特許第6763526号(P6763526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763526
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】非破壊検査装置、及び、非破壊検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20200917BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20200917BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20200917BHJP
   H04N 5/32 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01T7/00 A
   G01N23/18
   H04N5/32
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-125227(P2018-125227)
(22)【出願日】2018年6月29日
(65)【公開番号】特開2020-3426(P2020-3426A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三好 寿顕
(72)【発明者】
【氏名】冨安 一秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 渉
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−154627(JP,A)
【文献】 特開2014−182108(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3195776(JP,U)
【文献】 特開昭61−288187(JP,A)
【文献】 特開2004−064087(JP,A)
【文献】 特開2000−352587(JP,A)
【文献】 特開2012−057954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
G01N 23/00−23/2276
G01T 1/00−1/16、1/167−7/12
・J−Dream III
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、
前記放射線源から出射され、検査対象物を透過した放射線を検出する撮像パネルと、
前記撮像パネルに対し前記放射線源とは逆側に重ねて配置して前記撮像パネルから出射される放射線を遮蔽するための遮蔽板とを備え、
前記撮像パネル及び前記遮蔽板は、湾曲可能なフレキシブル性を有することを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項2】
前記放射線を検出した撮像パネルが出力する電気信号を取得し、当該電気信号から、前記放射線が透過した前記検査対象物の画像を生成する画像生成部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記放射線源及び前記撮像パネルは、前記検査対象物を異なる角度から複数回撮像し、
前記画像生成部は、前記複数回撮像して得られた複数の画像に基づいて、前記検査対象物の内部の画像を再構成することを特徴とする請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記放射線源は、第1放射線源と第2放射線源とを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
放射線源と、
前記放射線源から出射し、検査対象物を透過した放射線を検出する撮像パネルと、
前記撮像パネルに対し前記放射線源とは逆側に重ねて配置して前記撮像パネルから出射される放射線を遮蔽するための遮蔽板と、を備える非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、
前記放射線源と、重ねた前記撮像パネル及び前記遮蔽板とを、前記検査対象物を間に介在させて配置する配置工程を有し、
前記配置工程では、さらに、それぞれフレキシブル性を有する前記撮像パネル及び前記遮蔽板を、前記検査対象物の湾曲面に沿って湾曲させて配置することを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項6】
前記配置工程の後、前記放射線源及び前記撮像パネルを駆動させて前記検査対象物を撮像する撮像工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の非破壊検査方法。
【請求項7】
前記撮像工程の後、前記放射線源、前記撮像パネル及び前記遮蔽板を、前記検査態様物の中心軸に対して回転させる回転工程をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の非破壊検査方法。
【請求項8】
前記検査対象物は、コンクリート内に複数の鉄筋が埋設された鉄筋コンクリート構造体であって、
