特許第6763422号(P6763422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763422波長変換部材の製造方法及び波長変換部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763422
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】波長変換部材の製造方法及び波長変換部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20200917BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20200917BHJP
   C04B 35/599 20060101ALI20200917BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   G02B5/20
   C09K11/08 B
   C09K11/08 G
   C04B35/599
   C04B35/645 500
【請求項の数】14
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-218630(P2018-218630)
(22)【出願日】2018年11月21日
(65)【公開番号】特開2019-135543(P2019-135543A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2017-226616(P2017-226616)
(32)【優先日】2017年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-20159(P2018-20159)
(32)【優先日】2018年2月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 智也
(72)【発明者】
【氏名】柳原 淳良
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−149394(JP,A)
【文献】 特表2011−513898(JP,A)
【文献】 特開2015−199640(JP,A)
【文献】 特開2017−107071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
C04B 35/599
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体を準備することと、前記成形体を1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含み、
前記混合粉体において、前記混合粉体100質量%に対して、前記Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記混合粉体100質量%から前記Ca−α−サイアロン蛍光体を除く残部が、前記アルミナ粒子であり、前記アルミナ粒子の含有量が60質量%以上99.9質量%以下の範囲内である、波長変換部材の製造方法。
CaSi12−(m+n)Alm+n16−n:Eu
前記組成式、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
【請求項2】
下記組成式で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子と、イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と、を含む混合粉体を成形した成形体を準備することと、前記成形体を1000℃以上1500℃以下の範囲の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含み、
前記混合粉体において、前記混合粉体100質量%に対して、前記Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記Ca−α−サイアロン蛍光体と前記イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体の合計量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲内であり、前記混合粉体100質量%から前記Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量及びイットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体を除く残部が、前記アルミナ粒子であり、前記アルミナ粒子の含有量が30質量%以上99.9質量%以下の範囲内である、波長変換部材の製造方法。
CaSi12−(m+n)Alm+n16−n:Eu
前記組成中、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
【請求項3】
前記第一の焼結体を熱間等方圧加圧(HIP)処理により1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で二次焼成し、第二の焼結体を得ることを含む、請求項1に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項4】
前記第一の焼結体を熱間等方圧加圧(HIP)処理により1000℃以上1500℃以下の範囲の温度で二次焼成し、第二の焼結体を得ることを含む、請求項2に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項5】
前記一次焼成の温度が1200℃以上1570℃以下の範囲である、請求項1又は3に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項6】
前記一次焼成の温度が1200℃以上1450℃以下の範囲である、請求項2又は4に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項7】
前記Ca−α−サイアロン蛍光体の平均粒径が2μm以上30μm以下の範囲である、請求項1から6のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項8】
前記アルミナ粒子の平均粒径が0.1μm以上1.3μm以下の範囲である、請求項1から7のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項9】
前記混合粉体におけるアルミナ粒子のアルミナ純度が99.0質量%以上である、請求項1から8のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項10】
前記第一の焼結体の相対密度が80%以上である、請求項1から9のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項11】
前記第二の焼結体の相対密度が90%以上である、請求項3又は4に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項12】
下記組成式で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含み、前記Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、残部が前記アルミナ及び空隙である、波長変換部材。
CaSi12−(m+n)Alm+n16−n:Eu
前記組成中、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
【請求項13】
下記組成式で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体と、アルミナと、イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と、を含み、前記Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲内であり、前記イットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体及び前記Ca−α−サイアロン蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下であり、残部が前記アルミナ及び空隙である、波長変換部材。
CaSi12−(m+n)Alm+n16−n:Eu
前記組成中、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
【請求項14】
相対密度が80%以上である、請求項12又は13に記載の波長変換部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」ともいう。)やレーザーダイオード(Laser Diode、以下「LD」ともいう。)から発せられた光の波長を変換する波長変換部材の製造方法及び波長変換部材に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDやLDの発光素子を用いる発光装置は、変換効率の高い光源であり、消費電力が少なく、長寿命であり、サイズの小型化が可能であることから、白熱電球や蛍光灯に代わる光源として利用されている。このような発光装置は、光源である発光素子と、発光素子からの発光の一部を吸収して異なる波長に変換する波長変換部材がパッケージに収納されている。LEDやLDを用いた発光装置は、車載用や室内照明用の発光装置、液晶表示装置のバックライト光源、イルミネーション、プロジェクター用の光源装置などの広範囲の分野で利用されている。なかでも青色光を発する発光素子と黄色等に発光する蛍光体を組み合わせて、それらの混色光を放出する発光装置は、広く利用されている。
【0003】
そのような発光装置に用いられる蛍光体は、(Y,Gd,Tb,Lu)(Al,Ga)12:Ceで表される希土類アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)SiO:Euで表されるシリケート蛍光体、Ca−α−サイアロン蛍光体などの無機蛍光体が知られている。これらの蛍光体が樹脂中に分散され、蛍光体を含む樹脂をパッケージ内で硬化させて波長変換部材を構成する。波長変換部材として、例えば、ガラス粉末と無機蛍光体粉末とを混合し、ガラス粉末を溶融させ固化させた焼結体からなる波長変換部材も開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−234487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蛍光体を含む樹脂を硬化させてなる波長変換部材は、樹脂の劣化による輝度低下を招く可能性がある。また、特許文献1に開示されている波長変換部材は、ガラス成分が焼結体の形成時に無機蛍光体中に混入し、蛍光体の発光に支障をきたす場合がある。また、ガラスは軟化点が比較的低く、高出力のLEDやLDの光を照射した場合、無機蛍光体粉末と混合したガラス粉末を溶融させて固化させてなる焼結体は高温に耐えられない虞がある。
そこで本発明は、励起光の照射により所望の発光ピーク波長を有する光を発する波長変換部材の製造方法及び波長変換部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の態様を包含する。
【0007】
本発明の第一の態様は、Ca−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体を準備することと、前記成形体を1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含む、波長変換部材の製造方法である。
【0008】
本発明の第二の態様は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含む波長変換部材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の発光ピーク波長を有する光を発する波長変換部材の製造方法及び波長変換部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の第一の実施形態に係る波長変換部材の製造方法の工程順序を示すフローチャートである
図2図2は、本開示の第一の実施形態に係り、好ましい波長変換部材の製造方法の工程順序示すフローチャートである。
図3図3は、実施例3に係る波長変換部材の外観写真である。
図4図4は、実施例12に係る波長変換部材の外観写真である。
図5図5は、比較例5に係る第1の焼結体の外観写真である。
図6図6は、実施例23から26に係る各波長変換部材のCIE色度座標の色度(x値、y値)を示す図である。
図7図7は、実施例27から30に係る各波長変換部材及び比較例6の第一の焼結体のCIE色度座標の色度(x値、y値)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る波長変換部材の製造方法及び波長変換部材を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の波長変換部材の製造方法及び波長変換部材に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
【0012】
波長変換部材の製造方法
本発明の第一の実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、Ca−α−サイアロン蛍光体と、必要に応じてイットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体と、アルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体を準備することと、前記成形体を1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることを含む。
【0013】
本発明の第一の実施形態に係る製造方法によって得られるCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含む第一の焼結体は、励起光の照射により所望の発光ピーク波長を有する光を発する波長変換部材として用いることができる。前記第一の焼結体からなる波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体及びアルミナを含むセラミックスからなるため、熱伝導率が高く、また、耐熱性が高く、劣化を抑制することができる。
【0014】
