特許第6763119号(P6763119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763119絶縁性被膜組成物、及び絶縁性被膜付金属材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763119
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】絶縁性被膜組成物、及び絶縁性被膜付金属材料
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/02 20060101AFI20200917BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20200917BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20200917BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H01B3/02 Z
   C01B33/40
   H01B5/14 Z
   C09K3/10 Q
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-171727(P2016-171727)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-37368(P2018-37368A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108546
【氏名又は名称】株式会社イチネンケミカルズ
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸紀
(72)【発明者】
【氏名】林 晋也
(72)【発明者】
【氏名】須貝 一郎
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 武雄
(72)【発明者】
【氏名】棚池 修
(72)【発明者】
【氏名】飯島 高志
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−160182(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/02
C01B 33/40
C09K 3/10
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
450℃〜650℃で焼成することにより金属基材表面に絶縁性被膜を形成する絶縁性
被膜組成物であって、
スメクタイト粘土鉱物と、減粘剤と、分散媒とを含み、樹脂を含まないことを特徴とする絶縁性被膜組成物。
【請求項2】
pHが10.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁性被膜組成物。
【請求項3】
水酸化アンモニウムを含むことを特徴とする請求項2に記載の絶縁性被膜組成物。
【請求項4】
上記減粘剤が、エチドロン酸二ナトリウム及び/又はエチドロン酸四ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の絶縁性被膜組成物。
【請求項5】
上記スメクタイト粘土鉱物の一次粒子径(メディアン径)が、10〜150nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の絶縁性被膜組成物。
【請求項6】
上記スメクタイト粘土鉱物を7質量%〜30質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の絶縁性被膜組成物。
【請求項7】
金属基材表面に絶縁性被膜を備える金属部材であって、
上記絶縁性被膜が、金属基材側から順に固溶層と、スメクタイト粘土鉱物由来の粘土層とを有し、樹脂を含まず、かつ抵抗値が1.00×10Ω以上であり、
上記固溶層が、金属基材の構成元素とスメクタイト粘土鉱物の構成元素とを含むことを特徴とする絶縁性被膜付金属部材。
【請求項8】
耐熱温度が450℃以上であることを特徴とする請求項7に記載の絶縁性被膜付金属部材。
【請求項9】
上記絶縁性被膜が、加熱前後で組成と微細構造に変化がないものであることを特徴とする請求項8に記載の絶縁性被膜付金属部材。
【請求項10】
上記絶縁性被膜の膜厚が0.7μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つの項に記載の絶縁性被膜付金属部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 絶縁性被膜組成物、及び絶縁性被膜付金属部材に係り、更に詳細には、耐熱性に優れた絶縁性被膜をウエットプロセスで形成できる絶縁性組成物、絶縁性被膜付金属部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材等の金属基材上に太陽電池等の電子デバイスを作製するには、電子デバイスと金属基材との短絡を防止することが必要であり、金属基材の表面には絶縁性被膜が形成される。
【0003】
従来、ウエットプロセスで塗布することができ、成膜が容易な絶縁膜としては、樹脂製の絶縁性被膜が知られている。しかし、樹脂により形成した絶縁性被膜は、一般的に絶縁性被膜を形成する樹脂の物性の影響を受けて耐熱性が低くなるため、絶縁性被膜上に形成できる電子デバイス、及びその作製方法が制限される。
