【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
実施例1から22は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含む第一の焼結体からなる波長変換部材又はCa−α−サイアロン蛍光体とアルミナとを含む第二の焼結体からなる波長変換部材を製造した。比較例1から5は、Ca−α−サイアロン蛍光体とアルミナ以外の金属酸化物とを含む第一の焼結体を製造した。
【0066】
実施例1
粉体混合工程
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒径13.0μmのCa−α−サイアロン蛍光体(品名:アロンブライト 品種YL―600、デンカ株式会社製)を1質量部(成形体用の混合粉体100質量%に対してCa−α−サイアロン蛍光体を1質量%)と、FSSS法により測定した平均粒径が0.5μmのα−アルミナ粒子(品名:AA03、住友化学工業株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)99質量部とを秤量し、乳鉢及び乳棒を用いて混合し、成形体用の混合粉体を準備した。表1又は表2において、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合を示す。表1又は表2において、各実施例におけるアルミナ粒子の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%からCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)を減じた残部である。
【0067】
成形体準備工程
混合粉体を金型に充填し、圧力4.6MPa(46.9kgf/cm
2)で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間等方圧加圧(CIP)装置(KOBELCO社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
【0068】
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、0.9MPa、1500℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。得られた第一の焼結体1を波長変換部材とした。実施例1の第一の焼結体1からなる波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。
【0069】
実施例2
Ca-α−サイアロン蛍光体を3質量部と、α−アルミナ粒子を97質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体2を得て、波長変換部材とした。実施例2から22において、第一の焼結体又は第二の焼結体からなる波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。
【0070】
実施例3
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体3を得て、波長変換部材とした。
【0071】
実施例4
Ca-α−サイアロン蛍光体を10質量部と、α−アルミナ粒子を90質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体4を得て、波長変換部材とした。
【0072】
実施例5
Ca-α−サイアロン蛍光体を20質量部と、α−アルミナ粒子を80質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体5を得て、波長変換部材とした。
【0073】
実施例6
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、一次焼成温度を1400℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体6を得て、波長変換部材とした。
【0074】
実施例7
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、一次焼成温度を1450℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体7を得て、波長変換部材とした。
【0075】
実施例8
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、一次焼成温度を1550℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体8を得て、波長変換部材とした。
【0076】
実施例9
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、α−アルミナ粒子を95質量部とを混合した混合粉体を準備し、二次焼成温度を1600℃とした以外は、実施例1と同様にして、第一の焼結体9を得て、波長変換部材とした。
【0077】
実施例10
二次焼成工程
実施例1で得られた第一の焼結体1を用い、熱間等方圧加圧(HIP)装置(KOBELCO社製)を用いて、圧力媒体に窒素ガスを用いて窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)のもとで、1500℃、195MPa、2時間、HIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体10を得て、この第二の焼結体10を波長変換部材とした。
【0078】
実施例11
二次焼成工程
実施例2で得られた第一の焼結体2を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体11を得て、この第二の焼結体11を波長変換部材とした。
【0079】
実施例12
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体12を得て、この第二の焼結体12を波長変換部材とした。
【0080】
実施例13
二次焼成工程
実施例4で得られた第一の焼結体4を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体13を得て、この第二の焼結体13を波長変換部材とした。
【0081】
実施例14
二次焼成工程
実施例5で得られた第一の焼結体5を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体14を得て、この第二の焼結体14を波長変換部材とした。
【0082】
実施例15
二次焼成工程
実施例6で得られた第一の焼結体6を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体15を得て、この第二の焼結体15を波長変換部材とした。
