値xm、y座標値の平均値ymをそれぞれ求める(S45)。
局所歪み補正部14dは、中心点Pxのx,y座標値(x,y)を(xm,ym)に差し替え、つまり、中心点の座標値の補正後のモデルに、この座標値(xm,ym)に対応する中心点Pxを追加して(S46)、ループ処理の先頭へ戻る。
【0071】
ループ処理が終了すると、局所歪み補正部14dは、モデルを出力して、(S47)、第1の局所歪み補正処理を終了する。
【0072】
次に、第2の局所歪み補正処理について説明する。図13は、第2の局所歪み補正処理の概要について説明する図である。
この第2の局所歪み補正処理は、歪み・たわみ識別処理で歪みと判断されたベクトルの中心点Pの座標をたわみベクトルの座標値に差し替えて、補正後の中心点P’とする処理である。
【0073】
図14は、第2の局所歪み補正処理の手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。
第2の局所歪み補正処理において、まず、局所歪み補正部14dは、電柱モデルの中心点P1,P2,…,Pnに対するループ処理を開始する。
【0074】
局所歪み補正部14dは、P1,P2,…,Pnからループ処理で選択した1つの中心点Pxについて、この中心点Pxから最も近い中心点を起点とするたわみベクトルV(以降、V)(中心点Pxを起点とするたわみベクトルvである場合を含む)の歪み・たわみフラグの種別を調べ、種別が「たわみである」である場合には、中心点Pxに対して主成分分析を行なったときの第一主成分方向がZ軸となるよう電柱モデルを座標変換したときの、中心点の座標値の補正後のモデル(初期値は空のモデル)に中心点Pxを追加して(S51)、ループ処理の先頭へ戻る。この追加では中心点Pxの座標値は補正されない。
【0075】
歪み・たわみフラグの種別が「歪みである」である場合には、局所歪み補正部14dは、中心点Pxのx,y座標値をたわみベクトルのVの終点の座標値に差し替え、つまり中心点の座標値の補正後のモデルに、たわみベクトルVの終点に対応する中心点Pxを追加し(S52)、ループ処理の先頭に戻る。
【0076】
ループ処理が終了すると、局所歪み補正部14dは、上記の座標変換後のモデルを出力して、(S53)、第2の局所歪み補正処理を終了する。
【0077】
次に、局所歪み補正処理の複合化について説明する。
この発明の一実施形態では、局所歪み補正処理としては、上記の第1および第2の局所歪み補正処理のうち、第1の局所歪み補正処理を単独で実施したり、第2の局所歪み補正処理を単独で実施したりしてもよいが、これに限らず、上記の第1および第2の局所歪み補正処理を複合化して実施するなど、複数種類の局所歪み補正処理を組み合わせることで、更なる精度向上が可能となる。
【0078】
例えば、本実施形態では、第1の局所歪み補正処理を実施した後に、第2の局所歪み補正処理実施することができる。また、第2の局所歪み補正処理を実施した後に、第1の局所歪み補正処理実施してもよい。
【0079】
以上のように、本発明の一実施形態では、電柱モデルに対して、たわみベクトル検出処理、歪み・たわみ識別処理、局所歪み補正処理をそれぞれ実施することで、計測誤差に起因する中心軸データの歪みを高精度かつ付随的なデータを必要とせず補正することが可能となる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0081】
また、各実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブルまたはデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【符号の説明】
【0082】
1…3次元レーザスキャナ、2…カメラ、3…GPS受信機、5…オドメータ、7…クロージャ、8…ケーブル、9…ポール、10…樹木、10a…信号機、10b,10c…交通標識、11…記憶媒体、12…演算装置、13…抽出処理部、13a…3Dモデル抽出部、13b…取得部、14…演算部、14a…座標変換部、14b…たわみベクトル検出部、14c…歪み・たわみ識別部、14d…局所歪み補正部、14e…座標逆変換部、15…DB、16…表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14