前記配置工程では、前記複数の鉄筋間の隙間と対向するように、前記放射線源を配置することを特徴とする請求項6〜7の何れか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項9】
前記撮像工程の後、当該検査対象物と、前記放射線源、前記撮像パネル及び前記遮蔽板とを前記検査対象物の長軸方向に相対移動させる相対移動工程を有し、
前記相対移動工程の後、再度、前記配置工程及び前記撮像工程を行うことを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項10】
前記相対移動工程では、相対移動前に前記撮像パネルが撮像した前記検査対象物の領域の一部と重なるように、前記撮像パネルを前記検査対象物に対して相対移動させることを特徴とする請求項9に記載の非破壊検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置、及び、非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線を空中に架け渡すための柱として電柱が知られている。近年、電柱はコンクリート柱が主に使用されている。コンクリート柱は、長尺の多数の鉄筋を円筒状に配筋した後、コンクリートを充填し、鉄筋とコンクリートとを一体化して円筒状に形成したものである。このようなコンクリート柱を保守管理するために非破壊での検査が必要になる。
【0003】
特許文献1に記載のコンクリート欠陥非破壊検査装置では、中性子線源から照射された中性子線が被測定物であるコンクリートブロックを透過し、当該透過した中性子線が、被測定物に密着させて配置されたパネル型高感度中性子検出器に入射する。特許文献1に記載のコンクリート欠陥非破壊検査装置では、このパネル型高感度中性子検出器にて得られた信号により、被測定物内部の欠陥の有無を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002―82073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9を用いて、従来のフラットパネルディテクタを備える非破壊検査装置を用いて、表面が湾曲している電柱を検査する例について説明する。非破壊検査装置110は、X線源111と、フラットパネルディテクタである撮像パネル114と、遮蔽板115とを備えている。電柱102は、枠状のコンクリート部104内に複数の鉄筋103が埋設されている。なお、図9では、電柱102は、長軸に直交する方向に切った断面を表している。
【0006】
非破壊検査装置110によって電柱102内の画像を撮像するには、X線源111と、撮像パネル114との間に電柱102が介在するように配置する。また、X線源111から照射されたX線119が撮像パネル114の周囲に漏れないように、撮像パネル114を覆う遮蔽板115が設けられている。
【0007】
そして、X線源111から照射されたX線119は、放射状に電柱102を透過し、撮像パネル114によって検出される。X線119は、電柱102のうち、コンクリート部104を透過するが、鉄筋103は透過しないため、撮像パネル114によって検出されたX線量を計測することにより、電柱102内の鉄筋103の様子を観察することができる。
【0008】
しかし、電柱102の外側面は湾曲しているところ、撮像パネル114及び遮蔽板115は湾曲しない構造である。このため、遮蔽板115として、板状の撮像パネル114の裏面(受光面とは逆側面)を覆う底部を設けるだけでなく、加えて、撮像パネル114の受光面を囲むように当該底部から起立する側部を設ける必要がある。このため、非破壊検査装置110は大型化する。特に、遮蔽板115は、X線119を遮蔽するために鉛等の重金属を含むため、遮蔽板115の大型化により重量も増大する。
【0009】
また、電柱102の外側面は湾曲しているところ、撮像パネル114の受光面は、湾曲せずに平面であるため、撮像パネル114の面内の位置によって、撮像パネル114の受光面と電柱102との距離が異なる。例えば、X線源111から撮像パネル114の中央近傍の鉄筋103aを通って撮像パネル114へ至る経路のうち、X線源111から鉄筋103aまでの距離をd101とし、鉄筋103aから撮像パネル114迄の距離をd102とする。また、X線源111から撮像パネル114の端近傍の鉄筋103bを通って撮像パネル114へ至る経路のうち、X線源111から鉄筋103bまでの距離をd103とし、鉄筋103bから撮像パネル114迄の距離をd104とする。すると、距離d102よりも、距離d104の方が大きくなる。この結果、撮像パネル114によって電柱102を撮像した画像は、端へ行くほどぼやけた像となり、検査精度の低下を招来する。特許文献1に記載された湾曲しないパネル型高感度中性子検出器を用いた場合も同様である。
【0010】
