(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762364
(24)【登録日】2020年9月10日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】レーザシステム
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/10 D
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-530224(P2018-530224)
(86)(22)【出願日】2016年7月26日
(86)【国際出願番号】JP2016071803
(87)【国際公開番号】WO2018020564
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 貴士
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】
百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−277617(JP,A)
【文献】
特開2011−192849(JP,A)
【文献】
国際公開第03/021732(WO,A1)
【文献】
特開2010−3755(JP,A)
【文献】
特開平1−132186(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0216037(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/096171(WO,A1)
【文献】
特開2008−135631(JP,A)
【文献】
特開2006−186046(JP,A)
【文献】
特開2005−148550(JP,A)
【文献】
特表2009−532864(JP,A)
【文献】
特開2013−214708(JP,A)
【文献】
特開2012−15445(JP,A)
【文献】
特開2009−76906(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/092855(WO,A1)
【文献】
特開2008−34871(JP,A)
【文献】
特表2009−540607(JP,A)
【文献】
特開2005−303135(JP,A)
【文献】
特開平4−147683(JP,A)
【文献】
特開平4−73983(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0290025(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0126690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザシステムは、以下を備える:
A.パルスレーザ光を出力するレーザ装置;及び
B.前記パルスレーザ光のパルス幅を伸長するための遅延光路を含む第1の光学パルスストレッチャであって、前記遅延光路を周回して出力される周回光のビームウェスト位置を、周回数に応じて光路軸方向に変化させるように構成された第1の光学パルスストレッチャ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記周回光は、理想レンズで集光した場合に、集光位置が、周回数に応じて光路軸方向に変化する。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
前記遅延光路は、複数の凹面ミラーにより構成されており、
前記複数の凹面ミラーのうち少なくとも1つの凹面ミラーの曲率が、他の凹面ミラーの曲率と異なる。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
前記遅延光路は、複数の凹面ミラーにより構成されており、
前記複数の凹面ミラーのうち少なくとも1つの凹面ミラーが、コリメート条件を満たす位置から、前記遅延光路の光路長を変更する方向に移動されている。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
前記遅延光路は、複数の凹面ミラーにより構成されており、
前記遅延光路には、発散角を変更して出力するレンズが配置されている。
【請求項6】
請求項1に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
前記遅延光路は、複数の高反射ミラーと、複数の集光レンズとにより構成されており、
前記複数の集光レンズのうち少なくとも1つの集光レンズは、コリメート条件を満たす位置から光路軸方向に移動されている。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記遅延光路の光路長が、前記パルスレーザ光の時間的コヒーレント長以上である。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
C.前記第1の光学パルスストレッチャから出力される伸長パルスレーザ光を増幅する増幅器。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザシステムであって、
前記増幅器は、ファブリペロ共振器またはリング共振器を含む。
【請求項10】
請求項8に記載のレーザシステムであって、
前記増幅器は、マルチパス増幅器である。
【請求項11】
請求項8に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
D.前記第1の光学パルスストレッチャと前記増幅器との間に配置されたビームエキスパンダ;
ここで、前記ビームエキスパンダは、前記伸長パルスレーザ光のビーム径を、前記増幅器の放電空間の幅に合わせるように拡大する。
【請求項12】
請求項8に記載のレーザシステムであって、以下をさらに含む:
E.前記増幅器からの出力光のパルス幅を伸長する第2の光学パルスストレッチャ。
【請求項13】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記パルスレーザ光のパルス幅をΔD、前記遅延光路の光路長をLOPS、光速をcとした場合に、下式(a)を満たす。
LOPS=c・ΔD ・・・(a)
【請求項14】
請求項8に記載のレーザシステムであって、
前記増幅器は、ファブリペロ共振器であり、
伸長パルスレーザ光のパルス幅をΔDT、前記ファブリペロ共振器の光路長をLamp、光速をcとした場合に、下式(b)を満たす。
ΔDT≧Lamp/c ・・・(b)
