【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0111】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0112】
(2)平均粒径(d50)および粒度分布
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定し、平均粒径を求めた。平均粒径の測定法と同様にして粒度分布を求めた。すなわち、等価球分布における大粒子側から積算を行い、下記式から粒度分布比(R)を算出した。
(r)=粒子積算重量が25%のときの粒径/粒子積算重量が75%のときの粒径
【0113】
(3)ポリエステル原料に含有される含有オリゴマー量の測定方法
ポリエステル原料を約200mg秤量し、クロロホルム/HFIP(ヘキサフルオロ−2−イソプロパノル)の比率3:2の混合溶媒2mlに溶解させる。溶解後、クロロホルム20mlを追加した後、メタノール10mlを少しずつ加える。沈殿物を濾過により除去し、さらに沈殿物をクロロホルム/メタノールの比率2:1の混合溶媒で洗浄し、濾液・洗浄液を回収し、エバポレーターにより濃縮、その後、乾固させる。乾固物をDMF(ジメチルホルムアミド)25mlに溶解後、この溶液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値をクロロホルム/HFIP混合溶媒に溶解させたポリエステル原料量で割って、含有オリゴマー量(重量%)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0114】
(4)塗布フィルムに含有される含有オリゴマー量の測定方法
塗布フィルムを約200mg秤量し、クロロホルム/HFIP(ヘキサフルオロ−2−イソプロパノル)の比率3:2の混合溶媒2mlに溶解させる。溶解後、クロロホルム20mlを追加した後、メタノール10mlを少しずつ加える。沈殿物を濾過により除去し、さらに沈殿物をクロロホルム/メタノールの比率2:1の混合溶媒で洗浄し、濾液・洗浄液を回収し、エバポレーターにより濃縮、その後、乾固させる。乾固物をDMF(ジメチルホルムアミド)25mlに溶解後、この溶液を液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値をクロロホルム/HFIP混合溶媒に溶解させた塗布フィルム量で割って、含有オリゴマー量(重量%)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0115】
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(エステル環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
【0116】
なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0117】
(5)積層ポリエステル層の厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
【0118】
(6)ポリエステルフィルム中の金属元素およびリン元素量の定量
蛍光X線分析装置((株)島津製作所社製型式「XRF−1500」を用いて、下記表1に示す条件下で、フィルムFP法により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。なお、本方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
【0119】
【表1】
【0120】
(7)塗布層厚さ
包埋樹脂でフィルムを固定し断面をミクロトームで切断し、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して試料を調整した。得られた試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM2010)で観察し、塗布層の厚みを測定した。フィルムの計15箇所を測定し、数値の大きい方から3点と、小さい方から3点を除いた9点の平均を塗布層厚みとする。
【0121】
(8)金属層積層用フィルムを構成する、塗布フィルムの塗布層表面から抽出されるオリゴマー量(OL)の測定方法
あらかじめ、塗布フィルムを空気中、150℃で90分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmになるように、測定面(塗布層)を内面として箱形の形状を作成する。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m
2)とする。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。(A面)。反対面側(B面)も上記と同様の要領にて測定を行い、塗布層表面から抽出されるオリゴマー量(OL)を求めた。
【0122】
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
【0123】
なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製『MCI GEL ODS 1HU』
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
【0124】
(9)塗布フィルムヘーズ(H0)の測定
試料フィルムをJIS−K−7136に準じ、村上色彩研究所製「HM−150」により、フィルムヘーズを測定した。
【0125】
(10)加熱処理後の塗布フィルムヘーズ(H1)の測定
試料フィルムを所定の熱処理条件(150℃、90分間)で処理した後、(5)項と同様にして、フィルムヘーズを測定した。
【0126】
(11)塗布フィルムヘーズ変化量(加熱ヘーズ、ΔH)の測定
