特許第6763944号(P6763944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6763944-有機電界発光素子 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763944
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20200917BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20200917BHJP
   C07D 221/20 20060101ALI20200917BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 B
   C07D403/04
   C07D487/04 137
   C07D209/86
   C07D487/22
   C07D403/14
   C07D221/20
   C09K11/06 640
   C09K11/06 690
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-505347(P2018-505347)
(86)(22)【出願日】2017年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2017004980
(87)【国際公開番号】WO2017159152
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-50402(P2016-50402)
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】多田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】澤田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】野口 勝秀
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−528088(JP,A)
【文献】 特表2012−531383(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/025164(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07D 209/86
C07D 221/20
C07D 403/04
C07D 403/14
C07D 487/04
C07D 487/22
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する陽極と陰極の間に1つ以上の発光層と1つ以上の電子輸送層を含む有機電界発光素子において、少なくとも1つの電子輸送層が、下記一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。

【化1】

(ここで、環Aは式(1a)で表される芳香族炭化水素環であり、環Bは式(1d)で表される複素環であり、環A及び環Bはそれぞれ隣接する環と任意の位置で縮合する。
Lは、単結合、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表す。
Xは、N又はC-Ar1を表し、少なくとも1つのXはNを表す。
Y及びAr1は、各々独立に、水素、置換若しくは未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜18の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜5連結してなる連結芳香族基である。
R1は、独立に炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3〜12の芳香族複素環基である。a、b、及びcは、各々独立して0〜3の整数を表す。
ただし、一般式(1)で表される化合物において、下記化合物は除く。
【化2】
【請求項2】
一般式(1)におけるLが単結合である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
電子輸送層が、発光層に隣接する第1電子輸送層と第2電子輸送層の2層からなり、第1電子輸送層が一般式(1)で表される化合物を含有し、第2電子輸送層が一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
電子供与体が、アルカリ金属化合物またはアルカリ金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
電子供与体が、リチウムキノリラートである請求項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
電子輸送層が、一般式(1)で表される化合物と電子供与体の予備混合物を蒸着させて得られる電子輸送層であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
発光層が、ホスト材料と発光材料を含み、ホスト材料として一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界素子(有機EL素子という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子に電圧を印加することで、陽極から正孔が、陰極からは電子がそれぞれ発光層に注入される。そして発光層において、注入された正孔と電子が再結合し、励起子が生成される。この際、電子スピンの統計則により、一重項励起子及び三重項励起子が1:3の割合で生成する。一重項励起子による発光を用いる蛍光発光型の有機EL素子は、内部量子効率は25%が限界であるといわれている。一方で三重項励起子による発光を用いる燐光発光型の有機EL素子は、一重項励起子から項間交差が効率的に行われた場合には、内部量子効率が100%まで高められることが知られている。
しかしながら、燐光発光型の有機EL素子に関しては、長寿命化が技術的な課題となっている。
【0003】
最近では、遅延蛍光を利用した高効率の有機EL素子の開発がなされている。例えば特許文献1には、遅延蛍光のメカニズムの一つであるTTF(Triplet-Triplet Fusion)機構を利用した有機EL素子が開示されている。TTF機構は2つの三重項励起子の衝突によって一重項励起子が生成する現象を利用するものであり、理論上内部量子効率を40%まで高められると考えられている。しかしながら、燐光発光型の有機EL素子と比較すると効率が低いため、更なる効率の改良が求められている。
特許文献2では、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence)機構を利用した有機EL素子が開示されている。TADF機構は一重項準位と三重項準位のエネルギー差が小さい材料において三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が生じる現象を利用するものであり、理論上内部量子効率を100%まで高められると考えられている。しかしながら燐光発光型の素子と同様に寿命特性の更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/134350号
【特許文献2】WO2011/070963号
【特許文献3】WO2009/0116377号
【特許文献4】WO2011/0099374号
【特許文献5】WO2013/0175746号
【特許文献6】WO2013/0175747号
【0005】
特許文献3では、インドロカルバゾール化合物について電子輸送層としての使用を開示している。特許文献4では、インドロカルバゾール化合物について電子輸送層及び正孔阻止層としての使用を開示している。特許文献5及び6では、アジン化合物について電子輸送層としての使用を開示している。
しかしながら、いずれも十分なものとは言えず、更なる改良が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