【0083】
実施例16
二次焼成工程
実施例7で得られた第一の焼結体7を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体16を得て、この第二の焼結体16を波長変換部材とした。
【0084】
実施例17
二次焼成工程
実施例8で得られた第一の焼結体8を用い、実施例10と同様にしてHIP処理を行い、第二の焼結体17を得て、この第二の焼結体17を波長変換部材とした。
【0085】
実施例18
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1400℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体18を得て、この第二の焼結体18を波長変換部材とした。
【0086】
実施例19
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1450℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体19を得て、この第二の焼結体19を波長変換部材とした。
【0087】
実施例20
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1550℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体20を得て、この第二の焼結体20を波長変換部材とした。
【0088】
実施例21
二次焼成工程
実施例9で得られた第一の焼結体9を用い、温度を1500℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体21を得て、この第二の焼結体21を波長変変換部材とした。
【0089】
実施例22
二次焼成工程
実施例3で得られた第一の焼結体3を用い、温度を1600℃にしたこと以外は、実施例10と同様にしてHIP処理により二次焼成を行い、第二の焼結体22を得て、この第二の焼結体22を波長変換部材とした。
【0090】
比較例1
粉体混合工程
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化チタン粒子(東邦チタニウム株式会社製、酸化チタン純度99.5質量%、平均サイズ:2.10〜2.55μm(カタログ値))を95質量部とを混合した混合粉体を準備した。表3において、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合を示す。表3において、各比較例における金属酸化物粒子の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%からCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)を減じた残部である。比較例1から5及び後述する式(2−1−1)において、金属酸化物粒子とは、α−アルミナ粒子、酸化チタン粒子、五酸化タンタル粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ハフニウム粒子、又は酸化ジルコニウム粒子のいずれかの金属酸化物粒子をいう。
【0091】
成形体準備工程
混合粉体を金型に充填し、圧力4.6MPa(46.9kgf/cm
2)で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間等方圧加圧(CIP)装置(KOBELCO社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
【0092】
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、1500℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得たが相対密度は71.0%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も71.0%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。第一の焼結体の相対密度が80%未満の場合は、第一の焼結体に含まれる空隙が多く、HIP処理により二次焼成を行っても得られる第二の焼結体の相対密度を90%以上に高くすることはできないためである。
【0093】
比較例2
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、五酸化タンタル粒子(H.C.Starck株式会社製、五酸化タンタル純度99.5質量%、FSSS法による平均粒径0.7μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は64.3%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も64.3%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0094】
比較例3
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化イットリウム粒子(日本イットリウム株式会社製、酸化イットリウム純度99.5質量%、FSSS法による平均粒径1.8μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は49.6%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も49.6%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0095】
比較例4
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化ハフニウム粒子(株式会社高純度化学製、酸化ハフニウム純度98質量%、FSSS法による平均粒径2.0μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は51.2%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も51.2%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0096】
比較例5
Ca-α−サイアロン蛍光体を5質量部と、酸化ジルコニウム粒子(和光純薬工業株式会社製、酸化ジルコニウム純度99質量%、FSSS法による平均粒径2.0μm)を95質量部とを混合した混合粉体を準備したこと以外は、比較例1と同様にして、第一の焼結体を得たが相対密度は67.0%であった。第一の焼結体の発光は確認できなかった。発光が確認できず、相対密度も67.0%と小さかったため、第一の焼結体のHIP処理は実施しなかった。