本発明の一態様は、軽量であり高精細な画像を得る非破壊検査装置、及び、当該非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る非破壊検査装置は、放射線源と、前記放射線源から出射され、検査対象物を透過した放射線を検出する撮像パネルと、前記撮像パネルに対し前記放射線源とは逆側に重ねて配置して前記撮像パネルから出射される放射線を遮蔽するための遮蔽板とを備え、前記撮像パネル及び前記遮蔽板は、湾曲可能なフレキシブル性を有することを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る非破壊検査方法は、放射線源と、前記放射線源から出射し、検査対象物を透過した放射線を検出する撮像パネルと、前記撮像パネルに対し前記放射線源とは逆側に重ねて配置して前記撮像パネルから出射される放射線を遮蔽するための遮蔽板と、を備える非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、前記放射線源と、重ねた前記撮像パネル及び前記遮蔽板とを、前記検査対象物を間に介在させて配置する配置工程を有し、前記配置工程では、さらに、それぞれフレキシブル性を有する前記撮像パネル及び前記遮蔽板を、前記検査対象物の湾曲面に沿って湾曲させて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、軽量であり高精細な画像を得る非破壊検査装置、及び、当該非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る非破壊検査装置の断面図である。
図2】実施形態1に係る非破壊検査装置の側面図である。
図3】実施形態1に係る非破壊検査装置において、電柱内部の鉄筋と線源部の出射面とが重なるように、線源部、撮像パネル及び遮蔽板を配置した様子を表す図である。
図4図1に示す非破壊検査装置から、線源部、撮像パネル及び遮蔽板を反時計回りに90°回転させた様子を表す図である。
図5】実施形態2に係る非破壊検査装置の断面図である。
図6図5に示す非破壊検査装置からを反時計回りに一定角度回転させた様子を表す図である。
図7】実施形態3に係る非破壊検査装置の断面図である。
図8】実施形態4に係る非破壊検査装置の側面図である。
図9】従来の非破壊検査装置を用いて電柱を検査している様子を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
(非破壊検査装置10及び電柱2の構造)
図1は、実施形態1に係る非破壊検査装置10の断面図である。図2は、実施形態1に係る非破壊検査装置10の側面図である。図1に示す電柱2は、図2に示す電柱2の中心軸Zに直交する方向に切った断面を表している。
【0016】
非破壊検査装置10は、検査対象物を非破壊検査するための装置である。非破壊検査装置10は、X線源(放射線源)11と、撮像装置16と、制御部(画像生成部)17と、表示部18とを備えている。撮像装置16は、湾曲可能なフレキシブル性を有する撮像パネル14及び遮蔽板15を有する。
【0017】
電柱2は、非破壊検査装置10によって非破壊検査を行う検査対象物の一例である。電柱2は地面7に立設している。電柱2は、地面7に対して直交する中心軸Zに沿って延設されている。本実施形態においては、電柱2は、地面7と接触する基部2aから、頭頂部2bへかけて次第に外径が小さくなる柱状形状である。なお、電柱2は、基部2aから頭頂部2bへかけて外径が同じである円柱形状であってもよい。
【0018】
電柱2は外側表面が湾曲した形状である。電柱2は、中心軸Zに直交する方向に切った断面が円形の枠状であるコンクリート部4と、コンクリート部4に埋設された鉄筋3とを含む鉄筋コンクリート構造体である。鉄筋3は、中心軸Zの周囲を囲むように複数配置されており、中心軸Zに沿って延設されている。本実施形態では、電柱2には、短い距離d31で隣接する複数の鉄筋3を有する鉄筋群が、中心軸Zを中心として回転対称に、距離d32だけ離れて配置されている。図1に示す例では、距離d31で隣接する複数の鉄筋3からなる鉄筋群が、中心軸Zを中心に、90°回転して距離d32だけ離れて配置されている。
【0019】
X線源11は、検査対象物に対し、検査対象物を透過する放射線を照射する。本実施形態では、X線源11は、検査対象物である電柱2を透過するX線19を照射する。なお、放射線源としては、検査対象物の種類及び検査態様等に応じて、X線ではなく、ガンマ線、中性子線等の他の放射線を照射する線源であってもよい。
【0020】
撮像パネル14は、湾曲可能なフレキシブル性を有するフラットパネルディテクタである。撮像パネル14は、X線源11から出射し、電柱2を透過したX線19を検出する。X線源11がX線19以外の放射線を出射する放射線源の場合は、撮像パネル14は、当該放射線源が照射する種類の放射線を検出可能なフラットパネルディテクタであればよい。撮像パネル14は、湾曲可能なフレキシブル性を有する樹脂等によって形成された基板に、画素がマトリクス状に配置された受光部を備えている。
【0021】
撮像パネル14の各画素には、例えば、受光した放射線の線量に応じた電流を流すフォトダイオードと、当該フォトダイオードの駆動を制御する画素回路等が配置されている。これにより、各画素から、受光した線量に応じた電気信号を制御部17へ出力可能である。
【0022】
遮蔽板15は、湾曲可能なフレキシブル性を有する板状部材である。遮蔽板15はX線源11が出射するX線19を遮蔽する。遮蔽板15は、撮像パネル14に対しX線源11とは逆側に重ねて配置することで、撮像パネル14から出射される(換言すると撮像パネル14を透過した)X線19を遮蔽する。X線源11がX線19以外の放射線を出射する放射線源の場合は、遮蔽板15は、当該放射線源が照射する種類の放射線を遮蔽可能であればよい。遮蔽板15は、例えば、板状である鉛等の重金属を有する。