【0004】
特許文献1の特開2006−188408号公報には、耐熱性が高く電気絶縁性に優れる粘土膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−188408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものにあっては、層状粘土鉱物の分散液は、乾燥することで、層状粘土鉱物が重なり合って膜状になることを応用して層状粘土鉱物の自立膜を得るものである。
【0007】
上記特許文献1に開示される技術によれば、層状粘土鉱物により電気絶縁性に優れた自立膜を作製することができる。
上記自立膜は優れた電気絶縁性を有するものであるが、膜の強度や柔軟性を保つために高分子樹脂が配合されたものであるため、充分な耐熱性を有するものであるとは云えない。また、上記自立膜は、樹脂を配合した層状粘土鉱物の自立膜であり、金属基材に密着した絶縁膜ではない。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、充分な電気絶縁性を有し、耐熱性に優れ、かつ、金属基材表面に簡単に塗工できる絶縁性被膜組成物、及び、該絶縁性被膜を形成した金属部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、スメクタイト粘土鉱物を減粘剤によって分散することにより、ゲル化せずにゾル状態が維持されて、樹脂成分を含まなくても金属基材表面に塗工することができ、金属基材表面に密着して耐熱性を有する絶縁性被膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の絶縁性被膜組成物は、450℃〜650℃で焼成することにより金属基材表面に絶縁性被膜を形成する組成物であり、スメクタイト粘土鉱物と、減粘剤と、分散媒とを含み、樹脂を含まないことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の金属部材は、絶縁性被膜を備えるものである。
そして、上記絶縁性被膜が、金属基材側から順に固溶層と、スメクタイト粘土鉱物由来の粘土層とを有し、樹脂を含まず、かつ抵抗値が1.00×10Ω以上であり、
上記固溶層が、金属基材の構成元素とスメクタイト粘土鉱物の構成元素とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、減粘剤を用いてスメクタイト粘土鉱物を分散することにより、スメクタイト粘土鉱物がゲル化することなくゾル状態が維持されて、樹脂成分を含まなくても金属基材表面に塗工することができ、金属基材表面に密着した耐熱性を有する絶縁性被膜を形成できる絶縁性被膜組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】絶縁性被膜組成物の塗膜におけるスメクタイト粘土鉱物が積層した状態を示す概略図である。
図2】本発明の絶縁性被膜付金属部材のTEM断面像である。
図3】本発明の絶縁性被膜の深さと元素の組成比との関係のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の絶縁性被膜組成物について詳細に説明する。
上記絶縁性被膜組成物は、金属基材表面に絶縁性被膜を形成するものであり、スメクタイト粘土鉱物と、減粘剤と、分散媒とを含み、必要に応じて、pH調整剤等の他の添加剤を含有して成る。
【0015】
上記スメクタイト粘土鉱物は、層状の粘土鉱物であり、厚さが1nm程度の板状又は円盤状の一次粒子(以下、単に「板状粒子」ということがある。)が積み重なった層状構造を形成したものである。
【0016】
上記スメクタイト粘土鉱物は、水系の分散媒中に分散されることで、板状粒子の板面が負電荷を帯び、板状の一次粒子間のイオンが水和して一次粒子の間隔が拡がり、一次粒子間に静電気的な反発が生じて層状のスメクタイト粘土鉱物が板状の一次粒子にまで細分化される。
そして、接近した板状粒子同士は、静電気的に反発して低粘度のゾルを形成する。
【0017】
しかし、上記スメクタイト粘土鉱物の板状粒子は、その縁に弱い正電荷を有するため、時間の経過と共に、上記正電荷が隣接する板状粒子の板面の負電荷と相互反応して、イオン結合によるカードハウス構造を形成して高粘度のゲルとなり、塗布し、成膜することを困難にする。
【0018】
なお、上記ゲルはチキソ性を有し、再攪拌によって流動性を復元さることができるものであるが、撹拌を止めるとゲル化して粘度が上昇してしまう。
【0019】
本発明の絶縁性被膜組成物は、減粘剤を含有するものであり、上記水系の分散媒に分散したスメクタイト粘土鉱物がゲル化せずにゾル状態が維持され、粘度上昇が防止されたものであるため、塗布・成膜することができる。
【0020】
上記絶縁性被膜組成物を金属基材表面に塗布し乾燥すると、図1に示すように、上記板状粒子が配向し、クーロン力及びファンデルワールス力により互いに結合して、板状粒子同士が密着した積層した構造の塗布膜となる。
【0021】
上記塗布膜は、スメクタイト粘土鉱物の板状粒子同士が密着しているため、吸着水等によるイオン濃度の高い箇所が板状粒子の層間に存在せず、高い絶縁性を有する。
【0022】
そして、上記塗布膜を焼成することで、密着した板状粒子同士が溶融して一体化したスメクタイト粘土鉱物由来の粘土層を含む絶縁性被膜を形成することができる。
【0023】
上記被覆膜は、熱分解温度が700℃程度であるスメクタイト粘土鉱物によって形成されたものであるため、樹脂を含む絶縁被膜に比して耐熱性が飛躍的に向上する。
【0024】
