【文献】
“食品中の化学物質について”, [online], 2015.5.12公開, [2020.2.6検索], <URL: https://web.archive.org/web/20150512053749/http://www.nihs.go.jp/hse/foodinfo/chemical/kanshi/index-kanshi.html>
【文献】
J. Agric. Food Chem. 1981, vol.29, no.5, p.1089-1091
【文献】
J. Agric. Food Chem., 2014, vol.62, no.28, p.6487-6497
【文献】
J. Agric. Food Chem., 2005, vol.53, no.6, p.2213-2223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上かつ食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上のショ糖含有植物を粉砕処理し、アセトインを1ppb以上3000ppb以下、ジメチルスルホキシドを1ppb以上40000ppb以下含有せしめる、エタノールに分散した粉末状食品の超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下のイモ類、豆類、種実類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上のショ糖含有植物含有粉末状食品又はこれを含有する飲食品の製造方法。
ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上かつ食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上のショ糖含有植物を粉砕処理し、アセトインを1ppb以上3000ppb以下、ジメチルスルホキシド含有量が1ppb以上40000ppb以下含有せしめる、エタノールに分散した粉末状食品の超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下のイモ類、豆類、種実類、野菜類及び果実類から選ばれる1種以上のショ糖含有植物含有粉末状食品又はこれを含有する飲食品の甘い風味を増強する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法によれば、その目的はビタミンCを野菜汁中に多く残存させることによって、付加価値の高い野菜汁の製造方法を提供することにあり、乾燥・粉末化は困難であるという課題があった。また、特許文献2の方法によれば、乾燥状態ではあるものの、野菜を加圧油ちょうと減圧油ちょうを組合わせて加工することを必須としており、油分が不可欠であり、油分由来の風味と性状から、得られた乾燥品の汎用的使用には限界があるという課題があった。
【0006】
本発明の課題は、ショ糖含有植物由来の粉末を含有する飲食品において、ショ糖由来の焦げ臭を容易に制御し、ショ糖特有の甘い風味を引き出す手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の事情に鑑みて鋭意研究した結果、特定の化合物を特定量含有させるとともに、ショ糖含有植物を含有する粉末状食品の粒子径を一定値以下とすることにより、上記課題を同時に簡易に解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の発明[1]〜[11]を提供するものである。
[1]次の(1)〜(4)を充足することを特徴とする、ショ糖含有植物を含有する粉末状食品。
(1)ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上
(2)食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上
(3)超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下
(4)アセトイン含有量が1ppb以上40000ppb以下
[2]更に、ジメチルスルホキシド含有量が1ppb以上40000ppb以下である、[1]に記載の粉末状食品。
[3]ショ糖含有植物含有量が粉末状食品全体の10質量%以上である、[1]又は[2]に記載の粉末状食品。
[4]ショ糖含有植物由来のショ糖含有量が、粉末状食品全体のショ糖含有量に対して50質量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の粉末状食品。
[5]ショ糖含有植物が、穀類、イモ類、豆類、種実類、野菜類、果実類及びきのこ類から選ばれる1種以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の粉末状食品。
[6]ショ糖含有植物が、コーン、カボチャ、ビーツ、ニンジン、ダイズ、サツマイモ、パイナップル、バナナ、マンゴー及びアーモンドから選ばれる1種以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の粉末状食品。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の粉末状食品を含有する飲食品。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の粉末状食品を製造する方法であって、水分含量20質量%以下のショ糖含有植物を粉砕処理する工程を含む方法。