【0023】
制御部17は、X線源11、撮像装置16の撮像パネル14、及び表示部18の駆動を制御する。また、制御部17は、X線19を検出した撮像パネル14が出力する電気信号を取得し、当該電気信号から、X線19が透過した電柱2の画像を生成する。制御部17は、一又は複数のコンピュータによって構成することができる。表示部18は、制御部17が生成した画像を表示するディスプレイである。
【0024】
(非破壊検査装置10の配置及び撮像方法)
図1及び図2に示すように、非破壊検査装置10を用いて電柱2の非破壊検査を行う場合、まず、X線源11と、重ねた撮像パネル14及び遮蔽板15とを、電柱2を間に介在させて配置する(配置工程)。この配置工程では、さらに、それぞれフレキシブル性を有する撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の湾曲面に沿って湾曲させて電柱2の外側面に配置する。
【0025】
そして、この配置工程の後、X線源11及び撮像パネル14を駆動させて、電柱2の内部の画像を撮像する(撮像工程)。具体的には、X線源11が出射したX線19が放射状に電柱2を透過し、当該電柱2を透過したX線19が撮像パネル14に検出される。そして、撮像パネル14は検出したX線19の線量に応じた電気信号を制御部17に出力する。これにより、制御部17は、撮像パネル14から取得した電気信号から、X線19が透過した電柱2の内部の画像を生成する。これにより、電柱2の内部の欠陥の有無を検査することができる。制御部17は、この生成した画像を表示部18に表示させてもよい。
【0026】
X線19は、電柱2のうち、コンクリート部4を透過するが、鉄筋3は透過しないため、制御部17は、撮像パネル14によって検出されたX線19の線量を計測することにより、電柱2内の鉄筋3の欠陥の有無を含む画像を生成することができる。
【0027】
ここで、上述のように、撮像パネル14及び遮蔽板15は、湾曲可能なフレキシブル性を有する。このため、電柱2の形状が湾曲した形状であったとしても、電柱2の形状に沿って、撮像パネル14及び遮蔽板15を湾曲させることができる。撮像パネル14及び遮蔽板15は、X線源11が配置された側の面が凹形状となるように湾曲している。このため、X線源11が放射状にX線19を出射したとしても、遮蔽板15のうち、凹形状となるように湾曲した面によってX線19を受けることができる。これにより、X線源11が出射したX線19が撮像パネル14の周囲及び背後に漏れないように遮蔽することができる。
【0028】
このように、撮像パネル14及び遮蔽板15は、それぞれフレキシブル性を有し、電柱2の外側表面の形状に沿って湾曲可能であるため、フレキシブル性を有さない撮像パネル及び遮蔽板を用いる場合とは異なり、電柱2と撮像パネル14との距離、及び、撮像パネル14と遮蔽板15との距離を近づけることができる。
【0029】
具体的には、例えば、X線源11から撮像パネル14の中央近傍の鉄筋3aを通って撮像パネル14へ至る経路のうち、X線源11から鉄筋3aまでの距離をd1とし、鉄筋3aから撮像パネル14迄の距離をd2とする。また、X線源11から撮像パネル14の端近傍の鉄筋3bを通って撮像パネル14へ至る経路のうち、X線源11から鉄筋3bまでの距離をd3とし、鉄筋3bから撮像パネル14迄の距離をd4とする。すると、距離d2及び距離d4を同程度とすることができ、撮像パネル14と電柱2の外側表面との距離を、フレキシブルではない撮像パネルを用いた場合よりも近づけることができる。加えて、撮像パネル14と遮蔽板15との距離を、フレキシブルではない遮蔽板を用いた場合と比べて近づけることができる。
【0030】
このため、遮蔽板15は、撮像パネル14と略同一の面積でよく、サイズを小型化することができる。これにより、小型化及び軽量化した非破壊検査装置10を得ることができる。特に、遮蔽板15は、鉛等の重金属を有するため、小型化による軽量化の効果が大きい。
【0031】
電柱2、撮像パネル14、及び遮蔽板15それぞれの間に隙間が設けられていてもよいが、撮像パネル14の受光面を電柱2の外側表面に密着させて配置し、さらに、遮蔽板15を撮像パネル14の裏面(受光面とは逆側の面)に密着させて配置してもよい。これによると、より、電柱2と撮像パネル14との距離、及び、撮像パネル14と遮蔽板15との距離を近づけることができる。これにより、さらに、遮蔽板15を小型化することができる。
【0032】
加えて、上述のように、距離d2及び距離d4を同程度とすることができるため、撮像パネル14の面内の位置によって電柱2の外側表面との距離が異なることを防止することができる。このため、撮像パネル14で撮像された画像のうち、中央近傍の領域の像よりも端近傍の領域の像がぼけてしまう等の不具合を防止することができる。つまり、撮像パネル14によると、面内の何れの領域においても鮮明な像が得られるように電柱2の内部の画像を撮影することができる。このため、電柱2内部の欠陥有無の検査精度を向上させることができる。
【0033】
このように、非破壊検査装置10によると、撮像パネル及び遮蔽板が湾曲しない構造と比べて、小型化して軽量化することができる。加えて、撮像パネル14面内における電柱2との距離のバラツキを抑制することができるため、撮像パネル14面全体に亘って高精細な画像を得ることができる。
