(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベースゴムが前記フッ素ゴムを60〜97質量%及び前記不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体を3〜40質量%含有する請求項1に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
前記フッ素ゴムが、フッ化ビニリデンゴム若しくはテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴム、又はこれらの組み合わせを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
前記不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体樹脂が、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体樹脂、若しくは不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体樹脂、又はこれらの組み合わせを含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
前記不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体樹脂が、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
前記ベースゴムが、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の樹脂若しくはアクリルゴム又はこれらの組み合わせを含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
前記無機フィラーが、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛若しくは焼成クレー又はこれらの組み合わせを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
前記フッ素樹脂が、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、若しくはポリフッ化ビニリデン樹脂、又はこれらの組み合わせを含有する請求項11〜13のいずれか1項に記載の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
フッ素ゴム60〜99質量%及び不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体1〜40質量%を含有するベース樹脂100質量部に対して2〜15質量部のシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、前記ベース樹脂100質量部に対して0.5〜400質量部の無機フィラーと、シラノール縮合触媒とを混合してなるマスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
前記ベースゴムの全部又は一部、前記有機過酸化物、前記無機フィラー及び前記シランカップリング剤を溶融混合して、前記有機過酸化物から発生したラジカルによって、前記シランカップリング剤と前記ベースゴムとをグラフト化反応させた前記シラン架橋性ゴムを含む、シランマスターバッチ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明において用いる各成分について説明する。
<ベースゴム>
本発明に用いられるベースゴムは、フッ素ゴムと不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体とを必須成分として含有する。ベースゴムにフッ素含有ゴムと不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体とを含有させると、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体に優れた耐摩耗性を付与でき、さらには高温においても溶融しない耐熱性を付与することができる。ここで、高温においても溶融しない耐熱性とは、好ましくは200℃の温度において、より好ましくは200℃以上の温度において、溶融しない特性、好ましくは形状若しくは強度を維持できる性質をいい、後述のホットセット試験において200℃における伸び率が100%以下を満たすことをいう。前記温度に上限はないが300℃以下が実際的である。
【0014】
− フッ素ゴム −
フッ素ゴムとしては、特に限定されるものではなく、従来、耐熱性ゴム成形体に使用されている通常のものを使用することができる。フッ素ゴムは、有機過酸化物から発生したラジカルの存在下において、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とグラフト化反応可能な部位、例えば炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子を主鎖中又はその末端に有しているものが好ましい。
【0015】
このようなフッ素ゴムとしては、特に限定されるものではないが、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロ炭化水素、及び、部分フッ素炭化水素(例えばフッ化ビニリデン)等の含フッ素モノマー同士の共重合体ゴム、さらにはこれらのパーフルオロ炭化水素及び/又は含フッ素モノマーとエチレン及び/又はプロピレンなどの炭化水素の共重合体ゴムが挙げられる。
具体的には、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴム(FEPM)、テトラフルオロエチレン−フッ化(例えばヘキサフルオロ)プロピレン共重合体ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体ゴム(FFKM)、フッ化ビニリデンゴム(FKM、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体ゴム)等が挙げられる。
さらには、上述の、パーフルオロ炭化水素及び/又は含フッ素モノマーとクロロプレン及び/又はクロロスルホン化ポリエチレンとの共重合体ゴムも挙げられる。
これらのフッ素ゴムの中でも、フッ化ビニリデンゴム若しくはテトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴム、又はこれらの組み合わせが好ましく、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴムがより好ましい。
フッ素ゴム中のフッ素原子含有量(フッ素ゴム全量に対するフッ素原子の質量割合)は、特に限定されないが、25質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。フッ素含有量の上限は、フッ素化する前の重合体が有する、フッ素原子で置換可能な水素原子のすべてをフッ素原子で置換した場合の質量割合となり、フッ素化する前の重合体の分子量、フッ素原子で置換可能な水素原子の数等により、一義的に決定できない。例えば、75質量%とすることができる。
本発明において、フッ素含有量は合成時の計算値、又は、炭酸カリウム加熱分解法によって求められる。炭酸カリウム加熱分解法としては、能代誠ら、日化、6、1236(1973)に記載の方法が挙げられる。
【0016】
フッ素ゴムは、適宜に合成してもよく、市販品を使用してもよい。
例えば、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴムとしては、アフラス(商品名、旭硝子社製)が挙げられる。テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体ゴムとしては、カルレッツ(商品名、デュポン社製)が挙げられる。フッ化ビニリデンゴムとしては、バイトン(商品名、デュポン社製)、ダイエル(商品名、ダイキン工業社製)、ダイニオン(商品名、3M社製)、テクノフロン(商品名、ソルベー社製)等が挙げられる。
ベースゴム100質量%中、フッ素ゴムの含有率は、60〜99質量%であり、好ましくは60〜97質量%であり、より好ましくは65〜90質量%である。フッ素ゴムの含有率が60〜99質量%であると、成形体に耐熱性、耐摩耗性等を付与することができる。
【0017】
― 不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体樹脂 ―
ベースゴムは、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体樹脂を含有する。本発明の製造方法において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体樹脂をフッ素ゴムと組み合わせてベースゴムに含有させることにより、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の耐摩耗性、外観等を向上させることができる。
不飽和カルボン酸成分で変性されたエチレン系共重合体樹脂(以下、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂ともいう)は、特に限定されず、不飽和カルボン酸成分でエチレン系共重合体を変性した樹脂等が挙げられる。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂は、グラフト化反応可能な部位(水素原子を有する炭素原子)を主鎖中又はその末端に有しているものが好ましい。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂における不飽和カルボン酸による変性量は、エチレン系共重合体に対し、0.5〜15質量%であることが好ましい。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂に用いるエチレン系共重合体としては、特に限定されないが、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂等を挙げることができ、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明にあっては、エチレン系共重合体として、耐熱性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることが好ましい。