本発明の第一の実施形態に係る製造方法によれば、Ca−α−サイアロン蛍光体は、結晶構造の一部が分解されることなく、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造を維持したまま、酸化物であるアルミナとともに焼き固まり、励起光によって所望の発光ピーク波長を有する光を発するCa−α−サイアロン蛍光体を含む焼結体からなる波長変換部材を得ることができる。
【0015】
無機蛍光体粉末と混合したガラス粉末を溶融させて固化させてなる焼結体は、ガラス成分が焼結体の形成時に無機蛍光体中に混入し、蛍光体の発光に支障をきたす場合がある。Ca−α−サイアロン蛍光体のような酸窒化物蛍光体と、ガラス成分に含まれる酸化物と同じ酸化物の一つであるアルミナ粒子とを焼成すると、酸窒化物蛍光体の組成に含まれる窒素と酸化物中の酸素とは反応しやすく、酸窒化物と酸化物の反応が促進されて、酸窒化物蛍光体の結晶構造が一部分解され、実用可能な程度に発光する蛍光体を含む焼結体が得られないと推測されていた。しかしながら、本発明者らの実験によると、実際には、Ca−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子とを焼成して得られる焼結体は発光することが分かった。これは、アルミナは、例えば、ガラス成分に含まれるアルミナ以外の金属酸化物よりも熱による組成変化を受け難く、アルミナの組成中から放出された酸素と、Ca−α−サイアロン蛍光体が反応し難いので、アルミナ粒子を用いて焼結体を形成してもCa−α−サイアロン蛍光体の発光に悪影響を及ぼしにくいためであると推測された。
【0016】
本発明の第一の実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、Ca−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子とを含む混合粉体が、さらにイットリウムアルミニウムガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」ともいう。)を含むことが好ましい。前記混合粉体が、Ca−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子と、さらにYAG系蛍光体とを含む場合は、前記混合粉体を成形した成形体を1000℃以上1500℃以下の範囲の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得ることが好ましい。本発明の第一の実施形態に係る製造方法によって得られる波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造及びYAG系蛍光体の結晶構造の一部が分解されることなく、それぞれの蛍光体の結晶構造を維持したまま、酸化物であるアルミナとともに焼き固まって第一の焼結体を構成する。本発明の第一の実施形態に係る製造方法は、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造及びYAG系蛍光体の結晶構造を維持したまま、Ca−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体を一つの焼結体に含めることができるため、所望の色調を得るために組成を変えた蛍光体を用いることなく、一つの焼結体中に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体の配合量の調整することによって、所望の色調に発光する波長変換部材を得ることができる。前記第一の焼結体からなる波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体、YAG系蛍光体及びアルミナを含むセラミックからなるため、熱伝導率が高く、また、耐熱性が高く、劣化を抑制することができる。
【0017】
Ca−α−サイアロン蛍光体
Ca−α−サイアロン蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体を用いることが好ましい。
Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu (I)
(式(I)中、vは0<v≦2を満たす数である。)
本明細書において、組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも一種の元素を組成中に含有していることを意味する。組成式中のカンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、組成中にカンマで区切られた複数の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含み、前記複数の元素から二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0018】
Ca−α−サイアロン蛍光体は、下記式(II)で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体を用いることがより好ましい。
Si12−(m+n)Alm+n16−n:Eu (II)
(式(II)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
【0019】
本発明の第一の実施形態に係る製造方法において、Ca−α−サイアロン蛍光体は、第一の焼結体の原料として用いる。原料としてのCa−α−サイアロン蛍光体は、粉体であることが好ましい。Ca−α−サイアロン蛍光体の平均粒径は、好ましくは2μm以上30μm以下の範囲であり、より好ましくは3μm以上25μm以下の範囲であり、さらに好ましくは4μm以上20μm以下の範囲であり、よりさらに好ましくは5μm以上15μm以下の範囲である。Ca−α−サイアロン蛍光体の平均粒径が2μm以上であると、Ca−α−サイアロン蛍光体を混合粉体中で略均一に分散させて、成形体中でCa−α−サイアロン蛍光体を略均一に分散させることができる。Ca−α−サイアロン蛍光体の平均粒径が30μm以下であると、波長変換部材中の空隙が少なくなるので光変換効率を高くすることができる。本明細書において、Ca−α−サイアロン蛍光体の平均粒径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準の粒度分布における小径側からの体積累積頻度が50%に達する粒径(メジアン径)をいう。レーザー回折散乱式粒度分布測定法には、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(MASTER SIZER(マスターサイザー)3000、MALVERN社製)を用いて測定することができる。
【0020】
成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が、仕込みの質量割合で、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上38質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以上35質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以上30質量%以下である。成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下であると、光変換効率の高い波長変換部材を得ることができる。成形体を構成する混合粉体中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%未満であると、所望の変換効率を有する波長変換部材を得ることができない。また、成形体を構成する混合粉体中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が40質量%を超えると、相対的にアルミナ粒子の含有量が少なくなり、得られる波長変換部材の密度が小さくなり、機械的な強度が低下する場合がある。また、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が40質量%を超えると、波長変換部材中の体積当たりのCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が多すぎるため、例えば所望の色調及び変換効率を得るために、波長変換部材の厚さを薄くしなければならず、波長変換部材として所望の強度が得られず、取り扱いが困難となる場合がある。
【0021】
YAG系蛍光体
YAG系蛍光体は、(Y,Gd,Tb,Lu)Al12:Ceで表される希土類アルミン酸塩蛍光体を用いることができる。
【0022】
YAG系蛍光体は、下記式(III)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を用いることが好ましい。
(Y1−a−bGdCeAl12 (III)
(式(III)中、a及びbは、0≦a≦0.500、0<b≦0.030を満たす数である。)
【0023】
本発明の第一の実施形態に係る製造方法において、YAG系蛍光体は、第一の焼結体の原料として用いる。原料としてのYAG系蛍光体は、粉体であることが好ましい。YAG系蛍光体の平均粒径は、好ましくは1μm以上50μm以下の範囲であり、より好ましくは1μm以上40μm以下の範囲であり、さらに好ましくは2μm以上30μm以下の範囲であり、よりさらに好ましくは2μm以上20μm以下の範囲であり、特に好ましくは2μm以上15μm以下の範囲である。YAG系蛍光体の平均粒径が1μm以上であると、YAG系蛍光体を混合粉体中に略均一に分散させて、成形体中にYAG系蛍光体を略均一に分散させることができる。YAG系蛍光体の平均粒径が50μm以下であると、波長変換部材中の空隙が少なくなるので光変換効率を高くすることができる。本明細書において、YAG系蛍光体の平均粒径とは、フィッシャーサブシーブサイザー法(Fisher Sub-sieve sizer、以下「FSSS法」ともいう。)により測定した平均粒径(Fisher Sub-sieve sizer’s number)をいう。FSSS法は、空気透過法の一種であり、空気の流通抵抗を利用して比表面積を測定し、粒径を求める方法である。
【0024】
成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、YAG系蛍光体とCa−α−サイアロン蛍光体の合計の含有量が、仕込みの質量割合で、好ましくは0.1質量%以上70質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以上60質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以上55質量%以下、特に好ましくは2質量%以上50質量%以下である。成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下であると、光変換効率の高い波長変換部材を得ることができる。成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、Ca−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量が0.1質量%未満であると、所望の変換効率を有する波長変換部材を得ることができない。また、成形体を構成する混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量が70質量%を超えると、相対的に蛍光体の含有量が多くなるため、所望の波長変換効率を得るために、又は、所望の色調を得るために、第一の焼結体の厚さを薄くして用いる必要がある。所望の色調を得るために薄くした第一の焼結体では、波長変換部材として所望の強度が得られず、取り扱いが困難となる場合がある。また、成形体を構成する混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量が70%を超えると、成形体中に含まれる蛍光体粒子の量が多くなり、相対的にアルミナの量が少なくなり、得られる波長変換部材の相対密度を高くし難くなる場合がある。
【0025】
成形体を構成する混合粉体中のCa−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体との配合割合は、成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、所望の波長変換効率が得られ、所望の色調が得られればよい。成形体を構成する混合粉体100質量%に対する、Ca−α−サイアロン蛍光体粒子及びYAG系蛍光体粒子の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下であれば、例えばCa−α−サイアロン蛍光体粒子とYAG系蛍光体粒子の質量比(Ca−α−サイアロン蛍光体粒子:YAG系蛍光体粒子)は、仕込みの質量比で、好ましくは1:99から99:1の範囲であり、より好ましくは2:98から98:2の範囲であり、さらに好ましく3:97から95:5の範囲であり、よりさらに好ましくは4:96から90:10の範囲である。
【0026】
成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、YAG系蛍光体の含有量は、Ca−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であればよい。成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、YAG系蛍光体の含有量は、仕込みの質量割合で、好ましくは0.1質量%以上69.9質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以上50質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以上40質量%以下、特に好ましくは1質量%以上30質量%以下である。成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、YAG系蛍光体の含有量が0.1質量%以上69.9質量%以下の範囲であれば、所望の色調が得られる波長変換部材を得ることができる。
【0027】
アルミナ粒子