【請求項15】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記レーザ装置は、固体レーザ装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置及び光学パルスストレッチャを含むレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用レーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193.4nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけ上の波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350〜400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には、狭帯域化素子を有する狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module)が設けられている。この狭帯域化モジュールによりスペクトル線幅の狭帯域化が実現されている。狭帯域化素子は、エタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル線幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【0005】
また、レーザ装置には、露光装置の光学系に与えるダメージが小さくなるように、レーザ光のパルス幅を伸長する光学パルスストレッチャが用いられる。光学パルスストレッチャは、レーザ装置から出力されるレーザ光に含まれる各パルス光を、時間差を有する複数のパルス光に分解することにより、各パルス光のピークパワーレベルを下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−176358号公報
【特許文献2】特許第2760159号公報
【特許文献3】特開平11−312631号公報
【特許文献4】特開2012−156531号公報
【0007】
本開示の1つの観点に係るレーザシステムは、以下を備える:
A.パルスレーザ光を出力するレーザ装置;及び
B.パルスレーザ光のパルス幅を伸長するための遅延光路を含む第1の光学パルスストレッチャであって、遅延光路を周回して出力される周回光のビームウェスト位置を、周回数に応じて光路軸方向に変化させるように構成された第1の光学パルスストレッチャ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、比較例に係るレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、ビームスプリッタ及び第1〜第4の凹面ミラーの位置関係を説明する図である。
【
図3】
図3は、OPSからの出力光について説明する図である。
【
図4】
図4は、パルスレーザ光を時間的及び空間的に分解するOPSの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、伸長パルスレーザ光の放電空間内への入射光路を説明する図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るレーザシステムの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、ビームスプリッタ及び第1〜第4の凹面ミラーの位置関係を説明する図である。
【
図8】
図8は、増幅器に入射される伸長パルスレーザ光について説明する図である。
【
図9】
図9Aは、OPSから出力される0周回光について説明する図である。
図9Bは、OPSから出力される1周回光について説明する図である。
図9Cは、OPSから出力される2周回光について説明する図である。
【
図10】
図10は、伸長パルスレーザ光の放電空間内への入射光路を説明する図である。
【
図11】
図11Aは、第1の実施形態のOPSからの出力光のビームウェスト位置の変化を計測する方法を説明する模式図である。
図11Bは、比較例のOPSからの出力光のビームウェスト位置の変化の計測例を示す図である。
【
図12】
図12は、OPSからの出力光のスポット径の変化を例示する図である。
【
図13】
図13は、第1の変形例に係るOPSの構成を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の変形例に係るOPSの構成を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係るレーザシステムに用いられるOPSの構成を示す図である。
【
図16】
図16Aは、OPSから出力される0周回光について説明する図である。
図16Bは、OPSから出力される1周回光について説明する図である。
【
図17】
図17は、OPSから出力される2周回光について説明する図である。
【
図18】
図18は、増幅器と、増幅器の後段に配置されたOPSとを示す斜視図である。
【
図19】
図19は、第1の変形例に係る増幅器の構成を示す図である。
【
図20】
図20は、第2の変形例に係る増幅器の構成を示す図である。
【0009】
<内容>
1.比較例
1.1 構成
1.2 動作
1.3 パルス幅の定義
1.4 課題
1.4.1 空間分解による可干渉性の低下
2.第1の実施形態
2.1 構成
2.2 動作
2.3 効果
2.4 ビームウェスト位置について
2.5 OPSの変形例
2.5.1 第1の変形例
2.5.2 第2の変形例
3.第2の実施形態
3.2 動作
3.3 効果
4.増幅器の後段にOPSを配置する例
5.増幅器の変形例
5.1 第1の変形例
5.2 第2の変形例
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.比較例
1.1 構成
図1は、比較例に係るレーザシステム2の構成を概略的に示す。
図1において、レーザシステム2は、マスターオシレータとしての固体レーザ装置3と、光学パルスストレッチャ(OPS:Optical Pulse Stretcher)10と、ビームエキスパンダ20と、増幅器30と、を含む。
【0012】
固体レーザ装置3は、図示しない半導体レーザ、増幅器、非線形結晶等を含んで構成されている。固体レーザ装置3は、シングル横モードで、パルスレーザ光PLを出力する。パルスレーザ光PLは、ガウシアンビームであって、例えば、中心波長が193.1nm〜193.5nmの波長範囲内であり、かつスペクトル線幅が約0.3pmである。固体レーザ装置3は、中心波長が約773.4nmの狭帯域化されたパルスレーザ光を出力するチタンサファイアレーザと、4倍高調波を出力する非線形結晶と、を含む固体レーザ装置であってもよい。
【0013】
OPS10は、ビームスプリッタ11と、第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dと、を含む。ビームスプリッタ11は、部分反射ミラーである。ビームスプリッタ11の反射率は、40%〜70%の範囲内であることが好ましく、約60%であることがより好ましい。ビームスプリッタ11は、固体レーザ装置3から出力されるパルスレーザ光PLの光路上に配置されている。ビームスプリッタ11は、入射したパルスレーザ光PLの一部を透過させるとともに、他の一部を反射させる。
【0014】
第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dは、パルスレーザ光PLのパルス幅を伸長するための遅延光路を構成している。第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dは、全て同じ曲率半径Rの鏡面を有する。第1及び第2の凹面ミラー12a,12bは、ビームスプリッタ11で反射された光が、第1の凹面ミラー12aで反射され、第2の凹面ミラー12bに入射するように配置されている。第3及び第4の凹面ミラー12c,12dは、第2の凹面ミラー12bで反射された光が、第3の凹面ミラー12cで反射され、さらに第4の凹面ミラー12dで反射され、再びビームスプリッタ11に入射するように配置されている。