[9]ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上かつ食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上のショ糖含有植物を粉砕処理し、アセトインを1ppb以上40000ppb以下含有せしめる、超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下のショ糖含有植物含有粉末状食品又はこれを含有する飲食品の製造方法。
[10]ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上かつ食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上のショ糖含有植物を粉砕処理し、アセトインを1ppb以上40000ppb以下含有せしめる、超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下のショ糖含有植物含有粉末状食品又はこれを含有する飲食品の甘い風味を増強する方法。
[11]更に、ジメチルスルホキシド含有量を1ppb以上40000ppb以下とする、[9]又は[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ショ糖含有植物を含有する粉末状食品において、ショ糖由来の焦げ臭を容易に制御し、ショ糖特有の甘い風味を引き出す手段を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施態様の例を記載するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない限りにおいて、任意の改変を加えて実施することが可能である。
【0011】
本発明におけるショ糖含有植物とは、ヒトの飲食に供されるショ糖を含有する植物であり、好ましくは食用植物のうち乾燥状態でショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上の植物である。また、ショ糖含有植物は、その可食部と非可食部を共に含有することが好ましい。
本発明における植物としては、ヒトの飲食に供されるものであれば何ら制限されるものではないが、穀類、イモ類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類等が挙げられる。このうち、本来甘味成分を含む穀類、イモ類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類がより好ましい。更には、コーン、カボチャ、ビーツ、ニンジン、ダイズ、サツマイモ、パイナップル、バナナ、マンゴー及びアーモンドであることが好ましい。具体的には、たとえば、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年」(厚生労働省が定めている食品成分表、特に第236頁表1参照)に記載された分類のうち、穀類、イモ類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類を参照することで、いかなる食品が本発明における食用植物に該当するかを理解することができる。これらの食用植物は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。また、これらの食用植物はそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、加熱、灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工等)を加えてから使用してもよい。また、食用植物は、非可食部と合わせた植物全体の状態でその分類を判断することができる。尚、非可食部の部位や比率は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。例としては、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に記載の「廃棄部位」及び「廃棄率」を参照し、これらをそれぞれ非可食部の部位及び比率として扱うことができる。尚、食用植物における非可食部の部位や比率から、可食部の部位や比率についても理解することができる。また、その可食部及び/又は非可食部を任意の組み合わせで使用することが可能である。
【0012】
本発明のショ糖含有植物由来の粉末状食品は、上記の各種食用植物を乾燥及び粉砕処理したものを全部またはその一部として用いて調製すればよい。乾燥方法としては、一般的に食品の乾燥に用いられる任意の方法を用いることができる。例としては、天日乾燥、陰干し、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)、加圧乾燥、減圧乾燥、マイクロウェーブドライ、油熱乾燥等が挙げられる。中でも、植物が本来有する色調や風味の変化の程度が小さく、食品以外の香り(焦げ臭等)を比較的制御しやすいという点から、エアドライ(例えば熱風乾燥、流動層乾燥法、噴霧乾燥、ドラム乾燥、低温乾燥等)による方法が好ましい。
