特許第6763373号(P6763373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6763373共重合体、重合体、成形材料及び樹脂成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763373
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】共重合体、重合体、成形材料及び樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/08 20060101AFI20200917BHJP
   C08G 61/08 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C08F232/08
   C08G61/08
【請求項の数】3
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-510998(P2017-510998)
(86)(22)【出願日】2016年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2016061174
(87)【国際公開番号】WO2016163371
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-77411(P2015-77411)
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-190477(P2015-190477)
(32)【優先日】2015年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-245878(P2015-245878)
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健作
(72)【発明者】
【氏名】寳川 卓士
(72)【発明者】
【氏名】小松原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】清水 康寛
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05635573(US,A)
【文献】 特表2010−511072(JP,A)
【文献】 特開2011−068805(JP,A)
【文献】 特開2012−046726(JP,A)
【文献】 特開2010−241931(JP,A)
【文献】 特表平08−505898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−246/00
C08G61/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2種以上の環状オレフィン単量体と、1又は2種以上の鎖状オレフィン単量体とを共重合して得られる共重合体、又は、
2種以上の環状オレフィン単量体を共重合して得られる共重合体であって、
前記環状オレフィン単量体の少なくとも1種が、デルタサイクレン、又は、下記式(I)
【化1】
で示される単量体であり、
ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、屈折率が1.545以上、かつ、アッベ数が50以上であることを特徴とする共重合体(A)。
【請求項2】
前記鎖状オレフィン単量体の少なくとも1種が、炭素数が2〜18のα−オレフィン系単量体である、請求項1に記載の共重合体(A)。
【請求項3】
前記鎖状オレフィン単量体の少なくとも1種がエチレンである、請求項1又は2に記載の共重合体(A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い新規な共重合体、この共重合体を含有する成形材料、並びにこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体に関する。また、本発明は、光学用成形体の樹脂成分として有用な重合体、この重合体を含有する成形材料、及びこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位を有する重合体は、透明性、低吸湿性、耐熱性、絶縁性、耐薬品性等に優れるため、光学レンズ等の光学部材等の成形材料として広く用いられている。
例えば、特許文献1には、ノルボルネン系単量体とエチレンとの付加共重合体が記載されている。また、この文献には、実施例において、1,4−メタノ−1,4,4a−9a−テトラヒドロフルオレン(MTF)とエチレンとの共重合体も開示されている。この共重合体は、ガラス転移温度(Tg)と屈折率がいずれも高く、光学用成形体の樹脂成分として有用である。
【0003】
また、レンズ等の光学用成形体の樹脂成分には、透明性に優れることが求められる。この観点から、従来、光学用成形体の樹脂成分として、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリ4−メチルペンテン、非晶性脂環式ポリオレフィン、多環ノルボルネンポリマー、ビニル脂環式炭化水素重合体等が用いられてきた。例えば、特許文献2には、特定の繰り返し単位を有する多環ノルボルネンポリマーを含有する成形材料を用いて得られた光学用成形体が記載されている。
【0004】
近年においては、携帯電話用カメラ等のレンズにおいては、さらなる薄肉化や高解像度化が求められている。このため、透明性に優れることに加えて、高屈折率かつ低複屈折性の樹脂が求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144013号公報
【特許文献2】特開2008−174679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の共重合体のように、MTFのような芳香環を有する環状オレフィン単量体を用いることで、ガラス転移温度や屈折率が高い重合体が得られ易くなる。しかしながら、分子内に芳香環を有する重合体はアッベ数が低くなる傾向があるため、芳香環を導入することにより、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い重合体を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、上記した状況に鑑みてなされたものであり、光学用成形体の樹脂成分として有用な、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い新規な共重合体、この共重合体を含有する成形材料、並びにこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、光学用成形体の樹脂成分として有用な重合体、この重合体を含有する成形材料、及びこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく、環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位を有する重合体について鋭意検討した。その結果、環状オレフィン単量体と鎖状オレフィン単量体とを適切に組み合わせて共重合させたり、2種以上の環状オレフィン単量体を適切に組み合わせて共重合させたりすることにより、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い共重合体が得られること、並びに、環状オレフィン単量体として、後述する式(I)で示される単量体を用いることにより、透明性に優れ、さらに、高屈折率かつ低複屈折性の樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔7〕の共重合体(A)、〔7〕〜〔13〕の重合体(B)、〔14〕、〔15〕の成形材料、及び〔16〕の樹脂成形体が提供される。
〔1〕1又は2種以上の環状オレフィン単量体と、1又は2種以上の鎖状オレフィン単量体とを共重合して得られる共重合体、又は、
2種以上の環状オレフィン単量体を共重合して得られる共重合体であって、
ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、屈折率が1.545以上、かつ、アッベ数が50以上であることを特徴とする共重合体(A)。
〔2〕前記環状オレフィン単量体の少なくとも1種の炭素原子数と水素原子数の比の値(炭素原子数/水素原子数)が、0.65〜1.00である、〔1〕に記載の共重合体(A)。
〔3〕前記環状オレフィン単量体の少なくとも1種がノルボルネン系単量体である、〔1〕又は〔2〕に記載の共重合体(A)。
〔4〕前記環状オレフィン単量体の少なくとも1種がデルタサイクレンである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の共重合体(A)。
〔5〕前記環状オレフィン単量体の少なくとも1種が、下記式(I)
【0011】
【化1】
【0012】
で示される単量体である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体(A)。
〔6〕前記鎖状オレフィン単量体の少なくとも1種が、炭素数が2〜18のα−オレフィン系単量体である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の共重合体(A)。
〔7〕前記鎖状オレフィン単量体の少なくとも1種がエチレンである、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の共重合体(A)。
〔8〕下記式(I)
【0013】
【化2】
【0014】
で示される単量体を単独で開環重合して得られる単独開環重合体、前記式(I)で示される単量体と、前記式(I)で示される単量体と開環共重合可能な単量体とを開環共重合して得られる開環共重合体、前記単独開環重合体の水素化物、及び前記開環共重合体の水素化物から選ばれる重合体(B)。
〔9〕前記式(I)で示される単量体と開環共重合可能な単量体が、下記式(II)
【0015】
【化3】
【0016】
で示される化合物である、〔8〕に記載の重合体(B)。
〔10〕屈折率(n)が1.540以上である、〔8〕又は〔9〕に記載の重合体(B)。
〔11〕単位厚さあたりの複屈折量(δn)が−100〜+100である、〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の重合体(B)。
〔12〕溶融後、冷却して得られた測定試料を用いて、10℃/分の昇温速度で350℃まで加熱してDSC測定を行ったときに、融点が観測されないものである、〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の重合体(B)。
〔13〕ガラス転移温度が、120〜180℃である、〔8〕〜〔12〕のいずれかに記載の重合体(B)。
〔14〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の共重合体(A)又は、〔8〕〜〔13〕のいずれかに記載の重合体(B)を含有する成形材料。
〔15〕DSC測定を行ったときに、融点が観測されないものである、〔14〕に記載の成形材料。