【0015】
ビームスプリッタ11と第1の凹面ミラー12aとの間の距離、及び第4の凹面ミラー12dとビームスプリッタ11との間の距離は、それぞれ曲率半径Rの半分、すなわち、R/2である。また、第1の凹面ミラー12aと第2の凹面ミラー12bとの間の距離、第2の凹面ミラー12bと第3の凹面ミラー12cとの間の距離、及び第3の凹面ミラー12cと第4の凹面ミラー12dとの間の距離は、それぞれ曲率半径Rと同じである。
【0016】
第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dは、全て同じ焦点距離Fを有する。焦点距離Fは、曲率半径Rの半分、すなわち、F=R/2である。したがって、第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dにより構成される遅延光路の光路長L
OPSは、焦点距離Fの8倍である。すなわち、OPS10は、L
OPS=8Fの関係を有する。
【0017】
図2は、ビームスプリッタ11及び第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dの位置関係を説明する図である。
図2では、第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dを、それぞれ焦点距離がFである凸レンズ13a〜13dに置き換えて示している。P0は、ビームスプリッタ11の位置を表している。P1〜P4は、それぞれ第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dの位置を表している。
【0018】
第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dにより構成される遅延光学系は、コリメート光学系であるので、第1の凹面ミラー12aへの入射光がコリメート光である場合、第4の凹面ミラー12dからの射出光はコリメート光となる。
【0019】
また、第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dは、光路長L
OPSが、パルスレーザ光PLの時間的コヒーレント長L
C以上となるように配置されている。時間的コヒーレント長L
Cは、L
C=λ
2/Δλの関係式に基づいて算出される。ここで、λは、パルスレーザ光PLの中心波長である。Δλは、パルスレーザ光PLのスペクトル線幅である。例えば、λ=193.35nm、Δλ=0.3pmの場合には、L
C=0.125mとなる。
【0020】
ビームエキスパンダ20は、OPS10から出力される伸長パルスレーザ光PTの光路上に配置されている。伸長パルスレーザ光PTは、パルスレーザ光PLのパルス幅がOPS10により伸長された光である。ビームエキスパンダ20は、凹レンズ21と凸レンズ22とを含む。ビームエキスパンダ20は、OPS10から入力された伸長パルスレーザ光PTを、そのビーム径を拡大して出力する。
【0021】
増幅器30は、ビームエキスパンダ20から出力される伸長パルスレーザ光PTの光路上に配置されている。増幅器30は、レーザチャンバ31と、一対の放電電極32a及び32bと、リアミラー33と、出力結合ミラー34と、を含むエキシマレーザ装置である。リアミラー33及び出力結合ミラー34は、部分反射ミラーであり、ファブリペロ共振器を構成している。リアミラー33及び出力結合ミラー34には、レーザ発振する波長の光を部分反射する膜がコートされている。リアミラー33の部分反射膜の反射率は、80%〜90%の範囲内である。出力結合ミラー34の部分反射膜の反射率は、20%〜40%の範囲内である。
【0022】
レーザチャンバ31内には、ArFレーザガス等のレーザ媒質が充填されている。一対の放電電極32a及び32bは、レーザ媒質を放電により励起するための電極として、レーザチャンバ31内に配置されている。一対の放電電極32a及び32bの間には、図示しない電源からパルス状の高電圧が印加される。
【0023】
以下、ビームエキスパンダ20から出力される伸長パルスレーザ光PTの進行方向を、Z方向と言う。一対の放電電極32a及び32bの間の放電方向を、V方向と言う。V方向は、Z方向に直交する。Z方向とV方向とに直交する方向をH方向と言う。
【0024】
レーザチャンバ31の両端には、ウィンドウ31a及び31bが設けられている。ビームエキスパンダ20から出力された伸長パルスレーザ光PTは、リアミラー33及びウィンドウ31aを通過して一対の放電電極32a及び32bの間の放電空間35に、シード光として入射する。放電空間35のV方向に関する幅は、ビームエキスパンダ20により拡大されたビーム径とほぼ一致している。
【0025】
固体レーザ装置3と増幅器30とは、図示しない同期制御部によって制御される。増幅器30は、伸長パルスレーザ光PTが放電空間35に入射したタイミングで放電するように、同期制御部によって制御される。
【0026】
1.2 動作
次に、比較例に係るレーザシステム2の動作について説明する。まず、固体レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光PLは、OPS10内のビームスプリッタ11に入射する。ビームスプリッタ11に入射したパルスレーザ光PLのうち一部は、ビームスプリッタ11を透過し、遅延光路を周回していない0周回光PS
0としてOPS10から出力される。
【0027】
ビームスプリッタ11に入射したパルスレーザ光PLのうち、ビームスプリッタ11により反射された反射光は、遅延光路に進入し、第1の凹面ミラー12aと第2の凹面ミラー12bとにより反射される。ビームスプリッタ11における反射光の光像は、第1及び第2の凹面ミラー12a,12bにより、等倍の第1の転写像として結像される。そして、第3の凹面ミラー12cと第4の凹面ミラー12dとによって、等倍の第2の転写像が、ビームスプリッタ11の位置に結像する。
【0028】
第2の転写像としてビームスプリッタ11に入射した光の一部は、ビームスプリッタ11により反射され、遅延光路を1回周回した1周回光PS
1としてOPS10から出力される。この1周回光PS
1は、0周回光PS
0から遅延時間Δtだけ遅れて出力される。このΔtは、Δt=L
OPS/cと表される。ここで、cは光速である。
【0029】
第2の転写像としてビームスプリッタ11に入射した光のうち、ビームスプリッタ11を透過した透過光は、再び遅延光路に進入し、第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dにより反射されて、再びビームスプリッタ11に入射する。ビームスプリッタ11により反射された反射光は、遅延光路を2回周回した2周回光PS
sとしてOPS10から出力される。この2周回光PS
sは、1周回光PS
1から遅延時間Δtだけ遅れて出力される。
【0030】
