特許第6763397号(P6763397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763397
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08L 13/00 20060101AFI20200917BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20200917BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20200917BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20200917BHJP
   C08C 19/02 20060101ALI20200917BHJP
   C08F 236/12 20060101ALI20200917BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C08L13/00
   C08K3/34
   C08K5/17
   C08K9/06
   C08C19/02
   C08F236/12
   C09K3/10 E
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
【請求項の数】9
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-551911(P2017-551911)
(86)(22)【出願日】2016年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2016083999
(87)【国際公開番号】WO2017086358
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-227362(P2015-227362)
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】茂▲崎▼ 紫穂
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163074(JP,A)
【文献】 特開2008−179671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)と、ポリアミン系架橋剤(c)とを含有してなり、前記ポリアミン系架橋剤(c)の含有量が、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、0.1〜20重量部であるニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物であって、
150℃、25%圧縮させた状態で保持する圧縮応力緩和試験を行った際に、圧縮応力が、該圧縮応力緩和試験開始から30分後の圧縮応力である、圧縮応力緩和試験開始時の初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるゴム架橋物。
【請求項2】
前記表面処理珪酸塩(b)が、珪酸塩をアミノ基含有シランカップリング剤またはエポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理してなるものである請求項1に記載のゴム架橋物。
【請求項3】
前記表面処理珪酸塩(b)が、珪酸塩をアミノ基含有シランカップリング剤で表面処理してなるものである請求項1に記載のゴム架橋物。
【請求項4】
前記ニトリルゴム組成物が、塩基性架橋促進剤(d)をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム架橋物。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)が、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、10〜55重量%のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位と、0.1〜20重量%のカルボキシル基含有単量体単位とを含有する請求項1〜4のいずれかに記載のゴム架橋物。
【請求項6】
前記カルボキシル基含有単量体単位が、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位である請求項5に記載のゴム架橋物。
【請求項7】
前記表面処理珪酸塩(b)が、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩である珪酸塩を表面処理剤で表面処理してなるものである請求項1〜6のいずれかに記載のゴム架橋物。
【請求項8】
前記表面処理珪酸塩(b)が、下記一般式(1)で表される化合物を表面処理剤で表面処理してなるものである請求項7に記載のゴム架橋物。
MO・xSiO・mHO (1)
(上記一般式(1)中、Mは周期表第2族の元素または周期表第13族の元素を表し、xは8以下の正の実数であり、mは0または12以下の正の実数である。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のゴム架橋物からなるシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度および破断伸びが良好であり、かつ、低温でのシール性に優れたゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)は、耐油性、機械的特性、耐薬品性等を活かして、ホースやチューブなどの自動車用ゴム部品の材料として使用されており、また、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合を水素化した水素化ニトリルゴム(水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)はさらに耐熱性に優れるため、ベルト、ホース、ダイアフラム等のゴム部品に使用されている。
【0003】
このようなニトリルゴムの組成物として、たとえば、特許文献1では、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)、および、ポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物が開示されている。この特許文献1は、引張応力が極めて大きなゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物を提供することを目的とするものであるが、特許文献1に開示された架橋性ニトリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物は、低温でのシール性が十分でなく、そのため、低温環境下で用いられるシール材用途に用いるのに適さない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、引張強度および破断伸びが良好であり、かつ、低温でのシール性に優れたゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムに、表面処理珪酸塩および所定量のポリアミン系架橋剤を配合してなるニトリルゴム組成物を架橋することにより得られ、かつ、150℃、25%圧縮させた状態で保持する圧縮応力緩和試験を行った際に、圧縮応力が、該圧縮応力緩和試験開始から30分後の圧縮応力(以下、「圧縮応力緩和試験開始時の初期圧縮応力」という。)に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるゴム架橋物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)と、ポリアミン系架橋剤(c)とを含有してなり、前記ポリアミン系架橋剤(c)の含有量が、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、0.1〜20重量部であるニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物であって、
150℃、25%圧縮させた状態で保持する圧縮応力緩和試験を行った際に、圧縮応力が、該圧縮応力緩和試験開始から30分後の圧縮応力である、圧縮応力緩和試験開始時の初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるゴム架橋物が提供される。
【0008】
本発明のゴム架橋物において、前記表面処理珪酸塩(b)が、珪酸塩をアミノ基含有シランカップリング剤またはエポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理してなるものであることが好ましく、珪酸塩をアミノ基含有シランカップリング剤で表面処理してなるものであることが特に好ましい。
本発明のゴム架橋物において、前記ニトリルゴム組成物が、塩基性架橋促進剤(d)をさらに含有することが好ましい。
本発明のゴム架橋物において、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)が、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、10〜55重量%のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位と、0.1〜20重量%のカルボキシル基含有単量体単位とを含有するものであることが好ましく、前記カルボキシル基含有単量体単位が、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位であることがより好ましい。
本発明のゴム架橋物において、前記表面処理珪酸塩(b)が、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩である珪酸塩を表面処理剤で表面処理してなるものであることが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物を表面処理剤で表面処理してなるものであることがより好ましい。
MO・xSiO・mHO (1)
(上記一般式(1)中、Mは周期表第2族の元素または周期表第13族の元素を表し、xは8以下の正の実数であり、mは0または12以下の正の実数である。)
【0009】
また、本発明によれば、上記いずれかに記載のゴム架橋物からなるシール材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引張強度および破断伸びが良好であり、かつ、低温でのシール性に優れたゴム架橋物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゴム架橋物は、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)と、ポリアミン系架橋剤(c)とを含有してなり、前記ポリアミン系架橋剤(c)の含有量が、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、0.1〜20重量部であるニトリルゴム組成物を架橋してなり、
150℃、25%圧縮させた状態で保持する圧縮応力緩和試験を行った際に、圧縮応力が、該圧縮応力緩和試験開始から30分後の圧縮応力である、圧縮応力緩和試験開始時の初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるものである。
【0012】
ニトリルゴム組成物
まず、本発明のゴム架橋物を得るために用いられるニトリルゴム組成物について説明する。
【0013】
本発明で用いるニトリルゴム組成物は、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位とを含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)と、ポリアミン系架橋剤(c)とを含有する。
【0014】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)は、5〜60重量%のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位と、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位とを含有し、ヨウ素価が120以下であるゴムである。本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体、および必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体として、これらの複数種を併用してもよい。
