(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763763
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20200917BHJP
G05F 3/26 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
G05F1/56 320C
G05F1/56 310F
G05F3/26
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-249764(P2016-249764)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-106286(P2018-106286A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 崇史
(72)【発明者】
【氏名】永井 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】大前 明紀
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−130937(JP,A)
【文献】
特開2010−152451(JP,A)
【文献】
特開2009−044280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
G05F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を調整することで出力電圧を生成する出力トランジスタと、前記出力電圧に対応する帰還電圧と基準電圧の差分に応じて前記出力トランジスタの制御電圧を生成する誤差増幅器と、前記制御電圧を監視した結果に応じて前記誤差増幅器を制御して前記制御電圧を制御することで前記出力電圧を低下させる過電流保護回路と、前記出力電圧のアンダーシュートを検出して前記出力トランジスタの前記制御電圧を前記出力電圧の低下が抑制されるよう制御するアンダーシュート検出回路とを備えた電源回路であって、
前記誤差増幅器は、前記基準電圧と前記帰還電圧を比較する差動接続トランジスタ対と、該差動接続トランジスタ対に動作電流を供給する電流源と、前記差動接続トランジスタ対の前記比較の結果に応じて前記制御電圧を生成するカレントミラー接続トランジスタ対と、前記差動接続トランジスタ対の各ドレインと前記カレントミラー接続トランジスタ対の各ドレインとの間に接続されたゲート接地型トランジスタ対とを備え、
前記過電流保護回路は、前記差動接続トランジスタ対の一方のドレインに前記過電流保護回路の出力信号を印加するよう接続され、
前記アンダーシュート検出回路は、前記差動接続トランジスタ対の各ドレイン電圧の差分が閾値を超えると前記差動接続トランジスタ対の動作電流を増大させる、
ことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
入力電圧を調整することで出力電圧を生成する出力トランジスタと、前記出力電圧に対応する帰還電圧と基準電圧の差分に応じて前記出力トランジスタの制御電圧を生成する誤差増幅器と、前記制御電圧を監視した結果に応じて前記誤差増幅器を制御して前記制御電圧を制御することで前記出力電圧を低下させる過電流保護回路と、前記出力電圧のアンダーシュートを検出して前記出力トランジスタの前記制御電圧を前記出力電圧の低下が抑制されるよう制御するアンダーシュート検出回路とを備えた電源回路であって、
前記誤差増幅器は、前記基準電圧と前記帰還電圧を比較する差動接続トランジスタ対と、該差動接続トランジスタ対に動作電流を供給する電流源と、前記差動接続トランジスタ対の前記比較の結果に応じて前記制御電圧を生成するカレントミラー接続トランジスタ対と、前記差動接続トランジスタ対の各ドレインと前記カレントミラー接続トランジスタ対の各ドレインとの間に接続されたゲート接地型トランジスタ対とを備え、
前記過電流保護回路は、前記差動接続トランジスタ対の一方のドレインに前記過電流保護回路の出力信号を印加するよう接続され、
前記アンダーシュート検出回路は、前記差動接続トランジスタ対の各ドレイン電圧の差分が閾値を超えると前記出力トランジスタの前記制御電圧を直接制御する、
ことを特徴とする電源回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源回路において、
前記差動接続トランジスタ対は、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記基準電圧が入力する第1導電型の第1トランジスタと、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記帰還電圧が入力する第1導電型の第2トランジスタとで構成され、
前記ゲート接地型トランジスタ対は、前記第1トランジスタのドレインにソースが接続されゲートにバイアス電圧が入力する第1導電型の第3トランジスタと、前記第2トランジスタのドレインにソースが接続されゲートに前記バイアス電圧が入力する第1導電型の第4トランジスタとで構成され、