【0097】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径の測定
各実施例及び比較例に用いたCa−α−サイアロン蛍光体の粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準の粒度分布における小径側からの体積累積頻度が50%に達する粒径(メジアン径)を平均粒径とし、レーザー回折式粒度分布測定装置(MASTER SIZER(マスターサイザー)3000、MALVERN社製)を用いて測定した。
【0098】
FSSS法による平均粒径の測定
実施例に用いたα−アルミナ粒子、並びに比較例に用いた五酸化タンタル粒子、酸化イットリウム粒子、酸化ハフニウム粒子及び酸化ジルコニウム粒子、は、FSSS法により、平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)を測定した。
【0099】
α−アルミナの純度の測定
実施例に用いたα−アルミナ粒子の質量を測定した後、α−アルミナ粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、α−アルミナ粒子に付着している有機分やα−アルミナ粒子が吸湿している水分を除去し、焼成後のα−アルミナ粒子の質量を測定し、下記式に示すとおり、焼成後のα−アルミナ粒子の質量を焼成前のα−アルミナ粒子の質量で除すことによって、α−アルミナ純度を測定した。
α−アルミナ純度(質量%)=(焼成後のα−アルミナ粒子の質量÷焼成前のα−アルミナ粒子の質量)×100
【0100】
第一の焼結体の相対密度の測定
実施例1から9及び比較例1から5において、各第一の焼結体の相対密度を測定した。実施例1から9の第一の焼結体の見掛け密度及び相対密度を表1に示した。比較例1から5は、実施例1から9の第一の焼結体と同様にして、下記式(1)から(3)に基づき相対密度を算出した。比較例1から5の第一の焼結体の相対密度を表3に示した。
相対密度は下記式(1)により算出した。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
【0101】
第一の焼結体の真密度は、下記式(2−1−1)より算出した。実施例1から9で用いたα−アルミナ粒子の真密度は3.98g/cm
3とし、比較例1で用いた酸化チタン粒子の真密度は4.26g/cm
3、比較例2で用いた五酸化タンタル粒子の真密度は8.7g/cm
3、比較例3で用いた酸化イットリウム粒子の真密度は5.01g/cm
3、比較例4で用いた酸化ハフニウム粒子の真密度は9.68g/cm
3、比較例5で用いた酸化ジルコニウム粒子の真密度は5.6g/cm
3、として算出した。Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度は、3.22g/cm
3として算出した。
第一の焼結体の真密度=(成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の質量割合×Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度)+(成形用の混合粉体100質量%に対する金属酸化物粒子の質量割合×金属酸化物粒子の真密度) (2−1−1)
【0102】
実施例1から9の第一の焼結体1から9及び比較例1から5の各第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出した。実施例1から9の各第一の焼結体の質量(g)及びアルキメデス法により求められた体積(cm
3)を表1に示した。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0103】
第二の焼結体の相対密度の測定
実施例10から22の第二の焼結体10から22の相対密度を下記式(4)及び(5)に基づき測定した。結果を表1に示す。相対密度は下記式(4)により算出した。
相対密度(%)=(第二の焼結体の見掛け密度÷第二の焼結体の真密度)×100 (4)
【0104】
第二の焼結体の真密度の算出方法は、成形体用の混合粉体100質量%に対するα−アルミナ(具体的には粉体混合工程で用いたα−アルミナ粒子)の質量割合にα−アルミナの真密度を乗じて得られた値と、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa-α−サイアロン蛍光体粒子の質量割合にCa-α−サイアロン蛍光体粒子の真密度を乗じて得られた値との和である。Ca-α−サイアロン蛍光体の真密度及びα−アルミナの真密度は、第一の焼結体の真密度の算出方法で用いた数値と同じ数値を用いた。
【0105】
第二の焼結体の見掛け密度は、下記式(5)により算出した。
第二の焼結体の見掛け密度=第二の焼結体の質量÷第二の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (5)
【0106】
相対発光強度の測定
実施例1から9の第一の焼結体からなる波長変換部材、実施例10から22の第二の焼結体からなる波長変換部材、及び比較例1から5の第一の焼結体を、ワイヤーソーを用いて厚さ300μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを光源として用いて、この光源から波長変換部材のサンプルに光を照射し、光源からの光を受けて実施例1から9、実施例10から22、及び比較例1から5の各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を、分光蛍光光度計を用いて測定した。実施例1の波長変換部材のサンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を100%として、各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度を相対発光強度(%)として表した。実施例1から9の波長変換部材の結果を表1に示す。実施例10から22の波長変換部材の結果を表2に示す。比較例1から5の第一の焼結体からなるサンプルは、光源から光を照射しても発光しなかった。比較例1から5の第一の焼結体の結果を表3に示す。
【0107】
外観写真
実施例3の波長変換部材の外観写真を得た。
図3は、実施例3の波長変換部材をワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。
実施例12の波長変換部材の外観写真を得た。実施例12は、実施例3の第一の焼結体を二次焼成して得られた第二の焼結体からなるものである。
図4は、実施例12の波長変換部材をワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。
比較例5の波長変換部材の外観写真を得た。