また、上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等を使用することができる。これらの不飽和カルボン酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体は、適宜に合成してもよく、市販品を用いてもよい。不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体を合成する場合、通常、エチレン系共重合体と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下で、加熱・混練することによりエチレン系共重合体を変性させて得ることができる。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体は、1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂として、市販されているものとしては、例えば、「OREVAC」(商品名:アルケマ社製)、「LOTADER」(商品名:アルケマ社製)、「フサボンド」(商品名:デュポン社製)等を挙げることができる。
上記不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の中でも、耐熱性及び外観の観点からは、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体樹脂、若しくは不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体樹脂又はこれらの組み合わせが好ましく、耐摩耗性の観点からは、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましい。
【0018】
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体の含有量は、ベースゴム100質量%中、1〜40質量%、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。含有量が1〜40質量%であると、フッ素ゴムと組み合わせることにより耐摩耗性に優れた成形体を得ることができる。また、柔軟性に優れた成形体とすることができる場合がある。
ベースゴムは、フッ素ゴムを60〜97質量%及び不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体を3〜40質量%含有することが好ましい。
【0019】
本発明において、ベースゴムは、フッ素ゴム及び不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体の他に、他の樹脂又はゴム、オイル成分(例えば、パラフィンオイル等の鉱物油)等を含有していてもよい。
この場合、ベースゴムは、各成分の総計が100質量%となるように、各成分の含有率が適宜に決定される。
【0020】
他の樹脂又はゴムとして、グラフト化反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有しているものが好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂(いずれも不飽和カルボン酸で変性したものを除く)、若しくは、アクリルゴム、又はこれらの組み合わせ等が好ましい。これらは1種又は2種以上を併用できる。
本発明の製造方法において、これらの樹脂又はゴムを混合することで、成形体により優れた耐摩耗性を付与することができる。これらの樹脂又はゴムやその他のベースゴム成分が、溶融混練中(シラングラフト反応進行中)及び/又は成形中に、互いに動的架橋され、シラン架橋構造を補強するためと、考えられる。これらの樹脂又はゴムとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体の各樹脂、又は、アクリルゴムがより好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂がさらに好ましい。
上記の各樹脂又はゴムは、特に限定されず、適宜に合成したもの又は市販品を用いることができる。
これらの樹脂又はゴムの含有率は、ベースゴム中の、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは3〜15質量%、最も好ましくは5〜13質量%である。上記含有量が上記範囲内にあると、さらに優れた耐摩耗性や押出成形性を発揮する。
【0021】
また、上記他の樹脂として、フッ素樹脂(上述のフッ素ゴムに該当しないもの)も好ましく使用することができる。本発明は、ベースゴムがフッ素樹脂を含有しない形態と、ベースゴムがフッ素樹脂を含有する形態との2つに分類することができる。フッ素樹脂を混合することにより、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体に優れた機械強度や耐摩耗性を付与することができる。
フッ素樹脂としては、主鎖又は側鎖にフッ素原子を含有する、単独重合体若しくは共重合体の樹脂が挙げられる。フッ素樹脂は、通常、フッ素原子を含有する単量体(モノマー)を(共)重合することにより、得られる。
【0022】
このようなフッ素樹脂としては、特に限定されるものではないが、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロ炭化水素、及び、部分フッ素炭化水素(例えばフッ化ビニリデン)等の含フッ素モノマー同士の共重合体の樹脂、さらにはこれらの含フッ素モノマーとエチレン及び/又はプロピレンなどの炭化水素の共重合体の樹脂が挙げられる。
具体的には、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル共重合体樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂などが挙げられる。中でも、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、若しくはポリフッ化ビニリデン樹脂、又はこれらの組み合わせが好ましい。
フッ素樹脂の融点は、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。融点が高すぎると、混練り時あるいは押出時にコンパウンドや成形体に発泡を生じさせる場合がある。融点はASTM D3159に基づき測定することができる。
ベースゴム100質量%中、フッ素樹脂の含有率は、上記他の樹脂又はゴムの含有率の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0〜20質量%であり、さらに好ましくは3〜15質量%である。フッ素樹脂の含有率が3〜15質量%であると、強度を大幅に向上することができる。
【0023】
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤のベースゴムへのラジカル反応によるグラフト化反応(シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベースゴムのグラフト化反応可能な部位との共有結合形成反応であって、(ラジカル)付加反応ともいう。)を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、上記機能を有し、ラジカル重合又は従来のシラン架橋法に用いられるものを特に制限されずに用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド(DCP)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の分解温度は、80〜195℃が好ましく、125〜180℃が特に好ましい。本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
有機過酸化物は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0024】
<無機フィラー>
本発明において、無機フィラーは、特に制限されないが、その表面に、シランカップリング剤のシラノール基等の反応部位と水素結合若しくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものが好ましい。シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
【0025】
無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルクなどの水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物のような金属水和物が挙げられる。また、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー(焼成クレー)、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
【0026】
無機フィラーは、シランカップリング剤等で表面処理した表面処理無機フィラーを使用することができる。例えば、シランカップリング剤表面処理無機フィラーとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、水酸化マグネシウム、協和化学工業社製等)が挙げられる。シランカップリング剤による無機フィラーの表面処理量は、特に限定されないが、例えば、3質量%以下である。
【0027】
これらの無機フィラーのうち、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、焼成クレー若しくはタルク又はこれらの組み合わせが好ましく、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛若しくは焼成クレー又はこれらの組み合わせがより好ましく、シリカ及び酸化亜鉛の組み合わせがさらに好ましい。耐摩耗性の観点からは、シリカが好ましい。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