前記カレントミラー接続トランジスタ対は、ドレインが前記第3トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第5トランジスタと、ドレインとゲートが前記第4トランジスタのドレインと前記第5トランジスタのゲートに接続された第2導電型の第6トランジスタとで構成されている、
ことを特徴とする電源回路。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電源回路において、
前記差動接続トランジスタ対は、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記基準電圧が入力する第1導電型の第1トランジスタと、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記帰還電圧が入力する第1導電型の第2トランジスタとで構成され、
前記ゲート接地型トランジスタ対は、前記第1トランジスタのドレインにソースが接続されゲートにバイアス電圧が入力する第1導電型の第3トランジスタと、前記第2トランジスタのドレインにソースが接続されゲートに前記バイアス電圧が入力する第1導電型の第4トランジスタとで構成され、
前記カレントミラー接続トランジスタ対は、ドレインが前記第4トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第6トランジスタと、ドレインとゲートが前記第3トランジスタのドレインと前記第6トランジスタのゲートに接続された第2導電型の第5トランジスタとで構成されている、
ことを特徴とする電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力電圧が瞬間的に大きく低下するアンダーシュートが発生した際にそれを抑制する対策を施した電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンダーシュート対策を施した電源回路として、たとえば
図4に記載の電源回路30が知られている(特許文献1)。この電源回路30において、31は入力端子、32は出力端子、33は接地端子、34は基準電圧源、35は誤差増幅器、36は可変電流源、37は比較器、M31はPMOS型の出力トランジスタである。
【0003】
通常の動作では、出力端子32と接地端子33との間に接続された出力電圧検出用の抵抗R31,R32の共通接続点に得られる帰還電圧VFB2と基準電圧源34で生成された基準電圧VREF2の差分が誤差増幅器35で増幅され、その誤差増幅器35の出力電圧によってVFB2=VREF2になるように出力トランジスタM31のゲートが制御されることで、出力電圧VOUTが基準電圧VREF2に対応した目標値に制御される。
【0004】
ところで、近年の電源回路においては、多方面(車、家電、産業機器等)から低消費電流の要求が強く、消費電流を増やさず設計することが求められている。消費電流を絞るためには、誤差増幅器の動作電流(テール電流など)などを減らす必要があるが、動作電流を減らすと応答特性が犠牲になり、上記したアンダーシュートに対して迅速な応答を実現することができない。このように、電源回路の低消費電流化には応答特性の向上が課題のひとつとして挙げられる。
【0005】
そこで、
図4の電源回路30では、誤差増幅器35に動作電流を供給する電流源として可変電流源36を接続し、さらに基準電圧源34で基準電圧VREF3(VREF3<VREF2)を生成し、この基準電圧VREF3と帰還電圧VFB2を比較する比較器37を設けてアンダーシュートを検出し、この比較回路37から出力するブースト信号SB1によって可変電流源36の電流値を切り替えるようにしている。
【0006】
入力電圧VINの変動または負荷電流の変動などによって、瞬間的に出力電圧VOUTが大きく低下するアンダーシュートが発生してVREF3>VFB2になると、比較器37でその変化が検出されてその出力信号であるブース信号SB1が“L”から“H”に変化し、可変電流源36の電流値が、消費電流低減のため小さく絞った通常電流値よりも大きな電流値に切り替えられる。これにより、誤差増幅器35は動作電流が通常時よりも増大して、出力トランジスタM31のゲートをより大きく駆動し、出力電圧VOUTを迅速に上昇させ、アンダーシュートが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−280025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基準電圧VREF3と帰還電圧VFB2を監視して出力電圧VOUTのアンダーシュートを抑制する方法は、アンダーシュート以外の要因で出力電圧VOUTが低下するときであっても、それをアンダーシュートとみなして誤差増幅器34の動作電流が増大する場合があるので、出力電圧VOUTの安定性が失われる可能性がある。
【0009】
図4の回路には過電流保護回路は図示されていないが、たとえば、その過電流保護回路の動作によって出力電圧VOUTを低下させるときに、問題が発生する。通常の電源回路は熱暴走による素子破壊を防ぐため過電流保護回路を内蔵している。この過電流保護回路は、出力トランジスタのゲート電圧をモニタし、そのゲート電圧が出力トランジスタの駆動能力を大きくするレベルになったとき、その出力トランジスタの駆動能力を抑制して出力電圧を低下させ、出力電流が一定以上流れないように誤差増幅器を制御するものである。