有機EL素子をフラットパネルディスプレイ等の表示素子、または光源に応用するためには素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、上記現状を鑑み、低駆動電圧でありながら高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層と1つ以上の電子輸送層を含む有機電界発光素子において少なくとも1つの電子輸送層が、下記一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含有することを特徴とする有機EL素子である。
【0008】
【化1】
【0009】
ここで、環Aは式(1a)で表される芳香族炭化水素環であり、環Bは式(1b)で表される複素環であり、環A及び環Bはそれぞれ隣接する環と任意の位置で縮合する。
Lは、単結合、又は炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表す。
Xは、N又はC-Ar1を表し、少なくとも1つのXはNを表す。
Y及びAr1は、各々独立に、水素、置換又は未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数3〜18の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜5連結してなる連結芳香族基である。
R1は、独立に炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は置換又は未置換の炭素数3〜12の芳香族複素環基である。a、b、cは、各々独立して0〜3の整数を表す。
Zは、N-Ar2、C(R2)2、O、又はSである。
Ar2は、置換又は未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数3〜18の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜5連結してなる連結芳香族基である。
R2は、独立に水素、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は置換又は未置換の炭素数3〜12の芳香族複素環基である。
【0010】
式(1b)の好ましい様態として式(1d)があり、Lの好ましい様態として単結合がある。
【0011】
【化2】

(ここで、Ar1は、一般式(1)と同意である。)
【0012】
電子輸送層が、発光層に隣接する第1電子輸送層と第2電子輸送層の2層からなり、第1電子輸送層が一般式(1)で表される化合物を含有し、第2電子輸送層が一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含有することが好ましい。
【0013】
上記電子供与体としては、アルカリ金属化合物またはアルカリ金属錯体が好ましく、より好ましくはリチウムキノリラート(Liq)である。
【0014】
電子輸送層が、一般式(1)で表される化合物と電子供与体の予備混合物を蒸着させて得られること、又は発光層がホスト材料と発光材料を含み、ホスト材料として一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の有機EL素子は、電子輸送層に特定の電子輸送材料と電子供与体を含有するため、低駆動電圧で高発光効率、且つ長寿命な有機EL素子となることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】有機EL素子の一例を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の有機EL素子は、対向する陽極と陰極の間に、1つ以上の発光層と1つ以上の電子輸送層を含む有機EL素子において少なくとも1つの電子輸送層が、上記一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含有する。
【0018】
以下、一般式(1)について説明する。
環Aは、式(1a)で表される芳香族炭化水素環を表す。また、環Bは、式(1b)で表される複素環であり、環A及び環Bはそれぞれ隣接する環と任意の位置で縮合する。
【0019】
Lは、単結合、又は2価の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を表す。好ましくは単結合、又はフェニレン基であり、より好ましくは単結合である。
【0020】
上記炭素数6〜12の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、及びナフチレン基が挙げられる。
【0021】
Xは、N又はC-Ar1を表し、少なくとも1つのXはNである。
Y及びAr1は、各々独立に、水素、置換又は未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数3〜18の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜5連結してなる連結芳香族基であり、好ましくは水素、置換又は未置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数3〜12の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜3連結してなる連結芳香族基であり、より好ましくは水素又は置換又は未置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。
【0022】
上記炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数3〜18の芳香族複素環基、又はこれらの連結芳香族基が未置換の場合の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール又はこれらの芳香族環が単結合で2〜5個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、キナゾリン、又はこれらが2〜5個連結した連結芳香族化合物から1個のHをとって生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン又はこれらが2〜3個連結した連結芳香族化合物から生じる芳香族基が挙げられる。
【0023】
ここで、本明細書でいう連結芳香族基は、上記炭素数の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有する芳香族環を直接結合で複数個連結してなる芳香族基をいい、複数の芳香族環は同一であっても異なってもよい。
連結芳香族化合物は、Ar11-Ar12-Ar13のような直鎖型であってもよいし、Ar11-Ar12(Ar13)のような分岐型であってもよく、Ar11〜Ar13は同一であってもよく、異なってもよい。なお、Ar13はなくともよく、更にAr14、Ar15を含んでいてもよい。連結芳香族化合物から生じる芳香族基の結合手は、末端のAr11又はAr13から生じてもよく、中間のAr12から生じてもよい。ここで、Ar11〜Ar15は、芳香族基又は芳香族環である。
【0024】
これら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、又は連結芳香族基は、それぞれ置換基を有してもよい。置換基を有する場合の好ましい置換基は、シアノ基、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である。なお、置換基の数は0〜5、好ましくは0〜2がよい。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、及び連結芳香族基が置換基を有する場合の炭素数の計算には、置換基の炭素数を含まない。しかし、置換基の炭素数を含んだ合計の炭素数が上記範囲を満足することが好ましい。
【0025】
上記置換基の具体例としては、シアノ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルが挙げられる。好ましくは、シアノ基又はC1〜C6のアルキル基である。