<スメクタイト粘土鉱物>
上記絶縁性被膜組成物に使用できるスメクタイト粘土鉱物としては、例えば、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンストアイトを挙げることができる。
なかでもヘクトライト、スチーブンサイト、モンモリロナイトは成膜性に優れ好ましく使用できる。これらは、合成物、天然物のいずれであってもよいが、一次粒径が制御された合成物を好ましく使用できる。
【0025】
一般に、スメクタイト粘土鉱物の粒子径は、一次粒子径(メディアン径)が10nm〜500nmであるが、本発明の絶縁性被膜組成物のスメクタイト粘土鉱物の一次粒子径(メディアン径)は、10nm以上150nm以下であることが好ましい。
一次粒子径(メディアン径)が上記範囲内であると金属基材に対する成膜性・耐剥離性が向上する。
【0026】
スメクタイト粘土鉱物の粒子径が、上記範囲内の粒径であると、成膜性・耐剥離性が向上する理由は明らかではないが、上記粒径の粒子は、上記ゲル化抑止効果と相俟って、金属基材表面の微細な凹凸に入り込んで引っかかるためであると考えられる。
【0027】
スメクタイト粘土鉱物の粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折散乱法により測定することが可能である。ホモディスパーや超音波発生装置などを用いて強攪拌してスメクタイト粘土鉱物の水分散液を作製して、動的光散乱法やレーザー回折散乱式の測定装置により粒子径の測定を行う。粒子径の測定結果は体積基準で表示される。
【0028】
本発明の絶縁性被膜組成物におけるスメクタイト粘土鉱物の含有量は、7質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
スメクタイト粘土鉱物の含有量が7質量%未満では、塗工膜を形成する板状粒子の密着性が低下し、絶縁性が低下する虞が生じる。また、30質量%を超えると粘土鉱物を完全に濡らすことが困難で充分水和せずに沈殿し、低粘度のゾルとならずに塗工が困難になることがある。
【0030】
<減粘剤>
上記減粘剤としては、リン酸塩化合物やホスホン酸及びその誘導体、低分子量のアミンの塩等を挙げることができる。
【0031】
上記のリン酸塩化合物としては、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸のナトリウム塩やカリウム塩を挙げることができる。
また、ホスホン酸及びその誘導体としては、ホスホン酸及びその誘導体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩を挙げることができ、なかでも、エチドロン酸ナトリウムを好ましく使用することができる。
【0032】
上記減粘剤の絶縁性被膜組成物中の含有量は、減粘剤やスメクタイト粘土鉱物にもよるが、0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0033】
上記範囲の減粘剤を含有することで、例えば、メクタイト粘土鉱物を20質量%含む絶縁性被膜組成物の粘度(25℃)を10〜150mPasにすることができ、絶縁性被膜組成物の塗工性が向上する。
【0034】
また、減粘剤を含み、ゲル化が抑止された水分散安定性を有するスメクタイト粘土鉱物を用いることもできる。水分散安定性を有するスメクタイト粘土鉱物としては、Laponite S482、Laponite SL25(いずれもBYK Additives & instruments社製)を挙げることができ、これらは一般に上市されている。
【0035】
<分散媒>
上記分散媒としては、イオン交換水を使用できる。
【0036】
<添加剤>
本発明の金属表面コーティング組成物は、必要に応じて、pH調整剤、水溶性有機溶媒、界面活性剤等の添加剤を含有することができる。
【0037】
(pH調整剤)
上記pH調整剤は、絶縁性被膜組成物のpHを調整するものである。
絶縁性被膜組成物のpHをアルカリ側にすることで、絶縁性被膜の電気絶縁性が向上する。具体的には、上記絶縁性被膜組成物のpHは10.0以上であることが好ましい。
【0038】
上記pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化アンモニウム(NHOH)等のアルカリ成分を挙げることができ、特に、水酸化アンモニウム(NHOH)は、絶縁性被膜組成物のpHを強アルカリ側にすることなく、絶縁性被膜の抵抗値を高くすることができるため、好適に使用できる。
【0039】
上記絶縁性被膜組成物中のpH調整剤の含有量は、添加するアルカリ成分にもよるが、スメクタイト粘土鉱物1g当たり、0.1〜5.0mmolである。
【0040】
(水溶性有機溶媒)
上記水溶性有機溶媒は、絶縁性被膜組成物と金属基材表面との親和性を向上させ、ハジキ、塗工ムラの発生を防止すると共に、絶縁性被膜組成物の乾燥性を向上させるものである。
【0041】
金属基材自体の表面は親水性であるが、金属基材を大気中に保存することで大気中に存在する有機物質(ハイドロカーボン)等が金属基材表面に吸着して金属基材の表面が疎水性になる。
したがって、有機基を有する水溶性有機溶媒を含有することで金属基材表面との親和性が向上し、コーティング性が向上する。
また、上記水溶性有機溶媒が揮発性を有することで乾燥性が向上し、金属基材表面に形成した塗工膜の焼成時に膜内部でガスが発生して膜が剥離することが防止され、絶縁性被膜と金属基材との密着性が向上する。
【0042】