本発明の第一の実施形態に係る製造方法において、アルミナ粒子は、第一の焼結体の原料として用いる。原料として用いるアルミナ粒子は、アルミナ純度が99.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくはアルミナ純度が99.5質量%以上である。成形体を構成する粉体に、アルミナ純度が99.0質量%以上であるアルミナ粒子を含むと、得られる第一の焼結体又は第二の焼結体の透明性が高くなり、光変換効率を高くすることができ、良好な熱伝導率を有する波長変換部材を得ることができる。市販のアルミナ粒子を用いた場合には、アルミナ純度は、カタログに記載されたアルミナ純度の値を参照することができる。アルミナ純度が不明である場合には、アルミナ粒子の質量を測定した後、各アルミナ粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、アルミナ粒子に付着している有機分やアルミナ粒子が吸湿している水分を除去し、焼成後のアルミナ粒子の質量を測定し、焼成後のアルミナ粒子の質量を焼成前のアルミナ粒子の質量で除すことによって、アルミナ純度を測定することができる。アルミナ純度は、例えば、以下の式によって算出することができる。
アルミナ純度(質量%)=(焼成後のアルミナ粒子の質量÷焼成前のアルミナ粒子の質量)×100
【0028】
アルミナ粒子は、その平均粒径が好ましくは0.1μm以上1.3μm以下の範囲であり、より好ましくは0.2μm以上1.0μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.3μm以上0.8μm以下の範囲であり、よりさらに好ましくは0.3μm以上0.6μm以下の範囲である。アルミナ粒子の平均粒径が前記範囲であると、Ca−α−サイアロン蛍光体の粉体とアルミナ粒子を均一に混合することができ、空隙が少なく密度の高い焼結体からなる波長変換部材を製造することができる。本明細書において、アルミナ粒子の平均粒径とは、フィッシャーサブシーブサイザー(Fisher sub-sieve sizer、以下「FSSS」ともいう。)法により測定した平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)をいう。
【0029】
成形体を構成する混合粉体100質量%に対して、アルミナ粒子の含有量は、蛍光体を除く残部である。成形体を構成する混合粉体がCa−α−サイアロン蛍光体及びアルミナ粒子からなる場合には、アルミナ粒子の含有量は、前記混合粉体からCa−α−サイアロン蛍光体を除く残部であり、好ましくは60質量%以上99.9質量%以下である。
成形体を構成する混合粉体がCa−α−サイアロン蛍光体と、YAG系蛍光体と、アルミナ粒子とからなる場合には、アルミナ粒子の含有量は、前記混合粉体からCa−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計量を除く残部であり、好ましくは30質量%以上99.9質量%以下である。
【0030】
アルミナ粒子を構成するアルミナの種類は、特に限定されず、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナのいずれも用いることができる。アルミナは、入手しやすく、Ca−α−サイアロン蛍光体の粉体とアルミナ粒子とを混合しやすく、成形体を形成しやすいため、α−アルミナを用いることが好ましい。
【0031】
本発明の第一の実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、Ca−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子との含む第一の焼結体を、さらに熱間等方圧加圧JIS Z2500:2000、No.2112(HIP:Hot Isostatic Pressing、以下「HIP」ともいう。)処理により1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で二次焼成し、第二の焼結体を得ることを含むことが好ましい。前記波長変換部材の製造方法によって得られる第二の焼結体は、第一の焼結体をHIP処理により1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で二次焼成するため、得られる第二の焼結体の密度をより高めることができ、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する色むらの少ない光を発する、波長変換部材として用いることができる。
【0032】
また、本発明の第一の実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、Ca−α−サイアロン蛍光体と、必要に応じてYAG系蛍光体と、アルミナ粒子との含む第一の焼結体を、さらにHIP処理により1000℃以上1500℃以下の範囲の温度で二次焼成し、第二の焼結体を得ることを含んでいてもよい。前記波長変換部材の製造方法によって得られる第二の焼結体は、第一の焼結体をHIP処理により1000℃以上1500℃以下の範囲の温度で二次焼成することによって、得られる第二の焼結体の密度をより高めることができ、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する色むらの少ない光を発する、波長変換部材として用いることができる。
【0033】
図1は、第一の実施形態に係る波長変換部材の製造方法の工程順序の一例を示すフローチャートである。図1を参照にして波長変換部材の製造方法の工程を説明する。波長変換部材の製造方法は、成形体準備工程S102と、一次焼成工程S103とを含む。波長変換部材の製造方法は、成形体準備工程S102の前に、粉体混合工程S101を含んでいてもよく、一次焼成工程S103の後に、波長変換部材を加工する加工工程S104を含んでいてもよい。
【0034】
粉体混合工程
粉体混合工程では、成形体を構成する粉体として、Ca−α−サイアロン蛍光体の粉体と、アルミナ粒子とを混合する。粉体混合工程では、成形体を構成する粉体として、Ca−α−サイアロン蛍光体と、必要に応じてYAG系蛍光体と、アルミナ粒子とを混合することが好ましい。粉体の混合は、乳鉢及び乳棒を用いて混合することができる。粉体の混合には、ボールミルなどの混合媒体を用いて混合してもよい。また、粉体の混合を行いやすくし、さらに混合後の粉体を成形しやすくするために、成形助剤を用いてもよい。成形助剤は、水又はエタノールが挙げられる。成形助剤は、後の焼成工程において揮発しやすいものであるものが好ましい。成形助剤を用いなくてもよい。成形助剤を加える場合は、粉体100質量部に対して、成形助剤が10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0035】
成形体準備工程
成形体準備工程では、Ca−α−サイアロン蛍光体と、必要に応じてYAG系蛍光体と、アルミナ粒子とを含む混合粉体を、所望の形状に成形し、成形体を得る。混合粉体の成形方法は、プレス成形法などの知られている方法を採用することができ、例えば金型プレス成形法、冷間等方圧加圧法(CIP:Cold Isostatic Pressing、以下、「CIP処理」ともいう。)などが挙げられる。成形方法は、成形体の形状を整えるために、2種の方法を採用してもよく、金型プレス成形をした後に、CIP処理を行ってもよい。CIP処理では、水を媒体として成形体をプレスすることが好ましい。
【0036】
金型プレス成形時の圧力は、好ましくは3MPaから50MPaであり、より好ましくは4MPaから20MPaである。金型プレス成形時の圧力が前記範囲であれば、成形体を所望の形状に整えることができる。
【0037】
CIP処理における圧力は、好ましくは50MPaから250MPaであり、より好ましくは100MPaから200MPaである。CIP処理における圧力が前記範囲であると、成形体の密度を高め、全体が略均一な密度を有する成形体を得ることができ、後の一次焼成工程及び二次焼成工程において、得られる焼結体の密度を高めることができる。
【0038】
一次焼成工程
一次焼成工程は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体を1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で一次焼成し、第一の焼結体を得る工程である。一次焼成工程は、成形体がCa−α−サイアロン蛍光体と、YAG系蛍光体と、アルミナ粒子とを含む場合には、1000℃以上1500℃以下の範囲の温度で一次焼成して、第一の焼結体を得る工程である。一次焼成工程において、成形体に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子との焼結密度を高め、励起光によって所望の発光ピーク波長を有する光を発する波長変換部材を得ることができる。
【0039】
Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体を1000℃以上1600℃以下の範囲で一次焼成し、第一の焼結体を得ることによって、一次焼成後の二次焼成において、さらに得られる第二の焼結体の密度を高めることができる。一次焼成工程によって得られる第一の焼結体は、後述する二次焼成工程によって得られる第二の焼結体よりも密度が低くなる場合があるが、一次焼成工程によって得られる第一の焼結体は、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する光を発し、波長変換部材として用いることができる。
【0040】
温度や第一の焼結体中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量によっては、HIP処理による二次焼成によって第一の焼結体に含まれる閉空孔(クローズドポア)が潰れるとともに、第一の焼結体中に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体が一部分解、蒸散して第二の焼結体に開空孔(オープンポア)が生成されるために、第一の焼結体の方が第二の焼結体よりも密度が高くなる場合もある。
【0041】
一次焼成の温度は、1000℃以上1600℃以下の範囲である。一次焼成の温度が1000℃未満であると、相対密度を高めることができない。一次焼成の温度が1600℃を超えると、成形体中でCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とが反応し、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が分解されて、得られた第一の焼結体は、励起光を照射しても発光しない。一次焼成の温度は、好ましくは1100℃以上℃以上1600℃未満の範囲であり、より好ましくは1100℃以上1580℃以下の範囲であり、さらに好ましくは1200℃以上1570℃以下の範囲であり、よりさらに好ましくは1300℃以上1560℃以下の範囲であり、よりさらに好ましくは1400℃以上1550℃以下の範囲であり、よりさらに好ましくは1400℃以上1540℃以下の範囲であり、よりさらに好ましくは1450℃以上1540℃以下の範囲であり、よりさらに好ましくは、1470℃以上1540℃以下の範囲である。一次焼成の温度は、1400℃以上1500℃以下の範囲内であってもよい。
【0042】
成形体が、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とともに、YAG系蛍光体を含む混合粉体を成形してなる場合は、一次焼成の温度が1000℃以上1500℃以下の範囲であることが好ましい。成形体がCa−α−サイアロン蛍光体とともにYAG系蛍光体を含む混合粉体を成形してなる場合には、一次焼成の温度が1000℃以上1500℃以下の範囲であれば、Ca−α−サイアロン蛍光体とともにYAG系蛍光体を含む混合粉体を成形してなる成形体であっても、成形体に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が分解されることなく、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する光を発する第一の焼結体を得ることができる。Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体とアルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体の一次焼成の温度は、好ましくは1100℃以上1500℃以下の範囲であり、より好ましくは1100℃以上1450℃以下の範囲であり、さらに好ましくは1200℃以上1450℃以下の範囲である。
【0043】
一次焼成は、加圧や荷重をかけずに非酸化性雰囲気のもとで焼成を行う雰囲気焼結法、非酸化性雰囲気のもと加圧下で焼成を行う雰囲気加圧焼結法、ホットプレス焼結法、放電プラズマ焼結法(SPS:Spark Plasma Sintering)が挙げられる。
【0044】
一次焼成は、窒素ガスを含む雰囲気のもとで行なうことが好ましい。窒素ガスを含む雰囲気は、少なくとも99体積%以上の窒素ガスを含む雰囲気である。窒素ガスを含む雰囲気中の窒素ガスは、99体積%以上であることが好ましく、より好ましくは99.5体積%以上である。窒素ガスを含む雰囲気中には、窒素ガスの他に、酸素等の微量のガスが含まれていてもよいが、窒素ガスを含む雰囲気中の酸素の含有量は、1体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%以下、さらに好ましくは0.1体積%以下、よりさらに好ましくは0.01体積%以下、特に好ましくは0.001体積%以下である。一次焼成の雰囲気が窒素ガスを含む雰囲気であると、一次焼成におけるCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造の劣化が抑制され、結晶構造を維持したCa−α−サイアロン蛍光体を含む第一の焼結体を得ることができる。
【0045】
一次焼成の雰囲気圧力は、0.2MPa以上200MPa以下の範囲であることが好ましい。雰囲気圧力は、ゲージ圧をいう。一次焼成は、0.2MPa以上200MPa以下の範囲の雰囲気圧力下で行うことが好ましい。酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体は高温になるほど分解し易くなるが、一次焼成を0.2MPa以上200MPa以下の加圧雰囲気で行うことにより、Ca−α−サイアロン蛍光体の分解がより抑制されて、高い発光強度を有する第一の焼結体が得られる。雰囲気圧力はゲージ圧として、0.2MPa以上1.0MPa以下がより好ましく、0.8MPa以上1.0MPa以下がさらに好ましい。
【0046】
一次焼成の時間は、雰囲気圧力に応じて適宜選択すればよい。熱処理の時間は、例えば0.5時間以上20時間以下であり、1時間以上10時間以下が好ましい。
【0047】
図2は、第一の実施形態に係り、好ましい波長変換部材の製造方法の工程順序の一例を示すフローチャートである。好ましい波長変換部材の製造方法は、成形体準備工程S202と、一次焼成工程S203と、二次焼成工程S204を含む。好ましい波長変換部材の製造方法は、成形体準備工程S202の前に、粉体混合工程S201を含んでいてもよく、二次焼成工程S204の後に、波長変換部材を加工する加工工程S205を含んでいてもよい。
【0048】