無機フィラーが粉体である場合、無機フィラーの平均粒径は、0.2〜10μmが好ましく、0.3〜8μmがより好ましく、0.4〜5μmがさらに好ましく、0.4〜3μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲内にあると、シランカップリング剤の保持効果が高く、耐熱性に優れたものとなる。また、シランカップリング剤との混合時に無機フィラーが2次凝集しにくく、外観に優れたものとなる。平均粒径は、無機フィラーをアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
【0029】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤としては、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下で、ベースゴムのグラフト化反応可能な部位にグラフト化反応しうる部位(基又は原子)と、シラノール縮合可能な加水分解性シリル基とを有するものであれば、特に限定されない。このようなシランカップリング剤としては、従来のシラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。
このようなシランカップリング剤としては、不飽和基を有するシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、(メタ)アクリロキシシラン等が挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シランカップリング剤は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
シランカップリング剤は、そのままの形態で用いてもよいし、溶剤で希釈した形態で用いてもよい。
【0030】
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、ベースゴムにグラフトされたシランカップリング剤の加水分解性シリル基を水分の存在下で縮合反応(促進)させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、ベースゴム同士が架橋される。その結果、優れた耐熱性を有する耐熱性架橋フッ素ゴム成形体が得られる。
このようなシラノール縮合触媒としては、特に制限されず、例えば、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物が挙げられる。
シラノール縮合触媒は、1種類を用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0031】
<キャリアゴム>
シラノール縮合触媒は、所望によりゴムに混合されて、用いられる。また、シラノール縮合触媒とゴムとは別々に配合することもできる。この場合に、混合又は配合されるゴム(キャリアゴムともいう)としては、特に限定されないが、シランマスターバッチに使用されているベースゴム成分が好ましい。別々に配合する場合には、押出時に、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒を混合する際に、キャリアゴムを配合することが好ましい。
【0032】
<添加剤>
耐熱性架橋フッ素ゴム成形体等は、電線、電気ケーブル、電気コード、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、又は、充填剤(難燃(助)剤を含む。)等が挙げられる。
【0033】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又は硫黄酸化防止剤等が挙げられる。アミン酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等が挙げられる。フェノール酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。硫黄酸化防止剤としては、例えば、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンズイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等が挙げられる。酸化防止剤は、ベースゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部で加えることができる。
【0034】
<耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法>
次に、本発明の製造方法を具体的に説明する。
本発明の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法は、下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する。
本発明のシランマスターバッチは下記工程(a)により製造され、本発明のマスターバッチ混合物は下記工程(a)により得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒又は触媒マスターバッチとを混合することにより、例えば下記工程(c)における前混合(後述するドライブレンド)により製造される。
【0035】
工程(1):フッ素ゴム60〜99質量%及び不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体樹脂1〜40質量%を含有するベースゴム100質量部に対して、有機過酸化物0.003〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、有機過酸化物から発生したラジカルの存在下で前記ベースゴムとグラフト化反応しうるグラフト化反応部位を有するシランカップリング剤2〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを溶融混合して、シラン架橋性ゴムを含む反応組成物を得る工程
工程(2):反応組成物を成形して成形体を得る工程
工程(3):成形体を水と接触させて耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を得る工程
前記工程(1)を行うに当たり、
下記工程(a)でベースゴムの全部を溶融混合する場合には、工程(1)が下記工程(a)及び工程(c)を有し、下記工程(a)でベースゴムの一部を溶融混合する場合には、工程(1)が下記工程(a)、工程(b)及び工程(c)を有し、
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体が、下記工程(a)及び下記工程(b)の少なくとも一方において溶融混合される、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法。
工程(a):ベースゴムの全部又は一部と有機過酸化物と無機フィラーとシランカップリング剤とを有機過酸化物の分解温度以上の温度において溶融混合して、有機過酸化物から発生したラジカルによってグラフト化反応部位とベースゴムとをグラフト化反応させることにより、シラン架橋性ゴムを含むシランマスターバッチを調製する工程
工程(b):ベースゴムの残部及びシラノール縮合触媒を溶融混合して、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(c):シランマスターバッチと、シラノール縮合触媒又は触媒マスターバッチとを溶融混合して、反応組成物を得る工程
【0036】
本発明の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法においては、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン系共重合体は、前記工程(a)及び前記工程(b)の少なくとも一方において溶融混合される。好ましくは、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂は少なくとも工程(a)で溶融混合される。より好ましくは、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂は工程(a)で溶融混合される。本発明の方法において、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂をフッ素ゴムと組み合わせて用いることにより、シランマスターバッチ及び触媒マスターバッチとの混和性が高まり、ゴム成形体であっても高い耐摩耗性を示し、耐熱性に優れる耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を製造できる。また、外観に優れる耐熱架橋フッ素ゴム成形体を製造できる場合がある。
【0037】
本発明の製造方法において、「ベースゴム」とは、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を形成するための樹脂である。したがって、本発明の製造方法においては、工程(1)で得られる反応組成物に100質量部のベースゴムが含有される。工程(1)におけるベースゴムの配合量100質量部は、ベースゴムの一部が工程(a)で混合される場合には、工程(a)及び工程(b)で溶融混合されるベースゴムの合計量である。
工程(1)において、フッ素ゴム及び不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂等の、ベースゴム中の含有率は、上記した通りである。すなわち、工程(a)と工程(b)における各成分の含有率の合計が、上記範囲内にある。
【0038】
工程(1)において、有機過酸化物の配合量は、ベースゴム100質量部に対して、0.003〜0.5質量部であり、0.005〜0.5質量部が好ましく、0.005〜0.2質量部がより好ましい。有機過酸化物の配合量をこの範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト反応を行うことができ、ゲル状のブツ(凝集塊)も発生することなく押し出し性に優れたシランマスターバッチ等を得ることができる。