上記水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒が挙げられ、これらは一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、グリコールエーテル系溶媒は、引火点が高く安全性に優れ、減粘効果も有するため好ましく使用でき、特にエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく使用できる。
【0043】
上記水溶性有機溶媒の絶縁性被膜組成物中の含有量は、使用する水溶性有機溶媒にもよるが1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。1質量%未満ではハジキが生じたり乾燥性が低下したりすることがあり、30質量%を超えるとスメクタイト粘土鉱物の分散性が低下して沈降することがある。
【0044】
<界面活性剤>
界面活性剤は、絶縁性被膜組成物の表面エネルギーを低下させ、金属基材表面への濡れ性を向上させて塗工膜の成膜性を向上させ、金属基材との密着性を向上させるものである。界面活性剤を含有することで均一な塗工膜を形成できる。
【0045】
上記界面活性剤としては、スメクタイト粘土鉱物のゲル化抑止を阻害しなければ特に制限はないが、中でも、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤はイオンとならず、スメクタイト粘土鉱物の分散状態に影響を及ぼさないため特に好ましい。
【0046】
ノニオン系界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、又は分子中にエステル結合とエーテル結合の両方を持つエステル・エーテル型のいずれであってもよいが、HLB値が4〜16であるものが好ましい。
【0047】
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、これらは一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
上記界面活性剤の絶縁性被膜組成物中の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
上記範囲内にあることで、スメクタイト粘土鉱物の分散性が低下することなく、金属基材表面への濡れ性を向上させることができる。
【0049】
<絶縁性組成物の作製>
本発明の絶縁性組成物は、減粘剤を含む水系の分散媒を撹拌しなからスメクタイト粘土鉱物を添加して、上記水系の分散媒にスメクタイト粘土鉱物を均一に分散させることで作製することができ、必要に応じて、スメクタイト粘土鉱物の分散液に上記添加剤を添加して作製する。
【0050】
具体的には、減粘剤を含むイオン交換水にスメクタイト粘土鉱物を加えたものを、攪拌と脱泡が同時に行える遊星式攪拌・脱泡装置で十分に攪拌脱泡することで作製できる。
この方法によって、ゲル化が抑止されたスメクタイト粘土鉱物が高濃度の絶縁性組成物(低粘性ゾル)を作製することができる。
【0051】
上記絶縁性組成物の粘度(25℃)は、1mPas〜1500mPasであることが好ましく、1mPas〜1000mPas以下であることがより好ましい。1mPas未満ではスメクタイト粘土鉱物の含有量が少なく絶縁性が低下することがあり、1500mPasを超えると塗工が困難になりムラが生じることがある。
絶縁性組成物の粘度は、例えば東機産業社製の粘度計TVB−10Mを使用し、サンプルに合わせてローターの回転数を調整することで測定できる。
【0052】
<金属部材>
本発明の金属部材は、金属基材表面に絶縁性被膜を備えるものであり、金属基材側から順に固溶層と、スメクタイト粘土鉱物由来の粘土層とを有し、上記固溶層が、金属基材の構成元素とスメクタイト粘土鉱物の構成元素とを含む。
【0053】
上記絶縁性被膜は、スメクタイト粘土鉱物を主成分とし、スメクタイト粘土鉱物の板状粒子が配向し密着して積層した構造を有する粘土層を有するため、抵抗値が1.00×10Ω以上の高い絶縁抵抗を有する。
【0054】
また、上記固溶層は、金属基材の構成元素とスメクタイト粘土鉱物の構成元素とを含むものであり、上記固溶層の金属基材の構成元素の濃度は、金属基材側から粘土層側にかけて徐々に低くなるものである。
本発明の金属部材は、金属基材と粘土層との間に両者の構成成分を含む固溶層を有することで耐剥離性が向上する。
【0055】
上記絶縁性被膜の構造は、金属部材の断面をTEM−EDS観察することで確認することができ、また、固溶層の金属基材の構成元素の濃度は、アルゴンレーザで絶縁性被膜の表面から堀り進み、堀った部分をXPSなどで元素分析を行うことで確認できる。
【0056】
上記絶縁性被膜は、スメクタイト粘土鉱物を主成分とするものであり、有機物をほとんど含まないため耐熱性に優れる。具体的には、450℃以上の耐熱性を有するものであり、スメクタイト粘土鉱物の分解が始まる700℃程度までの耐熱性を有する。
本発明において、「耐熱温度」とは、連続して使用することができる温度であり、連続して加熱しても剥離しない常用使用温度をいい、一瞬であれば耐えることができる短時間のみ使用できる最高使用温度をいうものでない。
【0057】
上記絶縁性被膜の膜厚は0.7μm以上であることが好ましい。膜厚が0.7μm以上であることで、塗膜欠陥がなく絶縁性に優れる被膜を形成することができる。
【0058】
また、膜厚の上限は特に制限はないが、一度に厚い絶縁性被膜組成物の塗膜を形成すると、上記塗膜の表面側が先に焼成されて、塗膜内部に吸着水等によるイオン濃度の高い箇所が残存することがある。