【0034】
そして、図2に示すように、前記撮像工程の後、電柱2と、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15とを電柱2の長軸方向(中心軸Zの延設方向)に相対移動させる(相対移動工程)。そして、相対移動させた後、再度、前記配置工程及び前記撮像工程を行うことで、電柱2の長軸方向(中心軸Zの延設方向)に、順に撮像していく。
【0035】
ここで、電柱2は、基部2aから頭頂部2bにかけて次第に外径が小さくなっている。このため、中心軸Zの位置によって、検査する電柱2の曲率が異なる。しかし、非破壊検査装置10においては、撮像パネル14及び遮蔽板15はフレキシブル性を有し、電柱2の湾曲面に沿って湾曲させることが可能である。このため、相対位置前後で電柱2の曲率が変わっても、電柱2の曲率に合せて、撮像パネル14及び遮蔽板15を配置することができる。これにより、長軸方向に沿って電柱2の検査を行うことができる。
【0036】
また、この相対移動前後で、撮像パネル14によって撮像された領域が重ならないように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2に対して相対移動させることが好ましい。これにより、速やかに、電柱2の基部2aから頭頂部2bへ至るまでの撮像を行うことができる。
【0037】
なお、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15の電柱2に対する相対移動は、作業者が行ってもよいし、非破壊検査装置10にロボットを設けておき、ロボットによって行ってもよい。
【0038】
また、前記撮像工程の後、前記相対移動工程の前に、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の中心軸Zに対して回転させる回転工程をさらに設けてもよい。具体的には、図1に示すように、1回撮影する度に、例えば、X線源11を矢印A11に示す反時計回り方向へ一定角度回転させ(回転工程)、及び、撮像パネル14及び遮蔽板15を矢印A16に示す反時計回り方向へ一定角度回転させることで、電柱2内部の全体の像が得られるように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15の配置、撮影、回転を繰り返すことが好ましい。そして、制御部17は、前記複数回撮像して得られた複数の画像に基づいて、電柱2の内部の画像を再構成することが好ましい。これにより、電柱2を特定の角度から撮像しただけでは画像に映らない欠陥を検出することができる。なお、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15の回転は、作業者が行ってもよいし、非破壊検査装置10にロボットを設けておき、ロボットによって行ってもよい。
【0039】
X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を回転させた後、再配置する際には、回転前後で、X線源11と撮像パネル14との相対位置が同じになるように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を再配置することが好ましい。これにより、制御部17が、複数の画像に基づいて電柱2の内部の画像を再構成して得られる再構成画像の像を鮮明にすることができる。
【0040】
(非破壊検査装置10の配置及び撮像方法の例1)
図3は、電柱2内部の鉄筋3cとX線源11の出射面とが重なるように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を配置した様子を表す図である。X線源11が出射するX線19は、X線源11から放射状に広がって、電柱2内部を透過し、撮像パネル14にて検出される。このため、X線源11の出射面と重なった鉄筋3cは、撮像パネル14の受光面と重なっている鉄筋3と比べて、像が拡大して撮像パネル14に投影されて撮像される。この結果、撮像パネル14の受光面と重なっている鉄筋3それぞれの像が、拡大された鉄筋3cの像と重なってしまい、鮮明な像を得られにくい場合がある。そして、その結果、鉄筋3の欠陥有無の検査を正確に判定できない場合がある。
【0041】
そこで、図1に示すように、上述した配置工程では、X線源11を、出射面が複数の鉄筋3間の隙間と対向するように配置することが好ましい。これにより、X線源11から出射したX線19は、鉄筋3間の隙間から電柱2内へ進行し、放射状に広がって、撮像パネル14の受光面と重なっている鉄筋3それぞれに照射され、撮像パネル14に検出される。この結果、撮像パネル14の受光面と重なっている鉄筋3それぞれの鮮明な像を含む画像を得ることができる。この結果、撮像パネル14の受光面と重なっている鉄筋3それぞれを異なる角度から撮像した複数の画像を再構成した画像を制御部17が生成しなくても、鉄筋3の欠陥有無の検査を正確に判定することができる。
【0042】