この後、光の遅延光路の周回が繰り返されることにより、OPS10からは、3周回光PS
3、4周回光PS
4、・・・と、順にパルス光が出力される。OPS10から出力されるパルス光は、遅延光路の周回数が多くなるほど光強度が低下する。
【0031】
図3に示すように、パルスレーザ光PLがOPS10に入射した結果、パルスレーザ光PLは、時間差を有する複数のパルス光PS
0,PS
1,PS
2,・・・に分解されて出力される。
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は光強度を表している。前述の伸長パルスレーザ光PTは、パルスレーザ光PLがOPS10により分解されてなる複数のパルス光PS
n(n=0,1,2,・・・)が合成されたものである。ここで、nは遅延光路の周回数を表す。
【0032】
光路長L
OPSが時間的コヒーレント長L
C以上であるので、複数のパルス光PS
nの相互の可干渉性(coherence)が低下する。したがって、複数のパルス光PS
nで構成される伸長パルスレーザ光PTの可干渉性が低下する。
【0033】
OPS10から出力された伸長パルスレーザ光PTは、ビームエキスパンダ20に入射し、ビームエキスパンダ20によりビーム径が拡大されて出力される。ビームエキスパンダ20から出力された伸長パルスレーザ光PTは、増幅器30に入射する。増幅器30に入射された伸長パルスレーザ光PTは、リアミラー33及びウィンドウ31aを通過して放電空間35にシード光として入射する。
【0034】
放電空間35には、伸長パルスレーザ光PTが入射するのに同期して、図示しない電源により放電が生じる。伸長パルスレーザ光PTが、放電によって励起された放電空間35を通過することによって、誘導放出が生じ、増幅される。そして、増幅された伸長パルスレーザ光PTは、光共振器によって発振して、出力結合ミラー34から出力される。
【0035】
この結果、レーザシステム2からは、固体レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光PLに比べて、ピークパワーレベルが低下し、かつ可干渉性が低下した伸長パルスレーザ光PTが出力される。
【0036】
1.3 パルス幅の定義
レーザ光のパルス幅TISは、下式1により定義される。ここで、tは時間である。I(t)は、時間tにおける光強度である。伸長パルスレーザ光PTのパルス幅は、下式1を用いて求められる。
【0038】
1.4 課題
次に、比較例に係るレーザシステム2の課題について説明する。レーザシステム2から露光装置に供給されるレーザ光は、可干渉性が低いほど好ましいため、さらなる可干渉性の低下が求められている。
【0039】
1.4.1 空間分解による可干渉性の低下
比較例に係るレーザシステム2では、OPS10によりパルスレーザ光PLを時間的に分解することにより可干渉性を低下させているが、さらにパルスレーザ光PLを空間的に分解することにより可干渉性を低下させることが可能である。
【0040】
図4は、パルスレーザ光PLを時間的及び空間的に分解することを可能とするOPS40の構成を示す。OPS40は、第4の凹面ミラー12dの配置が異なること以外は、前述のOPS10の構成と同一である。
【0041】
図4において、第4の凹面ミラー12dは、破線で示すOPS10の第4の凹面ミラー12dの位置に対して、H方向を回転軸として僅かに回転させた位置に配置されている。この構成により、OPS40から出力される複数のパルス光PS
nは、遅延光路の周回数nに応じて、出射角がV方向に変化する。すなわち、OPS40から出力される複数のパルス光PS
nは、光路軸が互いに異なる。この結果、OPS40から出力される複数のパルス光PS
nは、V方向に空間的に分解されてビームエキスパンダ20に入射する。なお、
図4では、パルスレーザ光PLのOPS40への入射方向を、Z方向から僅かに傾けている。
【0042】
図5は、ビームエキスパンダ20から出力された複数のパルス光PS
nが、シード光として増幅器30の放電空間35に入射する光路を示す。このように、複数のパルス光PS
nは、遅延光路の周回数nに応じて、放電空間35内の通過光路が異なる。OPS40は、パルスレーザ光PLを時間的及び空間的に分解した複数のパルス光PS
nを生成するので、増幅器30の出力光の可干渉性がさらに低下する。
【0043】
しかしながら、上記のようにパルスレーザ光PLを時間的及び空間的に分解すると、放電空間35は、V方向に関して時間的に同時にシード光で満たされることはない。例えば、放電空間35中の0周回光PS
0が入射する空間は、0周回光PS
0が入射する時間しかシード光が存在しない。このため、1周回光PS
1以降の周回光が入射する時間には、0周回光PS
0の光路上には、シード光は存在しない。
【0044】
エキシマレーザである増幅器30では、上準位に励起された原子の寿命である上準位寿命が、2ns程度と短い。このため、放電空間35中にシード光で満たされない空間が存在すると、その空間では、シード光による誘導放出が生じる前に、自然放出が生じてしまう。この結果、増幅器30の出力光には、誘導放出による増幅光以外に、自然放出による増幅(ASE:Amplified Spontaneous Emission)光がノイズとして多く含まれることになる。
【0045】
したがって、
図4に示すように構成されたOPS40を用いると、増幅器30の出力光は、可干渉性が低下するが、ASE光が増加するという問題がある。このASE光の発生を抑制するためには、増幅器30の光共振器の反射率を高め、光共振器内にシード光をより多く存在させることが考えられる。しかし、光共振器の反射率を高めると、光共振器内のエネルギーが高くなり、光学素子損傷する可能性がある。
【0046】
また、ASE光の発生を抑制するためには、伸長パルスレーザ光PTのパルス幅を長くすることが考えられる。しかし、伸長パルスレーザ光PTのパルス幅を長くすると、シード光の光強度が低下し、増幅に寄与しない成分が増加するため、ASE光がより多く発生する可能性がある。
【0047】
2.第1の実施形態
次に、本開示の第1の実施形態に係るレーザシステムについて説明する。第1の実施形態に係るレーザシステムは、OPSの構成が異なること以外は、
図1に示した比較例に係るレーザシステムの構成と同一である。以下では、
図1に示した比較例に係るレーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0048】
1.1 構成
図6は、第1の実施形態に係るレーザシステム50の構成を示す。レーザシステム50は、固体レーザ装置3と、OPS60と、ビームエキスパンダ20と、増幅器30と、を含む。OPS60は、ビームスプリッタ61と、第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dと、を含む。ビームスプリッタ61は、比較例のビームスプリッタ11と同一の構成である。
【0049】
第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dは、第4の凹面ミラー62dのみ、他のものとは鏡面の曲率半径が異なる。具体的には、第1の凹面ミラー62aの曲率半径をR
1、第2の凹面ミラー62bの曲率半径をR
2、第3の凹面ミラー62cの曲率半径をR