【0026】
R1は、独立に炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は置換又は未置換の炭素数3〜12の芳香族複素環基である。好ましくは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、置換又は未置換の炭素数6〜8の芳香族炭化水素基又は置換又は未置換の炭素数3〜9の芳香族複素環基である。より好ましくはフェニル基である。
【0027】
上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。好ましくは、C1〜C6のアルキル基である。
【0028】
上記炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜12の芳香族複素環基が未置換である場合の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、又はカルバゾールからHをとって生じる芳香族基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、オキサジアゾール、ベンゾトリアジン、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、又はベンゾチアジアゾールからHをとって生じる芳香族基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼンからHをとって生じる芳香族基が挙げられる。
これら芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基は、それぞれ置換基を有してもよい。置換基を有する場合の好ましい置換基は、Ar1で説明した置換基と同様である。
【0029】
a、b、cは、各々独立して0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。より好ましくは0又は1の整数である。
【0030】
Zは、N-Ar2、C(R2)2、O、又はSを表す。好ましくはN-Ar2であり、この場合は、式(1d)で表される。ここで、Ar2は、水素であることはない他はAr1で説明したものと同様である。R2は、水素である場合を含む他はR1で説明したものと同様である。
【0031】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体的な例を示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0032】

【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
電子供与体は、電子注入障壁の改善により陰極又は電子注入層からの電子輸送層への電子注入を容易にする化合物として知られている化合物を使用することができる。好ましくは、電子輸送材料に混合して用いられるドナー性化合物である。電子供与体の好ましい例としては、アルカリ金属、アルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含有する無機塩またはアルカリ土類金属と有機物との錯体等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体であり、より好ましくはLiqである。
【0039】
上記アルカリ金属、アルカリ土類金属の好ましい種類としては、低仕事関数で電子輸送能向上の効果が大きいリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウム、セリウム、バリウムといったアルカリ土類金属が挙げられる。
また、真空中での蒸着が容易で取り扱いに優れることから、金属単体よりも無機塩、あるいは有機物との錯体の状態であることが好ましい。更に、大気中での取扱を容易にし、添加濃度の制御のし易さの点で、有機物との錯体の状態にあることがより好ましい。
無機塩の具体例としては、LiO、Li2O等の酸化物、LiF、NaF、KF等のフッ化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3等の炭酸塩が挙げられる。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の好ましい例としては、大きな低電圧駆動効果が得られるという観点ではリチウム、セシウムが挙げられる。有機物との錯体における有機物の具体例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、ピリジルフェノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾール等が挙げられる。中でも、より発光素子の低電圧化の効果が大きいという観点ではアルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、さらに合成のしやすさ、熱安定性という観点からリチウムと有機物との錯体がより好ましい。例えば、Liqである。
【0040】
前記一般式(1)で表される化合物と前記電子供与体を電子輸送層材料として使用することで優れた有機EL素子を提供することができる。
【0041】
電子輸送層は、1層のみ形成して使用することもできるが、発光層に隣接する第1電子輸送層とこれに隣接する第2電子輸送層の2層を形成して使用することが好ましい。電子輸送層を2層形成する場合、発光層に隣接する第1電子輸送層は前記一般式(1)で表される化合物を含有し、第2電子輸送層は前記一般式(1)で表される化合物と前記電子供与体を含有することが好ましい。この場合、第1電子輸送層は正孔阻止層としても機能することができる。
【0042】
前記一般式(1)で表される化合物と電子供与体は、個々に異なる蒸着源から蒸着して使用することもできるが、蒸着前に予備混合して予備混合物とし、その予備混合物を1つの蒸着源から同時に蒸着して電子輸送層を形成することが好ましい。
【0043】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造はこれに限定されない。
【0044】
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は第1電子輸送層、7は第2電子輸送層、8は陰極を表す。本発明の有機EL素子は発光層と正孔輸送層の間に電子阻止層を有しても良い。本発明の有機EL素子では、陰極、発光層、電子輸送層、そして陰極を必須の層として有するが、必須の層以外に正孔注入輸送層、電子注入層を有することが良く、更に正孔注入輸送層と発光層の間に電子阻止層を有することが良い。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか、または両者を意味する。
【0045】
図1とは逆の構造、すなわち基板1上に陰極8、第2電子輸送層7、第1電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も必要により層を追加、省略することが可能である。
【0046】
―基板―
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については特に制限はなく、従来から有機EL素子に用いられているものであれば良く、例えばガラス、透明プラスチック、石英等からなるものを用いることができる。
【0047】
―陽極―
有機EL素子における陽極材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3-ZnO)等の非晶質で、透明導電膜を作成可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成しても良く、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは有機導電性化合物のような塗布可能な物質を用いる場合には印刷方式、コーティング方式等の湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0048】