〔16〕前記〔14〕又は〔15〕に記載の成形材料を成形して得られる樹脂成形体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光学用成形体の樹脂成分として有用な、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い新規な共重合体〔A〕、この共重合体〔A〕を含有する成形材料、並びにこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体が提供される。
また、本発明によれば、光学用成形体の樹脂成分として有用な重合体〔B〕、この重合体〔B〕を含有する成形材料、及びこの成形材料を成形して得られる樹脂成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】単量体(5)のH−NMRチャート(積分表示なし)である。横軸はケミカルシフト値(ppm)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
図2】単量体(5)のH−NMRチャート(積分表示あり)である。横軸はケミカルシフト値(ppm)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
図3】単量体(5)のGCチャートである。横軸は時間(分)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
図4】単量体(6)のH−NMRチャート(積分表示なし)である。横軸はケミカルシフト値(ppm)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
図5】単量体(6)のH−NMRチャート(積分表示あり)である。横軸はケミカルシフト値(ppm)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
図6】単量体(6)のGCチャートである。横軸は時間(分)を表し、縦軸はピーク強度を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、1)共重合体(A)、2)重合体(B)、3)成形材料、及び、4)樹脂成形体に項分けして、詳細に説明する。
【0020】
1)共重合体(A)
本発明の共重合体(A)は、1又は2種以上の環状オレフィン単量体と、1又は2種以上の鎖状オレフィン単量体とを共重合して得られる共重合体、又は、2種以上の環状オレフィン単量体を共重合して得られる共重合体であって、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、屈折率が1.545以上、かつ、アッベ数が50以上であることを特徴とする。
以下、本発明の共重合体(A)の中で、1又は2種以上の環状オレフィン単量体と1又は2種以上の鎖状オレフィン単量体とを共重合して得られる共重合体を「共重合体(AI)」といい、2種以上の環状オレフィン単量体を共重合して得られる共重合体を「共重合体(AII)」ということがある。
【0021】
〔単量体〕
共重合体(AI)又は共重合体(AII)の製造に用いる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。具体的には、単環の環状オレフィン単量体やノルボルネン系単量体が挙げられる。
【0022】
単環の環状オレフィン単量体としては、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
【0023】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びこれらの誘導体(環に置換基を有するもの)等の2環式単量体;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の3環式単量体;
7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン、テトラシクロ[7.4.0.02,7.110,13]トリデカ−2,4,6,11−テトラエンともいう)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びこれらの誘導体等の4環式単量体;1,2,3,3a,4,6a−ヘキサハイドロ−1,2,4−メテノペンタレン(慣用名:デルタサイクレン)、1,2,3,3a,3b,4,7,7a,8,8a−decahydro−4,7−methano−2,3,8−methenocyclopent[a]indene(前記式(I)で示される単量体、以下、「MMD]ということがある。)及びこれらの誘導体等の5以上の環を有する単量体等が挙げられる。
【0024】
MMDは、例えば、以下の式(α)、(β)で示される反応を行うことにより合成することができる。
【0025】
【化4】
【0026】
式(α)で示される反応(以下、この反応を「反応(α)」ということがある。)は、一般的なDiels−Alder反応であり、公知の反応条件を利用することができる。また、式(β)で示される反応(以下、この反応を「反応(β)」ということがある。)は、Polymer Bulletin 18, 203−207(1987)、Journal of Catalyst 258, 5−13(2008)、J.Am.Chem.Soc.1972,94,5446等に記載の方法に従って行うことができる。
【0027】
具体的には、溶媒の存在下、又は溶媒の不存在下で、0〜300℃で反応を実施することにより、反応(α)又は反応(β)を行い、MMDを合成することができる。このとき必要に応じて触媒を使用してもよい。
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等の含ハロゲン化合物系溶媒;N−メチルピロリドン等の含窒素化合物系溶媒;等が挙げられる。
【0028】
MMDには、下記式で示される4体の立体異性体が存在する。
【0029】
【化5】
【0030】
MMDを、反応(α)により合成する場合、速度論的支配的にendo付加体(endo−endo体又はendo−exo体)が優先して生成することが知られている(endo則と呼ばれる)。
MMDを、反応(β)により合成する場合、反応条件によって生成する異性体の割合が変わることが知られている。例えば、J.Am.Chem.Soc.1972,94,5446、J.Mol.Catal.A.1996,106,159に記載された条件では、exo−endo体が優先して生成し、New.J.Chem.1996,20,677に記載された条件では、endo−endo体が優先して生成することが報告されている。
【0031】
このように、上記のノルボルネン系単量体の中には、立体異性体が存在するものがあるが、本発明においてはこれらの立体異性体のいずれも単量体として用いることが可能である。また、単量体として、一つの異性体を単独で用いてもよいし、2以上の異性体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いてもよい。
【0032】
上記のノルボルネン系単量体は、任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロパン−2−イリデン基等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
これらの環状オレフィン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
用いる環状オレフィン単量体の少なくとも1種の炭素原子数と水素原子数の比の値(炭素原子数/水素原子数)は、好ましくは0.65〜1.00、より好ましくは0.66〜0.95、さらに好ましくは0.67〜0.90である。この比の値が小さ過ぎると、屈折率が低くなる傾向がある。一方、この比の値が大き過ぎると、アッベ数(ν)が低くなる傾向がある。
ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い重合体が得られ易いことから、上記の比を満たす環状オレフィン単量体は、ノルボルネン系単量体が好ましく、5以上の環を有する単量体がより好ましく、デルタサイクレン又はMMDがさらに好ましい。
【0034】
共重合体(AI)の製造に用いる鎖状オレフィン単量体は、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物(ただし、環状オレフィン単量体を除く)である。鎖状オレフィン単量体は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環構造を有するものであってもよい。また、鎖状オレフィン単量体は、α−オレフィンであってもよいし、内部オレフィンであってもよい。
鎖状オレフィン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
用いる鎖状オレフィンの少なくとも1種は、炭素数2〜18、好ましくは2〜10のα−オレフィン系単量体が好ましい。
かかるα−オレフィン系単量体としては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、2−ビニルノルボルナン、3−ビニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等のα−オレフィン;等が挙げられる。これらの中でも、エチレンが好ましい。
【0036】
〔共重合体(A)〕
本発明の共重合体(A)は、1又は2種以上の環状オレフィン単量体と、1又は2種以上の鎖状オレフィン単量体とを共重合して得られる共重合体、又は、2種以上の環状オレフィン単量体を共重合して得られる共重合体であって、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、屈折率が1.545以上、かつ、アッベ数が50以上であることを特徴とする。
【0037】
本発明の共重合体(A)は、通常、分子内に脂環式構造を有する重合体である。
本発明の共重合体(A)が有する脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、透明性、耐光性、耐久性等に優れる共重合体が得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子の数は、特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
【0038】
本発明の共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは20,000〜200,000である。重量平均分子量(Mw)が小さい共重合体を用いて得られた樹脂成形体は、強度が低くなるおそれがある。一方、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が大き過ぎると、成形材料の成形性が低下するおそれがある。
【0039】
本発明の共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
共重合体(A)の分子量分布が上記範囲内にあることで、十分な機械的強度を有する樹脂成形体を得ることができる。
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリイソプレン換算値である。
【0040】
本発明の共重合体(A)は、上記の炭素原子数と水素原子数の比の値を満たす環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位を有するものが好ましい。