3、第4の凹面ミラー62dの曲率半径をR
4とすると、R
1=R
2=R
3=R、及びR
4<Rの関係を満たす。また、第1の凹面ミラー62aの焦点距離をF
1、第2の凹面ミラー62bの焦点距離をF
2、第3の凹面ミラー62cの焦点距離をF
3、第4の凹面ミラー62dの焦点距離をF
4とすると、F
1=F
2=F
3=F、及びF
4<Fの関係を満たす。
【0050】
第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dの配置は、比較例と同様である。ビームスプリッタ61と第1の凹面ミラー62aとの間の距離、及び第4の凹面ミラー62dとビームスプリッタ61との間の距離は、第1〜第3の凹面ミラー62a〜62cの曲率半径Rの半分、すなわち、R/2である。また、第1の凹面ミラー62aと第2の凹面ミラー62bとの間の距離、第2の凹面ミラー62bと第3の凹面ミラー62cとの間の距離、及び第3の凹面ミラー62cと第4の凹面ミラー62dとの間の距離は、それぞれ曲率半径Rと同じである。
【0051】
したがって、第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dにより構成される遅延光路の光路長L
OPSは第1〜第3の凹面ミラー62a〜62cの焦点距離Fの8倍、すなわち、L
OPS=8Fである。なお、ビームスプリッタ11及び第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dは、OPS60から出力される0周回光PS
0の光路軸と1周回光PS
1の光路軸とが一致するように配置されている。すなわち、第1の実施形態では、OPS60から出力される複数のパルス光PS
nの光路軸は、全て一致する。
【0052】
図7は、ビームスプリッタ61及び第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dの位置関係を説明する図である。
図7では、第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dを、それぞれ焦点距離がFである凸レンズ63a〜63cと、焦点距離がFより短い凸レンズ63dとに置き換えて示している。P0は、ビームスプリッタ61の位置を表している。P1〜P4は、それぞれ第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dの位置を表している。
【0053】
L
OPS=8Fであるのに対して、F
1=F
2=F
3=F、及びF
4<Fであるので、遅延光学系は、コリメート条件を満たさない非コリメート光学系である。このため、第1の凹面ミラー62aへの入射光がコリメート光である場合、第4の凹面ミラー62dからの射出光は非コリメート光となる。
【0054】
OPS60は、比較例のOPS10と同様に、
図3に示されるように、固体レーザ装置3から入射したパルスレーザ光PLを、時間差を有する複数のパルス光PS
n(n=0,1,2,・・・)に分解し、伸長パルスレーザ光PTとして出力する。パルスレーザ光PLは、ガウシアンビームであるので、OPS60から出力される複数のパルス光PS
nの各発散角θ
nは、遅延光路の周回数nに応じて変化する。また、複数のパルス光PS
nの各ビームウェスト位置w
nは、遅延光路の周回数nに応じてZ方向に移動する。発散角θ
nとビームウェスト位置w
nとは、反比例の関係にある。発散角θ
n及びビームウェスト位置w
nは、第4の凹面ミラー62dの曲率によって決定される。
【0055】
ビームウェスト位置は、ビームのスポットサイズが最小となる位置であり、波面の曲率半径が平面となる位置と一致する。発散角は、ビームウェスト位置から十分離れた距離でのビームの角度広がりを表す。
【0056】
図8に示すように、増幅器30には、伸長パルスレーザ光PTが周期的に入射される。ASE光の発生を抑制するために、伸長パルスレーザ光PTの間隔ΔPTは、増幅器30内で上準位に励起された原子の寿命である上準位寿命より短いことが好ましい。この上準位寿命は、約2nsである。このためには、伸長パルスレーザ光PTのパルス幅ΔDTを可能な限り長くすればよい。間隔ΔPTは、光強度がほぼ0となる期間である。例えば、光強度がピーク強度の1%以下である場合に、光強度が0であるとする。
【0057】
パルス幅ΔDTを長くするためには、前述の遅延時間Δtが、パルスレーザ光PLのパルス幅ΔDと一致するように、光路長L
OPSを設定することが好ましい。この場合、光路長L
OPSを、下式2を満たすように設定すればよい。
【0059】
パルス幅ΔDは、複数のパルス光PS
nの各パルス幅とほぼ同一である。例えば、ΔD=3nmとすると、L
OPS=1mとなり、光路長L
OPSは、時間的コヒーレント長L
C以上となる。
【0060】
また、ASE光の発生を抑制するために、伸長パルスレーザ光PTのパルス幅ΔDTは、増幅器30の光共振器の光路長をL
ampとした場合に、下式3を満たすことが好ましい。なお、光共振器の光路長L
ampは、リアミラー33と出力結合ミラー34との間の距離である共振器長L
aの2倍、すなわち、L
amp=2L
aである。
【0062】
2.2 動作
次に、第1の実施形態に係るレーザシステム50の動作について説明する。まず、固体レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光PLは、OPS60内のビームスプリッタ61に入射する。ビームスプリッタ61に入射したパルスレーザ光PLのうち一部は、ビームスプリッタ61を透過し、0周回光PS
0としてOPS60から出力される。
図9Aは、OPS60から出力される0周回光PS
0を示す。0周回光PS
0は、コリメート光である。
【0063】
ビームスプリッタ61に入射したパルスレーザ光PLのうち、ビームスプリッタ61により反射された反射光は、第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dにより構成される遅延光路に進入し、遅延光路を1回周回して再びビームスプリッタ61に入射する。ビームスプリッタ61に入射した光の一部は、ビームスプリッタ61により反射され、1周回光PS
1としてOPS60から出力される。
図9Bは、OPS60から出力される1周回光PS
1を示す。前述のように、遅延光学系は非コリメート光学系であるので、1周回光PS
1は、非コリメート光となり、OPS60から遠くに収束する。すなわち、1周回光PS
1のビームウェスト位置w
1は、OPS60から遠くに位置する。
【0064】
ビームスプリッタ61に入射した光のうち、ビームスプリッタ61を透過した透過光は、再び遅延光路に進入し、遅延光路をさらに1回周回して再びビームスプリッタ61に入射する。ビームスプリッタ61に入射した光の一部は、ビームスプリッタ61により反射され、2周回光PS
2としてOPS60から出力される。
図9Cは、OPS60から出力される2周回光PS
2を示す。2周回光PS
2のビームウェスト位置w
2は、1周回光PS
1のビームウェスト位置w
1よりもOPS60側に近づく。
【0065】
この後、光の遅延光路の周回が繰り返されることにより、OPS60からは、3周回光PS
3、4周回光PS