【0013】
尚、本発明における‘乾燥’状態とは、水分含量が20質量%以下である状態を指し、より好ましくは水分含量が10質量%以下の状態を指す。また、水分活性値が、0.95以下、更には0.90以下、更には0.85以下、更には0.80以下、更には0.75以下であることがより好ましい。
【0014】
すなわち、本発明には、本発明の粉末状食品を製造する方法であって、水分含量が20質量%以下の植物を粉砕処理することを含む方法を含み、更に植物の水分含量が10質量%以下である方法が含まれ、更には植物の水分活性値が0.95以下、更には0.90以下、更には0.85以下、更には0.80以下、更には0.75以下である方法が含まれる。
【0015】
尚、本発明における、「乾燥質量換算で」とは、水分が0質量%における質量換算値を指す。
水分の定量法としてはショ糖含有植物由来の粉末又はこれを含有する粉末状食品を、減圧加熱乾燥法に供する方法を用い湿量基準水分を測定する。具体的には、あらかじめ恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して、0.1mgまではかる(W1)。常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れる。扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥する。真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷後、質量をはかる。恒量(W2、0.1mgまではかる)になるまで乾燥、放冷、質量をはかることを繰り返す。水分含量(質量%)を次の計算式で求める。
【0016】
水分(g/100g)=(W1−W2)/(W1−W0)×100
W0:恒量としたはかり容器の質量(g)
W1:試料を入れたはかり容器の乾燥前の質量(g)
W2:試料を入れたはかり容器の乾燥後の質量(g)
【0017】
また、水分活性値とは、食品中の自由水の割合を表す数値で、食品の保存性の指標とされるものであり、具体的には、サンプル上ヘッドスペースの平衡時蒸気圧(p)を、同じ温度の水の蒸気圧(p0)で割った値であり、換言すれば、ヘッドスペースの平衡相対湿度(ERH)を100で割った値である。水分活性値の測定法としては、一般的な水分活性測定装置(例えば電気抵抗式(電解質式)湿度センサを用いたノバシーナ社製「LabMaster−aw NEO」)を用いて測定することができる。
【0018】
また、本発明におけるショ糖含有植物含有粉末状食品において、粉末化に用いられる粉砕処理の手段は特に限定されない。粉砕時の温度も制限されず、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕の何れであってもよい。粉砕時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。斯かる粉砕処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよい。その装置としては、例えば乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。
【0019】
本発明のショ糖含有植物含有粉末状食品(以下、単に本発明の粉末状食品ということもある)は、一定量以上のショ糖を含有する。具体的には、本発明の粉末状食品中のショ糖含有量は、乾燥質量換算で2.5質量%以上であればよいが、3質量%以上が好ましく、より好ましくは3.5質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上である。また、ショ糖含有植物に由来するショ糖含有量が、本発明の粉末状食品全体のショ糖含有量に対して、乾燥質量換算で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは100質量%含有することが好ましい。更に、ショ糖含有植物由来の微粒子(超音波処理後のd50が1000μm以下。乾燥、湿潤状態等の態様の違いは問わない。)に由来するショ糖含有量が、本発明の粉末状食品全体のショ糖含有量に対して、乾燥質量換算で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%含有することがより好ましい。一方、ショ糖含有量の上限は、特に制限されるものではないが、本発明の粉末状食品中の含有量として、乾燥質量換算で、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。尚、本発明において、粉末状食品又はショ糖含有植物中のショ糖含有量は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に準じ、高速液体クロマトグラフ法で測定する。
【0020】
本発明の粉末状食品は、一定量以上の食物繊維を含有する。具体的には、本発明の粉末状食品中の食物繊維含有量は、乾燥質量換算で1質量%以上であればよいが、2質量%以上が好ましく、更には3質量%以上が好ましく、更には4質量%以上が好ましく、更には5質量%以上が好ましく、更には6質量%以上が好ましく、更には7質量%以上が好ましく、更には8質量%以上が好ましく、更には9質量%以上が好ましく、更には10質量%以上が好ましく、更には12質量%以上が好ましく、特には14質量%以上が好ましい。また、食物繊維含有量の上限は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