本発明の共重合体(A)が、上記の炭素原子数と水素原子数の比の値を満たす環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位を有するものである場合、かかる繰り返し単位の量は、全繰り返し単位中、好ましくは60重量%以上、より好ましくは65重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
【0041】
本発明の共重合体(A)の内、共重合体(AI)としては、前記環状オレフィン単量体の1種又は2種以上と、前記鎖状オレフィン単量体の1種又は2種以上とを付加共重合させて得られた重合体、又はその水素化物が挙げられる。
【0042】
共重合体(AI)は、環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、鎖状オレフィン単量体由来の繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
共重合体(AI)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0043】
共重合体(AI)の、環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位と、鎖状オレフィン単量体由来の繰り返し単位の重量比〔環状オレフィン単量体由来の繰り返し単位:鎖状オレフィン単量体由来の繰り返し単位〕は、好ましくは85:15〜15:85であり、より好ましくは70:30〜30:70である。
【0044】
共重合体(AI)の製造方法は特に限定されない。例えば、ラジカル重合反応、アニオン重合反応、カチオン重合反応、配位重合反応等を行うことにより、共重合体(AI)を製造することができる。これらの中でも、目的の付加共重合体が収率よく得られることから配位重合反応が好ましい。
【0045】
配位重合反応における反応条件の詳細は特に限定されず、従来公知の方法を適宜利用することができる。
例えば、環状オレフィン単量体及び鎖状オレフィン単量体を、重合触媒を用いて重合させることにより共重合体(AI)を製造することができる。
【0046】
配位重合反応における重合触媒としては、付加重合反応用の公知の重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば、周期律表第4族の金属原子を含むメタロセン化合物(a)と、有機アルミニウムオキシ化合物(b)とからなるメタロセン触媒が挙げられる。
【0047】
メタロセン化合物(a)としては、架橋型メタロセン化合物、ハーフメタロセン化合物、非架橋型ハーフメタロセン化合物が挙げられる
【0048】
架橋型メタロセン化合物としては、例えば、下記式(III)で示される化合物が挙げられる。
【0049】
【化6】
【0050】
式(III)中、Mはチタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる金属原子であり、触媒活性に優れることからジルコニウムが好ましい。
及びXは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
は、2価の基を表す。Rとしては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−2,2−ジイル基(イソプロピリデン基)等の炭素数1〜5のアルキレン基;シリレン基、ジシリレン基等のケイ素数1〜5の基;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。置換基を有するRとしては、ジフェニルメチレン基、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基等が挙げられる。
及びRは、それぞれ独立に、シクロペンタジエニル基、インデニル基、又はフルオレニル基を表す。これらの基は任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
【0051】
式(III)で示される化合物としては、イソプロピリデン−(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン−(9−フルオレニル)[1−(3−メチル)シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン−(9−フルオレニル)[1−(3−t−ブチル)シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン−(1−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン−(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン−ビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド等が挙げられる。
【0052】
ハーフメタロセン化合物としては、例えば、下記式(IV)で示される化合物が挙げられる。
【0053】
【化7】
【0054】
式(IV)中、Mはチタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる金属原子であり、触媒活性に優れることからジルコニウムが好ましい。
及びXは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
は、2価の基を表す。Rとしては、Rとして示したものと同様のものが挙げられる。
は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、又はフルオレニル基を表す。これらの基は任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0055】
式(IV)で示される化合物としては、(t−ブチルアミド)ジメチル−1−インデニルシランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−1−インデニルシランチタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−ジメチルフルオレニル)シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(イソプロピル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t−ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)シランチタンジメチル等が挙げられる。
【0056】
非架橋型ハーフメタロセン化合物としては、例えば、下記式(V)で示される化合物が挙げられる。
【0057】
【化8】
【0058】
式(V)中、Mはチタン、ジルコニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる金属原子であり、触媒活性に優れることからジルコニウムが好ましい。
及びXは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、又はフルオレニル基を表す。これらの基は任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアリールアルキル基;等が挙げられる。
、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0059】
式(V)で示される化合物としては、CpTi〔N=C(t−Bu)〕Cl、(t−BuCp)Ti〔N=C(t−Bu)〕Cl2、CpTi〔N=C(t−Bu)〕(CH、(t−BuCp)Ti〔N=C(t−Bu)〕(CH等が挙げられる。これらの式中、「Cp」はRで示される基を表す。
これらの中でも、共重合反応を効率よく行うことができることから、メタロセン化合物(a)としては、前記式(V)で示される化合物が好ましい。
【0060】
重合触媒を構成する有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、メタロセン化合物(a)を活性化するための活性化剤である。
有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また、特開平2−78687号公報に開示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0061】
重合触媒は、有機アルミニウム化合物(c)を含有するものであってもよい。有機アルミニウム化合物(c)は、上記アルミニウムオキシ化合物(b)以外の有機アルミニウム化合物である。かかる有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシド;等が挙げられる。
【0062】
重合反応開始時のメタロセン化合物(a)の濃度は、好ましくは0.00005〜1.0mmol/L、より好ましくは0.0001〜0.3mmol/Lである。また有機アルミニウムオキシ化合物(b)の量は、メタロセン化合物(a)に対して、1〜10,000当量であることが好ましい。重合触媒が有機アルミニウム化合物(c)を含有する場合、有機アルミニウム化合物(c)の量は、メタロセン化合物(a)に対して0.1〜1,000当量であることが好ましい。
【0063】
重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はない。用いる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素系溶媒;ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
【0064】
重合温度は、通常−50〜250℃、好ましくは−30〜200℃、より好ましくは−20〜150℃である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分から20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0065】
重合反応後は、常法に従って単離精製処理を行うことにより、本発明の付加共重合体を得ることができる。
【0066】
上記方法により得られた共重合体を水素化反応に供することで、その水素化物を得ることができる。
この水素化反応は、常法に従って、水素化触媒の存在下に、前記共重合体を水素と接触させることにより行うことができる。
【0067】
水素化触媒は、均一系触媒であっても、不均一触媒であってもよい。
均一系触媒は、水素化反応液中で分散し易いため、触媒の添加量を抑えることができる。また、高温高圧にしなくても十分な活性を有するため、共重合体やその水素化物の分解やゲル化が起こりにくい。このため、費用面や生成物の品質の観点からは、均一系触媒を用いることが好ましい。
一方、不均一触媒は、高温高圧下において特に優れた活性を示すため、短時間で共重合体を水素化することができる。また、水素化反応後に、触媒残渣を効率よく除去することができる。
【0068】
均一系触媒としては、ウィルキンソン錯体〔クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)〕;酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の、遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒;等が挙げられる。
【0069】