4、・・・と、順にパルス光が出力される。遅延光路の周回数nが多くなるほど、OPS60からの出力光のビームウェスト位置w
nは、OPS60側に近づく。
【0066】
パルスレーザ光PLがOPS60に入射した結果、パルスレーザ光PLは、時間差を有する複数のパルス光PS
n(n=0,1,2,・・・)に分解されて出力される。複数のパルス光PS
nは、伸長パルスレーザ光PTを構成する。
【0067】
図10に示すように、伸長パルスレーザ光PTは、ビームエキスパンダ20によりビーム径が、放電空間35の幅に合うように拡大され、シード光として増幅器30に入射する。増幅器30に入射した伸長パルスレーザ光PTは、リアミラー33及びウィンドウ31aを通過して放電空間35に入射する。複数のパルス光PS
nは、それぞれ光路軸が一致しているので、放電空間35内で重なり合う。
【0068】
放電空間35には、伸長パルスレーザ光PTが入射するのに同期して、図示しない電源により放電が生じる。伸長パルスレーザ光PTが、放電によって励起された放電空間35を通過することによって、誘導放出が生じ、増幅される。そして、増幅された伸長パルスレーザ光PTは、光共振器によって発振して、出力結合ミラー34から出力される。
【0069】
2.3 効果
OPS60は、パルスレーザ光PLを時間的に分解することに加え、分解された複数のパルス光PS
nを、進行方向を変えずに、ビームウェスト位置w
nを光路軸方向に変化させる。これにより、複数のパルス光PS
nは、それぞれビームウェスト位置w
n及び発散角θ
nが異なるので、相互の可干渉性がさらに低下し、これらで構成される伸長パルスレーザ光PTの可干渉性がさらに低下する。
【0070】
また、シード光として放電空間35内に入射する複数のパルス光PS
nは、放電空間35内で重なり合うので、放電空間35内がV方向に関して時間的に同時にシード光で満たされる。これにより、ASE光の発生が抑制される。
【0071】
さらに、伸長パルスレーザ光PTのパルス幅ΔDTを、前述の式3を満たすように設定することにより、放電期間中の何れの時間においても放電空間35内がシード光で満たされるので、ASE光の発生がさらに抑制される。
【0072】
したがって、第1の実施形態に係るレーザシステム50は、出力光の可干渉性を低下させるとともに、ASE光の発生を抑制することができる。
【0073】
2.4 ビームウェスト位置について
図11Aは、第1の実施形態のOPS60から出力される複数のパルス光PS
nのビームウェスト位置w
nの変化を計測する方法を説明する模式図である。OPS60の出力光の光路軸上に焦点距離がfの理想レンズ70を配置し、理想レンズ70による出力光の集光位置を計測する。この集光位置がビームウェスト位置に対応する。理想レンズ70とは、収差を無視できる程度のレンズである。集光位置は、
図12に示すように、ビームのスポット径が最小となる位置を計測することにより求まる。
【0074】
0周回光PS
0は、コリメート光であるので、理想レンズ70による集光位置FP
0は、理想レンズ70の焦点位置と一致する。理想レンズ70による1周回光PS
1の集光位置FP
1は、集光位置FP
0より理想レンズ70側に移動する。理想レンズ70による2周回光PS
2の集光位置FP
2は、集光位置FP
1より理想レンズ70側に移動する。以下、同様に、周回数nが多くなるほど、集光位置は理想レンズ70側に近づく。
【0075】
図11Bは、比較例として説明したOPS40から出力される複数のパルス光PS
nのビームウェスト位置w
nの計測例を示している。OPS40は、複数のパルス光PS
nの進行方向を変化させるので、集光位置FP
0,FP
1,FP
2,・・・は、順にV方向に移動する。
【0076】
なお、第1の実施形態では、遅延光学系を構成する第1〜第4の凹面ミラー62a〜62dのうち、第4の凹面ミラー62dの曲率を変えることにより、遅延光学系を非コリメート光学系となるように設定している。第4の凹面ミラー62dに限られず、その他の凹面ミラーの曲率を変えてもよい。
【0077】
また、遅延光学系を構成する凹面ミラーは4枚に限られない。さらに、曲率を変える凹面ミラーの枚数は1枚に限られない。したがって、遅延光学系を構成する複数の凹面ミラーのうち少なくとも1つの凹面ミラーの曲率を、他の凹面ミラーの曲率と異ならせることにより、遅延光学系を非コリメート光学系とすればよい。
【0078】
2.5 OPSの変形例
次に、遅延光学系を非コリメート光学系とするためのその他の例について説明する。
【0079】
2.5.1 第1の変形例
図13は、第1の変形例に係るOPS80の構成を示す。OPS80は、ビームスプリッタ81と、第1〜第4の凹面ミラー82a〜82dと、を含む。ビームスプリッタ81は、比較例のビームスプリッタ11と同一の構成である。
【0080】
第1〜第4の凹面ミラー82a〜82dは、全て同じ曲率半径Rの鏡面を有する。また、第1〜第4の凹面ミラー82a〜82dは、全て同じ焦点距離Fを有する。OPS80は、第4の凹面ミラー82dの位置が異なること以外は、比較例に係るOPS10と同一の構成である。
【0081】
図13において、第4の凹面ミラー82dは、破線で示すOPS10の第4の凹面ミラー12dの位置から、遅延光路の光路長L
OPSを長くする方向に移動されている。具体的には、第3の凹面ミラー62cと第4の凹面ミラー62dとの間の距離を焦点距離Fの2倍よりも長くし、かつ第4の凹面ミラー62dとビームスプリッタ61との間の距離を焦点距離Fよりも長くする。すなわち、OPS80は、L
OPS>8Fの関係を有する。
【0082】
第1〜第4の凹面ミラー82a〜82dにより構成される遅延光学系は、非コリメート光学系であるので、遅延光路を周回した周回光は、非コリメート光となる。OPS80から出力される複数のパルス光PS
nは、遅延光路の周回数nに応じて、発散角θ
nが変化するとともに、ビームウェスト位置w
nがZ方向に移動する。なお、複数のパルス光PS
nの光路軸は、ほぼ同一である。
【0083】
第1〜第4の凹面ミラー82a〜82dのうち、光路長L
OPSを長くする方向に移動させる凹面ミラーは、第4の凹面ミラー82dに限られず、その他の凹面ミラーであってもよい。遅延光学系を構成する複数の凹面ミラーのうち少なくとも1つの凹面ミラーを、コリメート条件を満たす位置から、遅延光路の光路長を変更する方向に移動させればよい。
【0084】
2.5.2 第2の変形例
図14は、第2の変形例に係るOPS90の構成を示す。OPS90は、ビームスプリッタ91と、第1〜第4の凹面ミラー92a〜92dと、第1のレンズ93と、第2のレンズ94と、を含む。ビームスプリッタ91は、比較例のビームスプリッタ11と同一の構成である。第1〜第4の凹面ミラー92a〜92dは、比較例の第1〜第4の凹面ミラー12a〜12dと同一の構成であり、かつ同一の位置に配置されている。すなわち、OPS90は、L
OPS=8Fの関係を有する。
【0085】
第1及び第2のレンズ93,94は、合成石英又はフッ化カルシウム(CaF
2)により形成されている。第1のレンズ93は、第2の凹面ミラー92bと第3の凹面ミラー92cとの間の光路上に配置されている。第1のレンズ93は、凹面レンズであり、入射した光の発散角を変更して射出する。第1のレンズ93により、遅延光学系が非コリメート光学系となるように設定される。