図5は、比較例5の第一の焼結体をワイヤーソーで切断したサンプルの外観写真である。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
実施例1から9の第一の焼結体1から9及び実施例10から22の第二の焼結体10から22は、光源から発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、波長変換部材として用いることができた。
【0112】
表1に示すように、実施例1から5は、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量を1質量%から20質量%に変化させて、一次焼成の温度を1500℃として第一の焼結体1から5を得て波長変換部材としたものである。表1に示すように、実施例2から5の第一の焼結体2から5は、相対密度が92%以上と高く、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が1質量%である実施例1の波長変換部材よりも相対発光強度が高くなった。
【0113】
表1に示すように、実施例6から9に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が5質量%であり、一次焼成の温度を1400℃以上1600℃以下の範囲で変化させて第一の焼結体6から9を得て波長変換部材とした。表1に示すように、実施例6の波長変換部材は、一次焼成の温度が1400℃であり、第一の焼結体6の相対密度が84.5%であり、第一の焼結体6中に空隙が存在すると推測される。このことから実施例6の波長変換部材は、相対発光強度が36.9%であった。表1に示すように、実施例7の波長変換部材は、一次焼成の温度が1450℃であり、第一の焼結体7の相対密度が87.2%であることから、第一の焼結体7中にも空隙が存在すると推測された。実施例7の波長変換部材は、相対密度が87.2%であり、空隙が存在すると推測されることから、相対発光強度が49.6%であった。表1に示すように、実施例8の波長変換部材は、一次焼成の温度が1550℃であり、第一の焼結体8の相対密度が95.0%と高くなり、空隙が抑制され緻密化されていることから、相対発光強度が166.4%と高くなった。実施例9の波長変換部材は、一次焼成の温度が1600℃と高いことから、第一の焼結体9は相対密度が92.9%と高くなった。一次焼成の温度が高いと、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体と、酸化物であるアルミナ粒子とが反応して、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解していると推測された。
【0114】
表2に示すように、実施例10から14に係る波長変換部材は、第一の焼結体1から5をHIP処理により1500℃で二次焼成して得られた第二の焼結体10から14からなるものであり、HIP処理による二次焼成によってより緻密化し、特に実施例11から14に係る波長変換部材は、実施例1の波長変換部材よりも相対発光強度が180%以上高くなった。
【0115】
表2に示すように、実施例14を除き、実施例10から22において、第一の焼結体1から4及び6から9よりも第二の焼結体10から13及び15から22の方が高い相対密度を有していた。実施例14において、第一の焼結体5よりも第二の焼結体14の方が、相対密度が若干小さくなるのは、第一の焼結体5に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体の含有量が、他の実施例よりも多いため、二次焼成のHIP処理により第一の焼結体5に含まれる閉空孔(クローズドポア)が潰れて緻密化するとともに、Ca−α−サイアロン蛍光体が一部分解、蒸散して、第二の焼結体14に開空孔(オープンポア)が生成されるためと考えられる。すなわち、実施例14の第二の焼結体14は、HIP処理により潰された閉空孔(クローズドポア)の量よりも、HIP処理により生成された開空孔(オープンポア)の量の方が僅かに多いため、第一の焼結体5の相対密度よりも第二の焼結体14の相対密度が僅かに小さくなったと考えられる。
【0116】
表2に示すように、実施例15又は16に係る波長変換部材は、一次焼成の温度が1400℃又は1450℃であり、得られる第一の焼結体6又は7の相対密度が90%以下であり、HIP処理による二次焼成を1500℃で行っても、得られる第二の焼結体15又は16の相対密度が89.0%又は91.7%であった。このことから実施例15又は16に係る波長変換部材は、第一の焼結体6又は7を得るための温度が低いため、HIP処理による二次焼成を行っても得られる第二の焼結体には多数の空隙が存在すると推測された。
【0117】
表2に示すように、実施例17に係る波長変換部材は、一次焼成の温度が1550℃と高く、HIP処理による1500℃の二次焼成により得られる第二の焼結体17は、第一の焼結体8よりも相対密度は高くなった。波長変換部材は、一次焼成の温度が1550℃と高いため、二次焼成の温度が1500℃であっても、一次焼成の段階で、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体が酸化物であるアルミナ粒子と反応しやすくなっており、二次焼成によりCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造のごく一部が分解するためと推測された。このため、波長変換部材は、第二の焼結体がHIP処理による二次焼成によって緻密化されて透明性が高くなっても、一次焼成における温度が高いために二次焼成においてCa−α−サイアロン蛍光体の結晶構造のごく一部が分解されることによって、第一の焼結体よりも発光強度が低くなる場合があると考えられる。
【0118】
表2に示すように、実施例18から20に係る波長変換部材は、二次焼成の温度を1400℃以上1550℃以下の範囲で変化させたものであり、二次焼成の温度が1400℃又は1450℃と一次焼成の温度よりも低い場合であっても、また、二次焼成の温度が1550℃と一次焼成の温度よりも高い場合であっても、98.5%以上の高い相対密度を有する第二の焼結体18から20を得ることができた。第二の焼結体18又は19からなる波長変換部材は、相対発光強度が200%を超えて高くなった。
【0119】
実施例21に係る波長変換部材は、励起光の照射により発光した。実施例21に係る波長変換部材は、一次焼成の温度が1600℃であり、第一の焼結体9の相対発光強度が59.0%であった。一次焼成の温度が高いと、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体と、酸化物であるアルミナ粒子とが反応して、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解する場合があると推測された。波長変換部材は、一次焼成後、HIP処理により二次焼成を行っても、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造の一部が分解していると、相対発光強度が低くなった。