不均一触媒としては、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh等の金属を担体に担持させたものが挙げられる。特に、得られる水素化物中の不純物量を低下させる場合は、担体として、アルミナや珪藻土等の吸着剤を用いることが好ましい。
【0070】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、水素化反応に不活性なものであれば格別な制限はない。有機溶媒としては、生成する水素化物を溶解し易いことから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、通常は、開環重合反応に用いた溶媒は、水素化反応の溶媒としても適するため、開環重合反応液に水素化触媒を添加した後、それを水素化反応に供することができる。
【0071】
水素化触媒の種類や反応温度によって水素化率は変化する。従って、共重合体が芳香族環を有するものである場合、水素化触媒の選択や反応温度の調整等により、芳香族環の残存率を制御することができる。例えば、芳香族環の不飽和結合をある程度以上残存させるためには、反応温度を低くしたり、水素圧力を下げたり、反応時間を短くする等の制御を行えばよい。
【0072】
水素化反応終了後、遠心分離、濾過等の処理を行うことで、触媒残渣を除去することができる。また、必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加したりしてもよい。
【0073】
本発明の共重合体(A)の内、共重合体(AII)としては、2種以上の環状オレフィン単量体を付加共重合させて得られた重合体(以下、「共重合体(AII−a)」ということがある。)又はその水素化物、2種以上の環状オレフィン単量体を開環共重合させて得られた重合体(以下、「共重合体(AII−b)」ということがある。)又はその水素化物が挙げられる。
共重合体(AII)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0074】
共重合体(AII)の製造方法は特に限定されない。例えば、共重合体(AII−a)は、共重合体(AI)の製造方法として先に説明した方法において、環状オレフィン単量体と鎖状オレフィン単量体との組み合わせに変えて、環状オレフィン単量体を2種以上組み合わせて用いることを除き、共重合体(AI)の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0075】
また、共重合体(AII−b)は、メタセシス重合触媒を用いる公知の方法に従って、2種以上の環状オレフィン単量体を開環重合することにより製造することができる。
メタセシス重合触媒としては、特に限定はなく公知のものが用いられる。メタセシス重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン及びモリブデンから選ばれる金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;シュロック型又はグラブス型のリビング開環メタセシス重合触媒(特開平7−179575号、J.Am.Chem.Soc.,1986年,108,p.733、J.Am.Chem.Soc.,1993年,115,p.9858、及びJ.Am.Chem.Soc.,1996年,118,p.100);等が挙げられる。
これらのメタセシス重合触媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
メタセシス重合触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択すればよいが、単量体1モルに対して、通常0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00001〜0.01モルである。
【0077】
環状オレフィン単量体の開環重合を行う際は、分子量調節剤として、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン等の炭素数4〜40の直鎖α−オレフィンを用いることができる。
直鎖α−オレフィンの添加量は、環状オレフィン単量体1モルに対して、通常0.001〜0.030モル、好ましくは0.003〜0.020モル、より好ましくは0.005〜0.015モルである。
【0078】
環状オレフィン単量体の開環重合は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素系溶媒;ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;及び、これら2種以上からなる混合溶媒;が挙げられる。
【0079】
重合温度は、特に限定されないが、通常−50〜250℃、好ましくは−30〜200℃、より好ましくは−20〜150℃である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分から20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0080】
上記方法により得られた開環共重合体を水素化反応に供することで、その水素化物を得ることができる。開環共重合体の水素化反応は、常法に従って、水素化触媒の存在下に開環共重合体を水素と接触させることにより行うことができる。具体的には、共重合体(AI)の説明の中で先に示した方法と同様にして、開環共重合体の水素化反応を行うことができる。
【0081】
本発明の共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上、好ましくは115〜175℃、より好ましくは130〜160℃である。ガラス転移温度(Tg)が100℃以上の共重合体は、耐熱性に優れる樹脂成形体の樹脂成分として好ましく用いられる。
共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0082】
本発明の共重合体(A)の屈折率(n)は、1.545以上、好ましくは1.547〜1.700、より好ましくは1.548〜1.600である。屈折率(n)が1.545以上の共重合体は、光学用成形体の樹脂成分として好ましく用いられる。
共重合体の屈折率(n)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0083】
本発明の共重合体(A)のアッベ数は、50以上、好ましくは53〜60、より好ましくは54〜58である。
アッベ数とは、光の波長ごとの屈折率の度合い(屈折率の波長分散)を示す数値である。フラウンホーファー線のF線(波長:486.1nm)、d線(波長:587.6nm)、C線(波長:656.3nm)の光に対するその材料の屈折率を、それぞれn、n、nとしたとき、アッベ数(ν)は、下記式(1)で定義される。
【0084】
【数1】
【0085】
アッベ数(ν)は、その値が大きい材料ほど、その屈折率の波長分散が小さく、波長ごとの光の出射角度のばらつきが小さくなり、その値が小さい材料ほど、その屈折率の波長分散が大きく、波長ごとの光の出射角度のばらつきが大きくなる。
アッベ数(ν)が50以上の共重合体は、低分散光学部材の製造原料として好ましく用いられる。
【0086】
通常、分子内に芳香環を導入することにより、得られる共重合体のガラス転移温度と屈折率は高くなる傾向があるものの、アッベ数が低下する。このため、この方法を用いても、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い共重合体は得られ難い。
一方、本発明の共重合体(A)のように、デルタサイクレンやMMD等の多環構造を有する環状オレフィン単量体を適切に利用することにより、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、及びアッベ数がいずれも高い共重合体を効率よく得ることができる。
【0087】
本発明の共重合体(A)の単位厚さあたりの複屈折量(δn)は、好ましくは−100〜+100、より好ましくは−85〜+80、特に好ましくは−60〜+60である。
単位厚さあたりの複屈折量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0088】
本発明の共重合体(AI)においては、環状オレフィン単量体として、デルタサイクレンやMMD等の炭素原子数と水素原子数の比の値が大きい単量体を使用したり、鎖状オレフィン単量体として、環構造を有する単量体を使用したりすることにより、ガラス転移温度、屈折率、及びアッベ数がより高い共重合体が得られ易くなる。
また、本発明の共重合体(AII)においては、開環共重合体は、付加共重合体よりもガラス転移温度と屈折率が低くなる傾向があるものの、用いる単量体として、デルタサイクレンやMMD等の炭素原子数と水素原子数の比の値が大きい単量体を使用することにより、ガラス転移温度、屈折率、及びアッベ数が十分に高い共重合体が得られ易くなる。
【0089】
2)重合体(B)
本発明の重合体(B)は、下記式(I)
【0090】
【化9】
【0091】
で示される単量体(MMD)を単独で開環重合して得られる単独開環重合体(以下、「重合体(α)」ということがある。)、MMDと、MMDと開環共重合可能な単量体とを開環共重合して得られる開環共重合体(以下、「重合体(β)」ということがある。)、又は、これらの重合体の水素化物(以下、「重合体(γ)」ということがある。)である。
【0092】
単量体としてMMDを用いることにより、透明性に優れ、さらに、高屈折率かつ低複屈折性の重合体が得られる。
MMDは、前記反応(α)、(β)を行うことにより合成することができる。
前述のように、MMDには、下記式で示される4体の立体異性体が存在する。
【0093】
【化10】
【0094】
本発明においてはこれらの立体異性体のいずれも単量体として用いることが可能である。また、単量体として、一つの異性体を単独で用いてもよいし、4つの異性体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いてもよい。
なかでも、本発明に用いる単量体は、endo−endo体又はendo−exo体が多い方が、単位厚さあたりの複屈折量(δn)が0に近づき好ましい。endo−endo体とendo−exo体の合計量は、全単量体に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
【0095】
重合体(β)又は重合体(γ)(ただし、重合体(β)の水素化物である。)(以下、これらをまとめて「本発明の共重合体(C)」ということがある。)において、MMD以外の単量体は、それがMMDと開環共重合可能なものであれば特に限定されない。MMD以外の単量体としては、単環の環状オレフィン単量体やノルボルネン系単量体(ノルボルネン環を含む単量体をいう。)等が挙げられる。
【0096】
単環の環状オレフィン単量体としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン及びその誘導体(環に置換基を有するものをいう。以下同じ);シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン等の環状ジオレフィン及びその誘導体;等が挙げられる。
【0097】
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体等の2環式単量体;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の3環式単量体;