【0086】
第2のレンズ94は、ビームスプリッタ91に入射するパルスレーザ光PLの光路上に配置されている。第2のレンズ94は、凹面レンズであり、第1のレンズ93により変更される発散角を補正するために設けられている。なお、第2のレンズ94は、必須の構成要素ではなく、省略してもよい。
【0087】
第1〜第4の凹面ミラー92a〜92d及び第1のレンズ93により構成される遅延光学系は、非コリメート光学系であるので、遅延光路を周回した周回光は、非コリメート光となる。OPS90から出力される複数のパルス光PS
nは、遅延光路の周回数nに応じて、発散角θ
nが変化するとともに、ビームウェスト位置w
nがZ方向に移動する。なお、複数のパルス光PS
nの光路軸は、ほぼ同一である。
【0088】
第1のレンズ93は、第2の凹面ミラー92bと第3の凹面ミラー92cとの間の光路上に限られず、第4の凹面ミラー92dとビームスプリッタ91との間の光路上や、ビームスプリッタ91と第1の凹面ミラー92aとの間の光路上に配置してもよい。
【0089】
第1及び第2のレンズ93,94は、凹面レンズに限られず、その他の光学素子により構成してもよい。例えば、第1及び第2のレンズ93,94は、それぞれシリンドリカルレンズであってもよい。さらに、第1及び第2のレンズ93,94は、それぞれ、湾曲方向が互い直交する2つのシリンドリカルレンズを組み合わせたものであってもよい。
【0090】
3.第2の実施形態
次に、本開示の第2の実施形態に係るレーザシステムについて説明する。第2の実施形態に係るレーザシステムは、OPSの構成が異なること以外は、
図6に示した第1の実施形態に係るレーザシステム50の構成と同一である。第1の実施形態では、OPSを複数の凹面ミラーを含む構成としているが、第2の実施形態では、OPSを、集光レンズを含む構成とする。
【0091】
図15は、第2の実施形態に係るレーザシステムに用いられるOPS100の構成を示す。OPS100は、ビームスプリッタ101と、第1〜第4の高反射ミラー102a〜102dと、第1〜第5の集光レンズ103〜107と、を含む。ビームスプリッタ101は、第1の実施形態のビームスプリッタ61と同一の構成である。第1〜第5の集光レンズ103〜107は、それぞれ凸レンズである。
【0092】
第1及び第2の集光レンズ103,104は、0周回光PS
0の発散角θ
0を調整するための第1のレンズ群である。第1の集光レンズ103は、固体レーザ装置3から入射したパルスレーザ光PLが、ビームスプリッタ101に入射するまでの光路上に配置されている。第2の集光レンズ104は、パルスレーザ光PLのうち、ビームスプリッタ101を透過した光の光路上に配置されている。
【0093】
第2の集光レンズ104は、一軸ステージ104aに保持されている。一軸ステージ104aは、第2の集光レンズ104を光路軸方向であるZ方向に移動させることを可能とする。第2の集光レンズ104の光路軸方向に関する位置を調整することにより、0周回光PS
0の発散角θ
0を調整することができる。
【0094】
図16Aは、第1及び第2の集光レンズ103,104の位置関係を示している。P1は、第1の集光レンズ103の位置を表している。P2は、第2の集光レンズ104の位置を表している。P0は、ビームスプリッタ101の位置を表している。第1の集光レンズ103の焦点距離をF
1、第2の集光レンズ104の焦点距離をF
2とする。位置P2は、位置P1と位置P2との間の光路長が「F
1+F
2」となるように設定されている。すなわち、第1のレンズ群は、コリメート光学系である。なお、位置P2を、コリメート条件を満たす位置からずらすことにより、第1のレンズ群を非コリメート光学系としてもよい。
【0095】
図15において、第1〜第4の高反射ミラー102a〜102dと、第3〜第5の集光レンズ105〜107を含む第2のレンズ群とは、遅延光路を構成している。第1〜第4の高反射ミラー102a〜102dは、表面に高反射膜が形成された平面ミラーである。第1〜第4の高反射ミラー102a〜102dの基板は、合成石英又はフッ化カルシウム(CaF
2)により形成されている。高反射膜は、誘電体多層膜、例えば、フッ化物を含む膜である。
【0096】
第1〜第4の高反射ミラー102a〜102dは、パルスレーザ光PLのうち、ビームスプリッタ101により反射された光を、順に高反射して、再びビームスプリッタ61に入射させるように配置されている。第3及び第4の集光レンズ105,106は、ビームスプリッタ101と第1の高反射ミラー102aとの間に配置されている。第5の集光レンズ107は、第2の高反射ミラー102bと第3の高反射ミラー102cとの間に配置されている。
【0097】
第4の集光レンズ106は、一軸ステージ106aに保持されている。一軸ステージ104aは、第4の集光レンズ106を光路軸方向であるV方向に移動させることを可能とする。第4の集光レンズ106の光路軸方向に関する位置を調整することにより、n周回光PS
n(n≧1)の発散角θ
nを調整することができる。
【0098】
図16B及び
図17は、第1〜第5の集光レンズ103〜107の位置関係を示している。P3は、第3の集光レンズ105の位置を表している。P4は、第4の集光レンズ106の位置を表している。P5は、第5の集光レンズ107の位置を表している。第3の集光レンズ105の焦点距離をF
3、第4の集光レンズ106の焦点距離をF
4、第5の集光レンズ107の焦点距離をF
5とする。位置P3は、位置P1と位置P3との間の光路長が「F
1+F
3」となるように設定されている。
【0099】
また、P4’は、遅延光路がコリメート条件を満たす場合の第4の集光レンズ106の位置を表している。位置P5は、位置P4’と位置P5との間の光路長が「F
4+2F
5」となり、位置P2と位置P5との間の光路長が「F
2+2F
5」となり、位置P3と位置P5との間の光路長が「F
3+2F
5」となるように設定されている。第4の集光レンズ106は、遅延光学系が非コリメート光学系となるように、すなわち、位置P4が位置P4’からずれた位置となるように、一軸ステージ106aによって光路軸方向に位置調整されている。
【0100】
また、ビームスプリッタ101と、第1〜第4の高反射ミラー102a〜102dと、第1〜第5の集光レンズ103〜107とは、OPS100から出力される0周回光PS
0の光路軸と1周回光PS
1の光路軸とが一致するように配置されている。すなわち、第2の実施形態では、OPS100から出力される複数のパルス光PS
nの光路軸は、全て一致する。
【0101】
また、
図16B及び
図17において、L
OPSは、遅延光路の光路長を表している。光路長L
OPSは、前述の式2の関係を満たしている。また、OPS100により生成される伸長パルスレーザ光PTのパルス幅ΔDTは、前述の式3の関係を満たしている。
【0102】
3.2 動作
次に、第2の実施形態に係るレーザシステムの動作について説明する。まず、固体レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光PLは、第1の集光レンズ103を介してビームスプリッタ101に入射する。ビームスプリッタ101に入射したパルスレーザ光PLのうち一部は、ビームスプリッタ101を透過し、第2の集光レンズ104に入射する。第2の集光レンズ104から出射される光は、0周回光PS