【0016】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物が耐油性に劣るものなり、一方、多すぎると耐寒性が低下してしまう。
【0017】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アミノアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸フルオロアルキルエステル単量体などが挙げられる。
これらのなかでも、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、またはα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有させることにより、得られるゴム架橋物の耐寒性を向上させることができ、これにより、低温でのシール性の向上が可能となる。
【0018】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル単量体としては、アルキル基として、炭素数が3〜10でアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が3〜8であるアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が4〜6であるアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル単量体;アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル単量体;アクリル酸メチルシクロペンチル、アクリル酸エチルシクロペンチル、アクリル酸メチルシクロヘキシルなどのアクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−オクチルなどのメタクリル酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチルシクロペンチル、メタクリル酸エチルシクロペンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;クロトン酸プロピル、クロトン酸n−ブチル、クロトン酸2−エチルヘキシルなどのクロトン酸アルキルエステル単量体;クロトン酸シクロペンチル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸シクロオクチルなどのクロトン酸シクロアルキルエステル単量体;クロトン酸メチルシクロペンチル、クロトン酸メチルシクロヘキシルなどのクロトン酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0020】
また、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、アルコキシアルキル基として、炭素数が2〜8であるアルコキシアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が2〜6であるアルコキシアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が2〜4であるアルコキシアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0021】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸n−プロポキシエチル、アクリル酸i−プロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸i−ブトキシエチル、アクリル酸t−ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸n−プロポキシエチル、メタクリル酸i−プロポキシエチル、メタクリル酸n−ブトキシエチル、メタクリル酸i−ブトキシエチル、メタクリル酸t−ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシブチルなどのメタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0022】
これらα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体のなかでも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、アクリル酸アルキルエステル単量体、アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸メトキシエチルがより好ましい。
【0023】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)中における、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは5〜60重量%であり、より好ましくは10〜55重量%、さらに好ましくは15〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、低温でのシール性の向上効果をより高めることができる。
【0024】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体およびα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。カルボキシル基含有単量体を共重合させることにより、ニトリルゴムに、カルボキシル基を導入することができる。
【0025】
本発明で用いるカルボキシ基含有単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
【0026】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0027】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β−不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0028】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0029】
カルボキシル基含有単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が好ましく、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体がより好ましく、マレイン酸モノアルキルエステルがさらに好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。なお、上記アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、2〜8が好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械特性および低温でのシール性をより向上させることができる。
【0031】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)は、得られるゴム架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体をも共重合させたものであることが好ましい。
【0032】
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0033】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)中における、共役ジエン単量体単位の含有割合(水素化されているものも含む)は、全単量体単位中、好ましくは20〜83.9重量%であり、より好ましくは25〜81重量%、さらに好ましくは30〜74.5重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐熱性や耐化学的安定性を良好に保ちながら、ゴム弾性に優れたものとすることができる。
【0034】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位、カルボキシル基含有単量体単位、および共役ジエン単量体単位に加えて、これらを形成する単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有するものであってもよい。このようなその他の単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、非共役ジエン単量体、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
【0035】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;フマル酸ジメチル、フマル酸ジn−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルなどのイタコン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;イタコン酸ジシクロヘキシルなどのイタコン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;などが挙げられる。
【0036】
非共役ジエン単量体としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。
α−オレフィン単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0037】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0038】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0039】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体単位の含有量は、本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0040】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)のヨウ素価は、120以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)のヨウ素価が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性および耐オゾン性が低下するおそれがある。
【0041】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは15〜150、さらに好ましくは15〜100、特に好ましくは30〜70である。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)のポリマームーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