二次焼成工程
二次焼成工程は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とを含む混合粉体を成形した成形体を一次焼成して得られた第一の焼結体をHIP処理により1000℃以上1600℃以下の範囲の温度で二次焼成し、第二の焼結体を得る工程である。二次焼成工程において、HIP処理により、第一の焼結体に含有される空隙をより少なくし、第二の焼結体の密度を高めることができる。HIP処理により得られる密度の高い第二の焼結体は、透明性がより高くなる。二次焼成工程によって得られる第二の焼結体は、より焼結体の密度を高めることができ、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する光を発し、波長変換部材として用いることができる。
【0049】
二次焼成の温度は、1000℃以上1600℃以下の範囲である。二次焼成の温度が1000℃未満であると、二次焼成を行っても第一の焼結体よりも高い相対密度を有する第二の焼結体を得ることができない。二次焼成の温度が1600℃を超えると、第一の焼結体中でCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とが反応し、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造の一部が分解されてしまい、得られた第二の焼結体の発光強度が低くなる。二次焼成の温度は、好ましくは1100℃以上1580℃以下の範囲であり、より好ましくは1200℃以上1570℃以下の範囲であり、さらに好ましくは1300℃以上1560℃以下の範囲であり、よりさらに好ましくは1400℃以上1550℃以下の範囲である。
【0050】
第一の焼結体が、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子とともに、YAG系蛍光体を含む混合粉体を成形した成形体からなる場合は、二次焼成の温度が1000℃以上1500℃以下の範囲であることが好ましい。第一の焼結体が、Ca−α−サイアロン蛍光体とともにYAG系蛍光体を含む場合には、二次焼成の温度が1000℃以上1500℃以下の範囲であれば、Ca−α−サイアロン蛍光体とともにYAG系蛍光体を成形体中に含み、YAG系蛍光体に微量に含まれる、例えば製造工程でフラックスとして機能していたフッ素を含む化合物が残留している場合であっても、微量に残留しているフッ素を含む化合物によってCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が分解されることなく、焼結体の密度を高めることができる。Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体とアルミナ粒子とを含む第一の焼結体の二次焼成の温度は、好ましくは1100℃以上1500℃以下の範囲であり、より好ましくは1100℃以上1450℃以下の範囲であり、さらに好ましくは1200℃以上1450℃以下の範囲である。
【0051】
二次焼成は、不活性ガス雰囲気のもとで行なうことが好ましい。不活性ガス雰囲気とは、アルゴン、ヘリウム、窒素等を雰囲気中の主成分とする雰囲気を意味する。ここでアルゴン、ヘリウム、窒素等を雰囲気中の主成分とするとは、雰囲気中に、アルゴン、ヘリウム及び窒素からなる群から選択される少なくとも1種の気体を50体積%以上含むことをいう。不活性ガス雰囲気中の酸素の含有量は、1体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%以下、さらに好ましくは0.1体積%以下、よりさらに好ましくは0.01体積%以下、特に好ましくは0.001体積%以下である。不活性ガス雰囲気は、一次焼成における窒素ガスを含む雰囲気と同様の雰囲気であってもよく、窒素ガスを含む雰囲気中に含まれる窒素ガスの含有量は、好ましくは99体積%以上、より好ましくは99.5体積%以上である。二次焼成の雰囲気が不活性ガス雰囲気であると、二次焼成におけるCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造の劣化が抑制され、結晶構造を維持したCa−α−サイアロン蛍光体を含む第二の焼結体を得ることができる。
【0052】
二次焼成を行うHIP処理における圧力は、好ましくは50MPa以上300MPa以下であり、より好ましくは80MPa以上200MPa以下である。HIP処理における圧力が前記範囲であると、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造を劣化させることなく、焼結体の全体を均一に、より高い密度にすることができる。
【0053】
二次焼成を行うHIP処理の時間は、例えば0.5時間以上20時間以下であり、1時間以上10時間以下が好ましい。
【0054】
加工工程
波長変換部材の製造方法において、得られた第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換部材を加工する加工工程を含んでいてもよい。加工工程は、得られた波長変換部材を所望の大きさに切断加工する工程等が挙げられる。波長変換部材の切断方法は、公知の方法を利用することができ、例えば、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ワイヤーソー等が挙げられる。これらのうち、切断面が高精度に平らになる点からワイヤーソーが好ましい。加工工程によって、所望の厚さや大きさの波長変換部材を得ることができる。波長変換部材の厚さは特に制限されないが、機械的強度や波長変換効率を考慮して、好ましくは1μm以上1mm以下の範囲、より好ましくは10μm以上800μm以下、さらに好ましくは50μm以上500μm以下、よりさらに好ましくは100μm以上400μm以下の範囲である。
【0055】
第一の焼結体の相対密度
第一の実施形態の波長変換部材の製造方法において、一次焼成工程において得られる第一の焼結体は、相対密度が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは91%以上、特に好ましくは92%以上である。第一の焼結体の相対密度は100%であってもよく、第一の焼結体の相対密度は、99%以下であるか、98%以下であってもよい。第一の焼結体の相対密度が80%以上であることによって、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する波長変換部材として用いることができる。また、一次焼成後に二次焼成を行う場合には、第一の焼結体の相対密度が80%以上であることによって、一次焼成後の二次焼成においてさらに第二の焼結体の密度を高めることができ、波長変換部材の空隙が少なくなり、空隙内での光の散乱が抑制されるため、光変換効率の高い波長変換部材を製造することができる。波長変換部材が、第一の焼結体からなるものである場合には、波長変換部材の相対密度は、第一の焼結体の相対密度と同じである。
【0056】
本明細書において第一の焼結体の相対密度とは、第一の焼結体の真密度に対する第一の焼結体の見掛け密度により算出される値をいう。相対密度は、下記式(1)により算出される。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
第一の焼結体がCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナ粒子からなる場合は、第一の焼結体の真密度は、第一の焼結体を構成する成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の質量割合にCa−α−サイアロン蛍光体の真密度を乗じて得られた値と、前記成形体用の混合粉体100質量%に対するアルミナ粒子の質量割合にアルミナ粒子の真密度を乗じて得られた値との和である。第一の焼結体の真密度は、下記式(2−1)より算出される。
第一の焼結体の真密度=(成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の質量割合×Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するアルミナ粒子の質量割合×アルミナ粒子の真密度) (2−1)
第一の焼結体がCa−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体とアルミナ粒子からなる場合には、第一の焼結体の真密度は、第一の焼結体を構成する成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の質量割合にCa−α−サイアロン蛍光体の真密度を乗じて得られた値と、前記成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG系蛍光体の質量割合にYAG系蛍光体の真密度を乗じて得られた値と、前記成形体用の混合粉体100質量%に対するアルミナ粒子の質量割合にアルミナ粒子の真密度を乗じて得られた値との和である。第一の焼結体の真密度は、下記式(2−2)より算出される。
第一の焼結体の真密度=(成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の質量割合×Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG系蛍光体の質量割合×YAG系蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するアルミナ粒子の質量割合×アルミナ粒子の真密度) (2−2)
第一の焼結体の見掛け密度は、第一の焼結体の質量をアルキメデス法によって求められる第一の焼結体の体積で除した値をいう。第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出される。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0057】
第二の焼結体の相対密度
二次焼成後に得られる第二の焼結体は、相対密度が、好ましくは90%以上、より好ましくは91%以上、さらに好ましくは92%以上、よりさらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。第二の焼結体からなる波長変換部材の相対密度が90%以上であることによって、波長変換部材の空隙が少なくなり、光変換効率を高くすることができる。また、第二の焼結体の相対密度が90%以上であることによって、例えば加工工程において、加工を行っても欠けたりすることなく、加工した第二の焼結体からなる波長変換部材を得ることができる。第二の焼結体の相対密度は100%であってもよく、第二の焼結体の相対密度は、99.9%以下であるか、99.8%以下であってもよい。
【0058】
本明細書において第二の焼結体の相対密度とは、第二の焼結体の真密度に対する第二の焼結体の見掛け密度により算出される値をいう。波長変換部材が、第二の焼結体からなるものである場合には、波長変換部材の相対密度は、第二の焼結体の相対密度と同じである。相対密度は、下記式(4)により算出される。
相対密度(%)=(第二の焼結体の見掛け密度÷第二の焼結体の真密度)×100 (4)
第二の焼結体の真密度の算出方法は、第一の焼結体の真密度と同様の方法によって算出される。第二の焼結体の真密度は、第一の焼結体の真密度と同じ値である。
第二の焼結体の見掛け密度は、第二の焼結体の質量をアルキメデス法によって求められる第二の焼結体の体積で除した値をいう。第二の焼結体の見掛け密度は、下記式(5)により算出される。
第二の焼結体の見掛け密度=第二の焼結体の質量÷第二の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (5)
【0059】
得られる第一の焼結体又は第二の焼結体は、励起光の照射によって所望の発光ピーク波長を有する光を発することができ、波長変換部材として用いることができる。相対密度が90%以上の第一の焼結体又は第二の焼結体は、相対発光強度を高くすることができ、光変換効率を高くすることができる。
【0060】
波長変換部材
波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含み、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上であると、所望の変換効率が得られる。波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が多いと、波長変換部材中の体積当たりのCa−α−サイアロン蛍光体の粉体の含有量が多すぎて、所望の色調及び変換効率を得るために波長変換部材の体積を小さくする必要があり、例えば得られた波長変換部材の体積を小さくするために厚さを薄くしなければならず、取り扱いが困難となる。また、波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が多いと、相対的に波長変換部材中のアルミナの量が減少し、波長変換部材中でCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナの密着性が低下して空隙が形成され、光変換効率が低下する場合がある。波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量は、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)を用いて、Ca−α−サイアロン蛍光体を構成する元素の元素分析を行い、得られた元素分析の結果から波長変換部材に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体の含有量を測定することができる。波長変換部材に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体は、前記式(I)又は(II)で表される組成を有するCa−α−サイアロン蛍光体であることが好ましい。
【0061】