【0120】
実施例22に係る波長変換部材は、励起光の照射により発光した。実施例22に係る波長変換部材は、HIP処理による二次焼成の温度が1600℃と高いため、酸窒化物であるCa−α−サイアロン蛍光体と、酸化物であるアルミナとが反応して、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解すると推測され、相対密度は97.5%と比較的高いものの相対発光強度が119.4%となった。
【0121】
表3に示すように、Ca−α−サイアロン蛍光体をアルミナ以外の酸化物とともに一次焼成を行った比較例1から5に係る第一の焼結体は、いずれも相対密度が71.0%以下であり、励起光を照射しても発光しなかった。
【0122】
実施例3に係る波長変換部材の外観は、全体的に明るいオレンジ色であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の本来の体色を維持していた。
図3に示すように、実施例3に係る波長変換部材の外観は、色むらが確認できず、全体的に均質な色であり、一次焼成により波長変換部材中に含まれるCa−α−サイアロン蛍光体が変質していないことが確認できた。
【0123】
実施例12に係る波長変換部材の外観は、全体的に明るく、実施例3よりも濃いオレンジ色であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の本来の体色を維持していた。実施例12に係る波長変換部材の外観が、実施例3に係る波長変換部材の外観よりも明るく、濃いオレンジ色に見えるのは、HIP処理による二次焼成によって得られる第二の焼結体12の緻密化が進み、透明性が高くなったためと考えられる。
図4に示すように、実施例12に係る波長変換部材の外観は、色むらが確認できず、全体的に均質な色であり、一次焼成及びHIP処理による二次焼成によりCa−α−サイアロン蛍光体が変質していないことが確認できた。
【0124】
比較例5に係る第一の焼結体の外観は、全体的に白っぽくところどころ黒っぽく変わっており、Ca−α−サイアロン蛍光体の本来の体色であるオレンジ色を維持していなかった。
図5に示すように、比較例5係る第一の焼結体の外観は、ところどころ黒っぽく変わっている色むらが確認でき、一次焼成によってCa−α−サイアロン蛍光体が変質していると推測された。
【0125】
実施例23から41は、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG系蛍光体とアルミナとを含む第一の焼結体からなる波長変換部材を製造した。また、比較例6から9は、YAG系蛍光体とアルミナとを含み、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない第一の焼結体を製造した。
【0126】
YAG蛍光体の製造
酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)を目的の組成となるように、それぞれを秤量し、混合して原料混合物とした。フラックスとしてフッ化バリウム(BaF
2)を原料混合物に添加し、原料混合物とフラックスをボールミルでさらに混合した。この混合物をアルミナルツボに入れ、還元雰囲気下、1500℃で10時間、熱処理して焼成物を得た。焼成物を純水中に分散させ、ふるいを介して振動を加えながら、溶媒(純水)を流して、湿式ふるいを通過させ、次いで、脱水、乾燥して、乾式ふるいを通過させて、分級し、イットリウムアルミニウムガーネット(以下、「YAG」ともいう。)蛍光体を得た。実施例1において、α−アルミナ粒子の平均粒径を測定した方法と同様に、FSSS法により、YAG蛍光体の平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)を測定した。YAG蛍光体の平均粒径は、5μmであった。
【0127】
YAG蛍光体の組成分析
得られたYAG蛍光体について、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)(Perkin Elmer(パーキンエルマー)社製)により、YAG蛍光体を構成する酸素を除く各元素(Y、Gd、Ce、Al)の質量百分率(質量%)を測定し、各元素の質量百分率の値からYAG蛍光体の組成における各元素のモル比を算出した。Y、Gd、Ceのモル比は、測定されたAlのモル比を5とし、Alのモル比5を基準として算出した。YAG蛍光体の組成比は、(Y
0.575Gd
0.400Ce
0.025)
3Al
5O
12であった。
【0128】
実施例23
粉体混合工程
得られたFSSS法により測定した平均粒径5μmの(Y
0.575Gd
0.400Ce
0.025)
3Al
5O
12で表されるYAG蛍光体を10質量部(成形用の混合粉体100質量%に対して10質量%)と、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒径13.0μmのCa−α−サイアロン蛍光体(品名:アロンブライト 品種YL―600、デンカ株式会社製)を3質量部(成形用の混合粉体100質量%に対してCa−α−サイアロン蛍光体を3質量%)と、FSSS法により測定した平均粒径が0.5μmのα−アルミナ粒子(品名:AA03、住友化学工業株式会社製、アルミナ純度99.5質量%)87質量部と、を秤量し、乳鉢及び乳棒を用いて混合し、成形体用の混合粉体を準備した。表4から8において、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合を示す。また、表4から8において、YAG蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の仕込みの質量割合を示す。表4から表8において、各実施例及び各比較例におけるアルミナ粒子の含有量は、成形体用の混合粉体100質量%からCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)及びYAG蛍光体の含有量(質量%)の合計量を減じた残部である。
【0129】
成形体準備工程
成形体用の混合粉体を金型に充填し、圧力4.6MPa(46.9kgf/cm
2)の圧力で直径17.0mm、厚さ10mmの円筒形状の成形体を形成した。得られた成形体を包装容器に入れて真空包装し、冷間等方圧加圧(CIP)装置(KOBELCO社製)により、圧力媒体に水を用いて、176MPaでCIP処理を行った。
【0130】
一次焼成工程