7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン、テトラシクロ[7.4.0.02,7.110,13]トリデカ−2,4,6,11−テトラエンともいう)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びこれらの誘導体等の4環式単量体;
1,2,3,3a,4,6a−ヘキサハイドロ−1,2,4−メテノペンタレン(慣用名:デルタサイクレン、以下、「DCL」ということがある。)及びその誘導体等の5以上の環を有する単量体;等が挙げられる。
【0098】
これらの単量体が置換基を有するとき、置換基の位置は限定されない。置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロパン−2−イリデン基等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
【0099】
これらの単量体の中でも、より高い屈折率を有し、かつ、より低複屈折性の共重合体が得られ易いことから、DCL〔下記式(II)で示される化合物〕が好ましい。
【0100】
【化11】
【0101】
これらのMMD以外の単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本願発明の共重合体(C)において、MMD由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。MMD由来の繰り返し単位の含有量が、全繰り返し単位中、50重量%以上であることで、より高い屈折率を有し、かつ、より低複屈折性の共重合体が得られ易くなる。
【0102】
重合体(α)及び重合体(β)は、メタセシス重合触媒を用いる公知の方法に従って、対応する単量体を開環重合することにより合成することができる。
メタセシス重合触媒としては、特に限定はなく、公知のものが用いられる。メタセシス重合触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金などから選ばれる金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系;チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン及びモリブデンから選ばれる金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、助触媒の有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;シュロック型又はグラブス型のリビング開環メタセシス重合触媒(特開平7−179575号、J.Am.Chem.Soc.,1986年,108,p.733、J.Am.Chem.Soc.,1993年,115,p.9858、及びJ.Am.Chem.Soc.,1996年,118,p.100);クロム、モリブデン、タングステン等の金属とイミド基含有配位子とを有する錯体を含む触媒系;等が挙げられる。
【0103】
これらのメタセシス重合触媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。メタセシス重合触媒の使用量は、重合条件等により適宜選択すればよいが、全単量体1モルに対して、通常0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00001〜0.01モルである。
【0104】
開環重合を行う際は、分子量調節剤として、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン等の炭素数4〜40の直鎖α−オレフィンを用いることができる。
直鎖α−オレフィンの添加量は、全単量体1モルに対して、通常0.001〜0.030モル、好ましくは0.003〜0.020モル、より好ましくは0.005〜0.015モルである。
【0105】
開環重合は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、重合反応に不活性なものであれば格別な制限はない。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素系溶媒;ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
【0106】
重合温度は、特に限定されないが、通常−50〜250℃、好ましくは−30〜200℃、より好ましくは−20〜150℃である。重合時間は、重合条件により適宜選択されるが、通常30分から20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0107】
上記方法により得られた重合体(α)又は重合体(β)を水素化反応に供することで、それぞれ対応する重合体(γ)を得ることができる。
この水素化反応は、常法に従って、水素化触媒の存在下に、重合体(α)又は重合体(β)を水素と接触させることにより行うことができる。
【0108】
水素化触媒は、均一系触媒であっても、不均一触媒であってもよい。
均一系触媒は、水素化反応液中で分散しやすいため、触媒の添加量を抑えることができる。また、高温高圧にしなくても十分な活性を有するため、重合体(α)、重合体(β)、重合体(γ)の分解やゲル化が起こりにくい。このため、費用面や生成物の品質の観点からは、均一系触媒を用いることが好ましい。
一方、不均一触媒は、高温高圧下において特に優れた活性を示すため、短時間で重合体(α)、重合体(β)を水素化することができる。また、水素化反応後に、触媒残渣を容易に除去することができる。このため、生産効率の観点からは、不均一触媒を用いることが好ましい。
【0109】
均一系触媒としては、ウィルキンソン錯体〔クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)〕;酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の、遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒;等が挙げられる。
【0110】
不均一触媒としては、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh等の金属を担体に担持させたものが挙げられる。特に、得られる水素化物中の不純物量を低下させる場合は、担体として、アルミナや珪藻土等の吸着剤を用いることが好ましい。
【0111】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、水素化反応に不活性なものであれば格別な制限はない。有機溶媒としては、重合体(γ)を溶解し易いことから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロノナン等の脂環族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、通常は、開環重合反応に用いた溶媒は、水素化反応の溶媒としても適するため、開環重合反応液に水素化触媒を添加した後、それを水素化反応に供することができる。
【0112】
水素化反応は、常法に従って行うことができる。
水素化触媒の種類や反応温度によって水素化率は変化する。従って、重合体(α)又は重合体(β)が芳香族環を有するものである場合、水素化触媒の選択や反応温度の調整等により、芳香族環の残存率を制御することができる。例えば、芳香族環の不飽和結合をある程度以上残存させるためには、水素化触媒を選択したり、反応温度を低くしたり、水素圧力を下げたり、反応時間を短くする等の制御を行えばよい。
【0113】
水素化反応終了後、遠心分離、濾過等の処理を行うことで、触媒残渣を除去することができる。また、必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加したりしてもよい。
【0114】
本発明の重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは20,000〜200,000、特に好ましくは30,000〜150,000である。重合体の重量平均分子量(Mw)が小さ過ぎると、樹脂成形体の強度が低下するおそれがある。一方、重合体の重量平均分子量(Mw)が大き過ぎると、成形材料の成形性が低下するおそれがある。
【0115】
重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
重合体(B)の分子量分布が上記範囲内にあることで、十分な機械的強度を有する樹脂成形体を得ることができる。
重合体(B)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリイソプレン換算値である。
【0116】
本発明の重合体(B)は、MMD由来の繰り返し単位を有するため、高屈折率かつ低複屈折性の重合体になる。
本発明の重合体(B)の25℃における屈折率(n)は、好ましくは1.540以上、より好ましくは1.545〜1.560である。
本発明の重合体(B)の単位厚さあたりの複屈折量(δn)は、好ましくは−100〜+100、より好ましくは−85〜+80、特に好ましくは−60〜+60である。
屈折率や単位厚さあたりの複屈折量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0117】
本発明の重合体(B)は、測定試料の状態によっては、融点が観測される場合もあるが、溶融後、冷却して得られた測定試料を用いてDSC測定を行ったときは、通常は、融点が観測されない。このように、本発明の重合体(B)は、その重合体鎖が高い立体規則性を有するものであっても、重合体鎖同士が整列し難いものであり、透明性に優れるものである。
本発明の重合体(B)を用いて得られた、厚みが3mmのシート状成形体の、波長が650nmの光の光線透過率は、88%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましい。
【0118】
本発明の重合体(B)のガラス転移温度は、好ましくは120〜180℃、より好ましくは130〜160℃である。
重合体(B)のガラス転移温度が上記の範囲内であることで、成形材料の成形性と樹脂成形体の耐熱性とのバランスが良好なものになる。
本発明の重合体(B)においては、シンジオタクチック構造の重合体のガラス転移温度は、120〜180℃の範囲内に収まる傾向がある。したがって、シンジオタクチック構造の重合体が得られる公知のタングステン錯体系触媒等を用いて重合反応を行うことで、目的のガラス転移温度を有する重合体を効率よく得ることができる。
【0119】
上記のように、本発明の重合体(B)は、MMD由来の繰り返し単位を有するため、透明性に優れ、さらに、高屈折率かつ低複屈折性を示す。これらの特性によりすぐ優れることから、本発明の重合体(B)としては、重合体(γ)が好ましく、重合体(α)の水素化物又はMMDとDCLとの共重合体の水素化物がより好ましい。
本発明の重合体(B)は、光学用成形体の樹脂成分として有用である。
【0120】
2)成形材料
本発明の成形材料は、本発明の共重合体(A)又は重合体(B)を含有する。成形材料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明の共重合体以外の樹脂成分や、添加剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0121】