―陰極―
一方、陰極材料としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム―カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの陰極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度は向上し、好都合である。
【0049】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で形成した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0050】
―発光層―
発光層は陽極及び陰極のそれぞれから注入された正孔及び電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光層には発光材料、好ましくは有機発光性ドーパント材料とホスト材料を含む。発光層は1層、複数層のどちらでも良く、有機発光性ドーパント材料とホスト材料はそれぞれ1種類であっても、複数種類を組み合わせて使用しても良い。
【0051】
発光層が発光材料とホスト材料を含む場合は、ホスト材料として、前記一般式(1)で表される化合物を使用することがより好ましい。
【0052】
発光性ドーパント材料として燐光発光ドーパントを使用する場合、燐光発光ドーパントとしては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも1つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には、J.Am.Chem.Soc.2001,123,4304や特表2013-53051号公報に記載されているイリジウム錯体が好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0053】
燐光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。燐光発光ドーパント材料の含有量はホスト材料に対して0.1〜30wt%であることが好ましく、1〜20wt%であることがより好ましい。
【0054】
燐光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0055】
【化9】
【0056】
発光性ドーパント材料として、蛍光発光ドーパントを使用する場合、蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないが例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族誘導体、スチリル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、オキサジン誘導体、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、又はランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくはナフタレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフソフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタレン、ヘキサセン、ナフト[2,1-f]イソキノリン、α‐ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5-f]キノリン、ベンゾチオファントレン等が挙げられる。これらは置換基としてアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はジアリールアミノ基を有しても良い。
【0057】
蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜20%であることが好ましく、1〜10%であることがより好ましい。
【0058】
発光性ドーパント材料として、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントを使用する場合、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないがスズ錯体や銅錯体等の金属錯体や、WO2011/070963号に記載のインドロカルバゾール誘導体、Nature 2012,492,p234に記載のシアノベンゼン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0059】
【化10】
【0060】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されてもよいし、2種類以上を含有してもよい。また、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントは燐光発光ドーパントや蛍光発光ドーパントと混合して用いてもよい。熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜50%であることが好ましく、1〜30%であることがより好ましい。
【0061】
ホスト材料は、1種類のみを使用しても良いし、複数種類を組み合わせて使用しても良い。ホスト材料としては、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合芳香族炭化水素環を有する化合物やその誘導体、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-1,1’-ジアミン等の芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)等の金属錯体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体等が使用できる。ホスト材料を1種類のみ使用する場合、及び複数種使用する場合、少なくとも1種類はインドロカルバゾール誘導体を使用することが好ましく、一般式(1)で表される化合物を使用することがより好ましい。
【0062】
−注入層−
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0063】
−電子阻止層−
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0064】
電子阻止層の材料としては、公知の電子阻止層材料を用いることができ、また後述する正孔輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0065】
−正孔輸送層−
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0066】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。正孔輸送層には従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。かかる正孔輸送材料としては例えば、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体及びスチリルアミン誘導体を用いることが好ましく、アリールアミン化合物を用いることがより好ましい。
【0067】
−電子輸送層−
電子輸送層は1層であっても、2層以上設けてもよい。2層以上設ける場合は、発光層よりの層を第1電子輸送層、発光層から遠い層を第2電子輸送層という。第1電子輸送層と第2電子輸送層の間に、第三の電子輸送層を設けてもよい。
【0068】
電子輸送層が1層である場合は、その層に前記一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含む。