【0039】
工程(1)において、無機フィラーの配合量は、ベースゴム100質量部に対して、0.5〜400質量部であり、30〜280質量部が好ましい。無機フィラーの配合量が0.5質量部未満では、シランカップリング剤のグラフト反応が不均一となり、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体に優れた耐熱性、外観又は耐摩耗性を付与できないことがある。一方、400質量部を超えると、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体に優れた耐熱性、外観又は耐摩耗性を付与できないことがある。
【0040】
工程(1)において、シランカップリング剤の配合量は、ベースゴム100質量部に対して、2〜15質量部である。シランカップリング剤の配合量が2質量部未満では、架橋反応が十分に進行せず、優れた耐熱性又は耐摩耗性を発揮しないことがある。また、シラノール縮合触媒とともに成形する際に、外観不良やブツを生じ、また押出機を止めた際にブツが多く生じることがある。一方、15質量部を超えると、それ以上の無機フィラー表面にシランカップリング剤が吸着しきれず、シランカップリング剤は混練中に揮発してしまい、経済的でない。また、吸着しないシランカップリング剤が縮合してしまい、成形体に架橋ゲルブツや焼けが生じて外観が悪化するおそれがある。
上記観点により、このシランカップリング剤の配合量は、ベースゴム100質量部に対して3〜12質量部が好ましく、4〜12質量部がより好ましい。
【0041】
工程(1)において、シラノール縮合触媒の配合量は、特に限定されず、好ましくは、ベースゴム100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.2質量部である。シラノール縮合触媒の配合量が上述の範囲内にあると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の耐熱性、外観及び物性が優れ、生産性も向上する。
【0042】
シランマスターバッチは、ベースゴムの全量又は一部と、有機過酸化物と、無機フィラーと、シランカップリング剤とを、上記配合量で、混合機に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱しながら溶融混練する工程(a)により、上記グラフト化反応を生起させて、調製することができる。
【0043】
工程(a)での混合順は特に制限されず、上記成分をどのような順で混合してもよい。
上記工程(a)においては、「ベースゴムの全量(100質量部)が配合される態様」と、「ベースゴムの一部が配合される態様」とを含む。工程(a)において、ベースゴムの一部が配合される場合、ベースゴムの残部は、好ましくは工程(b)で配合される。
ここで、工程(a)でベースゴムの一部が配合される場合、ベースゴムは、工程(a)において、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは85〜95質量%が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%が配合される。
工程(a)でベースゴムの一部が配合される場合、工程(1)におけるベースゴムは、工程(a)及び(b)において以下のように配合されることが好ましい。
ここで、工程(1)におけるベースゴム100質量%中の、フッ素ゴムの含有率をX、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率をYとする。X+Y≦100質量%である。また、工程(1)におけるフッ素樹脂の含有率Xの内、工程(a)におけるフッ素ゴムの含有率をXa、工程(b)におけるフッ素ゴムの含有率をXb、X=Xa+Xbとする。工程(1)における不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率Yの内、工程(a)における不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率をYa、工程(b)における含有率をYb、Y=Ya+Ybとする。
工程(a)におけるフッ素ゴムの含有率Xaは、50〜89質量%が好ましく、60〜87質量%がより好ましい。また、工程(a)における不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率Yaは、1〜40質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
工程(a)において、ベースゴム中の、フッ素ゴムの含有率Xaと不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率Yaの比(Xa/Ya)は、1.2〜89が好ましく、2.4〜29がより好ましい。
工程(b)におけるフッ素ゴムの配合量Xbは、0〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。また、工程(b)における不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率Ybは、0〜12質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
また、工程(b)において、ベースゴム(キャリアゴム)中の、フッ素ゴムの含有率Xbと不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率Ybの比(Xb/Yb)は、0〜40が好ましく、0〜20がより好ましい。
【0044】
本発明においては、無機フィラーをシランカップリング剤と予め混合することが好ましい。すなわち、本発明においては、上記各成分を、下記工程(a−1)及び(a−2)により、(溶融)混合することが好ましい。
工程(a−1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた混合物と、ベースゴムの全部又は一部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、前記有機過酸化物から発生したラジカルによって前記グラフト化反応部位と前記ベースゴムとをグラフト化反応させることにより、シラン架橋性ゴムを含むシランマスターバッチを調製する工程
【0045】
上記工程(a−2)においては、「ベースゴムの全量(100質量部)が配合される態様」と、「ベースゴムの一部が配合される態様」とを含む。工程(a−2)において、ベースゴムの一部が配合される場合、ベースゴムの残部は、好ましくは工程(b)で配合される。
ここで、工程(b)でベースゴムの残部が配合される場合の工程(a−2)でのベースゴムの配合量は、上記工程(a)と同様である。
【0046】
本発明においては、シランカップリング剤は、上記のように、無機フィラーと前混合等されることが好ましい(工程(a−1))。
無機フィラーとシランカップリング剤を混合する方法としては、特に限定されないが、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。混合方法は、公知の方法及び条件を適宜に設定できるが、本発明においては、無機フィラー、好ましくは乾燥させた無機フィラー中にシランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理が好ましい。
このようにして前混合されたシランカップリング剤は、無機フィラーの表面を取り囲むように存在し、その一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。これにより、後の溶融混合の際にシランカップリング剤の揮発を低減できる。また、無機フィラーに吸着又は結合しないシランカップリング剤が縮合して溶融混練が困難になることも防止できる。さらに、押出成形の際に所望の形状を得ることもできる。
【0047】
このような混合方法として、好ましくは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、好ましくは室温(25℃)で無機フィラーとシランカップリング剤を、数分〜数時間程度、乾式又は湿式で混合(分散)する方法が挙げられる。
有機過酸化物の分解温度未満の温度での混合においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ベースゴムが存在していてもよい。この場合、ベースゴムとともに金属酸化物及びシランカップリング剤を上記温度で混合(工程(a−1))した後に溶融混合することが好ましい。すなわち、ベースゴムとシランカップリング剤とのラジカルグラフト化反応を抑えて、これらの混合物(例えば、ドライブレンド物)を調製し、次いで、得られた混合物をさらに溶融混合して、上記グラフト化反応を生起させることが好ましい。
【0048】
有機過酸化物を混合する方法としては、特に限定されず、上記混合物とベースゴムとを溶融混合する際に、存在していればよい。有機過酸化物は、例えば、無機フィラー等と同時に混合されても、また無機フィラーとシランカップリング剤との混合段階のいずれにおいて混合されてもよく、無機フィラーとシランカップリング剤との混合物に混合されてもよい。例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤と混合した後に無機フィラーと混合されてもよいし、シランカップリング剤と分けて別々に無機フィラーに混合されてもよい。生産条件によっては、シランカップリング剤のみを無機フィラーに混合し、次いで有機過酸化物を混合してもよい。
また、有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
【0049】
本発明の製造方法においては、次いで、得られた混合物とベースゴムの全部又は一部と、工程(a−1)で混合されていない残余の成分とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度に加熱しながら、溶融混練する(工程(a−2))。これにより、シランカップリング剤のベースゴムへの上記グラフト化反応を生起させて、上記シラン架橋性ゴムを含むシランマスターバッチが調製される。