【0042】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)の製造方法は、特に限定されないが、上述した単量体を共重合し、必要に応じて、得られる共重合体中の炭素−炭素二重結合を水素化することによって製造することができる。重合方法は、特に限定されず公知の乳化重合法や溶液重合法によればよいが、工業的生産性の観点から乳化重合法が好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤に加えて、通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0043】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の添加量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0044】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の添加量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0045】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、少なくとも3個の第3級以上の炭素原子と、その中の少なくとも1個の第3級炭素原子に直接結合したチオール基とを有する炭素数12〜16のアルキルチオール化合物(以下、適宜「第1アルキルチオール化合物」とする)と、前記「第1アルキルチオール化合物」以外の炭素数9〜16のアルキルチオール化合物(すなわち、第3級以上の炭素原子の数が3個未満である炭素数9〜16のアルキルチオール化合物、または、第3級以上の炭素原子の数が3個以上であり、かつ、第3級炭素原子に直接結合したチオール基を有しない炭素数9〜16のアルキルチオール化合物、以下、適宜「第2アルキルチオール化合物」とする)とを併用することが好ましい。そして、この際における、第1アルキルチオール化合物の使用量を、乳化重合に用いる単量体100重量部に対して、0.01〜0.6重量部、好ましくは0.02〜0.4重量部とし、また、第2アルキルチオール化合物の使用量を、0.01〜0.8重量部、好ましくは0.1〜0.7重量部とすることが好ましい。
【0046】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは80〜300重量部である。
【0047】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0048】
乳化重合を行う際には、乳化重合を用いる単量体の全量を用い、重合反応を開始してもよいし、あるいは、乳化重合に用いる単量体の全量のうち一部を用いて重合反応を開始し、その後、反応途中の段階で乳化重合に用いる単量体の残余を反応器に添加して重合反応をおこなってもよい。残余の単量体を添加する方法は、特に制限されないが、一括で添加しても、分割して添加しても、また、連続的に添加してもよい。残余の単量体を、分割して添加する場合、分割添加する単量体の量や分割添加する時期は、重合反応の進行に合わせて、適宜、調整すればよく、これにより、所望のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)が得られるようにすればよい。
【0049】
また、本発明においては、得られた共重合体について、必要に応じて、共重合体の水素化(水素添加反応)を行ってもよい。水素添加は公知の方法によればよく、乳化重合で得られた共重合体のラテックスを凝固した後、油層で水素添加する油層水素添加法や、得られた共重合体のラテックスをそのまま水素添加する水層水素添加法などが挙げられる。
【0050】
水素添加を油層水素添加法で行う場合、好適には上記乳化重合により調製した共重合体のラテックスを塩析やアルコールによる凝固、濾別および乾燥を経て、有機溶媒に溶解する。次いで水素添加反応(油層水素添加法)を行い、得られた水素化物を大量の水中に注いで凝固、濾別および乾燥を行うことによりカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)を得ることができる。
【0051】
ラテックスの塩析による凝固には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなど公知の凝固剤を使用することができる。また、塩析による凝固に代えて、メタノールなどのアルコールを用いて凝固を行ってもよい。油層水素添加法の溶媒としては、乳化重合により得られた共重合体を溶解する液状有機化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノンおよびアセトンなどが好ましく使用される。
【0052】
油層水素添加法の触媒としては、公知の選択的水素化触媒であれば限定なく使用でき、パラジウム系触媒およびロジウム系触媒が好ましく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウムおよび水酸化パラジウムなど)がより好ましい。これらは2種以上併用してもよいが、その場合はパラジウム系触媒を主たる活性成分とすることが好ましい。これらの触媒は、通常、担体に担持させて使用される。担体としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭などが例示される。触媒使用量は、共重合体に対して好ましくは10〜5000重量ppm、より好ましくは100〜3000重量ppmである。
【0053】
あるいは、水素添加を水層水素添加法で行う場合、好適には上記乳化重合により調製した共重合体のラテックスに、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行う。水層水素添加法は、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する水層直接水素添加法と、酸化剤、還元剤および活性剤の存在下で還元して水素化する水層間接水素添加法とが挙げられるが、これらの中でも、水層直接水素添加法が好ましい。
【0054】
水層直接水素添加法において、水層における共重合体の濃度(ラテックス状態での濃度)は、凝集を防止するため40重量%以下であることが好ましい。水素化触媒は、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。その具体例として、パラジウム触媒では、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸などのカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムなどのパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウムなどのヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物などが挙げられる。これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウムおよびヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、重合により得られた共重合体に対し、好ましくは5〜6000重量ppm、より好ましくは10〜4000重量ppmである。
【0055】
水層直接水素添加法においては、水素添加反応終了後、ラテックス中の水素化触媒を除去する。その方法として、たとえば、活性炭、イオン交換樹脂などの吸着剤を添加して攪拌下で水素化触媒を吸着させ、次いでラテックスを濾過または遠心分離する方法を採ることができる。水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
【0056】
そして、水層直接水素添加法においては、このようにして得られた水素添加反応後のラテックスについて、塩析による凝固、濾別および乾燥などを行なうことにより、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)を得ることができる。この場合における、凝固に続く濾別および乾燥の工程はそれぞれ公知の方法によって行なうことができる。
【0057】
表面処理珪酸塩(b)
本発明で用いる表面処理珪酸塩(b)は、表面処理が施された珪酸塩であり、珪酸塩が表面処理されてなるものであればよく、特に限定されない。
【0058】
珪酸塩としては、特に限定されないが、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩であることが好ましく、下記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
MO・xSiO・mHO (1)
(上記一般式(1)中、Mは周期表第2族の元素または周期表第13族の元素を表し、xは8以下の正の実数であり、mは0または12以下の正の実数である。)
【0059】
上記一般式(1)中、Mを構成する周期表第2族の元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、これらのなかでも、マグネシウムが好ましい。また、上記一般式(1)中、Mを構成する周期表第13族の元素としては、ホウ素、アルミニウムなどが挙げられ、これらのなかでも、アルミニウムが好ましい。
【0060】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム水和物、珪酸カルシウム、珪酸カルシウム水和物、珪酸ホウ素、珪酸ホウ素水和物、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウム水和物などが挙げられ、これらのなかでも、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウムがより好ましく、珪酸アルミニウムが特に好ましい。
【0061】
本発明で用いる表面処理珪酸塩(b)において、上述した珪酸塩の表面を処理するために用いられる表面処理剤としては、特に限定されないが、シランカップリング剤が好適に用いられる。
【0062】
シランカップリング剤の具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトメチルトリメトキシラン、γ−メルカプトメチルトリエトキシラン、γ−メルカプトヘキサメチルジシラザン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピルジスルファンなどの硫黄を含有するシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプリピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基含有シランカプリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカプリング剤;p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;ジアリルジメチルシラン等のアリル基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン等のアルコキシ基含有シランカップリング剤;ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有シランカップリング剤;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフロロ基含有シランカップリング剤;イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルキル基含有シランカップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソポロピレートなどのアルミニウム系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデジル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートなどのチタネート系カップリング剤;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0063】
これらのなかでも、本発明の作用効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、アミノ基含有シランカップリング剤またはエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤が特に好ましい。すなわち、表面処理珪酸塩(b)としては、珪酸塩をアミノ基含有シランカップリング剤またはエポキシ基含有シランカップリング剤で表面処理してなるものであることが好ましく、珪酸塩をアミノ基含有シランカップリング剤で表面処理してなるものであることが特に好ましい。
【0064】
表面処理珪酸塩(b)の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.05〜50μmである。
【0065】