得られた成形体を焼成炉(富士電波工業株式会社製)、窒素ガス雰囲気(窒素:99体積%以上)で、0.9MPa、1300℃の温度で6時間保持して、一次焼成を行い、第一の焼結体を得た。得られた第一の焼結体を実施例23に係る波長変換部材とした。実施例23から41において、第一の焼結体からなる波長変換部材中のCa−α−サイアロン蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するCa−α−サイアロン蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しく、YAG蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。また、比較例6から9において、第一の焼結体中のYAG蛍光体の含有量(質量%)は、成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の仕込みの質量割合とほぼ等しい。
【0131】
実施例24
一次焼成工程における焼成温度を1400℃にしたこと以外は、実施例23と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例24に係る波長変換部材とした。
【0132】
実施例25
一次焼成工程における焼成温度を1450℃にしたこと以外は、実施例23と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例25に係る波長変換部材とした。
【0133】
実施例26
一次焼成工程における焼成温度を1500℃にしたこと以外は、実施例23と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例26に係る波長変換部材とした。
【0134】
実施例27
YAG蛍光体を5質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体1質量部と、α−アルミナ粒子94質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例27に係る波長変換部材とした。
【0135】
実施例28
YAG蛍光体を5質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を3質量部とし、α−アルミナ粒子92質量部としたこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例28に係る波長変換部材とした。
【0136】
実施例29
YAG蛍光体を5質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子85質量部としたこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例29に係る波長変換部材とした。
【0137】
実施例30
YAG蛍光体を5質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子75質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例30に係る波長変換部材とした。
【0138】
比較例6
YAG蛍光体を5質量部とし、α−アルミナ粒子95質量部としたこと以外は、実施例27と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例6に係る波長変換部材とした。比較例6に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0139】
実施例31
YAG蛍光体を10質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体を1質量部と、α−アルミナ粒子89質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例31に係る波長変換部材とした。
【0140】
実施例32
YAG蛍光体を10質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子を80質量部としたこと以外は、実施例31と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例32に係る波長変換部材とした。
【0141】
実施例33
YAG蛍光体を10質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子70質量部としたこと以外は、実施例31と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例33に係る波長変換部材とした。
【0142】
比較例7
YAG蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子90質量部としたこと以外は、実施例31と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例7に係る波長変換部材とした。比較例7に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0143】
実施例34
YAG蛍光体を20質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体を1質量部と、α−アルミナ粒子79質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例34に係る波長変換部材とした。
【0144】
実施例35
YAG蛍光体を20質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を3質量部とし、α−アルミナ粒子77質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例35に係る波長変換部材とした。
【0145】
実施例36
YAG蛍光体を20質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子を70質量部としたこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例36に係る波長変換部材とした。
【0146】
実施例37
YAG蛍光体を20質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子60質量部としたこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例37に係る波長変換部材とした。
【0147】
比較例8
YAG蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子80質量部としたこと以外は、実施例34と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例8に係る波長変換部材とした。比較例8に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0148】