図4は、図1に示すX線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を反時計回りに90°回転させた様子を表す図である。上述のように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、一定角度ずつ回転させることで、電柱2の外周を一周させてもよい。この場合、X線源11及び撮像パネル14が一定角度の回転毎に撮影することで、電柱2内部の鉄筋3を全体的に撮像し、制御部17が、当該複数の画像から、電柱2内部の鉄筋3全体の像を含む画像を再構成してもよい。
【0043】
例えば、図1に示す鉄筋3は、中心軸Zを中心に円状に並んで配置されており、距離d31よりも広い距離d32で配置されている箇所が、90°回転対称となるように4箇所設けられている。
【0044】
そこで、図1に示すように、距離d32が設けられている鉄筋3間の隙間とX線源11が重なるように配置して撮像し、次いで、図1に示した状態から図4に示すように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、中心軸Zを中心に反時計回り方向(矢印A11・A16が示す方向)へ90°回転させて、距離d32が設けられている鉄筋3間の隙間とX線源11が重なるように配置して撮像する。次いで、図4に示した状態から、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、中心軸Zを中心に反時計回り方向(矢印A11・A16が示す方向)へ90°回転させて、距離d32が設けられている鉄筋3間の隙間とX線源11が重なるように配置して撮像する。さらに、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、中心軸Zを中心に反時計回り方向へ90°回転させて、距離d32が設けられている鉄筋3間の隙間とX線源11が重なるように配置して撮像する。
【0045】
これにより、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15は電柱2の外周を一周する。そして、X線源11及び撮像パネル14が、回転毎に順に電柱2内を撮像することで、電柱2内部全体の鉄筋3の鮮明な像が含まれる画像を得ることができる。
【0046】
なお、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15の回転方向は、反時計回り方向ではなく、逆の時計回り方向であってもよい。また、上述の説明では、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15が電柱2の外周を一周するように説明したが、半周等、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15は、任意の角度分だけ電柱2の外周を回転させればよい。
【0047】
また、X線源11を配置するための鉄筋3間の隙間の位置を特定するには、例えば、作業者が、電柱2の設計図、電柱2の設置方向を示した図面等を参照し、作業者が特定すればよい。または、撮像されて表示部18に表示された電柱2内部の画像を作業者が確認しながら、作業者が特定してもよい。
【0048】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
図5は、実施形態2に係る非破壊検査装置10の断面図である。図6は、図5に示す非破壊検査装置10を反時計回りに一定角度回転させた様子を表す図である。図5図6に示すように、本実施形態では、電柱2内部にて鉄筋3は、間隔が狭い距離d31で等ピッチに配置されているものとする。このように、電柱2内部の鉄筋3が一周に亘って等ピッチで配置されている場合がある。
【0050】
この場合も、まず、実施形態1と同様に、X線源11と、重ねた撮像パネル14及び遮蔽板15とを、電柱2を間に介在させて配置する(配置工程)。この配置工程では、さらに、それぞれフレキシブル性を有する撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の湾曲面に沿って湾曲させて電柱2の外側面に配置する。そして、この配置工程の後、X線源11及び撮像パネル14を駆動させて電柱2の内部の画像を撮像する(撮像工程)。但し、この撮像時に、図5に示す鉄筋3d1のように、X線源11の出射面と重なっている場合がある。このようにX線源11の出射面と重なっている鉄筋3d1は、像が拡大して撮影されるため、鮮明な像が得られにくい。
【0051】
次いで、図5に示す状態からから図6に示す状態となるように、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、中心軸Zを中心に反時計回り方向(矢印B11・B16が示す方向)へ一定角度だけ回転させて(回転工程)、隣接する鉄筋3d1・3d2間の隙間と、X線源11の出射面とが重なるように配置して撮像する。図6に示す状態で撮像パネル14によって撮像された画像には、鉄筋3d1の拡大された像が含まれていないか、又は、含まれていたとしても画像全体の一部に含まれているだけである。このため、制御部17は、回転前後で撮像した画像(図5で示した状態で撮像した画像と、図6に示した状態で撮像した画像)を、鉄筋3d1の拡大された像を取り除きつつ合成(再構成)することで、撮像パネル14と重なる鉄筋3それぞれの鮮明な像が含まれる画像を生成することができる。
【0052】