本発明の重合体以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」ということがある。)としては、スチレン・ブタジエン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、及びこれらの水素添加物、スチレン・ブタジエン・ランダム共重合体等のスチレン系重合体が挙げられる。
本発明の成形材料が、その他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、本発明の共重合体100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。
【0122】
添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、酸補足剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0123】
フェノール系酸化防止剤としては、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、α−トコフェノール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、〔ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]〕等が挙げられる。
【0124】
リン系酸化防止剤としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)4,4’−ビフェニルジホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。
【0125】
イオウ系酸化防止剤としては、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0126】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0127】
近赤外線吸収剤としては、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
帯電防止剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。
酸補足剤としては、酸化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0128】
これらの添加剤の含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。その含有量は、本発明の共重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0129】
成形材料は、常法に従って、各成分を混合することにより得ることができる。混合方法としては、各成分を適当な溶媒中で混合する方法や、溶融状態で混錬する方法が挙げられる。
混練は、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、フィーダールーダー等の溶融混練機を用いて行うことができる。混練温度は、好ましくは200〜400℃、より好ましくは240〜350℃の範囲である。混練に際し、各成分を一括添加して混練してもよいし、数回に分けて添加しながら混練してもよい。
混錬後は、常法に従って、棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切ることで、ペレット化することができる。
【0130】
本発明の成形材料は、本発明の共重合体(A)又は重合体(B)を含有する。
共重合体(A)を含有する本発明の成形材料を用いることで、耐熱性に優れ、屈折率及びアッベ数がいずれも高い樹脂成形体を得ることができる。このため、本発明の成形材料は、レンズ等の光学用成形体の成形材料として好適に用いられる。
【0131】
重合体(B)を含有する本発明の成形材料を用いることで、透明性に優れ、さらに、高屈折率かつ低複屈折性の樹脂成形体を効率よく得ることができる。このため、本発明の成形材料は、レンズ等の光学用成形体の成形材料として好適に用いられる。
また、溶融状態で混錬する方法により得られた重合体(B)を含有する成形材料は、通常、DSC測定を行ったときに融点が観測されないものであり、透明性により優れる。
本発明の成形材料は、高密度かつ高燃焼熱のため、燃料用途としても好適に用いられる。
【0132】
3)樹脂成形体
本発明の樹脂成形体は、本発明の成形材料を成形して得られるものである。
成形方法は特に限定されず、射出成形、プレス成形、押出成形等が挙げられる。これらの中でも、成形体が光学部材等である場合には、精度よく目的の成形体を得ることができることから、射出成形が好ましい。
【0133】
成形時の溶融温度は、用いる成形材料によっても異なるが、通常200〜400℃、好ましくは210〜350℃である。金型を使用する場合の金型温度は、成形材料のガラス転移温度をTgとすると、通常、20℃から(Tg+15)℃、好ましくは(Tg−30)℃から(Tg+10)℃、より好ましくは(Tg−20)℃から(Tg+5)℃の温度である。
【0134】
本発明の樹脂成形体は、本発明の成形材料を成形して得られるものであるため、耐熱性に優れ、屈折率及びアッベ数が高い。
本発明の樹脂成形体は、光学レンズ、プリズム、導光体等の光学部材として、好適に用いられる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」は特に断りのない限り、重量基準であり、圧力はゲージ圧力である。
【0136】
各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)分子量
共重合体(A)又は重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算値として求めた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン(Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000)を用いた。
測定は、東ソー社製カラム(TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgel G2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0137】
(2)ガラス転移温度
共重合体(A)又は重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、製品名:DSC6220SII)を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0138】
(3)屈折率
共重合体(A)又は重合体(B)を、厚さ5mmのシート状に成形し、〔付加共重合体のガラス転移温度(Tg)−15〕℃の雰囲気下に20時間放置したものを測定試料とした。
得られた測定試料について、精密屈折計(島津製作所社製、製品名:KPR−200、光源=Heランプ(587.6nm)、H2ランプ(656.3nm、486.1nm)を用いて、25℃における屈折率(n、n、n)を測定した。
第1表中には、波長が587.6nmの光における屈折率を示す。
【0139】
(4)アッベ数
屈折率測定により得られた、25℃における屈折率(n、n、n)を用いて、下記式(1)に従ってアッベ数(ν)を算出した。
【0140】
【数2】
【0141】
式(1)中、n、n、nはそれぞれ、波長587.6nm、656.3nm、486.1nmにおける屈折率を表す。
【0142】
(5)単位厚さあたりの複屈折量(δn)
共重合体(A)又は重合体(B)を35mm×10mm×1mmの形状に成形した。このシートの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに160gの重りを固定した。次いで、〔共重合体のガラス転移温度(Tg)−15〕℃のオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを起点にして、10分間シートを吊るして延伸処理を行い、これを測定試料とした。
得られた測定試料について、複屈折計(王子計測器製、製品名:KOBRA−CCD/X)を用いて波長が650nmの光における、測定試料中心部のレタデーション値を測定した(この測定値をaとする。)。
また、測定試料中心部の厚みを測定し(この測定値をb(mm)とする。)、式:δn=a×(1/b)、によりδn値を求めた。
δn値が0に近いものほど複屈折が小さい。また、延伸方向に複屈折が発生したものは正の値を示し、延伸方向と直交する方向に複屈折が発生したものは負の値を示す。
【0143】
(6)単量体の分析
(NMR)
単量体を重クロロホルム(TMS入り)に溶解させて、濃度が5%の測定用溶液を調製した。この溶液を用いて、40℃でH−NMRを測定した。
【0144】
(ガスクロマトグラフィー)
以下の条件でガスクロマトグラフィー(GC)を行い、単量体を分析した。
試料溶液:濃度が5%のシクロヘキサン溶液
ガスクロマトグラフィー分析計:アジレント・テクノロジー社製、製品名:6850シリーズ
カラム:アジレント・テクノロジー社製、製品名:HP−1、30m、内径0.32mm、膜厚25μm
スプリット比:70:1
スプリット流量:140mL/分
インジェクション温度:160℃
注入量:1.0μL
検出温度:250℃
流量:2.0mL/分
温度条件:40℃で6分ホールド→10℃/分で240℃まで昇温
【0145】
(7)融点
重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、製品名:DSC6220SII)を用いて、JIS K 7121に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0146】
(8)透明性
樹脂組成物を、厚さ3mmのシート状に成形し、これを測定試料とした。
得られた測定試料について、波長が650nmの光における光線透過率(光路長3mm)を、紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名:UV−VIS V570)を用いて測定し、樹脂シートの透明性を評価した。次いで、測定試料の加熱処理(320℃で1時間)を行った後、同様にして加熱後の樹脂シートの透明性を評価した。
透明性は、以下の基準で評価した。
○:透過率が、88%以上
×:透過率が、88%未満
【0147】
[製造例1]アルコール化合物(1)の合成
【0148】
【化12】
【0149】
ステンレス製オートクレーブに、ジシクロペンタジエン(100g)、3−ブテン−1−オール(500g)を加え、系内を窒素置換し密閉した後、全容を攪拌しながら、220℃に加熱し、1時間反応を行った。次いで、反応液に、さらにジシクロペンタジエン(100g)を加え、系内を窒素置換し密閉した後、同様に反応を行う作業を2回繰り返した。