更に、食物繊維のうち、不溶性食物繊維の占める割合が所定値以上である粉末状食品の方がショ糖由来の焦げ臭を抑制しやすく本発明を有用に用いることができるため好ましい。具体的には、食物繊維のうち、不溶性食物繊維の占める割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が最も好ましい。尚、食物繊維、不溶性食物繊維の定量法としては、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」に準じ、一般的なプロスキー変法を用いる。
【0021】
更に、本発明において、粉末状食品全体に対するショ糖含有植物の含有量は、所定の範囲であることが好ましい。例えば粉末状食品全体に対するショ糖含有植物の含有量は、乾燥質量換算で10質量%以上あればよく、焦げ臭の抑制、甘い風味を引き出す観点から、30質量%以上が好ましく、更には50質量%以上が好ましく、更には70質量%以上が好ましく、更には90質量%以上が好ましく、特には100質量%が好ましい。また、粉末状食品全体に対するショ糖含有植物由来の微粒子(超音波処理後のd50が1000μm以下。乾燥、湿潤状態等の態様の違いは問わない。)が乾燥質量換算で10質量%以上が好ましく、更には30質量%以上が好ましく、更には50質量%以上が好ましく、更には70質量%以上が好ましく、更には90質量%以上が好ましく、特には100質量%が好ましい。尚、粉末状食品全体に対するショ糖含有植物の含有量が100質量%の場合以外の粉末状食品における、他の粉末の種類としては、本発明の効果を妨げない限りにおいて、何ら制限されない。粉末状の食品素材であれば、最終的な粉末状食品に対する所望の風味、品質に合わせて、種類やその組み合わせ、用途に限られず適宜選択できる。このような粉末状の食品素材としては、食塩、ショ糖、デキストリン等を挙げることができる。
【0022】
更に、本発明の粉末状食品は、ショ糖由来の焦げ臭の抑制及びショ糖由来の甘い風味増強の点から、一定量以上のアセトイン(CAS.No.513−86−0、acetoin、別名3−ヒドロキシ−2−ブタノン(3-hydroxy-2-butanone))を含有する。具体的な含有量としては、下限としては1ppb以上であればよいが、本発明の効果をより顕著に奏効させる観点から、3ppb以上が好ましく、更には5ppb以上が好ましく、特には10ppb以上が好ましい。一方、上限としては40000ppb以下であればよいが、オフフレーバーの発生の虞の観点から、30000ppb以下が好ましく、更には20000ppb以下が好ましく、更には10000ppb以下が好ましく、更には5000ppb以下が好ましく、特には2000ppb以下が好ましい。
【0023】
更に、本発明の粉末状食品は、ショ糖由来の焦げ臭の抑制及びショ糖由来の甘い風味の増強の点から、一定量以上のジメチルスルホキシド(CAS.No.67−68−5、Dimethyl sulfoxide、別名DMSO)を含有するのが好ましい。具体的には、下限としては1ppb以上であればよいが、本発明の効果を奏効させる観点から、3ppb以上が好ましく、更には5ppb以上が好ましく、特には10ppb以上が好ましい。一方、上限としては40000ppb以下であればよいが、オフフレーバーの発生の虞の観点から、30000ppb以下が好ましく、更には20000ppb以下が好ましく、更には10000ppb以下が好ましく、更には5000ppb以下が好ましく、特には2000ppb以下が好ましい。また、アセトイン及びジメチルスルホキシドをともに含有することで、ショ糖由来の焦げ臭の抑制効果、ショ糖由来の甘い風味の増強効果が相乗的に高まるため更に好ましく、両成分をともに所定の含有量で含有することが望ましい。
【0024】
アセトインはヨーグルト、バター様の香りを持つ化合物であり、主に発酵食品に香気成分として含まれることが知られている。しかしながら、アセトインがショ糖含有植物含有粉末状食品のショ糖由来の焦げ臭を抑え、ショ糖由来の甘い風味を増強するといった効果は全く知られていなかった。ましてや、それ自体が無味無臭であるジメチルスルホキシドは、他のフレーバーに影響を与えないと考えられており、ジメチルスルホキシドをアセトインと共に規定量含有させることで、ショ糖含有植物含有粉末状食品のショ糖由来の焦げ臭を抑え、ショ糖由来の甘い風味を増強する効果が更に高まるといった効果は全く知られていなかった。
【0025】
本発明において、アセトインの含有量を測定する場合には、定法に従い、以下のGC/MS分析法によって測定する。また、ジメチルスルホキシドの含有量を測定する場合には、定法に従い、以下のGC/MS分析法とパルス式炎光光度検出器との組み合わせなどによって測定することができる。
【0026】