0としてOPS100から出力される。
図16Aに示すように、0周回光PS
0は、コリメート光である。
【0103】
ビームスプリッタ101に入射したパルスレーザ光PLのうち、ビームスプリッタ101により反射された反射光は、遅延光路に進入する。遅延光路に進入した反射光は、第3の集光レンズ105、第4の集光レンズ106、第1の高反射ミラー102a、第2の高反射ミラー102b、第5の集光レンズ107、第3の高反射ミラー102c、第4の高反射ミラー102dを経由して、再びビームスプリッタ101に入射する。ビームスプリッタ101に入射した光の一部は、ビームスプリッタ101により反射され第2の集光レンズ104に入射する。第2の集光レンズ104から出射される光は、1周回光PS
1としてOPS100から出力される。
図16Bに示すように、1周回光PS
1は、非コリメート光であり、OPS100から遠くに収束する。すなわち、1周回光PS
1のビームウェスト位置w
1は、OPS100から遠くに位置する。
【0104】
ビームスプリッタ101に入射した光のうち、ビームスプリッタ101を透過した透過光は、再び遅延光路に進入し、遅延光路をさらに1回周回して再びビームスプリッタ101に入射する。ビームスプリッタ101に入射した光の一部は、ビームスプリッタ101により反射され、第2の集光レンズ104を介して、2周回光PS
2としてOPS100から出力される。
図17は、OPS100から出力される2周回光PS
2を示す。2周回光PS
2のビームウェスト位置w
2は、1周回光PS
1のビームウェスト位置w
1よりもOPS100側に近づく。
【0105】
この後、光の遅延光路の周回が繰り返されることにより、OPS100からは、3周回光PS
3、4周回光PS
4、・・・と、順にパルス光が出力される。遅延光路の周回数nが多くなるほど、OPS100からの出力光のビームウェスト位置w
nは、OPS100側に近づく。以下の動作は、第1の実施形態に係るレーザシステム50の動作と同様であるので、説明は省略する。
【0106】
3.3 効果
第2の実施形態に係るレーザシステムは、第1の実施形態と同様に、出力光の可干渉性を低下させるとともに、ASE光の発生を抑制することができる。また、第2の実施形態に係るレーザシステムでは、第2の集光レンズ104及び第4の集光レンズ106の位置を調整することにより、n周回光PS
nの発散角θ
n及びビームウェスト位置w
nを調整することができる。
【0107】
なお、第2の実施形態では、0周回光PS
0の発散角θ
0を調整するために第1のレンズ群を設けているが、第1のレンズ群は、必須の構成要素ではない。遅延光学系を構成する複数の高反射ミラーや集光レンズの配置は、適宜変更可能である。
【0108】
4.増幅器の後段にOPSを配置する例
第1及び第2の実施形態に係るレーザシステムでは、固体レーザ装置3と増幅器30との間にOPSを配置しているが、さらに増幅器30の後段にOPSを配置してもよい。なお、固体レーザ装置3と増幅器30との間に配置されたOPSが、第1の光学パルスストレッチャに対応する。増幅器の後段に配置されたOPSが、第2の光学パルスストレッチャに対応する。
【0109】
図18は、増幅器30と、増幅器30の後段に配置されたOPS200とを示す斜視図である。OPS200は、ビームスプリッタ201と、第1〜第4の凹面ミラー202a〜202dと、を含む。OPS200は、
図4に示したOPS40と同様の構成である。第1〜第4の凹面ミラー202a〜202dは、全て同じ曲率半径の鏡面を有する。第1〜第4の凹面ミラー202a〜202dにより構成される遅延光路の光路長は、焦点距離の8倍である。第4の凹面ミラー202dは、コリメート条件を満たす位置に対して、Z方向を回転軸として僅かに回転させた位置に配置されている。
【0110】
増幅器30から出力された出力光PAは、OPS200によりH方向に空間的に分解される。OPS200から出力される複数のPA
n(n=0,1,2,・・・)は、OPS20内の遅延光路の周回数nに応じて、出射角がH方向に変化する。この結果、レーザシステムからの出力光の可干渉性がさらに低下する。
【0111】
なお、第4の凹面ミラー202dは、レーザシステムからの出力光が、露光装置の光学系に影響のない範囲で回転させることが好ましい。また、OPS200に代えて、前述のOPS40,60,80,90,100のうちのいずれかを適用してもよい。さらに、増幅器30の後段に、複数のOPSを配置してもよい。例えば、増幅器30の後段に配置したOPS200の後段にOPS40を配置し、増幅器30からの出力光PAを、H方向及びV方向に分解してもよい。
【0112】
5.増幅器の変形例
第1及び第2の実施形態に係るレーザシステムでは、
図6に示される増幅器30を適用しているが、増幅器は、様々な構成を取り得る。
【0113】
5.1 第1の変形例
図19は、第1の変形例に係る増幅器300の構成を示す。増幅器300は、
図6に示される増幅器30の構成におけるリアミラー33と出力結合ミラー34とに代えて、凹面ミラー310と凸面ミラー320とを備えている。凹面ミラー310と凸面ミラー320とは、伸長パルスレーザ光PTが一対の放電電極32a及び32b間の放電空間35を3回通過して、ビームが拡大されるように配置されている。増幅器300のその他の構成は、増幅器30と同様である。増幅器300は、マルチパス増幅器と称される。
【0114】
このように、増幅器300を適用する場合には、前述のビームエキスパンダ20を省略することが可能である。
【0115】
5.2 第2の変形例
図20は、第2の変形例に係る増幅器400の構成を示す。
図20において、増幅器400は、レーザチャンバ31と、出力結合ミラー410と、高反射ミラー420〜422とを含む。高反射ミラー420〜422は、平面ミラーである。さらに、増幅器400は、伸長パルスレーザ光PTを高反射ミラー420に導くための高反射ミラーを含んでもよい。
【0116】
出力結合ミラー410と高反射ミラー420〜422とは、リング共振器を構成している。増幅器400では、伸長パルスレーザ光PTは、出力結合ミラー410、高反射ミラー420、放電空間35、高反射ミラー421、高反射ミラー422、放電空間35の順に繰り返し進行して、増幅される。
【0117】
なお、高反射ミラー420〜422を凹面ミラーとし、共振器への入射光が共振器内を周回するたびに発散角が変化するように構成してもよい。この場合、出力結合ミラー410からの出力光は、共振器内の周回数に応じて、ビームウェスト位置が光路軸方向に変化する。このように、増幅器400に、出力光の可干渉性を低下させる機能を持たせることが可能である。
【0118】
なお、上記各実施形態に係るレーザシステムでは、マスターオシレータとしての固体レーザ装置3を用いているが、マスターオシレータは、固体レーザ装置に限られず、エキシマレーザ装置等、その他のレーザ装置であってもよい。
【0119】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0120】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。