波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体と、アルミナ粒子と、さらにYAG系蛍光体を含む場合には、YAG系蛍光体及びCa−α−サイアロン蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。波長変換部材中にCa−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体とを含む場合には、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下であって、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲を満たす場合には、励起光の照射によって所望の色調の発光が得られる。Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下であって、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲を満す範囲であれば、例えば、波長変換部材中のYAG系蛍光体の含有量が69.9質量%であってもよく、0.1質量%であってもよい。波長変換部材中に含まれるYAG系蛍光体は、(Y,Gd,Tb,Lu)Al12:Ceで表される希土類アルミン酸塩蛍光体を用いることができる。波長変換部材中に含まれるYAG系蛍光体は、前記式(III)で表されるYAG系蛍光体であることが好ましい。波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量は、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)を用いて、Ca−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体を構成する元素の元素分析を行い、得られた元素分析の結果から波長変換部材に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体及びYAG系蛍光体の合計の含有量を測定することができる。
【0062】
波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体又はYAG系蛍光体は、波長変換部材中のアルミナとは、Ca−α−サイアロン蛍光体又はYAG系蛍光体の粒界によって区別される。波長変換部材中には、アルミナの結晶構造とは結晶構造が異なるCa−α−サイアロン蛍光体又はYAG系蛍光体が存在し、アルミナとCa−α−サイアロン蛍光体と必要に応じてYAG系蛍光体が一体となってセラミックスの波長変換部材が構成される。本発明の第二の実施形態に係る波長変換部材は、本発明の第一の実施形態に係る製造方法によって得られる第一の焼結体からなる波長変換部材又は第二の焼結体からなる波長変換部材であることが好ましい。本発明の第一の実施形態に係る製造方法によって得られる第一の焼結体からなる波長変換部材又は第二の焼結体からなる波長変換部材は、相対密度が80%以上であることが好ましい。波長変換部材の相対密度が80%以上であることによって、波長変換部材は、発光強度が高く、光変換効率が高くなる。また、波長変換部材は、相対密度が80%以上であることによって、セラミックスの波長変換部材は切断等の加工を施した場合であっても、割れや欠けを生じることなく、波長変換部材を発光装置に用いた場合に、色むらの発生を抑制することができる。波長変換部材の相対密度は、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは91%以上、特に好ましくは92%以上である。波長変換部材の相対密度は、100%であってもよく、99.9%以下であるか、99.8%以下である。
【0063】
第一の実施形態の製造方法によって得られる波長返変換部材又は第二の実施形態に係る波長変換部材は、LEDやLDの発光素子と組み合わせることによって、発光素子から発せられた励起光を変換して、所望の発光ピーク波長を有する光を発し、発光素子からの光と波長変換部材で波長変換された光によって、混色光を発する発光装置を構成することが可能となる。発光素子は、例えば、350nm以上500nm以下の波長範囲の光を発する発光素子を用いることができる。発光素子には、例えば、窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることができる。励起光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例1から22は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含む第一の焼結体からなる波長変換部材又はCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含む第二の焼結体からなる波長変換部材を製造した。比較例1から5は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ以外の金属酸化物とを含む第一の焼結体を製造した。
【0066】
実施例1
粉体混合工程
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒径13.0μmのCa−α−サイアロン蛍光体(品名:アロンブライト 品種YL―600、デンカ株式会社製)を1質量部(成形体用の混合粉体100質量%に対してCa−α−サイアロン蛍光体を1質量%)と、FSSS法により測定した平均粒径が0.5μmのα−アルミナ粒子(品名:AA03、住友化学工業株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)99質量部とを秤量し、乳鉢及び乳棒を用いて混合し、成形体用の混合粉体を準備した。表1又は表2において、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合を示す。表1又は表2において、各実施例におけるアルミナ粒子の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%からCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)を減じた残部である。
【0067】
成形体準備工程
混合粉体を金型に充填し、圧力4.6MPa(46.9kgf/cm)で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間等方圧加圧(CIP)装置(KOBELCO社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
【0068】
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、0.9MPa、1500℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。得られた第一の焼結体1を波長変換部材とした。実施例1の第一の焼結体1からなる波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。
【0069】
実施例2
Ca-α−サイアロン蛍光体を3質量部と、α−アルミナ粒子を97質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体2を得て、波長変換部材とした。実施例2から22において、第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。
【0070】
実施例3
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体3を得て、波長変換部材とした。
【0071】
実施例4
Ca-α−サイアロン蛍光体を10質量部と、α−アルミナ粒子を90質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体4を得て、波長変換部材とした。
【0072】
実施例5
Ca-α−サイアロン蛍光体を20質量部と、α−アルミナ粒子を80質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体5を得て、波長変換部材とした。
【0073】
実施例6
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、一次焼成温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体6を得て、波長変換部材とした。
【0074】
実施例7
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、一次焼成温度を1450℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体7を得て、波長変換部材とした。
【0075】
実施例8
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、一次焼成温度を1550℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体8を得て、波長変換部材とした。
【0076】
実施例9
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、二次焼成温度を1600℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体9を得て、波長変換部材とした。
【0077】
実施例10
二次焼成工程
実施例1で得られた第一の焼結体1を用い、熱間等方圧加圧(HIP)装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1500℃、195MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体10を得て、この第二の焼結体10を波長変換部材とした。
【0078】
実施例11
二次焼成工程
実施例2で得られた第一の焼結体2を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体11を得て、この第二の焼結体11を波長変換部材とした。
【0079】
実施例12
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体12を得て、この第二の焼結体12を波長変換部材とした。
【0080】
実施例13
二次焼成工程
実施例4で得られた第一の焼結体4を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体13を得て、この第二の焼結体13を波長変換部材とした。
【0081】
実施例14
二次焼成工程
実施例5で得られた第一の焼結体5を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体14を得て、この第二の焼結体14を波長変換部材とした。
【0082】
実施例15
二次焼成工程
実施例6で得られた第一の焼結体6を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体15を得て、この第二の焼結体15を波長変換部材とした。
【0083】
実施例16
二次焼成工程
実施例7で得られた第一の焼結体7を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体16を得て、この第二の焼結体16を波長変換部材とした。
【0084】
実施例17
二次焼成工程
実施例8で得られた第一の焼結体8を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体17を得て、この第二の焼結体17を波長変換部材とした。
【0085】
実施例18
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1400℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体18を得て、この第二の焼結体18を波長変換部材とした。
【0086】
実施例19
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1450℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体19を得て、この第二の焼結体19を波長変換部材とした。
【0087】
実施例20
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1550℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体20を得て、この第二の焼結体20を波長変換部材とした。
【0088】
実施例21
二次焼成工程
実施例9で得られた第一の焼結体9を用い、温度を1500℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体21を得て、この第二の焼結体21を波長変変換部材とした。
【0089】
実施例22
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1600℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体22を得て、この第二の焼結体22を波長変換部材とした。
【0090】
比較例1
粉体混合工程
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化チタン粒子(東邦チタニウム株式会社製、酸化チタン純度99.5質量%、平均サイズ:2.10〜2.55μm(カタログ値))を95質量部とを混合した混合粉体を準備した。表3において、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合を示す。表3において、各比較例における金属酸化物粒子の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%からCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)を減じた残部である。比較例1から5及び後述する式(2−1−1)において、金属酸化物粒子とは、α−アルミナ粒子、酸化チタン粒子、五酸化タンタル粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ハフニウム粒子、又は酸化ジルコニウム粒子のいずれかの金属酸化物粒子をいう。
【0091】
成形体準備工程
混合粉体を金型に充填し、圧力4.6MPa(46.9kgf/cm)で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間等方圧加圧(CIP)装置(KOBELCO社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
【0092】
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、1500℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得たが相対密度は71.0%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も71.0%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。第一の焼結体の相対密度が80%未満の場合は、第一の焼結体に含まれる空隙が多く、HIP処理により二次焼成を行っても得られる第二の焼結体の相対密度を90%以上に高くすることはできないためである。