【0010】
このことから、過電流保護回路の動作によって出力電圧を低下させると、その出力電圧の低下がアンダーシュートとして検出されて誤差増幅器の動作電流が増大することになる。つまり、出力トランジスタを大きく駆動しようとするアンダーシュート抑制動作と、出力トランジスタの駆動能力を制限しようとする過電流保護動作がぶつかり、回路動作が不安定となる。この結果、過電流保護が正常に行われず、所望の電流制限がかからず素子破壊に至る可能性がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、瞬間的な出力電圧低下であるアンダーシュートのみを抑制できるようにして、過電流保護回路動作がアンダーシュート抑制動作に繋がらないようにした電源回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明の電源回路は、入力電圧を調整することで出力電圧を生成する出力トランジスタと、前記出力電圧に対応する帰還電圧と基準電圧の差分に応じて前記出力トランジスタの制御電圧を生成する誤差増幅器と、前記制御電圧を監視した結果に応じて前記誤差増幅器を制御して前記制御電圧を制御することで前記出力電圧を低下させる過電流保護回路と、前記出力電圧のアンダーシュートを検出して前記出力トランジスタの前記制御電圧を前記出力電圧の低下が抑制されるよう制御するアンダーシュート検出回路とを備えた電源回路であって、前記誤差増幅器は、前記基準電圧と前記帰還電圧を比較する差動接続トランジスタ対と、該差動接続トランジスタ対に動作電流を供給する電流源と、前記差動接続トランジスタ対の前記比較の結果に応じて前記制御電圧を生成するカレントミラー接続トランジスタ対と、前記差動接続トランジスタ対の各ドレインと前記カレントミラー接続トランジスタ対の各ドレインとの間に接続されたゲート接地型トランジスタ対とを備え、前記過電流保護回路は、前記差動接続トランジスタ対の一方のドレインに前記過電流保護回路の出力信号を印加するよう接続され、前記アンダーシュート検出回路は、前記差動接続トランジスタ対の各ドレイン電圧の差分が閾値を超えると前記差動接続トランジスタ対の動作電流を増大させる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2にかかる発明は、入力電圧を調整することで出力電圧を生成する出力トランジスタと、前記出力電圧に対応する帰還電圧と基準電圧の差分に応じて前記出力トランジスタの制御電圧を生成する誤差増幅器と、前記制御電圧を監視した結果に応じて前記誤差増幅器を制御して前記制御電圧を制御することで前記出力電圧を低下させる過電流保護回路と、前記出力電圧のアンダーシュートを検出して前記出力トランジスタの前記制御電圧を前記出力電圧の低下が抑制されるよう制御するアンダーシュート検出回路とを備えた電源回路であって、前記誤差増幅器は、前記基準電圧と前記帰還電圧を比較する差動接続トランジスタ対と、該差動接続トランジスタ対に動作電流を供給する電流源と、前記差動接続トランジスタ対の前記比較の結果に応じて前記制御電圧を生成するカレントミラー接続トランジスタ対と、前記差動接続トランジスタ対の各ドレインと前記カレントミラー接続トランジスタ対の各ドレインとの間に接続されたゲート接地型トランジスタ対とを備え、前記過電流保護回路は、前記差動接続トランジスタ対の一方のドレインに前記過電流保護回路の出力信号を印加するよう接続され、前記アンダーシュート検出回路は、前記差動接続トランジスタ対の各ドレイン電圧の差分が閾値を超えると前記出力トランジスタの前記制御電圧を直接制御する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の電源回路において、前記差動
接続トランジスタ
対は、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記基準電圧が入力する第1導電型の第1トランジスタと、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記帰還電圧が入力する第1導電型の第2トランジスタとで構成され、前記ゲート接地型トランジスタ対は、前記第1トランジスタのドレインにソースが接続されゲートにバイアス電圧が入力する第1導電型の第3トランジスタと、前記第2トランジスタのドレインにソースが接続されゲートに前記バイアス電圧が入力する第1導電型の第4トランジスタとで構成され、前記カレントミラー接続トランジスタ対は、ドレインが前記第3トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第5トランジスタと、ドレインとゲートが前記第4トランジスタのドレインと前記第5トランジスタのゲートに接続された第2導電型の第6トランジスタとで構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4にかかる発明は、請求項1又は2に記載の電源回路において、前記差動
接続トランジスタ