このとき、回転角度、又は、回転に伴うX線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15の電柱2の外周表面上の移動距離を、制御部17内部の記憶部等に記憶しておいてもよい。制御部17は、回転前後の画像と、上記回転角度又は上記移動距離とから、電柱2の撮像範囲を算出して、表示部18に表示する等によって作業者に提示することができる。
【0053】
X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15は、電柱2の外周表面上を一定角度ずつ一周する。そして、X線源11及び撮像パネル14が、回転毎に順に電柱2内を撮像することで、電柱2内部全体の鉄筋3の鮮明な像が含まれる画像を得ることができる。
【0054】
X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15が回転する角度は、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15が電柱2の外周表面上を移動する距離が、鉄筋3のピッチである距離d31とは異なる距離となる角度とすることが好ましい。これにより、より確実に、X線源11の出射面と重なることで拡大して撮像された鉄筋3の像を、複数の画像を用いて取り除くことができる。
【0055】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図7は、実施形態3に係る非破壊検査装置10の断面図である。図7に示すように、非破壊検査装置10は、複数のX線源である第1X線源(第1放射線源)11Aと、第2X線源(第2放射線源)11Bとを備えていてもよい。
【0056】
本実施形態においても、まず、第1X線源11A及び第2X線源11Bと、重ねた撮像パネル14及び遮蔽板15とを、電柱2を間に介在させて配置する(配置工程)。この配置工程では、さらに、それぞれフレキシブル性を有する撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の湾曲面に沿って湾曲させて電柱2の外側面に配置する。そして、この配置工程の後、X線源11及び撮像パネル14を駆動させて電柱2の内部の画像を撮像する(撮像工程)。
【0057】
具体的には、第1X線源11Aが出射したX線19Aが放射状に電柱2を透過し、当該電柱2を透過したX線19Aが撮像パネル14に検出される。さらに、第2X線源11Bが出射したX線19Bが放射状に電柱2を透過し、当該電柱2を透過したX線19Bが撮像パネル14に検出される。そして、撮像パネル14は検出したX線19A・19Bの線量に応じた電気信号を制御部17に出力する。これにより、制御部17は、撮像パネル14から取得した電気信号から、X線19A・19Bが透過した電柱2の内部の画像を生成する。これにより、電柱2の内部の欠陥の有無を検査することができる。
【0058】
例えば、第1X線源11Aの出射面に鉄筋3d1が重なったとしても、第2X線源11Bの出射面を、鉄筋3d1、鉄筋3d2及び他の鉄筋3と重ならないように配置することができる。これにより、制御部17は、第1X線源11Aから出射したX線19Aによって撮像された画像と、第2X線源11Bから出射したX線19Bによって撮像された画像とを、鉄筋3d1の像を取り除きつつ合成(再構成)することで、撮像パネル14と重なっている鉄筋3の鮮明な像を含む画像を得ることができる。これにより、拡大された鉄筋3d1の像を取り除くために、第1X線源11A、第2X線源11B、撮像パネル14及び遮蔽板15を回転させなくてもよい。なお、電柱2内部の全体像を撮像するために、第1X線源11A、第2X線源11B、撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の外周一周に亘って回転させて撮像してもよい。
【0059】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1〜3にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図8は、実施形態4に係る非破壊検査装置10の側面図である。
【0060】
X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の長軸方向に相対移動させる際、相対移動前に撮像パネル14が撮像した電柱2の撮像領域AR1における一部領域Cに重なるように、撮像パネル14を電柱2に対して相対移動させて、次の相対移動後の撮像領域AR2の撮像を行うことが好ましい。これにより、X線源11、撮像パネル14及び遮蔽板15を、電柱2の長軸方向に相対移動させたときの検査漏れを防止することができるためである。
【0061】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 電柱
2a 基部
2b 頭頂部
3、3a〜3c、3d1、3d2 鉄筋
4 コンクリート部
7 地面
10 非破壊検査装置
11 X線源(放射線源)
11A 第1X線源(第1放射線源)
11B 第2X線源(第2放射線源)
14 撮像パネル
15 遮蔽板
16 撮像装置
17 制御部(画像生成部)
18 表示部
19、19A、19B X線
AR1、AR2 撮像領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9