【0093】
比較例2
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、五酸化タンタル粒子(H.C.Starck株式会社製、五酸化タンタル純度99.5質量%、FSSS法による平均粒径0.7μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は64.3%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も64.3%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0094】
比較例3
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化イットリウム粒子(日本イットリウム株式会社製、酸化イットリウム純度99.5質量%、FSSS法による平均粒径1.8μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は49.6%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も49.6%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0095】
比較例4
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化ハフニウム粒子(株式会社高純度化学製、酸化ハフニウム純度98質量%、FSSS法による平均粒径2.0μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は51.2%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も51.2%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0096】
比較例5
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化ジルコニウム粒子(和光純薬工業株式会社製、酸化ジルコニウム純度99質量%、FSSS法による平均粒径2.0μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は67.0%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も67.0%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0097】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径の測定
各実施例及び比較例に用いたCa−α−サイアロン蛍光体の粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準の粒度分布における小径側からの体積累積頻度が50%に達する粒径(メジアン径)を平均粒径とし、レーザー回折式粒度分布測定装置(MASTER SIZER(マスターサイザー)3000、MALVERN社製)を用いて測定した。
【0098】
FSSS法による平均粒径の測定
実施例に用いたα−アルミナ粒子、並びに比較例に用いた五酸化タンタル粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ハフニウム粒子及び酸化ジルコニウム粒子、は、FSSS法により、平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)を測定した。
【0099】
α−アルミナの純度の測定
実施例に用いたα−アルミナ粒子の質量を測定した後、α−アルミナ粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、α−アルミナ粒子に付着している有機分やα−アルミナ粒子が吸湿している水分を除去し、焼成後のα−アルミナ粒子の質量を測定し、下記式に示すとおり、焼成後のα−アルミナ粒子の質量を焼成前のα−アルミナ粒子の質量で除すことによって、α−アルミナ純度を測定した。
α−アルミナ純度(質量%)=(焼成後のα−アルミナ粒子の質量÷焼成前のα−アルミナ粒子の質量)×100
【0100】
第一の焼結体の相対密度の測定
実施例1から9及び比較例1から5において、各第一の焼結体の相対密度を測定した。実施例1から9の第一の焼結体の見掛け密度及び相対密度を表1に示した。比較例1から5は、実施例1から9の第一の焼結体と同様にして、下記式(1)から(3)に基づき相対密度を算出した。比較例1から5の第一の焼結体の相対密度を表3に示した。
相対密度は下記式(1)により算出した。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
【0101】
第一の焼結体の真密度は、下記式(2−1−1)より算出した。実施例1から9で用いたα−アルミナ粒子の真密度は3.98g/cmとし、比較例1で用いた酸化チタン粒子の真密度は4.26g/cm、比較例2で用いた五酸化タンタル粒子の真密度は8.7g/cm、比較例3で用いた酸化イットリウム粒子の真密度は5.01g/cm、比較例4で用いた酸化ハフニウム粒子の真密度は9.68g/cm、比較例5で用いた酸化ジルコニウム粒子の真密度は5.6g/cm、として算出した。Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度は、3.22g/cmとして算出した。
第一の焼結体の真密度=(成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の質量割合×Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度)+(成形用の混合粉体100質量%に対する金属酸化物粒子の質量割合×金属酸化物粒子の真密度) (2−1−1)
【0102】
実施例1から9の第一の焼結体1から9及び比較例1から5の各第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出した。実施例1から9の各第一の焼結体の質量(g)及びアルキメデス法により求められた体積(cm)を表1に示した。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0103】
第二の焼結体の相対密度の測定
実施例10から22の第二の焼結体10から22の相対密度を下記式(4)及び(5)に基づき測定した。結果を表1に示す。相対密度は下記式(4)により算出した。
相対密度(%)=(第二の焼結体の見掛け密度÷第二の焼結体の真密度)×100 (4)
【0104】
第二の焼結体の真密度の算出方法は、成形体用の混合粉体100質量%に対するα−アルミナ(具体的には粉体混合工程で用いたα−アルミナ粒子)の質量割合にα−アルミナの真密度を乗じて得られた値と、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa-α−サイアロン蛍光体粒子の質量割合にCa-α−サイアロン蛍光体粒子の真密度を乗じて得られた値との和である。Ca-α−サイアロン蛍光体の真密度及びα−アルミナの真密度は、第一の焼結体の真密度の算出方法で用いた数値と同じ数値を用いた。
【0105】
第二の焼結体の見掛け密度は、下記式(5)により算出した。
第二の焼結体の見掛け密度=第二の焼結体の質量÷第二の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (5)
【0106】
相対発光強度の測定
実施例1から9の第一の焼結体からなる波長変換部材、実施例10から22の第二の焼結体からなる波長変換部材、及び比較例1から5の第一の焼結体を、ワイヤーソーを用いて厚さ300μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを光源として用いて、この光源から波長変換部材のサンプルに光を照射し、光源からの光を受けて実施例1から9、実施例10から22、及び比較例1から5の各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を、分光蛍光光度計を用いて測定した。実施例1の波長変換部材のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を相対発光強度(%)として表した。実施例1から9の波長変換部材の結果を表1に示す。実施例10から22の波長変換部材の結果を表2に示す。比較例1から5の第一の焼結体からなるサンプルは、光源から光を照射しても発光しなかった。比較例1から5の第一の焼結体の結果を表3に示す。
【0107】
外観写真
実施例3の波長変換部材の外観写真を得た。図3は、実施例3の波長変換部材をワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。
実施例12の波長変換部材の外観写真を得た。実施例12は、実施例3の第一の焼結体を二次焼成して得られた第二の焼結体からなるものである。図4は、実施例12の波長変換部材をワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。
比較例5の波長変換部材の外観写真を得た。図5は、比較例5の第一の焼結体をワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
実施例1から9の第一の焼結体1から9及び実施例10から22の第二の焼結体10から22は、光源から発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、波長変換部材として用いることができた。
【0112】
表1に示すように、実施例1から5は、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量を1質量%から20質量%に変化させて、一次焼成の温度を1500℃として第一の焼結体1から5を得て波長変換部材としたものである。表1に示すように、実施例2から5の第一の焼結体2から5は、相対密度が92%以上と高く、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が1質量%である実施例1の波長変換部材よりも相対発光強度が高くなった。
【0113】
表1に示すように、実施例6から9に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が5質量%であり、一次焼成の温度を1400℃以上1600℃以下の範囲で変化させて第一の焼結体6から9を得て波長変換部材とした。表1に示すように、実施例6の波長変換部材は、一次焼成の温度が1400℃であり、第一の焼結体6の相対密度が84.5%であり、第一の焼結体6中に空隙が存在すると推測される。このことから実施例6の波長変換部材は、相対発光強度が36.9%であった。表1に示すように、実施例7の波長変換部材は、一次焼成の温度が1450℃であり、第一の焼結体7の相対密度が87.2%であることから、第一の焼結体7中にも空隙が存在すると推測された。実施例7の波長変換部材は、相対密度が87.2%であり、空隙が存在すると推測されることから、相対発光強度が49.6%であった。表1に示すように、実施例8の波長変換部材は、一次焼成の温度が1550℃であり、第一の焼結体8の相対密度が95.0%と高くなり、空隙が抑制され緻密化されていることから、相対発光強度が166.4%と高くなった。実施例9の波長変換部材は、一次焼成の温度が1600℃と高いことから、第一の焼結体9は相対密度が92.9%と高くなった。一次焼成の温度が高いと、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体と、酸化物であるアルミナ粒子とが反応して、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解していると推測された。
【0114】
表2に示すように、実施例10から14に係る波長変換部材は、第一の焼結体1から5をHIP処理により1500℃で二次焼成して得られた第二の焼結体10から14からなるものであり、HIP処理による二次焼成によってより緻密化し、特に実施例11から14に係る波長変換部材は、実施例1の波長変換部材よりも相対発光強度が180%以上高くなった。
【0115】
表2に示すように、実施例14を除き、実施例10から22において、第一の焼結体1から4及び6から9よりも第二の焼結体10から13及び15から22の方が高い相対密度を有していた。実施例14において、第一の焼結体5よりも第二の焼結体14の方が、相対密度が若干小さくなるのは、第一の焼結体5に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が、他の実施例よりも多いため、二次焼成のHIP処理により第一の焼結体5に含まれる閉空孔(クローズドポア)が潰れて緻密化するとともに、Ca−α−サイアロン蛍光体が一部分解、蒸散して、第二の焼結体14に開空孔(オープンポア)が生成されるためと考えられる。すなわち、実施例14の第二の焼結体14は、HIP処理により潰された閉空孔(クローズドポア)の量よりも、HIP処理により生成された開空孔(オープンポア)の量の方が僅かに多いため、第一の焼結体5の相対密度よりも第二の焼結体14の相対密度が僅かに小さくなったと考えられる。
【0116】
表2に示すように、実施例15又は16に係る波長変換部材は、一次焼成の温度が1400℃又は1450℃であり、得られる第一の焼結体6又は7の相対密度が90%以下であり、HIP処理による二次焼成を1500℃で行っても、得られる第二の焼結体15又は16の相対密度が89.0%又は91.7%であった。このことから実施例15又は16に係る波長変換部材は、第一の焼結体6又は7を得るための温度が低いため、HIP処理による二次焼成を行っても得られる第二の焼結体には多数の空隙が存在すると推測された。
【0117】
表2に示すように、実施例17に係る波長変換部材は、一次焼成の温度が1550℃と高く、HIP処理による1500℃の二次焼成により得られる第二の焼結体17は、第一の焼結体8よりも相対密度は高くなった。波長変換部材は、一次焼成の温度が1550℃と高いため、二次焼成の温度が1500℃であっても、一次焼成の段階で、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体が酸化物であるアルミナ粒子と反応しやすくなっており、二次焼成によりCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造のごく一部が分解するためと推測された。このため、波長変換部材は、第二の焼結体がHIP処理による二次焼成によって緻密化されて透明性が高くなっても、一次焼成における温度が高いために二次焼成においてCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造のごく一部が分解されることによって、第一の焼結体よりも発光強度が低くなる場合があると考えられる。