本発明で用いるニトリルゴム組成物中における、表面処理珪酸塩(b)の含有量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。表面処理珪酸塩(b)の含有量を上記範囲とすることにより、ニトリルゴム組成物の加工性を良好なものしながら、得られるゴム架橋物の低温でのシール性をより適切に向上させることができる。
【0066】
ポリアミン系架橋剤(c)
本発明で用いるニトリルゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)、および表面処理珪酸塩(b)に加えて、ポリアミン系架橋剤(c)を含有する。上述したルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)とを、ポリアミン系架橋剤(c)と組み合わせて用いることにより、得られるゴム架橋物を、低温でのシール性に優れたものとすることができる。
【0067】
ポリアミン系架橋剤(c)としては、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物および架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。
【0068】
ポリアミン系架橋剤(c)の具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物などの脂肪族多価アミン類;4,4−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4−ジアミノベンズアニリド、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタレン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタミン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ブラッシル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどの多価ヒドラジド類;が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができるという点より、脂肪族多価アミン類および芳香族多価アミン類が好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートおよび2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンがより好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0069】
本発明で用いるニトリルゴム組成物中における、ポリアミン系架橋剤(c)の含有量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.2〜15重量部である。ポリアミン系架橋剤(c)の含有量が少なすぎても、あるいは、多すぎても、得られるゴム架橋物は、機械特性や低温でのシール性に劣るものとなってしまう。
【0070】
塩基性架橋促進剤(d)
また、本発明で用いるニトリルゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)、表面処理珪酸塩(b)、およびポリアミン系架橋剤(c)に加えて、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、塩基性架橋促進剤(d)をさらに含有していることが好ましい。
【0071】
塩基性架橋促進剤の具体例としては、下記一般式(2)で表される化合物や、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤、グアニジン系塩基性架橋促進剤、アルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤などが挙げられる。
【化1】
(上記一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基である。)
【0072】
およびRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であるが、置換基を有していてもよい炭素数5〜12のシクロアルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが特に好ましい。
また、RおよびRは、置換基を有していないことが好ましい。
【0073】
なお、RおよびRが置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0074】
また、上記一般式(2)で表される化合物のなかでも、加工性およびスコーチ安定性をより高めることができるという点より、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【化2】
(上記一般式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数5〜8のシクロアルキル基である。)
【0075】
およびRは、置換基を有していてもよい炭素数5〜8のシクロアルキル基であるが、炭素数5または6の置換基を有していてもよいシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数6の置換基を有していてもよいシクロアルキル基であることがより好ましい。
また、RおよびRは、置換基を有していないことが好ましい。
【0076】
なお、RおよびRが置換基を有する場合の置換基の具体例としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0077】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘプチルアミンなどのジシクロアルキルアミン;N−メチルシクロペンチルアミン、N−ブチルシクロペンチルアミン、N−ヘプチルシクロペンチルアミン、N−オクチルシクロペンチルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−ブチルシクロヘキシルアミン、N−ヘプチルシクロヘキシルアミン、N−オクチルシクロオクチルアミンなどのアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−ヒドロキシメチルシクロペンチルアミン、N−ヒドロキシブチルシクロヘキシルアミンなどのヒドロキシ基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−メトキシエチルシクロペンチルアミン、N−エトキシブチルシクロヘキシルアミンなどのアルコキシ基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−メトキシカルボニルブチルシクロペンチルアミン、N−メトキシカルボニルヘプチルシクロヘキシルアミンなどのアルコキシカルボニル基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;N−アミノプロピルシクロペンチルアミン、N−アミノヘプチルシクロヘキシルアミンなどのアミノ基を有するアルキル基とシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;ジ(2−クロロシクロペンチル)アミン、ジ(3−クロロシクロペンチル)アミンなどのハロゲン原子を有するシクロアルキル基が窒素原子に結合した二級アミン;などが挙げられるが、加工性およびスコーチ安定性をより高めることができるという点より、ジシクロアルキルアミンが好ましく、ジシクロペンチルアミンおよびジシクロヘキシルアミンがより好ましく、ジシクロヘキシルアミンが特に好ましい。
【0078】
また、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下「DBU」と略す場合がある)および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(以下「DBN」と略す場合がある)、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。これら環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤のなかでも、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5が好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7がより好ましい。
グアニジン系塩基性架橋促進剤としては、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどが挙げられる。
アルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤としては、n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどが挙げられる。
【0079】
これら塩基性架橋促進剤のなかでも、上記一般式(2)で表される化合物、グアニジン系塩基性架橋促進剤および環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、上記一般式(2)で表される化合物、および環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤がより好ましい。
【0080】
なお、上記一般式(2)で表される化合物は、アルキレングリコールや炭素数5〜20のアルキルアルコールなどのアルコール類が混合されたものであってもよく、さらに無機酸および/または有機酸を含んでいてもよい。また、一般式(2)で表される化合物としては、一般式(2)で表される化合物と前記無機酸および/または有機酸とで塩を形成し、さらにアルキレングリコールと複合体を形成していてもよい。また、上記環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤は、有機カルボン酸やアルキルリン酸などと塩を形成していてもよい。
【0081】
塩基性架橋促進剤(d)を配合する場合における、本発明で用いるニトリルゴム組成物中の配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0082】
また、本発明で用いるニトリルゴム組成物には、上記以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、表面処理珪酸塩(b)以外の充填剤、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0083】
表面処理珪酸塩(b)以外の充填剤としては、特に限定されないが、たとえば、カーボンブラックや、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、短繊維、(メタ)アクリル酸亜鉛や(メタ)アクリル酸マグネシウムなどのα,β−エチレン系不飽和カルボン酸金属塩などが挙げられる。
【0084】
共架橋剤としては、特に限定されないが、ラジカル反応性の不飽和基を分子中に複数個有する低分子または高分子の化合物が好ましく、たとえば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンなどの多官能ビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;N,N'−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェートなどの多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンのトリアリルエーテル、ペンタエリトリットの部分的アリルエーテルなどのアリルエーテル類;アリル化ノボラック、アリル化レゾール樹脂等のアリル変性樹脂;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの、3〜5官能のメタクリレート化合物やアクリレート化合物;などが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0085】