実施例38
YAG蛍光体を30質量部と、Ca−α−サイアロン蛍光体を1質量部と、α−アルミナ粒子69質量部とを混合した成形用の混合粉体を準備したこと以外は、実施例25と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例38に係る波長変換部材とした。
【0149】
実施例39
YAG蛍光体を30質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を3質量部とし、α−アルミナ粒子67質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例39に係る波長変換部材とした。
【0150】
実施例40
YAG蛍光体を30質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を10質量部とし、α−アルミナ粒子を60質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例40に係る波長変換部材とした。
【0151】
実施例41
YAG蛍光体を30質量部とし、Ca−α−サイアロン蛍光体を20質量部とし、α−アルミナ粒子50質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を実施例41に係る波長変換部材とした。
【0152】
比較例9
YAG蛍光体を30質量部とし、α−アルミナ粒子70質量部としたこと以外は、実施例38と同様にして、第一の焼結体を得て、得られた第一の焼結体を比較例9に係る波長変換部材とした。比較例9に係る波長変換部材は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含まない。
【0153】
第一の焼結体の相対密度の測定
実施例23から41及び比較例6から9において、各第一の焼結体の相対密度を下記式(1)から(3)に基づき測定した。表4に、実施例23から26の第一の焼結体の相対密度を示した。表5に、実施例27から30及び比較例6の第一の焼結体の相対密度を示した。表6に、実施例31から33及び比較例7の第一の焼結体の相対密度を示した。表7に、実施例34から37及び比較例8の第一の焼結体の相対密度を示した。表8に、実施例38から41及び比較例9の第一の焼結体の相対密度を示した。
相対密度は、下記式(1)により測定した。
相対密度(%)=(第一の焼結体の見掛け密度÷第一の焼結体の真密度)×100 (1)
【0154】
第一の焼結体の真密度は、下記式(2−2)より算出した。各実施例及び比較例で用いたα−アルミナ粒子の真密度は3.98g/cm
3とした。Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度は3.22g/cm
3とした。YAG蛍光体の真密度は、4.77g/cm
3であった。YAG蛍光体の真密度は、乾式自動密度計(商品名:アキュビック1330、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
第一の焼結体の真密度=(成形体用の混合粉体100質量%に対するCa-α−サイアロン蛍光体の質量割合×Ca−α−サイアロン蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するYAG蛍光体の質量割合×YAG蛍光体の真密度)+(成形体用の混合粉体100質量%に対するアルミナ粒子の質量割合×アルミナ粒子の真密度) (2−2)
【0155】
第一の焼結体の見掛け密度は、下記式(3)により算出した。
第一の焼結体の見掛け密度=第一の焼結体の質量÷第一の焼結体のアルキメデス法により求められた体積 (3)
【0156】
相対発光強度及び色度の測定
各実施例及び比較例の第一の焼結体からなる波長変換部材を、ワイヤーソーを用いて厚さ300μmに切断し、サンプルを形成した。発光ピーク波長が455nmである窒化物半導体からなるLEDチップを光源として用いて、この光源から波長変換部材のサンプルに光を照射し、光源からの光を受けて各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光ピーク波長の発光強度及び色度(CIE色度座標におけるx値、y値)を、分光蛍光光度計を用いて測定した。相対密度が90%を超える波長変換部材の中には、光源から発せられた青色光が透過しているものもあった。実施例23から41及び比較例6から9の色度は、各サンプルから得られた430nm以上800nm以下の波長範囲にある発光スペクトルのうち490nm以下の範囲の青色光の発光スペクトルを除いて測定した色度(x値、y値)である。
【0157】
表4に、実施例23から26に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例23から26の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例25の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例23から26の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0158】
表5に、実施例27から30及び比較例6に係る波長変換部材中の第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例27から30及び比較例6の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例30の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例27から30及び比較例6の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0159】
表6に、実施例31から33及び比較例7に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例31から33及び比較例7の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例33の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例31から33及び比較例7の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0160】
表7に、実施例34から37及び比較例8に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例34から37及び比較例8の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例37の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例34から37及び比較例8の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0161】