【0118】
表2に示すように、実施例18から20に係る波長変換部材は、二次焼成の温度を1400℃以上1550℃以下の範囲で変化させたものであり、二次焼成の温度が1400℃又は1450℃と一次焼成の温度よりも低い場合であっても、また、二次焼成の温度が1550℃と一次焼成の温度よりも高い場合であっても、98.5%以上の高い相対密度を有する第二の焼結体18から20を得ることができた。第二の焼結体18又は19からなる波長変換部材は、相対発光強度が200%を超えて高くなった。
【0119】
実施例21に係る波長変換部材は、励起光の照射により発光した。実施例21に係る波長変換部材は、一次焼成の温度が1600℃であり、第一の焼結体9の相対発光強度が59.0%であった。一次焼成の温度が高いと、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体と、酸化物であるアルミナ粒子とが反応して、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解する場合があると推測された。波長変換部材は、一次焼成後、HIP処理により二次焼成を行っても、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造の一部が分解していると、相対発光強度が低くなった。
【0120】
実施例22に係る波長変換部材は、励起光の照射により発光した。実施例22に係る波長変換部材は、HIP処理による二次焼成の温度が1600℃と高いため、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体と、酸化物であるアルミナとが反応して、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解すると推測され、相対密度は97.5%と比較的高いものの相対発光強度が119.4%となった。
【0121】
表3に示すように、Ca−α−サイアロン蛍光体をアルミナ以外の酸化物とともに一次焼成を行った比較例1から5に係る第一の焼結体は、いずれも相対密度が71.0%以下であり、励起光を照射しても発光しなかった。
【0122】
実施例3に係る波長変換部材の外観は、全体的に明るいオレンジ色であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の本来の体色を維持していた。図3に示すように、実施例3に係る波長変換部材の外観は、色むらが確認できず、全体的に均質な色であり、一次焼成により波長変換部材中に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体が変質していないことが確認できた。
【0123】
実施例12に係る波長変換部材の外観は、全体的に明るく、実施例3よりも濃いオレンジ色であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の本来の体色を維持していた。実施例12に係る波長変換部材の外観が、実施例3に係る波長変換部材の外観よりも明るく、濃いオレンジ色に見えるのは、HIP処理による二次焼成によって得られる第二の焼結体12の緻密化が進み、透明性が高くなったためと考えられる。図4に示すように、実施例12に係る波長変換部材の外観は、色むらが確認できず、全体的に均質な色であり、一次焼成及びHIP処理による二次焼成によりCa−α−サイアロン蛍光体が変質していないことが確認できた。
【0124】
比較例5に係る第一の焼結体の外観は、全体的に白っぽくところどころ黒っぽく変わっており、Ca−α−サイアロン蛍光体の本来の体色であるオレンジ色を維持していなかった。図5に示すように、比較例5係る第一の焼結体の外観は、ところどころ黒っぽく変わっている色むらが確認でき、一次焼成によってCa−α−サイアロン蛍光体が変質していると推測された。
【0125】
実施例23から41は、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体とアルミナとを含む第一の焼結体からなる波長変換部材を製造した。また、比較例6から9は、YAG系蛍光体とアルミナとを含み、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない第一の焼結体を製造した。
【0126】
YAG蛍光体の製造
酸化イットリウム(Y)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)を目的の組成となるように、それぞれを秤量し、混合して原料混合物とした。フラックスとしてフッ化バリウム(BaF)を原料混合物に添加し、原料混合物とフラックスをボールミルでさらに混合した。この混合物をアルミナルツボに入れ、還元雰囲気下、1500℃で10時間、熱処理して焼成物を得た。焼成物を純水中に分散させ、ふるいを介して振動を加えながら、溶媒(純水)を流して、湿式ふるいを通過させ、次いで、脱水、乾燥して、乾式ふるいを通過させて、分級し、イットリウムアルミニウムガーネット(以下、「YAG」ともいう。)蛍光体を得た。実施例1において、α−アルミナ粒子の平均粒径を測定した方法と同様に、FSSS法により、YAG蛍光体の平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)を測定した。YAG蛍光体の平均粒径は、5μmであった。
【0127】
YAG蛍光体の組成分析
得られたYAG蛍光体について、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)(Perkin Elmer(パーキンエルマー)社製)により、YAG蛍光体を構成する酸素を除く各元素(Y、Gd、Ce、Al)の質量百分率(質量%)を測定し、各元素の質量百分率の値からYAG蛍光体の組成における各元素のモル比を算出した。Y、Gd、Ceのモル比は、測定されたAlのモル比を5とし、Alのモル比5を基準として算出した。YAG蛍光体の組成比は、(Y0.575Gd0.400Ce0.025Al12であった。
【0128】
実施例23
粉体混合工程
得られたFSSS法により測定した平均粒径5μmの(Y0.575Gd0.400Ce0.025Al12で表されるYAG蛍光体を10質量部(成形用の混合粉体100質量%に対して10質量%)と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒径13.0μmのCa−α−サイアロン蛍光体(品名:アロンブライト 品種YL―600、デンカ株式会社製)を3質量部(成形用の混合粉体100質量%に対してCa−α−サイアロン蛍光体を3質量%)と、FSSS法により測定した平均粒径が0.5μmのα−アルミナ粒子(品名:AA03、住友化学工業株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)87質量部と、を秤量し、乳鉢及び乳棒を用いて混合し、成形体用の混合粉体を準備した。表4から8において、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合を示す。また、表4から8において、YAG蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の仕込みの質量割合を示す。表4から表8において、各実施例及び各比較例におけるアルミナ粒子の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%からCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)及びYAG蛍光体の含有量(質量%)の合計量を減じた残部である。
【0129】
成形体準備工程
成形体用の混合粉体を金型に充填し、圧力4.6MPa(46.9kgf/cm)の圧力で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間等方圧加圧(CIP)装置(KOBELCO社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
【0130】
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、0.9MPa、1300℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。得られた第一の焼結体を実施例23に係る波長変換部材とした。実施例23から41において、第一の焼結体からなる波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しく、YAG蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。また、比較例6から9において、第一の焼結体中のYAG蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。
【0131】
実施例24
一次焼成工程における焼成温度を1400℃にしたこと以外は、実施例23と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例24に係る波長変換部材とした。
【0132】
実施例25
一次焼成工程における焼成温度を1450℃にしたこと以外は、実施例23と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例25に係る波長変換部材とした。
【0133】
実施例26
一次焼成工程における焼成温度を1500℃にしたこと以外は、実施例23と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例26に係る波長変換部材とした。
【0134】
実施例27
YAG蛍光体を5質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体1質量部と、α−アルミナ粒子94質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例27に係る波長変換部材とした。
【0135】
実施例28
YAG蛍光体を5質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を3質量部とし、α−アルミナ粒子92質量部としたこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例28に係る波長変換部材とした。
【0136】
実施例29
YAG蛍光体を5質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子85質量部としたこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例29に係る波長変換部材とした。
【0137】
実施例30
YAG蛍光体を5質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子75質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例30に係る波長変換部材とした。
【0138】
比較例6
YAG蛍光体を5質量部とし、α−アルミナ粒子95質量部としたこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例6に係る波長変換部材とした。比較例6に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0139】
実施例31
YAG蛍光体を10質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体を1質量部と、α−アルミナ粒子89質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例31に係る波長変換部材とした。
【0140】
実施例32
YAG蛍光体を10質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子を80質量部としたこと以外は、実施例31と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例32に係る波長変換部材とした。
【0141】
実施例33
YAG蛍光体を10質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子70質量部としたこと以外は、実施例31と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例33に係る波長変換部材とした。
【0142】
比較例7
YAG蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子90質量部としたこと以外は、実施例31と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例7に係る波長変換部材とした。比較例7に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0143】
実施例34
YAG蛍光体を20質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体を1質量部と、α−アルミナ粒子79質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例34に係る波長変換部材とした。
【0144】
実施例35
YAG蛍光体を20質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を3質量部とし、α−アルミナ粒子77質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例35に係る波長変換部材とした。
【0145】
実施例36
YAG蛍光体を20質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子を70質量部としたこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例36に係る波長変換部材とした。
【0146】
実施例37
YAG蛍光体を20質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子60質量部としたこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例37に係る波長変換部材とした。