(7)項と(8)項の測定値より、塗布フィルムヘーズ変化量(加熱ヘーズ、ΔH)を算出した。
ΔH=(H1)−(H0)
ΔHが低いほど、高温処理によるオリゴマーの析出が少ないことを示し、良好である。
【0127】
(12)塗布フィルム表面の最大粗さ(St)測定(熱処理前)
試料フィルムの測定面を、直接位相検出干渉法、いわゆるマイケルソンの干渉を利用した2光束干渉法を用いた、非接触表面計測システム「マイクロマップ社製Micromap512)」により表面粗さ(St)を計測した。なお、測定波長は530nmとし、対物レンズは20倍を用いて、20°視野計測し、計12点計測した計測値の内、その最大値と最小値を除く計10点の平均値を採用しその表面粗さ(St)とした。上記測定方法により、塗布フィルムにおいて、熱処理前のフィルム表面の表面粗さ(St1)を測定した(A面)。反対面側(B面)も上記と同様の要領にて表面粗さ(St2)の測定を行った。
【0128】
(13)塗布フィルム表面の最大粗さ(St)測定(熱処理後)
上記(12)と同様の要領で、塗布フィルムにおいて、150℃、90分間熱処理した後における、フィルム表面の表面粗さ(St3)を測定した(A面)。
反対面側(B面)も上記と同様の要領にて表面粗さ(St4)の測定を行った。
【0129】
(14)パターン化された金属層領域表面の最大粗さ(St)測定
塗布フィルムにおいて、フィルム表面上に反応性スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化銅層を形成した。当該酸化銅層上にパターン化(最細部:20μm)されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬してエッチング処理した。得られたパターン化された酸化銅層は150℃×90分間の加熱処理により結晶化させた。得られたパターン化後の酸化銅層の金属層領域の表面粗さ(St5)を上記(12)と同様の要領で、測定した(A面)。
【0130】
(15)パターン化された金属層領域表面の最大粗さ(St)測定
(14)の反対面(B面)にも金属層が存在する場合には、を上記(14)と同様の要領でパターン化し、得られたパターン化後の酸化銅層の金属層領域の表面粗さ(St6)を上記(12)と同様の要領で、測定した。
【0131】
(16)パターン化された金属層が設けられていない領域の表面の最大粗さ(St)測定 (14)の非金属層領域における表面粗さ(St)を、上記(12)と同様の要領で、表面粗さ(St7)を測定した(A面)。
【0132】
(17)パターン化した金属層が設けられていない領域の表面の最大粗さ(St)測定
(14)の非金属層領域における表面粗さ(St)を、上記(12)と同様の要領で、表面粗さ(St8)を測定した(B面)。
【0133】
(18)塗布フィルムの収縮率(SMD、STD)の測定
試料フィルムを無張力状態で所定の温度(150℃)に保ったオーブン中、90分間熱処理し、その前後の試料の長さを測定して次式にて算出した。なお、塗布フィルムのMDとTDのそれぞれについて測定した。
収縮率={(熱処理前のサンプル長)−(熱処理後のサンプル長)}/(熱処理前のサンプル長)×100
【0134】
(19)金属層に対する密着性(加熱加湿前)評価(実用特性代用評価)
塗布フィルムにおいて、塗布フィルムの塗布層表面上に反応性スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化銅層を形成した。当該酸化銅層上にパターン化されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬して、3mm幅に酸化銅層が残るようにエッチング処理した。得られたパターン化された酸化銅層は150℃×90分間の加熱処理により結晶化させた。次に、株式会社島津製作所製「Ezgraph」を使用し、JIS C 5016に定めるように、90度方向での引っ張り試験を行い、金属層に対する密着力を測定し、下記判定基準により、判定を行った(A面)。反対面側(B面)も金属層が存在する場合には、上記と同様の要領にて測定を行い、下記判定基準により、判定を行った。
《判定基準》
〇:密着力が0.5N/mm以上であり、密着性良好(実用上、問題ないレベル)
△:密着力が0.3〜0.4N/mmであり、密着性は普通(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:密着力が0.2N/mm以下であり、密着性不良(実用上、問題あるレベル)
【0135】
(20)金属層に対する密着性(加熱加湿後)評価(実用特性代用評価)
塗布フィルムにおいて、塗布フィルムの塗布層表面上に反応性スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化銅層を形成した。当該酸化銅層上にパターン化されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬して、12mm幅に酸化銅層が残るようにエッチング処理した。得られたパターン化された酸化銅層は150℃×90分間の加熱処理により結晶化させた。その後、温度85℃、湿度85%RHの条件に保たれた恒温槽の中に48時間入れる。その後上記(11)と同様の要領で、金属層に対する密着力を測定し、下記判定基準により、判定を行った(A面)。反対面側(B面)も金属層が存在する場合には、上記と同様の要領にて測定を行い、下記判定基準により、判定を行った。
《判定基準》
〇:密着力が0.5N/mm以上であり、密着性良好(実用上、問題ないレベル)
△:密着力が0.3〜0.4N/mmであり、密着性は普通(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:密着力が0.2N/mm以下であり、密着性不良(実用上、問題あるレベル)
【0136】