【0050】
工程(a−2)において、上記成分を溶融混合(溶融混練、混練りともいう)する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(25〜110)℃の温度である。この分解温度はベースゴム成分が溶融してから設定することが好ましい。上記混合温度であれば、上記成分が溶融し、有機過酸化物が分解、作用して必要なシラングラフト反応が工程(a−2)において十分に進行する。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの配合量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。ベースゴム成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが好ましい。
また、通常、このような無機フィラーがベースゴム100質量部に対して100質量部を超えて混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサー等の密閉型ミキサーで混練りするのがよい。
フッ素ゴム及び不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体を含有するベースゴムの混合方法は、特に限定されない。例えば、予め混合調製されたベースゴムを用いてもよく、各成分、例えばフッ素ゴム、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体、その他の樹脂又はゴム成分等、オイル成分、可塑剤それぞれを別々に混合してもよい。
【0051】
工程(a−1)及び工程(a―2)を有する混合方法としては、好ましくは、上述のように、有機過酸化物の分解温度未満の温度で無機フィラーとシランカップリング剤を乾式又は湿式で混合(分散)した後(工程(a−1))に、得られた混合物とベースゴムとを有機過酸化物の存在下で溶融混合させる方法(工程(a―2))が挙げられる。
【0052】
工程(a)(好ましくは、工程(a−2))における溶融混合により、有機過酸化物から発生したラジカルによって、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベースゴムのグラフト化反応可能な部位とをグラフト化反応させる。その結果、シランカップリング剤がゴム成分又は樹脂成分に共有結合で結合したシラン架橋性ゴム又はシラン架橋性樹脂(これらを纏めてシラン架橋性ゴム又はシラングラフトポリマーという。)が合成され、このシラン架橋性ゴムを含むシランマスターバッチが調製される。このグラフト化反応においては、通常、1分子のシランカップリング剤が1つのグラフト化反応可能な部位に付加するが、本発明はこれに限定されない。
上記溶融混合は、好ましくは、バンバリーミキサーやニーダー等のミキサー型混練機で行われる。このようにすると、ベースゴム成分同士の過剰な架橋反応を防止することができ、外観が優れたものとなる。
【0053】
本発明において、上記各成分を一度に溶融混合する場合(工程(1))、溶融混合の条件は、特に限定されないが、工程(a−2)の条件を採用できる。
この場合、溶融混合時にシランカップリング剤の一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。
【0054】
工程(a)、特に工程(a−2)においては、シラノール縮合触媒を実質的に混合せずに上述の各成分を混練することが好ましい。これにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができ、溶融混合しやすく、また押出成形の際に所望の形状を得ることができる。ここで、「実質的に混合せず」とは、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。例えば、工程(a−2)において、シラノール縮合触媒は、ベースゴム100質量部に対して0.01質量部以下であれば、存在していてもよい。
【0055】
工程(1)においては、上記成分の他に、ベースゴム成分として、グラフト化反応可能な部位を主鎖中又はその末端に有する、上述の、他の樹脂又はゴムを有することも好ましい。本工程において、用いることができる他の樹脂又はゴムや上記添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜に設定される。
工程(1)において、上記添加剤、特に酸化防止剤や金属不活性剤は、いずれの工程で又は成分に混合されてもよいが、無機フィラーに混合されたシランカップリング剤のベースゴムへのグラフト反応を阻害しない点で、キャリアゴムに混合されるのがよい。
工程(a)において、フッ素樹脂は、いずれの工程でいずれの成分に混合されてもよい。フッ素樹脂の融点によっては、工程(a)の混練温度を高温で行う必要があるが、シランMB中の有機過酸化物が分解してグラフト反応を阻害する場合やシランカップリング剤が揮発する場合がある。このため、フッ素樹脂は、上述の有機過酸化物の分解を抑制する観点、及びシランカップリング剤の揮発を抑制する観点から、工程(b)において混合されるのがよい。
工程(a−2)においてベースゴムの一部を配合する場合、フッ素樹脂は、工程(a−2)で用いるベースゴムの一部として配合されていてもよく、工程(b)に用いるベースゴムの残部として配合されていてもよい。
【0056】
このようにして、工程(a)(好ましくは、工程(a−1)及び工程(a−2)からなる工程(a))を行い、シランカップリング剤とベースゴムとをグラフト化反応させて、シランマスターバッチ(シランMBともいう)を調製する。すなわち、マスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチが調製される。また、シランMBは、後述するように、工程(1)で調製される反応組成物(シラン架橋性ゴム組成物)の製造に、好ましくは、後述する触媒マスターバッチとともに、用いられる。このシランMBは、後述の工程(2)により成形可能な程度にシランカップリング剤がベースゴムにグラフトしたシラン架橋性ゴムを含有している。すなわち、シランMBは、上述のベース樹脂100質量部に対して2〜15質量部のシランカップリング剤がグラフト化したシラン架橋性ゴムと、ベース樹脂100質量部に対して0.5〜400質量部の無機フィラーと、シラノール縮合触媒とを混合してなるマスターバッチ混合物の製造に用いられるシランMBであって、ベースゴムの全部又は一部、有機過酸化物、無機フィラー及びシランカップリング剤を特定の割合で溶融混合して、有機過酸化物から発生したラジカルによって、シランカップリング剤とベースゴムとをグラフト化反応させたシラン架橋性ゴムを含んでいる。
【0057】
本発明の製造方法において、次いで、工程(a)でベースゴムの一部を溶融混合する場合には、ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合して、触媒マスターバッチ(触媒MBともいう)を調製する工程(b)を行う。したがって、工程(a)でベースゴムの全部を溶融混合する場合は、工程(b)を行わなくてもよく、また他の樹脂とシラノール縮合触媒とを混合してもよい。
【0058】
キャリアゴムとしての上記ベースゴムの残部とシラノール縮合触媒との混合割合は、特に限定されないが、好ましくは、工程(1)における上記配合量を満たすように、設定される。
工程(b)の混合においては、上述のように、ベースゴムの残部の成分として不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂を配合してもよい。工程(b)におけるベースゴムの残部は、フッ素ゴムと不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂とを含有する形態と、フッ素ゴムを含まず不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂を含有する形態とを含む。
工程(b)の混合においては、上述のように、ベースゴムの残部の成分としてフッ素樹脂を配合することが好ましい。すなわち、ベースゴムの残部にフッ素樹脂を含有させることが好ましい。工程(b)におけるベースゴムの残部は、フッ素ゴムとフッ素樹脂とを含有する形態と、フッ素ゴムを含まずフッ素樹脂を含有する形態とを含む。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ベースゴムの溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記工程(a−2)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
このようにして調製される触媒MBは、シラノール縮合触媒及びキャリアゴムの混合物である。
【0059】
本発明の製造方法において、次いで、シランMBと触媒MBとを溶融混合して、反応組成物を得る工程(c)を行う。この反応組成物は、上記工程(a)(好ましくは工程(a−2))で合成したシラン架橋性ゴムを含む組成物である。
混合方法は、上述のように均一な反応組成物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。例えば、混合は、工程(a−2)の溶融混合と基本的に同様である。DSC等で融点が測定できない樹脂成分、例えばエラストマーもあるが、少なくともベースゴムが溶融する温度で混練する。溶融温度は、ベースゴム又はキャリアゴムの溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃である。その他の条件、例えば混合(混練)時間は適宜設定することができる。
工程(c)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
工程(c)においては、シランMBとシラノール縮合触媒とを混合すればよく、シランMBと触媒マスターバッチとを溶融混合するのが好ましい。
【0060】
本発明においては、シランMBとシラノール縮合触媒又は触媒MBとを溶融混合する前に、ドライブレンドすることができる。ドライブレンドの方法及び条件は、特に限定されず、例えば、工程(a−1)での乾式混合及びその条件が挙げられる。このドライブレンドにより、シランMBとシラノール縮合触媒とを含有するマスターバッチ混合物が得られる。