したがって、厚い絶縁性被膜を形成する場合は、薄い絶縁性被膜を複数回重ねて形成し、絶縁性被膜の厚さを厚くすることが好ましく、実用的な絶縁性被膜の上限は20μm程度である。
【0059】
上記金属基材としては特に制限はないが、例えば、ステンレス、鉄、銅、チタン等が挙げることができる。
【0060】
また、金属基材の表面が親水化処理されたものであると、界面活性剤や水溶性有機溶媒を含まない絶縁性被膜組成物であっても塗工することができ、好ましく使用できる。
親水処理の方法としては、プラズマ処理や研磨等を挙げることができる。
【0061】
<金属部材の作製>
上記絶縁性被膜付金属部材は、金属基材の表面に上記絶縁性被膜組成物を塗布乾燥し、450℃〜650℃で30分間〜10時間焼成することで作製することができる。
【0062】
上記金属基材への塗布は従来公知の方法で行うことができ、例えば、スピンコート法、ギャップコーター塗工法、浸漬塗工法、ビードコート法、リングコート法等が挙げられる。
また、乾燥方法としては、室温での静置や温風乾燥が挙げられ、焼成方法としては焼成炉やオーブンでの焼成が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0064】
[絶縁性被膜組成物A]
ディスパーを用いて、85.7質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)5.5質量部、及び、天然層状粘土鉱物(ベントナイト:クニピアM:クニミネ工業製)2.5質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4.4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加し、自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が8質量%の[絶縁性被膜組成物A]を得た。
【0065】
[絶縁性被膜組成物B]
ディスパーを用いて、79.1質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)12.5質量部、及び、天然層状粘土鉱物(ベントナイト:クニピアM:クニミネ工業製)2.5質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、エチレングリコールモノブチルエーテル4.4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加し、自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が15質量%の[絶縁性被膜組成物B]を得た。
【0066】
[絶縁性被膜組成物C]
ディスパーを用いて、80質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)17.5質量部、及び、天然層状粘土鉱物(ベントナイト:クニピアM:クニミネ工業製)2.5質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散し、自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が20質量%の[絶縁性被膜組成物C]を得た。
【0067】
[絶縁性被膜組成物D]
ディスパーを用いて、76.6質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)15質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、10%水酸化ナトリウムを2.5質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が15質量%の[絶縁性被膜組成物D]を得た。
【0068】
[絶縁性被膜組成物E]
ディスパーを用いて、77.1質量部のイオン交換水に減粘剤(エチドロン酸四ナトリウム;キレスト社製:PH−214)2質量部を添加し、1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)15質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が15質量%の[絶縁性被膜組成物E]を得た。
【0069】
[絶縁性被膜組成物F]
ディスパーを用いて、73.8質量部のイオン交換水の減粘剤(エチドロン酸四ナトリウム;キレスト社製:PH−214)3質量部を添加し、1000rpmで撹拌しながら、スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトRD:一次粒子径(メディアン径)60nm)15質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、10%水酸化ナトリウムを2.3質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が15質量%の[絶縁性被膜組成物F]を得た。
【0070】
[絶縁性被膜組成物G]
ディスパーを用いて、74.1質量部のイオン交換水の減粘剤(エチドロン酸四ナトリウム;キレスト社製:PH−214)5質量部を添加し、1000rpmで撹拌しながら、スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトRD:一次粒子径(メディアン径)60nm)15質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が15質量%の[絶縁性被膜組成物G]を得た。