可塑剤としては、特に限定されないが、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、アルキルスルホン酸エステル化合物類可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤などを用いることができる。具体例としては、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸イソノニルエステル、トリメリット酸混合直鎖アルキルエステル、ジペンタエリスリトールエステル、ピロメリット酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエーテルエステル(分子量300〜5000程度)、アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸系のポリエステル(分子量300〜5000程度)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、リン酸トリクレシル、セバシン酸ジブチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、エポキシ化大豆油、ジヘプタノエート、ジ‐2−エチルヘキサノエート、ジデカノエートなどが挙げられる。これらは1種または複数種併せて用いることができる。
【0086】
さらに、本発明で用いるニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で上記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合してもよい。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムとしては、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムなどを挙げることができる。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合する場合における配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0087】
本発明で用いるニトリルゴム組成物は、上記各成分を好ましくは非水系で混合して調製される。本発明で用いるニトリルゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、ポリアミン系架橋剤(c)や熱に不安定な成分(たとえば、架橋助剤など)を除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、ロールなどに移してポリアミン系架橋剤(c)や熱に不安定な成分などを加えて二次混練することにより調製できる。
【0088】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上述したニトリルゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物である。
【0089】
本発明のゴム架橋物は、150℃、25%圧縮させた状態で保持する圧縮応力緩和試験を行った際に、圧縮応力が、該圧縮応力緩和試験開始時の初期圧縮応力(すなわち、該圧縮応力緩和試験開始から30分後の圧縮応力)に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であり、好ましくは400時間以上、より好ましくは500時間以上である。本発明においては、上述したニトリルゴム組成物を用いるとともに、上記圧縮応力緩和試験において、圧縮応力が初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間を300時間以上とすることにより、ゴム架橋物を、引張強度および破断伸びを良好なものとしながら、低温でのシール性に優れたものとすることができる。具体的には、50%伸長状態として、ゴム架橋物を凍結させた後、昇温により70%収縮(回復)する時の温度(低温弾性回復率70%を示す温度)であるTR70が、好ましくは−19℃以下、より好ましくは−20℃以下とすることできる。
なお、上記圧縮応力緩和試験は、たとえば、ゴム架橋物を、内径30mm、リング径3mmのO−リング形状とし、O−リング形状のゴム架橋物を、O−リングを挟んだ二つの平面の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態とし、150℃の環境下で保持した際の圧縮応力を測定する方法が挙げられる。
【0090】
本発明のゴム架橋物は、上述したニトリルゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0091】
なお、本発明において、ゴム架橋物を、上記圧縮応力緩和試験において、圧縮応力が初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるものとする方法としては、特に限定されないが、たとえば、用いるニトリルゴム組成物に含有させるポリアミン系架橋剤(c)の種類や配合量を調整する方法や、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)中に含まれるカルボキシル基の含有量を調整する方法、ゴム架橋物とする際における架橋条件(架橋時間、架橋温度等)を調整する方法、ゴム架橋物中に含まれる充填剤の種類や配合量を調整する方法、ゴム架橋物中に含まれる添加剤の種類や配合量を調整する方法などが挙げられる。
【0092】
たとえば、ポリアミン系架橋剤(c)として、脂肪族多価アミン類および芳香族多価アミン類を用いる場合には、架橋条件などにもよるが、上記圧縮応力緩和試験において、圧縮応力が初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるものとするという観点より、その配合量を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対して、好ましくは0.2〜15重量部、より好ましくは0.3〜12重量部の範囲において調整することが好ましい。
【0093】
また、上記圧縮応力緩和試験において、圧縮応力が初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるものとするという観点からは、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)100g当たりのカルボキシル基のモル数を、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、特に好ましくは5×10−3〜5×10−2ephrの範囲において調整することが好ましい。
【0094】
さらに、上述したニトリルゴム組成物を架橋する際の架橋条件としては、用いるポリアミン系架橋剤(c)の種類や配合量等などにもよるが、上記圧縮応力緩和試験において、圧縮応力が初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間が300時間以上であるものとするという観点より、架橋温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは2分〜1時間である。また、ゴム架橋物の形状、大きさなどにより、さらに二次架橋が必要な場合には、二次架橋の架橋温度は、好ましくは100〜230℃、より好ましくは130〜200℃であり、二次架橋の架橋時間は、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは2分〜1時間である。
【0095】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、引張強度および破断伸びが良好であり、低温でのシール性に優れたものである。
そのため、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、ショックアブソーバシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材、クラッチフェーシング材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、摩擦材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。
【0096】
特に、本発明のゴム架橋物は、低温でのシール性に優れたものであり、具体的には、50%伸長状態として、ゴム架橋物を凍結させた後、昇温により70%収縮(回復)する時の温度(低温弾性回復率70%を示す温度)であるTR70が、好ましくは−19℃以下、より好ましくは−20℃以下であり、低温でのシール性に特に優れたものであることから、低温環境下において使用される材料に好適に用いることができるものであり、具体的には、本発明のゴム架橋物は、低温環境下において使用されるシール材、ベルト、ホースまたはガスケットとして好適に用いることができ、ショックアブソーバシールやクーラントシール、オイルシールなどの低温環境下において使用されるシール材用途として特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0098】
カルボキシル基含有量
2mm角のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム0.2gに、2−ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ゴム100gに対するカルボキシル基のモル数として求めた(単位はephr)。
【0099】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの組成
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。
すなわち、マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、上記「カルボキシル基含有量」の測定方法により、水素化後のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位(水素化された部分も含む)の含有割合は、水素添加反応前のカルボキシル基含有ニトリルゴムのヨウ素価を下記方法で測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、水素化後のカルボキシル含有高飽和ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n−ブチル単位およびアクリル酸メトキシエチル単位の含有割合は、上記各単量体単位の残部として算出した。
【0100】
ヨウ素価
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
【0101】
常態物性(引張強度、破断伸び、硬さ)
ニトリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状の一次架橋物を得た。次いで、得られた一次架橋物をギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋し、得られたシート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られたこの試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強度および破断伸びを、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いてゴム架橋物の硬さを、それぞれ測定した。
【0102】
圧縮応力緩和試験
ニトリルゴム組成物を、内径30mm、リング径3mmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行ってO−リング形状のゴム架橋物を得た。そして、得られたO−リング形状のゴム架橋物を、O−リングを挟んだ二つの平面の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態とし、150℃の環境下で保持することにより圧縮応力緩和試験を行った。そして、試験開始から30分後に、O−リング形状のゴム架橋物の圧縮応力を測定し、これを初期圧縮応力とし、次いで、試験開始後100時間ごとに、O−リング形状のゴム架橋物の圧縮応力を測定し、圧縮応力が試験開始から30分後の初期圧縮応力に対して、50%となるまでの時間を測定した。