【0061】
このようにして、工程(a)〜(c)(工程(1))を行い、反応組成物として、シラン架橋性ゴム組成物が製造される。
工程(1)において、工程(a)〜(c)は、同時又は連続して行うことができる。
【0062】
本発明のシラン架橋性ゴム成形体の製造方法は、次いで、得られた反応組成物を成形して成形体を得る工程(2)を行う。この工程(2)は、反応組成物を成形できればよく、本発明の耐熱性製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた射出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバーケーブルである場合に、好ましい。
【0063】
工程(2)は、工程(c)と同時に又は連続して、行うことができる。すなわち、工程(c)の溶融混合の一実施態様として、溶融成形の際、例えば押出成形の際に、又は、その直前に、成形原料を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、ドライブレンド等のペレット同士を常温又は高温で混ぜ合わせて成形機に導入(溶融混合)してもよいし、混ぜ合わせた後に溶融混合し、再度ペレット化をして成形機に導入してもよい。より具体的には、シランMBとシラノール縮合触媒又は触媒MBとのマスターバッチ混合物(成形材料)を被覆装置内で溶融混練し、次いで、導体等の外周面に押出被覆して、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
このようにして、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒又は触媒MBとをドライブレンドしてマスターバッチ混合物を調製し、マスターバッチ混合物を成形機に導入して成形した、耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物の成形体が得られる。
【0064】
ここで、マスターバッチ混合物の溶融混合物(反応組成物)は、架橋方法の異なるシラン架橋性ゴムを含有する。このシラン架橋性ゴムにおいて、シランカップリング剤の反応部位は、無機フィラーと結合又は吸着していてもよいが、後述するようにシラノール縮合していない。したがって、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーと結合又は吸着したシランカップリング剤がベースゴム(フッ素ゴム、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂等)にグラフトした架橋性ゴムと、無機フィラーと結合又は吸着していないシランカップリング剤がベースゴムにグラフトした架橋性ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋性ゴムは、無機フィラーが結合又は吸着したシランカップリング剤と、無機フィラーが結合又は吸着していないシランカップリング剤とを有していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応のベースゴム成分を含んでいてもよい。
シラン架橋性ゴムは、ベースゴム成分として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の各樹脂及びアクリルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する場合、動的架橋している。ここで、「動的架橋」とは、上記の少なくとも1種の樹脂又はゴムを、有機過酸化物の存在下、マスターバッチ混合物の溶融混合状態で(混合若しくは混練中に)、部分的に架橋させること、又は、架橋した状態をいう。この動的架橋により、流動性が低下する(例えば、ムーニー粘度が向上し、又は、メルトフローレート(MFR)が低下する)。この動的架橋は、上記工程(a)及び/又は工程(c)での混合時に、形成される。
上記のように、シラン架橋性ゴムは、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(c)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物について、少なくとも成形時の成形性が保持されたものとする。
工程(2)により得られる成形体は、上記混合物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(2)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体は、工程(3)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
【0065】
本発明の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法においては、工程(2)で得られた成形体を水と接触させる工程(3)を行う。これにより、シランカップリング剤の、シラノール縮合可能な反応部位が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合して架橋反応が起こる。こうして、シランカップリング剤がシラノール縮合して架橋した耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を得ることができる。
この工程(3)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで進行する。したがって、工程(3)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。この架橋反応を促進させるために、成形体を水分と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
【0066】
このようにして、本発明の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の製造方法が実施され、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体が製造される。この耐熱性架橋フッ素ゴム成形体は、ベースゴムのシラン架橋物、すなわち、(シラン架橋性)ゴム又は樹脂がシラノール結合(シロキサン結合)を介して縮合した架橋ゴム又は架橋樹脂(これらを纏めて、架橋フッ素ゴムという。)を含んでいる。このシラン架橋フッ素ゴム成形体の一形態は、シラン架橋フッ素ゴムと無機フィラーとを含有する。ここで、無機フィラーはシラン架橋フッ素ゴムのシランカップリング剤に結合していてもよい。したがって、ベースゴムが、シラノール結合を介して無機フィラーと架橋してなる態様を含む。具体的には、このシラン架橋フッ素ゴムは、複数のベースゴムがシランカップリング剤により無機フィラーに結合又は吸着して、無機フィラー及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)した架橋フッ素ゴムと、上記シラン架橋性ゴムのシランカップリング剤の反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シランカップリング剤を介して架橋した架橋フッ素ゴムとを少なくとも含む。また、シラン架橋フッ素ゴムは、無機フィラー及びシランカップリング剤を介した結合(架橋)と、シランカップリング剤を介した架橋とが混在していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応のゴム成分及び/又は架橋していないシラン架橋性ゴムを含んでいてもよい。
この架橋フッ素ゴムは、シラン架橋性ゴムについて上述したように、さらに動的架橋される場合もある。
【0067】
本発明の製造方法における反応機構の詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。
一般に、ベースゴム、特にフッ素ゴムに対して有機過酸化物を加えると急激にラジカルが発生し、ベースゴム同士の架橋反応や分解反応が生じやすくなる。これにより、得られる成形体には、ブツが発生し、物性が低下する。
しかし、本発明においては、工程(1)において、そのシランカップリング剤を無機フィラーとシラノール結合や水素結合、分子間結合によって結合させる。特に工程(1)の好ましい形態においては、この結合を生じる処理と、溶融混合処理とは、別に行う。これらにより、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベースゴムとがグラフト反応する機会が増やされているものと考えられる。この保持されたシランカップリング剤とベースゴムに生じるラジカルの結合反応は、上記ベースゴム同士の架橋反応や分解反応よりも、優勢になると考えられる。したがって、シランカップリング剤のベースゴムに対するグラフト反応(シラン架橋)が可能となり、本反応中(工程(1))においてベースゴム、特にフッ素ゴムの分解反応等による劣化や、ベースゴム同士の架橋反応が生じない。そのため、ブツの発生や物性の低下が生じにくくなると考えられる。
【0068】
工程(a)が工程(a−1)及び(a−2)を含む場合には、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体にさらに優れた耐熱性を付与できる。
工程(a−2)において、上記成分を混練り(溶融混合)する際に、無機フィラーと弱い結合(水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等)で結合又は吸着したシランカップリング剤は、無機フィラーから脱離し、結果的にベースゴムにグラフト反応する。このようにしてグラフト反応したシランカップリング剤は、その後、シラノール縮合可能な反応部位が縮合反応(架橋反応)して、シラノール縮合を介して架橋したベースゴム、特にフッ素ゴムを形成する。この架橋反応により得られた耐熱性架橋フッ素ゴム成形体の耐熱性は高くなる。