【0147】
比較例8
YAG蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子80質量部としたこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例8に係る波長変換部材とした。比較例8に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0148】
実施例38
YAG蛍光体を30質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体を1質量部と、α−アルミナ粒子69質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例38に係る波長変換部材とした。
【0149】
実施例39
YAG蛍光体を30質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を3質量部とし、α−アルミナ粒子67質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例39に係る波長変換部材とした。
【0150】
実施例40
YAG蛍光体を30質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子を60質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例40に係る波長変換部材とした。
【0151】
実施例41
YAG蛍光体を30質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子50質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例41に係る波長変換部材とした。
【0152】
比較例9
YAG蛍光体を30質量部とし、α−アルミナ粒子70質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例9に係る波長変換部材とした。比較例9に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0153】
第一の焼結体の相対密度の測定
実施例23から41及び比較例6から9において、各第一の焼結体の相対密度を下記式(1)から(3)に基づき測定した。表4に、実施例23から26の第一の焼結体の相対密度を示した。表5に、実施例27から30及び比較例6の第一の焼結体の相対密度を示した。表6に、実施例31から33及び比較例7の第一の焼結体の相対密度を示した。表7に、実施例34から37及び比較例8の第一の焼結体の相対密度を示した。表8に、実施例38から41及び比較例9の第一の焼結体の相対密度を示した。
相対密度は、下記式(1)により測定した。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
【0154】
第一の焼結体の真密度は、下記式(2−2)より算出した。各実施例及び比較例で用いたα−アルミナ粒子の真密度は3.98g/cmとした。Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度は3.22g/cmとした。YAG蛍光体の真密度は、4.77g/cmであった。YAG蛍光体の真密度は、乾式自動密度計(商品名:アキュビック1330、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
第一の焼結体の真密度=(成形体用の混合粉体100質量%に対するCa-α−サイアロン蛍光体の質量割合×Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の質量割合×YAG蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するアルミナ粒子の質量割合×アルミナ粒子の真密度) (2−2)
【0155】
第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出した。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0156】
相対発光強度及び色度の測定
各実施例及び比較例の第一の焼結体からなる波長変換部材を、ワイヤーソーを用いて厚さ300μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを光源として用いて、この光源から波長変換部材のサンプルに光を照射し、光源からの光を受けて各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度及び色度(CIE色度座標におけるx値、y値)を、分光蛍光光度計を用いて測定した。相対密度が90%を超える波長変換部材の中には、光源から発せられた青色光が透過しているものもあった。実施例23から41及び比較例6から9の色度は、各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光スペクトルのうち490nm以下の範囲の青色光の発光スペクトルを除いて測定した色度(x値、y値)である。
【0157】
表4に、実施例23から26に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例23から26の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例25の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例23から26の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0158】
表5に、実施例27から30及び比較例6に係る波長変換部材中の第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例27から30及び比較例6の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例30の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例27から30及び比較例6の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0159】
表6に、実施例31から33及び比較例7に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例31から33及び比較例7の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例33の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例31から33及び比較例7の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0160】
表7に、実施例34から37及び比較例8に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例34から37及び比較例8の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例37の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例34から37及び比較例8の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0161】
表8に、実施例38から41及び比較例9に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例38から41及び比較例9の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例40の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例38から41及び比較例9の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0162】
図6は、実施例23から26に係る第一の焼結体からなる波長変換部材の色度(x値、y値)をCIE色度座標上にプロットした図である。図7は、実施例27から30に係る第一の焼結体からなる波長変換部材及び比較例6の第一の焼結体の色度(x値、y値)をCIE色度座標上にプロットした図である。
【0163】
【表4】
【0164】
表4に示すように、実施例23から26に係る波長変換部材は、一次焼成の温度を1300℃から1500℃に変化させて得られた第一の焼結体からなり、一次焼成の温度が高くなると、相対密度が高くなり、相対発光強度が高くなった。
【0165】
表4及び図6に示すように、実施例26に係る波長変換部材は、実施例23から25に係る波長変換部材と比べて、色度が短波長側に移動していた。実施例26の波長変換部材は、相対密度が93.1%と高いため、光源から発せられた青色光が明らかに透過していた。図6に示す各実施例の色度x値とy値は、光源から発せられた青色光を除いて測定した色度であるが、実施例26の波長変換部材の色度が短波長側へ移動したのは、一次焼成の温度が1500℃と比較的高いため、YAG蛍光体に微量に含まれる例えばフッ素を含む化合物によって、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解して劣化し、YAG蛍光体のみが励起光の照射により発光したためと推測された。
【0166】
【表5】
【0167】
表5に示すように、実施例27から30に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が5質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から10質量%の範囲で増加すると相対密度及び相対発光強度が高くなった。実施例27から30に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、波長変換部材として用いることができた。
【0168】
表5及び図7に示すように、実施例27から30に係る波長変換部材は、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有し、比較例6と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0169】
比較例6の波長変換部材は、相対密度が90.3%と高いため、光源から発せられた青色光が明らかに透過していた。表5及び図7に示す各実施例及び比較例の色度x値とy値は、光源から発せられた青色光を除いて測定した色度であるが、比較例6の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例27から30に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【0170】
【表6】
【0171】
表6に示すように、実施例31から33に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が10質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から20質量%の範囲で増加すると相対密度及び相対発光強度が高くなった。実施例31から33に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、比較例7と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0172】
表6に示すように、比較例7の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例31から33に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【0173】
【表7】
【0174】
表7に示すように、実施例34から37に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が20質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から10質量%の範囲で増加すると相対密度及び相対発光強度が高くなった。実施例34から37に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、比較例8と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0175】
表7に示すように、比較例8の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例34から37に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【0176】
【表8】
【0177】
表8に示すように、実施例38から41に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が30質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から10質量%の範囲で増加すると相対密度が高くなった。また、実施例38から41に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が30質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から20質量%の範囲で増加すると相対発光強度が高くなった。実施例38から41に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有し、比較例9と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0178】
表8に示すように、比較例9の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例38から41に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本開示に係る波長変換部材は、励起光の照射により発光し、LEDやLDから発せられた光の波長を変換することができる波長変換部材、固体シンチレーターの材料として利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7