試料からのアセトイン等の抽出方法としては、アセトインは水への親和性が高いため蒸留水で希釈し、測定方法としては、ごく少量の試料をDHS法(気相の揮発性成分を不活性ガスで強制的にパージを行い、揮発性成分を吸着剤に捕集する動的な抽出方法)によって全量揮発させることで、通常の分析では測定できない水溶性成分を強制的に揮発させて測定するフルエバポレーションダイナミックヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析(以下、「FE−DHS−GC/MS」)法により測定する。また、ジメチルスルホキシドについても、同様の手法で分析をする。例えば試料を適当量(20倍量)の蒸留水によく均質化して成分抽出し、固形分をろ過などで除いた残部を10mL平底のバイアルにごく少量(0.03g)計り取った後に密閉し、過剰量の窒素ガスパージによって強制的に全量揮発させた試料を分析成分の性質に応じた吸着樹脂(Tenaxカラム)で吸着した後、加熱脱着システムを用いて処理することで二次元ガスクロマトグラフィー分析装置に導入し分析を行うことができる。また、試料中の成分濃度を測定するためには、試料と任意濃度に希釈した標準品サンプルとを分析し、両サンプルの確認イオンピーク面積を把握し、その値を比較することで試料中の当該成分濃度を測定することができる。
【0027】
上記分析後、試料の一部を質量分析計にかけてマススペクトルを求め、各成分の関連イオン(アセトイン:43、45、88、ジメチルスルホキシド:45、63、78)で両成分の保持時間の確認を行う。
【0028】
質量分析計(MS)は、四重極型の5973 Mass Selective Detector(Agilent社製)を用いる。イオン化法、イオン化電圧は、イオン化法:EI+、イオン化電圧:70eVの条件で行い、結果はスキャンモードで取り込み、各成分に特徴的なイオン(アセトイン:43、45、88)を関連イオンとして用いて同定を行うことで質量スペクトル解析を行うことができ、標準品においてこれら関連イオンが全て検出される保持時間を特定することで、アセトインの保持時間を特定することができる。
【0029】
具体的にはFE−DHS−GC/MS分析は以下のような条件で行う。
【0030】
[GC/MS条件(Full evaporation dynamic headspace(FE−DHS)注入法)]
・装置:Agilent製 7890B(GC)、5977B(MS)、Gester製 MultiPurpose Sampler(auto−sampler)
・吸着樹脂:TENAX
・インキュベーション温度:80℃
・窒素ガスパージ量:3L
・窒素ガスパージ流量:100mL/min
・TDU:[30℃]−[210℃/min]−[240℃(3min)]
・CIS:[10℃]−[120℃/sec]−[240℃](ライナー充填剤:TENAX)
・カラム:GESTEL社製 DB−WAX(30m*250μm*0.25μm)
・カラム温度:[40℃(3min)]−[5℃/min]−[240℃(7min)]
・キャリアガス:He
・トランスファーライン:250℃
・イオン源温度:230℃
・Scan Parameter:m/z=28.7〜300
・スプリット:なし
【0031】
また、試料の一部をパルス式炎光光度検出器にかけ、サンプル中の硫黄化合物を分析することで、サンプル中のごく低濃度の含硫化合物(ジメチルスルホキシド)を検出することができる。パルス式炎光光度検出器は、一般的なパルス式炎光光度検出器として用いることができるものならば良いが、具体的には、OI Analytical 5380 Pulsed Flame Photometric Detector(OI Analytical社製)を用いることができる。試料の分析はSモード(硫黄に最適化した条件)にて行うことができる。
【0032】
上記の条件にて、既知濃度のジメチルスルホキシドの標品(富士フイルム和光純薬工業社製)を蒸留水で適当な濃度に希釈したものを試料に添加して分析に供する。パルス式炎光光度検出器は物質を還元水素炎中で燃焼させ、その際発生する394nmの特定波長の光を検出することで硫黄化合物のみを選択的に検出することができ、極微量の硫黄成分をも検出することができる。また、その高い選択性を利用して、極微量の硫黄化合物の検出に使用することができる。また、検出に際して匂いかぎ分析を併用することで、臭気を有するアセトインとほぼ無臭のジメチルスルホキシドとを区別することができる。このパルス式炎光光度検出器による高感度硫黄成分検出能と質量分析計のマススペクトルパターンに基づく定性的な分析と匂いかぎ分析による香気特徴による判別を組み合わせることで、保持時間分21〜24分付近のピークをジメチルスルホキシドと判定し、それらの標品未添加区と標品添加区との確認イオン(ジメチルスルホキシド:78)量の比較によって、試料中の成分の定量、前述の好適条件で実施するFE−DHS−GC/MS分析によって、5質量%水溶液中に抽出されて揮発した各成分の確認イオン(ジメチルスルホキシド:78)の測定を行うことができる。
【0033】
上記の条件にて、濃度既知のアセトイン、ジメチルスルホキシドの標品(東京化成工業社製、富士フイルム和光純薬工業社製)を蒸留水で適当な濃度に希釈したものと試料とを分析に供する。質量分析計のマススペクトルパターンに基づく分析によって、測定条件によって多少のずれはあるものの、標準品保持時間との比較によって、ターゲット成分と思しきピークの保持時間付近(例えば、保持時間13〜16分付近をアセトイン、保持時間21〜24分付近をジメチルスルホキシド)における、それらの希釈標品と試料との確認イオン(アセトイン;45、ジメチルスルホキシド;78)量の比較によって、試料中の成分の定量を行うことができる。
【0034】