なお、本試験においては、たとえば、試験開始後100時間経過後には、圧縮応力が、初期圧縮応力に対して50%を超えていたが、試験開始後200時間経過後には、圧縮応力が、初期圧縮応力に対して50%未満となった場合には、表1、表2中において、「100h<」とした。同様に、試験開始後200時間経過後には、50%を超えていたが、試験開始後300時間経過後には、50%未満となったものは、「200h<」、試験開始後300時間経過後には、50%を超えていたが、試験開始後400時間経過後には、50%未満となったものは、「300h<」等とした。
【0103】
低温シール性(50%伸長条件でのTR70)
上記常態物性の評価と同様にして得たシート状のゴム架橋物を用いて、JIS K6261に従い、50%伸長させた状態にて、TR試験(低温弾性回復試験)を行った。具体的には、50%伸長させたゴム架橋物を凍結させ、温度を連続的に上昇させることによって伸長されていた試験片の回復性を測定し、昇温によりゴム架橋物の長さが70%収縮(回復)した時の温度TR70を測定した。TR70が低いほど、低温でのシール性に優れていると判断できる。
【0104】
製造例1(カルボキシル基高飽和含有ニトリルゴム(a1)の製造)
反応器に、イオン交換水220部、濃度10%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5部、アクリロニトリル20.4部、マレイン酸モノn−ブチル5部、アクリル酸n−ブチル35.2部、およびt−ドデシルメルカプタン(第2アルキルチオール化合物)0.35部、および2,2,4,6,6−ペンタメチル−4−ヘプタンチオール(第1アルキルチオール化合物)0.03部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン39.4部を仕込んだ。そして、反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続し、重合転化率が90%になった時点で、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した。次いで、水温60℃で残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度30重量%)を得た。
【0105】
そして、上記にて得られたニトリルゴムのラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が2,000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ニトリルゴムのラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)のラテックスを得た。
【0106】
塩化ナトリウムの水溶液(凝固剤濃度:25%)を凝固液として槽内に調整し、上記ラテックスをゆっくりと槽内に注ぎ、次いで激しく接触混合させて凝固した後、濾過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)は、カルボキシル基含有量が2.6×10−2ephr、ヨウ素価が9であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)は、アクリロニトリル単位20.8重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)44.2重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.0重量%、アクリル酸n−ブチル単位30.0重量%であった。
【0107】
製造例2(カルボキシル基高飽和含有ニトリルゴム(a2)の製造)
アクリロニトリルの配合量を23部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を6.5部、1,3−ブタジエンの配合量を40部とし、アクリル酸n−ブチル35.2部の代わりに、アクリル酸メトキシエチル30.5部を使用した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a2)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a2)は、カルボキシル基含有量が3.4×10−2ephr、ヨウ素価が9であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a2)は、アクリロニトリル単位24重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)46.6重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位6.5重量%、アクリル酸メトキシエチル単位22.9重量%であった。
【0108】
製造例3(カルボキシル基高飽和含有ニトリルゴム(a’3)の製造)
アクリロニトリルの配合量を37部、マレイン酸モノn−ブチルの配合量を4部、1,3−ブタジエンの配合量を57部とし、アクリル酸n−ブチル35.2部を配合しなかった以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a’3)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a’3)は、カルボキシル基含有量が3.0×10−2ephr、ヨウ素価が9であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a’3)は、アクリロニトリル単位35.7重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)58.6重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.7重量%であった。
【0109】
製造例4(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)の製造)
反応器に、イオン交換水220部、濃度10%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5部、アクリロニトリル17.2部、マレイン酸モノn−ブチル3.3部、アクリル酸n−ブチル35.2部、およびt−ドデシルメルカプタン(第2アルキルチオール化合物)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン26.2部を仕込んだ。そして、反応器を10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続し、重合転化率が40%になった時点で、アクリロニトリル1.6部、マレイン酸モノn−ブチル0.85部、および1,3−ブタジエン6.6部を添加した。さらに重合反応を継続し、重合転化率が70%になった時点で、アクリロニトリル1.6部、マレイン酸モノn−ブチル0.85部、1,3−ブタジエン6.6部、t−ドデシルメルカプタン0.15部を添加した。さらに重合反応を継続し、重合転化率が85%になった時点で、濃度2.5重量%の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した。次いで、水温60℃で残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度30重量%)を得た。
【0110】
そして、上記にて得られたニトリルゴムのラテックスに対し、製造例1と同様にして、水素添加反応を行うことで、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)のラテックスを得て、製造例1と同様にて凝固、濾過および乾燥を行うことで、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)は、カルボキシル基含有量が2.5×10−2ephr、ヨウ素価が8であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)は、アクリロニトリル単位20.3重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)44.5重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位4.8重量%、アクリル酸n−ブチル単位30.4重量%であった。
【0111】
製造例5(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a5)の製造)
重合開始時に仕込む単量体の量を、アクリロニトリル15.0部、マレイン酸モノn−ブチル3.0部、アクリル酸n−ブチル35.2部、および1,3−ブタジエン26.0部にそれぞれ変更し、重合転化率が40%になった時点で添加する単量体の量を、アクリロニトリル2.6部、マレイン酸モノn−ブチル0.8部、および1,3−ブタジエン5.0部にそれぞれ変更し、かつ、重合転化率が70%になった時点で添加する単量体の量を、アクリロニトリル2.8部、マレイン酸モノn−ブチル1.2部、および1,3−ブタジエン8.4部にそれぞれ変更した以外は、製造例4と同様にしてカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a5)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a5)は、カルボキシル基含有量が2.7×10−2ephr、ヨウ素価が10であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a5)は、アクリロニトリル単位21.0重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)44.1重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.2重量%、アクリル酸n−ブチル単位29.7重量%であった。
【0112】
製造例6(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a6)の製造)
重合開始時に仕込むアクリル酸n−ブチルの量を30.0部に変更し、重合転化率が40%になった時点で添加する単量体として、アクリル酸n−ブチル2.6部を追加し、かつ、重合転化率が70%になった時点で添加する単量体として、アクリルn−酸ブチル2.6部を追加した以外は、製造例4と同様にしてカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a6)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a6)は、カルボキシル基含有量が2.6×10−2ephr、ヨウ素価が9であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a6)は、アクリロニトリル単位20.9重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)43.8重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.0重量%、アクリル酸n−ブチル単位30.3重量%であった。
【0113】
製造例7(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a7)の製造)
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル13部、マレイン酸モノn−ブチル3部、アクリル酸n−ブチル36部、t−ドデシルメルカプタン(第2アルキルチオール化合物)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン32部を仕込んだ。金属製ボトルを10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら重合反応を継続し、反応転化率40%になった時点で、アクリロニトリル2部、マレイン酸モノn−ブチル1部、および1,3−ブタジエン6部を添加した。さらに重合反応を継続し、反応転化率が70%になった時点で、アクリロニトリル1部、マレイン酸モノn−ブチル1部、および1,3−ブタジエン5部を添加した。さらに重合反応を継続し、重合転化率が85%になった時点で、濃度2.5重量%の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃で残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックスを(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0114】