反応液を、攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部、珪藻土担持ニッケル触媒(クラリアント社製、製品名:T8400RL、ニッケル担持率58%)(0.5g)を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、160℃、2.0MPaの水素圧力下で2時間、水素化反応を行った。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名:ラヂオライト(登録商標)♯500)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名:フンダフィルタ−)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。得られた溶液中のシクロヘキサンを、ロータリーエバポレーターを用いて留去し、残留物を減圧蒸留(113〜116℃、0.013kPa)することにより、アルコール化合物(1)を71g得た。
【0150】
[製造例2]単量体(1)の合成
【0151】
【化13】
【0152】
内部を窒素置換した反応器に、アルコール化合物(1)60g、ジエチルエーテル200gを加え、全容を攪拌しながら、3臭化リン30gを室温で1時間かけて滴下した。滴下終了後さらに23時間攪拌を継続し反応液を得た。反応液にトルエン400gを加え、これを飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mLで3回洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
次いで、この有機層の溶液を攪拌しながら、この溶液に室温でt−ブトキシカリウム50gを加え、さらに5時間攪拌を継続し反応液を得た。この反応液にトルエン500mLを加え、これを2規定塩化水素水溶液300mLで3回洗浄した後、分液処理により有機層を取り出した。
ロータリーエバポレーターを用いて、有機層のトルエンを留去し、残留物を減圧蒸留(80〜83℃、0.13kPa)することにより、単量体(1)を25g得た。
【0153】
[製造例3]単量体(2)の合成
【0154】
【化14】
【0155】
内部を窒素置換した反応器に、ジクロロメタン750mL、ノルボルナジエン150g、コバルト触媒〔CoBr(dppe)〕14.8g、ヨウ化亜鉛23.5gを加えて、全容を25℃で攪拌した。得られた溶液にアセチレンガスを吹き込み、全容を攪拌しながら、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド6.3gを徐々に添加した後、アセチレンガスの吹込みと、攪拌を2時間継続した。次いで、前記コバルト触媒14.8gをさらに加えた後、アセチレンガスの吹込みと、攪拌を2時間行った。
反応液にシリカゲルを200g加え、10分間攪拌後、不純物を濾別した。濾液を減圧留去して粗体135gを得た。
粗体を0.29kPa、24℃で減圧蒸留して単量体(2)〔デルタサイクレン(DCL)〕を90g得た。ガスクロマトグラフィーを行ったところ、純度は99%であった。
【0156】
[製造例4]単量体(3)(MMD)の合成
内部をアルゴン置換した反応容器に、ノルボルナジエン200部、ロジウム−活性炭(5%Rh)30部を加えて、全容を攪拌しながら110℃に加熱し、そのまま24時間反応を行った。
反応溶液を冷却後、固形分を濾別し、粗生成物190部を得た。得られた粗生成物を減圧蒸留(76℃、80Pa)することにより、単量体(3)105部を得た。
単量体(3)についてNMRを測定したところ、単量体(3)は、exo−endo体とendo−endo体からなる異性体混合物であり、これらの割合(exo−endo体:endo−endo体)は86:14であることが推測された。
【0157】
【化15】
【0158】
[実施例1]
内部を窒素置換した100mLのオートクレーブに、攪拌子、トルエン30mL、メチルアルミノキサン174mg、単量体(2)2gを入れ、全容を25℃で攪拌しながら、触媒溶液〔t−BuCpTi(N=C(t−Bu))Clを0.25μmol含有するトルエン溶液1mL〕を添加した。触媒溶液の添加後、直ちに、圧力が0.2MPaになるようにエチレンガスを導入し、付加重合反応を開始させた。そのままオートクレーブ内の温度とエチレン圧を保ちながら10分間付加重合反応を行った。脱圧後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性2−プロパノール中に移し、ポリマーを析出させた。得られたポリマー(1)のTgは166℃で、屈折率は1.553であった。
【0159】
[実施例2]
内部を窒素置換した15mLのスクリュー管瓶に、攪拌子、トルエン8g、メチルアルミノキサン174mg、単量体(1)1g、単量体(2)1gを入れ、さらに、触媒溶液〔CpTi(N=C(t−Bu))Clを5μmol含有するトルエン溶液1mL〕を添加し、付加重合反応を開始させた。全容を25℃で120時間攪拌して付加重合反応を行った後、スクリュー管瓶の内容物を大量の塩酸酸性2−プロパノール中に移し、ポリマーを析出させた。得られたポリマー(2)の重量平均分子量(Mw)は19000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。ポリマー(2)のTgは179℃で、屈折率は1.558であった。
【0160】
[実施例3]
内部を窒素置換した100mLのアンプル瓶に、攪拌子、シクロヘキサン20g、1−ヘキセン38.4mg、テトラシクロドデセン(TCD)2.5g、単量体(2)2.5gを入れ、さらに、触媒溶液〔ベンジリデン{1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン}ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムを6μmol含むトルエン溶液1mL〕を添加し、全容を60℃で3時間攪拌して開環重合反応を行った。単量体の重合体への転化率は100%であった。
次いで、得られた重合反応溶液25gとシクロヘキサン200gを、攪拌器付きオートクレーブに移し、オートクレーブ内を水素で置換した後、150℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間、水素化反応を行った。H−NMR分析より水素化反応率は100%であった。
得られた水素化反応溶液を大量の2−プロパノールに滴下し、ポリマーを析出させた。吸引濾過によりポリマーを濾取した後、60℃で24時間真空乾燥を行った。得られたポリマー(3)の重量平均分子量(Mw)は16000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。ポリマー(3)のTgは103℃で、屈折率は1.548であった。
【0161】
[実施例4]
内部を窒素置換した100mLのオートクレーブに、攪拌子、トルエン30mL、メチルアルミノキサン174mg、単量体(3)2gを入れ、全容を25℃で攪拌しながら、触媒溶液〔CpTi(N=C(t−Bu))Clを0.25μmol含有するトルエン溶液1mL〕を添加した。触媒溶液の添加後、直ちに、圧力が0.2MPaになるようにエチレンガスを導入し、付加重合反応を開始させた。そのままオートクレーブ内の温度とエチレン圧を保ちながら10分間付加重合反応を行った。脱圧後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性2−プロパノール中に移し、ポリマーを析出させた。得られたポリマー(4)の重量平均分子量(Mw)は192000、分子量分布(Mw/Mn)は1.64であった。ポリマー(4)のTgは188℃で、屈折率は1.552であった。
【0162】
[比較例1]
内部を窒素置換した100mLのオートクレーブに、攪拌子、トルエン30mL、メチルアルミノキサン174mg、TCD2gを入れ、全容を25℃で攪拌しながら、触媒溶液〔[MeSi(η−Me)N(t−Bu)]TiCl(CGC触媒)を0.25μmol含有するトルエン溶液1mL〕を添加した。触媒溶液の添加後、直ちに、圧力が0.5MPaになるようにエチレンガスを導入し、付加重合反応を開始させた。そのままオートクレーブ内の温度とエチレン圧を保ちながら10分間付加重合反応を行った。脱圧後、オートクレーブの内容物を大量の塩酸酸性2−プロパノール中に移し、ポリマーを析出させた。得られたポリマー(5)のTgは140℃で、屈折率は1.544であった。
【0163】
[比較例2]
内部を窒素置換した100mLのアンプル瓶に、攪拌子、シクロヘキサン40g、1−ヘキセン0.05g、メタノテトラヒドロフルオレン6.5g、テトラシクロドデセン3.0g、ノルボルネン0.5gを入れ、さらに、触媒溶液〔ベンジリデン{1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン}ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムを6μmol含むトルエン溶液1mL〕を添加し、全容を、60℃で3時間攪拌して開環重合反応を行った。単量体の重合体への転化率は100%であった。
次いで、得られた重合反応溶液50gとシクロヘキサン200gを、攪拌器付きオートクレーブに移し、珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名:T8400RL、ニッケル担持率58%)0.5gを加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、190℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間、水素化反応を行った。H−NMR分析より水素化反応率は100%であった。
水素化反応溶液中の珪藻土担持ニッケル触媒を吸引濾過で濾別し、得られたポリマー溶液を大量の2−プロパノールに滴下し、ポリマーを析出させた。吸引濾過によりポリマーを濾取した後、60℃24時間真空乾燥を行った。得られたポリマー(6)の重量平均分子量(Mw)は29000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。ポリマー(6)のTgは143℃で、屈折率は1.535であった。
【0164】
【表1】
【0165】
第1表から以下のことが分かる。
実施例1、2、4及び比較例1の共重合体は、いずれも付加重合体であるが、実施例1、2、4の共重合体は、比較例1の共重合体に比べて、ガラス転移温度及び屈折率が高い。
実施例3及び比較例2の共重合体は、いずれも開環重合体であるが、実施例3の共重合体は、比較例2の共重合体に比べて、屈折率が高い。
また、実施例の共重合体は、単位厚さあたりの複屈折量が比較的小さいものであり、低複屈折性に優れている。
【0166】
[製造例5]DCL〔単量体(4)〕の合成
内部を窒素置換した反応器に、ジクロロメタン750mL、ノルボルナジエン150g、コバルト触媒〔CoBr(dppe)〕14.8g、ヨウ化亜鉛23.5gを入れ、全容を25℃で攪拌した。得られた溶液にアセチレンガスを吹き込み、全容を攪拌しながら、テトラブチルアンモニウムボロヒドリド6.3gを徐々に添加した後、アセチレンガスの吹き込みと、攪拌を2時間継続した。次いで、前記コバルト触媒14.8gをさらに加えた後、アセチレンガスの吹き込みと、攪拌を2時間行った。
反応液にシリカゲルを200g加え、10分間攪拌後、不溶分を濾別した。濾液を減圧留去して粗体135gを得た。
粗体を0.3kPa、24℃で減圧蒸留して、単量体(4)90gを得た。ガスクロマトグラフィーを行ったところ、その純度は99%であった。
【0167】
[製造例6]反応(α)によるMMD〔単量体(5)〕の合成
ステンレス製オートクレーブに、ジシクロペンタジエン43g、単量体(4)250gを入れ、系内を窒素置換した後密閉した。全容を攪拌しながら220℃に加熱し、そのまま2時間反応を行った。