表8に、実施例38から41及び比較例9に係る波長変換部材である第一の焼結体の相対発光強度及び色度(x値、y値)を示す。実施例38から41及び比較例9の第一の焼結体の中で、相対密度が90%の値に最も近い実施例40の第一の焼結体の発光強度を100%として、実施例38から41及び比較例9の第一の焼結体の発光強度を相対発光強度(%)として表した。
【0162】
図6は、実施例23から26に係る第一の焼結体からなる波長変換部材の色度(x値、y値)をCIE色度座標上にプロットした図である。
図7は、実施例27から30に係る第一の焼結体からなる波長変換部材及び比較例6の第一の焼結体の色度(x値、y値)をCIE色度座標上にプロットした図である。
【0163】
【表4】
【0164】
表4に示すように、実施例23から26に係る波長変換部材は、一次焼成の温度を1300℃から1500℃に変化させて得られた第一の焼結体からなり、一次焼成の温度が高くなると、相対密度が高くなり、相対発光強度が高くなった。
【0165】
表4及び
図6に示すように、実施例26に係る波長変換部材は、実施例23から25に係る波長変換部材と比べて、色度が短波長側に移動していた。実施例26の波長変換部材は、相対密度が93.1%と高いため、光源から発せられた青色光が明らかに透過していた。
図6に示す各実施例の色度x値とy値は、光源から発せられた青色光を除いて測定した色度であるが、実施例26の波長変換部材の色度が短波長側へ移動したのは、一次焼成の温度が1500℃と比較的高いため、YAG蛍光体に微量に含まれる例えばフッ素を含む化合物によって、Ca−α−サイアロン蛍光体の結晶構造が一部分解して劣化し、YAG蛍光体のみが励起光の照射により発光したためと推測された。
【0166】
【表5】
【0167】
表5に示すように、実施例27から30に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が5質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から10質量%の範囲で増加すると相対密度及び相対発光強度が高くなった。実施例27から30に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、波長変換部材として用いることができた。
【0168】
表5及び
図7に示すように、実施例27から30に係る波長変換部材は、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有し、比較例6と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0169】
比較例6の波長変換部材は、相対密度が90.3%と高いため、光源から発せられた青色光が明らかに透過していた。表5及び
図7に示す各実施例及び比較例の色度x値とy値は、光源から発せられた青色光を除いて測定した色度であるが、比較例6の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例27から30に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【0170】
【表6】
【0171】
表6に示すように、実施例31から33に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が10質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から20質量%の範囲で増加すると相対密度及び相対発光強度が高くなった。実施例31から33に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、比較例7と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0172】
表6に示すように、比較例7の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例31から33に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【0173】
【表7】
【0174】
表7に示すように、実施例34から37に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が20質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から10質量%の範囲で増加すると相対密度及び相対発光強度が高くなった。実施例34から37に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、比較例8と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0175】
表7に示すように、比較例8の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例34から37に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。
【0176】
【表8】
【0177】
表8に示すように、実施例38から41に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が30質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から10質量%の範囲で増加すると相対密度が高くなった。また、実施例38から41に係る波長変換部材は、YAG蛍光体の含有量が30質量%である場合に、Ca−α−サイアロン蛍光体が1から20質量%の範囲で増加すると相対発光強度が高くなった。実施例38から41に係る波長変換部材のように、Ca−α−サイアロン蛍光体とYAG蛍光体の合計の含有量が0.1質量%以上70質量%以下の範囲であり、Ca−α−サイアロン蛍光体の含有量が0.1質量%以上40質量%以下の範囲であれば、相対密度が80%以上であり、発光ピーク波長が455nmである励起光の照射により、430nm以上800nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有し、比較例9と比べて長波長側の色度の光を発し、所望の色調に発光する波長変換部材として用いることができた。
【0178】
表8に示すように、比較例9の第一の焼結体は、Ca−α−サイアロン蛍光体を含んでいないため、実施例38から41に係る第一の焼結体からなる波長変換部材と比べて、短波長側の色度(x値、y値)の光を発した。