更に、ターゲット成分と思わしきピークの保持時間付近をハートカットして異なる性質のカラムで二次元ガスクロマトグラフィーを実施することによって、より精緻に当該成分濃度の定量を行うことができるため、特に好ましい。
【0035】
具体的には二次元ガスクロマトグラフィー分析は以下のような条件で行うことができる。
【0036】
[二次元GC/MS条件]
・CTS:[−150℃]−[20℃/sec]−[250℃]
・カラム:GESTEL社製 DB−5(10m*180μm*0.4μm)
・カラム温度:[40℃(0min)]−[40℃/min]−[240℃(15min)]
・キャリアガス:He
【0037】
尚、本発明におけるアセトインとしては、その純品やこれを含む組成物を粉末状食品に含有せしめる態様であってもよいが、本発明の粉末状食品を飲食に供する場合においては、アセトインは飲食品由来であることが好ましく、また、植物由来であることが好ましい。尚、ジメチルスルホキシドについても同様である。
【0038】
また、本発明において、粉末状食品の超音波処理後の粒子径のd50は、ショ糖由来の焦げ臭の抑制及びショ糖由来の甘い風味増強の点から、所定値以下となる。具体的には、この粒子径のd50は、上限として1000μm以下であるが、中でも900μm以下が好ましく、更には800μm以下が好ましく、更には700μm以下が好ましく、更には600μm以下が好ましく、更には500μm以下が好ましく、更には400μm以下が好ましく、更には300μm以下が好ましく、更には200μm以下が好ましく、更には100μm以下が好ましい。また、産業上の便宜から下限としては通常0.3μm以上、更には1μm以上、更には3μm以上となることが好ましい。本発明において「超音波処理」とは、特に指定が無い限り、測定サンプルに対して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間印加する処理を表す。
【0039】
尚、粉末状食品の粒子径のd50は、粉末状食品の粒子径分布をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、50:50となる粒子径として定義される。粉末状食品の粒子径のd50は、例えば後述するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。ここでいう「粒子径」とは、特に指定が無い限り全て体積基準で測定されたものを表す。
【0040】
本発明の粉末状食品の粒子径のd50の測定条件は、以下の条件に従うものとする。まず、測定時の溶媒は、粉末状食品の構造に影響を与え難いエタノールを用いる。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、レーザー回折散乱法によって少なくとも0.02μmから2000μmの測定範囲を有するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いる。例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用し、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入すればよい。擾乱後のサンプル、即ち超音波処理を行ったサンプルを測定する場合、予め超音波処理を行ったサンプルを投入してもよく、サンプル投入後に前記の測定装置を用いて超音波処理を行い、続いて測定を行ってもよい。後者の場合、超音波処理を行っていないサンプルを投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とする。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとする。
【0041】
また、本発明における粉末状食品の超音波処理後の粒子径のd50を求める際には、チャンネル(CH)毎の粒子径分布を測定した上で、後述の表1に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて求めることが好ましい。具体的には、後記の表1の各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を、後記の表1のチャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(これを「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば、1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。
【0043】
本発明の粉末状食品は、ショ糖含有量及び食物繊維含有量が所定量以上の乾燥処理されたショ糖含有植物を、超音波処理後の粒子径のd50が所定値以下となるように粉砕処理し、アセトイン、更に好ましくはジメチルスルホキシドを所定量含有せしめることにより製造できる。詳細は上述したとおりである。尚、アセトイン及び/又はジメチルスルホキシドの純品やこれを含む組成物を、乾燥前の植物粉末に添加や混合等の方法によって含有せしめる態様であっても、乾燥後粉砕前の乾燥植物に含有せしめ、粉砕する態様であってもよく、粉末状食品に含有せしめる方法であってもよい。尚上記アセトイン及び/又はジメチルスルホキシド含有組成物が、食材であることが好ましく、また、植物由来であることが好ましい。
【0044】