一方、無機フィラーと強い結合(無機フィラー表面の水酸基等との化学結合等)で結合したシランカップリング剤は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応が生じにくく、無機フィラーとの結合が保持される。そのため、シランカップリング剤を介したフッ素ゴムと無機フィラーの結合(架橋)が生じる。これによりフッ素ゴムと無機フィラーの密着性が強固になり、機械強さ、耐摩耗性が良好で、傷つきにくい成形体が得られる。特に、1つの無機フィラー粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い機械強さを得ることができる。
これらのシラン架橋性ゴム又はシラングラフトポリマーを、シラノール縮合触媒とともに成形し、次いで水分と接触させることで、高い耐熱性及び耐摩耗性を有する架橋フッ素ゴム成形体を得ることが可能となると推定される。
【0069】
本発明においては、ベースゴム100質量部に対して、有機過酸化物を0.003質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、また0.5質量部以下、好ましくは0.2質量部以下の割合で混合し、さらに、シランカップリング剤を、2〜15質量部の割合で無機フィラーの存在下に混合することにより、耐熱性の高い耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を得ることができる。
【0070】
本発明の製造方法において、ベースゴムにフッ素ゴムに加えて不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂を特定量含有させると、上記の耐熱性に加えて、耐摩耗性及び外観に優れた耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を得ることができる。その理由については、以下のように考えられる。
ベースゴムに含まれる不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂は、変性により導入されたカルボン酸基を介して無機フィラーと結合又は吸着(化学的若しくは物理的に相互作用)する。このため、本発明においては、上述した、シランカップリング剤と無機フィラーとの強い結合に加えて、無機フィラーと不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂との間の架橋(結合)も形成される。その結果、無機フィラーとベースゴム成分との密着度がより高くなる。また、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂を、特定の配合量添加することによって無機フィラーの分散性を高める。これらの結果、優れた耐摩耗性が得られると考えられる。不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の量が多すぎる場合には、無機フィラーとの密着度が高くなりすぎ、かえって所望の耐摩耗性が得られないことがある。また、エチレン系共重合体自体の耐熱性がフッ素ゴムと比べると劣るため、これの量が多い場合は耐熱性も低下する。
また、フッ素ゴムと不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂との混和性は高い。このため、ベースゴムがこれらの成分を含有することにより、シランMB及び触媒MBを混合して得られる耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物の粘度が低下して、外観が良好になると考えられる。
【0071】
本発明の製造方法は、耐熱性が要求される製品(半製品、部品、部材も含む。)、さらには、強度が求められる製品、難燃性が要求される製品、ゴム材料等の製品の構成部品又はその部材の製造に適用することができる。したがって、本発明の耐熱性製品は、このような製品とされる。このとき、耐熱性製品は、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体を含む製品でもよく、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体のみからなる製品でもよい。
本発明の耐熱性製品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線、耐熱難燃ケーブル又は光ファイバーケーブルの被覆材料、ゴム代替電線・ケーブルの材料、その他、電子レンジ又はガスレンジ用耐熱部品、耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気・電子機器の内部配線及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ファイバーケーブルが挙げられる。
【0072】
本発明の製造方法は、上記製品の中でも、特に電線及び光ファイバーケーブルの製造に好適に適用され、これらの被覆材料(絶縁体、シース)を形成することができる。
本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバーケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混練して耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物を調製しながら、この耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物を導体等の外周に押し出して、導体等を被覆する等により、製造できる。このような耐熱性製品は、無機フィラーを大量に加えても耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物を電子線架橋機等の特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(本発明の耐熱性架橋フッ素ゴム成形体からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが、通常、0.15〜10mm程度である。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
表1において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
【0074】
実施例及び比較例は、下記成分を用いて、それぞれの諸元を表1に示す条件に設定して実施し、表1に後述する評価結果を併せて示した。
【0075】
表1中に示す各化合物の詳細を以下に示す。
フッ素ゴムのフッ素含有量は、上記の「炭酸カリウム加熱分解法」による値である。
<ベースゴム>
(フッ素ゴム)
「アフラス400E」(商品名、AGC旭硝子社製、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴム、フッ素含有量57質量%)
「アフラス150P」(商品名、AGC旭硝子社製、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体ゴム、フッ素含有量57質量%)
「バイトンGBL200」(商品名、デュポンエラストマー社製、ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体ゴム、フッ素含有量66質量%)
(不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂)
「フサボンドC250」(商品名、デュポン社製、不飽和カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の樹脂)
「BONDINE TX8030」(商品名、アルケマ社製、不飽和カルボン酸変性エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)の樹脂)
「LOTADER 3410」(商品名、アルケマ社製、不飽和カルボン酸変性エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)の樹脂)
(他の樹脂)
「VF120T」(商品名、宇部興産社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂、酢酸ビニル含有量:20質量%)
「NUC6510」(商品名、日本ユニカー社製、エチレン−エチルアクリレート樹脂、EA含有量23質量%、密度0.93g/cm
3)
「RP−4020」(商品名、ダイキン工業社製、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン(エチレン−FEP)共重合体の樹脂、融点:160℃)
「LH−8000」(商品名、旭硝子社製、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体の樹脂、融点:180℃)
「EP610」(商品名、ダイキン工業社製、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体の樹脂、融点:210℃)
【0076】
<有機過酸化物>
「パーヘキサ25B」(商品名、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度149℃)
【0077】
<無機フィラー>
「亜鉛華1号」(商品名、三井金属社製、酸化亜鉛)
「ソフトン1200」(商品名、備北粉化工業社製、炭酸カルシウム)
「アエロジル200」(商品名、日本アエロジル社製、親水性フュームドシリカ、非結晶性シリカ)
「クリスタライト5X」(商品名、龍森社製、結晶性シリカ)
「サティトンSP−33」(商品名、エンゲルハード社製、焼成クレー)
「MVタルク」(商品名、日本ミストロン株式会社製、タルク)
【0078】
<シランカップリング剤>
「KBM−1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリメトキシシラン)
「KBE−1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリエトキシシラン)
【0079】
<シラノール縮合触媒>
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
【0080】
<酸化防止剤>