(21)金属層の変色性評価(実用特性代用評価)
塗布フィルムにおいて、塗布フィルムの塗布層表面上に反応性スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化銅層を形成した。その後、温度85℃、湿度85%RHの条件に保たれた恒温槽の中に48時間入れ、その後、金属層積層用フィルム表面の酸化銅層表面を目視にて観察し、下記判定基準により、判定を行った(A面)。反対面側(B面)も金属層が存在する場合には、上記と同様の要領にて測定を行い、下記判定基準により、判定を行った。
《判定基準》
〇:変色なく良好(実用上、問題ないレベル)
△:僅かに変色を確認(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:変色を確認(実用上、問題あるレベル)
【0137】
(22)銅層パターン化後のパターン形状(歪み)評価
塗布フィルムにおいて、塗布フィルムの塗布層表面上に反応性スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化銅層を形成した。当該酸化銅層上に格子状にパターン化(最細部:12μm)されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬してエッチング処理した。得られたパターン化された酸化銅層を、150℃×90分間の加熱処理する前後における格子状のパターン(加熱前のXの長さ=3.00mm、加熱前のYの長さ=3.00mm)の寸法変化(X,Y)に関して、測定顕微鏡を用いて観察し、下記判定基準により、判定を行った。なお、パターン化された金属層の形状の歪みは、塗布フィルムのMDとTDの収縮差が起因する。故に、本評価では簡略化のためA面において評価を行った。
(判定基準)
○:加熱後のXとYの長さの差が0.01mm以下(加熱処理前後での寸法変化がほとんどなく実用上、問題ないレベル)
×:加熱後のXとYの長さの差が0.01mmを超える(加熱処理前後での寸法変化により、実用上、問題あるレベル)
本評価においては、
図1に示すとおり、格子状のパターンにて評価を行ったが、これに限定されるわけではない。
【0138】
(23)銅層パターン化後の配線断線評価(耐熱性の実用特性代用評価)
両面塗布フィルムにおいて、フィルム表面上に反応性スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化銅層を形成した。当該酸化銅層上にライン状にパターン化(最細部:4μm、8μm、12μm、20μm)されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬してエッチング処理した。得られたパターン化された酸化銅層は150℃×90分間の加熱処理により結晶化させた。
得られたパターン化後の酸化銅層の最細部となる箇所を光学顕微鏡(キーエンス社製 デジタルマイクロスコープ 型番:VHX−200)にて倍率40倍で100箇所検査し、酸化銅層の断線の有無を検査し、以下の基準にてパターン化後の配線断線性を評価した(A面)。反対面側(B面)も上記と同様の要領にて検査を行い、下記判定基準により、判定を行った。
《判定基準》
○:A面、B面ともに、銅配線の断線が確認されない
△:A面、B面ともに、銅配線の断線は確認されないが、配線のひび割れ現象が確認される
× :A面、B面ともに、銅配線の断線が1箇所以上で確認される
【0139】
(24)塗布フィルム中のハロゲンイオン量の定量
試料フィルム(塗布フィルム)を10cm角に切り出し、純水中に、室温にて24時間浸漬させる。その後、イオクロマトグラフ法により、下記測定条件により、検出されるハロゲンイオン量を測定した。
(イオンクロマトグラフ測定条件)
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
(判定基準)
A:ハロゲンイオン量が1ppm以下(実用上、問題ないレベル)
B:ハロゲンイオン量が1ppmを超える(実用上、懸念される)
【0140】
(25)総合評価
実施例および比較例で得られた、塗布フィルムの塗布層表面上にパターン化した金属層積層用フィルムにおいて、金属層に対する密着性(加熱加湿前後)、金属層の変色性評価、銅層パターン化後のパターン形状(歪み)、酸化銅層パターン化後の配線断線評価につき、下記判定基準により、総合評価を行った。
《判定基準》
○:金属層に対する密着性(加熱加湿前後)、金属層の変色性評価、銅層パターン化後のパターン形状(歪み)、酸化銅層パターン化後の配線断線評価がすべて○(実用上、問題ないレベル)
△:金属層に対する密着性(加熱加湿前後)、金属層の変色性評価、銅層パターン化後のパターン形状(歪み)、酸化銅層パターン化後の配線断線評価の内、少なくとも一つが△(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:金属層に対する密着性(加熱加湿前後)、金属層の変色性評価、銅層パターン化後のパターン形状(歪み)、酸化銅層パターン化後の配線断線評価の内、少なくとも一つが×(実用上、問題あるレベル)
【0141】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
【0142】
〈ポリエステルの製造〉
[ポリエステル(I)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.59、オリゴマー(エステル環状三量体)含有量0.89重量%のポリエステル(I)を得た。
【0143】
[ポリエステル(II)の製造方法]
ポリエステル(I)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.72、オリゴマー(エステル環状三量体)含有量0.46重量%のポリエステル(II)を得た。
【0144】