対は、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記基準電圧が入力する第1導電型の第1トランジスタと、ソースが前記電流源に接続されゲートに前記帰還電圧が入力する第1導電型の第2トランジスタとで構成され、前記ゲート接地型トランジスタ対は、前記第1トランジスタのドレインにソースが接続されゲートにバイアス電圧が入力する第1導電型の第3トランジスタと、前記第2トランジスタのドレインにソースが接続されゲートに前記バイアス電圧が入力する第1導電型の第4トランジスタとで構成され、前記カレントミラー接続トランジスタ対は、ドレインが前記第4トランジスタのドレインに接続された第2導電型の第6トランジスタと、ドレインとゲートが前記第3トランジスタのドレインと前記第6トランジスタのゲートに接続された第2導電型の第5トランジスタとで構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誤差増幅器の差動接続トランジスタ対とカレントミラー接続トランジスタ対との間にゲート接地型トランジスタ対を接続しているので、差動接続トランジスタ対の各ドレインはほぼ同じ電圧に制御されているが、アンダーシュート発生時には、瞬間的にそのドレイン間の電圧に大きな差分が生じるので、アンダーシュート検出回路によって出力トランジスタの駆動能力増大が行われ、アンダーシュート抑制を実現することができる。差動接続トランジスタ対の動作電流を増大させる場合は、その増大はアンダーシュート発生時のみであり、通常動作時の消費電流を削減することができる。また、過電流保護動作が行われるときは、過電流保護回路によってゲート接地型トランジスタ対のドレイン電流がほぼ同じになるように制御されるので、差動接続トランジスタ対の各ドレインがほぼぼ同じ電圧になり、アンダーシュート検出回路のしきい値が適切に設定されていれば、過電流保護動作がアンダーシュート抑制動作につながるような事態は発生しない。このように本発明によれば、過電流保護動作と分離してアンダーシュートを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施例の電源回路の回路図である。
【
図2】本発明の第2実施例の電源回路の回路図である。
【
図3】本発明の第3実施例の電源回路の回路図である。
【
図5】本発明の第1実施例の電源回路の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施例>
図1に本発明の第1実施例の電源回路10を示す。11は入力電圧VINが入力する入力端子、12は出力電圧VOUTが出力する出力端子、13は接地端子である。M1,M2はソースが可変電流源14に共通接続された差動接続トランジスタ対を構成するNMOS型のトランジスタであり、トランジスタM1のゲートには基準電圧VREF1が入力し、トランジスタM2のゲートには帰還電圧VFB1が入力する。M3,M4はNMOS型のゲート接地型トランジスタ対を構成する。トランジスタM3はソースがトランジスタM1のドレインに接続され、トランジスタM4はソースがトランジスタM2のドレインに接続されており、それぞれのゲートには共通のバイアス電圧VBIASが入力する。M5,M6はトランジスタM1,M2の能動負荷としてのカレントミラー接続トランジスタ対を構成するPMOS型のトランジスタである。トランジスタM5はソースが入力端子11に接続されドレインがトランジスタM3のドレインに接続されている。トランジスタM6はソースが入力端子11に接続されゲートとドレインがトランジスタM5のゲートとトランジスタM4のドレインに接続されている。以上のトランジスタM1〜M6によって誤差増幅器が構成されている。
【0019】
M7はPMOS型の出力トランジスタであり、ソースが入力端子11に接続され、ゲートがトランジスタM3,M5の共通ドレインに接続され、ドレインが出力端子12に接続されている。この出力端子12と接地端子13の間には、出力電圧VOUT検出用の抵抗R1,R2が直列接続され、その抵抗R1,R2の共通接続点から帰還電圧VFB1が取り出されている。
【0020】
15はアンダーシュート検出器であり、トランジスタM1のドレインであるノードAの電圧VAとトランジスタM2のドレインであるノードBの電圧VBを取り込み、その差分(=VB−VB)が予め設定した閾値を超えている期間だけ、可変電流源14の電流値を通常動作時の電流値よりも大きな電流値に切り替える。16は過電流保護回路であり、出力トランジスタM7のゲート電圧VG7を取り込み、そのゲート電圧VG7が所定値よりも低下しているとき、ノードBの電圧を低くする制御を行う。C1は出力端子12と接地端子13の間に接続された出力電圧VOUT安定化のための出力コンデンサ、20は出力端子12と接地端子13の間に接続された負荷である。
【0021】
さて、通常動作時は、出力電圧VOUTを抵抗R1,R2により分圧した帰還電圧VFB1と基準電圧VREF1が、トランジスタM1,M2によって比較される。そして、出力電圧VOUTが目標値よりも高いときはVREF1<VFB1となるので、ノードA,Bの電圧VA,VBがVA>VBとなってトランジスタM5のドレイン電圧が上昇し、トランジスタM7のゲート電圧VG7が上昇して、出力電圧VOUTが低下するような制御が行われる。逆に、出力電圧VOUTが目標値よりも低いときはVREF1>VFB1となるので、VA<VBとなって、トランジスタM5のドレイン電圧が低下し、トランジスタM7のゲート電圧VG7が低下して、出力電圧VOUTが高くなるような制御が行われる。