「イルガノックス1010」(商品名、BASF社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
【0081】
(実施例1〜26及び比較例1〜8)
実施例1〜26及び比較例1〜8において、ベースゴムの一部を触媒MBのキャリアゴムとして用いた。実施例1〜26においては、シランMB及び触媒MBのいずれかに、ベースゴム(キャリアゴム)の成分として不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂を用いた。
【0082】
まず、無機フィラーとシランカップリング剤とを、表1に示す質量比で、東洋精機製10Lヘンシェルミキサーに投入し、室温(25℃)で1時間混合して、粉体混合物を得た(工程(a−1))。次に、このようにして得られた粉体混合物と、表1のベースゴム欄に示す各成分及び有機過酸化物とを、表1に示す質量比で、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度、具体的には190℃において10分混練り後、材料排出温度200℃で排出し、シランMBを得た(工程(a−2))。得られたシランMBは、ベースゴムにシランカップリング剤がグラフト反応したシラン架橋性ゴムを含有している。
【0083】
一方、実施例1〜24、26、比較例1〜8において以下の通りに触媒MBを準備した。キャリアゴムとシラノール縮合触媒と酸化防止剤とを、表1に示す質量比で、180〜190℃でバンバリーミキサーにて溶融混合し、材料排出温度180〜190℃で排出して、触媒MBを得た(工程(b))。
また、実施例25はキャリアゴムの一部に融点が210℃のエチレンテトラフルオロエチレンを用いているため、200〜225℃でバンバリーミキサーで溶融混合し、材料排出温度225℃で排出して触媒MBを得た。
これらの触媒MBは、キャリアゴム及びシラノール縮合触媒の混合物である。
【0084】
次いで、シランMBと触媒MBを密閉型のリボンブレンダーに投入し、室温(25℃)で5分間ドライブレンドしてドライブレンド物(マスターバッチ混合物)を得た。
【0085】
次いで、得られたドライブレンド物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=24、スクリュー直径30mmのスクリューを備えた押出機(圧縮部スクリュー温度170℃、ヘッド温度225℃に導入した。この押出機内でドライブレンド物を溶融混合しながら(工程(c))、1/0.8TA導体の外側に肉厚1mmで被覆し、外径2.8mmとなるように、線速10m/分で押出被覆して、被覆導体を得た(工程(2))。この被覆導体を温度40℃、湿度95%の雰囲気に1週間放置した(工程(3))。
このようにして、上記導体の外周面に、耐熱性架橋フッ素ゴム成形体からなる被覆層を有する電線を製造した。被覆層としての耐熱性架橋フッ素ゴム成形体は上述のシラン架橋フッ素ゴムを有している。
比較例5は、ブツが多量に発生して、押出成形できなかった。
【0086】
上記ドライブレンド物を押出機内で押出成形前に溶融混合することにより、耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物が調製される。この耐熱性架橋性フッ素ゴム組成物は、シランMBと触媒MBとの溶融混合物であって、上述のシラン架橋性ゴムを含有している。
【0087】
製造した各電線について、下記試験をし、その結果を表1に示した。
【0088】
<加熱変形試験>
製造した電線の耐熱性について、下記により評価した。
製造した各電線において、JIS C 3005の試験方法に基づいて、180℃で30分電線サンプルを予熱した後、測定温度180℃、30分、荷重500gf(4.9N)で、加熱変形試験を行った。本試験において、加熱変形は、加熱変形率が20%以下である場合を「A(極めて優れているもの)」、20%を越え30%以下である場合を「B(優れているもの)」、30%を越え50%以下である場合を「C(良好なもの)」とし、これらを合格レベルとした。一方、変形率が50%を越えるものを「D(不合格)」とした。
【0089】
<ホットセット試験>
製造した電線の耐熱性について、下記により評価した。
製造した各電線から導体を抜き取って作製した管状片を用いて、ホットセット試験を行った。ホットセット試験は、この管状片に、長さ50mmの評線を付けた後に、恒温槽の中に20N/cm
2のおもりを取り付け15分間放置し、放置後の長さを測定し伸び率(伸び分(mm))/50mm×100)が100%以下であるかどうかを確認した。測定に用いた恒温槽の温度が250℃でも伸び率が100%以下の場合を極めて優れているもの「A」、恒温槽の温度が250℃では伸び率が100%を越えるが200℃では伸び率が100%以下の場合を良好なもの「B」とした。一方、恒温槽の温度が200℃で伸び率が100%を越える場合を「D」で表し、不合格とした。
【0090】
<耐摩耗性試験>
製造した電線の耐摩耗性について、下記耐摩耗性試験(過酷促進試験)により評価した。
上記により得られた各電線(サンプル)を用いて、EN50305に準拠して耐摩耗性試験を行った。電線サンプルを水平に設置し、電線の上から、0.45mmφの鋼ブレードを10Nの負荷荷重を加えながら連続で往復させ、被覆層を摩耗させた。ブレードがサンプルの導体に達するまで連続で往復させた。摩耗部分は、1サンプルにつき、90、180、270、360度円周方向の合計4回実施し、往復回数の平均値を算出した。平均値が500回以上であるものを「A(極めて高度なもの)」、400〜499回であるものを「B(高度なもの)」、250〜399回以下であるものを「C(良好なもの)」、100〜249回以下であるものを「D(許容範囲)」、99回以下であるものを「E(不合格)」とした。
【0091】
<押出外観試験>
上記電線の製造において、押出被覆時の線速を変えたこと以外は上記電線の製造と同様にして耐熱性架橋フッ素ゴム成形体からなる被覆層を有する電線を製造し、得られた電線の被覆層の外観を観察して押出外観を評価した。
線速50m/分以上でも被覆層の外観にブツがなく表面が平滑な電線を成形できたものを「A(極めて優れたもの)」、線速30m/分以上50m/分未満で被覆外観にブツがなく表面が平滑な電線を成形できたものを「B(優れたもの)」、線速10m/分以上30m/分未満で被覆外観にブツがなく表面が平滑な電線を成形できたものを「C(良好なもの)」、線速10m/分未満でも著しく外観不良が発生して電線形状に成形できなかったものを「D(不良)」とした。押出外観試験は、参考試験であるが、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
【0092】
<加熱老化試験>
製造した電線の耐熱性(長期耐熱性)について、下記により評価した。
各電線から導体を抜き取って作成した管状片を加熱温度236℃で168時間保持した後、JIS C 3005に基づき、標線間20mm、及び引張速度200mm/分の条件で、引張強さ(MPa)を測定した。
保持後引張強さを保持前の引張強さで除して、引張強さの残率(%)を算出した。
引張強さ残率が80%以上であるものを極めて優れているもの「A」、70%以上80%未満であるものを優れているもの「B」、60%以上70%未満であるものを良好なもの「C」、60%未満であるものを不合格「D」とした。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表1の結果から、以下のことが分かる。
比較例1〜8はいずれも加熱変形試験、ホットセット試験、加熱老化試験、及び耐摩耗性試験の少なくともいずれかに不合格であった。
シランMBと触媒MBにおいて不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂をいずれも含有しない比較例1と8は、耐摩耗性試験に不合格であった。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂の含有率がベースゴムの1〜40質量%の範囲内にない比較例2及び3は、いずれも耐摩耗性試験に不合格であった。比較例3は加熱老化試験にも不合格であった。
有機過酸化物の配合量が少なすぎる比較例4は、加熱変形試験、ホットセット試験、及び加熱老化試験のいずれにも不合格であった。架橋が不十分であったと考えられる。
有機過酸化物の配合量が多すぎる比較例5は、電線を製造することができず、上記試験を行えなかった。架橋が進み過ぎたと考えられる。
無機フィラーの配合量がベースゴム100質量部に対して0.5〜400質量部の範囲内になく、かつシランカップリング剤も少ない比較例6及び7は、いずれも加熱変形試験、ホットセット試験、及び加熱老化試験のいずれにも不合格であった。更に、押出外観試験にも不合格であった。
これに対し、フッ素ゴム及び不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂をシランMB及び/又は触媒MBに配合し、さらに有機過酸化物、無機フィラー、及びシランカップリング剤を特定量用いて、本発明の製造方法で調製した実施例1〜26は、いずれも加熱変形試験、ホットセット試験、加熱老化試験、及び耐摩耗性試験に合格し、更に、押出外観試験にも合格していた。
不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂を用いない比較例1と、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂をシランMBに含有する実施例1との比較より、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂をフッ素ゴムと組み合わせてベースゴムとして使用することにより、特に耐摩耗性が向上することが分かる。実施例1の電線は、比較例1の電線と比較して、上記過酷促進試験において1.6〜5倍程度の往復回数にも耐えており、実使用における電線としてのライフサイクルが大きく向上することが分かる。
実施例4〜7から、ベースゴムにおいて、フッ素ゴムが60〜97質量%であり、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体を3〜40質量%である場合に、特に耐摩耗性に優れる。
また、実施例1〜3と実施例8〜10の比較から、不飽和カルボン酸変性エチレン系共重合体樹脂をシランMBに配合した方が、耐熱性に優れる傾向にある。