更に、本発明には、ショ糖含有量及び食物繊維含有量が所定量以上且つ超音波処理後の粒子径のd50が所定値以下のショ糖含有植物由来の粉末状食品(例えば、ショ糖含有植物の乾燥粉砕処理物)に、アセトイン、更に好ましくはジメチルスルホキシドを所定量含有せしめることで、粉末状食品のショ糖由来の焦げ臭を抑制し、ショ糖由来の甘い風味を高める方法も含まれる。詳細は上述したとおりである。尚、上記のようにショ糖含有量及び食物繊維含有量が所定量以上且つ超音波処理後の粒子径のd50が所定値以下の粉末状食品にアセトイン、更に好ましくはジメチルスルホキシドを一定範囲の含有量で含ませることで、ショ糖由来の焦げ臭が抑制され、植物が本来有する特有のショ糖の甘い風味が更に増強される。
【0045】
また、本発明には、本発明の粉末状食品を含有する飲食品も含まれる。すなわち、本発明の粉末状食品の効果により、ショ糖含有植物由来の粉末状食品を含有する飲食品において、ショ糖由来の焦げ臭が抑制され、ショ糖由来の甘い風味が増強されたショ糖含有植物の好ましい風味を被添加飲食品に付与することができ、該飲食品の風味を向上できる。尚、本発明の粉末状食品の、被添加飲食品への配合量は、特に限定されるものではなく、改善されたショ糖含有植物の風味が飲食品に付与できるよう適宜調整すればよいが、飲食品全量に対するショ糖含有植物の割合としては、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が特に好ましい。また、上限は100質量%以下が好ましい。
【0046】
尚、本発明の粉末状食品には、本発明の作用効果を妨げない限りにおいて、その他の食材を含有していてもよい。具体的には、レーザー回折式粒子径分布測定の測定対象とならない2000μm(2mm)より大きい食材や具材をいう。斯かるその他の食材としては、穀類のパフや乾燥種実類や乾燥果実類等が挙げられるが、いずれを用いてもよい。これらの食材は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
尚、この場合、超音波処理を行った状態における50%積算径の測定に際しては、これら具材のうち、測定上限2000.00μm以上のものを除いてから測定する。
【0047】
なお、本発明の粉末状食品を含有する飲食品としては何ら限定されるものではないが、飲料類等の液状食品(例えばスープ、スムージー)、調味料類等の液状又は半固体状又は固体状の飲食品(例えばマヨネーズ、ドレッシング、バター、マーガリン)、菓子類などの半固体状又は固体状食品(例えばグラノーラ、スティック、クラッカー、キャラメル、グミ、チップス)、乾燥調味料類などの粉末状食品が挙げられる。
【0048】
よって、本発明には、ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上かつ食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上のショ糖含有植物を粉砕処理し、アセトインを1ppb以上40000ppb以下含有せしめる、超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下のショ糖含有植物含有粉末状食品を含有する飲食品の製造方法も含まれる。更に、アセトインとともにジメチルスルホキシド含有量が1ppb以上40000ppb以下のショ糖含有植物含有粉末状食品を含有する飲食品の製造方法も含まれる。前述の製造方法において、アセトイン及び/又はジメチルスルホキシドは飲食品の製造の過程で任意のタイミングで含有せしめることができる。詳細は前述したとおりである。本発明はショ糖含有植物含有粉末状食品を含有する飲食品において、ショ糖由来の焦げ臭を容易に制御し、ショ糖特有の甘い風味を引き出す効果を奏するため、加熱されておらずこげ臭を制御する必要がないショ糖含有植物含有粉末状食品にも甘い風味を引き出すために用いることができるが、加熱処理された状態のショ糖含有植物含有粉末状食品(例えば乾燥微粒子など)を含有する飲食品により好適に用いることができる。
【0049】
更には、本発明には、ショ糖含有量が乾燥質量換算で2.5質量%以上かつ食物繊維含有量が乾燥質量換算で1質量%以上のショ糖含有植物を粉砕処理し、アセトインを1ppb以上40000ppb以下含有せしめる、超音波処理後の粒子径のd50が1000μm以下のショ糖含有植物含有粉末状食品又はこれを含有する飲食品の甘い風味を増強する方法も含まれる。更に、アセトインとともにジメチルスルホキシド含有量が1ppb以上40000ppb以下のショ糖含有植物含有粉末状食品又はこれを含有する飲食品の甘い風味を増強する方法も含まれる。前述の方法において、アセトイン及び/又はジメチルスルホキシドは飲食品に任意のタイミングで含有せしめることができる。詳細は前述したとおりである。本発明はショ糖含有植物を含有する飲食品において、ショ糖由来の焦げ臭を容易に制御し、ショ糖特有の甘い風味を引き出す効果を奏するため、加熱されておらずこげ臭を制御する必要がないショ糖含有植物含有粉末状食品にも甘い風味を引き出すために用いることができるが、加熱処理された状態のショ糖含有植物含有粉末状食品(例えば乾燥微粒子など)を含有する飲食品により好適に用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に指定が無い限り、水は全て蒸留水を用いた。