【0022】
このようにして、出力電圧VOUTが基準電圧VREF1に対応した目標電圧になるような負帰還制御が行われる。このとき、ノードA,Bの電圧VA,VBは、ゲート接地型トランジスタ対M3,M4により「VBIAS−VGS」(VGSはトランジスタM3,M4のゲート・ソース間電圧)になるように制御されるので、上記した出力電圧VOUTの変動時には、その変動に応じて若干変動して上記した負帰還制御が行われる。
【0023】
次に、出力電圧VOUTが目標電圧となるような通常制御が行われているときに、入力電圧VINの急激な低下、あるいは負荷電流の急激な増大によって、瞬間的に出力電圧VOUTが大きく低下するアンダーシュート(数msec)が発生すると、帰還電圧VFB1が瞬時に大きく低下してVREF1>VFB1になり、ゲート接地型トランジスタM3,M4によってほぼ同一電圧に制御されているノードA,Bの電圧VA,VBが、一時的にVA<VBになる。そして、その差分(=VB−VA)の値がアンダーシュート検出器15の内部に設定した閾値を超えたときは、そのアンダーシュート検出器15によって可変電流源14の電流値が通常動作時の電流値よりも大きな電流値に切り替えられる。このため、トランジスタM1,M3のドレイン電流が増大して出力トランジスタM7のゲートを放電する電流が増大し、ゲート電圧VG7が低下してその出力トランジスタM7が強く駆動され、出力電圧VOUTを瞬時に上昇させる。アンダーシュートの発生から収束までの時間は、可変電流源14の電流値が大きいほど短くなる。
【0024】
以上のアンダーシュート発生時の動作波形を
図5に示した。(a)に示すように、時刻t1において負荷電流IOUTがパルス的に急増した場合、そのままでは、出力電圧VOUTは、(b)に示すように、時間T1の期間に電圧V1だけ低下するようなアンダーシュート波形(VOUT1)となる。これに対し、本実施例では、時刻t1で出力電圧VOUTが低下を開始して、アンダーシュート検出回路15が動作すると、出力トランジスタM7の駆動力が瞬時に大きくなり、(c)に示すように、低下する電圧がV1からV2のように小さくなり、出力電圧VOUTの低下が抑制され、電圧低下時間がT1からT2に短くなるような波形(VOUT2)となる。
【0025】
ここで、通常動作時に、出力トランジスタM7のゲート電圧VG7が低下して過電流保護回路16が動作したときは、その過電流保護回路16によってノードBの電圧VBを低くして、出力トランジスタM7のゲート電圧VG7を高くし、出力電圧VOUTを低下させるような制御が行われる。このときは、ゲート接地型トランジスタM3,M4によって電圧VA=VBとなるよう制御されているので、過電流保護回路16により電圧VBが上昇するレベルはわずかであり、電圧VA,VBの差分(=VB−VA)がアンダーシュート検出器15が動作するほどに大きくなることはない。したがって、過電流保護回路16が動作が正常に行われないような事態が発生することはない。
【0026】
アンダーシュート抑制動作によって出力トランジスタM7のゲート電圧VG7が低下して過電流保護回路16が動作したときも、同様に、電圧VA,VBの差分(=VB−VA)がアンダーシュート検出器15が再動作するほどに大きくなることはない。
【0027】
<第2実施例>
図2に本発明の第2実施例の電源回路10Aを示す。ここでは、電圧VA、VBの差分を検出するアンダーシュート検出回路15Aの出力信号によって出力トランジスタM7のゲート電圧VG7を直接制御するようにしている。また、電流源14Aは低消費電流を実現する固定電流を供給する電流源に変更している。
【0028】
本実施例では、電圧VA,VBの差分(=VB−VA)がアンダーシュート検出回路15Aの閾値を越えたとき、ゲート電圧VG7を低い電圧に直接制御するので、トランジスタM1〜M6からなる誤差増幅器の動作を経由しないため、電流を切り替える可変電流源14を使用する場合と比較して、アンダーシュート抑制までの応答速度を高めることができる。
【0029】
<第3実施例>
図3に本発明の第3実施例の電源回路10Bを示す。ここでは、出力トランジスタをPMOS型のトランジスタM7からNMOS型のトランジスタM8に置き換えている。このため、誤差増幅器のトランジスタM5,M6のゲートを、トランジスタM5のドレインに接続し、トランジスタM6のドレインを出力トランジスタM8のゲートに接続している。アンダーシュート検出回路15Bは、電圧VA、VBの差分(=VB−VA)が閾値を越えたときに、出力トランジスタM8のゲート電圧VG8を直接制御して高い電圧にする。過電流検出回路16Aは、出力トランジスタM8のゲート電圧VG8が所定値を超えたときに、ノードAの電圧を高くする制御を行う。本実施例においても、第2実施例と同様に動作する。
【符号の説明】
【0030】
10,10A,10B:電源回路、11:入力端子、12:出力端子、13:接地端子、14:可変電流源、14A:固定電流源、15,15A,15B:アンダーシュート検出回路、16,16A:過電流保護回路
30:電源回路、31:入力端子、32:出力端子、33:接地端子、34:基準電圧源、35:誤差増幅器、36:可変電流源、37:比較器