【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、本明細書において濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0037】
乳化剤
以下の実験例においては、下記の乳化剤を使用した。なお、各乳化剤のHLBはカタログ記載の数値である。
・モノオレイン酸ジグリセリン(HLB:7.4、理研ビタミン、ポエムDO100V)
・クエン酸モノオレイン酸グリセリン(HLB:6.0、理研ビタミン、ポエムK-37V)
・シュガーエステル(オレイン酸エステル)(HLB:1、三菱化学フーズ、O-170)
・ヘキサグリセリン縮合リシノレート(HLB:0.5、理研ビタミン、ポエムPR300)
・テトラグリセリン縮合リシノレート(HLB:1.0、理研ビタミン、ポエムPR100)
試験1:炒め飯
食用菜種油(キャノーラ油、昭和産業)に対して各種乳化剤を添加し、加温可能な容器において撹拌しながら60℃に加温し、均一な油脂組成物を得た。使用した乳化剤の種類と量を以下の表に示す。表における各種乳化剤の量は、食用菜種油に対する重量%である。
【0038】
千葉県産コシヒカリに対して水を加え(加水145%)、炊飯器を用いて米飯を調製した。ステンレス製フライパンに油脂組成物10gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、50〜60℃に保温した米飯500gを投入し、2分間炒め調理して炒め飯(具なし、味付けなしのチャーハン)を製造した。炒め調理時の米飯のほぐれ状態(ほぐれ性)を4段階で評価した。
【0039】
また、炒めた米飯について、調理直後、および、真空冷却後1時間経過した段階で、パラパラ感と食感(口当たり)をそれぞれ4段階で評価した。評価基準は以下のとおりである。
[炒め調理時の米飯のほぐれ状態]
◎:炒め時のほぐれが良好で、固まりがなく、全体がパラパラしている。
○:炒め時に固まりなくほぐれる。
△:炒め時の固まりは無いが、ご飯同士の粘着性は高い。
×:炒め時にご飯がもったりし、ほぐれが悪い。
[炒め飯のパラパラ感]
◎:非常に良好である。
○:良好である。
△:やや劣る。
×:パラパラしていない。
[食感(口当たり)]
◎:米飯の表面が滑らかで口当たりが非常に良い。
○:米飯の表面が滑らかで口当たりが良い。
△:米飯の表面に滑らかさが無く、口当たりが劣る。
×:米飯の表面がパサパサしており、口当たりが悪い。
【0040】
【表1-1】
【0041】
【表1-2】
【0042】
上記の表から明らかなように、HLBが4.7〜8である乳化剤を食用油脂に配合した油脂組成物を炒め油として使用すると、炒め調理時の米飯のほぐれ性が良好であり、また、調理直後および冷却保存後の炒め飯のパラパラ感や食感も優れたものであった。
【0043】
一方、HLBが低い乳化剤のみを食用油脂に配合した油脂組成物を用いた場合(試験1
−6、試験1−7)、炒め調理時の米飯のほぐれ性、調理直後および冷却保存後の炒め飯のパラパラ感や食感のいずれも、良好な結果は得られなかった。
【0044】
しかしながら、HLBが低い乳化剤であっても、HLBが4.7〜8である乳化剤と併用した場合(試験1−8〜試験1−13)、炒め調理時の米飯のほぐれ性、調理直後および冷却保存後の炒め飯のパラパラ感や食感のいずれも、良好な結果が得られた。HLBの異なる乳化剤を併用した場合に特に優れた効果が得られる理由の詳細は明らかでないが、HLBの大きく異なる乳化剤を併用することによって、澱粉系食材と調理器具という性状の異なる対象のいずれに対しても油脂組成物が迅速になじむことができるため優れた効果が奏されたものと推測される。
【0045】
試験2:炒め飯(その2)
試験1と同様にして米飯を調製した。テフロン(登録商標)コーティングされたフライパンに炒め油としてサラダ油(乳化剤無添加)5gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、50〜60℃に保温した米飯500gを投入し、1分間炒めたところで、下表の油脂組成物10gを鍋肌より添加し、さらに1分間炒めて炒め飯(具なし、味付けなし)を製造した。ここで、油脂組成物の調製、および、炒めた米飯の評価は、試験1と同様にして行った。
【0046】
【表2】
【0047】
試験3:炒め飯(その3)
試験1と同様にして米飯を調製し、この米飯に油脂組成物を2重量%添加して20℃の環境下で2時間保管した。
【0048】
テフロン(登録商標)コーティングされたフライパンに炒め油としてサラダ油(乳化剤無添加)5gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、予め油脂組成物を添加しておいた冷飯500gを投入し、2分間炒めて炒め飯(具なし、味付けなし)を製造した。ここで、油脂組成物の調製、および、炒めた米飯の評価は、試験1と同様にして行った。
【0049】
【表3】
【0050】
試験4:炒め飯(その4、ケチャップライス)
試験1と同様にして米飯を調製した。ステンレス製フライパンに油脂組成物10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、50〜60℃に保温した米飯500gを投入して1分間炒め、塩5g、ケチャップ25gを加え、さらに1分炒めた。ここで、油脂組成物の調製、および、炒めた米飯の評価は、試験1と同様にして行った。