そして、上記にて得られたニトリルゴムのラテックスに対し、パラジウム触媒の使用量を、ニトリルゴムのラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量で1,000重量ppmとなる量とした以外は、製造例1と同様にして、水素添加反応を行うことで、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a7)のラテックスを得た後、製造例1と同様にて凝固、濾過および乾燥を行うことで、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a7)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a7)は、カルボキシル基含有量が2.6×10−2ephr、ヨウ素価が10であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a7)は、アクリロニトリル単位15重量%、ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位35重量%であった。
【0115】
製造例8(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a8)の製造)
重合開始時に仕込む単量体の量を、アクリロニトリル16.0部、マレイン酸モノn−ブチル5.0部、アクリル酸n−ブチル36.0部、および1,3−ブタジエン43.0部に変更するとともに、反応の途中における単量体の追加添加を行わなかった以外は、製造例7と同様にしてカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a8)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a8)は、カルボキシル基含有量が2.7×10−2ephr、ヨウ素価が8であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a8)は、アクリロニトリル単位14.7重量%、ブタジエン単位(水素化された部分も含む)45.2重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5.2重量%、アクリル酸n−ブチル単位34.9重量%であった。
【0116】
製造例9(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a9)の製造)
重合開始時に仕込む単量体の量を、アクリロニトリル10.0部、マレイン酸モノn−ブチル2.0部、アクリル酸n−ブチル36.0部、および1,3−ブタジエン30.0部にそれぞれ変更し、重合転化率が40%になった時点で添加する単量体の量を、アクリロニトリル3.0部、マレイン酸モノn−ブチル1.0部、および1,3−ブタジエン7.0部にそれぞれ変更し、かつ、重合転化率が70%になった時点で添加する単量体の量を、アクリロニトリル3.0部、マレイン酸モノn−ブチル2.0部、および1,3−ブタジエン6.0部にそれぞれ変更した以外は、製造例7と同様にしてカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a9)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a9)は、カルボキシル基含有量が2.5×10−2ephr、ヨウ素価が9であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a8)は、アクリロニトリル単位15.3重量%、ブタジエン単位(水素化された部分も含む)44.9重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位4.8重量%、アクリル酸n−ブチル単位35.0重量%であった。
【0117】
製造例10(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a10)の製造)
重合開始時に仕込むアクリル酸n−ブチルの量を30.0部に変更し、重合転化率が40%になった時点で添加する単量体として、アクリル酸n−ブチル4.0部を追加し、かつ、重合転化率が70%になった時点で添加する単量体として、アクリル酸n−ブチル2.0部を追加した以外は、製造例7と同様にしてカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a10)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a10)は、カルボキシル基含有量が2.6×10−2ephr、ヨウ素価が8であった。また、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a10)は、アクリロニトリル単位15.1重量%、ブタジエン単位(水素化されている部分含む)45.4重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位5重量%、アクリル酸n−ブチル単位34.5重量%であった。
【0118】
実施例1
バンバリーミキサを用いて、製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に、アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」、Kentucky−Tennessee Clay社製)90部、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーC−8」、可塑剤)5部、4,4’−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学社製、商品名「ノクラックCD」、老化防止剤)1.5部、ステアリン酸1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業社製、商品名「フォスファノールRL210」、加工助剤)1部を配合して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−ウンデセン−7(DBU)(RheinChemie社製、商品名「RHENOGRAN XLA−60(GE2014)」、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分も含む)、塩基性架橋促進剤)4部、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(デュポンダウエラストマー社製、商品名「Diak#1」、脂肪族多価アミン類に属するポリアミン架橋剤(c))1.9部を配合して、混練することにより、ニトリルゴム組成物を得た。
【0119】
そして、上述した方法により、上記にて調製したニトリルゴム組成物を用いてゴム架橋物を得て、得られたゴム架橋物について、常態物性(引張強度、破断伸び、硬さ)、圧縮応力緩和試験、および低温シール性(50%伸長条件でのTR70)の各試験・測定を行った。結果を表1に示す。
【0120】
実施例2
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)90部に代えて、アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b2)(商品名「Nulok 390」、KaMin社製)90部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
実施例3
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)90部に代えて、エポキシ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b3)(商品名「Nulok 170」、KaMin社製)90部を使用し、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーC−8」、可塑剤)5部に代えて、ポリエーテルエステル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーRS−700」、可塑剤)5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
実施例4
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)90部に代えて、メルカプト基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b4)(商品名「Mercap 200」、Kentucky−Tennessee Clay社製)90部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
実施例5
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b2)(商品名「Nulok 390」)の配合量を90部から30部に変更し、かつ、ビニル基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b5)(商品名「Burgess KE」、バーゲス・ピグメント社製)60部をさらに配合した以外は、実施例2と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0124】
実施例6
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)90部に代えて、ビニル基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b5)(商品名「Burgess KE」、バーゲス・ピグメント社製)50部を使用するとともに、シリカ(商品名「ULTRASIL(登録商標) VN2」、Evonik社製)25部をさらに配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0125】
実施例7
加工助剤(商品名「ストラクトール(登録商標) HT740」、エスアンドエスジャパン社製)1部をさらに配合した以外は、実施例6と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0126】
実施例8
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a2)100部を使用するとともに、アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)の配合量を90部から85部に、ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を1.9部から2.7部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0127】
実施例9
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)85部に代えて、アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b2)(商品名「Nulok 390」)85部を使用し、かつ、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーC−8」、可塑剤)5部に代えて、ポリエーテルエステル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーRS−700」、可塑剤)5部を使用した以外は、実施例8と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
実施例10
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)85部に代えて、エポキシ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b3)(商品名「Nulok 170」)85部を使用した以外は、実施例8と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0129】