【0071】
[絶縁性被膜組成物H]
ディスパーを用いて、75.6質量部のイオン交換水に減粘剤(エチドロン酸四ナトリウム;キレスト社製:PH−214)3.5質量部を添加し、1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)15質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が15質量%の[絶縁性被膜組成物H]を得た。
【0072】
[絶縁性被膜組成物I]
ディスパーを用いて、74.6質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments社製:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)17質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、10%水酸化ナトリウムを2.5質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が17質量%の[絶縁性被膜組成物I]を得た。
【0073】
[絶縁性被膜組成物J]
ディスパーを用いて、76.34質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)17質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、29%水酸化アンモニウムを0.76質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が17質量%の[絶縁性被膜組成物J]を得た。
【0074】
[絶縁性被膜組成物K]
ディスパーを用いて、73.1質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)17質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、29%水酸化アンモニウムを4質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が17質量%の[絶縁性被膜組成物K]を得た。
【0075】
[絶縁性被膜組成物L]
ディスパーを用いて、71.1質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)17質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、29%水酸化アンモニウムを6質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が17質量%の[絶縁性被膜組成物L]を得た。
【0076】
[絶縁性被膜組成物M]
ディスパーを用いて、67.1質量部のイオン交換水を1000rpmで撹拌しながら、減粘剤含有スメクタイト粘土鉱物(BYK Additives & instruments:ラポナイトS482:一次粒子径(メディアン径)60nm)17質量部を少量ずつ添加し、粘土鉱物を均一に分散した。
次に、界面活性剤(第一工業製薬社製:DKS NL−40)0.4質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部、エタノール1.5質量部の混合溶液を添加した。
さらに、29%水酸化アンモニウムを10質量部添加して自転・公転ミキサーで撹拌脱泡して粘土固形分が17質量%の[絶縁性被膜組成物M]を得た。
【0077】
絶縁性被膜組成物A〜Mの処方を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
[実施例1]
上記絶縁性被膜組成物Aを、SUS304の表面にスピンコート(1000rpm、10秒)した後、室温で1時間放置して乾燥し、さらに105℃で1時間乾燥した後、600℃で2時間焼成して、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0080】
[実施例2]
絶縁性被膜組成物Aを上記絶縁性被膜組成物Bに変える他は実施例1と同様にして絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0081】
[実施例3]
金属基材をプラズマ処理により親水化したSUS444に変える他は実施例2と同様にして絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0082】
[実施例4]
実施例3の絶縁性被膜付金属部材に、上記絶縁性被膜組成物Bをスピンコート(1000rpm、10秒)した後、室温で1時間放置して乾燥し、さらに105℃で1時間乾燥した後、600℃で2時間焼成して、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0083】
[実施例5]
絶縁性被膜組成物Bを上記絶縁性被膜組成物Cに変える他は実施例3と同様にして絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0084】
[実施例6]
実施例5の絶縁性被膜付金属部材に、上記絶縁性被膜組成物Cをスピンコート(1000rpm、10秒)した後、室温で1時間放置して乾燥し、さらに105℃で1時間乾燥した後、600℃で2時間焼成して、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0085】