【0051】
表2、3に示す通り、ショ糖含有植物として、ビーツ、コーン、ニンジン、カボチャ、ダイズ、サツマイモ、パイナップル、バナナ、マンゴー、アーモンドの乾燥状態の粉末(水分含量10%以下のもの)を選択し、アセトイン(東京化成工業社製)及び/又はジメチルスルホキシドの純品(富士フイルム和光純薬工業社製)を水で適当な濃度に希釈したものを添加、混合し、一定の含有量になるように調整した(ショ糖含有植物由来の粉末状食品10gに対して、1mLの水(対照)、あるいは適宜濃度を調整したアセトイン及び/又はジメチルスルホキシドの希釈溶液を添加してよく混合した。アセトイン及び/又はジメチルスルホキシドは、粉末状食品に対する含有量として濃度を調整した。)。超音波処理後の粒子径のd50、ショ糖含有量、食物繊維含有量については、前記の好適条件によって測定した。その後、これら粉末状食品について、ショ糖由来の焦げ臭の低減効果、ショ糖由来の甘い風味の増強効果、総合評価について官能検査を行った。更に、試験例18のサンプルと食塩とを表中に記載された比率で混合した粉末状食品を製造し、本発明の効果が認められるかを確認した。
尚、比較例4、試験例43、44のペーストは、ショ糖含有植物であるビーツの粉末状食品をキャノーラ油に50質量%混合した後、アイメックス株式会社製、品名「RMBイージーナノ」)を用い、微細化処理を行って、ペーストを得た。微細化条件は、上記ビーツの粉末状食品とキャノーラ油の混合物120mLに対し、直径2mmのジルコニアビーズ380gを用い、ミルの回転数2000rpm、冷却水温度5℃にて、30分間の微細化を行った。尚、ビーツの粉末状食品のアセトイン及び/又はジメチルスルホキシドの濃度は、上述の方法に従って予め調整した。
また、比較例5、試験例45〜48の飲料は、ビーツの粉末状食品を水に10質量%混合した後、この混合物150mLを180mL容量のガラス瓶に充填し、湯浴にて瓶そう殺菌(60℃達温)し、冷却した後、打栓、調製した。尚、ビーツの粉末状食品のアセトイン及び/又はジメチルスルホキシドの濃度は、上述の方法に従って予め調整した。
【0052】
超音波処理後の粉末状食品、ペースト中の粒子、飲料中の粒子の粒子径のd50、ショ糖含有量、食物繊維含量については、前記の好適条件によって測定した。その後、これら粉末状食品について、ショ糖由来の焦げ臭の低減効果、ショ糖由来の甘い風味の増強効果、総合評価について官能検査を行った。更に、試験例18のサンプルと食塩とを表中に記載された比率で混合した粉末状食品を製造し、本発明の効果が認められるかを確認した。
【0053】
評価基準は以下のとおりである。
【0054】
<評価基準1:ショ糖由来の焦げ臭>
5:ショ糖由来の焦げ臭が全く感じられず、優れる。
4:ショ糖由来の焦げ臭がほとんど感じられず、やや優れる。
3:ショ糖由来の焦げ臭が感じられるが、許容範囲。
2:ショ糖由来の焦げ臭がやや強く感じられ、やや劣る。
1:ショ糖由来の焦げ臭が強く感じられ、劣る。
ここで、ショ糖由来の焦げ臭は、新鮮な食用植物が本来有さない、乾燥処理によって生じる焦げ臭さのような好ましくない異臭として評価した。
【0055】
<評価基準2:ショ糖由来の甘い風味>
5:ショ糖由来の甘い風味が強く感じられ、優れる。
4:ショ糖由来の甘い風味がやや強く感じられ、やや優れる。
3:ショ糖由来の甘い風味が感じられ、許容範囲。
2:ショ糖由来の甘い風味はほとんど感じられず、やや劣る。
1:ショ糖由来の甘い風味は感じられず、劣る。
ここで、ショ糖由来の甘い風味は、新鮮な食用植物が本来有したり、加熱調理した際に明らかに生じたりする、好ましい甘い味やこれを想起させる甘い香りとして評価した。
【0056】
<評価基準3:総合評価>
5:ショ糖含有植物本来の自然な風味が強く、優れる。
4:ショ糖含有植物本来の自然な風味がやや強く、やや優れる。
3:ショ糖含有植物本来の自然な風味が感じられ、許容範囲。
2:ショ糖含有植物本来の自然な風味がやや弱く、やや劣る。
1:ショ糖含有植物本来の自然な風味が弱く、劣る。
【0057】
尚、官能検査員としては、下記A)〜C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0058】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0059】
また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、10名のスコアの算術平均値から算出した。
【0060】
結果を表2、表3に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
結果、ショ糖及び食物繊維含有量を所定割合以上含有する種々の粉末状食品、ペースト、飲料において、アセトイン及び/又はジメチルスルホキシド含有量や超音波処理後の粉末状食品、ペースト中の粒子、飲料中の粒子の粒子径のd50等を所定範囲内になるように調整することで、ショ糖由来の焦げ臭が抑えられ、ショ糖由来の甘い風味が増強される本発明の効果が奏されることが明らかになった。更に、アセトイン及びジメチルスルホキシド含有量をともに所定範囲内になるように調整することで、本発明の効果がより強く奏されより好ましいことが分かった。加えて、粉末状食品全体に対するショ糖含有植物由来の粉末の含有量は、所定の範囲であることが好ましいことが分かった。