実施例11
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)85部に代えて、メルカプト基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b4)(商品名「Mercap 200」)85部を使用した以外は、実施例8と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0130】
実施例12
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b2)(商品名「Nulok 390」)の配合量を85部から30部に変更し、かつ、ビニル基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b5)(商品名「Burgess KE」)55部をさらに配合した以外は、実施例8と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0131】
実施例13
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)85部に代えて、ビニル基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b5)(商品名「Burgess KE」、バーゲス・ピグメント社製)50部を使用するとともに、シリカ(商品名「ULTRASIL(登録商標) VN2」、Evonik社製)25部をさらに配合した以外は、実施例8と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0132】
実施例14
加工助剤(商品名「ストラクトール(登録商標) HT740」、エスアンドエスジャパン社製)1部をさらに配合した以外は、実施例13と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0133】
実施例15〜20
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例4で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)100部を使用するとともに、表2に示す各配合剤を表2に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0134】
実施例21,22
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例5で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a5)100部を使用するとともに、表2に示す各配合剤を表2に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0135】
実施例23,24
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例6で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a6)100部を使用するとともに、表2に示す各配合剤を表2に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0136】
実施例25〜31
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例7で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a7)100部を使用するとともに、表3に示す各配合剤を表3に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0137】
実施例32,33
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例8で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a8)100部を使用するとともに、表3に示す各配合剤を表3に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0138】
実施例34,35
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例9で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a9)100部を使用するとともに、表3に示す各配合剤を表3に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0139】
実施例36,37
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例10で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a10)100部を使用するとともに、表3に示す各配合剤を表3に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0140】
比較例1
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を1.9部から0.5部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0141】
比較例2
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を1.9部から1部に変更した以外は、実施例2と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0142】
比較例3
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)90部に代えて、表面未処理珪酸アルミニウム(b’6)(商品名「サティントン#5」、Engelhard Minerals社製)90部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0143】
比較例4
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を2.7部から0.5部に変更し、かつ、ポリエーテルエステル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーRS−700」、可塑剤)5部に代えて、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーC−8」、可塑剤)5部を使用した以外は、実施例9と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0144】
比較例5
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を0.5部から1部に変更した以外は、比較例4と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0145】
比較例6
アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b1)(商品名「Amlok 321」)85部に代えて、表面未処理珪酸アルミニウム(b’6)(商品名「サティントン#5」)85部を使用した以外は、実施例8と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0146】
比較例7〜9
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例4で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a4)100部を使用するとともに、表4に示す各配合剤を表4に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0147】
比較例10〜15
製造例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a1)100部に代えて、製造例5〜10で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a5)〜(a10)をそれぞれ100部の配合量にて使用するとともに、表5に示す各配合剤を表5に示す配合量にて配合した以外は、実施例1と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0148】
比較例16
製造例2で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a2)100部に代えて、製造例3で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a’3)100部を使用したこと、アミノ基含有シランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(b2)(商品名「Nulok 390」)の配合量を90部から80部に、ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を1.9部から0.5部に、それぞれ変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0149】
比較例17
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を0.5部から1部に変更した以外は、比較例16と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0150】
比較例18
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの配合量を0.5部から2.4部に変更した以外は、比較例16と同様にして、ニトリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表5に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
【表5】
【0156】
表1〜5に示すように、本発明所定のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)と、所定の量のポリアミン系架橋剤(c)とを含有してなるニトリルゴム組成物を架橋することにより得られ、150℃、25%圧縮条件での圧縮応力緩和試験における、圧縮応力が、初期圧縮応力に対して50%となるまでの時間が300時間以上であるゴム架橋物は、引張強度が9MPa以上および破断伸びが100%以上といずれも高く、かつ、50%伸長条件でのTR70が、いずれも−20℃以下であり、低温でのシール性に優れるものであった(実施例1〜37)。
【0157】
本発明所定のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)と、表面処理珪酸塩(b)と、所定の量のポリアミン系架橋剤(c)とを含有してなるニトリルゴム組成物を架橋することにより得られたものであっても、150℃、25%圧縮条件での圧縮応力緩和試験における、圧縮応力が、初期圧縮応力に対して50%となるまでの時間が300時間未満である場合には、50%伸長条件でのTR70が、いずれも−20℃を超えるものであり、低温でのシール性に劣るものであった(比較例1,2,4,5,7,8)。
また、表面処理珪酸塩(b)の代わりに、表面未処理珪酸アルミニウムを使用した場合には、得られるゴム架橋物は、引張強度に劣るものであった(比較例3,6,9〜15)。
さらに、本発明所定のカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(a)の代わりに、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有しないゴムを使用した場合には、得られるゴム架橋物は、50%伸長条件でのTR70が、いずれも−20℃を超えるものであり、低温でのシール性に劣るものであった(比較例16〜18)。