反応溶液を冷却した後、減圧蒸留(57〜61℃、40Pa)することにより、単量体(5)61gを得た。単量体(5)のNMRチャートを図1図2に示す。また、単量体(5)のGCチャートを図3に示す。
単量体(5)のNMRチャートより、単量体(5)は、endo−exo体とexo−endo体からなる異性体混合物であり、これらの割合(endo−exo体:exo−endo体)は97:3であることが推測された(異性体の同定は、J.Am.Chem.Soc.1972,94,5446を参照して行った。製造例6においても同様である。)。
【0168】
【化16】
【0169】
[製造例7]反応(β)によるMMD〔単量体(6)〕の合成
内部をアルゴン置換した反応容器に、ノルボルナジエン200部、ロジウム−活性炭(5%Rh)30部を加えて、全容を攪拌しながら110℃に加熱し、そのまま24時間反応を行った。
反応溶液を冷却後、固形分を濾別し、粗生成物190部を得た。得られた粗生成物を減圧蒸留(76℃、80Pa)することにより、単量体(6)105部を得た。単量体(6)のNMRチャートを図4図5に示す。また、単量体(6)のガスクロマトグラフィー(GC)のチャートを図6に示す。
単量体(6)のNMRチャートより、単量体(6)は、exo−endo体とendo−endo体からなる異性体混合物であり、これらの割合(exo−endo体:endo−endo体)は86:14であることが推測された。
【0170】
【化17】
【0171】
以下の実施例及び比較例で用いた単量体を以下に示す。
単量体(4):DCL
単量体(5):MMD〔反応(A)〕
単量体(6):MMD〔反応(B)〕
MTF:メタノテトラヒドロフルオレン
TCD:テトラシクロドデセン
NB:ノルボルネン
【0172】
[実施例5]
内部を乾燥し、窒素置換した重合反応器に、単量体(5)2.0部(重合に使用するモノマー全量に対して1%)、脱水シクロヘキサン785部、分子量調節剤(1−ヘキセン)15.0部、ジエチルアルミニウムエトキシドのn−ヘキサン溶液(濃度:19%)0.98部、及びタングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・テトラヒドロフランのトルエン溶液(濃度:2.0%)(以下、「W触媒(1)」ということがある。)11.7部を入れ、50℃で10分間攪拌した。
次いで、全容を50℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に、単量体(2)198.0部を150分かけて連続的に滴下した。滴下終了後30分間攪拌を継続した後、イソプロピルアルコール4部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、単量体の重合体への転化率は100%、重合体の重量平均分子量(Mw)は52,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.9であった。
【0173】
次いで、得られた重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素化反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。この重合体を濾取した後に、酸化防止剤〔ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)〕0.5部を添加し、これをアルミバッドに入れ真空乾燥機(220℃、133Pa)で6時間乾燥させ、重合体(1)を得た。
重合体(1)は、わずかに白みを帯びていた。重合体(1)についてDSC測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は178℃であり、299℃に融点(Tm)が観測された。次いで、重合体(1)を窒素雰囲気下320℃で1時間加熱したところ、DSC測定で融点は観測されなかった。
重合体(1)について各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0174】
[実施例6]
単量体(5)の代わりに単量体混合物(単量体(5):単量体(4)=9:1)を使用したことと、分子量調節剤(1−ヘキセン)の量を20.0部にしたこと以外は実施例1と同様にして重合体(2)を得た。
重合反応における、単量体の重合体への転化率は100%であり、水素化反応前の重合体の重量平均分子量(Mw)は35,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.4であった。
重合体(2)についてDSC測定を行ったところ、融点は観測されなかった。
重合体(2)について各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0175】
[実施例7]
単量体(5)の代わりに、単量体(6)を使用したことと、分子量調節剤(1−ヘキセン)の量を7.0部にしたこと以外は実施例1と同様にして重合体(3)を得た。
重合反応における、単量体の重合体への転化率は100%であり、水素化反応前の重合体の重量平均分子量(Mw)は26,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.0であった。
重合体(3)は、わずかに白みを帯びていた。重合体(3)についてDSC測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は143℃であり、225℃に融点(Tm)が観測された。次いで、重合体(3)を窒素雰囲気下320℃で1時間加熱したところ、DSC測定で融点は観測されなかった。
重合体(3)について各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0176】
[実施例8]
内部を窒素置換したガラス製反応容器に、重合触媒〔(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド〕(以下、「Ru触媒」ということがある。)0.05部、トルエン100部、単量体(6)20部、及び分子量調節剤(1−ヘキセン)1.4部を加え、全容を60℃で1時間攪拌し、開環重合反応を行った。単量体の重合体への転化率は100%であり、重合体の重量平均分子量(Mw)は18,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
【0177】
次いで、得られた重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加し、水素圧4.5MPa、160℃で4時間水素化反応を行なった。
水素化反応終了後、得られた溶液を大量のイソプロパノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。この重合体を濾取した後に、酸化防止剤〔ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)〕0.5部を添加し、これをアルミバッドに入れ真空乾燥機(220℃、133Pa)で6時間乾燥させ、重合体(4)を得た。
重合体(4)は、わずかに白みを帯びていた。重合体(4)についてDSC測定を行ったところ、ガラス転移温度(Tg)は135.6℃であり、218℃に融点(Tm)が観測された。次いで、重合体(4)を窒素雰囲気下320℃で1時間加熱したところ、DSC測定で融点は観測されなかった。
重合体(4)について各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0178】
〔比較例3〕
乾燥し、窒素置換した重合反応器に、ノルボルネン系単量体混合物(MTF/TCD/NB=65/30/5)7部(重合に使用する単量体全量に対して1%)、脱水したシクロヘキサン1,600部、1−ヘキセン0.6部、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液(以下、「W触媒(2)」ということがある。)30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に前記単量体混合物693部と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下した。滴下終了後さらに30分間攪拌した後、イソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、単量体の重合体への転化率は100%であり、重合体の重量平均分子量(Mw)は24,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0179】
次いで、得られた重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部及び珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。
次いで、得られた溶液に、酸化防止剤〔ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)〕を重合体水素化物100部当り、0.5部加えた。
【0180】
この溶液をフィルター(キュノーフィルター社製、製品名「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)で濾過した後、濾液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して異物を除去した。
【0181】
次いで、上記で得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液からシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去した後、重合体水素化物を濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所社製、製品名「OSP−2」)でカッティングして重合体水素化物〔重合体(5)〕のペレットを得た。
重合体(5)について各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0182】
[比較例4]
ノルボルネン系単量体混合物に代えて、MTFを使用したことを除き、比較例1と同様にして重合反応を行った。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は26,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。DSC測定を行ったところ、この重合体の融点は観測されなかった。
【0183】
次いで、得られた重合体に対して、比較例1における水素化反応と同様にして、水素化反応を行い、重合体水素化物〔重合体(6)〕のペレットを得た。
重合体(6)について各種測定を行った。結果を第2表に示す。
【0184】
【表2】
【0185】
第2表から以下のことが分かる。
実施例5〜8の重合体(1)〜(4)は、高屈折率かつ低複屈折性の重合体である。また、重合体(1)、(3)、(4)は、合成直後のものは白みを帯び、透明性に劣っているが、加熱処理を施すことにより透明性は向上する。
一方、比較例3、4の重合体(5)、(6)は、透明性には優れるものの、屈折率は高くなく、また、低複屈折性に劣っている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6