[実施例7]
金属基材をプラズマ処理により親水化したSUS304に変え 焼成温度を550℃に変える他は実施例3と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0086】
[実施例8]
焼成温度を600℃に変える他は実施例5と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0087】
[実施例9]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Dに変える他は実施例8同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0088】
[実施例10]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Eに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0089】
[実施例11]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Fに変える他は実施例8同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0090】
[実施例12]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Gに変える他は実施例8同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0091】
[実施例13]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Hに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0092】
[実施例14]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Iに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0093】
[比較例1]
400℃で2時間焼成する他は実施例14と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0094】
[実施例15]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Jに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0095】
[実施例16]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Kに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0096】
[実施例17]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Lに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0097】
[実施例18]
絶縁性被膜組成物Cを上記絶縁性被膜組成物Mに変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0098】
[実施例19]
金属基材を、表面研磨した銅板に変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0099】
[比較例2]
金属基材を研磨していない銅板に変える他は実施例8と同様にして、絶縁性被膜付金属部材を得た。
【0100】
<評価>
上記絶縁性被膜付金属部材を以下のようにして評価した。評価結果を表2に示す。
【0101】
(絶縁性被膜の膜厚)
絶縁性被膜の膜厚は、膜厚測定装置(フェリメトリクス社製;F20)を用いて測定した。
【0102】
(絶縁性被膜の抵抗値)
絶縁性被膜の抵抗値は、絶縁性被膜上に、スパッタ装置(JEOL社製;JFC1600Auto Fine coater)を用いて2mm角の面積に金を2ヵ所蒸着し、その上に導電テープを貼り、テスターの端子を当てる部分とした。
絶縁抵抗値は、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製; 高抵抗計R8340A ULTRA HIGH REGISTANCE METER)を使用し、PROG.1 10Vの設定で行った。
【0103】
(絶縁性被膜の剥離の有無)
絶縁性被膜の剥離の有無を目視により確認した。
【0104】
【表2】
【0105】
また、図3に、エネルギー分散型X線分光法で撮影した実施例8の絶縁性被膜付金属部材の断面像を示す。図3から、金属基材と層状の粘土層の間に固溶層が形成していることがわかる。
【0106】
実施例8の絶縁性被膜の深さと元素の組成比との関係をイオンスパッタ・X線光電分光法(XPS)で求め、図3に示す。
図3中、X軸のスパッタ時間はアルゴンイオン銃で絶縁性被膜を掘った時間であって、深さ方向の距離を示すものである。
図3の結果から、金属基材の構成元素(Fe、Cr)と、スメクタイト粘土鉱物の構成元素(Si、O)の両方を含む固溶層が形成され、該固溶層中の金属基材の構成元素の濃度は、金属基材側から粘土層側にかけて徐々に低くなっていることがわかる。
【符号の説明】
【0107】
1 金属基材
2 スメクタイト粘土鉱物
図1
図2
図3