[ポリエステル(III)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、二酸化ゲルマニウムを加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度は0.63のポリエステル(III)を得た。
【0145】
[ポリエステル(IV)の製造方法]
ポリエステル(I)の製造方法において、平均粒子径0.3μmのエチレングリコールに分散させた酸化アルミニウム粒子を粒子のポリエステルに対する含有量が1.5重量%となるように添加する以外は同様にして製造し、ポリエステル(IV)を得た。得られたポリエステル(IV)は、極限粘度0.59、オリゴマー(エステル環状三量体)含有量0.87重量%であった。
【0146】
[ポリエステル(V)の製造方法]
酸化アルミニウム粒子に関して、平均粒径が0.04μmと異なる以外はポリエステル(IV)と同様にして製造し、ポリエステル(V)を得た。得られたポリエステル(V)は、極限粘度0.59、オリゴマー(エステル環状三量体)含有量0.87重量%であった。
【0147】
[ポリエステル(VI)の製造方法]
酸化アルミニウム粒子に関して、平均粒径が0.8μmと異なる以外はポリエステル(IV)と同様にして製造し、ポリエステル(VI)を得た。得られたポリエステル(VI)は、極限粘度0.59、オリゴマー(エステル環状三量体)含有量0.87重量%であった。
【0148】
[ポリエステル(VII)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(VII)の極限粘度は0.63であった。
【0149】
実施例1:
上記ポリエステル(II)、(III)、(IV)をそれぞれ89.5%、10%、0.5%の割合で混合した混合原料をa層の原料とし、ポリエステル(I)100%の原料をb層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、a層を最外層(表層)、b層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(aba)で、積層ポリエステルフィルム厚み構成比がa:b:a=2:19:2になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.3倍延伸した後、下記表2に示す塗布剤組成からなる塗布層を乾燥後の塗工量が片面で0.04μmとなるように、フィルム両面(フィルム走行方向に対して、上面がA面、下面がB面)に塗布した後に、テンターに導き、横方向に120℃で4.9倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に弛緩し、フィルムをロール上に巻き上げ、フィルム幅1000mm、巻長さ、6000m、厚さ23μm塗布層が設けられた両面塗布フィルムを得た。なお、塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。なお、STDの微調整は、横方向に弛緩後のフィルム幅で微調整した。
【0150】
(化合物例)
(A1):ヘキサメトキシメチロールメラミン
(A2):オキサゾリン化合物であるエポクロス(株式会社日本触媒製) オキサゾリン基量7.7mmol/g
(A3):オキサゾリン化合物であるエポクロス(株式会社日本触媒製) オキサゾリン基量4.5mmol/g
(A4):ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
【0151】
(A5):下記方法で合成したブロックポリイソシアネート
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n−ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート
(A6):ポリカルボジイミド系化合物であるカルボジライト(日清紡ケミカル株式会社製) カルボジイミド当量340
【0152】
(B1):下記の組成で重合した、ガラス転移点が40℃のアクリル樹脂水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(B2):テレフタル酸315重量部、イソフタル酸299重量部、エチレングリコール74重量部、およびジエチレングリコール265重量部を成分とするポリエステルポリオールを(B2a)としたとき、(B2a)953重量部、イソホロンジイソシアネート267重量部、エチレングリコール56重量部、およびジメチロールプロピオン酸67重量部を構成成分としたポリエステルポリウレタンをアンモニアで中和して水分散させたもの(濃度23%、25℃での粘度30mPa・s)
(B3):ポリビニルアルコール(けん化度88モル%、重合度500)
【0153】
(C1):メラミン架橋触媒である、2−アミノ−2−メチルプロパノールハイドロクロライド
(D1):4級アンモニウム塩基含有ポリマー。
2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー
対イオン:メチルスルホネート 数平均分子量:30000
(F1):平均粒径0.07μmのシリカ粒子。
(F2):平均粒径0.02μmのアルミナ変性シリカ粒子。
【0154】
次に得られた塗布フィルムの塗布層表面にスパッタリング法により、酸化銅層を厚みが20nmになるように両面に積層し、当該酸化銅層上にパターン化されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬してエッチング処理し、パターン化した両面金属層積層用フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0155】
実施例2〜19:
実施例1において、下記表2に示す塗布剤組成からなる塗布層、原料配合(下記表3〜9)、縦延伸倍率、横延伸倍率、主結晶温度、厚み構成比、フィルム厚さ、横方向に弛緩後のフィルム幅が異なる以外は実施例1と同様にして製造しフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0156】
実施例20:
実施例6において、塗布層の塗布量を変更すること以外は実施例6と同様にして製造し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0157】
実施例21:
実施例1において、一旦製造したフィルムを系外で熱風式オーブン内にて、フィルム張力(オーブン内)を3kg/1000mm幅の条件下にて、60m/minのフィルム搬送速度で、180℃で10秒間、再度熱入れ(オフラインアニール)した以外は、実施例1と同様にして製造しフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0158】
実施例22:
実施例10において、一旦製造したフィルムを系外で熱風式オーブン内にて、フィルム張力(オーブン内)を3kg/1000mm幅の条件下にて、60m/minのフィルム搬送速度で、190℃で10秒間、再度熱入れ(オフラインアニール)した以外は、実施例1と同様にして製造しフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0159】
実施例23:
実施例11において、一旦製造したフィルムを系外で熱風式オーブン内にて、フィルム張力(オーブン内)を3kg/1000mm幅の条件下にて、60m/minのフィルム搬送速度で、170℃で10秒間、再度熱入れ(オフラインアニール)した以外は、実施例11と同様にして製造しフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0160】
実施例24:
実施例6において、一旦製造したフィルムを系外で熱風式オーブン内にて、フィルム張力(オーブン内)を3kg/1000mm幅の条件下にて、60m/minのフィルム搬送速度で、160℃で10秒間、再度熱入れ(オフラインアニール)した以外は、実施例6と同様にして製造しフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0161】
実施例25:
実施例22において、塗布フィルムのA面の塗布層表面のみに、スパッタリング法により、酸化銅層を厚みが20nmになるように積層し、当該酸化銅層上にパターン化されているフォトレジストを塗布して乾燥硬化した後、得られた酸化銅層を4%の塩化第2鉄水溶液に浸漬してエッチング処理し、パターン化した片面金属層積層用フィルムを得た以外は、実施例22と同様にして製造しフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0162】
比較例1〜6:
実施例6において、下記表2に示す塗布剤組成からなる塗布層を変更する以外は、実施例6と同様にして製造し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0163】
比較例5、比較例6、比較例7では、21)金属層の変色性評価において、恒温槽の中に48時間入れる中間地点である、24時間地点でも、金属層積層用フィルム表面の酸化銅層表面の変色を確認した結果、24時間地点で変色を確認した。得られたフィルムの特性を下下記表10〜16に示す。
【0164】
比較例8:
実施例1において、塗布層を設けない以外は実施例1と同様にして製造し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0165】
比較例9〜11:
実施例6において、a層の原料が異なる以外は、実施例6と同様にして製造し、フィルムを得た。
【0166】
比較例12:
実施例6において、表層のポリエステル(IV)をポリエステル(VI)に変更し、実施例1と同様にして製造し、両面塗布フィルムを得た結果、両面塗布フィルムの表面が粗面化し、(23)銅層パターン化後の配線断線評価において、最細部4μmのパターン化加工には対応が困難であった。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0167】
比較例13:
実施例6において、a層の原料としてポリエステル(III)、(IV)、(VII)をそれぞれ10%、0.5%、89.5%の割合で混合した以外は、実施例6と同様にして製造し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0168】
比較例14:
実施例1において、横延伸倍率、横方向に弛緩後のフィルム幅が異なる以外は実施例1と同様にして製造し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0169】
比較例15:
実施例18において、横延伸倍率、横方向に弛緩後のフィルム幅が異なる以外は実施例18と同様にして製造し、フィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0170】
上記実施例および比較例で使用した塗布層の塗布剤組成を下記表2に示す。
【0171】
上記実施例および比較例で使用したポリエステルにおいて、表層、中間層の原料配合は、下記表3〜9に示す。
【0172】
上記実施例および比較例で得られたフィルムの特性を下記表10〜16に示す。
【0173】
【表2】
【0174】
上記表2中の数値の単位は、重量%である。
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】
【表6】
【0179】
【表7】
【0180】
【表8】
【0181】
【表9】
【0182】
【表10】
【0183】
【表11】
【0184】
【表12】
【0185】
【表13】
【0186】
【表14】
【0187】
【表15】
【0188】
【表16】