【0051】
【表4】
【0052】
試験5:炒め飯(その5)
ステンレス製フライパンに炒め油としてサラダ油10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、みじん切りにしたタマネギ(1玉分)を入れて軽く炒め、次いで、輪切りにしたウインナー(2本分)と細かく切ったキャベツ(1/8玉分)を入れて、全体に火が通るまで炒めた。塩・コショウを少々添加した後、50〜60℃に保温した米飯500gを投入し、次いで油脂組成物10gを米飯全体に振り掛けるように添加した。全体を均等に混ぜながら1分間炒めた後、ウスターソースを大さじ1杯添加し、さらに1分間炒めて炒め飯を製造した。なお、本試験において米飯および油脂組成物は試験1と同様にして調製したが、油脂組成物は、食用菜種油に対してモノオレイン酸ジグリセリン(HLB:7.4)2重量%、クエン酸モノオレイン酸グリセリン(HLB:6.0)3重量%、ヘキサグリセリン縮合リシノレート(HLB:0.5)3重量%を配合したものを使用した。
【0053】
この炒め飯は、皿に盛り付ける際に、米飯のパラパラ感を感じるほど良好な状態に仕上がった。また、喫食したところ、非常に良好なパラパラ感があり、おいしく食すことができた。
【0054】
試験6:炒め飯(その6)
試験1と同様にして米飯を調製した。テフロン(登録商標)コーティングされたフライパンに、炒め油としてサラダ油10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、みじん切りにしたタマネギ(1玉分)を入れて軽く炒めた。次いで、50〜60℃に保温した米飯500gを投入して2分間炒め、塩・コショウで味を調え、火を止めて炒め飯を調理した。
【0055】
炒め飯をステンレスバットに移して粗熱を取ったのち、全体を2等分した。片方に油脂組成物(試験3−1と同じ)5gを添加して全体に軽く混ぜ合わせ、プラスチック製容器に盛り付けて蓋をして20℃の環境下で4時間保管した(試験6−1)。もう一方は、油脂組成物を添加せずにそのままプラスチック製容器に盛り付けて蓋をして20℃の環境下で4時間保管した(試験6−2)。
【0056】
試験6−1の炒め飯は、電子レンジで再加熱を行ってから喫食した。一方、試験6−2の炒め飯は、油脂組成物(試験3−1と同じ)5gを全体に振り掛けるように添加してか
ら電子レンジで再加熱して喫食した。
【0057】
試験6−1、試験6−2の炒め飯は、いずれも、電子レンジで再加熱後、米飯のパラパラ感を感じる状態に仕上がっていた。また、喫食したところ、いずれも非常に良好なパラパラ感があり、おいしく食すことができた。
【0058】
試験7:焼きそば
下表に示す処方に基づいて、試験1と同様にして油脂組成物を調製した。表における各種乳化剤の量は、食用菜種油に対する重量%である。
【0059】
ステンレス製フライパンに油脂組成物3gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、中華ゆで麺150g(冷蔵)を投入し、2分間炒めて焼きそば(具なし、味付けなし)を製造した。炒め調理時の麺線のほぐれ状態を4段階で評価した。
【0060】
また、炒めた麺類について、調理直後、および、真空冷却後1時間経過した段階で、食感(つるみ感)を4段階で官能評価した。評価基準は以下のとおりである。
[炒め調理時の麺線のほぐれ状態]
◎:麺の塊が早く良くほぐれる。
○:麺の塊が良くほぐれる。
△:麺の塊が一応ほぐれるが、麺線同士の付着はみられる。
×:麺の塊が菜箸にからみほぐれにくい。
[食感(つるみ感)]
◎:非常に良好である。
○:良好である。
△:やや劣る。
×:つるみ感なし。
【0061】
【表5】
【0062】
表から明らかなように、本発明によれば、炒め調理時に麺線をほぐれやすくすることができ、また、調理直後および冷却保存後のいずれにおいても食感(つるみ感)が良好であった。特に、HLBが4.7〜8の乳化剤とHLBが2.5以下の乳化剤を併用することによって、炒め調理時の麺線のほぐれやすさ、調理直後および冷却保存後の食感(つるみ感)がいずれも大きく向上した。
【0063】
試験8:パスタ
ステンレス製フライパンに、炒め油としてオリーブ油3gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、予め茹でて真空冷却しておいたロングパスタ200gを投入し、次いで、油脂組成物2gをロングパスタに振り掛けるように添加し、2分間炒めた。油脂組成物の調製は試験1、麺類の評価は試験7と同様にして行った。
【0064】
【表6】
【0065】
試験9:パスタ(その2)
ステンレス製のフライパンに炒め油としてサラダ油10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、食べやすい大きさに裂いた舞茸(100g)、細切りにしたピーマン(1個分)とタマネギ(1/2玉分)を入れて炒め、塩・コショウで軽く味付けをした。次いで、予め茹でて真空冷却を掛けたロングパスタ200gを投入し、油脂組成物(試験7−8と同じ)2gをロングパスタに振り掛けるようにして添加し、約1分間軽く炒め合わせてパスタを調理した。
【0066】
調理後の麺線の状態は非常に滑らかな状態であった。また、喫食したところ、パスタに非常に良好なつるみ感があり、おいしく食すことができた。