電子輸送層が2層以上からなる場合は、いずれかの電子輸送層に一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含む。好ましくは、第1電子輸送層に一般式(1)で表される化合物を含み、第2電子輸送層に一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含む。この場合、第1電子輸送層には電子供与体を含まない。
【0069】
第1電子輸送層と第2電子輸送層を有する場合について説明する。
第1電子輸送層は、公知の電子輸送材料を使用して形成してもよいし、一般式(1)で表される化合物のみを使用して形成してもよいし、公知の電子輸送材料を併用して形成してもよい。しかし、第1電子輸送層は、一般式(1)で表される化合物を50wt%以上含むことが好ましい。
【0070】
公知の電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントロリン、トリフェニレン等の多環芳香族誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、ビピリジン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0071】
第2電子輸送層は一般式(1)で表される化合物と電子供与体を含む。
電子供与体の含有量は、第2電子輸送層中に5〜95%(wt)であることが好ましく、25〜75%であることがより好ましい。一般式(1)で表される化合物の含有量は、5〜90%が好ましく、25〜70%であることがより好ましい。第2電子輸送層中にはその他の電子輸送材料を含有することもできる。
【0072】
一般式(1)で表される化合物と電子供与体は、それぞれ異なる蒸着源から蒸着するか、蒸着前に予備混合して予備混合物とすることで1つの蒸着源から一般式(1)で表される化合物と電子供与体を同時に蒸着することもできる。予備混合方法としては、粉砕混合等公知の方法が採用できるが、可及的に十分に混合することが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を超えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0074】
実施例1
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを30nmの厚さに形成した。次に電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして第1ホストとして化合物6を、第2ホストとしてH1を、発光ドーパントとしてIr(ppy)3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)3の濃度が10wt%、第1ホストと第2ホストの重量比が40:60となる蒸着条件で共蒸着した。次に第1電子輸送層として化合物6を5nmの厚さに形成した。そして化合物6とLiqをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さに第2電子輸送層を形成した。この時、化合物6とLiqの重量比が50:50となる蒸着条件で共蒸着した。更に電子注入層としてLiqを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0075】
実施例2〜7
実施例1において、第2電子輸送層を形成する化合物6の代わりに化合物12、16、18、23、28、36のいずれかを使用した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0076】
実施例8
実施例1において、第2電子輸送層を形成する化合物6の代わりに化合物47を使用し、化合物47とLiqの重量比が30:70となる蒸着条件で共蒸着した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0077】
実施例9
実施例1において、第2電子輸送層を形成する化合物6の代わりに化合物55を使用し、化合物55とLiqの重量比が70:30となる蒸着条件で共蒸着した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した
【0078】
実施例10〜12
実施例1において、第1電子輸送層として化合物6の代わりに化合物10、11、又は16を使用した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0079】
実施例13
化合物17(0.50g)とLiq(0.50g)を量りとり、乳鉢ですり潰しながら混合することにより予備混合物E1を調整した。
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを30nmの厚さに形成した。次に電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして第1ホストとして化合物6を、第2ホストとしてH1を、発光ドーパントとしてIr(ppy)3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)3の濃度が10wt%、第1ホストと第2ホストの重量比が40:60となる蒸着条件で共蒸着した。次に、第1電子輸送層として化合物6を5nmの厚さに形成した。そして第2電子輸送層として予備混合物E1を15nmの厚さに形成し、更に電子注入層としてLiqを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0080】
比較例1
実施例1において、第2電子輸送層を形成する化合物6の代わりにET-1を使用した以外は、実施例1と同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0081】
比較例2
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを30nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして第1ホストとして化合物6を、第2ホストとしてH1を、発光ドーパントとしてIr(ppy)3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)3の濃度が5wt%、第1ホストと第2ホストの重量比が40:60となる蒸着条件で共蒸着した。次に、電子輸送層として化合物6を20nmの厚さに形成した。更に、電子注入層としてLiqを1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0082】
実施例で使用した化合物を次に示す。
【0083】
【化11】
【0084】
第1電子輸送層を形成する化合物、第2電子輸送層を形成する化合物と電子供与体を表1に示す。%はwt%である。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例1〜13及び比較例1、2で作製された有機EL素子は、これに外部電源を接続して、電圧を印加してところ、いずれも極大波長535nmの発光スペクトルが観測され、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。
【0087】
作製した有機EL素子の輝度、駆動電圧、発光効率、寿命特性を表2に示す。表中で輝度、駆動電圧、発光効率は駆動電流10mA/cm2時の値であり、初期特性である。表中でLT95は、駆動電流20mA/cm2時に輝度が初期輝度の95%まで減衰するまでにかかる時間である。
【0088】
【表2】
【0089】
表2から、電子輸送層に一般式(1)で表される化合物と電子供与体を混合して使用すると、発光効率と寿命特性が著しく伸長することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の有機EL素子は、低駆動電圧で高発光効率、且つ長寿命であり、携帯機器ディスプレイに利用できる他、TV等の有機ELディスプレイや有機EL照明にも利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0091】
1 基板、2 陽極、3 正孔注入層、4 正孔輸送層、5 発光層、6 第1電子輸送層、7 第2電子輸送層、8 陰極
図1